JPH07278959A - 繊度の大きいレーヨンフィラメント - Google Patents

繊度の大きいレーヨンフィラメント

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JPH07278959A
JPH07278959A JP6073386A JP7338694A JPH07278959A JP H07278959 A JPH07278959 A JP H07278959A JP 6073386 A JP6073386 A JP 6073386A JP 7338694 A JP7338694 A JP 7338694A JP H07278959 A JPH07278959 A JP H07278959A
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JP
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single yarn
yarn
rayon
original single
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JP6073386A
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English (en)
Inventor
Kazunari Nishiyama
和成 西山
Shuji Takasu
修二 鷹巣
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 物性と均一性に優れた繊度の極めて大きいセ
ルロースモノフィラメントを提供する。 【構成】 スキン層を有する複数のレーヨン原単糸と、
原単糸間にある実質的にセルロースからなるポリマーか
ら構成されている。そのポリマーは原単糸から溶出した
ポリマーから成っており、それらの原単糸は、直接また
はポリマーを介して互いに膠着している。また、それら
の原単糸の占める割合が全断面積の40%以上90%以
下であることを特徴とするレーヨンモノフィラメント。 【効果】 従来得られなかった繊度の極めて大きいもの
(例えば1000〜10000d以上)まで得られる上
に、機械物性も向上しており、かつ、セルロースの特徴
である高弾性率、耐熱性、耐薬品性、生物分解性などの
性質を兼ね備えている。引っ張り強度や曲げ強度、弾性
率が向上している上に、糸長方向の斑が小さく均一性が
良いため、ブラシや芯材、複合強化材として土木、建築
材や農業材など産業資材用に用いられて有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はレーヨンフィラメントに
関する。さらに詳しくは、レーヨンフイラメントの単糸
繊度が数千デニールにも達するものや、強度、弾性率、
耐熱性、耐薬品性、生物分解性などの特性が要求される
産業資材分野への利用が可能になる機械物性に優れた繊
度の大きいレーヨンフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】レーヨン糸は古くから生産されており、
衣料用、産業資材用など広い用途に用いられている。通
常的に製造されている単糸の繊度は1.5〜30デニー
ルのものが多い。特殊な方法で単糸が300〜1100
デニールのものも作ることはできるが、再生時間が極端
に長く必要なことから生産性が極端に低く、またレーヨ
ン糸の物性を担っているスキン層が表層だけにしか生成
され難いために物性が低いものしか得られないなどの理
由で一般的には作られていない。これは、原液(ビスコ
ース)を凝固・再生させる過程で小さい繊度のフィラメ
ントに比較して表面積が相対的に小さく、凝固・再生に
長い時間がかかり、通常のビスコースレーヨンを製造す
る紡糸機では充分な再生がされにくいことによる。これ
を解決する手段として、矩形のノズルを用いて偏平なフ
ィルム状の単糸からなるフィラメントが作られている。
この方法では1000〜8000デニールなどの大きい
繊度のものまで作ることができるが、その形状から容易
に類推できるように、その弾性率や引っ張り強度は小さ
いものしか得られない。いずれにしろ、ビスコースドー
プから直接紡糸して凝固・再生させて得られる糸はその
単糸の表層部分にスキン層が遍在したものしか得られな
い。また、ビスコースドープに添加剤などを加えて単糸
の全領域をスキン層化する方法(例えば、特公昭28−
