JPH07242374A - 油圧エレベータ昇降速度制御装置 - Google Patents

油圧エレベータ昇降速度制御装置

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JPH07242374A
JPH07242374A JP6033682A JP3368294A JPH07242374A JP H07242374 A JPH07242374 A JP H07242374A JP 6033682 A JP6033682 A JP 6033682A JP 3368294 A JP3368294 A JP 3368294A JP H07242374 A JPH07242374 A JP H07242374A
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JP
Japan
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control
oil flow
flow rate
ascending
hydraulic elevator
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JP6033682A
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Toshihiro Koyama
敏博 小山
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】油温度および負荷圧力による制御対象プロセス
特性の変化の影響を受けにくく、且つ制御対象プロセス
内の存在する固有振動系に起因して発生する振動を抑制
する機能を有する油圧エレベータ昇降速度制御装置を得
る。 【構成】オープンループ走行用油流量制御バルブ電流指
令値パターン19、油流量制御バルブ電流指令値ステッ
プ変更手段20、制御対象モデルパラメータテーブル2
1、H∞制御系設計手段22、H∞制御パラメータテー
ブル12、H∞制御演算手段10、パルスジェネレータ
16、昇降速度算出手段17、始動電流設定モデル1
3、H∞制御出力初期値設定手段14から構成したも
の。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は油流量制御バルブを用い
た油流量制御方式の油圧エレベータ昇降速度制御装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、油流量制御バルブを用いた油流量
制御方式の油圧エレベータの一例として、図13に示す
ように構成されたものがあり、エレベータかご31の上
昇時は、電動機32を一定速度で回転させ、油圧ポンプ
33からの定吐出量の油の全量を油タンク34に戻す。
起動指令が出ると油タンク34へ戻す量を油流量制御バ
ルブ35で調整し、かご31の速度を制御する。
【0003】また、エレベータかご31の下降時は、か
ご31の自重により油圧シリンダ36内の油が油タンク
34へ還流する油量を油流量制御バルブ35で制御し、
かご31の速度を制御する。
【0004】さらに、主制御盤37は、主にマイクロコ
ンピュータにより構成され、かご31の動きに同期した
パルスジェネレータ39からのパルス信号から得られる
かご31の位置と速度、および油流量制御バルブ35か
ら得られる油温と負荷圧力を用いて、最適なバルブ電流
指令を演算して、バルブ制御盤38に送る。バルブ制御
盤38では、主制御盤37からの指令に従って油流量制
御バルブ35のソレノイドに流す電流を制御する。これ
により、油流量制御バルブ35の油の流量制御を行ない
かご31の速度を制御する。なお、40は接触器であ
る。
【0005】図12は図13の従来の油圧エレベータの
速度制御装置の課題を説明するための図を示している。
図からわかるように昇降速度8をフィードバックし昇降
速度目標値9と比較しながらフィードバック制御を行っ
ている。二点鎖線で囲まれた部分1が昇降速度フィード
バック制御のPI制御(比例積分制御)の演算を行う部
分であり、油流量制御バルブに与える電流指令値7を出
力している。この電流指令値7により制御対象プロセス
である油流量制御バルブの開度が制御され、油流量が変
化し、昇降速度8が変化する。
【0006】KP は比例ゲイン、TI は積分時間、αは
比例ゲイン調整係数である。比例ゲインKP 及び積分時
間TI は、油温度、負荷圧力に応じたPI制御ゲインテ
