JPH07242989A - 冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入れ用鋼 - Google Patents
冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入れ用鋼Info
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- JPH07242989A JPH07242989A JP3153094A JP3153094A JPH07242989A JP H07242989 A JPH07242989 A JP H07242989A JP 3153094 A JP3153094 A JP 3153094A JP 3153094 A JP3153094 A JP 3153094A JP H07242989 A JPH07242989 A JP H07242989A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度の
いずれにも優れ、近年のニーズに応えることのできる高
周波焼き入れ用鋼を提供する。 【構成】 Ｃ：０．２〜０．６重量％，Ｓｉ：０．０１
〜０．２重量％，Ｍｎ：０．３〜１重量％，Ａｌ：０．
０１〜０．１重量％，Ｎ：０．００３〜０．０２重量
％，Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％を夫々含有
し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなり、該不可避不
純物中のＰを０．０１５重量％以下、Ｓを０．０３重量
％以下、Ｏを０．００２０重量％以下に夫々抑制してな
り、且つＪＩＳＧ ０５５５に準拠して測定されるＡｌ
2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物の合計清浄度を０．０１０
％以下（０％にを含む）に制限したものである。
いずれにも優れ、近年のニーズに応えることのできる高
周波焼き入れ用鋼を提供する。 【構成】 Ｃ：０．２〜０．６重量％，Ｓｉ：０．０１
〜０．２重量％，Ｍｎ：０．３〜１重量％，Ａｌ：０．
０１〜０．１重量％，Ｎ：０．００３〜０．０２重量
％，Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％を夫々含有
し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなり、該不可避不
純物中のＰを０．０１５重量％以下、Ｓを０．０３重量
％以下、Ｏを０．００２０重量％以下に夫々抑制してな
り、且つＪＩＳＧ ０５５５に準拠して測定されるＡｌ
2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物の合計清浄度を０．０１０
％以下（０％にを含む）に制限したものである。
Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、冷間鍛造性、被削性お
よびねじり疲労強度のいずれにも優れた高周波焼入れ用
鋼に関するものであり、この高周波焼入れ用鋼は等速ジ
ョイントのドライブシャフトやアウターレース、ギヤ、
ジョイント等の自動車の動力伝達系を構成する部品の素
材として有用である。
よびねじり疲労強度のいずれにも優れた高周波焼入れ用
鋼に関するものであり、この高周波焼入れ用鋼は等速ジ
ョイントのドライブシャフトやアウターレース、ギヤ、
ジョイント等の自動車の動力伝達系を構成する部品の素
材として有用である。
【０００２】
【従来の技術】動力伝達系部品であるドライブシャフト
やアウターレースは、ＪＩＳ Ｓ５３Ｃ、ＪＩＳ Ｓ４
８Ｃ、ＪＩＳ ＳＭｎ４４３、あるいは中炭素ボロン鋼
を所定の形状に熱間鍛造、温間鍛造または冷間鍛造した
後、切削加工し、その後さらに高周波焼入れ−焼戻しに
よって製造されるのが一般的である。
やアウターレースは、ＪＩＳ Ｓ５３Ｃ、ＪＩＳ Ｓ４
８Ｃ、ＪＩＳ ＳＭｎ４４３、あるいは中炭素ボロン鋼
を所定の形状に熱間鍛造、温間鍛造または冷間鍛造した
後、切削加工し、その後さらに高周波焼入れ−焼戻しに
よって製造されるのが一般的である。
【０００３】最近では、素材の歩留まり向上と切削加工
部分の縮小を目的として、寸法精度の悪い熱間鍛造に変
わって、寸法精度が比較的良好な温間鍛造や冷間鍛造へ
の移行が図られつつあり、温間鍛造性や冷間鍛造性の優
れた鋼材の実現が望まれている。またこのような部品
は、複雑な形状であり、切削加工（研削加工も含む）で
最終仕上げをしなければならないのであるが、切削加工
のための費用が嵩むので、被削性に優れていることも望