1407号公報、特公昭43−5174号公報、特公昭
45−24687号公報、特公昭47−3848号公報
など)も多く提案されているが、この方法では凝固・再
生が普通レーヨンに比べて一層遅い傾向になるために、
本発明のような繊度の大きいフィラメントは工業的には
得られない。
【0003】一方、ビスコースコーティングあるいはビ
スコース加工などと言われる後処理方法も提案されてい
るが、この方法では原単糸間の膠着に用いられるポリマ
ーであるセルロースは、別の工程で作られたドープから
再生されるために本発明のフィラメントのように原単糸
が溶剤により減量されないことから、原単糸のスキン層
がほとんどそのまま維持される長所を有するが、反面ド
ープのセルロース濃度を上げにくいことから充填ポリマ
ー部分が粗になりやすい。逆に、ドープの粘度を高くす
ると、ドープの内層部分への浸透がむつかしくなり、内
層に位置した原単糸が膠着しにくいなどのために後で剥
離しやすかったり、特に短繊維を原料に用いると機械物
性の低いものしか得られないなどの欠点があった。
【0004】充填ポリマーとして他のポリマーを用いる
例は、古くから経糸のサイジングなどに通常に用いられ
ているように糊剤を含浸させる方法、ウレタン系樹脂や
エステル系樹脂などを含浸して熱処理する方法などが一
般的にとられている。ポリマーを溶解したドープを含浸
させて原単糸の空隙を埋める意味ではビスコース加工と
同一だが、この場合は充填ポリマーが別の素材から成る
ポリマーであり、後工程や染色などでの考慮が必要な上
に、風合いや物性が大幅に変わり、セルロースの特長で
ある耐熱性や耐溶剤性が損なわれやすいなど問題が多
い。
【0005】単糸を軽く膠着させて麻の風合いに似せる
ための擬麻加工と称される後加工処理でマーセライズ処
理(例えば、特開昭61−47871号公報など)や硫
酸や塩化亜鉛溶液処理が用いられたりしているが、これ
らの処理で得られる糸は膠着の程度の低いものであり、
摩擦などによって単糸の剥離が起き易いものであった。
また、強い硫酸処理など(謂ゆるパーチメント処理やオ
ーガンジー加工と呼ばれるもの)によってはセルロース
を半溶解状態にまですることによってフィルム化や単糸
の溶着を行うことは可能であるが、その制御が難しく、
単糸の形状や性質が大きく変化してしまう。これらの処
理で得られる糸は、本発明のような原単糸の割合や原単
糸の減量率が制御され、スキン層を維持した機械物性の
優れた繊度の大きいフィラメントを得ることは難しく、
糸長方向の均一性が低く、ロット間の物性差が大きい糸
しか得られないという大きな問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
のような問題のない、均一性や機械物性に優れた繊度の
大きなレーヨンフィラメントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、レーヨン
糸の特性、特に繊度の大きいフィラメントの構造とその
均一性、機械物性との関係について鋭意検討を行った結
果、フィラメントの断面構造、特にその原単糸の存在状
態とスキン層の分布状態が均一性や機械強度に極めて大
きく影響することを見いだし本発明に到った。
【0008】すなわち、本発明は、スキン層を有する複
数のレーヨン原単糸と該原単糸間にある実質的にセルロ
ースからなるポリマーから構成されており、(A)上記
ポリマーが上記レーヨン原単糸から溶出したポリマーか
ら成り、(B)上記レーヨン原単糸が、直接または上記
ポリマーを介して互いに膠着しており、(C)上記原単
糸の占める割合がフイラメント全断面積の40%以上9
0%以下であることを特徴とする繊度の大きいレーヨン
フィラメントである。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
言う「レーヨン」とは、いわゆるビスコース法によって
製造された再生セルロース繊維、つまり原料セルロース
(木材パルプやコットンリンターなどが通常用いられて
いる)を前処理して二硫化炭素と反応させてセルロース
ザンテートとなし、苛性ソーダ溶液に溶解したドープを
酸などで再生して得られた繊維を言う。一般に普通レー
ヨン、強力レーヨン、ポリノジックなどの名称で表され
ている。
【0010】「フィラメント」とは、本発明で得られる
1本の繊維状物を言い、下記に示す原単糸の複数本から
構成されている。本発明に言う「原単糸」とは、見かけ
上、海島繊維状を示すフィラメントを構成する島成分の