ーブル2,3により決定される。また、昇降速度レベル
に応じて制御対象プロセスの特性が変化するため、制御
ゲイン絞り機能4により比例ゲイン調整係数αを変更
し、制御の安定化を図っている。
【0007】さらに、始動時はフィードバック制御によ
る対応が困難なため、始動電流設定モデル5およびPI
出力初期値設定手段6によりPI制御出力の初期値を予
め定め、フィードバック制御がオンされるまでの制御バ
ルブ電流指令値を定めている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上述べた従来の油圧
エレベータの速度制御装置においては、制御対象プロセ
スの特性が油温度および負荷圧力(積載重量)により変
化する。このため、PI制御パラメータ(図12のKP
,TI )を全ての走行条件に対し共通の値に設定する
ことはできず、油温度および負荷圧力に応じて変更して
いる。このことは調整すべき制御パラメータの増大につ
ながり、現地据付け後の調整期間の増大を招く。
【0009】また、油圧エレベータの制御対象プロセス
は2〜3[Hz]の固有振動系を内部に有しており、こ
のことが制御の安定性に悪影響を与えている。本発明の
目的は、油温度または負荷圧力による制御対象プロセス
特性の変化の影響を受けにくく、且つ制御対象プロセス
内の存在する固有振動系に起因して発生する振動を抑制
する機能を有する油圧エレベータ昇降速度制御装置を提
供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、請求項1に対応する発明では、油流量制御バルブを
用いた油流量制御方式の油圧エレベータにおいて、昇降
速度目標値と昇降速度検出値とを入力としH∞制御演算
を行い、前記油流量制御バルブの電流指令値を出力する
H∞制御系設計手段を備えたことを特徴とする油圧エレ
ベータ昇降速度制御装置である。
【0011】前記目的を達成するため、請求項2に対応
する発明では、油流量制御バルブを用いた油流量制御方
式の油圧エレベータにおいて、前記油流量制御バルブの
電流指令値から昇降速度までの伝達関数を下記モデル: G(s)=[H・(1/T)・〔(1/T22 +ω0
2 〕]÷{〔s+(1/T)〕・[〔s+(1/T
2 )〕2 +ω0 2 ]} H…制御対象プロセスの定常ゲイン[(m/min )/m
A] T…制御対象プロセスの応答時定数[s] ω0 …制御対象プロセス内に存在する固有振動各周波数
[rad] T2 …振動減衰時定数[s] で近似したときのモデルパラメータH,T,ω0 ,T2
をエレベータ走行条件毎に登録する制御対象モデルパラ
メータテーブルと、このパラメータテーブルのモデルパ
ラメータに基づき昇降速度フィードバック制御補償器の
設計を行うH∞制御系設計手段を備えたことを特徴とす
る油圧エレベータ昇降速度制御装置である。
【0012】前記目的を達成するため、請求項3に対応
する発明では、請求項2記載の油圧エレベータ昇降速度
制御装置において、前記油流量制御バルブ電流から昇降
速度までの伝達関数におけるモデルパラメータH,T,
ω0 ,T2 を測定するバルブ電流指令値変更手段を付加
したことを特徴とする油圧エレベータ昇降速度制御装置
である。
【0013】前記目的を達成するため、請求項4に対応
する発明では、油流量制御バルブを用いた油流量制御方
式の油圧エレベータにおいて、昇降速度目標値と昇降速
度検出値とを入力としH∞制御演算を行い、前記油流量
制御バルブの電流指令値を出力するH∞制御系設計手段
を備え、エレベータ始動からフィードバック制御オンタ
イミングまでの油流量制御バルブ始動電流設定モデルを
備えたことを特徴とする油圧エレベータ昇降速度制御装
置である。
【0014】
【作用】請求項1に対応する発明によれば、フィードバ
ック制御演算部において、H∞制御理論を用いた演算を
行っているため、走行条件の変化しても制御応答の安定
性、応答性を損なわない(ロバスト性を有する)昇降速
度制御が可能となる。
【0015】請求項2に対応する発明によれば、制御対
象プロセスの応答特性を左右する下記モデルパラメー
タ: ・制御対象プロセスの定常ゲインH[(m/min )/m
A] ・制御対象プロセスの応答時定数T[s] ・制御対象プロセス内に存在する固有振動各周波数ω0
[rad] ・振動減衰時定数T2 [s] をもとにH∞制御系を設計するように構成されているの
で、ロバスト性に加えて、振動抑制作用を有する制御が
可能となる。