まれている。更に、自動車の部品の軽量化を図るという
観点からして、ねじり強度やねじり疲労強度が優れてい
ることも望まれている。
部分の縮小を目的として、寸法精度の悪い熱間鍛造に変
わって、寸法精度が比較的良好な温間鍛造や冷間鍛造へ
の移行が図られつつあり、温間鍛造性や冷間鍛造性の優
れた鋼材の実現が望まれている。またこのような部品
は、複雑な形状であり、切削加工（研削加工も含む）で
最終仕上げをしなければならないのであるが、切削加工
のための費用が嵩むので、被削性に優れていることも望
まれている。更に、自動車の部品の軽量化を図るという
観点からして、ねじり強度やねじり疲労強度が優れてい
ることも望まれている。
【０００４】こうした状況のもとで、これまでにも種々
な提案が出されている。例えば、特公昭６０−２３０９
６０号や同５９−１３０４８号には、冷間鍛造を行なっ
た後高周波焼入れをする材料として、ＳｉやＭｎの含有
量を抑制して冷間鍛造性を良好にすると共に、ＳｉやＭ
ｎの抑制による焼入れ性低下をＢやＴｉの添加によって
補った鋼材が提案されている。
な提案が出されている。例えば、特公昭６０−２３０９
６０号や同５９−１３０４８号には、冷間鍛造を行なっ
た後高周波焼入れをする材料として、ＳｉやＭｎの含有
量を抑制して冷間鍛造性を良好にすると共に、ＳｉやＭ
ｎの抑制による焼入れ性低下をＢやＴｉの添加によって
補った鋼材が提案されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者が上記鋼材の特性について検討したところ、Ｂの焼入
れ性向上効果を高め、且つ結晶粒の粗大化防止の目的で
添加されるＴｉは、鋼材中にＴｉＮ系介在物を生成し、
冷間鍛造性、被削性および疲労強度の低下をもたらすこ
とがわかった。即ち、これまで提案されている鋼材は、
加工コストの低減や高強度化という近年のニーズに十分
応えることのできるものではなかったのである。
者が上記鋼材の特性について検討したところ、Ｂの焼入
れ性向上効果を高め、且つ結晶粒の粗大化防止の目的で
添加されるＴｉは、鋼材中にＴｉＮ系介在物を生成し、
冷間鍛造性、被削性および疲労強度の低下をもたらすこ
とがわかった。即ち、これまで提案されている鋼材は、
加工コストの低減や高強度化という近年のニーズに十分
応えることのできるものではなかったのである。
【０００６】本発明は、こうした状況のもとになされた
ものであって、その目的は、冷間鍛造性、被削性および
ねじり疲労強度のいずれにも優れ、近年のニーズに十分
応えることのできる高周波焼入れ用鋼を提供することに
ある。
ものであって、その目的は、冷間鍛造性、被削性および
ねじり疲労強度のいずれにも優れ、近年のニーズに十分
応えることのできる高周波焼入れ用鋼を提供することに
ある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明とは、Ｃ：０．２〜０．６重量％，Ｓｉ：０．０１
〜０．２重量％，Ｍｎ：０．３〜１重量％，Ａｌ：０．
０１〜０．１重量％，Ｎ：０．００３〜０．０２重量
％，Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％を夫々含有
し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなり、該不可避不
純物中のＰを０．０１５重量％以下、Ｓを０．０３重量
％以下、Ｏを０．００２０重量％以下に夫々抑制してな
り、且つＪＩＳ Ｇ ０５５５に準拠して測定されるＡ
ｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物の合計清浄度を０．０１
０％以下（０％を含む）に制限したものである点に要旨
を有するものである。
発明とは、Ｃ：０．２〜０．６重量％，Ｓｉ：０．０１
〜０．２重量％，Ｍｎ：０．３〜１重量％，Ａｌ：０．
０１〜０．１重量％，Ｎ：０．００３〜０．０２重量
％，Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％を夫々含有
し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなり、該不可避不
純物中のＰを０．０１５重量％以下、Ｓを０．０３重量
％以下、Ｏを０．００２０重量％以下に夫々抑制してな
り、且つＪＩＳ Ｇ ０５５５に準拠して測定されるＡ
ｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物の合計清浄度を０．０１
０％以下（０％を含む）に制限したものである点に要旨
を有するものである。
【０００８】
【作用】上記課題を解決するために、本発明者らは、高