部分を言い、該島成分が繊維状に該フィラメントの糸長
方向に一定長あるいは実質的に無限に連続して存在して
いるものを言う。ここで言う実質的に無限に連続してい
るとは、一般に用いられている長繊維の意味と同様にヤ
ーンの長さ全体にわたって連続していることを言う。
【0011】本発明に言う「スキン層」とは、普通ビス
コースレーヨン糸で一般的に言われているスキン層と同
一であり、通常用いられている染色方法を用いて簡単に
観察することができる。普通レーヨン糸の場合は単糸の
表層部分のみ、ポリノジック繊維や強力レーヨン糸など
では単糸の全断面積がこの層で占められているものもあ
る。
【0012】「実質的にセルロース」とは、厳密にセル
ロースのみからなるものだけでなく、通常のセルロース
素材に含有されているもの(例えばヘミセルロースと言
われるセルロースの解重合や分解によって生成された成
分など)や製造工程で使用した試薬の微量成分や少量の
柔軟材や油剤などを含有するものも含むものを言う。本
発明に言う「膠着」とは、延伸や手や紙、布での摩擦、
あるいは水に浸漬した時に各原単糸がばらばらにならな
い状態のことを言い、直接またはポリマーを介して相互
に分離しないようになっている状態であたかも溶融して
接着したような性状を示していることを言う。
【0013】本発明のフィラメントの構造やその構成す
るレーヨン原単糸は、肉眼や、断面をそのまま光学顕微
鏡でみても観察できないが、その断面をスキン染色した
後に光学顕微鏡などを用いて200〜300倍程度に拡
大すれば明瞭に観察される。また、高倍率の電子顕微鏡
を用いてその断面を観察することでも見る事ができる。
【0014】本発明のフィラメントにレーヨン原単糸が
占める割合は40%以上90%以下であることが本発明
の特徴である。このレーヨン原単糸が占める割合が40
%未満(言い換えれば、後述のように溶剤による原単糸
の減量率が60%より大きい場合)であっても用いる原
単糸の種類によっては、本発明の効果が得られる場合も
あるが、この場合は原単糸のスキン層の破壊が大きい部
分が発生しやすく、フィラメントの機械物性が下がった
り、糸長方向に物性の斑が発生しやすくなる傾向にな
る。また、90%より大きいと(言い換えれば、原単糸
の減量率が10%より小さい場合)原単糸間の接着力が
小さい部分が発生しやすく、フィラメントの剥離が起こ
りやすい傾向になる。
【0015】本発明のフィラメントはその内部の原単糸
にもスキン層が存在し、フイラメント全体にひろく分布
しているのが特徴である。このことは高い機械強度を発
現することに寄与している。つまり、普通ビスコースレ
ーヨン糸の機械強度を担っている部分はそのスキン層部
分の構造に依っており、この部分の占める割合が大きい
ほど機械強度が大きい傾向が一般的にも知られている。
このスキン層部分が少なかったり、またはこの部分の構
造に欠陥が多かったりすると充分な機械強度が得られに
くい傾向がある。
【0016】スキン層の割合の大きい原単糸を用いる
と、より機械物性の高いフィラメントを得ることができ
ることは容易に想起できる。例えば強力レーヨンやポリ
ノジックと一般に呼ばれるようなその断面が全部スキン
層からなる原単糸も用いることができるが、使用される
用途や要求物性に合わせて選択されて良い。本発明のフ
ィラメントには、上記のようにスキン層を維持した原単
糸が大きい割合で存在することが特徴である。特に、フ
イラメント内層部分に位置している原単糸はそのスキン
層がリング状になって存在する割合が多い。
【0017】スキン層を有する原単糸の割合は多い方が
好ましいことは当然推察されるが、その割合が概ね20
%以上であれば本発明の効果は充分に得られる。20%
未満でも本発明の効果は得られるが、機械物性などの面
からは、この割合が大きい方が好ましい。また、90%
より大きいものは原単糸の膠着力が低くなる傾向になる
ため避けた方が良い。機械物性、原単糸膠着性、均一性
など総合的には、30%以上75%以下のものが一層好
ましい。
【0018】機械強度を大きくするためには、ポリマー
が充填される部分にある原単糸のスキン層は緻密な構造
である方がより好ましい。しかし、ポリマーが充填され
る部分にある原単糸のスキン層の構造程が緻密なもので
なくとも(スキン染色法で染色されない構造)、スキン
層のもつ割合の大きい原単糸であれば本発明の効果は充
分に得られる。
【0019】本発明のフィラメントの機械物性が優れる
理由は、従来の表面から凝固して得られる繊度の大きい
ビスコースレーヨンフィラメントと比較すると、そのス
