JPH07249828A - 半導体レーザ - Google Patents

半導体レーザ

Info

Publication number
JPH07249828A
JPH07249828A JP3884194A JP3884194A JPH07249828A JP H07249828 A JPH07249828 A JP H07249828A JP 3884194 A JP3884194 A JP 3884194A JP 3884194 A JP3884194 A JP 3884194A JP H07249828 A JPH07249828 A JP H07249828A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
well
holes
band
valence band
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP3884194A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuhiro Matsui
康浩 松井
Hiroshi Ogawa
洋 小川
Satoko Kutsuzawa
聡子 沓澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oki Electric Industry Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oki Electric Industry Co Ltd filed Critical Oki Electric Industry Co Ltd
Priority to JP3884194A priority Critical patent/JPH07249828A/ja
Publication of JPH07249828A publication Critical patent/JPH07249828A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Semiconductor Lasers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 量子井戸構造の活性層を備える半導体レーザ
において価電子帯頂上におけるキャリアの有効質量を低
減する。 【構成】 障壁層10及び井戸層12を交互に積層して量子
井戸構造の活性層14を構成する。そして障壁層10の軽い
正孔に対する価電子帯と井戸層12の軽い正孔に対する価
電子帯との間のバンド不連続量を零とする。これと共に
障壁層10の重い正孔に対する価電子帯と井戸層12の重い
正孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、重い
正孔に対して量子井戸を形成する大きさとする。これに
より軽い正孔及び重い正孔のバンド構造に拘らず、これ
ら正孔の間のバンド混合効果を低減できるので、目的を
達成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、量子井戸構造の活性
層を備える半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、半導体レーザの性能改善を目
的として半導体レーザの活性層を量子井戸構造としたも
のが提案されており、それに関する種々の研究及び検討
が成されている。量子井戸構造の活性層は、バンドギャ
ップの小さな井戸層とバンドギャップの大きな障壁層と
を交互に積層して井戸層に対応する領域に量子井戸(ポ
テンシャル井戸)を形成するようにしたものである。
【0003】この半導体レーザにおいて発振閾値の低減
及び変調速度の高速化を効果的に行なうためには、井戸
層へのキャリア注入効率を高めることが重要であり(文
献1:IEEE Photonics Technology Letters, Vol.13, N
o.9, 1991 参照)、さらにこれに加え井戸層の価電子帯
頂上においてキャリアの有効質量を軽くすることが重要
であると考えられる(文献2:Applied Physics Letter
s, 60(15), 13 April1992, pp1842〜1844及び文献3:P
hysical Review B, Vol.43, Num.17, 1991, p14 099〜1
4 106参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】キャリアの有効質量軽
減には、バンド混合効果を低減することが有用である。
活性層においては、伝導帯のキャリアとして電子が存在
し、価電子帯のキャリアとして軽い正孔、重い正孔及び
スピンオービットスプリットオフ電子の3種が存在す
る。キャリアの有効質量を考える場合、厳密には、これ
ら4種のキャリア間でのバンド混合効果を考慮する必要
がある。しかしながら周知のように、伝導帯上の電子及
び価電子帯上のスピンオービットスプリットオフ電子に
よるバンド混合効果は実質的に無視しえる程度に小さ
い。そこで価電子帯頂上におけるキャリアの有効質量を
考える場合には、一般には、軽い正孔及び重い正孔の間
のバンド混合効果のみが考慮される。
【0005】上記文献2及び3には井戸層に歪みを導入
することにより軽い正孔及び重い正孔の間のバンド混合
効果を低減する手法が開示されており、この手法が従来
広く一般に行なわれている。図11はこの手法を用いた
活性層の量子井戸構造を模式的に示す図である。図中、
太い実線は井戸層及び障壁層の双方に歪みを加えていな
い状態での価電子帯頂上のポテンシャルを示す。この場
合、重い正孔及び軽い正孔に対する価電子帯頂上のポテ
ンシャルは一致する。図中、このときのポテンシャル井
戸の深さを符号Dで表す。
【0006】これに対し、上記文献2及び3の手法では
障壁層には歪みを加えないまま井戸層に歪みを加える。
この歪みのエネルギーにより、井戸層においては重い正
孔及び軽い正孔に対する価電子帯頂上のポテンシャルが
シフトする。井戸層に圧縮歪みを導入した場合において
シフトした価電子帯頂上のポテンシャルを、図中、点線
及び一転鎖線で示す。点線は重い正孔に対するもの及び
一転鎖線は軽い正孔に対するものであって、これら重い
正孔及び軽い正孔に対するポテンシャルのシフト量はΔ
及び−Δとなり互いに符号が逆で絶対値が等しくなる
