JP3618118B2 - 耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法、とくに缶蓋材を缶胴材と巻き締め加工して腐食環境下に放置した場合にも応力腐食割れが生じることがない耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、缶蓋用アルミニウム素材としては、強度、成形性などの観点から、5082、5182合金などMgを4 %以上含むアルミニウム合金が使用されている。当該アルミニウム合金缶蓋材の製造は、通常、鋳塊を均質化処理した後、熱間圧延により3 〜5mm 厚さとし、冷間圧延、中間焼鈍を経て最終冷間圧延する方法、または熱間圧延で2mm 程度の板厚とし、この板厚で中間焼鈍して最終冷間圧延するか、あるいは熱間圧延のまま最終冷間圧延を行い、板厚 0.4mm以下の硬質板とする方法により行われている。
【0003】
このようにして製造された缶蓋用アルミニウム合金硬質板は、板材を外的環境から保護するため、防食効果の高い高分子樹脂塗料で塗装される。缶に成形する場合、缶蓋用アルミニウム合金硬質板は所定寸法に打ち抜かれ、図1に示すように缶胴部2と巻き締め加工されるが、この際、加工治具との接触により缶蓋部1の外面側の塗膜が削り取られることがある。巻き締め加工によってシーミングウオール部3には円周方向に引張応力が作用するため、缶蓋部の外面に塗膜欠陥が存在した状態で腐食環境に放置されると、シーミングパネル部4からシーミングウオール部3にかけて応力腐食割れを生じる場合がある。
【0004】
腐食環境がつくりだされる状況は、缶に例えば炭酸飲料を充填する場合、充填時の液温は5 ℃程度であり、この状態で缶を保置すると結露が生じ好ましくないため、巻き締め加工後にウオーマー(30 〜40℃の温水吹き付け) を通過させ、缶内容物を加熱することにより結露防止を行っている。ウオーマー内の水質はとくに管理されておらず腐食因子を含む場合もあり、さらにウオーマー内でステンレス鋼のべルト上に缶を倒立させる場合には、缶蓋部がアルミニウムよりも電気化学的に貴なステンレス鋼と接することになる。
【0005】
通常は缶が10分以内の短時間でウオーマー内を通過するため問題は生じないが、充填ライン上で例えば停電などのトラブルが発生すると、缶がウオーマー内に長時間放置されることとなり、とくに塗膜欠陥があると応力腐食割れが発生することとなる。ウオーマー内で割れ発生に至らない場合でも、ウオーマー通過後の乾燥が十分でないままシュリンクパックされると、保管中にシーミングパネル部4からシーミングウオール部3にかけて同様の応力腐食割れが発生し易い。
【0006】
また、缶成形後、高Mgアルミニウム合金硬質板からなる缶蓋部に、強酸性溶液や塩素イオンを含む溶液などの腐食性溶液が付着したまま保管されると応力腐食による亀裂が生じることも経験されている。元来、高Mgアルミニウム合金は応力腐食割れ感受性が高いことが知られており、高Mgアルミニウム合金の応力腐食割れを抑制するために、適量のMn、Cr、BiあるいはCuを添加する方法が提案されている(Corrosion 、Vol.22(1966)、第63頁、住友軽金属技報、Vol.14(1973)、第63頁) が、この方法では上記缶蓋部に生じる応力腐食割れを防止するための十分な対策とはならない。
【0007】
発明者らは、高Mgアルミニウム合金硬質板を缶蓋として使用し、缶胴材と巻き締め加工して缶に成形した後、上記の腐食環境に曝された場合に発生する応力腐食割れの要因、発生機構などについて多角的に検討を行った結果、亀裂発生は、缶蓋材中の結晶粒内と結晶粒界との電気化学的な電位差が大きい場合にきわめて顕著に生じることを見出した。
【0008】
これは、固溶していたMgがβ相(AlMg) として粒界に偏析し易く、偏析したβ相がアルミニウムマトリックスよりも電気化学的に卑であることに起因するもので、応力腐食割れを防止するには、材料中の粒内と粒界の電気化学的な電位差を小さくする必要があり、そのためには、β相の析出状態を制御して粒内と粒界の電気化学的な電位差を等しくするようなβ相の析出状態を得ることが好ましいことを解明した。
【0009】