キン層の占める割合が大きいものが容易に得られること
によっている。ビスコース原液を凝固させて得られる従
来のビスコースフィラメントでは、スキン層はその表層
部分のみに分布した構造のものになり、スキン層の占め
る割合が相対的に小さいものになる。特殊な添加剤や凝
固方法を用いてスキン層の割合を多くすることも不可能
ではないが、凝固再生に極端に長い時間が必要であり工
業的にはとても採用できないものである。また、その構
造も本発明のフィラメントの構造とは異なったものが得
られる。
【0020】本発明のレーヨン原単糸は、相互に直接ま
たは実質的にセルロースからなるポリマーを介して膠着
している。本発明のレーヨン原単糸間にあるポリマーは
原単糸を構成するポリマーの一部分であることが特徴で
ある。類似の構造のものを得る方法としていわゆるビス
コースコーティング法などの様にポリマーを溶解した溶
液(ドープ)を糸にコーティングしたり含浸させる方法
が古くより知られている。しかし、かかる方法で作られ
たフィラメントはその製法から容易に推察されるよう
に、ドープ粘度が高いために内部への均一な含浸が難し
く内層部分が充分に膠着されなかったり、部分的に膠着
が弱い所が生成する傾向がある。特に、原単糸間に充填
されるポリマーの構造を緻密化するためにはポリマー濃
度は高い方が好ましいが、そうするとドープ粘度はます
ます高いものとなり、原単糸間に充填されるポリマーの
構造の不均一性が増大してしまう。逆に、それを防ぐ目
的でポリマー濃度を下げたり、ポリマーの重合度の小さ
いものを用いたりすると含浸の均一性は向上するもの
の、得られるフィラメントの機械物性の向上が充分に得
られず、また膠着力が小さいことから剥離しやすいもの
になってしまうなどの欠点を有している。また、このよ
うな方法は、本発明の方法と異なり原単糸が減量されて
おらず、単に原単糸同志の空間を別のセルロースポリマ
ーで埋めた構造のものしか得られていない。
【0021】本発明のフイラメントのように、レーヨン
原単糸の表面の一部が溶剤で減量されたセルロースが充
填ポリマーとしてこの原単糸を膠着した構造をとってい
ることは、原単糸間、および充填ポリマーと原単糸間と
の接着力を大きくする効果が大きいと考えられる。つま
り、原単糸の表面に比べて減量された原単糸の表面はそ
のポリマーの表面活性が大きく、膠着力が格段に大きく
なっているためと考えられる。
【0022】本発明において、フイラメント内層部分の
レーヨン原単糸の減量率が、表層部分のレーヨン原単糸
の減量率に比べて相対的に小さい構造もつことが一層好
ましい。このことは、引っ張り強度と表層の剥離強度の
両方の性能を向上させる上でも好ましい。つまり、ビス
コースレーヨンの引っ張り強度はそのスキン層部分が担
っているために、その表層の減量率の小さい原単糸が多
いほど引っ張り強度は高くなり、逆に接着力が低下す
る。単糸の表層の減量率の大きいフィラメントは原単糸
間の接着力は高く剥離しにくいが、スキン層の割合が相
対的に減少するために機械強度の向上の程度が下がる傾
向になる。また、曲げ強度に対する効果もこの複合され
た構造に起因していると考えられるからである。
【0023】本発明のレーヨン原単糸の繊維軸方向はフ
ィラメントの糸軸方向と同一ではない方が好ましい。原
単糸の繊維軸方向がフィラメントの糸軸方向と同一方向
に並んだ構造を持つ場合は引っ張り強力は大きくなる
が、反面フィラメントが繊維軸方向に摩擦される場合な
どには原単糸がフィブリル状に剥がれやすくなる。ま
た、各原単糸の欠点や欠陥が該フィラメントの欠陥にな
りやすい傾向になるので、各原単糸の繊維軸方向はフィ
ラメントの糸軸線に対して斜行した構造のものにするの
が好ましい。このような構造は本発明の処理を行う前の
原料ヤーンを予め撚糸することで容易に得られる。この
ように原単糸をフイラメントに対し斜行させることで、
得られるフィラメントの機械物性や形態の均一性を向上
させることができるので好ましい。特に、マルチフィラ
メントヤーンを原料に用いるとスパイラル状に配置され
た構造となすことができ、その効果も一層顕著に得られ
るので好ましい。
【0024】本発明の原料に用いるレーヨン原単糸は長
繊維、短繊維あるいは、長繊維と短繊維が複合されたも
ののいずれであってもよい。原単糸は糸長方向に一定長
連続しているものであれば良いが、本発明の効果を充分
に発揮するためには、その長さは20mm以上のものが
好ましい。特に、全糸長にわたって連続しているもの
