JPH07242995A - 深絞り用低炭素アルミキルド冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

深絞り用低炭素アルミキルド冷延鋼板およびその製造方法

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JPH07242995A
JPH07242995A JP3169294A JP3169294A JPH07242995A JP H07242995 A JPH07242995 A JP H07242995A JP 3169294 A JP3169294 A JP 3169294A JP 3169294 A JP3169294 A JP 3169294A JP H07242995 A JPH07242995 A JP H07242995A
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JP
Japan
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cold
rolling
hot
rolled
elongation
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JP3169294A
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English (en)
Inventor
Hirotatsu Kojima
啓達 小嶋
Naomitsu Mizui
直光 水井
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】深絞り性の優れたAlキルド冷延鋼板とその製造
方法を提供する。 【構成】(1) C:0.010〜0.100 %、Si:0〜1.0 %、M
n:0.05〜2.0 %、P:0.1 %以下、S:0.0040 %未
満、N:0.0005 〜0.0050%、sol.Al:0.005〜0.1%、
B:0〜0.0050%を含む深絞り性の優れたアルミキルド
冷延鋼板。 (2)C:0.010〜0.100 %、Si:0〜1.0 %、Mn:0.05〜
2.0 %、P:0.1 %以下、S:0.0040 %未満、N:0.000
5 〜0.0050%、sol.Al:0.005〜0.1 %を含む素材鋼スラ
ブを、850 ℃以上で熱延を完了し、600 ℃未満で巻取
り、次いで脱スケール処理後、圧下率60〜95%で冷延を
行い、再結晶温度以上Ac点以下で箱焼鈍する深絞り
性の優れたアルミキルド冷延鋼板の製造方法。 この方法では、熱延後 600〜700 ℃で巻取り、焼鈍を連
続焼鈍としてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレス加工等により様
々な形状に成形されて用いられる冷延鋼板とその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、連続鋳造で製造された鋼スラブ
は、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍という過程を経て
冷延鋼板となる。従来、連続鋳造スラブは、いったん室
温まで冷却された後に再び加熱炉に装入され、1050〜12
50℃の温度まで再加熱された後に熱間圧延が施されてい
た。
【0003】二度の石油危機を境に、省エネルギーを目
的として熱片装入あるいはホット・チャージと呼ばれる
方法が行われ始めた。これは、連続鋳造後のスラブを室
温まで冷却してしまうのではなく、800 ℃近傍まで冷却
された時点で再び加熱炉に装入する方法である。さら
に、加熱炉を使用せず、連続鋳造スラブをそのまま、ま
たはエッジヒーター等で補助的な加熱を行うのみで熱間
圧延を行う、直送圧延法と呼ばれる技術も実用化されて
いる。
【0004】直送圧延法では、従来のスラブ再加熱法と
は異なり、スラブ温度がAr3変態点を一度も下回ること
なく熱間圧延されるため、析出物の形態の相違に起因す
る機械的特性の劣化が見られる。すなわち、直送圧延法
では、熱間圧延前にオーステナイト域で保持される時間
がスラブ再加熱法の場合よりも短いため、析出物が十分
に析出しなかったり、粗大化しなかったりする。このた
め、一般に直送圧延法では、熱延板中に微細な析出物が
多くなり、冷延鋼板の伸びが低下する。
【0005】優れた性質の冷延鋼板を直送圧延法によっ
て製造するために、いくつかの提案がなされている。
【0006】特開昭60−228617号公報には、素材鋼の主
にMnとS量および連続鋳造後のスラブ冷却速度を限定
し、非時効性の冷延鋼板を連続鋳造−連続焼鈍で製造す
る方法が開示されている。これは、適当な大きさのMnS
を積極的に析出させて、粒内セメンタイトの析出核とし
て利用し、非時効性を得ようとするものであるが、伸び