β相は粒界、アルミニウムマトリックスとAl−Mn 系化合物、Al−Cr 系化合物などの第2相粒子との界面、転位などの格子欠陥に析出し易い。粒界のない缶蓋材を工業的規模で製造するのは現在の技術水準では困難であるから、粒界におけるβ相の析出を抑制するためには、粒界以外にβ相が析出し易い場所をつくってやることが必要であり、Mn、Crなどの添加は、アルミニウムと化合物を形成させ第2相粒子として析出させることによりβ相の析出場所を提供する観点から有効ではあるが、缶成形後の巻き締め部における缶蓋材の応力腐食割れを防止するために十分でないことは前記のとおりである。
【0010】
発明者らは、高Mgアルミニウム硬質板におけるβ相の析出機構について検討を重ねた結果、硬質板にみられる格子欠陥である転位とβ相析出とが深く関連し、転位密度が硬質板の応力腐食割れに顕著に影響を及ぼすことを見出した。また、飲料缶などにおいては、内容物が充填されたのち半年ないし1年間程度保管されることがあり、この間、硬質板の製造直後には固溶していたMgが、室温放置中にβ相として析出し耐応力腐食性を劣化させることがあることも判明し、Mgの固溶量の制御も高Mgアルミニウム合金硬質板の耐応力腐食割れ性を向上させるために重要であることがわかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高Mgアルミニウム合金硬質板の応力腐食割れ性に関する上記予備検討に基づいてなされたものであり、その目的は、缶胴部と巻き締め加工される缶蓋部として使用された場合、缶蓋部に腐食性溶液が付着したまま保管されたり、内容物の充填ラインにおいて、缶蓋部が例えばステンレス鋼のようにアルミニウム合金より電気化学的に卑な金属と長時間接触しても、巻き締め部に応力腐食による亀裂が生じることがない耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による耐応力腐食割れ性に優れたアルミニウム合金硬質板は、Mg:3.0〜6.0%を含み、必要に応じてMn:0.1〜1.0%、Cu:0.02〜0.5%のうちの1種または2種を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、冷間圧延されたアルミニウム合金硬質板であって、205℃で10分間の塗装焼付相当熱処理後の転位密度が103 μm/μm3 以上、耐力が250MPa以上であることを特徴とする。
【0013】
また、上記の目的を達成するための本発明による耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、冷間圧延されたアルミニウム合金硬質板を製造する方法であって、上記組成のアルミニウム合金を通常の方法で造塊し、得られた鋳塊を、均質化処理、熱間圧延、必要に応じて冷間圧延を行って所定の板厚とし、ついで中間熱処理を行い、得られたアルミニウム合金板の導電率を23%IACS以上とした後、50%以上の圧延率で最終冷間圧延し、0.5℃/秒以上の昇温速度で200〜350℃の温度域に加熱して1分間以下保持したのち0.5℃/秒以上の冷却速度で冷却し、205℃で10分間の塗装焼付相当熱処理後の転位密度を103 μm/μm3 以上、耐力を250MPa以上とすることを特徴とする。
【0014】
本発明のアルミニウム合金硬質板の組成について説明すると、Mgは缶蓋材として必要な強度を付与するための基本的合金成分であり、添加量は缶蓋材に要求される強度レベルに応じて調整されるが、3 %未満では塗装焼付後の強度が低くなり過ぎて缶蓋材として適しない。6 %を越えて添加すると、熱間圧延時に割れが生じ易くなり工業的生産が困難となる。従って、好ましい含有範囲は3 〜6 %、より好ましくは3.5 〜6 %とする。
【0015】
選択成分として添加されるMnは、Mgと同様強度向上に寄与し、とくに塗装焼付時の強度低下を抑える効果がある。また、耐応力腐食割れ性を改善する効果も有する。Mnの添加量は缶蓋材に要求される強度レベルに応じて調整されるが、0.1 %未満の添加では上記の効果が十分ではなく、1 %を越えると、圧延時に割れが生じ易くなり工業的生産が困難となり、また造塊時に不純物のFeと反応して形成されるAl−Fe−Mn系化合物が粗大化して、缶蓋材に要求される曲げ加工性や張出し加工性を劣化させる。さらにMgの固溶限を低下させβ相の析出を促進させることとなる。従って、Mnの好ましい添加範囲は0.1 〜1.0 %、より好ましくは0.3 〜0.8 %の範囲とする。
【0016】
