JPH07262993A - アルカリイオン吸脱着材料 - Google Patents

アルカリイオン吸脱着材料

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JPH07262993A
JPH07262993A JP5278884A JP27888493A JPH07262993A JP H07262993 A JPH07262993 A JP H07262993A JP 5278884 A JP5278884 A JP 5278884A JP 27888493 A JP27888493 A JP 27888493A JP H07262993 A JPH07262993 A JP H07262993A
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健児 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 縮環芳香族構造を有し、無秩序積層構造より
なる炭素系材料であって、該材料がアルカリイオンを吸
着した際に、吸着量が組成式でC6 A(式中、Aはアル
カリ元素を示す)のとき、そのアルカリ原子核のNMR
スペクトルの化学シフトδが−3ppm<δ<10pp
mの範囲にあるアルカリイオン吸脱着材料。 【効果】 本発明のアルカリイオン吸脱着材料により、
アルカリイオンの吸蔵量を大幅に増大することができ、
吸脱着の際の構造変化もなくすことができる。さらに、
アルカリイオン吸蔵放出反応を増大することもできる。
そこで、この材料を電極材料に用いることによって、高
容量で、サイクル安定性に優れ、しかも高電流密度の充
放電に耐え得る二次電池を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルカリイオン吸脱着
材料に関し、さらに詳細には二次電池用電極材料に、特
に非水電解液二次電池用電極材料に好適なアルカリイオ
ン吸脱着材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化が進み、これに
伴い電池の高エネルギー密度化が求められ、種々の非水
電解液電池が提案されている。例えば、従来より非水電
解液電池用負極として、主に一次電池用に金属リチウム
が知られており、またアルミニウム/リチウム合金に代
表されるリチウム合金、炭素負極なども知られている。
しかしながら、金属リチウムは、二次電池の負極として
用いた場合、デンドライトの生成などに起因してサイク
ル安定性に劣ることが知られている。また、アルミニウ
ム/リチウム合金に代表されるリチウム合金負極も、金
属リチウムよりはサイクル安定性の向上はみられるもの
の、リチウム電池の性能を充分に引き出すとはいえな
い。
【0003】このような問題を解決するため、リチウム
を吸脱着するものとして、リチウムの炭素層間化合物が
電気化学的に容易にできることを利用した炭素負極を用
いることも提案されている。従来のLi二次電池負極に
用いられる炭素系材料は、結晶構造的に分類すると、易
黒鉛化炭素と難黒鉛化炭素に分類される。これらの分類
方法としては、主にX線回折法によるD(002)の面
間隔およびC軸方向、a軸方向の結晶子の大きさ、レー
ザーラマンスペクトル解析による積層構造と乱層構造の
比率で分類する方法が用いられている。この2つの評価
方法は、充分に炭化が終了した炭素(焼成温度1,50
0℃以上)に対して有効である。また、現在までに公開
されている多くの特許は、これらの数値を規定した炭素
の構造で出願されている。
【0004】このような炭素負極としては、多種・多様
なものがあり、例えば結晶セルロースをチッ素ガス流
下、1,800℃で焼成して得られる炭素物質(特開平
3−176963号公報)、石炭ピッチあるいは石油ピ
ッチを不活性雰囲気で2,500℃以上で黒鉛化処理し
たもの(特開平2−82466号公報)、2,000℃
を超える高温で処理されたグラファイト化の進んだもの
などが用いられ、金属リチウムやリチウム合金と比較し
て容量の低下はあるが、サイクル安定性のあるものが得
られている。しかしながら、このような負極でも、高電
流密度での充放電においては充分なサイクル安定性は得
られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような炭素負極
は、金属リチウムやリチウム合金に較べ、充電状態、す
なわち炭素にリチウムがインターカレーションされた状
態においても、水との反応が充分に穏やかで、充放電に
ともなうデンドライトの形成もほとんどみられず優れた
ものである。しかしながら、炭素の種類によっては、充
放電のほとんどできないものや、理論容量(充電時にL
iC6 の状態を最大容量と仮定)と比較して容量が極端
に低いものが多い。また、初期容量は比較的大きくて
も、充放電を繰り返すことで劣化し、急激に容量が低下
したり、また比較的容量の大きい炭素負極においても、
高電流密度で充放電を繰り返すと劣化が激しく、二次電
池としての性能を満足し得ないなど、従来の炭素負極で
は、満足すべき性能の負極は得られていない。
【0006】例えば、易黒鉛化炭素の特長は、放電電位
の平坦性に優れることであるが、充放電電流密度を上げ
るとその容量は極端に低下してしまう(第15回新電池
構想部会討論会p24〜31)。そこで、その用途とし
ては、メモリーバックアップなどの比較的電流密度の低
い用途に限定される。
【0007】一方、難黒鉛化炭素の特長は、放電電位の
平坦性には劣るものの、易黒鉛化炭素に比べ高い電流密