(Δ>0)。従ってポテンシャル井戸は重い正孔に対し
ては深く及び軽い正孔に対しては浅くなる。尚、井戸層
に引張歪みを加えれば、井戸層においては重い正孔に対
する価電子帯頂上のポテンシャルシフト量は−Δ及び軽
い正孔に対する価電子帯頂上のポテンシャルシフト量は
Δとなる。
【0007】重い正孔及び軽い正孔に対する基底量子準
位(エネルギー準位n=1)は、それぞれのポテンシャ
ル井戸の量子閉じ込め効果によるエネルギー上昇分−δ
H 及び−δL だけシフトしたところにある(δH >0、
δL >0)。これら基底量子準位の差を大きくすること
により、バンド混合効果を低減し従って価電子帯頂上に
おける有効質量を低減できる。しかし井戸層に導入でき
る歪みの大きさには限界があり、従って歪みの導入によ
る有効質量の低減にも限界がある。
【0008】一方、ポテンシャル井戸の幅を狭くするこ
とによっても、有効質量を低減できる。従って歪みの導
入のみならず、ポテンシャル井戸の幅を狭くすることに
よって、一層効果的に、バンド混合効果を低減し価電子
帯頂上における有効質量を低減できる。
【0009】しかしながら文献1によれば、キャリアの
注入効率を高めるためには、ポテンシャル井戸の幅を広
くする(井戸層の厚さを厚くする)必要がある。井戸幅
を広げた場合には重い正孔及び軽い正孔の有効質量の差
は殆どなくなり、従ってこの場合、ポテンシャル井戸の
幅による有効質量の低減は望めない。
【0010】ところで文献2及び3によれば、価電子帯
頂上におけるキャリアの有効質量を低減することによ
り、発振閾値を低減できると共に微分利得を増大できる
ことが明らかにされている。微分利得の増大によって高
速変調が可能になる。これら発振閾値の低減及び微分利
得の増大は、専ら、キャリア有効質量の低減によっても
たらされるものである。従って有効質量を低減する手法
は特定の手法に限定されず、何らかの手法を用いて有効
質量を低減すれば、発振閾値の低減及び微分利得の増大
を図れる。このことは、文献2及び3の解析手法に照ら
して当業者が容易に理解できる事項である。
【0011】この出願の発明者等はこの点に着目したも
のであって、有効質量を低減するための新規な手段を提
供するものである。すなわち第一の新規な手段は、軽い
正孔に対しては井戸層及び障壁層の価電子帯バンド不連
続量を量子井戸を形成しない大きさとし、かつ、重い正
孔に対しては井戸層及び障壁層の価電子帯バンド不連続
量を量子井戸を形成する大きさとする。これによって、
有効質量を低減する。このようなバンド構造を実現でき
るのであれば、その実現方法は問わないが、一例として
例えば、井戸層に圧縮歪みを導入して井戸層においては
重い正孔及び軽い正孔に対する価電子帯ポテンシャルの
シフト量をΔ及び−Δとし、かつ、障壁層に引張歪みを
導入して重い正孔及び軽い正孔に対する価電子帯ポテン
シャルのシフト量を−Δ及びΔとするという、ものが考
えられる。但しこの例では、井戸層及び障壁層に歪みを
導入していない状態の活性層においてポテンシャル井戸
の深さDがD=2・Δであるとする。
【0012】第二の新規な手法は、重い正孔に対しては
井戸層及び障壁層の価電子帯バンド不連続量を量子井戸
を形成しない大きさとし、かつ、軽い正孔に対しては井
戸層及び障壁層の価電子帯バンド不連続量を量子井戸を
形成する大きさとする。これによって、有効質量を低減
する。このようなバンド構造を実現できるのであれば、
その実現方法は問わないが、一例として例えば、井戸層
に引張歪みを導入して井戸層においては重い正孔及び軽
い正孔に対する価電子帯ポテンシャルのシフト量を−Δ
及びΔとし、かつ、障壁層に圧縮歪みを導入して重い正
孔及び軽い正孔に対する価電子帯ポテンシャルのシフト
量をΔ及び−Δとするという、ものが考えられる。但し
この例では、井戸層及び障壁層に歪みを導入していない
状態の活性層においてポテンシャル井戸の深さDがD=
2・Δであるとする。
【0013】さらに上述した有効質量の低減に関わる問
題のほか、活性層中に多重量子井戸を形成した従来の量
子井戸型半導体レーザにおいては、活性層におけるキャ
リア分布の偏りに起因する問題もある。すなわちこの場
合、複数の量子井戸(ポテンシャル井戸)が周期的に繰
り返し形成されるので、活性層におけるキャリアの分布
に偏りを生じる。その結果、変調速度の高速化に限界を
生じる。
【0014】この発明は上述した点に鑑み成されたもの
であって、この発明の目的は、井戸層を厚くした場合で
もより効果的に有効質量を低減できしかも活性層におけ
るキャリア分布の偏りを軽減できる量子井戸型の半導体
レーザを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、第一発明の半導体レーザは、障壁層及び井戸層を交
互に積層して構成した量子井戸構造の活性層を備え、障
壁層の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層の軽い正孔に
対する価電子帯との間のバンド不連続量を、軽い正孔に
対して量子井戸を形成しない大きさとし、障壁層の重い
正孔に対する価電子帯と井戸層の重い正孔に対する価電
子帯との間のバンド不連続量を、重い正孔に対して量子
井戸を形成する大きさとして成ることを特徴とする。
【0016】第二発明の半導体レーザは、障壁層及び井
戸層を交互に積層して構成した量子井戸構造の活性層を
備え、障壁層の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層の軽
い正孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、軽
い正孔に対して量子井戸を形成する大きさとし、障壁層
の重い正孔に対する価電子帯と井戸層の重い正孔に対す
る価電子帯との間のバンド不連続量を、重い正孔に対し
て量子井戸を形成しない大きさとして成ることを特徴と
する。
【0017】
【作用】第一発明によれば、軽い正孔に対しては量子井
戸を形成しないが重い正孔に対しては量子井戸を形成す
るので、軽い正孔は井戸層内に実質的に閉じ込めずに
(束縛せずに)、重い正孔は井戸層内に実質的に閉じ込
めるようにすることができる(束縛することができ
る)。
【0018】このように井戸層内に、軽い正孔は閉じ込
めずに重い正孔は閉じ込めるようにすることにより、軽
い正孔のバンド構造及び重い正孔のバンド構造に拘ら
ず、軽い正孔と重い正孔との間のバンド混合効果を抑制