周波焼入れ用鋼の冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労
強度等に及ぼす化学組成や介在物の影響について鋭意検
討を行なった。その結果、下記（１）〜（３）に示す様
な知見が得られた。
周波焼入れ用鋼の冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労
強度等に及ぼす化学組成や介在物の影響について鋭意検
討を行なった。その結果、下記（１）〜（３）に示す様
な知見が得られた。
【０００９】（１）冷間鍛造性は、Ｓｉ含有量を制限す
ると共に、Ａｌ2 Ｏ3 やＴｉＮ介在物の生成を抑制する
ことによって、向上させることができる。 （２）被削性は、ＢＮ化合物を生成させると共に、Ａｌ
2 Ｏ3 やＴｉＮ介在物の生成を抑制することによって、
向上させることができる。 （３）ねじり疲労強度は、Ｂ，Ｃｒ，Ｎｉ，Ｍｏ等の添
加による焼入れ性の増大や、Ｍｏによる結晶粒界強度の
改善によって、向上させることができる。
ると共に、Ａｌ2 Ｏ3 やＴｉＮ介在物の生成を抑制する
ことによって、向上させることができる。 （２）被削性は、ＢＮ化合物を生成させると共に、Ａｌ
2 Ｏ3 やＴｉＮ介在物の生成を抑制することによって、
向上させることができる。 （３）ねじり疲労強度は、Ｂ，Ｃｒ，Ｎｉ，Ｍｏ等の添
加による焼入れ性の増大や、Ｍｏによる結晶粒界強度の
改善によって、向上させることができる。
【００１０】上記の様な知見に基づき本発明者らが更に
検討した結果、前述した様な構成を採用することによっ
て、本発明の目的が見事に達成されることを見い出し、
本発明を完成した。本発明で規定される各要件につい
て、順次説明する。まず本発明における化学成分組成の
限定理由は下記の通りである。
検討した結果、前述した様な構成を採用することによっ
て、本発明の目的が見事に達成されることを見い出し、
本発明を完成した。本発明で規定される各要件につい
て、順次説明する。まず本発明における化学成分組成の
限定理由は下記の通りである。
【００１１】Ｃ：０．２〜０．６重量％ Ｃは高周波焼入れによるマルテンサイト組織の強度を支
配する元素である。その含有量が０．２重量％未満で
は、強度を支配するマルテンサイト組織の生成が不十分
であり、十分なねじり疲労強度が得られない。一方、そ
の含有量が０．６重量％を超えると、硬くなって靭性に
乏しくなると共に、切削性が劣化する。
配する元素である。その含有量が０．２重量％未満で
は、強度を支配するマルテンサイト組織の生成が不十分
であり、十分なねじり疲労強度が得られない。一方、そ
の含有量が０．６重量％を超えると、硬くなって靭性に
乏しくなると共に、切削性が劣化する。
【００１２】Ｓｉ：０．０１〜０．２重量％ Ｓｉは硬度を上げる効果があり、そのためには 重量
％以上の添加が必要であるが、あまり多くなると冷間鍛
造時の変形能を下げるので、０．２重量％以下とすべき
である。
％以上の添加が必要であるが、あまり多くなると冷間鍛
造時の変形能を下げるので、０．２重量％以下とすべき
である。
【００１３】Ｍｎ：０．３〜１重量％ 高周波焼入れの安定性を確保するためには、焼入れ性を
高める必要があるが、Ｍｎはこのような焼入れ性を高め
るのに必要な元素である。その効果を発揮させるために
は、その含有量は０．３重量％以上とする必要がある
が、１重量％を超えると切削加工性が低下する。
高める必要があるが、Ｍｎはこのような焼入れ性を高め
るのに必要な元素である。その効果を発揮させるために
は、その含有量は０．３重量％以上とする必要がある
が、１重量％を超えると切削加工性が低下する。
【００１４】Ａｌ：０．０１〜０．１重量％ Ａｌは脱酸効果を発揮すると共に、Ｎとの化合物である
ＡｌＮを生成して高周波焼入れ時の結晶の粗大化を防止
する効果がある。その様な効果を発揮させるためには、
その含有量は０．０１重量％以上とする必要があるが、
０．１重量％を超えて過剰に含有させてもその効果は飽
和する。
ＡｌＮを生成して高周波焼入れ時の結晶の粗大化を防止
する効果がある。その様な効果を発揮させるためには、
その含有量は０．０１重量％以上とする必要があるが、
０．１重量％を超えて過剰に含有させてもその効果は飽
和する。
【００１５】Ｎ：０．００３〜０．０２重量％ ＮはＡｌとの化合物であるＡｌＮを生成して高周波焼入
れ時の結晶粒の粗大化を防止する効果がある。その効果
は０．００３重量％未満では十分でなく、０．０２重量
％を超えて含有してもその効果は飽和する。よってＮ含
有量は０．００３〜０．０２重量％とした。
れ時の結晶粒の粗大化を防止する効果がある。その効果
は０．００３重量％未満では十分でなく、０．０２重量
％を超えて含有してもその効果は飽和する。よってＮ含