度で充放電できることである。しかしながら、電気自動
車などの大電流を必要とする用途に対しては充分ではな
い。この原因は、これらの炭素では充放電反応が炭素6
角網面へのLiイオンのインターカレーション−ディイ
ンターカレーション反応で進行するためである。そこ
で、Liイオンの層間への侵入、脱離は結晶のエッジ
(6角網面の積層方向に対して垂直な面)からのみしか
進行することができない。また、このため結晶の大きさ
が小さい方が反応速度は速くなるので、従来より提案さ
れているX線回折法やレーザーラマンスペクトル解析で
評価できるような炭素では結晶が大きいため充放電は速
やかに進行しないのである。
【0008】また、アルカリイオンの吸蔵量がインター
カレーション化合物の組成比に制限されてしまい、容量
を大きくすることができないという問題もある。さら
に、インターカレーション時には層間が約10%増加
し、ディインターカレーション時には元に戻るので、充
放電を繰り返すと、炭素の構造破壊が生じ、サイクル安
定性が低下してしまうという問題もある。
【0009】そこで、アルカリイオン吸蔵量が大きく、
吸蔵放出を繰り返しても構造が破壊されず、さらにまた
アルカリイオンの吸蔵放出反応速度の大きいアルカリイ
オン吸脱着材料が望まれていた。本発明は、以上のよう
な従来の技術的課題を背景になされたものであり、アル
カリイオン吸蔵量が大きく、アルカリイオンを吸脱着す
る化合物の構造変化が無く、吸蔵放出反応速度も大きい
優れたアルカリイオン吸脱着材料を得ることを目的と
し、これによって、高容量でサイクル安定性に優れ、高
出力(高電流密度)の充放電にも対応できる二次電池用
電極材料を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、縮環芳香族構
造を有し、無秩序積層構造よりなる炭素系材料であっ
て、該材料がアルカリイオンを吸着した際に、吸着量が
組成式でC6 A(式中、Aはアルカリ元素を示す)のと
き、そのアルカリ原子核のNMRスペクトルの化学シフ
トδが−3ppm<δ<10ppmの範囲にあることを
特徴とするアルカリイオン吸脱着材料を提供するもので
ある。
【0011】本発明の炭素系材料は、縮環芳香族構造を
有し、かつその構造は無秩序積層構造となっている。こ
こで、無秩序積層構造とは、縮芳香族環平面の配向が全
く無秩序であるか、もしくは3枚を超えての配向を有し
ない構造をいう。無秩序積層構造でなく、積層構造が発
達しているものは、アルカリイオンを層間にインターカ
レートしてしまい、本発明の吸脱着材料とはいえない。
【0012】このような本発明に用いられる炭素系材料
としては、黒鉛化前駆段階の構造をもっているものが好
ましい。黒鉛化前駆段階の炭素は熱処理温度が低いため
結晶はまだ未発達であり、その大きさは小さく、大電流
を流すのに好適であり、実施例で示す様にインターカレ
ーション反応の理論限界値LiC6 (372Ah/k
g)を超える放電容量を示すものもある。しかしなが
ら、黒鉛前駆段階の炭素でもその特性には開きがある。
ところが、黒鉛化前駆段階の炭素はX線回折、レーザー
ラマンスペクトルでは黒鉛化が進行していないことは分
かるが、その構造を充分に解析することは困難である。
そこで、本発明では、これらの黒鉛前駆段階の炭素をよ
り詳細に解析する方法として、高分解能透過型電子顕微
鏡(TEM)でその格子像を撮影し、種々の炭素のフラ
クタル解析を行い、フラクタル次元Dで表すこととし
た。
【0013】ここで、フラクタル理論について説明す
る。すなわち、複雑に入り組んだ線の長さを測定するの
に、長い物差しで測った場合と短い物差しで測った場合
では、短い物差しで測った方が線の長さは長くなる。逆
に、滑らかな線では物差しの長さを変えても、線の長さ
はほとんど変化しない。すなわち、線の形状が入り組ん
でいるほど、線の長さは測る物差しの長さに依存する。
これより、距離の複雑さの尺度として、物差しの長さを
短くしたとき、2点間の距離がどのようなな率で長くな
るかが、ある割合で表せることになる。この割合がフラ
クタル次元Dに相当し、曲線の複雑さを表している。N
次元のフラクタル次元Dは次式で定義される。 D=N+logED /log(l/r) (式中、rは尺度比、ED =尺度比を変えた場合の距離
の増加分を示す。)本発明においては、フラクタル次元
をDとして、好ましくは1.7≦D<2.0、さらに好
ましくは1.8≦D<2.0を満たす炭素系材料が望ま
しい。フラクタル次元がこの範囲にある炭素系材料は、
充電時にLiの一部が共有結合性のLiを形成するた
め、インターカレーション反応に比べ遙かに多くのLi
を吸蔵することが可能である。
【0014】このような炭素系材料は、本質的に易黒鉛
化材料である有機高分子化合物に積層を阻害する要因を
導入したものを焼成して得ることができ、例えばp−結
合のほかに、o−結合、m−結合、枝分かれおよび架橋
構造の群から選ばれた少なくとも1種の構造を含む芳香
族構造を有する有機高分子化合物を焼成したものが挙げ
られる。本質的に易黒鉛化材料である有機高分子化合物
としては、芳香族構造を有していればどのようなもので
もよいが、例えばポリ(フェニレン)、ポリ(フェニレ
ンビニレン)(PPV)、ポリ(フェニレンキシレン)
(PPX)、ポリスチレン、ノボラック樹脂などが挙げ
られる。積層構造を阻害する因子としては、上記のよう
に屈曲構造(o−,m−位結合)、分岐構造(枝分か
れ)、架橋構造などが挙げられる。また、これらの有機
高分子化合物には、5員間、7員間を持つ有機高分子化
合物を含んでいてもよい。