できる。例えば、軽い正孔のエネルギー準位系列と重い
正孔のエネルギー準位系列とが全体的に近接していて
も、バンド混合効果を抑制できる。さらに軽い正孔を、
井戸層内に閉じ込めないので活性層の厚み方向全体にわ
たって均一に分布させることができる。
【0019】また第二発明によれば、軽い正孔に対して
は量子井戸を形成するが重い正孔に対しては量子井戸を
形成するので、軽い正孔は井戸層内に実質的に閉じ込
め、重い正孔は井戸層内に実質的に閉じ込めないように
することができる。
【0020】このように井戸層内に、軽い正孔は閉じ込
め重い正孔は閉じ込めないようにすることにより、軽い
正孔のバンド構造及び重い正孔のバンド構造に拘らず、
軽い正孔と重い正孔との間のバンド混合効果を抑制でき
る。例えば、軽い正孔のエネルギー準位系列と重い正孔
のエネルギー準位系列とが全体的に近接していても、バ
ンド混合効果を抑制できる。さらに重い正孔を、井戸層
内に閉じ込めないので活性層の厚み方向全体にわたって
均一に分布させることができる。
【0021】
【実施例】以下、図面を参照し、発明の実施例につき説
明する。尚、図面は発明が理解できる程度に概略的に示
してあるにすぎず、従って発明を図示例に限定するもの
ではない。
【0022】図1及び図2は第一発明の実施例の構成を
概略的に示す断面図である。図1においては半導体レー
ザの活性層に沿って取った断面を、また図2においては
図1のII−II線に沿って取った断面を示す。
【0023】同図にも示すように、この実施例の半導体
レーザは、障壁層10及び井戸層12を交互に積層して
構成した量子井戸構造の活性層14を備えて成る。そし
て障壁層10の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層12
の軽い正孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量A
を、軽い正孔に対して量子井戸を形成しない大きさとす
る。これと共に、障壁層10の重い正孔に対する価電子
帯と井戸層12の重い正孔に対する価電子帯との間のバ
ンド不連続量Bを、重い正孔に対して量子井戸を形成す
る大きさとする。
【0024】この実施例では、ファブリペロ型の半導体
レーザを構成するものであって、n−InP基板16の
一方の主面16a上に順次に、活性層14及びp−In
Pクラッド層18を設ける。活性層14はノンドープI
X Ga1-X AlZ As1-Z障壁層10及びノンドープ
InZ Ga1-Z AsW1-W 井戸層12を交互に積層し
て構成した量子井戸構造の活性層である。バンドギャッ
プの小さな井戸層12をバンドギャップの大きな障壁層
10の間に挟むことによって、井戸層12に対応する領
域に量子井戸(ポテンシャル井戸)を形成する。
【0025】そしてこれら活性層14及びクラッド層1
8によりメサストライプ構造を構成し、これら各層1
4、18の一方の側部を電流狭窄層20で及び他方の側
部を電流狭窄層22で埋め込む。電流狭窄層20は基板
主面16a上に順次に設けたp−InP層20a及びn
−InP層20bから成り、電流狭窄層22は基板主面
16a上に順次に設けたp−InP層22a及びn−I
nP層22bから成る。クラッド層18上にp側電極2
4を、及び他方の主面16b上にn側電極26を設け
る。
【0026】さらにこの実施例では、障壁層10の軽い
正孔に対する価電子帯と井戸層12の軽い正孔に対する
価電子帯との間のバンド不連続量Aを零とする。
【0027】障壁層10をノンドープInX Ga1-X
Y As1-Y 層及び井戸層12をノンドープInZ Ga
1-Z AsW1-W 層とした場合、障壁層10の組成X、
Yと井戸層の組成Z、Wとをそれぞれ任意好適に選択す
ることにより、不連続量Aを零とすることは可能であ
る。しかしながらこの場合に、障壁層10の重い正孔に
対する価電子帯と井戸層12の重い正孔に対する価電子
帯との間のバンド不連続量Bを、重い正孔に対して量子
井戸を形成するように充分に大きくすることができな
い。そこでここでは障壁層10に引張歪みを有する(内
在する)障壁層とすると共に、井戸層12を圧縮歪みを
有する(内在する)井戸層とし、これにより不連続量B
を大きくする。この点につき図3を参照し、説明する。
【0028】図3は軽い正孔に対するバンド不連続量A
を零とする障壁層及び井戸層の組み合わせを示す図であ
る。図中、ノンドープInX Ga1-X AlY As1-Y
壁層10の重い正孔に対するバンドギャップ波長[μ
m]を縦軸に及びノンドープInZ Ga1-Z AsW
1-W 井戸層12の重い正孔に対するバンドギャップ波長
[μm]を横軸に取って示す。同図にあっては、n−I
nP基板16からの格子不整合をa%とした障壁層10
及び−a%とした井戸層12を用い、a=0、0.5及
び1としたそれぞれの場合においてバンド不連続量Aを
零とする障壁層10及び井戸層12の組み合わせを数値
解析により調べた。そしてa=0、0.5及び1とした
場合にバンド不連続量Aを零とする障壁層10及び井戸
層12の組み合わせをそれぞれ、図中に、符号0%を付
した黒丸、符号−0.5%を付した白丸及び符号−1%
を付した白抜き三角で示した。
【0029】例えば、発振波長1.55μmの半導体レ
ーザを構成する場合、井戸層12のバンドギャップ波長
を1.6μm及び井戸層12の厚さを10nmとすれ
ば、発振波長を1.55μmとすることができる。
【0030】一方、図3に示すように、井戸層12のバ
ンドギャップ波長を1.6μmとする場合に、a=0の
時すなわち井戸層12及び障壁層10の双方に歪みを与
えていない時は、障壁層10のバンドギャップ波長を
1.52μmとすることによりバンド不連続量Aを零と
することができる。しかしながらこの時、井戸層12及
び障壁層10のバンドギャップ波長の差は0.08μm
と小さくなるので、重い正孔に対するバンド不連続量B
を重い正孔に対して量子井戸を形成するに足りるだけ充
分に大きくできず、従って重い正孔に対する量子井戸効
果を充分に期待できない。
【0031】これに対し、a=0.5の時すなわち格子
不整合0.5%の引張歪みを有する障壁層10及び格子
不整合−0.5%の圧縮歪みを有する井戸層12を用い
る時は、障壁層12のバンドギャップ波長を1.25μ
mとすることによりバンド不連続量Aを零とすることが
でき、この時、井戸層12及び障壁層10のバンドギャ
