JPH07305134A - 耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法

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JPH07305134A
JPH07305134A JP11586894A JP11586894A JPH07305134A JP H07305134 A JPH07305134 A JP H07305134A JP 11586894 A JP11586894 A JP 11586894A JP 11586894 A JP11586894 A JP 11586894A JP H07305134 A JPH07305134 A JP H07305134A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Mg:3.0〜6.0 %(質量%、以下同じ)を含
み、必要に応じてMn:0.1〜1.0 %、Cu:0.02 〜0.5
%を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物か
らなり、塗装焼付後の転位密度が103 μm/μm3以上で、
耐力が250MPa以上である。最終冷間圧延直前の導電率は
23%IACS以上であることが好ましい。 【効果】 強度、耐応力腐食割れ性ともに優れた缶蓋用
アルミニウム合金硬質板が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐応力腐食割れ性に優
れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方
法、とくに缶蓋材を缶胴材と巻き締め加工して腐食環境
下に放置した場合にも応力腐食割れが生じることがない
耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質
板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、缶蓋用アルミニウム素材として
は、強度、成形性などの観点から、5082、5182合金など
Mgを4 %以上含むアルミニウム合金が使用されてい
る。当該アルミニウム合金缶蓋材の製造は、通常、鋳塊
を均質化処理した後、熱間圧延により3 〜5mm 厚さと
し、冷間圧延、中間焼鈍を経て最終冷間圧延する方法、
または熱間圧延で2mm 程度の板厚とし、この板厚で中間
焼鈍して最終冷間圧延するか、あるいは熱間圧延のまま
最終冷間圧延を行い、板厚 0.4mm以下の硬質板とする方
法により行われている。
【0003】このようにして製造された缶蓋用アルミニ
ウム合金硬質板は、板材を外的環境から保護するため、
防食効果の高い高分子樹脂塗料で塗装される。缶に成形
する場合、缶蓋用アルミニウム合金硬質板は所定寸法に
打ち抜かれ、図1に示すように缶胴部2と巻き締め加工
されるが、この際、加工治具との接触により缶蓋部1の
外面側の塗膜が削り取られることがある。巻き締め加工
によってシーミングウオール部3には円周方向に引張応
力が作用するため、缶蓋部の外面に塗膜欠陥が存在した
状態で腐食環境に放置されると、シーミングパネル部4
からシーミングウオール部3にかけて応力腐食割れを生
じる場合がある。
【0004】腐食環境がつくりだされる状況は、缶に例
えば炭酸飲料を充填する場合、充填時の液温は5 ℃程度
であり、この状態で缶を保置すると結露が生じ好ましく
ないため、巻き締め加工後にウオーマー(30 〜40℃の温
水吹き付け) を通過させ、缶内容物を加熱することによ
り結露防止を行っている。ウオーマー内の水質はとくに
管理されておらず腐食因子を含む場合もあり、さらにウ
オーマー内でステンレス鋼のべルト上に缶を倒立させる
場合には、缶蓋部がアルミニウムよりも電気化学的に貴
なステンレス鋼と接することになる。
【0005】通常は缶が10分以内の短時間でウオーマー
内を通過するため問題は生じないが、充填ライン上で例
えば停電などのトラブルが発生すると、缶がウオーマー
内に長時間放置されることとなり、とくに塗膜欠陥があ
ると応力腐食割れが発生することとなる。ウオーマー内
で割れ発生に至らない場合でも、ウオーマー通過後の乾
燥が十分でないままシュリンクパックされると、保管中
にシーミングパネル部4からシーミングウオール部3に
かけて同様の応力腐食割れが発生し易い。
【0006】また、缶成形後、高Mgアルミニウム合金
硬質板からなる缶蓋部に、強酸性溶液や塩素イオンを含
む溶液などの腐食性溶液が付着したまま保管されると応
力腐食による亀裂が生じることも経験されている。元
来、高Mgアルミニウム合金は応力腐食割れ感受性が高
いことが知られており、高Mgアルミニウム合金の応力
腐食割れを抑制するために、適量のMn、Cr、Biあ
るいはCuを添加する方法が提案されている(Corrosio
n 、Vol.22(1966)、第63頁、住友軽金属技報、Vol.14(1
973)、第63頁) が、この方法では上記缶蓋部に生じる応
力腐食割れを防止するための十分な対策とはならない。
【0007】発明者らは、高Mgアルミニウム合金硬質
板を缶蓋として使用し、缶胴材と巻き締め加工して缶に