【0015】これらの有機高分子化合物の中でも、結晶
化度の低いものが好ましく、X線回折の2θ=20°付
近の回折ピークの半値幅が好ましくは0.75°以上、
さらに好ましくは0.95°以上であることが望まし
い。また、有機高分子化合物には、キノイド構造を含む
ことが好ましい。ここで、キノイド構造を含むことは、
有機高分子化合物の粉末の拡散反射スペクトルにおいて
600〜900nmの範囲に吸収端が観測されることで
確認できる。
【0016】このような有機高分子化合物として好まし
いものとしては、ある程度重合度の高いポリフェニレン
が挙げられる。本発明においては、ポリフェニレンの重
合度の目安として次式で定義されるR値を適用するが、
なかでもこのR値が好ましくは2以上、さらに好ましく
は2.3〜20のものが望ましい。 R=A〔δ(para)〕/{A〔δ(mono1)〕
+A〔δ(mono2)〕} ここにおいて、A〔δ(para)〕は赤外吸収スペク
トルにおける804cm-1付近のC−H面外変角振動モ
ードの吸収帯の吸光度、A〔δ(mono1)〕、A
〔δ(mono2)〕はそれぞれ760cm-1付近、6
90cm-1付近の末端フェニル基の吸収帯の吸光度を示
す。
【0017】これらの有機高分子化合物をあまり高温で
なく、電気伝導性の生じるのに限界の低い温度、通常、
300〜1,000℃で焼成すればよい。このような有
機高分子化合物は、焼成時に700℃までに溶融せず、
焼成物である炭素系材料の焼成到達温度(好ましくは7
00℃前後である)での収率が好ましくは40%以上、
さらに好ましくは70〜90%であることが望ましい。
700℃までに溶融してしまうものは、枝分かれしてい
ないので好ましくない。
【0018】本発明のアルカリイオン吸脱着材料は、こ
のようにして得られた炭素系材料であるが、この材料が
アルカリイオンを組成式C6 Aだけ吸着した際のNMR
スペクトルの化学シフトδが、−3ppm<δ<10p
pmの範囲、好ましくは−1ppm<δ<2ppmにな
ければならない。ここにおいて、アルカリ元素がリチウ
ムの場合、観測核は 7Li、化学シフトの基準はLiC
lの1モル/l水溶液のピークを0としたときのもので
ある。化学シフトがこの範囲にあるということは、アル
カリイオン上の不対電子密度が殆ど0となっていること
を意味し、これは、アルカリイオンがインターカレーシ
ョンでなく、吸着によって吸蔵されており、炭素とアル
カリイオンが離れた距離をとっていることを示すもので
ある(本発明者は、これを「スプーンコンパウンド」と
呼ぶ)。
【0019】一方、インターカレートしたリチウム化学
シフトが正の値をとることは報告されており(例えば、
田中ら、1992年電気化学秋季大会講演要旨集p12
9)、本発明者らの測定においてもインターカレートし
たリチウム化学シフトは例外なく正の値をとることが分
かっている。この正の化学シフトの原因は、炭素系材料
のラジカルによる常磁性シフトである。リチウムが吸蔵
されると同時に炭素系材料は電子を受取り、電気的な中
性を保つ。電子を受け取った炭素は、ラジカルアニオン
となる。従って、リチウムを吸蔵した炭素系材料は不対
電子を持ち、電子の磁気モーメントと核の磁気モーメン
トの相互作用により、化学シフトが生じる。理論によれ
ば、電子スピンとの相互作用による化学シフトの符号
は、電子と当該核の超微細結合定数の符号と一致する。
7Liの超微細結合定数の符号は正であり、ラジカルに
よる化学シフトは正となる。化学シフトの大きさは、測
定核上の不対電子密度に比例する。インターカレートし
たリチウムイオンは黒鉛層間に閉じ込められているた
め、黒鉛層がラジカルアニオン化するとリチウムイオン
上にもある程度の不対電子密度が存在し正の化学シフト
をもたらす。
【0020】このように、前記の範囲を超えた化学シフ
トを持つものは、アルカリイオンをインターカレートに
より吸蔵しており、本発明の材料とはいえない。本発明
のアルカリイオン吸脱着材料は、アルカリイオンを吸脱
着するものであるが、中でもリチウムイオンにおいて、
優れた性能を発揮するものである。本発明のアルカリイ
オン吸脱着材料は、縮環芳香族をもつが、積層構造が発
達しておらず、リチウムのようなアルカリイオンをイン
ターカレーションによって吸蔵していないので、アルカ
リイオンは層間にではなく、縮環芳香族面上に吸脱着す
る。このような吸脱着反応はインターカレーション化合
物の組成比に制限されないので、アルカリイオンの吸脱
着量を非常に大きくすることができる。
【0021】また、層間をアルカリイオンが出入りする
のではないので、吸脱着に伴う材料の構造変化が少な
く、さらに積層構造が発達してしていないので、アルカ
リイオンは積層している方向と平行な一方向に限定され
ず、どの方向からも侵入でき、吸脱着反応速度が大き
い。従って、このような本発明のアルカリイオン吸脱着
材料を電極材料に用いることによって、電池を非常に高
容量にし、サイクル安定性を向上し、大電流充放電を可
能とすることができ、本発明のアルカリイオン吸脱着材
料は、二次電池用電極の材料として非常に優れたもので
ある。
【0022】次に、本発明のアルカリイオン吸脱着材料
を製造する方法について具体的に説明する。本発明のア
ルカリイオン吸脱着材料は、前述したような、縮環芳香
族構造を有する有機高分子化合物を、通常、アルゴン、
ヘリウム、チッ素などの不活性ガス、あるいは水素など
の還元性ガス中で300〜1,000℃、好ましくは6
00〜800℃の温度で、0〜6時間、好ましくは0〜
1時間熱処理することにより得られる。
【0023】この具体的な熱処理方法としては、熱分析
