JPH07273379A - 酸化物超電導体接合素子の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体接合素子の製造方法

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JPH07273379A JP6065077A JP6507794A JPH07273379A JP H07273379 A JPH07273379 A JP H07273379A JP 6065077 A JP6065077 A JP 6065077A JP 6507794 A JP6507794 A JP 6507794A JP H07273379 A JPH07273379 A JP H07273379A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ジョセフソン接合素子とフラックスフロー素
子を再現性良く作り分ける。また、各々の素子の電流−
電圧特性の再現性の良い、集束イオンビームを用いた酸
化物超電導体接合素子の製造法を提供する。 【構成】 酸化物超電導体膜に発生する弱結合部を利用
した酸化物超電導体接合素子の製造方法であって、単結
晶基板11上にGaイオン等の集束イオンビームを用い
て微細な劣化領域を形成した後、その基板11上全面に
酸化物超電導体薄膜15を堆積する時の酸素分圧を制御
してジョセフソン接合素子とフラックスフロー素子を作
り分ける。また、前記酸化物超電導体の成膜時の酸素分
圧Pを、100≦P≦150mTorrの範囲にしてジョセ
フソン接合を作製し、150<P≦200mTorrの範囲
の酸素圧下でフラックスフロー素子を作製する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物超電導体接合素
子の作製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸化物高温超電導体の電子デバイスへの
応用を図る上で、酸化物超電導体薄膜の一部分に設けた
弱結合部分を利用した酸化物超電導体接合素子を再現性
良く作製する技術は重要である。例えばジョセフソン接
合素子に関して言えば、高い超電導転移温度Tcの酸化
物超電導体はいずれも層状の結晶構造を持ち、また、コ
ヒーレンス長が短いことから積層型のジョセフソン接合
を作製するには高度の技術が要求されている。そこで、
基板上に人工的に結晶粒界を設け、その上にジョセフソ
ン接合を作製する方法が技術的に簡易なため、数多く開
発されている。例えば、2つの単結晶をはりあわせた基
板を用いる方法(R. Gross, P. Chaudhari, D. Dimos,
A. Gupta, G. Koren, Phys. Rev. Lett. 64,228 (1990)
参照)、基板上にステップを設ける方法(K. Dary, W.
D. Dozier, J. F. Burch, S. B. Coons, R. Hu, C. E.
Platt, R. W. Simon, Appl. Phys. Lett. 58,543 (199
1))が提案されている。
【0003】また、Gaイオン等の集束イオンビームを
用いて単結晶基板上に微細な劣化領域を形成して、その
基板上の全面に堆積した酸化物超電導体のうち、集束イ
オンビームにより形成された劣化領域上に位置する酸化
物超電導体膜部分にのみ選択的に酸化物超電導体接合素
子を発生させる方法が提案されている(特願平4−29
9450号明細書)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記の前者の二つの従
来方法は、接合の両側の結晶方位の違いを積極的に利用
した方法であり、現状では、いずれの従来方法も、ジョ
セフソン接合の特性の再現性は良くなく、任意の位置に
接合を設けることが困難であるため、集積回路への適用
が困難であるという問題があった。
【0005】また、前記後者の従来の方法を用いると、
簡易に、任意の位置に弱結合部を作製することが可能と
なるが、この方法で、酸化物超電導体成膜時に導入され
る酸素分圧を大きく変えたところ、素子の電流−電圧特
性が、時にはジョセフソン接合の特性を示し、また、あ
る時にはフラックスフロー型の特性を示すといった具合
に、素子の型にばらつきが多く、更に、得られたジョセ
フソン接合の電流−電圧特性の再現性も良くないという
場合があった。これは、酸化物超電導体成膜時に導入さ
れる酸素の圧力が、弱結合部分に与える影響を詳細に検
討しなければならない。
【0006】本発明は、前記問題点を解決するためにな
されたものであり、本発明の目的は、ジョセフソン接合
素子とフラックスフロー素子を再現性良く作り分けるこ
とが可能な技術を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、各々の素子の電流−
電圧特性の再現性の良い、集束イオンビームを用いた酸
化物超電導体接合素子の製造法を提供することにある。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本願において開示され
る発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、
以下のとおりである。
【0009】(1)酸化物超電導体膜に発生する弱結合
部を利用した酸化物超電導体接合素子の製造方法であっ
て、単結晶基板上にGaイオン等の集束イオンビームを
用いて微細な劣化領域を形成した後、その基板上全面に
酸化物超電導体薄膜を堆積する時の酸素分圧を制御して
ジョセフソン接合素子とフラックスフロー素子を作り分