の向上は考慮されていない。
【0007】特開平1−208419号公報には、連続鋳造後
のスラブ冷却速度と熱延開始温度等を限定することによ
ってMnS の分散を制御し、低温焼鈍によっても優れた深
絞り性が得られる冷延鋼板の製造方法が示されている。
【0008】特開平3−72033 号公報には、REM 、Ca、
Zrを添加し、スラブ切断から熱延までの時間を限定する
ことによって硫化物系析出物の形態を制御し、伸びとr
値が高い冷延鋼板を製造する方法が開示されている。
【0009】これらの直送圧延法による冷延鋼板では、
伸びが従来のスラブ再加熱法による場合と比較して劣っ
ている。また、上記方法では連続鋳造後のスラブの冷却
過程を制御しなければならないため、スケジュールフリ
ー操業が困難となり、さらに特殊な元素を添加するため
コスト増となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】直送圧延法による材料
では、深絞り性がスラブ再加熱法による場合よりも劣る
という問題は、依然として存在している。本発明の目的
は、直送圧延された場合でも、従来のスラブ再加熱法に
よる材料なみの深絞り性を有する深絞り用低炭素アルミ
キルド冷延鋼板とその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1) の冷延鋼板と (2)〜(4) のその製造方法にある。
【0012】(1)重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:
0〜1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1 %以下、S:
0.0040 %未満、N:0.0005 〜0.0050%、酸可溶Al:0.00
5〜0.1%およびB:0〜0.0050%を含み、残部はFeおよ
び不可避的不純物からなる深絞り性の優れたアルミキル
ド冷延鋼板。
【0013】(2)重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:
0〜1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1 %以下、S:
0.0040 %未満、N:0.0005 〜0.0050%および酸可溶Al:
0.005〜0.1 %を含み、残部はFeおよび不可避的不純物
からなる素材鋼スラブを、850 ℃以上で熱間圧延を完了
し、600 ℃未満で巻取り、次いで脱スケール処理を行っ
た後、圧下率60〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温度以
上Ac3点以下で箱焼鈍することを特徴とする深絞り性の
優れたアルミキルド冷延鋼板の製造方法。
【0014】(3)上記(2) の成分の素材鋼スラブを、850
℃以上で熱間圧延を完了し、 600〜700 ℃で巻取り、
次いで脱スケール処理を行った後、圧下率60〜95%で冷
間圧延を行い、再結晶温度以上Ac3点以下で連続焼鈍す
ることを特徴とする深絞り性の優れたアルミキルド冷延
鋼板の製造方法。
【0015】(4)上記(2) の成分に加えてさらに重量%
で、B:0.0005〜0.0050%を含む素材鋼スラブを、850
℃以上で熱間圧延を完了し、700 ℃以下で巻取り、次い
で脱スケール処理を行った後、圧下率60〜95%で冷間圧
延を行い、再結晶温度以上Ac3点以下で連続焼鈍するこ
とを特徴とする深絞り性の優れたアルミキルド冷延鋼板
の製造方法。
【0016】上記において、Si:0〜1.0 %、B:0〜
0.0050%は、SiおよびBが無添加でもよいことを意味す
る。これらを積極的に添加する場合は、Siで0.05〜1.0
%、Bで0.0005〜0.0050%とするのが望ましい。
【0017】本発明者らは、アルミキルド冷延鋼板の伸
びと鋼中の不純物元素との関係について検討した。その
結果、特にSを低下させることが有効であること、この
効果は直送圧延法の場合に高くなることを見いだした。
以下に、この実験結果を説明する。
【0018】表1に示す鋼を実験炉で溶解し、割型の鋳
型に鋳込んだ後、鋳型を取り外し、スラブが1000℃まで
冷却するのを待って熱間圧延を開始した(直送圧延
法)。一方、スラブをいったん室温まで冷却した後、ス
ラブを1200℃で60分間再加熱して取り出し、1000℃まで
冷却してから熱間圧延を開始した(スラブ再加熱法)。
【0019】
【表1】
【0020】いずれの方法においても、熱間圧延の仕上
げ温度は880 ℃、板厚は5mmとし、650 ℃で巻取った。
次いで、熱延板の表面を研削してスケールを除去した
後、圧下率82%で冷間圧延を施して板厚0.8 mmとした。
【0021】得られた冷延板を、赤外線加熱炉を用いて
760 ℃まで10℃/sで昇温し、30秒間保持した後、3℃/s
で680 ℃まで冷却し、さらにその後50℃/sで400 ℃まで