【0016】請求項3に対応する発明によれば、油流量
制御バルブ電流から昇降速度までの伝達特性を測定する
ためのバルブ電流指令値変更機能が付加された構造とな
っているため、上記モデルパラメータH,T,ω0 ,T
2 を測定でき、高精度のH∞制御系の設計が可能とな
る。
【0017】請求項4に対応する発明によれば、H∞制
御応用の補償器の出力と制御出力初期値(フィードバッ
ク制御オンのタイミングにおける電流指令値)とを加算
する形で油流量制御バルブ電流指令値を算出しているの
で、エレベータ始動からH∞制御応用フィードバック制
御への移行をスムーズに行う事が可能となる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の油圧エレベータ昇降速度制御
装置の実施例について図面を参照して説明する。図1
は、その一実施例の機能ブロック図であり、H∞制御演
算部10、H∞制御パラメータテーブル12、始動電流
設定モデル13、制御出力初期値設定手段14、パルス
ジェネレータ16、昇降速度算出手段17、電流指令値
パターン19、電流指令値ステップ変更手段20、制御
対象モデルパラメータテーブル21、H∞制御系設計手
段22から構成されている。
【0019】H∞制御演算部10は、後述するが、従来
のPI制御演算部1に替わるフィードバック制御演算部
である。H∞制御パラメータテーブル12にはH∞制御
演算部10に必要は制御パラメータが格納されている。
エレベータかごの動きはパルスジェネレータ16により
検出され、昇降速度算出手段17においてパルス数がカ
ウントされ昇降速度検出値18となる。また、始動時は
フィードバック制御による対応が困難なため、始動電流
設定モデル13および制御出力初期値設定手段14より
制御出力の初期値を予め定め、フィードバック制御がオ
ンされるまでの制御バルブ電流指令値を定めている。
【0020】また、H∞制御系設計手段22には制御対
象モデルが必要であるため、フィードバック制御によら
ずオープンループ走行用の油流量制御バルブ電流指令値
パターンに従った走行が可能となっている。例えば、オ
ープンループ走行中に油流量制御バルブ電流指令値ステ
ップ変更手段20により電流指令値を変更することによ
り、制御対象の応答を調べることが可能となる。このオ
ープンループ走行結果により制御対象の時定数、定常ゲ
イン、固有振動周波数、振動減衰時定数などのパラメー
タが制御対象モデルパラメータテーブル21に格納され
る。これらの制御対象モデルパラメータテーブル21か
らH∞制御系設計手段22により設計が行われ、H∞制
御パラメータテーブル12の内容が決定される。
【0021】ここで、本発明のポイントとなるH∞制御
理論を油圧エレベータ速度制御にどのようにして応用す
るのかについて、考え方を説明する。図2は、一般的な
フィードバック制御システムの構成を示している。補償
器K(s)の設計を行う際は、制御対象のモデルG
(s)を構築し、このG(s)をもとにしてK(s)の
設計を行う。
【0022】しかしながら、制御対象のモデルG(s)
と実際の制御対象Gr (s)との間には誤差が存在す
る。この誤差Δ(s)を、 Gr (s)={I+Δ(s)}・G(s) …(1) の形で扱い、ブロック図に表したものが図3である。
【0023】油圧エレベータの実際の制御対象Gr
(s)は油温度、負荷圧力によって変化するため、従来
は油温度、負荷圧力によって補償器K(s)内のPI制
御パラメータを切り替えることにより対処していた。油
温度、負荷圧力のレベルに応じて適正なPI制御パラメ
ータを定めることは、調整項目の増大につながる。
【0024】従って、できることならば油温度、負荷圧
力が変化しても補償器K(s)を変更する必要のない制
御システム(ロバスト性のある制御システム)が望まし
い。また、油圧エレベータの制御対象内部には固有振動
系が存在するため、外乱例えば乗客が飛び跳ねるなどの
外乱がトリガになってかごが振動しても速やかに振動が
おさまるよう、PI制御のパラメータ設定には注意を要
する。
【0025】このように油圧エレベータの速度制御装置
には、 ・ロバスト性 ・振動抑制作用 の両者が要求される。このような要求に対し、本発明で
はH∞制御理論を利用している。
【0026】H∞制御理論は、全ての周波数ω[rad
/s]に対して、 |Δ(jω)|<|W2 (jω)| …(2) となるような伝達関数W2 (s)が求められたとき、全