Cuは、Mnと同様、強度および耐食性の向上に寄与する。添加量は缶蓋材に要求される強度レベルにより調整されるが、0.02%未満の添加ではその効果が十分ではなく、0.5 %を越えて添加すると、熱間圧延時に割れが生じ易くなり工業的生産が困難となる。従って、好ましい添加範囲は0.02〜0.5 %、より好ましくは0.05〜0.3 %の範囲とする。不可避的不純物として混入するFe、Siは、それぞれ0.5 %以下であれば缶蓋材としての性能を損なうことはない。0.5 %を越えるとAl−Fe−Mn系化合物の粗大化を招き、あるいは粒界にSi系化合物が析出して成形性を劣化させる傾向がある。なお、通常のアルミニウム合金と同様、例えば0.2 %以下のTi、0.05%以下のB、0.01%以下のBeを添加して合金板の性能を改善することができる。
【0017】
本発明のアルミニウム合金硬質板における必須構成要件となる転位密度について説明すると、転位は冷間圧延により結晶粒内に導入されるもので、本発明においては、β相を粒内に均一に析出させるために、転位密度を制御し10μm/μm以上とすることが重要である。転位密度がこの範囲の場合、β相の析出に伴う粒界と粒内の電気化学的電位差が小さく、室温時効においてβ相の偏析を生じることがなく、粒界と粒内の電気化学的電位差は小さいまま保たれる。塗装焼付後の硬質板の転位密度が10μm/μm未満の場合には、β相析出に伴う粒界と粒内の電位差が大きく、応力腐食割れが生じ易くなる。また転位密度が低いと、室温時効の際にβ相が粒界に析出し易くなる。
【0018】
本発明においては、最終冷間圧延直前の材料の導電率を23%IACS以上にしておくのが好ましく、応力腐食割れ発生の抑制効果を与える。導電率が23%IACS以上の材料ではMgの固溶度が低いため、Mgが室温時効中にβ相として析出し粒界に偏析してくることが避けられ、応力腐食割れの発生が抑制される。一方、最終冷間圧延直前の導電率が23%IACS未満の材料では、室温時効中に固溶していたMgがβ相として粒界に偏析し、粒内と粒界の電位差を大きくするために応力腐食割れが生じ易くなる。
【0019】
本発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板は、連続鋳造など通常の方法で造塊し、鋳塊を均質化処理した後、熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延して所定の板厚とする。ついで、冷間圧延性や材料の異方性を改善するために中間熱処理を施す。本発明においては、導電率も考慮して、バッチ炉において熱処理を行う場合は350 〜450 ℃の温度領域に0.5 〜5 時間保持する条件、連続焼鈍炉を使用して熱処理する場合は400 〜550 ℃の温度領域に5 分以内保持する条件で中間熱処理を行うのが好ましい。
【0020】
中間熱処理後、最終冷間圧延を行って必要な強度特性を与え転位を導入する。最終冷間圧延は圧延率50%以上で行うことが必要であり、圧延率が50%未満では、塗装焼付後の耐力が250MPaに達しない場合があり、十分な転位密度が得られない場合もある。圧延率を高くし過ぎると、圧延中において板端部の割れが激しくなり、材料の異方性( 耳率など) も大きくなり好ましくない。工業的には90%以下に押さえることが好ましい。
【0021】
最終冷間圧延後、安定化処理として最終熱処理を行う。一般に、Al−Mg 合金硬質板は、冷間圧延されたまま放置すると、室温時効によって材料強度が低下してしまうため、工業的には出荷前に熱処理を行い室温時効による材料特性の変化を抑制している。また塗装焼付時、硬質板の残留歪によるゆがみが発生し、後工程での使用に支障が生じないよう最終冷間圧延後に残留応力除去のための熱処理を行う場合もある。これらの熱処理は安定化処理と言われ、一般的には、昇温速度10〜100 ℃/h程度のバッチ炉を使用して250 ℃以下、例えば150 ℃前後の温度で数時間加熱することにより行われている。
【0022】
しかしながら、本発明に上記従来の安定化処理を適用した場合、昇温時間が長く保持時間も長いために、組織が回復し転位密度を高密度状態に保つことが困難である。転位密度を高密度に保持し、室温時効による材料強度の低下を小さくするには、急速加熱により高温、短時間の熱処理を行うことが必要であり、検討の結果、0.5 ℃/ 秒以上の昇温速度で200 〜350 ℃の温度領域に加熱し、1分間以内保持した後、0.5 ℃/ 秒以上の冷却速度で冷却するのが好ましい熱処理条件であることを見出した。昇温速度および冷却速度が0.5 ℃/ 秒未満の場合もしくは保持時間が1分を越えた場合は、材料の組織が回復して転位密度を高密度に保つことが困難となる。加熱温度が200 ℃未満では、硬質板内部の残留応力を完全に除去することができず、室温時効による強度、応力腐食割れ性などの材料特性の変化も抑制できない。加熱温度が350 ℃を越えると、材料組織の回復が進行して転位密度を高密度状態に保持するのが困難となり、250MPa以上の塗装焼付後耐力を維持することが難しくなる。