成形した後、上記の腐食環境に曝された場合に発生する
応力腐食割れの要因、発生機構などについて多角的に検
討を行った結果、亀裂発生は、缶蓋材中の結晶粒内と結
晶粒界との電気化学的な電位差が大きい場合にきわめて
顕著に生じることを見出した。
【0008】これは、固溶していたMgがβ相(Al3M
g2) として粒界に偏析し易く、偏析したβ相がアルミニ
ウムマトリックスよりも電気化学的に卑であることに起
因するもので、応力腐食割れを防止するには、材料中の
粒内と粒界の電気化学的な電位差を小さくする必要があ
り、そのためには、β相の析出状態を制御して粒内と粒
界の電気化学的な電位差を等しくするようなβ相の析出
状態を得ることが好ましいことを解明した。
【0009】β相は粒界、アルミニウムマトリックスと
Al-Mn 系化合物、Al-Cr 系化合物などの第2相粒子との
界面、転位などの格子欠陥に析出し易い。粒界のない缶
蓋材を工業的規模で製造するのは現在の技術水準では困
難であるから、粒界におけるβ相の析出を抑制するため
には、粒界以外にβ相が析出し易い場所をつくってやる
ことが必要であり、Mn、Crなどの添加は、アルミニ
ウムと化合物を形成させ第2相粒子として析出させるこ
とによりβ相の析出場所を提供する観点から有効ではあ
るが、缶成形後の巻き締め部における缶蓋材の応力腐食
割れを防止するために十分でないことは前記のとおりで
ある。
【0010】発明者らは、高Mgアルミニウム硬質板に
おけるβ相の析出機構について検討を重ねた結果、硬質
板にみられる格子欠陥である転位とβ相析出とが深く関
連し、転位密度が硬質板の応力腐食割れに顕著に影響を
及ぼすことを見出した。また、飲料缶などにおいては、
内容物が充填されたのち半年ないし1年間程度保管され
ることがあり、この間、硬質板の製造直後には固溶して
いたMgが、室温放置中にβ相として析出し耐応力腐食
性を劣化させることがあることも判明し、Mgの固溶量
の制御も高Mgアルミニウム合金硬質板の耐応力腐食割
れ性を向上させるために重要であることがわかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高Mgアル
ミニウム合金硬質板の応力腐食割れ性に関する上記予備
検討に基づいてなされたものであり、その目的は、缶胴
部と巻き締め加工される缶蓋部として使用された場合、
缶蓋部に腐食性溶液が付着したまま保管されたり、内容
物の充填ラインにおいて、缶蓋部が例えばステンレス鋼
のようにアルミニウム合金より電気化学的に卑な金属と
長時間接触しても、巻き締め部に応力腐食による亀裂が
生じることがない耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アル
ミニウム合金硬質板およびその製造方法を提供すること
にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アル
ミニウム合金硬質板は、Mg:3.0〜6.0 %を含み、必要
に応じてMn:0.1〜1.0 %、Cu:0.02 〜0.5 %を含有
し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、
塗装焼付後の転位密度が103 μm/μm3以上で、耐力が25
0MPa以上であり、好ましくは最終冷間圧延直前の導電率
が23%IACS以上であることを構成上の特徴とする。
【0013】また、上記の目的を達成するための本発明
による耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合
金硬質板の製造方法は、上記組成のアルミニウム合金を
通常の方法で造塊し、均質化処理、熱間圧延、必要に応
じて冷間圧延を行って所定の板厚とし、ついで中間熱処
理、50%以上の圧延率で最終冷間圧延を行い、さらに安
定化処理として、0.5 ℃/ 秒以上の昇温速度で200 〜35
0 ℃の温度領域に加熱して1分間以下の時間保持したの
ち0.5 ℃/ 秒以上の冷却速度で冷却することを特徴とす
る。
【0014】本発明のアルミニウム合金硬質板の組成に
ついて説明すると、Mgは缶蓋材として必要な強度を付
与するための基本的合金成分であり、添加量は缶蓋材に
要求される強度レベルに応じて調整されるが、3 %未満
では塗装焼付後の強度が低くなり過ぎて缶蓋材として適
しない。6 %を越えて添加すると、熱間圧延時に割れが
生じ易くなり工業的生産が困難となる。従って、好まし
い含有範囲は3 〜6 %、より好ましくは3.5 〜6 %とす
る。
【0015】選択成分として添加されるMnは、Mgと
同様強度向上に寄与し、とくに塗装焼付時の強度低下を
抑える効果がある。また、耐応力腐食割れ性を改善する
効果も有する。Mnの添加量は缶蓋材に要求される強度
レベルに応じて調整されるが、0.1 %未満の添加では上
記の効果が十分ではなく、1 %を越えると、圧延時に割
れが生じ易くなり工業的生産が困難となり、また造塊時
に不純物のFeと反応して形成されるAl-Fe-Mn系化合物
が粗大化して、缶蓋材に要求される曲げ加工性や張出し
加工性を劣化させる。さらにMgの固溶限を低下させβ
相の析出を促進させることとなる。従って、Mnの好ま
しい添加範囲は0.1 〜1.0 %、より好ましくは0.3 〜0.