有量は０．００３〜０．０２重量％とした。
【００１６】Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％ Ｂは高周波焼入れ性の向上や、ＢＮの生成によって被削
性を向上させるのに有効な元素であり、そのためには
０．０００３重量％以上添加する必要がある。しかしな
がら、０．００７重量％を超えるとその効果は飽和す
る。
性を向上させるのに有効な元素であり、そのためには
０．０００３重量％以上添加する必要がある。しかしな
がら、０．００７重量％を超えるとその効果は飽和す
る。
【００１７】本発明は以上の元素を基本成分とする他、
必要によって、Ｍｏ，Ｎｉ，Ｃｒ，Ｎｂ，Ｖ等の元素を
含有させることも有効である。これらの元素の添加理由
は下記の通りである。
必要によって、Ｍｏ，Ｎｉ，Ｃｒ，Ｎｂ，Ｖ等の元素を
含有させることも有効である。これらの元素の添加理由
は下記の通りである。
【００１８】Ｍｏ：０．２〜１重量％および／またはＮ
ｉ：０．２〜１重量％ ＭｏおよびＮｉは高周波焼入性の向上を図るのに有効な
元素である。またＭｏは、結晶粒界強度の増大および表
層部の圧縮残留応力の増大等に有効な元素である。更
に、Ｎｉは切欠き靭性を向上させるのにも有効な元素で
ある。これらの効果を発揮させるには、いずれも０．２
重量％以上添加する必要がある。しかしながらいずれも
その含有量が１重量％を超えると、圧延ままの硬さが高
くなり過ぎて被削性が低下する。
ｉ：０．２〜１重量％ ＭｏおよびＮｉは高周波焼入性の向上を図るのに有効な
元素である。またＭｏは、結晶粒界強度の増大および表
層部の圧縮残留応力の増大等に有効な元素である。更
に、Ｎｉは切欠き靭性を向上させるのにも有効な元素で
ある。これらの効果を発揮させるには、いずれも０．２
重量％以上添加する必要がある。しかしながらいずれも
その含有量が１重量％を超えると、圧延ままの硬さが高
くなり過ぎて被削性が低下する。
【００１９】Ｃｒ：０．２〜２重量％ Ｃｒは高周波焼入れ性を向上させる元素であり、その為
には０．２重量％以上含有させる必要がある。しかしな
がら、Ｃｒが２重量％を超えて多量に含有されても、焼
入れ性の向上が期待できないばかりか、却って切削性が
劣化する。よって、Ｃｒ含有量は０．２〜２重量％とす
る。
には０．２重量％以上含有させる必要がある。しかしな
がら、Ｃｒが２重量％を超えて多量に含有されても、焼
入れ性の向上が期待できないばかりか、却って切削性が
劣化する。よって、Ｃｒ含有量は０．２〜２重量％とす
る。
【００２０】Ｎｂおよび／またはＶ：単独または合計で
０．０１〜０．５重量％ ＮｂやＶは、高周波焼入れ時のオーステナイト結晶粒の
粗大化防止を図るために有効な元素である。その様な効
果を発揮させるためには、単独または合計で０．０１重
量％以上含有させる必要があるが、それが０．５重量％
を超えるとその効果は飽和する。
０．０１〜０．５重量％ ＮｂやＶは、高周波焼入れ時のオーステナイト結晶粒の
粗大化防止を図るために有効な元素である。その様な効
果を発揮させるためには、単独または合計で０．０１重
量％以上含有させる必要があるが、それが０．５重量％
を超えるとその効果は飽和する。
【００２１】本発明鋼は、上記化学成分組成を有し、残
部Ｆｅおよび不可避不純物よりなるものであるが、該不
可避不純物中のＰ，Ｓ，ＯおよびＴｉ等は下記の様に抑
制する必要がある。
部Ｆｅおよび不可避不純物よりなるものであるが、該不
可避不純物中のＰ，Ｓ，ＯおよびＴｉ等は下記の様に抑
制する必要がある。
【００２２】 Ｐ：０．０１５重量％以下（０重量％を含む） Ｐの低減は両振りねじり疲労破壊時の粒界強度を向上さ
せるが、０．０１５重量％を超えて含有させるとこの効
果は期待できない。よって、Ｐ含有量は０．０１５重量
％以下に抑制する必要がある。
せるが、０．０１５重量％を超えて含有させるとこの効
果は期待できない。よって、Ｐ含有量は０．０１５重量
％以下に抑制する必要がある。
【００２３】 Ｓ：０．０３重量％以下（０重量％を含む） Ｓは硫化物系介在物を生成して高周波焼入れ層の靭性を
低下させる元素であり、できるだけ低減させる必要があ
る。こうした観点から、Ｓは０．０３重量％以下に抑制
する必要がある。
低下させる元素であり、できるだけ低減させる必要があ
る。こうした観点から、Ｓは０．０３重量％以下に抑制
する必要がある。
【００２４】 Ｏ：０．００２０％以下（０重量％を含む） Ｏは鋼中の不純物の形態に大きな影響を及ぼし、特にＡ
ｌ2 Ｏ3 やＳｉＯ2 等の酸化物系介在物はねじり疲労強
度を著しく低下させるので、これらに介在物は極力少な
くしなければならない。こうした観点から、Ｏの含有量
は０．００２０％以下に抑制する必要があり、この範囲
であれば実質上の問題は生じない。