(長繊維)は一層好ましい。繊度が特に大きいフィラメ
ントを安価に造るためには、短繊維が好ましい。短繊維
は工業的に安価に大量生産が可能であり、また紡績工程
で繊度の大きいヤーンを造りやすい点で有利であり、好
ましい。機械強度や均一性の高いフィラメントを得るた
めには、長繊維が好ましい。その理由は、本発明のフィ
ラメントの機械強度はレーヨン原単糸のスキン層部分が
多く担っているからであり、このスキン層がフィラメン
トの糸軸方向に連続している長繊維の方が高い機械強度
を示す傾向になることは自ずと理解されよう。
【0025】フィラメントの偏平度は1以上30以下の
ものが好ましい。ここで言う偏平度とは、フィラメント
の断面形状において最長の長さをa、最短の長さをbと
したとき、a/bで表される値である。偏平度を大きく
すると特にフィラメントの弾性率が相対的に小さいもの
になる傾向になる。本発明のフィラメントの繊度は特に
限定されるものではないが、一般的には20〜1000
00デニール、好ましくは100〜10000デニール
であり、用途に合わせて設計されてよい。
【0026】本発明のレーヨン原単糸の繊度は特に限定
されるものではないが、1〜30デニールのものが好ま
しい。特に1.5〜5デニールのものが好ましい。原単
糸の繊度が過度に大きいと表面積が相対的に小さくな
り、原単糸間の膠着力が相対的に小さいものが得られや
すくなる傾向になるため、後で原単糸間の剥離が生じや
すくなるので好ましくない。原単糸の繊度が過度に小さ
いと、表層に位置した原単糸が完全に溶解してしまった
り、原単糸の結晶構造が破壊されたりしやすくなり、物
性が低下しやすい。
【0027】以下に本発明のフィラメントの製造方法の
一例について述べる。具体的な条件などは後述の実施例
が参考になる。本発明のフィラメントは、複数のレーヨ
ン原単糸から構成されたヤーンの原単糸の表層部を部分
的に溶解して、その減量分のポリマーを空隙の充填に充
てることによって得られる。
【0028】その手段としては、例えばまず原単糸のセ
ルロースを溶解する能力を有する溶剤を用いて浸漬した
後、次いで別に準備した温度、濃度の異なる同種の溶剤
を調整して、これに再度原単糸を浸漬し、部分的に溶解
した状態となし、その原単糸の溶解したポリマー部分
(溶液状またはゲル状となって流動性を有する状態にな
っている部分)を原単糸間の空隙部分に移動させた後に
再凝固させるという多段法によっても得られる。
【0029】用いる溶媒は再生セルロースを直接溶解あ
るいは膨潤する機能を有するものの中から処理条件や装
置に合わせて選択されてよい。これらの溶媒としては、
鉱酸系、有機溶媒系、錯塩形成系、誘導体形成系など多
くのものが既に知られており、例えば塩酸、硝酸、硫
酸、燐酸、塩化亜鉛、N−メチルモルホリン−N−オキ
サイド(以下、NMMOと略称する)、二酸化硫黄/ア
ミン、二酸化窒素/ジメチルスルホキサイド、ジメチル
アセトアミド/塩化リチウム、ロダンナトリウム、ロダ
ンカルシウム、銅アンモニア錯塩水溶液(いわゆるシュ
バイツアー溶液)、銅エチレンジアミン錯塩水溶液、
N,N−ジメチルホルムアミド/二酸化窒素、ジメチル
スルホキサイド/パラホルムアルデヒドなど現在知られ
ているセルロース溶媒の中から選択されてよいが、溶媒
それぞれに溶解能や粘度、凝固条件などが異なるため製
造条件や適用する装置の特性に合わせて選択されるべき
である。より好ましいものはセルロース溶解能が高い、
溶媒成分が少ない、溶媒の安定性が高い、セルロースの
解重合性が少ないなどの性質のものが適する。
【0030】しかし、工業的に実施するには、溶媒の安
全性(可燃性や毒性など)や溶媒の安定性の高いものが
好ましく、溶媒の回収、再利用を考慮すれば凝固や再生
の際に試薬が分解したり、化学反応を伴わないものを選
択することが好ましい。また、単一組成の溶媒やその水
溶液であるものが好ましく、アミンオキサイド系の溶媒
(例えばNMMOと水との混合液など)や鉱酸の水溶液
(例えば燐酸、硫酸など)などが好ましい。セルロース
の膨潤や溶解性能が条件によって臨界的に変化するよう
な溶媒系、例えばNMMOと水の混合液などが特に好ま
しい。なお、鉱酸系の溶媒などのようにセルロースの溶
解性は大きいが解重合性も強い溶媒を用いる場合には条
件の設定は特に留意して行うことが肝要である。
【0031】本発明のフィラメントの製造方法におい
て、多段階で処理する場合、最初に含浸させる溶媒の組
成はセルロースの溶解能力がほとんど無いか、または低
い条件(低濃度)で含浸させる方が好ましい。これによ
