JPH07278943A - 芯鞘中空複合繊維用紡糸口金 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【構成】 ２種の異なる紡糸成分液Ａ、Ｂを芯鞘型に複
合紡糸するための芯鞘中空複合繊維用紡糸口金であっ
て、上部にＡ成分用の吐出誘導孔９を有し、下部に複合
流の導入孔５と不連続部１２を有するスリットから構成
されるオリフィス４を有する下口金板１と、Ｂ成分用の
有底で底面にキャピラリー吐出孔６を有するキャピラリ
ー３及びＡ成分用の案内孔１１を設けた上口金板２とか
らなり、キャピラリー３を複合流となるＡ成分用の吐出
誘導孔９の内壁に密着挿入し、キャピラリーの外周部に
Ａ成分を供給する通路となる切り欠き８を設ける。 【効果】 芯鞘両成分に溶融粘度差の大きいポリマーを
用いても、オリフィスのスリットから吐出される複合ポ
リマーはニーリング現象を起こさず、スムーズに接合
し、中空割れのない優れた品位の芯鞘中空複合繊維を操
業性よく製造することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融粘度の異なるポリ
マーを用い、芯鞘型中空複合繊維を得るための紡糸口金
であって、中空割れ（剥離）の発生しない芯鞘型中空複
合繊維を操業性よく得ることができる紡糸口金に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、多成分からなる芯鞘型中空複合繊
維を製造する紡糸口金は種々提案されており、例えば特
開平4-370213号公報には、芯成分と鞘成分のポリマーを
個々に供給し、これらを合流させた後、複合ポリマーを
口金板の複数の円弧スリットから構成される吐出孔より
吐出させる口金装置が開示されている。この口金装置
は、上部導入板、下部導入板、口金板の順に一体構成さ
れた口金装置であって、上部導入板には芯成分及び鞘成
分のポリマーを個々に供給する供給孔が、下部導入板に
は、芯成分ポリマーを供給孔より導入する異形孔と、異
形孔の周りに、鞘成分ポリマーを供給孔より導入する複
数の丸孔が穿設されており、口金板には、複数の円弧ス
リットから構成される吐出孔が穿設されている。

【０００３】この口金装置によると、口金板の導入口で
芯成分と鞘成分のポリマーが合体合流された後、この複
合ポリマーは、口金板の複数の円弧スリットから構成さ
れる吐出孔より吐出されるため、円弧スリットより吐出
される複合ポリマーは、スリット内周部と外周部とで芯
成分と鞘成分が貼合わされた形で吐出される。そのた
め、芯成分ポリマーの溶融粘度が鞘成分ポリマーの溶融
粘度より低い場合は、円弧スリットより吐出されると同
時に、円弧スリット外周方向へ屈折する現象（ニーリン
グ現象）を起こすため、近接する他の円弧スリットより
吐出されたポリマーと接合することが難しくなり、中空
割れが発生するという問題があった。

【０００４】また、特開平4-65507 号公報には、中部成
分、２つの側部成分からなる３層に積層された中空繊維
を得るための紡糸口金装置が開示されている。この紡糸
口金装置は、口金板の上部の主分配板に個々の導入孔が
設けられているもので、各成分は、個々の導入孔より供
給され、口金板の原液入口で２つの側部成分が中部成分
と合流された後、複合ポリマーは複数の円弧スリットか
らなる紡糸孔より吐出される。この口金装置も、口金板
の原液入口で３成分のポリマーが貼合わされた形で紡糸
孔のスリットから吐出されるため、中部成分のポリマー
の溶融粘度が、２つの側部成分のポリマーの溶融粘度よ
り低い場合には、前記の紡糸口金装置を用いた時と同様
にニーリング現象が起こり、中空割れが発生するという
問題があった。