ての周波数ω[rad/s]に対して、 |W2 (jω)・T(jω)|<1 …(3) |W1 (jω)・S(jω)|<1 …(4) ただし、T(s)=G(s)・K(s)・[I+G(s)・K(s)]-1 …(5) S(s)=[I+G(s)・K(s)]-1 …(6) を満足するような補償器K(s)を求める問題として定
式化されている。
【0027】上記において、各式の意味は下記の通りで
ある。 (2)式:制御対象の変動の範囲を規定する式 (3)式:制御システムのロバスト性を補償する式であ
り、(3)式の関係が満足される限り、(2)式で規定
されるモデル変動に対して制御システムが安定であるこ
とを示している。なお、左辺が小さいほどロバスト性が
高くなる。
【0028】(4)式:制御システムの応答性を左右す
る式であり、左辺が小さいほど応答性は良くなることを
意味している。W1 (jω)は周波数重み関数である。 (5)式:目標入力rから出力yまでの伝達関数 (6)式:目標入力rから偏差eまでの伝達関数 上述の(2)〜(6)式にて安定化された問題は、H∞
制御理論において混合感度問題と呼ばれており、次のよ
うにして解くことができる。
【0029】混合感度問題のブロック図を図4に示す。
G(s),W1 (s),G(s)・W2 (s)の状態空
間表現をそれぞれ G(s):dxg/dt=Ag・xg+Bg・u …(7) yg=Cg・xg …(8) W1 (s):dxw1/dt=Aw1・xw1+Bw1・y …(9) z1 =CW1・xW1 …(10) G(s)・W2 (s):z2 =Cw2・xg +Dw2・u …(11) とすれば、拡大プラント(H∞制御理論において、制御
対象Gと周波数重み関数W1 ,W2 を含めたモデルを拡
大プラントと称している。)はつぎのようになる。
【0030】
【数1】
【0031】制御目的は、外部入力wから制御量zまで
の伝達関数をGzw(s)としたとき、閉ループ系を内部
安定とし、かつGzw(s)のH∞ノルムを ‖Gzw(s)‖∞<1 …(16) とするような制御則 u=K(s)・y …(17) を求めることである。
【0032】ここでGzw(s)のH∞ノルムとは、 で表される評価指標である。ここで、σmax {Gzw(j
ω)}はGzw(jω)の最大特異値であり、次式のよう
に定義される。 σmax {Gzw(jω)}=(λmax {Gzw(jω)*
Gzw(jω)})1/2 ただし、Gzw(jω)* はGzw(jω)の共役転置、λ
max {・}は最大固有値を表している。
【0033】このような制御則を設計する方法として、
GloverやDoyleにより提案された方法があ
る。 [Glover−Doyle他の方法]つぎの条件 (1)D11 =0 (2)D12 T ・C1 =0 (3)D12 T ・D12=I (4)D21 T ・D21=I (5)B1 ・D21 T =0 (6)(C1 ,A)可検出 (7)(A,B1 )可安定 が成立し、かつつぎのRiccati方程式の半正定解
P,Qが存在すると仮定する。
【0034】 AT ・P+P・A−P・(B2 ・B2 T −B1 ・B1 T ) ・P+C1 T ・C1 =0 …(18) A・Q+Q・AT −Q・(C2 T ・C2 −C1 T ・C1 ) ・(Q+B1 ・B1 T )=0 …(19) このとき F=−B2 T ・P …(20) M=−Q・C2 T …(21) Z=(I−Q・P)-1 …(22) とおけば、補償器K(s)の状態空間表現はつぎのよう
になる。
【0035】 dxk /dt =Ak ・xk +Bk ・y …(23) u=Ck ・xk …(24) ただし Ak =A+B1 ・B1 T ・P+B2 ・F+Z・M・C2 …(25) Bk =−Z・M …(26) Ck =F …(27) である。
【0036】次に、以上のように構成された実施例の作
用効果について説明する。図からわかるように制御対象
プロセスからの昇降速度8を検出後、フィードバック
し、昇降速度目標値9と比較しながらフィードバック制
御を行っている。二点鎖線で囲まれた部分、すなわち昇
降速度フィードバック制御の演算を行うH∞制御演算手
段10であり、油流量制御バルブに与える電流指令値1
1を出力している。この電流指令値11が制御対象プロ
セスG(s)に送られ、油流量制御バルブの開度が制御
され油流量が変化し、昇降速度8が変化する。
【0037】K(s)=b(s)/a(s)は補償器の
伝達関数、αは調整係数である。補償器K(s)内のパ
ラメータは、H∞制御パラメータテーブル12に格納さ
