JPH0725635B2 - ダイヤモンド膜の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド膜の製造方法

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JPH0725635B2
JPH0725635B2 JP4496586A JP4496586A JPH0725635B2 JP H0725635 B2 JPH0725635 B2 JP H0725635B2 JP 4496586 A JP4496586 A JP 4496586A JP 4496586 A JP4496586 A JP 4496586A JP H0725635 B2 JPH0725635 B2 JP H0725635B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (発明の分野) 本発明はダイヤモンド膜の製造方法に関し、より詳細に
は、核発生密度を高め、高速にダイヤモンド膜を成長さ
せ得るダイヤモンド膜の製造方法に関する。
(従来技術) 近年、ダイヤモンドは高価な装置を利用して超高圧、超
高温下で合成されるようになったが、他方、高硬度並び
に耐摩耗性に優れた切削部材や耐摩耗部材など、更に広
範な用途に答えると共に、効率的にダイヤモンドを合成
するために化学気相合成法が研究されている。
この化学気相合成法は、炭化水素と水素との混合ガスを
反応槽内に導入し、電子線照射、高周波、マイクロ波等
によりプラズマを発生させて炭化水素を、活性状態にし
てプラズマを発生させて加熱された基板上にダイヤモン
ドを析出させる方法である。
(発明が解決しようとする問題点) このような化学気相合成法によって、平滑な基板表面に
ダイヤモンドを析出させる際、初期において、まず基板
表面に核を生成させる必要がある。
しかしながら従来の方法によれば、この核発生工程での
条件設定が難しく、時間を要し、しかも発生した核の密
度が低く、不均一なために、膜状に成長する段階で膜の
厚みが不均一となり易く、緻密な膜が得難いという欠点
があり、膜強度が低下し、切削工具等に用いた場合、寿
命が短い等の問題があった。
(発明の目的) 本発明は前述の問題点を解消することを目的とするもの
で、詳細には初期の核発生工程においてダイヤモンドの
核発生を短時間で且つ高密度で発生させることによって
ダイヤモンドの成長速度を速め、均一で緻密なダイヤモ
ンド膜を得るための製造方法を提供することを目的とす
るものである。
(問題点を解決するための手段) 即ち、本発明によれば、反応槽内に金属もしくはその金
属化合物(但し、SP3結合を有するもの、Si、Si合金、S
i化合物を除く)を均一に点在させた基板を配置して該
基板を500乃至1300℃に加熱した状態で、該反応槽内に
炭化水素と水素との混合ガスを導入するとともに該ガス
をプラズマにより活性化させながら前記基板表面にダイ
ヤモンド膜を成膜することを特徴とするダイヤモンド膜
の製造方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
ダイヤモンドの化学気相成長法は、ダイヤモンド生成用
ガスとして、例えば炭化水素と水素を用い、これをプラ
ズマによりガスを分解させて、基板表面にSP3結合を有
するカーボンを選択的に析出させるところに特徴を有す
る。
そこで、基板表面におけるダイヤモンド膜の生成過程を
第1図(a)乃至(c)に示す。初期において第1図
(a)に示すように炭化水素が熱分解され、励起状態と
なった炭素原子のうちSP3結合したもののみが基板1表
面にダイヤモンド核2として析出する。
次に、一定の量の核が生じると、第1図(b)に示すよ
うに、生成された核2を中心にダイヤモンドが析出し、
言わば島状として成長する。さらに成長が進むと第1図
(c)に示すように、隣接する島同志が重なり、最終的
には、ダイヤモンド膜3を形成する。上述の過程におい
て、第1図(a)の核発生過程は、条件設定が難しく、
しかも基板の表面状態に極めて影響され易いため、核発
生にバラツキが生じ易く、膜として不均一なものになり
易い。この核発生のメカニズムは今だ明らかにされては
いないが、その要因の1つとして、プラズマ中のイオン
又は電子と基板との相関作用が挙げられる。