において、原料の有機化合物の重量減少開始温度までは
どのような昇温速度でもよく、重量減少開始温度から熱
処理温度までは5℃/時間〜200℃/時間、好ましく
は20℃/時間〜100℃/時間の昇温速度で昇温する
方法が挙げられる。ここで、熱処理温度とは、熱分析に
おいて、重量が減少しなくなるまで減少した重量に対
し、70〜95重量%の重量減少を示す温度をいう。
【0024】このようにして得られる熱処理物は、通
常、粉体または固体であり、このアルカリイオン吸脱着
材料を機械的に粉砕し、優れた二次電池用電極材料を得
ることができる。この電極材料を用いて負極を作製する
場合、電極材料の粒径は必ずしも制限されるものではな
いが、平均粒径が5μm以下のものを用いることにより
高性能の負極を作ることができる。この場合、これらの
粉末に、ポリエチレン粉末などのバインダーを添加混合
し、ロールで圧延し、負極を作ることができる。バイン
ダーの配合量は、電極材料100重量部に対して5〜5
0重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0025】ここで、バインダーとしては、有機、無機
いずれのバインダーも使用することができる。有機バイ
ンダーとしては、前記ポリエチレンのほかに、ポリテト
ラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ
素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどの
多くのバインダーを使用することができる。また、無機
バインダーとしては、ケイ素ガラスなどのケイ素系バイ
ンダーが使用できるが、この場合もバインダーとしての
性能を発揮させるために融点を超えた温度での熱処理が
必要である。
【0026】このようにして得られる負極体は、これに
リチウムまたはリチウムを主体とするアルカリ金属を担
持させて、リチウム電池用負極とすることができる。
【0027】担持させる方法としては、リチウム箔を接
触させ熱拡散させたり、リチウム塩溶液中で電気化学的
にリチウムをドープさせたり、あるいは溶融リチウムに
浸漬させ炭素系材料中にリチウムを拡散させるなど、従
来より行われているどのような方法でもよい。本発明の
アルカリイオン吸脱着材料は、リチウム電池の負極とし
て広範囲に使用でき、各種の正極、例えば二酸化マンガ
ン、五酸化バナジウムなどの酸化物やポリピロールなど
の有機高分子を用いた正極などと組み合わせて使用する
ことができる。
【0028】また、本発明のアルカリイオン吸脱着材料
からなる電極材料を用いた電池に使用する非水系の電解
質としては、正極材料および負極材料に対して化学的に
安定であり、かつリチウムイオンが正極活物質と電気化
学反応をするために移動できる非水物質であればどのよ
うなものでも使用でき、特にカチオンとアニオンの組み
合わせよりなる化合物であって、カチオンとしてはLi
+ 、またアニオンの例としてはPF6 - 、AsF6 -
SbF6 - のようなVa族元素のハロゲン化物アニオ
ン、I- 、I3 - 、Br- 、Cl- のようなハロゲンア
ニオン、ClO4 - のような過塩素酸アニオン、HF2
- 、CF3 SO3 - 、SCN- などのアニオンを有する
化合物を挙げることができるが、必ずしもこれらのアニ
オンに限定されるものではない。このようなカチオン、
アニオンを持つ電解質の具体例としては、LiPF6
LiAsF6 、LiSbF6 、LiBF4 、LiClO
4 、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4 、L
iHF2 、LiSCN、LiCF3 SO3 などが挙げら
れる。これらのうちでは、特にLiPF6 、LiAsF
6 、LiSbF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiC
3 SO3 が好ましい。
【0029】なお、非水系の電解質は、通常、溶媒に溶
解された状態で使用され、この場合、溶媒は特に限定さ
れないが、比較的極性の大きい溶媒が良好に用いられ
る。具体的にはプロピレンカーボネート、エチレンカー
ボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒド
ロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、ジメトキシエタ
ン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグラ
イム類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、トリエ
チルホスフェートなどのリン酸エステル類、ホウ酸トリ
エチルなどのホウ酸エステル類、スルホラン、ジメチル
スルホキシドなどのイオウ化合物、アセトニトリルなど
のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセト
アミドなどのアミド類、硫酸ジメチル、ニトロメタン、
ニトロベンゼン、ジクロロエタンなどの1種または2種
以上の混合物を挙げることができる。これらのうちで
は、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネー
ト、ブチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−
メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエ
タン、ジオキソランおよびγ−ブチロラクトンから選ば
れた1種または2種以上の混合物が好適である。
【0030】さらに、この非水電解質としては、上記非
水電解質を、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロ
ピレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドのイソシア
ネート架橋体、エチレンオキサイドオリゴマーを側鎖に
持つホスファゼンポリマーなどの重合体に含浸させた有
機固体電解質、Li3 N、LiBCl4 などの無機イオ
ン誘導体、Li4 SiO4 、Li3 BO3 などのリチウ
ムガラスなどの無機固体電解質を用いることもできる。
【0031】本発明のアルカリイオン吸脱着材料からな
る電極材料を使用したリチウム二次電池を、図面を参照
してさらに詳細に説明する。すなわち、本発明のアルカ
リイオン吸脱着材料からなる電極材料を負極に使用した
リチウム二次電池は、図17に示すように開口部10a
が負極蓋板20で密閉されたボタン形の正極ケース10
内を微細孔を有するセパレータ30で区画し、区画され
た正極側空間内に正極集電体40を正極ケース10側に
配置した正極50が収納される一方、負極側空間内に負
極集電体60を負極蓋板20側に配置した負極70が収
納されたものである。
【0032】なお、セパレータ30としては、多孔質で
電解液を通したり含んだりすることのできる、例えばポ
リテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンやポリエチ
レンなどの合成樹脂製の不織布、織布および編布などを
使用することができる。また、正極50に用いられる正
極材料としては、リチウム含有五酸化バナジウム、リチ
ウム含有二酸化マンガンなどの焼成体粒子を使用するこ
とができる。なお、符号80は、正極ケース10の内周
面に周設されて負極蓋板20を絶縁支持するポリエチレ
ン製の絶縁パッキンである。
【0033】
【作用】本発明のアルカリイオン吸脱着材料は、縮環芳
香族構造をもつが、積層構造が発達しておらず、リチウ
ムのようなアルカリイオンは層間にインターカレートす
るのではなく、縮環芳香族面上に吸脱着する。吸脱着反
応はインターカレーション化合物の組成比に制限されな
いので、アルカリイオンの吸脱着量を非常に大きくする
ことができる。従って、これを電極材料に用いることに
よって、電池を非常に高容量にすることができる。
【0034】また、層間をイオンが出入りするのではな
いので、吸脱着に伴う材料の構造変化が少なく、電極材
料に用いた場合、その電池はサイクル安定性に優れる。
さらに、積層構造が発達していないので、イオンは積層
している方向と平行な一方向に限定されず、どの方向か
らも侵入でき、反応速度が大きく、大電流充放電が可能
となる。従って、本発明のアルカリイオン吸脱着材料
を、二次電池、特に非水電解質液二次電池、例えばリチ
ウム電池の電極材料として用いることにより、高容量で
かつ充放電におけるサイクル安定性に優れ、しかも高電
流密度の充放電に耐え得る電池を得ることができる。
【0035】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定される
ものではない。 実施例1 コバチック法(Kovacic)によりポリフェニレン
を合成した〔Kovacic,P.andKyriak
is,A.,Journal of theAmeri
can Chemical Society 85,4
54〜458(1963)による〕。すなわち、塩化第
2銅(CuCl2 )、塩化アルミニウム(無水)(Al
Cl3 )、ベンゼン(C6 6 )をモル比で1:1:4
となるように混合し、不活性ガス雰囲気下で攪拌した。
得られた粉末を塩酸(6N−HCl)で数度洗浄し、水
洗、さらにアセトン洗浄、水洗を繰り返したのち、10
0℃にて真空乾燥した。このようにして合成したポリフ
ェニレンは、屈曲、分岐構造やキノイド構造のような積
層阻害要因を含んでいる。
【0036】このように合成したポリフェニレンを水素
気流下700℃で焼成して炭素系材料を得た。具体的に
は、室温から500℃まで250℃/時間の昇温速度で
昇温し、500℃から700℃までは40℃/時間で昇
温し、700℃に到達した時点で加熱を中止し室温まで
冷却して炭素系材料を得た。得られた炭素系材料のX線
回折測定より求められる(002)面の面間距離は、約
3.65Åであった。(002)面の回折ピークは、非
常に幅が広くC軸方向の結晶子の大きさは10Å以下と
見積もられる。すなわち、積層枚数は3枚以下であっ
た。
【0037】この材料、およびこの材料に370Ah/
kgに相当するリチウムイオンを充電した状態で透過型
電子顕微鏡(TEM)により格子像を撮影した。その結
果を図1に示す。(a)がこの材料、(b)がこの材料
に充電した後のものである。黒い部分が炭素網面で白い
部分が空間である。
【0038】炭素網面と炭素網面との間隔とその間隔の
方向を、FFTパワースペクトル化したものを図2に示
す。(a)が充電前、(b)が充電後である。中心の白
い点が原点で中心からの距離が炭素網面の間隔を示し、
方向が炭素網面の方向を示している。白い点がリング状
になることにより、炭素網面の方向性に規則性がないこ
とが明らかである。充電後もこの状態はほとんど変化し
ない。さらに、FFTパワースペクトルの垂直成分の分
布を図3に示す。(a)が充電前、(b)が充電後であ
る。充電前後でその面間隔は広がっていない。