ップ波長の差は0.35μmとなる。またa=1の時す
なわち格子不整合1%の引張歪みを有する障壁層10及
び格子不整合−1%の圧縮歪みを有する井戸層12を用
いる時は、障壁層12のバンドギャップ波長を1.09
μmとすることによりバンド不連続量Aを零とすること
ができ、この時、井戸層12及び障壁層10のバンドギ
ャップ波長の差は0.51μmとなる。従ってこれら井
戸層12及び障壁層10に歪みを導入した2つの例にお
いては、重い正孔に対するバンド不連続量Bを、重い正
孔に対して量子井戸を形成するに足りるだけ充分に大き
くできるので、重い正孔に対する量子井戸効果を期待で
きる。
【0032】このように障壁層10及び井戸層12のそ
れぞれについて組成及び歪み量を任意好適に選択するこ
とにより、軽い正孔に対するバンド不連続量Aを零とし
かつ重い正孔に対するバンド不連続量Bを重い正孔に対
して量子井戸を形成する大きさとすることができる。
【0033】またここでは、障壁層10の引張歪み量の
絶対値|a|と井戸層12の圧縮歪み量の絶対値|−a
|とを等しくしかつこれら障壁層10及び井戸層12の
層厚を等しくするように(すなわち歪み補償を行なうよ
うに)、障壁層10及び井戸層12を積層する。これは
活性層14の全体の厚さを厚くするため障壁層10及び
井戸層12の積層回数を増やした場合に、障壁層10及
び井戸層12の転位密度を低くするための手法である。
歪み補償により、理論上、積層回数を無限大とすること
ができる。また井戸層12と同程度の厚さを有する障壁
層10は障壁層として充分に機能し得る。
【0034】歪み補償を行なう場合、障壁層10及び井
戸層12の厚さを、1層毎に、臨界膜厚以下とする必要
がある。図4に、基板からの格子不整合がa或は−a%
である膜の臨界膜厚を示す。膜の歪み量の絶対値|a|
或は|−a|[%]を図の横軸に及び歪み量|a|或は
|−a|を有する膜の臨界膜厚を対数目盛りで図の縦軸
に示す。同図に示すように、歪み量を0.5%とした膜
の臨界膜厚は50nmであり、歪み量の絶対値を1%と
した膜の臨界膜厚は20nmである。これら臨界膜厚は
上述した障壁層10及び井戸層12の厚さ10μmより
も充分に大きい。
【0035】図5に、歪み補償の効果を検証するための
実験データを示す。この実験においては、障壁層10に
対応する半導体層として歪み量aを有するInU Ga
1-U As層、及び井戸層12に対応する半導体層として
歪み量−aを有するInV Ga1-V As層を用い、これ
らInU Ga1-U As層及びInV Ga1-V As層を交
互にInP基板上に積層する。これらInU Ga1-U
s層及びInV Ga1-VAs層の厚さを10μmとして
等しくし、組成UをInP基板に格子整合する値0.5
3よりも小さな値及び組成VをInP基板に格子整合す
る値0.53よりも大きな値とする。また量子井戸構造
の活性層14を構成する場合には各井戸層12をそれぞ
れ障壁層10の間に挟むのが好ましいが、この実験では
InU Ga1-U As層及びInV Ga1-V As層の積層
回数を等しくし従ってInU Ga1-U As層の間に挟ん
でいないInV Ga1-V As層がある。組成Vを図の横
軸に及び転位密度[cm-2]を図の左側の縦軸に取り、
組成Vと最上層のInV Ga1-V As層の転位密度との
関係を黒丸で示す。またX線回折強度がピークとなる回
折角θの半値幅[sec]を図の右側の縦軸に取り、組
成Vと回折角θとの関係を白丸で示す。歪み量の小さい
InU Ga1-U As層及びInV Ga1-V As層につい
ては積層回数を30回とし、また歪み量の大きなInU
Ga1-U As層及びInV Ga1-V As層については積
層回数を10回とし積層回数10回の実験データを表す
黒丸及び白丸には矢印を付した。
【0036】図5から理解できるように、組成VをV=
0.68程度とする時、歪み量aは1%程度となり、積
層回数を10回としても転位密度を5×105 程度に抑
えることができる。従って歪み補償を行なうことによ
り、活性層14の全体の厚さを厚くしても転位密度が実
用上充分に小さな活性層14を構成できると考えられ
る。
【0037】ここでは活性層14における転位密度を低
減するために歪み補償を行なったが、歪み補償は必ずし
も行なわなくて良い。バンド不連続量Bを大きくするた
めに、障壁層10及び井戸層12の一方の歪み量を他方
の歪み量よりも大きくしたり、或は一方の厚さを他方の
厚さよりも厚くしたり、或は障壁層10を歪みを有さな
い障壁層としたりすることもできる。
【0038】活性層14の作成に当っては、膜厚制御性
に優れた有機金属気相成長法を用いれば良い。この成長
法によれば、膜厚1nm以下であっても膜厚均一な膜を
作成でき、量子井戸構造の活性層14を作成するのに適
している。作成条件としては、例えば、成膜温度を65
0℃程度、ノンドープInX Ga1-X AlY As1-Y
壁層10の原料ガスをトリメチルインジウム(TM
I)、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルアル
ミニウム(TMA)及びアルシン(AsH3 )の混合ガ
ス、ノンドープInZ Ga1-Z AsW1-W 井戸層12
の原料ガスをトリメチルインジウム(TMI)、トリエ
チルガリウム(TEG)、アルシン(AsH3 )及びホ
スフィン(PH3 )の混合ガス、これら原料ガスにおけ
るV族元素/III 族元素比を50〜200とすれば良
い。
【0039】図6はこの実施例の活性層における伝導帯
及び価電子帯の構造の一例を示す図である。同図にあっ
ては、活性層14を構成する障壁層10及び井戸層12
の界面位置を原点としこれら各層10及び12の積層方
向(基板主面16aの法線方向)における原点からの距
離t[nm]を横軸に、及び、真空準位を基準としたポ
テンシャルエネルギー[eV]を図の左側の縦軸に取
り、活性層14の電子、軽い正孔及び重い正孔に対する
バンド構造をそれぞれ曲線CB、LH及びHHで示す。
曲線CBは距離tにおける伝導帯底のポテンシャルエネ
ルギーの分布状態、曲線LH及びHHは距離tにおける
価電子帯頂上のポテンシャルエネルギーの、分布状態を
表す。ここでは障壁層10を、膜厚7nm、組成X=
0.429、Y=0.118及び歪み量a=0.7%の
ノンドープInX Ga1-X AlY As1-Y 層とし、井戸
層12を、膜厚7nm、組成Z=0.717、W=0.