冷却し、引き続き400 ℃に150 秒間保持する過時効処理
を行った後、10℃/sで室温まで冷却した。次いで、1.5
%の調質圧延を施した後、JIS 5号試験片を採取して引
張試験を行った。結果を図1に示す。
【0022】図1は伸びに及ぼすS含有量とスラブ加熱
方法の影響を示す図である。
【0023】図示するように、S含有量が0.0040%を超
えると、直送圧延法ではスラブ再加熱法に比べ、伸びの
劣化が著しい。一方、S含有量の低減に伴い、伸びは向
上する。直送圧延法ではこの伸び向上傾向が著しく、S
含有量を0.0040%未満にすると、それ以上のS含有量で
スラブ再加熱法を適用した場合の伸びを上回る良好な伸
びが得られる。もちろんS含有量が0.0040%未満になる
と、伸びはスラブ再加熱法の場合でも向上するが、その
程度は直送圧延法の場合と比較して小さい。この結果、
S含有量を0.0040%未満にすると、伸びは直送圧延法の
場合でもスラブ再加熱法の場合と略々同等な程度に達す
る。
【0024】したがって、S含有量を適切に低減するこ
とにより、直送圧延法によっても、伸びは従来の高めの
Sレベルでスラブ再加熱法を適用した場合を上回り、か
つ同一S低減レベルでスラブ再加熱法を適用した場合と
略々同等の高い伸び特性を有する冷延板が得られること
が明らかである。
【0025】
【作用】本発明の冷延鋼板およびその素材鋼スラブの化
学組成を、前記のように限定した理由を説明する。
【0026】C: 0.010〜0.100 % C含有量が0.010 %未満では固溶Cの過飽和度が低く、
焼鈍中にセメンタイトが十分に析出しないため、固溶C
が過剰に残留する。固溶Cは好ましくない歪み時効を引
き起こすため、C含有量の下限は0.010 %とした。一
方、C含有量が増加するとセメンタイト量が増加し、硬
質化する。この傾向は0.100 %を超えると顕著になるの
で、C含有量の上限は0.100 %とした。
【0027】Si:0〜1.0 % Siは無添加でもよいが、鋼を強化する元素として適宜必
要に応じて含有させててもよい。強化の効果を得るため
に積極的に添加する場合、Si含有量は0.05%以上とする
のが望ましい。しかし、1.0 %を超えると、Si含有材特
有の酸洗不良を起こしたり、伸びが劣化したりするので
好ましくない。したがって、Si含有量の上限は1.0 %と
した。
【0028】Mn:0.05〜2.0 % MnはSをMnS として固定し熱間割れを防止する元素であ
る。Mn含有量が0.05%未満ではこれらの効果が得られな
い。一方、鋼を強化するために積極的に添加してもよい
が、2.0 %を超えると伸びが劣化する。したがって、Mn
含有量の範囲は0.05〜2.0 %とした。
【0029】P:0.1 %以下 Pは鋼を強化し、さらにr値を高める作用を有する元素
である。Pは不可避的に含有される不純物であり、通常
は積極的に添加する必要はない。しかし、上記の効果を
得るために積極的に添加する場合は、0.02%以上含有さ
せるのが望ましい。一方、P含有量が0.1 %を超える
と、二次加工脆性を招くので、その上限は0.1 %とし
た。
【0030】S: 0.0040 %未満 Sは不可避的に含有される不純物であるが、鋼板の伸び
特性に影響を与える重要な元素である。図1に示したよ
うに、S含有量が0.0040%を超えると伸びが劣化するた
め、その含有量は0.0040%未満とした。S含有量は低け
れば低いほど望ましい。
【0031】上記の低S化による伸び改善効果が、前述
のように直送圧延法とスラブ再加熱法のいずれにおいて
も認められ、その効果が前者の場合に高い理由は、次の
ように推定される。
【0032】従来の通常S含有量レベルにおけるスラブ
再加熱法の場合は、加熱炉に滞在する時間が長いので加
熱中にMnS が粗大に析出する。一方、同じく直送圧延法
の場合は、凝固から熱延までの時間が短いためスラブ中
でMnS の析出と成長が起こりにくく、熱延中にMnS が微
細に析出する。一般に、微細な析出物は伸びを劣化させ
るので、直送圧延法による冷延鋼板ではスラブ再加熱法
と比較して伸びが劣化することになる。
【0033】素材鋼スラブ中のSを低減して直送圧延法
を適用すると、MnS の絶対量が少なくなるとともに、Mn
S の過飽和度が小さくなって析出し難くなるので、結
局、微細なMnS の析出密度は減少し、伸びは低Sでのス
ラブ再加熱法の場合と略々同等まで向上する。
【0034】同じくスラブ再加熱法を適用する場合は低
S化によりMnS 量が減少するが、前記の理由で生成する
MnS そのものは粗大化する。このような粗大な析出物で
は、伸びに対する影響が大きくないため、直送圧延のと
きほど顕著ではないが低S化による伸び向上の効果が期
待できる。
【0035】N:0.0005〜0.0050% 冷延板中の固溶Nは歪み時効を引き起こすため、AlN ま
たはBNとして固定されなければならない。N含有量が0.