【0039】この材料に、バインダーとしてポリエチレ
ン粉末を重量比で30%加えて加圧成形し電極とした。
作用極としてこの電極を、対極および参照極としてリチ
ウム箔を、電解液として、PC(プロピレンカーボネー
ト)とDME(ジメトキシエタン)(重量比=1:1)
の溶媒に、過塩素酸リチウムを1モル/lの濃度で溶解
したものを用いて、半電池セルを構成した。このセルを
用い、1.6mA/cm2 の電流密度、充電終止電位0
mV、放電終止電位3V、休止時間20分で充放電を繰
り返した。この電極はリチウムイオンを電気化学的に吸
蔵放出し、リチウム二次電池用負極として機能した。
【0040】(容量)図4に充放電電位曲線を示す。4
05Ah/kgの放電容量を示している。積層枚数と容
量の関係を図5に模式的に示したが、この図からも分か
るように、この容量はインターカレーション反応の限界
である372Ah/kgを上回っている。さらに、X線
回折測定から見積もられる積層枚数が高々3枚であるこ
とを考慮すれば、インターカレーション反応の容量の限
界は248Ah/kgになる筈であり、405Ah/k
gとうい高容量はインターカレーション反応では説明で
きない。
【0041】(NMR)この電極に30Ah/kg、1
50Ah/kgおよび300Ah/kg充電した試料を
作製し、吸蔵されたリチウムの固体分解能NMRスペク
トルを測定した。測定試料は、乾燥アルゴン雰囲気グロ
ーブボックス内でDMEで洗浄乾燥し、電解液を除去し
たのち、KBrと混合しNMR試料管に充填した。観測
核は 7Liである。化学シフトの基準としてLiClの
1モル/l水溶液のピークを0ppmとした。スペクト
ルを図6に示す。図6から明らかなように、リチウムの
吸蔵量によらず化学シフトは0ppmである。約60p
pm間隔で最大ピークの左右に対照的に現れているピー
クはスピニンクサイドバンドである。
【0042】(電流密度依存性)この電極に、電流密度
を1mA/cm2 〜15mA/cm2 の範囲で変化させ
て充放電を行い、電位曲線を求めた。結果を図7に示
す。15mA/cm2 では一部金属リチウム析出による
と思われるノイズが出るが、10mA/cm2 という高
電流密度においても金属リチウム析出は無く、充放電可
能である。
【0043】守田らは、各種炭素系材料について、充放
電電流密度を変えた時の放電容量を報告している〔守田
ら、第15回新電池構想部会討論会資料p24〜31
(1992)〕。その結果を実施例1の材料についての
発明者の測定結果とともに、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】炭素は、一般に黒鉛構造が発達するほどD
(002)は狭くなり、Lc (c軸方の結晶子の大き
さ)は大きくなる。表1から分かるように、電流密度を
上げると黒鉛構造の発達した炭素ほど容量の低下が激し
い。実施例1の材料はこれに反して電流密度を上げるほ
ど容量が大きくなる。これは電流密度が低いほど1サイ
クルに要する時間が長いため評価セル内への水分の侵入
量が多くなり、容量低下が生じるためである。水分の侵
入がない条件で評価を行えば、放電容量はほぼ同じと推
察される。このように実施例1の材料は、高い電流密度
においても容量の低下なしに充放電が可能である。
【0046】比較例1 ポーラスカーボンを電極として、電解液として過塩素酸
リチウムの1モル/lのEC(エチレンカーボネート)
+DME(重量比=1:1)溶液を用いた以外は、実施
例1と同様にして半電池セルを構成し、充放電サイクル
試験を行った。この電極は、リチウムイオンを電気化学
的に吸蔵放出し、リチウム二次電池用負極として機能し
た。
【0047】この電極に、200Ah/kg充電した試
料を作製し、実施例1と同様にして7Liの固体高分解
能NMRスペクトルを測定した。結果を図8に示す。最
大ピークは26.1ppmの化学シフトを示している。
264.2ppmのピークは金属リチウムによるもので
あり、ポーラスカーボンではリチウムのインターカレー
ション以外にリチウムの鍍金反応が起きていることを示
す。
【0048】(NMR)インターカレートしたリチウム
の化学シフトが正の値をとることは、この比較例以外に
も報告されており(例えば、田中ら、1992年電気化
学秋季大会講演要旨集p129)、本発明の材料以外の
材料についての発明者らの測定においてもインターカレ
ートしたリチウムの化学シフトは例外なく正の値をとる
ことが分かっている。
【0049】この正の化学シフトの原因は、炭素系材料
のラジカルによる常磁性シフトである。リチウムが吸蔵
されると同時に炭素系材料は電子を受取り、電気的な中
性を保つ。電子を受け取った炭素はラジカルアニオンと
なる。従って、リチウムを吸蔵した炭素系材料は不対電
子を持ち、電子の磁気モーメントと核の磁気モーメント
の相互作用により、化学シフトが生じる。理論によれ
ば、電子スピンとの相互作用による化学シフトの符号は
電子と当該核の超微細結合定数の符号と一致する。 7
iの超微細結合定数の符号は正であり、ラジカルによる
化学シフトは正となる。化学シフトの大きさは測定核上
の不対電子密度に比例する。インターカレートしたリチ
ウムイオンは黒鉛層間に閉じ込められているため、黒鉛
層がラジカルアニオン化するとリチウムイオン上にもあ
る程度の不対電子密度が存在し正の化学シフトをもたら
す。
【0050】一方、本発明の炭素系材料の場合、インタ
ーカレーションではなく、吸着によってリチウムイオン
を吸蔵するため、炭素とリチウムが離れた距離を取りう
る。そのため、リチウムイオン上の不対電子密度はほと