826及び歪み量−a=−0.7%のノンドープInZ
Ga1-Z AsW1-W 井戸層12とする。この場合、伝
導帯底のバンド不連続量は175meV、軽い正孔に対
する価電子帯頂上のバンド不連続量Aは零及び重い正孔
に対する価電子帯頂上のバンド不連続量Bは96.8m
eVである。また伝導帯の電子、価電子帯の軽い正孔及
び重い正孔を波動と見て波動関数から求めたこれら波動
の振幅を図の右側の縦軸に取り、距離tにおける伝導帯
の電子の振幅を曲線1e、距離tにおける価電子帯の軽
い正孔の振幅を曲線lh、さらに距離tにおける価電子
帯の重い正孔の振幅を曲線1hh、2hh及び3hhで
示す。曲線1eはエネルギー準位n=1の電子、曲線1
hh、2hh及び3hhはエネルギー準位n=1、2及
び3の重い正孔の振幅を表す。軽い正孔に対するバンド
不連続量Aは零であるので、軽い正孔の振幅はエネルギ
ー準位によらずほぼ零となる。
【0040】図6にも示すように、伝導帯の電子及び価
電子帯の重い正孔は井戸層12内に閉じ込められ(束縛
され)、これら電子及び重い正孔の運動は井戸層12内
に制限される。これに対し価電子帯の軽い正孔は、井戸
層12内に閉じ込められず(束縛されず)従って活性層
14全体にわたって自由に運動することができる。その
結果、価電子帯の軽い正孔が井戸層12内に存在する確
率は非常に小さくなる。エネルギー準位が近接するキャ
リアの間のバンド混合効果は、これらキャリアの波動関
数の重なり積分の減少に対応して弱くなり、その結果、
キャリアの有効質量を低減できる。価電子帯のスピンオ
ービットスプリットオフ電子は半導体レーザの性能に与
える影響は無視し得る程に小さいので、活性層14はこ
のスプリットオフ電子に対しては量子井戸を形成しても
形成しなくとも良い。
【0041】障壁層10及び井戸層12の膜厚、組成、
歪み量を上述のようにした場合、軽い正孔と重い正孔と
の間の振幅の重なり積分は0.047となる。この0.
047という値は、軽い正孔及び重い正孔の波動の重な
りが最も大きくなる場合を1として規格化した値であ
り、この値1の約1/20の値である。このように価電
子帯の軽い正孔及び重い正孔の間の重なり積分を非常に
小さくできるのは、価電子帯の軽い正孔が井戸層12内
に存在する確率が非常に小さくなることに起因する。
【0042】ここでは軽い正孔に対するバンド不連続量
Aを零としたが、バンド不連続量Aを、軽い正孔及び重
い正孔の間のバンド混合効果を抑制できる範囲内で零を
越える微小な値とし或は近似的に零とみなせる微小な値
とすることもできる。
【0043】図7はキャリアが持つ全エネルギーEtot
と、キャリアの波数ベクトルk及び有効質量m* との関
係を示す図である。これらの関係は、障壁層10及び井
戸層12の膜厚、組成、歪み量を図6の場合と同様とし
た場合のものである。同図にあっては、キャリアが持つ
全エネルギーEtot を図の横軸に及びキャリアの波数ベ
クトルkを図の上側の右側縦軸に取り、キャリアの全エ
ネルギーがEtot である時に当該キャリアが有する波数
ベクトルkを、図の上側に黒丸で示す。実線矢印HH
1、HH2及びHH3に沿って並ぶ黒丸はエネルギー準
位n=1、2及び3の重い正孔に関するEtot 及びkの
関係を示し、符号HH1k0、HH2k0及びHH3k0を付
した黒丸はk=0である場合においてエネルギー準位n
=1、2及び3の重い正孔が持つEtot を表す。また実
線矢印LH1に沿って並ぶ黒丸はエネルギー準位n=1
の軽い正孔に関するEtot 及びkの関係を示し、符号L
H1k0を付した黒丸はk=0である場合においてエネル
ギー準位n=1の軽い正孔が持つEtot を示す。さらに
真空中における電子の質量m0 に対するキャリアの有効
質量m* の比の値m* /m0 を図の下側の左側縦軸に取
り、キャリアの全エネルギーがEtot である時に当該キ
ャリアが有する有効質量m* を、図の下側に白丸で示
す。破線矢印HH1、HH2及びHH3に沿って並ぶ白
丸はエネルギー準位n=1、2及び3の重い正孔に関す
るEtot 及びm* /m0 の関係を示し、符号HH1k0
HH2k0及びHH3k0を付した白丸はk=0である場合
においてエネルギー準位n=1、2及び3の重い正孔が
持つm* /m0 を表す。また破線矢印LH1に沿って並
ぶ白丸はエネルギー準位n=1の軽い正孔に関するE
tot 及びm* の関係を示し、符号LH1k0を付した白丸
はk=0である場合においてエネルギー準位n=1の軽
い正孔が持つm* /m0 を示す。
【0044】図7に示す例では、Etot 及びkの関係か
ら理解できるように、軽い正孔及び重い正孔のエネルギ
ーEtot は近接している。しかしこの場合でも、Etot
及びm* の関係から理解できるように、有効質量m*
低減できる。
【0045】従来の量子井戸構造においては、エネルギ
ー準位n=1の軽い正孔及び重い正孔のバンド混合効果
がガンマ点においても強く、そのためこれら正孔の有効
質量m* はm* =0.4m0 〜0.5m0 程度となり重
くなる。これに対し図7の例では、エネルギー準位n=
1の軽い正孔及び重い正孔の有効質量m* はm* =0.