本発明は、上記のダイヤモンド膜の生成過程のうちその
初期において、基板表面に金属もしくはその金属化合物
を均一に点在させることによって、その周辺にダイヤモ
ンドが効率的に生成されるという新規知見に基づく。
ダイヤモンドの気相合成の機構については各種の議論が
なされている。その中で、基板がダイヤモンドやCBNと
同じもしくは酷似した結晶構造の場合は、ダイヤモンド
が容易に発生することが知られている。また、基板の種
類によっても、同一のCVD条件であってもダイヤモンド
の発生に差異が生じることから、基板の表面状態がダイ
ヤモンドの発生、特に核発生に大きく寄与していること
が予想される。
基板表面における反応機構の条件としては炭化水素ガ
スの分解と水素の引抜き反応SP3結晶の凍結SP3結晶
以外の除去(エッチング)の3つが考えられ、これらの
反応には炭化水素イオン、水素イオン、水素ラジカル電
子の化学種が関与している。ここで、基板表面に前述の
金属もしくは金属化合物を核剤として点在させると、基
板と核在との間に電気伝導度、誘電率等の差により電界
が生じ、プラズマ中に存在するイオンまたは電子の基板
表面との相互作用が核剤の周囲において顕著となってい
ると考えられる。このことはエッチング条件で核剤の周
囲の基板、例えばSiが特に強くエッチングされることで
確認された。この相互作用の差がダイヤモンドの核発生
に大きく寄与すると思われる。
即ち、核剤の存在によって核剤周辺でプラズマが非常に
強められ、の反応によって、炭化水素ガスの分解が盛
んになりカーボンが析出するとともにそれと同時にの
SP3結晶の凍結が生じダイヤモンドが生成される。カー
ボンが析出する初期においては電界が強いのでの分解
速度が速く、SP2結晶(グラファイト)が生成する。こ
れは、核発生初期においては核剤周辺で炭化水素ガスの
分解速度が激しく、SP2結晶の析出速度がのエッチン
グ速度を上回っているためである。析出が進行していく
と初期に比べ、カーボン発生場所とその周辺との電気伝
導度または誘電率等の差が小さくなるので、電界が弱く
なる。この時、の反応による炭化水素ガスの分解が抑
えられ、の反応によってSP3結晶以外の物質、例えばS
P2結晶のエッチングが十分おこなわれるので最終的にSP
3結晶のみが成長し、ダイヤモンドとして成長する。
この時、の炭化水素の分解速度がのエッチング速度
より大きいとSP2結晶が残存し易くなり、グラファイト
化する。この分解速度は核剤の大きさおよび量にも大き
く左右される。
このようなことから核剤としては初期段階において、基
板との間に電気伝導度に差を生じること、ダイヤモンド
生成時の基板の表面温度より高い融点を有すること、
の反応でのエッチングによって消滅しない程の大きさを
有することが重要となる。
よって本発明によれば、核剤である金属および金属酸化
物が成膜時800℃以上、特に1000℃以上の融点を有する
ことが必要であり、さらに、その粒子径が0.005μm乃
至5μm、特に0.05μm乃至1μmであることが望まし
い。融点が800℃より低いと、基板表面で溶融してしま
い、核剤として機能しないかまたはエッチングされる。
粒子径が0.005μmより小さいとエッチングにより消滅
し易くなり、5μmよりも大きいと核発生効率が悪く、
膜生成後の密着性が悪くなる。
また、核剤は基板表面で適度の量で点在させることが重
要である。即ち、核在の量が多いと前述のの分解速度
が大となり過ぎ、グラファイトが析出し易くなるか、ま
たは均一に存在する場合は相互作用の差が生じなくな
り、核剤として機能しなくなる。よって本発明によれば
用いる材質によっても多少異なるがおよそ105乃至1011
個/cm2の範囲で点在させるのが望ましい。
本発明において基板を配置する際に基板に点在させる金
属もしくは金属化合物(但し、SP3結合を有するもの、S
i、Si合金、Si化合物を除く)としては、周期律表にお
いてTi,Zr,HfのIV a族,V,Nb,TaのV a族、Cr,Mo,WのVI a
族,Mn等のVII a族,Fe,Co,Ni等のVIII族から選ばれる金
属単体またはこれらの複合体、金属化合物としてはCrCl
3,FeCl3,CoCl2,NiCl,FeCl2等の塩化物、FeS,CrS等の硫
化物、TiB2,TaB2,W2B2,NiB等のホウ化物、TiC,V4C3,Ta