ｌ2 Ｏ3 やＳｉＯ2 等の酸化物系介在物はねじり疲労強
度を著しく低下させるので、これらに介在物は極力少な
くしなければならない。こうした観点から、Ｏの含有量
は０．００２０％以下に抑制する必要があり、この範囲
であれば実質上の問題は生じない。
【００２５】 Ｔｉ：０．００５重量％（０重量％を含む） Ｔｉは後述するＴｉＮ介在物を生成するので、できるだ
け小さい方が良いが、該介在物量が後述する範囲内にな
れば、不可避的に含まれるＴｉは０．００５重量％以下
まで許容できる。
け小さい方が良いが、該介在物量が後述する範囲内にな
れば、不可避的に含まれるＴｉは０．００５重量％以下
まで許容できる。
【００２６】ところで本発明においては、Ａｌ2 Ｏ3 や
ＴｉＮ等の介在物を低減することも重要な要件である
が、これらの要件の限定理由について説明する。まずＡ
ｌ2 Ｏ 3 系介在物は、硬くて鋼中にクラスター状に存在
し、冷間鍛造時の変態能を阻害し、切削時の工具摩耗を
促進する。また応力集中源になって、疲労強度の低下を
もたらす。一方、Ｔｉの添加は、Ｂ添加鋼の焼入れ性向
上効果を高め、結晶粒の粗大化を防止するために有効で
あるが、鋼中にＴｉＮ介在物を生成させ、このＴｉＮ介
在物も前記Ａｌ2 Ｏ3 系介在物と同様の挙動を示す。こ
れらの介在物が、ＪＩＳ Ｇ ０５５５に準拠して測定
される清浄度が合計で０．０１０％を超えると、冷間鍛
造性、被削性および疲労強度を低下させる。尚Ａｌ2 Ｏ
3 やＴｉＮ等の介在物を低減するための具体的な手段と
しては、例えば、鋼製造時に原料からの混入を防止する
と共に、Ａｌによる脱酸と真空脱ガス装置の活用によっ
て鋼中の酸素を極力制限する方法が挙げられる。
ＴｉＮ等の介在物を低減することも重要な要件である
が、これらの要件の限定理由について説明する。まずＡ
ｌ2 Ｏ 3 系介在物は、硬くて鋼中にクラスター状に存在
し、冷間鍛造時の変態能を阻害し、切削時の工具摩耗を
促進する。また応力集中源になって、疲労強度の低下を
もたらす。一方、Ｔｉの添加は、Ｂ添加鋼の焼入れ性向
上効果を高め、結晶粒の粗大化を防止するために有効で
あるが、鋼中にＴｉＮ介在物を生成させ、このＴｉＮ介
在物も前記Ａｌ2 Ｏ3 系介在物と同様の挙動を示す。こ
れらの介在物が、ＪＩＳ Ｇ ０５５５に準拠して測定
される清浄度が合計で０．０１０％を超えると、冷間鍛
造性、被削性および疲労強度を低下させる。尚Ａｌ2 Ｏ
3 やＴｉＮ等の介在物を低減するための具体的な手段と
しては、例えば、鋼製造時に原料からの混入を防止する
と共に、Ａｌによる脱酸と真空脱ガス装置の活用によっ
て鋼中の酸素を極力制限する方法が挙げられる。
【００２７】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【００２８】
【実施例】表１に示す化学成分組成の鋼材を溶製し、熱
間鍛造によって直径：５０ｍｍの棒材とし、焼きならし
後、切削試験片と、図１に示すねじり試験片に機械加工
した。また鋼中の介在物の清浄度を、ＪＩＳ Ｇ ０５
５５に準拠して測定した。このとき清浄度の精度を上げ
るために、各鋼とも１０個のサンプルを用意し、４００
倍の光学顕微鏡下で夫々４０視野ずつ測定した。その結
果を表２に示す。
間鍛造によって直径：５０ｍｍの棒材とし、焼きならし
後、切削試験片と、図１に示すねじり試験片に機械加工
した。また鋼中の介在物の清浄度を、ＪＩＳ Ｇ ０５
５５に準拠して測定した。このとき清浄度の精度を上げ
るために、各鋼とも１０個のサンプルを用意し、４００
倍の光学顕微鏡下で夫々４０視野ずつ測定した。その結
果を表２に示す。
【００２９】
【表１】
【００３０】
【表２】
【００３１】尚表１および表２において、Ａ１鋼〜Ａ５
鋼は基本鋼であり、そのうちＡ１およびＡ２鋼は本発明
鋼である。Ａ３鋼は、Ａ１鋼に相当する鋼にＴｉを添加
すると共に、ＳｉとＯ等の元素の含有量、およびＡｌ2
Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物による合計清浄度が本発明で
規定する範囲を外れる従来鋼である。またＡ４鋼は、Ｔ
ｉを添加して合計清浄度が本発明で規定する範囲を外れ
た従来鋼である。Ａ５鋼はＴｉを添加していないが、鋼
中のＯ含有量が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼で
ある。
鋼は基本鋼であり、そのうちＡ１およびＡ２鋼は本発明
鋼である。Ａ３鋼は、Ａ１鋼に相当する鋼にＴｉを添加
すると共に、ＳｉとＯ等の元素の含有量、およびＡｌ2
Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物による合計清浄度が本発明で