って、含浸させる溶媒の粘度がドープにして含浸させる
方法に比べて非常に低いものを用いることができるので
含浸が容易でかつ均一性を格段に向上させることができ
る。
【0032】次に、含浸した溶媒の組成をセルロースを
強く溶解または膨潤させる条件(高濃度)に移行させて
原単糸表層部分の減量と原単糸間へのポリマーの充填を
行う。これによって、フイラメント内層部分に位置する
原単糸の膠着力を大幅に向上させることができる。この
時に、見かけ上濃度が高く、かつ重合度の高いドープの
状態を動的に生成していると考えられるが、短い時間で
の動的変化であるためにその機構を解明するには至って
いない。その後、原単糸から溶け出して原単糸間に充填
されたポリマーを凝固させて原単糸を接着させる。用途
や要求特性に応じて処理工程中で適宜に延伸などの処理
が行われてもよい。得られたフィラメントは、常法によ
り精練、乾燥を行う。精練、乾燥の方式は用いられる用
途に合わせて、通常再生繊維の製造で用いられている方
法(例えば綛式や、連続式など)を用いて行われて良
い。
【0033】
【実施例】以下に本発明の一実施例を記載し、本発明を
具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限する
ものではない。なお、百分率は特に断らない限り重量に
よるものである。本発明に記載された各物性の測定方法
について以下に説明する。 (1)強度、弾性率 JIS−L1013(1981)に従い、糸長25c
m、引っ張り速度20cm/分で測定し、そのS−Sチ
ャートから計算する。 (2)原単糸の占める割合、スキン層比率 スキン染色を施したフィラメントの断面の拡大写真を、
画像処理技術を用いて画面に点の集合として移し、各点
を座標に変換してデータを処理することで定量化する。
フィラメントの断面積に対する百分率で表示する。 (3)耐剥離性 フィラメントを10mmの長さに切ったもの100本を
200ミリリットルの水に分散しミキサーで5分間撹拌
した後、そのフィラメントの状態を拡大して観察し、フ
ィブリル状に剥離した部分のないフィラメント数を表示
した。数値が小さい程耐剥離性が高いことを示す。 (4)均一性 フィラメントを1メートル(m)以上の間隔で任意に5
0点採取し、その強度を(1)の方法で測定し、その
(最大値−最小値)の平均値を百分率(%)で表示し
た。数値が小さいほど均一性が高いことを示す。
【0034】
【実施例1】ビスコースレーヨン普通糸(600d/1
00f、撚数80回/m、旭化成工業(株)製)を原料
糸として用いた。ヤーンを綛に巻取り、NMMOの60
%水溶液に80℃で10分間浸漬した後、綛から連続的
に解除しながら90℃のNMMO85%水溶液に20秒
間浸漬した後、直ちに水槽に浸漬して凝固させた。次い
で常法に従って、精練、乾燥を行い、モノフィラメント
を得た。得られた糸は各原単糸が完全に接着しており、
各原単糸の剥離は全く見られなかった。原単糸の占める
割合は77%、スキン層の占める割合は39%であっ
た。本フィラメントの断面をスキン染色して拡大した状
態をトレースしたものを図1に示す。各原単糸の一部分
が減量されているが、スキン層はその大部分が残ってい
ることが明瞭にわかる。物性などは表1に示したよう
に、良好なものであった。
【0035】
【実施例2】ビスコースレーヨン普通糸(600d/1
00f、撚数80回/m、旭化成工業(株)製)を4本
合撚し、2400d/400fのヤーンを作製した。後
撚数は200回/mに調整した。ヤーンを綛に巻取り硫
酸の45%水溶液に−10℃で10分間浸漬した後、綛
から連続的に解除しながら−20℃の硫酸58%水溶液
に10秒間浸漬した。ついで、直ちに水槽に浸漬して凝
固させた。その後、常法に従って、精練、中和、乾燥を
行い、モノフィラメントを得た。得られた糸は各原単糸
が完全に膠着しており、各原単糸の剥離は全く見られな
かった。原単糸の占める割合は58%、スキン層の占め
る割合は25%であった。本フィラメントの断面の形状
は実施例1と同様に、原単糸の一部分が減量されている
が、スキン層は内部まで分布しているものであった。ま
た、得られたフィラメントの表層付近にある原単糸の表
層部分の減量率が内層のそれに対して相対的に大きいも
のであった。物性などは表1に示したように、良好なも
のであった。
【0036】
【比較例1】ビスコースドープ(セルロース8.0%、
苛性ソーダ6.0%、γ価40)を紡糸ノズルから直接