8 %の範囲とする。
【0016】Cuは、Mnと同様、強度および耐食性の
向上に寄与する。添加量は缶蓋材に要求される強度レベ
ルにより調整されるが、0.02%未満の添加ではその効果
が十分ではなく、0.5 %を越えて添加すると、熱間圧延
時に割れが生じ易くなり工業的生産が困難となる。従っ
て、好ましい添加範囲は0.02〜0.5 %、より好ましくは
0.05〜0.3 %の範囲とする。不可避的不純物として混入
するFe、Siは、それぞれ0.5 %以下であれば缶蓋材
としての性能を損なうことはない。0.5 %を越えるとAl
-Fe-Mn系化合物の粗大化を招き、あるいは粒界にSi系化
合物が析出して成形性を劣化させる傾向がある。なお、
通常のアルミニウム合金と同様、例えば0.2 %以下のT
i、0.05%以下のB、0.01%以下のBeを添加して合金
板の性能を改善することができる。
【0017】本発明のアルミニウム合金硬質板における
必須構成要件となる転位密度について説明すると、転位
は冷間圧延により結晶粒内に導入されるもので、本発明
においては、β相を粒内に均一に析出させるために、転
位密度を制御し103 μm/μm3以上とすることが重要であ
る。転位密度がこの範囲の場合、β相の析出に伴う粒界
と粒内の電気化学的電位差が小さく、室温時効において
β相の偏析を生じることがなく、粒界と粒内の電気化学
的電位差は小さいまま保たれる。塗装焼付後の硬質板の
転位密度が103 μm/μm3未満の場合には、β相析出に伴
う粒界と粒内の電位差が大きく、応力腐食割れが生じ易
くなる。また転位密度が低いと、室温時効の際にβ相が
粒界に析出し易くなる。
【0018】本発明においては、最終冷間圧延直前の材
料の導電率を23%IACS以上にしておくのが好ましく、応
力腐食割れ発生の抑制効果を与える。導電率が23%IACS
以上の材料ではMgの固溶度が低いため、Mgが室温時
効中にβ相として析出し粒界に偏析してくることが避け
られ、応力腐食割れの発生が抑制される。一方、最終冷
間圧延直前の導電率が23%IACS未満の材料では、室温時
効中に固溶していたMgがβ相として粒界に偏析し、粒
内と粒界の電位差を大きくするために応力腐食割れが生
じ易くなる。
【0019】本発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板
は、連続鋳造など通常の方法で造塊し、鋳塊を均質化処
理した後、熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延して所定
の板厚とする。ついで、冷間圧延性や材料の異方性を改
善するために中間熱処理を施す。本発明においては、導
電率も考慮して、バッチ炉において熱処理を行う場合は
350 〜450 ℃の温度領域に0.5 〜5 時間保持する条件、
連続焼鈍炉を使用して熱処理する場合は400 〜550 ℃の
温度領域に5 分以内保持する条件で中間熱処理を行うの
が好ましい。
【0020】中間熱処理後、最終冷間圧延を行って必要
な強度特性を与え転位を導入する。最終冷間圧延は圧延
率50%以上で行うことが必要であり、圧延率が50%未満
では、塗装焼付後の耐力が250MPaに達しない場合があ
り、十分な転位密度が得られない場合もある。圧延率を
高くし過ぎると、圧延中において板端部の割れが激しく
なり、材料の異方性( 耳率など) も大きくなり好ましく
ない。工業的には90%以下に押さえることが好ましい。
【0021】最終冷間圧延後、安定化処理として最終熱
処理を行う。一般に、Al-Mg 合金硬質板は、冷間圧延さ
れたまま放置すると、室温時効によって材料強度が低下
してしまうため、工業的には出荷前に熱処理を行い室温
時効による材料特性の変化を抑制している。また塗装焼
付時、硬質板の残留歪によるゆがみが発生し、後工程で
の使用に支障が生じないよう最終冷間圧延後に残留応力
除去のための熱処理を行う場合もある。これらの熱処理
は安定化処理と言われ、一般的には、昇温速度10〜100
℃/h程度のバッチ炉を使用して250 ℃以下、例えば150
℃前後の温度で数時間加熱することにより行われてい
る。
【0022】しかしながら、本発明に上記従来の安定化
処理を適用した場合、昇温時間が長く保持時間も長いた
めに、組織が回復し転位密度を高密度状態に保つことが
困難である。転位密度を高密度に保持し、室温時効によ
る材料強度の低下を小さくするには、急速加熱により高
温、短時間の熱処理を行うことが必要であり、検討の結
果、0.5 ℃/ 秒以上の昇温速度で200 〜350 ℃の温度領
域に加熱し、1分間以内保持した後、0.5 ℃/ 秒以上の
冷却速度で冷却するのが好ましい熱処理条件であること
を見出した。昇温速度および冷却速度が0.5 ℃/ 秒未満
の場合もしくは保持時間が1分を越えた場合は、材料の