規定する範囲を外れる従来鋼である。またＡ４鋼は、Ｔ
ｉを添加して合計清浄度が本発明で規定する範囲を外れ
た従来鋼である。Ａ５鋼はＴｉを添加していないが、鋼
中のＯ含有量が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼で
ある。
【００３２】Ｂ１鋼とＢ２鋼は、基本鋼にＭｏを添加し
たものである。Ｂ１鋼は、本発明鋼であり、Ｂ２鋼はＴ
ｉを添加し、Ｏ含有量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉ
Ｎ介在物による合計清浄度が本発明で規定する範囲を外
れる従来鋼である。Ｃ１鋼とＣ２鋼は、基本鋼にＮｉを
添加したものである。Ｃ１鋼は、本発明鋼であり、Ｃ２
鋼はＴｉを添加し、Ａｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物に
よる合計清浄度が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼
である。
たものである。Ｂ１鋼は、本発明鋼であり、Ｂ２鋼はＴ
ｉを添加し、Ｏ含有量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉ
Ｎ介在物による合計清浄度が本発明で規定する範囲を外
れる従来鋼である。Ｃ１鋼とＣ２鋼は、基本鋼にＮｉを
添加したものである。Ｃ１鋼は、本発明鋼であり、Ｃ２
鋼はＴｉを添加し、Ａｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物に
よる合計清浄度が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼
である。
【００３３】Ｄ１鋼とＤ２鋼は、基本鋼にＣｒを添加し
たものである。Ｄ１鋼は、本発明鋼であり、Ｄ２鋼はＴ
ｉを添加し、Ｏ含有量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉ
Ｎ介在物による合計清浄度が本発明で規定する範囲を外
れる従来鋼である。Ｅ１鋼とＥ２鋼は、基本鋼にＮｂを
添加したものである。Ｅ１鋼は、本発明鋼であり、Ｅ２
鋼はＴｉを添加し、ＯおよびＡｌ2 Ｏ3 とＴｉＮ介在物
が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼である。Ｆ１鋼
とＦ２鋼は、基本鋼にＶを添加したものである。Ｆ１鋼
は、本発明鋼であり、Ｆ２鋼はＴｉを添加し、Ｏ含有
量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物による合計
清浄度が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼である。
たものである。Ｄ１鋼は、本発明鋼であり、Ｄ２鋼はＴ
ｉを添加し、Ｏ含有量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉ
Ｎ介在物による合計清浄度が本発明で規定する範囲を外
れる従来鋼である。Ｅ１鋼とＥ２鋼は、基本鋼にＮｂを
添加したものである。Ｅ１鋼は、本発明鋼であり、Ｅ２
鋼はＴｉを添加し、ＯおよびＡｌ2 Ｏ3 とＴｉＮ介在物
が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼である。Ｆ１鋼
とＦ２鋼は、基本鋼にＶを添加したものである。Ｆ１鋼
は、本発明鋼であり、Ｆ２鋼はＴｉを添加し、Ｏ含有
量、およびＡｌ2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物による合計
清浄度が本発明で規定する範囲を外れる従来鋼である。
【００３４】表１および表２に示した各種鋼について、
冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労試験を行なった。
このとき冷間鍛造性は、端面拘束圧縮加工での変形抵抗
と割れ発生加工限界を求めた。変形抵抗は、焼きならし
後、直径：２０ｍｍ，高さ：３０ｍｍの試験片に加工
し、６０％圧縮下での荷重を求めて、流動応力を算出し
た。また割れ発生加工限界は、球状化焼きなまし後、直
径：２０ｍｍ，高さ：３０ｍｍの試験片に加工して、割
れが発生する圧縮率を求めて、割れ発生加工限界とし
た。
冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労試験を行なった。
このとき冷間鍛造性は、端面拘束圧縮加工での変形抵抗
と割れ発生加工限界を求めた。変形抵抗は、焼きならし
後、直径：２０ｍｍ，高さ：３０ｍｍの試験片に加工
し、６０％圧縮下での荷重を求めて、流動応力を算出し