【０００５】さらに、特開昭59ー192721 号公報には、低
溶融粘度の芯成分と高溶融粘度の鞘成分ポリマーを芯鞘
状に配置し、紡糸孔に導入し、幅、曲率、不連続部の長
さを規定した円弧スリットからなる吐出孔より、吐出量
を規定しながら吐出させ、前記のニーリング現象を活用
して高い中空率を有する中空繊維を得る方法が開示され
ている。しかしながら、この方法により紡糸しても、ス
リット内周部と外周部とで芯成分と鞘成分が貼合わされ
た形でポリマーが吐出されるため、円弧スリットの形状
を工夫しても芯成分と鞘成分ポリマーの溶融粘度差が大
きい場合は、前記同様に中空割れの発生した繊維とな
り、紡糸操業性も低下するという問題があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したよ
うな問題点を解決し、芯成分ポリマーの溶融粘度が鞘成
分ポリマーの溶融粘度より低い場合や芯成分と鞘成分ポ
リマーの溶融粘度差が大きい場合であっても、複合ポリ
マーがスリットからなるオリフィスより吐出された際に
中空割れを発生しない芯鞘中空複合繊維を操業性よく紡
糸することができる紡糸口金を提供することを技術的な
課題とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、芯成分を吐
出するキャピラリー吐出孔とオリフィスのスリットを配
置する位置を考慮し、かつ芯成分ポリマーが鞘成分ポリ
マーの中に包みこまれるような形で、ポリマーをスリッ
トからなるオリフィスより吐出させると、ニーリング現
象を起こすことがなく、中空割れのない芯鞘中空複合繊
維を操業性よく紡糸できることを見い出し、本発明に到
達した。

【０００８】すなわち、本発明は、２種の異なる紡糸成
分液Ａ、Ｂを芯鞘型に複合紡糸するための紡糸口金にお
いて、上部にＡ成分用の吐出誘導孔を有し、下部に複合
流の導入孔と不連続部を有するスリットから構成される
オリフィスを有する下口金板と、Ｂ成分用の有底で底面
にキャピラリー吐出孔を有するキャピラリー及びＡ成分
用の案内孔を設けた上口金板とからなり、キャピラリー
を複合流となるＡ成分用の吐出誘導孔の内壁に密着挿入
し、キャピラリーの外周部にＡ成分を供給する通路とな
る切り欠きを設けた口金であって、かつ下記の（1)、
(2) 、(3) の構成を有することを特徴とする芯鞘中空複
合繊維用紡糸口金を要旨とするものである。 (1) 前記キャピラリーのキャピラリー吐出孔をキャピラ
リー中心点とキャピラリー誘導孔の内壁の間でキャピラ
リー中心点を含まないように設ける、(2) 前記下口金板
に穿設したオリフィスを構成するスリットの不連続部の
内縁部両端と、スリットで囲われる各空間部の中心点と
のなす角度域Ｋから外れた位置に、キャピラリー吐出孔
を配置する、(3) オリフィスのスリット内縁部で、キャ
ピラリー吐出孔の中心点とキャピラリー中心点とを結ぶ
直線α上に、キャピラリー吐出孔数と同数の凸部を設け
る。

【０００９】以下、本発明を図面により詳細に説明す
る。図１は、本発明の紡糸口金の一実施態様を示す断面
図（キャピラリーは切断せず）であり、図２は図１のＸ
−Ｘ断面図、図３は図１のＹ−Ｙ断面図であり、図４
（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）はオリフィスを構成す
るスリットの不連続部の内縁部両端と、スリットで囲わ
れる各空間部の中心点とのなす角度域Ｋを示す模式図、
図５（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、直線αとキャピラリー
吐出孔及びオリフィスのスリット内縁部に設ける凸部の
配置を示す模式図、図６（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は、図
５（ａ）、（ｂ）、（ｃ）に示したオリフィスを用いて
得られる芯鞘中空複合繊維の断面模式図である。

【００１０】図１は、図５（ａ）の模式図に示すよう
に、２つの不連続スリットの内縁部で、キャピラリー吐
出孔の中心点とキャピラリー中心点とを結ぶ直線α上
に、２つの凸部を設けた紡糸口金の例である。下口金板
１には、上部にＡ成分用の吐出誘導孔９が設けてあり、
吐出誘導孔９の下部には、Ａ成分とＢ成分が合流する導
入孔５及び複合流が吐出されるオリフィス４が穿設され
ている。上口金板２は、Ｂ成分用のキャピラリー誘導孔
７とキャピラリー吐出孔６ａ、６ｂを有する有底のキャ
ピラリー３と、間隙10を介して吐出誘導孔９と連通する
Ａ成分用の案内孔11を有しており、キャピラリー３は下
口金板１のＡ成分用の吐出誘導孔９の内壁に密着挿入さ
れている。キャピラリー３の下部の外周部には、Ａ成分
を供給する通路となる複数の切り欠き８が設けてある。