組織が回復して転位密度を高密度に保つことが困難とな
る。加熱温度が200 ℃未満では、硬質板内部の残留応力
を完全に除去することができず、室温時効による強度、
応力腐食割れ性などの材料特性の変化も抑制できない。
加熱温度が350 ℃を越えると、材料組織の回復が進行し
て転位密度を高密度状態に保持するのが困難となり、25
0MPa以上の塗装焼付後耐力を維持することが難しくな
る。
【0023】
【作用】本発明においては、限定された組成のアルミニ
ウム合金硬質板において、最終冷間圧延により導入され
る転位の密度を103 μm/μm3以上としてβ相の析出場所
を提供し、β相の結晶粒界への析出を抑制して粒界と粒
内との電気化学的な電位差を小さくすることにより応力
腐食割れの発生が防止される。好ましくは、最終冷間圧
延直前の導電率を23%IACS以上としてMgの固溶度を低
くし、室温時効におけるβ相の粒界偏析をなくすことに
より一層優れた耐応力腐食割れ性を得ることができる。
圧延率50%以上の最終冷間圧延および限定された条件の
最終熱処理を組合わせることにより、転位密度を上記の
高密度に保持して優れた耐応力腐食割れ性を得るととも
に、室温時効による材料強度の低下を防ぎ、塗装焼付後
250MPa以上の耐力を維持することが可能となる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 実施例 表1に示す組成のアルミニウム合金を通常の半連続鋳造
法により造塊し、500℃で8時間の均質化処理を行い、
その温度で熱間圧延を実施し板厚3mm とした。熱間圧延
の終了温度は310 ℃±10℃であった。ついで冷間圧延を
施した。冷間圧延の加工度は最終冷間圧延( 圧延率55〜
85%) で最終板厚0.45mmの硬質板を得ることを考慮して
調整された。
【0025】冷間圧延した板材は中間熱処理された。中
間熱処理は、バッチ炉(BAT 、昇温速度約30℃/h) およ
び連続焼鈍炉(CAL、昇温速度および冷却速度約30℃/s)
を使用して行われた。続いて最終冷間圧延を行い、最終
板厚0.45mmの硬質板を得た。最後に、安定化処理とし
て、連続焼鈍炉を用いて最終熱処理を行い、塗装焼付相
当の熱処理として205 ℃で10分間の処理を加えた。各試
料の中間熱処理条件、最終冷間圧延直前の導電率、最終
冷間圧延の圧延率および最終熱処理条件を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】 《表注》導電率の測定はシグマテスターによる。
【0028】各試料について転位密度、機械的性質を測
定し、耐応力腐食割れ性の評価を行った。結果を表3に
示す。転位密度の測定方法および耐応力腐食割れ性の評
価方法は以下のとおりである。 転位密度の測定:各試料の転位は、透過型電子顕微鏡に
おいて、電子線回折スポットの中の(420)による暗視野
像で確認した。転位密度はBailey-Hirsch らが提案した
方法を参考とした。( コロナ社編「透過電子顕微鏡法」
参照) 転位は投影された像であるため、これらの長さを
R p とすると、実際の長さは(4/ π) ×R p で与えられ
る。従って、転位密度は(4/ π) ×R p を( 測定面積)
×( 試料厚さ) で割った値として求められる。なお、試
料厚さは等厚干渉縞を利用して測定した。( 丸善編「金
属の電子顕微鏡写真と解説」参照)
【0029】耐応力腐食割れ性の評価:205 ℃×10分の
塗装焼付相当熱処理後、圧延方向に対して直角方向に引
張試験片を採取した。腐食液( 液組成:NaCl 1000ppm 、
クエン酸 0.3%)に試験片の長手方向が約半分浸漬され
るようにセットし、試験片に耐力荷重(耐力値×試験片
断面積)の60%の引張荷重を負荷した。この状態のまま
室温に400h放置し、その間の破断数( 各条件 n=50 で評
価) を測定した。また塗装焼付相当熱処理後、室温で1
年間放置し、その間の破断数も測定した。表3にみられ
るように、本発明に従って製造されたアルミニウム合金
硬質板は、いずれも缶蓋材として十分な機械的性質を有
し、耐応力腐食割れ性も良好であった。
【0030】
【表3】
【0031】比較例 表4に示す組成のアルミニウム合金を、実施例と同様、
半連続鋳造法により造塊し、この鋳塊を実施例と同様の
工程で処理して板厚0.45mmの硬質板とし、実施例と同
様、205 ℃×10分の塗装焼付相当の熱処理を行い試料と
した。各試料の中間熱処理条件、導電率、最終冷間圧延
率および最終熱処理条件を表5に示す。本発明の条件を
外れたものには下線を付した。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】上記のように作製された各試料について、
実施例と同一の方法で転位密度および機械的性質を測定
し、耐応力腐食割れ性の評価を行った。結果を表6に示