た。また割れ発生加工限界は、球状化焼きなまし後、直
径：２０ｍｍ，高さ：３０ｍｍの試験片に加工して、割
れが発生する圧縮率を求めて、割れ発生加工限界とし
た。
【００３５】一方切削試験は、直径：５０ｍｍの棒を焼
きならしした後、超硬合金コーティング工具を用い、切
削速度：１８０ｍ／ｍｉｎ，送り：０．５ｍｍ／ｒｅ
ｖ，切り込み：１ｍｍの条件で乾式切削を行ない、逃げ
面摩耗量が０．２ｍｍに達するまでの切削時間（超硬工
具寿命）を求めた。
きならしした後、超硬合金コーティング工具を用い、切
削速度：１８０ｍ／ｍｉｎ，送り：０．５ｍｍ／ｒｅ
ｖ，切り込み：１ｍｍの条件で乾式切削を行ない、逃げ
面摩耗量が０．２ｍｍに達するまでの切削時間（超硬工
具寿命）を求めた。
【００３６】更に、各鋼種のねじり試験片は、高周波焼
入れ（出力８０ＫＷ，周波数２０ＫＨＺ，電圧１．４Ｋ
Ｖ，電流２．６Ａ，試験片回転数３００ｒｐｍ）を行な
い、その後１８０℃×１時間の条件で焼戻しを行なっ
た。各鋼種の高周波加熱時間は、直径：２３ｍｍ（半径
Ｒ＝１１．５ｍｍ）の平行部の焼入れ硬化層深さＣＤが
５．８ｍｍ（ＣＤ／Ｒ＝５．８ｍｍ／１１．５ｍｍ＝
０．５）となるように夫々設定した。その後、ねじり疲
労試験を行ない、疲労線図を求めて、１×１０5 回のね
じり疲労強度を求めた。これらの試験結果を、表３に示
す。
入れ（出力８０ＫＷ，周波数２０ＫＨＺ，電圧１．４Ｋ
Ｖ，電流２．６Ａ，試験片回転数３００ｒｐｍ）を行な
い、その後１８０℃×１時間の条件で焼戻しを行なっ
た。各鋼種の高周波加熱時間は、直径：２３ｍｍ（半径
Ｒ＝１１．５ｍｍ）の平行部の焼入れ硬化層深さＣＤが
５．８ｍｍ（ＣＤ／Ｒ＝５．８ｍｍ／１１．５ｍｍ＝
０．５）となるように夫々設定した。その後、ねじり疲
労試験を行ない、疲労線図を求めて、１×１０5 回のね
じり疲労強度を求めた。これらの試験結果を、表３に示
す。
【００３７】
【表３】
【００３８】表３から、次の様に考察できる。まず本発
明鋼のＡ１およびＡ２鋼は、従来鋼であるＡ３鋼よりも
冷間鍛造時の変形抵抗が少なく、割れ発生加工限界が高
い。また超硬工具寿命も長く、ねじり疲労強度も高いこ
とがわかる。更に、従来鋼であるＡ４鋼およびＡ５鋼よ
りも、割れ発生加工限界、超硬工具寿命およびねじり疲
労強度の点で優れていることがわかる。一方、本発明鋼
であるＢ１鋼は、従来鋼であるはＢ２鋼よりも、割れ発
生加工限界、超硬工具寿命およびねじり疲労強度の点で
優れていることがわかる。
明鋼のＡ１およびＡ２鋼は、従来鋼であるＡ３鋼よりも
冷間鍛造時の変形抵抗が少なく、割れ発生加工限界が高
い。また超硬工具寿命も長く、ねじり疲労強度も高いこ
とがわかる。更に、従来鋼であるＡ４鋼およびＡ５鋼よ
りも、割れ発生加工限界、超硬工具寿命およびねじり疲
労強度の点で優れていることがわかる。一方、本発明鋼
であるＢ１鋼は、従来鋼であるはＢ２鋼よりも、割れ発
生加工限界、超硬工具寿命およびねじり疲労強度の点で
優れていることがわかる。
【００３９】以下同様にして、本発明鋼のＣ１鋼，Ｄ１
鋼，Ｅ１鋼およびＦ１鋼は、夫々の従来鋼であるＣ２
鋼，Ｄ２鋼，Ｅ２鋼およびＦ２鋼よりも、割れ発生加工
限界、超硬工具寿命およびねじり疲労強度の点で優れて
いることがわかる。
鋼，Ｅ１鋼およびＦ１鋼は、夫々の従来鋼であるＣ２
鋼，Ｄ２鋼，Ｅ２鋼およびＦ２鋼よりも、割れ発生加工
限界、超硬工具寿命およびねじり疲労強度の点で優れて
いることがわかる。
【００４０】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、冷
間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度のいずれにも優
れた高周波焼入れ用鋼が得られ、この鋼材は近年のニー
ズに十分応え得るものである。
間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度のいずれにも優
れた高周波焼入れ用鋼が得られ、この鋼材は近年のニー
ズに十分応え得るものである。
【図１】ねじり試験片の形状を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諏訪 敏樹 兵庫県神戸市灘区灘浜東町２番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内 (72)発明者 家口 浩 兵庫県加古川市尾上町池田字池田開拓2222 番地１ 株式会社神戸製鋼所加古川研究地 区内
Claims (4)
- 【請求項１】 Ｃ：０．２〜０．６重量％，Ｓｉ：０．
０１〜０．２重量％，Ｍｎ：０．３〜１重量％，Ａｌ：
０．０１〜０．１重量％，Ｎ：０．００３〜０．０２重
量％，Ｂ：０．０００３〜０．００７重量％を夫々含有