C,Cr3C2,MnC,NiC等の炭化物、TiN,TaN,CrN,Fe2N等の窒
化物、TiO2,ZrO2,V2O3,WO3,MnO2,Fe2O3,NiO等の酸化物
の他KFe(SO4等の硫酸塩、FeC6H5O7等の金属含有有
機物などが挙げられ,それ自体で800℃以上の融点を有
するか、もしくは成膜時、雰囲気によって還元され、例
えば炭化物として800℃以上の融点の化合物となって基
板上に残存するようなものが選択される。
この核剤を基板表面に点在させる手段としては油、水ま
たはアルコール等の揮発性有機液体を媒体として分散さ
せ、基板に塗布する他、分散メッキ、スプレー塗布ある
いは界面活性剤を添加して分散状態を良好にして塗布す
る他、PVD,CVD等の薄膜技術により、基板表面に薄膜を
形成させた後、エッチング技術により点在させることが
できる。
本発明によれば、前述したようにして核剤を点在した基
板を、反応槽内に配置させ、ダイヤモンド生成用ガスと
してCH4,C2H2,C2H4,C3H6等の炭化水素ガスと、水素ガス
との混合ガスを導入する。そして基体を500乃至1300度
の温度に加熱するとともに、電子線照射、高周波、マイ
クロ波等によってプラズマ発生させる。
なお、炭化水素と水素との混合比率(CmHn/H2)は0.005
乃至0.15、特に0.01乃至0.05に設定される。
本発明を次の例で説明する。
実施例 基板としてシリコンを用いて、第1表に示す表面処理を
行い下記条件のマイクロ波プラズマCVD法によってダイ
ヤモンド膜を設けた。
マイクロ波出力 400W 圧力 25Torr CH4/H2 3/100 時間 1hr その時、基板の表面に第1表に示す金属粉末もしくはそ
の金属化合物粉末を塗布した後、成膜を行った。
1時間の成膜後に、核発生状況を顕微鏡にて観察した。
また、基板表面におけるダイヤモンドの占有率を求め、
その値を核から膜への成長速度の目安とした。結果を第
1表に示す。
第1表から明らかなように核剤が残存しない場合、1時
間後でも、5%の占有率しかないのに対し、本発明の方
法によれば、核発生速度を確実に向上させることがで
き、それによって占有率を20%以上、中には90%以上に
上げることができた。
また、基板としてSi3N4質焼結体およびSiC質焼結体を用
いて同様の実験を行いほぼ同様の結果が得られた。
(発明の効果) 上述した通り、本発明のダイヤモンド膜の製造方法は基
板表面に予め金属粉末、もしくは金属化合物を点在させ
ることによって、ダイヤモンド生成における初期の核発
生を短時間で均一且つ、緻密化することができ、それに
よって膜成長を速め、均一な膜厚の緻密なダイヤモンド
膜を得ることができる。
このようなダイヤモンド膜は、切削工具の表面被覆とし
て工具の長寿命化を計ることができ、、また、ヒートシ
ンク用として優れた熱伝導性を付与することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)乃至(c)はダイヤモンド膜の生成過程を
示した図である。 1……基板 2……ダイヤモンド核 3……ダイヤモンド膜

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反応槽内に金属もしくはその金属化合物
    (但し、SP3結合を有するもの、Si、Si合金、Si化合物
    を除く)を均一に点在させた基板を配置して該基板を50
    0乃至1300℃に加熱した状態で、該反応槽内に炭化水素
    と水素との混合ガスを導入するとともに該ガスをプラズ
    マにより活性化させながら前記基板表面にダイヤモンド
    膜を成膜することを特徴とするダイヤモンド膜の製造方
    法。
  2. 【請求項2】前記金属もしくは金属化合物が、成膜時に
    融点が800℃以上の金属もしくは金属化合物として基板
    上に点在する特許請求の範囲第1項記載のダイヤモンド
    膜の製造方法。
  3. 【請求項3】前記金属もしくは金属化合物が成膜時に0.
    005乃至5μmの粒子または膜として基板表面に点在す
    る特許請求の範囲第1項または第2項記載のダイヤモン
    ド膜の製造方法。
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