んど0となり、化学シフトも0となる。
【0051】比較例2(電流密度依存性) 2,600℃で黒鉛化処理を行った気相成長炭素繊維
(VGCF)を負極として、実施例1と同様にして電流
密度を変化させて充放電電位曲線を求めた。結果を図9
に示す。電流密度9mA/cm2 では充電時に金属リチ
ウム析出による電位の平坦部が生じ、放電時はまず金属
リチウムの溶出反応が生じ次いで炭素からの放電が起き
た。
【0052】以上のことから、 7Liの固体分解能NM
Rの化学シフトがリチウム吸蔵量によらず0であるこ
と、および平均積層枚数が3枚以下でありながら、40
5Ah/kgの放電容量を示すことから、本発明の材料
は従来のインターカレーション反応によるリチウムイオ
ンの吸蔵放出とは異なる吸脱着による吸蔵放出機能を有
することが分かる。この新規の吸蔵放出機能のため、本
発明の材料はこれを電極材料として用いた場合、その電
池は高い充放電容量を持ち、高電流密度での充放電が可
能となり、充放電にともなう構造変化がないためサイク
ル安定性に優れている。
【0053】実施例2 実施例1と同様にしてコバチック法によりポリフェニレ
ンを得た。このようにして合成したポリフェニレンは原
料モノマーがベンゼンであるため、結合部位はパラ位に
限定されず、オルト、メタ位での結合や分岐、架橋構造
を含んでいる。コバチック法では、重合触媒の酸化力に
より、キノイド構造が生成することが知られている。本
実施例のポリマーは褐色であり、その粉末の拡散反射ス
ペクトルには820nmに吸収端が観測された。拡散反
射スペクトルを図10に示す。これはキノイド構造によ
る吸収である。
【0054】また、ポリフェニレンの赤外吸収スペクト
ルにおいては804cm-1付近にC−H面外変角振動モ
ード〔δ(para)〕に帰属される吸収帯、760c
-1付近と690cm-1付近に、それぞれ末端フェニル
基の振動モード〔δ(mono1)〕と〔δ〔mono
2)〕に帰属される吸収帯が観測された。それぞれの吸
収の吸光度をそれぞれA〔δ(para)〕、A〔δ
(mono1)〕、A〔δ(mono2)〕とすると、 R=A〔δ(para)〕/{A〔ω(mono1)〕
+A〔ω(mono2)〕} で定義されるR値は、ポリフェニレンの重合度の目安に
なるが、この値は6.09であった。
【0055】さらに、X線回折の結果、2θ=19.4
°に半値幅2.372°の幅広い回折ピークを示してお
り、結晶化度が低かった。このようなコバチック法によ
り得られたポリフェニレンを水素気流下700℃で焼成
して炭素系材料を得た。焼成中の目視観察により、この
ポリマーは700℃に到達するまで融解しなかった。焼
成収率は84%であった。
【0056】この炭素系材料の格子像をTEM〔日本電
子(株)製〕により、400kVにて撮影した。その結
果を図11に示す。これをイメージスキャナーでコンピ
ューターに入力し、炭素を白、空間を黒に2値化処理し
た。この結果を図12に示す。図12中の全ての線につ
いてフラクタル次元を測定した。その結果を図13に示
す。これよりフラクタル次元は1.91であった。
【0057】この炭素系材料に重量比で30重量%のポ
リエチレンバインダーを加え、直径10mmの電極を圧
粉成型により作製した。PC(プロピレンカーボネー
ト)/DME(ジメトキシエタン)(体積比=1:1)
の溶媒に、LiPF6 を1モル/lの濃度で溶解し、電
解液とした。対極、参照極はLi金属を用いた。充放電
電流密度1.6mA/cm2 、充電終止電位0V、放電
終止電位3Vで評価を行った。この電極の充放電曲線を
図14に示す。この炭素のフラクタル次元Dは1.91
であり、炭素6角網面の規則的な積層が全くないため、
放電容量は695Ah/kgになった。これは従来から
知られている、グラファイト層間へのインターカレーシ
ョン反応の理論容量372Ah/kgを大きく上回る値
である。
【0058】比較例3 実施例2と同様にして得られたポリ(パラフェニレン)
を1,500℃で焼成し炭素系材料を得た。この炭素系
材料のフラクタル次元Dは1.6であり、無秩序積層構
造ではなかった。この炭素系材料について実施例2と同
様にして評価を行った。充放電曲線を図15に示す。こ
の炭素系材料は、炭素6角網面の積層構造がある程度規
則的に配列しているために、リチウムはインターカレー
ション反応で充電される。よって、その放電容量は37
2Ah/kgが限界となる。
【0059】比較例4 p−ジブロモベンゼンとマグネシウムを等モル、テトラ
ヒドロフラン中で反応させ、グリニャール試薬を合成し
た。これに触媒量の塩化ニッケル−2,2′−ビピリジ
ン錯体を加え4時間リフラックスした。反応混合物を希
塩酸中に投下し攪拌したのち、ろ過した。ろ別された固
形物を、蒸留水、エタノール、熱トルエン、エタノール
の順に溶剤で洗浄したのち、80℃にて真空乾燥した。
これにより、100%パラ位のみで結合し、分岐や橋架
けのないポリ(パラフェニレン)が得られた。
【0060】この方法は酸化剤を用いないため、キノイ
ド構造は生成しない。このポリマーの粉末は薄い黄色で
あり、拡散反射スペクトルは可視領域にほどんど吸収を
もたず、吸収端が470nmに観測された。拡散反射ス
ペクトルを図16に示す。赤外吸収スペクトルから求め
られるR値は1.91であった。X線回折は2θ=1
9.6°に半値幅0.72°の鋭い回折ピークを示して
おり、結晶化度が高い。このポリマーを実施例2と同様
にして焼成した。焼成中の目視観察により融解が認めら
れた。焼成収率は38%であった。実施例と同様にして
求めた初期放電容量は、150Ah/kgであった。