04m0 〜0.12m0 となり従来よりも軽くなる。図
7の例では、エネルギー準位n=2、3の重い正孔にお
いても有効質量m* を従来より低減できている。
【0046】図7に示す例では、井戸層12に圧縮歪み
を導入したので、k=0においてエネルギー準位が最も
大きいキャリアはエネルギー準位n=1の重い正孔であ
り、その結果、発生する利得はTEモードに偏波する。
【0047】図8に、障壁層10及び井戸層12の膜
厚、組成、歪み量を図6の場合と同様とした場合におい
て発生する利得と微分利得とを、算出した結果を示す。
同図にあっては、活性層14へのキャリア注入密度を横
軸に及び活性層14で生じるTEモードの利得を左側の
縦軸に取り、これらキャリア注入密度及び利得の関係を
実線の曲線で示す。またこのTEモードの微分利得を右
側の縦軸に取り、これらキャリア注入密度及び微分利得
の関係を破線の曲線で示す。レーザ発振に必要な利得を
500cm-1として、この実施例の半導体レーザと無歪
量子井戸構造の半導体レーザとを比較すれば、この実施
例では閾値電流を無歪量子井戸構造の75%まで低減で
き、またこの実施例では微分利得を無歪量子井戸構造の
200%まで増大させることができる。
【0048】図9は第二発明の実施例の説明に供する断
面図であって、図2と同様の断面を示す。この実施例
は、活性層の構成が異なるほかは上述した第一発明の実
施例と同様の構成となっている。以下の説明では第一発
明の実施例と同様の点についてはその詳細な説明を省略
する。
【0049】この実施例の半導体レーザは、障壁層28
及び井戸層30を交互に積層して構成した量子井戸構造
の活性層32を備えて成る。そして障壁層28の軽い正
孔に対する価電子帯と井戸層30の軽い正孔に対する価
電子帯との間のバンド不連続量Cを、軽い正孔に対して
量子井戸を形成する大きさとする。これと共に、障壁層
28の重い正孔に対する価電子帯と井戸層30の重い正
孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量Dを、重い
正孔に対して量子井戸を形成しない大きさとする。
【0050】伝導帯の電子及び価電子帯の軽い正孔は井
戸層30内に閉じ込められ(束縛され)、これら電子及
び軽い正孔の運動は井戸層30内に制限される。これに
対し価電子帯の重い正孔は、井戸層30内に閉じ込めら
れず(束縛されず)従って活性層32全体にわたって自
由に運動することができる。その結果、価電子帯の軽い
正孔が井戸層30内に存在する確率は非常に小さくな
る。エネルギー準位が近接するキャリアの間のバンド混
合効果は、これらキャリアの波動関数の重なり積分の減
少に対応して弱くなり、その結果、キャリアの有効質量
を低減できる。価電子帯のスピンオービットスプリット
オフ電子は半導体レーザの性能に与える影響は無視し得
る程に小さいので、活性層32はこのスプリットオフ電
子に対しては量子井戸を形成しても形成しなくとも良
い。
【0051】この実施例では、障壁層28の重い正孔に
対する価電子帯と井戸層30の重い正孔に対する価電子
帯との間のバンド不連続量Dを、零とする。
【0052】例えば障壁層28をノンドープInX Ga
1-X AlY As1-Y 層及び井戸層30をノンドープIn
Z Ga1-Z AsW1-W 層とした場合、障壁層28の組
成X、Yと井戸層の組成Z、Wとをそれぞれ任意好適に
選択することにより、不連続量Dを零とすることは可能
である。しかしながらこの場合に、障壁層28の軽い正
孔に対する価電子帯と井戸層30の軽い正孔に対する価
電子帯との間のバンド不連続量Cを、軽い正孔に対して
量子井戸を形成するように充分に大きくすることができ
ない。そこでここでは障壁層28に圧縮歪みを有する
(内在する)障壁層とすると共に、井戸層30を引張歪
みを有する(内在する)井戸層とし、これにより不連続
量Cを大きくする。この点につき図9を参照し、説明す
る。
【0053】図10は重い正孔に対するバンド不連続量
Dを零とする障壁層及び井戸層の組み合わせを示す図で
ある。図中、ノンドープInX Ga1-X AlY As1-Y
障壁層28の軽い正孔に対するバンドギャップ波長[μ
m]を縦軸に及びノンドープInZ Ga1-Z AsW
1-W 井戸層30の軽い正孔に対するバンドギャップ波長
[μm]を横軸に取って示す。同図にあっては、n−I
nP基板16からの格子不整合を−a%とした障壁層2
8及びa%とした井戸層30を用い、a=0、0.5及
び1としたそれぞれの場合においてバンド不連続量Dを
零とする障壁層28及び井戸層30の組み合わせを数値
解析により調べた。そしてa=0、0.5及び1とした
場合にバンド不連続量Dを零とする障壁層28及び井戸
層30の組み合わせをそれぞれ、図中に、符号0%を付
した黒丸、符号0.5%を付した白丸及び符号1%を付
した白抜き三角で示した。
【0054】例えば、発振波長1.55μmの半導体レ
ーザを構成する場合、井戸層30のバンドギャップ波長
を1.6μm及び井戸層30の厚さを10nmとすれ
ば、発振波長を1.55μmとすることができる。
【0055】一方、図10に示すように、井戸層30の
バンドギャップ波長を1.6μmとする場合に、a=0
の時すなわち井戸層30及び障壁層28の双方に歪みを
与えていない時は、障壁層28のバンドギャップ波長を
1.52μmとすることによりバンド不連続量Dを零と
することができる。しかしながらこの時、井戸層30及
び障壁層28のバンドギャップ波長の差は0.08μm
と小さくなるので、軽い正孔に対するバンド不連続量C
を軽い正孔に対して量子井戸を形成するに足りるだけ充
分に大きくできず、従って軽い正孔に対する量子井戸効
果を充分に期待できない。
【0056】これに対し、a=0.5の時すなわち格子
不整合−0.5%の圧縮歪みを有する障壁層28及び格
子不整合−0.5%の引張歪みを有する井戸層30を用
いる時は、障壁層12のバンドギャップ波長を1.43
μmとすることによりバンド不連続量Dを零とすること
ができ、この時、井戸層30及び障壁層28のバンドギ
ャップ波長の差は0.17μmとなる。またa=1の時
すなわち格子不整合−1%の圧縮歪みを有する障壁層2
8及び格子不整合1%の引張歪みを有する井戸層30を
用いる時は、障壁層28のバンドギャップ波長を1.3
3μmとすることによりバンド不連続量Dを零とするこ
とができ、この時、井戸層30及び障壁層28のバンド
ギャップ波長の差は0.27μmとなる。従ってこれら
井戸層30及び障壁層28に歪みを導入した2つの例に
おいては、軽い正孔に対するバンド不連続量Cを、軽い
正孔に対して量子井戸を形成するに足りるだけ充分に大
きくできるので、軽い正孔に対する量子井戸効果を期待