【００１１】本発明の芯鞘中空複合繊維用紡糸口金にお
いては、図２に示すように、キャピラリー吐出孔６（６
ａ、６ｂ、・・６ｎ）は、キャピラリー３の中心点Ｍとキ
ャピラリー誘導孔７の内壁13との間でキャピラリー３の
中心点Ｍを含まないように設ける必要がある。さらに、
図４に示すように、下口金板１に穿設したオリフィス４
を構成するスリット４ａ、４ｂ、・・４ｎの不連続部12の
内縁部両端イ、ロと、スリットで囲まれる各空間部の中
心点Ｐとのなす角度域Ｋから外れた位置に、キャピラリ
ー吐出孔６ａ、６ｂ、・・６ｎを配置するとともに、図５
に示すように、オリフィス４のスリット内縁部で、キャ
ピラリー吐出孔６の中心点とキャピラリー中心点Ｍとを
結ぶ直線α上に、キャピラリー吐出孔数と同数の凸部Ｑ
を設ける必要がある。

【００１２】このように、Ａ成分ポリマーを供給する通
路としてキャピラリー３の外周部に切り欠き８を設け、
スリットの位置を考慮してキャピラリー吐出孔６と凸部
を設けることによって、Ａ成分とＢ成分のポリマーが貼
合わされた形で吐出されることなく、Ａ成分ポリマーの
中にＢ成分ポリマーが島の形で吐出され、導入孔５でＢ
成分ポリマーがＡ成分ポリマーに包みこまれるように合
流した複合ポリマーとなる。そして、この複合ポリマー
がオリフィス４のスリット４ａ、４ｂ、・・４ｎより吐出
される際に、Ｂ成分はスリット内縁部の凸部Ｑより多く
のポリマーが吐出され、スリット不連続部12にはＢ成分
ポリマーが存在しないため、対向するスリット端部より
吐出されたＡ成分ポリマーは、ニーリング現象を生ずる
前に、バラス効果による接合が容易になされ、中空割れ
のない複合繊維が得られる。

【００１３】キャピラリー吐出孔６がキャピラリー中心
点Ｍを含んだり、角度域Ｋ内に存在する場合及びスリッ
ト内縁部の凸部Ｑが、直線αを含まない位置に設けられ
た場合は、Ｂ成分ポリマーがスリット不連続部12に流入
するため、対向するスリット端部より吐出された複合ポ
リマーは、吐出直後にニーリング現象を生じ、隣接する
ポリマーとの接合ができなくなる。そのため、得られる
繊維は、中空割れの発生したバイメタルのＣ形状糸や偏
平糸となり、目的とする芯鞘中空複合繊維を得ることが
できない。また、キャピラリー吐出孔６とスリット内縁
部の凸部Ｑが同数でない場合は、得られる繊維の断面が
歪形状となり品位の劣るものとなる。

【００１４】本発明の芯鞘中空複合繊維用紡糸口金を用
いると、上記のように、導入孔５でＢ成分ポリマーがＡ
成分ポリマーに包みこまれるように合流した複合ポリマ
ーとなり、オリフィスから吐出されるので、Ａ、Ｂ成分
ポリマーの溶融粘度の差の影響を受けにくくなり、溶融
粘度の差の大きいＡ、Ｂ成分ポリマーを組み合わせて紡
糸しても中空割れのない良好な繊維が得られる。さら
に、鞘となるＡ成分ポリマーと芯となるＢ成分ポリマー
のどちらを高溶融粘度ポリマーとしてもよい。

【００１５】本発明の芯鞘中空複合繊維用紡糸口金の各
構成部分については、切り欠き８は、実用上３〜20個設
けることが好ましく、断面形状は、円形や異形形状等、
特に限定されるものではない。また、キャピラリー吐出
孔６の断面形状及び凸部の形状も、円形、多角形やその
他の異形形状等、特に限定されるものではなく、キャピ
ラリー吐出孔６と凸部の個数及び断面積も、ポリマーの
吐出量、芯鞘比率、ポリマーの溶融粘度や溶融粘度差等
により適宜選択すればよい。

【００１６】また、オリフィスの形状は、図４（ａ）〜
（ｄ）に一例を示すように、対向するスリットで構成さ
れ、単成分ポリマーで中空繊維が得られるものであれば
特に限定されるものではなく、したがって、本発明の芯
鞘中空複合繊維用紡糸口金を用いると、中空部が１つ
（図４（ａ）、（ｂ））や複数（図４（ｃ）、（ｄ））
の中空複合繊維や異形断面中空複合繊維等を得ることが
できる。