【0023】
【作用】
本発明においては、限定された組成のアルミニウム合金硬質板において、最終冷間圧延により導入される転位の密度を10μm/μm以上としてβ相の析出場所を提供し、β相の結晶粒界への析出を抑制して粒界と粒内との電気化学的な電位差を小さくすることにより応力腐食割れの発生が防止される。好ましくは、最終冷間圧延直前の導電率を23%IACS以上としてMgの固溶度を低くし、室温時効におけるβ相の粒界偏析をなくすことにより一層優れた耐応力腐食割れ性を得ることができる。圧延率50%以上の最終冷間圧延および限定された条件の最終熱処理を組合わせることにより、転位密度を上記の高密度に保持して優れた耐応力腐食割れ性を得るとともに、室温時効による材料強度の低下を防ぎ、塗装焼付後250MPa以上の耐力を維持することが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例
表1に示す組成のアルミニウム合金を通常の半連続鋳造法により造塊し、500 ℃で8時間の均質化処理を行い、その温度で熱間圧延を実施し板厚3mm とした。熱間圧延の終了温度は310 ℃±10℃であった。ついで冷間圧延を施した。冷間圧延の加工度は最終冷間圧延( 圧延率55〜85%) で最終板厚0.45mmの硬質板を得ることを考慮して調整された。
【0025】
冷間圧延した板材は中間熱処理された。中間熱処理は、バッチ炉(BAT 、昇温速度約30℃/h) および連続焼鈍炉(CAL、昇温速度および冷却速度約30℃/s) を使用して行われた。続いて最終冷間圧延を行い、最終板厚0.45mmの硬質板を得た。最後に、安定化処理として、連続焼鈍炉を用いて最終熱処理を行い、塗装焼付相当の熱処理として205 ℃で10分間の処理を加えた。各試料の中間熱処理条件、最終冷間圧延直前の導電率、最終冷間圧延の圧延率および最終熱処理条件を表2に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003618118
【0027】
【表2】
Figure 0003618118
【0028】
各試料について転位密度、機械的性質を測定し、耐応力腐食割れ性の評価を行った。結果を表3に示す。転位密度の測定方法および耐応力腐食割れ性の評価方法は以下のとおりである。
転位密度の測定:各試料の転位は、透過型電子顕微鏡において、電子線回折スポットの中の(420)による暗視野像で確認した。転位密度はBailey−Hirsch らが提案した方法を参考とした。( コロナ社編「透過電子顕微鏡法」参照) 転位は投影された像であるため、これらの長さをR とすると、実際の長さは(4/ π) ×R で与えられる。従って、転位密度は(4/ π) ×R を( 測定面積) ×( 試料厚さ) で割った値として求められる。なお、試料厚さは等厚干渉縞を利用して測定した。( 丸善編「金属の電子顕微鏡写真と解説」参照)
【0029】
耐応力腐食割れ性の評価:205 ℃×10分の塗装焼付相当熱処理後、圧延方向に対して直角方向に引張試験片を採取した。腐食液( 液組成:NaCl 1000ppm 、クエン酸 0.3%)に試験片の長手方向が約半分浸漬されるようにセットし、試験片に耐力荷重(耐力値×試験片断面積)の60%の引張荷重を負荷した。この状態のまま室温に400h放置し、その間の破断数( 各条件 n=50 で評価) を測定した。また塗装焼付相当熱処理後、室温で1年間放置し、その間の破断数も測定した。
表3にみられるように、本発明に従って製造されたアルミニウム合金硬質板は、いずれも缶蓋材として十分な機械的性質を有し、耐応力腐食割れ性も良好であった。
【0030】
【表3】
Figure 0003618118
【0031】
比較例
表4に示す組成のアルミニウム合金を、実施例と同様、半連続鋳造法により造塊し、この鋳塊を実施例と同様の工程で処理して板厚0.45mmの硬質板とし、実施例と同様、205 ℃×10分の塗装焼付相当の熱処理を行い試料とした。各試料の中間熱処理条件、導電率、最終冷間圧延率および最終熱処理条件を表5に示す。本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0032】