0050%を超えると、AlまたはBの添加量が増加しコスト
の上昇を招くので、その上限は0.0050%とした。一方、
N含有量を極端に減少させると製鋼コストが増大する。
また箱焼鈍の場合にはAlN の析出による集合組織制御を
利用しているため、その下限は0.0005%とした。
【0036】酸可溶Al: 0.005〜0.1 % 溶鋼の脱酸を十分行い、鋼中のNをAlN として固定する
ためには、酸可溶Alを0.005 %以上含有させる必要があ
る。一方、0.1 %を超えると、鋼板が硬質化すると同時
に伸びが低下するので好ましくない。したがって、酸可
溶Alの範囲は、0.005 〜 0.1%とした。
【0037】B:0〜0.0050% BはNと結合してBNを形成し、熱延板中の固溶Nを減少
させる効果を有する。
【0038】そして、このBNの析出温度はAlN よりも高
い。
【0039】熱延コイルのトップ、ボトム等では巻取温
度が低下しやすいため、AlN が析出し難いが、AlとBが
共存する場合には、このような部位ではAlN に替わって
BNが有効に析出し、r値の劣化を防ぐ効果がある。
【0040】このため、Bは必要に応じて添加するのが
よい。上記効果は0.0005%以上の含有量で現れるので、
積極的に添加する場合は、その下限を0.0005%とするの
が望ましい。一方、0.0050%を超えるとこの効果が飽和
するので、その上限は0.0050%とした。
【0041】次に本発明方法の製造工程およびその条件
の限定理由を述べる。
【0042】本発明方法では素材鋼スラブは、常法に従
い、連続鋳造で製造された後熱間のままの直送で、また
はいったん冷却された連続鋳造または分塊圧延によるス
ラブを再加熱して、熱間圧延に供する。
【0043】熱間圧延の仕上温度:850 ℃以上 熱間圧延はγ域で行う必要がある。仕上温度が850 ℃未
満になると加工フェライト組織となり、巻取り時に異常
粒成長を起こし、表面性状が劣化する。
【0044】上記の熱間圧延終了後、巻き取り、脱スケ
ール、冷間圧延および焼鈍の各通常工程を経て冷延鋼板
を製造する。しかし、その具体的な方法には、素材鋼ス
ラブがBを含有する場合で二種類、Bを含有しない場合
で一種類の合計三種類に分かれる。なお、脱スケールの
方法は限定されず、酸洗、研削などの通常の方法でよ
い。
【0045】本発明の第1の製造方法が、素材鋼スラブ
がBを含有しない場合に巻取温度を低温とし、焼鈍では
箱焼鈍を用いるものである。この方法では、600 ℃未満
で巻取り、次いで脱スケール処理を行った後、圧下率60
〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温度以上Ac3点以下で
箱焼鈍する。
【0046】巻取温度600 ℃未満の条件と焼鈍方法とは
密接な係わりがある。すなわち、箱焼鈍による場合に
は、熱間圧延後の鋼板中にAlN を固溶させておくことが
重要である。AlN が固溶した冷延板を焼鈍する時、AlN
の析出時期は昇温速度に依存し、焼鈍中に微細に析出し
たAlN は再結晶粒の核生成と粒成長を抑制する作用があ
る。
【0047】AlN が固溶した熱延板を冷間圧延し、箱焼
鈍法のような徐加熱を行う方法で焼鈍を施すと、{11
1}結晶粒の再結晶核が形成された後に微細なAlN が析
出を開始するため、それ以後に発生する結晶粒の核生成
が抑制され、結果的にr値を高める{111}<011
>方位の強い集合組織が形成される。
【0048】熱延板中に既にAlN が析出している時は、
{111}のみの選択的な成長は起きない。したがっ
て、熱延後の巻取温度はAlN が析出しないように600 ℃
未満で、焼鈍は望ましい集合組織を得るために徐加熱を
行うことができる箱焼鈍で、それぞれ実施しなければな
らない。
【0049】冷間圧延の圧下率および焼鈍温度は、いず
れも鋼板のr値に影響を与える。圧下率が60%未満であ
るか、または95%を超えると、r 値が低くなるので圧下
率の範囲は60〜95%とした。
【0050】焼鈍温度が再結晶温度未満では、鋼板が硬
質なままであり、高い伸びが期待できない。一方、Ac3
点を超える温度で焼鈍を行うと、高いr 値を発現する集
合組織がα→γ変態によって破壊されるため、r値が低
くなってしまう。このため、焼鈍温度は再結晶温度以上
Ac3点以下とした。
【0051】本発明の第2の製造方法も、素材鋼スラブ
がBを含有しない場合に適用するものである。この方法
では、 600〜700 ℃で巻取り、次いで脱スケール処理を
行った後、圧下率60〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温
度以上Ac3点以下で連続焼鈍する。