けることを最も特徴とする。
【0010】(2)前記(1)の酸化物超電導体の成膜
時の酸素分圧Pを、100≦P≦150mTorrの範囲に
してジョセフソン接合を作製し、150<P≦200m
Torrの範囲の酸素圧下でフラックスフロー素子を作製す
ることを特徴とする。
【0011】(3)前記(1)または(2)の酸化物超
電導体接合素子の製造方法において、酸化物超電導体の
成膜を基板温度720℃以上800℃以下の範囲でパル
スレーザー蒸着法で行うことを特徴とする。
【0012】
【作用】前述の手段の項の(1)乃至(3)によれば、
単結晶基板上にCaイオン等の集束イオンビームを用い
て微細な劣化領域を形成した後、その基板上全面に酸化
物超電導体を堆積する過程の酸素分圧を制御して、ジョ
セフソン接合素子とフラックスフロー素子を再現性良く
作り分けることができる。両方の素子共に、弱結合部分
の両側の素子の電極部となる酸化物超電導体薄膜の超電
導性を良好に保持することができ、各々の電流−電圧特
性の再現性を良好することができる。
【0013】例えば、YBCO(YBa2Cu37〜8
成膜時の酸素圧が100mTorr〜150mTorrの時は、
図3(例えば、測定温度14K)に示す様な電流−電圧
特性を持ったジョセフソン接合が作製でき、YBCO成
膜時の酸素圧が150mTorrより大きく200mTorrま
での時は、図6に示すような電流−電圧特性を持ったフ
ラックスフロー型素子が得られる。
【0014】しかし、YBCO成膜時の酸素圧が100
mTorr未満の時は、図7に示す素子の臨界温度、図8に
示すc軸長のYBCO成膜時酸素分圧依存性から分かる
ように、弱結合部分以外のYBCO膜全体の膜質劣化が
顕著に発生する。よって、YBCO膜全体の膜質を劣化
させずに酸化物超電導体接合素子を作製するためには、
YBCO成膜時酸素分圧は100mTorr以上が適当であ
る。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を用いて詳細に
説明する。
【0016】〔実施例1〕図1(a)〜(c)は本発明
の実施例1のジョセフソン素子作製方法の各工程におけ
る構成の断面を示す断面図であり、図1(d)は本実施
例のジョセフソン素子の上から見た平面図、図2は図1
(d)に示す丸印で囲んだ部分の拡大断面図である。図
1及び図2において、11は基板であり、例えばMgO
(100)基板を用いる。12はAu薄膜(100n
m)、13はGa+ビーム、14はGa+ビームを照射し
た劣化領域、15はYBCO(例えば、YBa2Cu3
7〜8)薄膜(300nm)、16は酸化物超電導体接合
素子電極部分、17は弱結合部分である。
【0017】本実施例のジョセフソン素子作製方法は、
図1(a)に示すように、まず、10-6Torrの真空度に
おいて、真空蒸着法により厚さ100nmの金(Au)
薄膜12を全面に蒸着したMgO(100)基板11上
に、集束イオンビーム(FIB)でGa+イオンを徴小
領域(20μm×0.1μm)に照射し劣化領域14と
して深さ40nm〜80nmの浅い溝を形成した。ビー
ムの加速電圧は30kV、イオン電流は10pAで加工
を行った。
【0018】その後、4gのKIと1gのIを150g
の蒸留水に溶解して作製したエッチング液を用いて、図
1(b)に示すように、前記金(Au)薄膜12を全て
剥離して、この基板11上の全面に、図1(c)に示す
ように、100mTorrの酸素分圧下においてパルスレー
ザー蒸着法(PLD法)でYBa2Cu37〜8(YBC
O)薄膜15を300nmの厚さに堆積した。その時の
基板温度は770℃である。
【0019】前記YBCO薄膜15は、基板11に存在
する劣化領域の影響を受けながら堆積され、FIBによ
り形成した劣化領域(Ga+ビーム照射領域)14直上
の部分のみYBCO膜膜15の結晶性が乱された。その
結果、図2に示すように、結晶性の乱れた部分は、その
両側のc軸配向したYBCO膜膜間を弱く結合させる弱
結合部分16を形成した。そして、図1(d)に示すよ
うに、フォトリソグラフ工程、アルゴンイオンを用いた
ドライエッチングによってYBCO薄膜15のパターニ
ングを行って、YBCO薄膜15中の弱結合部分16
が、幅5μm、長さ30μmのYBCO細線内に存在
し、弱結合部分16の両側の電極部分17は幅1mm、
長さ5mmのYBCO薄膜15で構成されるジョセフソ
ン素子を作製した。
【0020】このようにして作製されたジョセフソン素
子の電気的特性の測定は、4端子法により行った。得ら
れた電流−電圧特性を図3に示す。ジョセフソン接合
は、分布容量、準粒子コンダクタンス、及び非線形ジョ
セフソン素子が並列に接続されたRSJ(resistively
shunted junction)モデルで説明することができ、その
電流−電圧特性は、図5に示すように、下に凸の曲線を
示す。ゆえに、作製したジョセフソン接合は、いくつか
の折れ曲がりが見られるもののRSJ型を示し、図4
(測定法15K,25GHzのマイクロ波照射)に示す
ように、マイクロ波を当てた時に明瞭なシャピロステッ
プが得られたことにより、良好なジョセフソン接合が得
られたことがわかる。図3に現われた折れ曲がりは、ジ
ョセフソン接合が直列に複数個存在するためと考えてい
る。
【0021】〔実施例2〕前記実施例1で述べたジョセ
フソン接合素子作製工程の中で、YBCO膜堆積時の酸
素分圧を200mTorrにして作製した酸化物超電導接合
素子の示す電流−電圧特性を図6に示す。これは、上に
凸の曲線を示しており、図5のようなジョセフソン接合
素子に特有なRSJ的なジョセフソン特性ではなく、フ
ラックスフロー型の素子が得られたことを示している。