【００１７】次に、本発明の紡糸口金を用いて、芯鞘中
空複合繊維を紡糸する方法を説明する。まず、Ａ成分ポ
リマーを上口金板２の案内孔11から導入する。導入され
たＡ成分は、連通する間隙10から吐出誘導孔９に導入さ
れ、次いで、キャピラリー３の切り欠き８により、定量
的に壁面側より導入孔５に供給される。一方、Ｂ成分ポ
リマーは有底のキャピラリー３の上端から導入され、導
入されたＢ成分は、キャピラリー誘導孔７を通過し、キ
ャピラリー誘導孔７の先端から角度域Ｋを含まない位置
に配設されたキャピラリー吐出孔６を通って、定量的に
導入孔５に供給される。このとき、Ｂ成分ポリマーはＡ
成分ポリマーに包まれる形でＡ、Ｂ両成分が合流した複
合ポリマーとなり、複合ポリマーは、導入孔５を経てオ
リフィス４のスリットより押し出される。Ｂ成分ポリマ
ーの多くは、スリット内縁部の凸部Ｑより吐出され、各
スリットの端部からはＡ成分ポリマーが吐出され、Ａ成
分ポリマー同士が接合し、図６に示すような中空部を有
する芯鞘中空複合繊維が得られる。

【００１８】

【発明の効果】本発明の芯鞘中空複合繊維用紡糸口金を
用いれば、芯成分と鞘成分に溶融粘度差の大きいポリマ
ーを用いても、オリフィスのスリットから吐出される複
合ポリマーはニーリング現象を起こすことなく、スムー
ズに接合し、中空割れのない優れた品位の芯鞘中空複合
繊維を操業性よく製造することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の芯鞘中空繊維用紡糸口金の一実施態様
を示す断面図（キャピラリーは切断せず）である。

【図２】図１のＸ−Ｘ断面図である。

【図３】図１のＹ−Ｙ断面図である。

【図４】（ａ）〜（ｄ）は、オリフィスを構成するスリ
ットの不連続部の内縁部両端と、スリットで囲われる各
空間部の中心点とのなす角度域Ｋを示す模式図である。

【図５】（ａ）〜（ｃ）は、直線αとキャピラリー吐出
孔及びオリフィスのスリット内縁部に設ける凸部の配置
を示す模式図である。

【図６】（ａ）〜（ｃ）は、図５（ａ）〜（ｃ）に示し
たオリフィスを用いて得られる芯鞘中空複合繊維の断面
模式図である。

【符号の説明】

１ 下口金板 ２ 上口金板 ３ キャピラリー ４ オリフィス ５ 導入孔 ６ キャピラリー吐出孔 ７ キャピラリー誘導孔 ８ 切り欠き ９ 吐出誘導孔 10 間隙 11 案内孔 12 スリット不連続部 13 キャピラリー内壁

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ２種の異なる紡糸成分液Ａ、Ｂを芯鞘型
   に複合紡糸するための紡糸口金において、上部にＡ成分
   用の吐出誘導孔を有し、下部に複合流の導入孔と不連続
   部を有するスリットから構成されるオリフィスを有する
   下口金板と、Ｂ成分用の有底で底面にキャピラリー吐出
   孔を有するキャピラリー及びＡ成分用の案内孔を設けた
   上口金板とからなり、キャピラリーを複合流となるＡ成
   分用の吐出誘導孔の内壁に密着挿入し、キャピラリーの
   外周部にＡ成分を供給する通路となる切り欠きを設けた
   口金であって、かつ下記の（1)、(2) 、(3) の構成を有
   することを特徴とする芯鞘中空複合繊維用紡糸口金。 (1) 前記キャピラリーのキャピラリー吐出孔をキャピラ
   リー中心点とキャピラリー誘導孔の内壁の間でキャピラ
   リー中心点を含まないように設ける、(2) 前記下口金板
   に穿設したオリフィスを構成するスリットの不連続部の
   内縁部両端と、スリットで囲まれる各空間部の中心点と
   のなす角度域Ｋから外れた位置に、キャピラリー吐出孔
   を配置する、(3) オリフィスのスリット内縁部で、キャ
   ピラリー吐出孔の中心点とキャピラリー中心点とを結ぶ
   直線α上に、キャピラリー吐出孔数と同数の凸部を設け
   る。