凝固液(硫酸11%、硫酸ナトリウム20%、硫酸亜鉛
1.0%、温度55℃)に押し出して単糸繊度が100
0デニールのセルロースフィラメントを紡糸した。凝固
液槽は約12mのものを用い、凝固液中の浸漬時間が1
分になるようにして、紡糸速度10m/分で綛枠に巻取
った。次いで、常法により精練、乾燥を行った。得られ
たモノフィラメントの断面をスキン染色して拡大した状
態をトレースしたものを図2に、物性などを表1に示し
た。スキン層の占める割合は11%であった。この糸
は、その断面に存在するスキン層が表層部分のみに偏在
しており、本発明のフィラメントとはその分布のしかた
が異なっており、また、その物性も本発明よりも低いも
のであった。
【0037】
【比較例2】NMMOの60%水溶液に浸漬することな
く、綛から連続的に解除しながら直接、90℃のNMM
O85%水溶液に40秒間浸漬した他は実施例1と同様
にして、フィラメントを得た。このフィラメントの原単
糸の占める割合は85%、スキン層の占める割合は40
%であったが、その構造は外層部分の原単糸はその原形
が認められない程に溶解しているものの、内層部分への
充填が充分ではなく中央部分の原単糸の中にはほとんど
膠着していないものもあった。そのため、延伸破断した
フィラメントの中央部分にはヒゲ状の原単糸がそのまま
現れた破断面が多く見られるものであった。また、その
物性は表1に示すように満足なものではなかった。
【0038】
【比較例3】10℃の硫酸60%水溶液に10秒間浸漬
した他は実施例1と同様にしてモノフィラメントを得
た。このフィラメントの原単糸の占める割合は35%、
スキン層の占める割合は16%であったが、その構造は
外層部分の原単糸はその原形が認められない程に溶解し
ており、内層部分の原単糸のスキン層もリング状を呈し
ていないものがほとんどであった。また、その物性など
は表1に示すように満足なものではなかった。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】本発明のモノフィラメントは実質的にセ
ルロースのみからなり、従来得られなかった繊度の極め
て大きいもの(例えば1000〜10000d以上)で
ある上に、機械物性も向上しており、かつ、セルロース
の特徴である高弾性率、耐熱性、耐薬品性、生物分解性
などの性質を兼ね備えている。
【0041】本発明のモノフィラメントは原単糸の占め
る割合が多く、またスキン層の比率もが大きいため、ビ
スコースから直接紡糸した糸に比べてその物性が大幅に
向上しており、特に引っ張り強度、弾性率が大きく、糸
長方向の斑が小さく均一性が良いため、ブラシや芯材、
複合強化材として土木、建築材や農業材など産業資材用
に用いられて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のフィラメントをスキン染色
して拡大した状態をトレースした断面図。
【図2】比較例1のフィラメントをスキン染色して拡大
した状態をトレースした断面図。
【符号の説明】
1 フィラメントの輪郭線 2 スキン層(黒色部分) 3 原単糸 4 充填ポリマー層

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スキン層を有する複数のレーヨン原単糸と
    該原単糸間にある実質的にセルロースからなるポリマー
    から構成されており、 (A)上記ポリマーが上記レーヨン原単糸から溶出した
    ポリマーから成り、 (B)上記レーヨン原単糸が、直接または上記ポリマー
    を介して互いに膠着しており、 (C)上記原単糸の占める割合がフイラメント全断面積
    の40%以上90%以下であることを特徴とする繊度の
    大きいレーヨンフィラメント。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019178433A (ja) * 2018-03-30 2019-10-17 東洋紡Stc株式会社 改質セルロース繊維
CN111035143A (zh) * 2019-12-19 2020-04-21 安徽诚德刷业有限公司 一种可降解复合型环卫刷丝及其生产方法
US11338475B2 (en) * 2014-06-18 2022-05-24 Daicel Polymer Ltd. Fiber-reinforced resin composition

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