【0061】
【発明の効果】本発明のアルカリイオン吸脱着材料によ
り、アルカリイオンの吸蔵量を大幅に増大することがで
き、吸脱着の際の構造変化もなくすことができる。さら
にアルカリイオン吸蔵放出反応を増大することもでき
る。そこで、この材料は電極材料として非常に有用で、
これを用いることによって、高容量で、サイクル安定性
に優れ、しかも高電流密度の充放電に耐え得る二次電池
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた炭素系材料の透過型電子顕
微鏡(TEM)による格子像の写真である。
【図2】実施例1におけるFFTパワースペクトルの写
真である。
【図3】実施例1のFFTパワースペクトルの垂直成分
の分布を表すグラフである。
【図4】実施例1における充放電電位曲線である。
【図5】積層枚数と容量の関係を示すグラフである。
【図6】実施例1におけるNMRスペクトルである。
【図7】実施例1における、電流密度を変化させたとき
の充放電電位曲線である。
【図8】比較例1におけるNMRスペクトルである。
【図9】比較例2における充放電電位曲線である。
【図10】実施例2得られた炭素系材料粉末の拡散反射
スペクトルである。
【図11】実施例2得られた炭素系材料の透過型電子顕
微鏡(TEM)による格子像の写真である。
【図12】実施例2における格子像の写真をコンピュー
ターで2値化処理したコンピューター画像の写真であ
る。
【図13】実施例2におけるフラクタル次元Dの解析結
果を示す図である。
【図14】実施例2における炭素系材料を用いた電極の
充放電曲線を示す図である。
【図15】比較例3における炭素系材料を用いた電極の
充放電曲線を示す図である。
【図16】比較例4得られた炭素系材料粉末の拡散反射
スペクトルである。
【図17】本発明のアルカリイオン吸脱着材料を負極に
用いたリチウム二次電池の一部断面図を含む正面図であ
る。
【符号の説明】
30 セパレータ 50 正極 70 負極
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年1月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正内容】
【図11】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正内容】
【図12】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 出町 敦 埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 遠藤 守信 長野県須坂市北原町615

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 縮環芳香族構造を有し、無秩序積層構造
    よりなる炭素系材料であって、該材料がアルカリイオン
    を吸着した際に、吸着量が組成式でC6 A(式中、Aは
    アルカリ元素を示す)のとき、そのアルカリ原子核のN
    MRスペクトルの化学シフトδが−3ppm<δ<10
    ppmの範囲にあることを特徴とするアルカリイオン吸
    脱着材料。
  2. 【請求項2】 アルカリイオンがリチウムイオンである
    請求項1記載のアルカリイオン吸脱着材料。
  3. 【請求項3】 炭素系材料のフラクタル次元Dが、1.
    7≦D<2.0である請求項1または2記載のアルカリ
    イオン吸脱着材料。
  4. 【請求項4】 炭素系材料が、o−結合、m−結合、枝
    分かれおよび架橋構造の群から選ばれた少なくとも1種
    の構造を含む芳香族構造を有する有機高分子化合物を焼
    成したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の
    アルカリイオン吸脱着材料。
  5. 【請求項5】 芳香族構造を有する有機高分子化合物
    が、そのX線回折の2θ=20°付近の回折ピークの半
    値幅が0.75°以上のものであり、焼成時に700℃
    までに溶融せず、かつその焼成物の焼成到達温度での収
    率が40%以上となるものである請求項4記載のアルカ
    リイオン吸脱着材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項記載のアル
    カリイオン吸脱着材料からなる二次電池用電材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008059903A (ja) * 2006-08-31 2008-03-13 Toyo Tanso Kk リチウムイオン二次電池負極用炭素材料、低結晶性炭素含浸リチウムイオン二次電池負極用炭素材料、負極電極板、及び、リチウムイオン二次電池
JP2009191152A (ja) * 2008-02-14 2009-08-27 Univ Of Tokyo 樹状π共役系高分子からなるハニカム構造体、及びその製造方法
JP2015220152A (ja) * 2014-05-20 2015-12-07 本田技研工業株式会社 負極活物質、アルカリイオン二次電池及び電気キャパシタ
KR20180115473A (ko) * 2017-04-13 2018-10-23 엘지이노텍 주식회사 전기 화학 소자 및 이의 제조 방법

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