す。表6に示すように、各試料は機械的性質、耐応力腐
食割れ性において缶蓋材として満足すべきものではなか
った。とくに試料No.20 および試料No.21 は、Mgある
いはCu量が多過ぎるために熱間圧延の途中で割れが発
生し試験材を得ることができなかった。
【0035】試料No.13 は、最終冷間圧延率が50%未満
であるため耐力値が不十分であり、転位密度が低いた
め、室温時効においてβ相の偏析が生じ1年後に破断し
た。試料No.14 は、最終熱処理における昇温速度および
冷却速度が低いため、所定の転位密度が得られず耐応力
腐食割れ性が劣っている。試料No.15 は、最終熱処理の
温度が高過ぎるために十分な耐力が得られない。試料N
o.16 は、最終熱処理における昇温速度および冷却速度
が低いため、試料No.14 と同様、所定の転位密度が得ら
れず耐応力腐食割れ性が劣っている。試料No.17 は、最
終熱処理の保持時間が長いため材料の耐力が低下してい
る。試料No.18 は、最終冷間圧延直前の導電率が小さく
固溶したMgが室温時効中に偏析するために、粒界と粒
内の電気化学的電位差が大きくなり耐応力腐食割れ性が
劣化する。試料No.19 は、Mg量が本発明の範囲より少
ないため耐力が十分でない。
【0036】
【表6】
【0037】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、基本的
にはMg以外の各種成分を添加することなしに強度、耐
応力腐食割れ性ともに優れた缶蓋用アルミニウム合金硬
質板が提供され、缶蓋材のコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】缶蓋材と缶胴材の巻き締め部を示す一部断面図
である。
【符号の説明】
1 缶蓋部 2 缶胴部 3 シーミングウオール 4 シーミングパネル

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:3.0〜6.0 %(質量%、以下同じ)
    を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からな
    り、塗装焼付後の転位密度が103 μm/μm3以上で、耐力
    が250MPa以上であることを特徴とする耐応力腐食割れ性
    に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板。
  2. 【請求項2】 Mn:0.1〜1.0 %、Cu:0.02 〜0.5 %
    のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請
    求項1記載の耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニ
    ウム合金硬質板。
  3. 【請求項3】 最終冷間圧延直前の導電率が23%IACS以
    上であることを特徴とする請求項1または2記載の耐応
    力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板。
  4. 【請求項4】 Mg:3.0〜6.0 %を含み、残部アルミニ
    ウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金
    を、所定厚さまで圧延して中間熱処理を行った後、50%
    以上の圧延率で最終冷間圧延し、0.5 ℃/ 秒以上の昇温
    速度で200 〜350 ℃の温度領域に加熱して1分間以下保
    持したのち0.5 ℃/ 秒以上の冷却速度で冷却することに
    より、塗装焼付後の転位密度を103 μm/μm3以上、耐力
    を250MPa以上とすることを特徴とする耐応力腐食割れ性
    に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  5. 【請求項5】 アルミニウム合金が、Mg:3.0〜6.0 %
    を含み、さらにMn:0.1〜1.0 %、Cu:0.02 〜0.5 %
    のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請
    求項4記載の耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニ
    ウム合金硬質板の製造方法。
JP11586894A 1994-05-02 1994-05-02 耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3618118B2 (ja)

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