し、残部Ｆｅおよび不可避不純物からなり、該不可避不
純物中のＰを０．０１５重量％以下（０重量％を含
む）、Ｓを０．０３重量％以下（０重量％を含む）、Ｏ
を０．００２０重量％以下（０重量％を含む）、Ｔｉを
０．００５重量％以下（０重量％を含む）に夫々抑制し
てなり、且つＪＩＳ Ｇ ０５５５に準拠して測定される
Ａｌ 2 Ｏ3 介在物とＴｉＮ介在物の合計清浄度を０．０
１０％以下（０％を含む）に制限したものであることを
特徴とする冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に
優れた高周波焼入れ用鋼。 - 【請求項２】 更に、Ｍｏ：０．２〜１重量％および／
またはＮｉ：０．２〜１重量％を含有するものである請
求項１に記載の高周波焼入れ用鋼。 - 【請求項３】 更に、Ｃｒ：０．２〜２重量％を含有す
るものである請求項１または２に記載の高周波焼入れ用
鋼。 - 【請求項４】 更に、Ｎｂおよび／またはＶ：単独また
は合計で０．０１〜０．５重量％を含有するものである
請求項１〜３のいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP3153094A JPH07242989A (ja) | 1994-03-01 | 1994-03-01 | 冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入れ用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP3153094A JPH07242989A (ja) | 1994-03-01 | 1994-03-01 | 冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入れ用鋼 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07242989A true JPH07242989A (ja) | 1995-09-19 |
Family
ID=12333760
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP3153094A Pending JPH07242989A (ja) | 1994-03-01 | 1994-03-01 | 冷間鍛造性、被削性およびねじり疲労強度に優れた高周波焼入れ用鋼 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH07242989A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006161150A (ja) * | 2004-11-09 | 2006-06-22 | Jfe Steel Kk | 高周波焼入れ用炭素鋼材および機械構造用部品 |
| EP2439303A4 (en) * | 2009-06-05 | 2015-09-02 | Kobe Steel Ltd | STEEL FOR THE FORMATION OF MECHANICAL STRUCTURES |
| KR20150101353A (ko) | 2014-02-25 | 2015-09-03 | 엘에스전선 주식회사 | 종단접속부를 구비한 전력케이블 |
-
1994
- 1994-03-01 JP JP3153094A patent/JPH07242989A/ja active Pending
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006161150A (ja) * | 2004-11-09 | 2006-06-22 | Jfe Steel Kk | 高周波焼入れ用炭素鋼材および機械構造用部品 |
| JP4677854B2 (ja) * | 2004-11-09 | 2011-04-27 | Ｊｆｅスチール株式会社 | 高周波焼入れ用炭素鋼材および機械構造用部品 |
| EP2439303A4 (en) * | 2009-06-05 | 2015-09-02 | Kobe Steel Ltd | STEEL FOR THE FORMATION OF MECHANICAL STRUCTURES |
| KR20150101353A (ko) | 2014-02-25 | 2015-09-03 | 엘에스전선 주식회사 | 종단접속부를 구비한 전력케이블 |
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Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20011211 |