できる。
【0057】このように障壁層28及び井戸層30のそ
れぞれについて組成及び歪み量を任意好適に選択するこ
とにより、重い正孔に対するバンド不連続量Dを零とし
かつ軽い正孔に対するバンド不連続量Cを軽い正孔に対
して量子井戸を形成する大きさとすることができる。
尚、バンド不連続量Dを、軽い正孔及び重い正孔の間の
バンド混合効果を抑制できる範囲内で零を越える微小な
値とし或は近似的に零とみなせる微小な値としても良
い。
【0058】さらにこの実施例では、障壁層28の圧縮
歪み量の絶対値|a|と井戸層30の引張歪み量の絶対
値|a|とを等しくしかつこれら障壁層28及び井戸層
30の層厚を等しくするように(すなわち歪み補償を行
なうように)、障壁層28及び井戸層30を積層する。
障壁層28及び井戸層30に歪みを導入しても歪み補償
を行なうことにより、転位密度を低減しつつ活性層14
全体の厚さを厚くすることができる。井戸層30に引張
歪みを導入した場合、k=0において最もエネルギー準
位が大きなキャリアはエネルギー準位n=1の軽い正孔
であり従って発生する利得はTMモードに偏波してい
る。尚、歪み補償は必ずしも行なわなくて良い。従って
バンド不連続量Cを大きくするために、障壁層28及び
井戸層30の一方の歪み量を他方の歪み量よりも大きく
したり、或は一方の厚さを他方の厚さよりも厚くした
り、或は障壁層28を歪みを有さない障壁層としたりす
ることもできる。
【0059】第一及び第二発明は上述した実施例にのみ
限定されるものでは無く、従って角構成成分の材料、組
成、導電型、配設位置、配設個数、作成方法、寸法、形
状、数値条件及びそのほかを任意好適に変更できる。
【0060】例えば、半導体レーザの構造は、ファブリ
ペロ型、DFB(Distributed Feedback)型、DBR
(Distributed Bragg Reflector )型そのほかの任意好
適な構造とすることができる。
【0061】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように、第
一発明の半導体レーザによれば、軽い正孔に対しては量
子井戸を実質的に形成しないようにし重い正孔に対して
は量子井戸を実質的に形成するようにするので、軽い正
孔のバンド構造及び重い正孔のバンド構造に拘らず、軽
い正孔と重い正孔との間のバンド混合効果を抑制でき
る。例えば、軽い正孔のエネルギー準位系列と重い正孔
のエネルギー準位系列とが全体的に近接していても、バ
ンド混合効果を抑制できる。その結果、価電子帯頂上に
おける有効質量を低減できるので、発振閾値電流を効果
的に低減し或はまた変調速度を効果的に速くすることが
できる。
【0062】さらに軽い正孔に対しては量子井戸を実質
的に形成しないようにするので、軽い正孔を活性層の厚
み方向全体にわたって均一に分布させることができる。
その結果、軽い正孔の注入密度を均一化でき従って活性
層におけるキャリア密度の不均一に起因する半導体レー
ザの性能劣化を抑制できる。
【0063】また第二発明によれば、軽い正孔に対して
は量子井戸を実質的に形成するようにするが重い正孔に
対しては量子井戸を実質的に形成しないようにするの
で、軽い正孔のバンド構造及び重い正孔のバンド構造に
拘らず、軽い正孔と重い正孔との間のバンド混合効果を
抑制できる。例えば、軽い正孔のエネルギー準位系列と
重い正孔のエネルギー準位系列とが全体的に近接してい
ても、バンド混合効果を抑制できる。その結果価電子帯
頂上における有効質量を低減できるので、発振閾値電流
を効果的に低減し或はまた変調速度を効果的に速くする
ことができる。
【0064】さらに重い正孔に対する量子井戸を実質的
に形成しないようにするので、重い正孔を活性層の厚み
方向全体にわたって均一に分布させることができる。そ
の結果、重い正孔の注入密度を均一化でき従って活性層
におけるキャリア密度の不均一に起因する半導体レーザ
の性能劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一発明の実施例の構成を概略的に示す断面図
である。
【図2】第一発明の実施例の構成を概略的に示す断面図
である。
【図3】軽い正孔に対するバンド不連続量を零とする障
壁層及び井戸層の組み合わせを示す図である。
【図4】臨界膜厚と歪み量との関係を示す図である。
【図5】歪み補償の検証データを示す図である。
【図6】第一発明の実施例における伝導帯及び価電子帯
の構造の一例を示す図である。
【図7】第一発明の実施例におけるキャリアの全エネル
ギーEtot と、キャリアの波数ベクトルk及び有効質量
* との関係を示す図である。
【図8】第一発明の実施例においてキャリア注入密度と
TEモードの利得及び微分利得との関係を示す図であ
る。
【図9】第二発明の実施例の構成を概略的に示す断面図
である。
【図10】重い正孔に対するバンド不連続量を零とする
障壁層及び井戸層の組み合わせを示す図である。
【図11】従来の量子井戸型半導体レーザの活性層にお
いて井戸層に歪みを導入した活性層の価電子帯バンド構
造の説明に供する図である。
【符号の説明】
10、28:障壁層 12、30:井戸層 14、32:量子井戸構造の活性層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 障壁層及び井戸層を交互に積層して構成
    した量子井戸構造の活性層を備えて成る半導体レーザに
    おいて、 障壁層の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層の軽い正孔
    に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、軽い正孔
    に対して量子井戸を形成しない大きさとし、 前記障壁層の重い正孔に対する価電子帯と前記井戸層の
    重い正孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、
    重い正孔に対して量子井戸を形成する大きさとして成る
    ことを特徴とする半導体レーザ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の半導体レーザにおいて、 障壁層の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層の軽い正孔
    に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、零として
    成ることを特徴とする半導体レーザ。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の半導体レーザにおいて、 障壁層を引張歪みを有する障壁層とし、井戸層を圧縮歪