【0052】冷間圧延の圧下率および焼鈍温度の各条件
は第1の方法と同じであり、それらの限定理由は前記の
とおりである。
【0053】第2の方法においても、巻取温度条件と焼
鈍方法とは密接な係わりがある。すなわち、AlN が固溶
した熱延板を冷間圧延し、連続焼鈍のような急速加熱を
行う焼鈍を施すと、箱焼鈍の場合とは異なり焼鈍中に微
細に析出するAlN が全ての方位の再結晶を抑制してしま
うため、結晶粒が微細となり、{111}結晶粒が発達
しない。そのため、予めAlN を粗大に析出させておいた
方が{111}結晶粒が成長しやすく、r 値が高くな
る。
【0054】熱間圧延後の鋼板中にAlN を粗大に析出さ
せておくためには、巻取温度を 600℃以上とする必要が
ある。一方、巻取温度が700 ℃を超えると、スケールが
厚くなり酸洗時のロスが増加するとともに、巻取り時に
鋼板が軟質すぎて熱延コイルの巻姿が崩れやすくなる。
【0055】したがって、巻取温度は 600〜700 ℃で、
焼鈍は望ましい結晶組織を得るために急速加熱を行うこ
とができる連続焼鈍で、それぞれ実施しなければならな
い。
【0056】本発明の第3の製造方法は、素材鋼スラブ
がBを含有する場合に適用するものである。この方法で
は、700 ℃以下で巻取り、次いで脱スケール処理した
後、圧下率60〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温度以上
Ac3点以下で連続焼鈍する。
【0057】冷間圧延の圧下率および焼鈍温度の各条件
は、第1および第2の方法と同じであり、それらの限定
理由も同様である。次に巻取温度の限定理由を述べる。
【0058】BはAlと同様に窒化物を生成する元素であ
るが、AlN よりもBNの方が析出しやすい。すなわち、Al
N は600 ℃以上で巻取らないと十分析出しないのに対
し、BNは巻取温度に依存せずに熱間圧延後の鋼板中に析
出する。したがって、NはBによって消費されてしまう
ので焼鈍中AlN が微細に析出することはなく、冷間圧延
後の連続焼鈍により{111}結晶粒が成長した組織が
得られる。一方、巻取温度が700 ℃を超えると、スケー
ルが厚くなり酸洗時のロスが増加するとともに、巻取り
時に鋼板が軟質すぎて熱延コイルの巻姿が崩れやすくな
る。
【0059】したがってBを含有させる場合は、巻取温
度は700 ℃以下で、焼鈍は望ましい結晶組織を得るため
に急速加熱を行うことができる連続焼鈍で、それぞれ実
施しなければならない。
【0060】上記の本発明方法では、鋼板の降伏点伸び
を除去して、成形時のストレッチャーストレインを防ぐ
ため、焼鈍を行った後、調質圧延を施してもよい。しか
し、この伸び率が小さいと降伏点伸びが除去できず、伸
び率が大きいと鋼板が硬質化するため、調質圧延を実施
する場合は、伸び率を 0.5〜3 %の範囲とするのが好ま
しい。
【0061】
【実施例】
〔実施例1〕表2に示す鋼を実験炉で溶解し、割型の鋳
型に鋳込んだ後鋳型を取り外し、スラブが1000℃まで冷
却するのを待って熱間圧延を開始した。熱延仕上温度は
880℃、板厚は5mmとした。巻取温度は表3に示すとお
りである。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】得られた熱延板の表面を研削してスケール
を除去した後、圧下率82%の冷間圧延を施して板厚0.8
mmとし、次いで昇温速度30℃/h、均熱条件680 ℃×4h
、冷却速度30℃/hの箱焼鈍相当の熱処理を施した。引
き続き1.5 %の調質圧延を行った冷延板からJIS 5号試
験片を採取し、引張試験とr値の測定を行った。表3に
これらの結果を示す。
【0065】本発明で定める条件により製造された例
A、Cでは、高い伸びとr値が得られている。巻取温度
のみが本発明で定める範囲から外れる例B、Dでは、伸
びは高いものの、r値が低くなっている。S含有量が本
発明で定める上限よりも高い例Eでは、伸び、r値とも
に低下している。C含有量が本発明で定める下限よりも
低い例Fでは、熱延板中にセメンタイトが十分析出せ
ず、固溶Cが多く残っているため、r値が低くなってい
る。N含有量が同じく高い例Gでは、Nが全て AlNとし
て析出せず、r値を低下させている。
【0066】〔実施例2〕表4に示す鋼を、実験炉で溶
解し、実施例1と同条件で板厚5mmの熱延板とした。巻
取温度は表5に示すとおりとした。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】熱延板の表面を研削してスケールを除去し
た後、圧下率82%の冷間圧延を施して板厚0.8 mmとし
た。次いで、赤外線加熱炉を用いて760 ℃まで10℃/sで
昇温し、30秒間保持した後、3℃/sで680 ℃まで冷却