【表4】
Figure 0003618118
【0033】
【表5】
Figure 0003618118
【0034】
上記のように作製された各試料について、実施例と同一の方法で転位密度および機械的性質を測定し、耐応力腐食割れ性の評価を行った。結果を表6に示す。表6に示すように、各試料は機械的性質、耐応力腐食割れ性において缶蓋材として満足すべきものではなかった。とくに試料No.20 および試料No.21 は、MgあるいはCu量が多過ぎるために熱間圧延の途中で割れが発生し試験材を得ることができなかった。
【0035】
試料No.13 は、最終冷間圧延率が50%未満であるため耐力値が不十分であり、転位密度が低いため、室温時効においてβ相の偏析が生じ1年後に破断した。試料No.14 は、最終熱処理における昇温速度および冷却速度が低いため、所定の転位密度が得られず耐応力腐食割れ性が劣っている。試料No.15 は、最終熱処理の温度が高過ぎるために十分な耐力が得られない。試料No.16 は、最終熱処理における昇温速度および冷却速度が低いため、試料No.14 と同様、所定の転位密度が得られず耐応力腐食割れ性が劣っている。試料No.17 は、最終熱処理の保持時間が長いため材料の耐力が低下している。試料No.18 は、最終冷間圧延直前の導電率が小さく固溶したMgが室温時効中に偏析するために、粒界と粒内の電気化学的電位差が大きくなり耐応力腐食割れ性が劣化する。試料No.19 は、Mg量が本発明の範囲より少ないため耐力が十分でない。
【0036】
【表6】
Figure 0003618118
【0037】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、基本的にはMg以外の各種成分を添加することなしに強度、耐応力腐食割れ性ともに優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板が提供され、缶蓋材のコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】缶蓋材と缶胴材の巻き締め部を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 缶蓋部
2 缶胴部
3 シーミングウオール
4 シーミングパネル

Claims (4)

  1. Mg:3.0〜6.0%(質量%、以下同じ)を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、冷間圧延されたアルミニウム合金硬質板であって、205℃で10分間の塗装焼付相当熱処理後の転位密度が103 μm/μm3 以上、耐力が250MPa以上であることを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板。
  2. 前記アルミニウム合金硬質板が、さらにMn:0.1〜1.0%、Cu:0.02〜0.5%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板。
  3. 冷間圧延されたアルミニウム合金硬質板を製造する方法であって、Mg:3.0〜6.0%を含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金を、所定厚さまで圧延して中間熱処理を行い、得られたアルミニウム合金板の導電率を23%IACS以上とした後、50%以上の圧延率で最終冷間圧延し、0.5℃/秒以上の昇温速度で200〜350℃の温度域に加熱して1分間以下保持したのち0.5℃/秒以上の冷却速度で冷却し、205℃で10分間の塗装焼付相当熱処理後の転位密度を103 μm/μm3 以上、耐力を250MPa以上とすることを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  4. 前記アルミニウム合金が、Mg:3.0〜6.0%を含み、さらにMn:0.1〜1.0%、Cu:0.02〜0.5%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項記載の耐応力腐食割れ性に優れた缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
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