    みを有する井戸層としたことを特徴とする半導体レー
    ザ。
  4. 【請求項4】 障壁層及び井戸層を交互に積層して構成
    した量子井戸構造の活性層を備えて成る半導体レーザに
    おいて、 障壁層の軽い正孔に対する価電子帯と井戸層の軽い正孔
    に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、軽い正孔
    に対して量子井戸を形成する大きさとし、 前記障壁層の重い正孔に対する価電子帯と前記井戸層の
    重い正孔に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、
    重い正孔に対して量子井戸を形成しない大きさとして成
    ることを特徴とする半導体レーザ。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の半導体レーザにおいて、 障壁層の重い正孔に対する価電子帯と井戸層の重い正孔
    に対する価電子帯との間のバンド不連続量を、零として
    成ることを特徴とする半導体レーザ。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の半導体レーザにおいて、 障壁層を圧縮歪みを有する障壁層とし、井戸層を引張歪
    みを有する井戸層として成ることを特徴とする半導体レ
    ーザ。
JP3884194A 1994-03-09 1994-03-09 半導体レーザ Pending JPH07249828A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3884194A JPH07249828A (ja) 1994-03-09 1994-03-09 半導体レーザ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3884194A JPH07249828A (ja) 1994-03-09 1994-03-09 半導体レーザ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07249828A true JPH07249828A (ja) 1995-09-26

Family

ID=12536436

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3884194A Pending JPH07249828A (ja) 1994-03-09 1994-03-09 半導体レーザ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07249828A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004112208A1 (ja) * 2003-06-11 2004-12-23 Nec Corporation 半導体レーザ
JP2010287873A (ja) * 2009-05-15 2010-12-24 Opnext Japan Inc 半導体発光素子

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004112208A1 (ja) * 2003-06-11 2004-12-23 Nec Corporation 半導体レーザ
JP2010287873A (ja) * 2009-05-15 2010-12-24 Opnext Japan Inc 半導体発光素子
US8610105B2 (en) 2009-05-15 2013-12-17 Oclaro Japan, Inc. Semiconductor electroluminescent device with a multiple-quantum well layer formed therein

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4737745B2 (ja) 半導体装置
JP4922036B2 (ja) 量子ドット半導体デバイス
JPH0422185A (ja) 半導体光素子
JP4554526B2 (ja) 半導体発光素子
US7542201B2 (en) Semiconductor optical amplification device and optical integrated circuit
JP4664725B2 (ja) 半導体レーザ素子
JPH0661570A (ja) 歪多重量子井戸半導体レーザ
JPH09106946A (ja) 半導体装置,及び半導体レーザ,並びに高電子移動度トランジスタ装置
WO2006044124A1 (en) Method and structure for deep well structures for long wavelength active regions
US10277010B2 (en) Semiconductor laser
EP1505699B1 (en) Semiconductor optical device on an indium phosphide substrate for long operating wavelengths
JPH07297485A (ja) 半導体レーザ装置,及びその製造方法
JP4440571B2 (ja) 量子カスケードレーザ
JPH07112089B2 (ja) 半導体発光装置
JPH07249828A (ja) 半導体レーザ
JP2806089B2 (ja) 半導体多重歪量子井戸構造
JP4580623B2 (ja) 化合物半導体素子及びそれを用いた半導体モジュール
JP3497290B2 (ja) 半導体結晶構造体、半導体レーザおよびその製造方法
JP3582021B2 (ja) 光半導体素子
WO2022137390A1 (ja) 半導体レーザ装置
JP2013093425A (ja) 量子半導体装置及びその製造方法
Lee et al. MOCVD growth of strained multiple quantum well structure for 1.3 μm InAsP/InP laser diodes
JP2833604B2 (ja) 半導体積層構造
JPH07162084A (ja) 半導体レーザの量子井戸構造
JP2970103B2 (ja) 半導体超格子構造

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20001107