し、その後50℃/sで400 ℃まで冷却し、引き続き400 ℃
に150 秒間保持する過時効処理を行った後、10℃/sで室
温まで冷却した。さらに1.5 %の調質圧延を行った冷延
板からJIS 5号試験片を採取し、引張試験とr値の測定
を行った。表5にこれらの結果を示す。
【0070】本発明で定める条件により製造された例
I、Kでは、高い伸びとr値が得られている。巻取温度
のみが本発明で定める条件から外れる例H、Jでは、伸
びは高いものの、r値が低くなっている。S含有量が本
発明で定める上限よりも高い例Lでは、伸び、r値とも
に低下している。例M、N、OはB添加の例であるが、
巻取温度が本発明で定める範囲内であれば、その温度に
よらず、伸び、r値ともに良好である。例P、Q、R
は、それぞれSi、Mn、Pを添加して強化した例である
が、いずれも良好な強度−伸びバランス及び強度−r値
バランスが得られている。
【0071】
【発明の効果】本発明によれば、伸びとr値が優れた深
絞り用冷延鋼板を容易に得ることができる。この鋼板の
素材鋼ではS含有量を適正に低下させているので、本発
明方法では、直送圧延法またはスラブ再加熱法のいずれ
によって熱間圧延を行っても、略々同等の優れた深絞り
性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伸びに及ぼすS含有量とスラブ加熱方法の影響
を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:0〜
    1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1%以下、S:0.0040
    %未満、N:0.0005 〜0.0050%、酸可溶Al:0.005〜0.1
    %およびB:0〜0.0050%を含み、残部はFeおよび不可
    避的不純物からなる深絞り性の優れたアルミキルド冷延
    鋼板。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:0〜
    1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1%以下、S:0.0040
    %未満、N:0.0005 〜0.0050%および酸可溶Al:0.005〜
    0.1%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる
    素材鋼スラブを、850 ℃以上で熱間圧延を完了し、600
    ℃未満で巻取り、次いで脱スケール処理を行った後、圧
    下率60〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温度以上Ac3
    以下で箱焼鈍することを特徴とする深絞り性の優れたア
    ルミキルド冷延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:0〜
    1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1%以下、S:0.0040
    %未満、N:0.0005 〜0.0050%および酸可溶Al:0.005〜
    0.1%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる
    素材鋼スラブを、850 ℃以上で熱間圧延を完了し、 600
    〜700 ℃で巻取り、次いで脱スケール処理を行った後、
    圧下率60〜95%で冷間圧延を行い、再結晶温度以上Ac3
    点以下で連続焼鈍することを特徴とする深絞り性の優れ
    たアルミキルド冷延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】重量%で、C:0.010〜0.100 %、Si:0〜
    1.0 %、Mn:0.05〜2.0 %、P:0.1%以下、S:0.0040
    %未満、N:0.0005 〜0.0050%、酸可溶Al:0.005〜0.1
    %およびB:0.0005〜0.0050%を含み、残部はFeおよび
    不可避的不純物からなる素材鋼スラブを、850 ℃以上で
    熱間圧延を完了し、700 ℃以下で巻取り、次いで脱スケ
    ール処理を行った後、圧下率60〜95%で冷間圧延を行
    い、再結晶温度以上Ac3点以下で連続焼鈍することを特
    徴とする深絞り性の優れたアルミキルド冷延鋼板の製造
    方法。
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