【0022】一方、YBCO成膜時の酸素分圧を75m
Torr、50mTorrにしたときの素子の特性も測定した
が、図7及び図8に示すように、YBCO薄膜15全体
の膜質が急激に劣化し、また、接合の電流−電圧特性の
再現性が著しく低下した。
【0023】また、基板温度を720℃未満において、
YBCO薄膜の成膜を行って作製した素子に関しては、
膜が多結晶状態になって劣化してしまい、接合の電流−
電圧特性の再現性が著しく劣化した。同様に基板温度を
800℃より大きな温度(800℃を含まない)にして
YBCO薄膜の成膜を行って作製した素子に関しては、
膜がYBa2Cu37〜8の組成からズレてしまい、超電
導膜にならなかったため、YBCO薄膜の成膜時の基板
温度は、720℃〜800℃が適当であった。
【0024】よってYBCO膜15の全体の膜質を劣化
させずに酸化物超電導体接合素子を作製するためには、
YBCO成膜時の酸素分圧は100mTorr以上が適当で
ある。
【0025】以上、本発明を実施例に基づき具体的に説
明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものでは
なく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更し得
ることはいうまでもない。
【0026】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表
的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以
下のとおりである。
【0027】単結晶基板上に集束イオンビームを用いて
微細な劣化領域を形成した後、その基板上全面に酸化物
超電導体を堆積する過程の酸素分圧を制御して、ジョセ
フソン接合素子とフラックスフロー素子を再現性良く作
り分けることができた。両方の素子共に、弱結合部分の
両側の素子の電極部となる酸化物超電導体薄膜の超電導
性を良好に保持することができ、各々の電流−電圧特性
の再現性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のジョセフソン素子作製方法
の各工程における構成の断面を示す断面図及び本実施例
のジョセフソン素子の上から見た平面図である。
【図2】図1に示す丸印で囲んだ部分の拡大断面図であ
る。
【図3】本実施例1のジョセフソン素子のマイクロ波を
当てない時の電流−電圧特性を示す図である。
【図4】本実施例1のジョセフソン素子のマイクロ波を
当てた時の電流−電圧特性を示す図である。
【図5】本実施例1のRSJモデルにより説明される酸
化物超電導体接合素子の電流−電圧特性を示す図であ
る。
【図6】本発明の実施例2のYBCO成膜時の酸素分圧
が200mTorrの時のジョセフソン素子の電流−電圧特
性を示す図である。
【図7】本発明にかかるYBCO成膜時の酸素分圧を5
0mTorrから200mTorrまで変化させたときのジョセ
フソン素子の臨界温度を示す図である。
【図8】本発明にかかるYBCO成膜時の酸素分圧を5
0mTorrから200mTorrまで変化させたときのc軸長
のYBCO成膜時酸素分圧依存性を示す図である。
【符号の説明】
11…基板、12…Au薄膜(100nm)、13…G
+ビーム、14…Ga+ビームを照射した劣化領域、1
5…YBCO薄膜(300nm)、16…酸化物超電導
体接合素子電極部分、17…弱結合部分。
フロントページの続き (72)発明者 藤本 学 東京都江東区東雲一丁目14番3 財団法人 国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 鈴木 克己 東京都江東区東雲一丁目14番3 財団法人 国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 榎本 陽一 東京都江東区東雲一丁目14番3 財団法人 国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内 (72)発明者 田中 昭二 東京都江東区東雲一丁目14番3 財団法人 国際超電導産業技術研究センター 超電 導工学研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物超電導体膜に発生する弱結合部を
    利用した酸化物超電導体接合素子の製造方法であって、
    単結晶基板上に集束イオンビームを用いて微細な劣化領
    域を形成した後、その基板上全面に酸化物超電導体薄膜
    を堆積する時の酸素分圧を制御してジョセフソン接合素
    子とフラックスフロー素子を作り分けることを特徴とす
    る酸化物超電導体接合素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の酸化物超電導体接合素子の製
    造方法において、酸化物超電導体の成膜時の酸素分圧P
    を、100≦P≦150mTorrの範囲にしてジョセフソ
    ン接合を作製し、150<P≦200mTorrの範囲の酸
    素圧下でフラックスフロー素子を作製することを特徴と
    する酸化物超電導体接合素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2または3に記載の酸化物超電導
    体接合素子の製造方法において、酸化物超電導体の成膜
    を基板温度720℃以上800℃以下の範囲でパルスレ
    ーザー蒸着法を用いて行うことを特徴とした酸化物超電
    導体接合素子の製造方法。
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