れている。
【0038】また、始動時はフィードバック制御による
対応が困難なため、始動電流設定モデル13および制御
出力初期値設定手段14により制御出力の初期値を予め
定め、フィードバック制御がオンされるまでの制御バル
ブ電流指令値を定めている。15はフィードバック制御
オンオフ切替スイッチである。
【0039】エレベータかごの動きはパルスジェネレー
タ16により検出され昇降速度算出手段17においてパ
ルス数がカウントされ昇降速度検出値18となる。ま
た、フィードバック制御をオフ(スイッチ15をオフ)
の状態で電流指令値パターン19により強制的に制御バ
ルブ電流を流し昇降機を走行させ、その途中で電流指令
値ステップ変更手段20により電流指令値をステップ的
に変更し、制御対象プロセスの応答を計測することが可
能な構成となっている。制御系設計手段に必要な制御対
象モデルパラメータは制御対象モデルパラメータテーブ
ル21に格納されている。この制御対象モデルパラメー
タテーブル21をもとにH∞制御系設計手段22が制御
パラメータを決定し、結果をH∞制御パラメータテーブ
ル12に格納する。
【0040】本実施例では、制御対象プロセスを次式で
表されるモデル: G(s)=[H・(1/T)・〔(1/T22 +ω0
2 〕]÷{〔s+(1/T)〕・[〔s+(1/T
2 )〕2 +ω0 2 ]} で近似することにより、H∞制御系の設計を行ってい
る。
【0041】ここで、Hは制御対象プロセスの定常ゲイ
ン[(m/min )/mA]であり、制御バルブ電流の変
更量[mA]と昇降速度[m/min ]との間の定常ゲイ
ンを示している。Tは制御対象プロセスの応答時定数
[s]、ω0 は制御対象プロセス内に存在する固有振動
各周波数[rad]、T2 は振動減衰時定数[s]であ
る。
【0042】これらのパラメータH,T,T2 ,ω0
エレベータの走行条件(油温度,負荷圧力)によって変
化する。このため、様々な走行条件のもとで制御対象プ
ロセスの応答特性を計測することが必要となる。
【0043】計測方法は図1のフィードバック制御をオ
フ(スイッチ15をオフ)の状態で電流指令値パターン
19により強制的に制御バルブ電流を流し昇降機を走行
させ、その途中で電流指令値ステップ変更手段20によ
り電流指令値をステップ的あるいはパルス的に変更し、
制御対象プロセスの応答を計測する方法をとればよい。
このとき得られる波形からH,T,T2 ,ω0 を同定す
る。
【0044】・Hは、電流指令値11のステップ変化幅
と昇降速度検出値18の定常的な変化幅から、 H=(昇降速度検出値18の定常的な変化幅[m/min
])÷(電流指令値11のステップ変化幅[mA]) として求められる。
【0045】・Tは、電流指令値11をステップ的に変
更してから、昇降速度検出値18が定常的な変化幅の6
3%の変化を達成するまでに要する時間[s]として求
められる。
【0046】・T2 は、昇降速度検出値18が振動を起
こしてからその振幅が初期の振幅の37%にまで減衰す
るのに要する時間[s]として求められる。 ・ω0 は、昇降速度検出値18に振動を生じた際の振動
角周波数[rad/s]として求められる。
【0047】このようにして得られたパラメータH,
T,T2 ,ω0 の値が、各油温度、各負荷圧力毎のテー
ブルデータとして制御対象パラメータテーブル21に格
納される。
【0048】H∞制御系設計手段22では、制御対象パ
ラメータテーブル21をもとに、前述の(2)式: |Δ(jω)|<|W2 (jω)| …(2) に相当するボード線図を描く。
【0049】これが図5である。図5では、全ての周波
数において(2)式が成り立つようにW2 (jω)が選
ばれている。図5におけるΔは(1)式のΔであり、基
準走行条件(油温度と負荷圧力をある基準状態にとるこ
とを意味する。
【0050】具体的には、油温度と負荷圧力を共に平均
レベルとする。)における制御モデルG(s)を基準と
したときの(1)式で表される誤差分Δを意味する。図
5のように全ての走行条件においてW2 がΔを上回るよ
うに設計する。
【0051】次に、(4)式のW1 を、 W1 (s)=k1 /(T1 ・s+1) …(29) と選ぶ。後は、前述の(7)〜(27)式に従ってH∞
制御系の設計を行えばよい。
【0052】最終的に得られる補償器K(s)は、前述
の(23),(24)式: dxk /dt =Ak ・xk +Bk ・y …(23) u=Ck ・xk …(24) となるが、ここでyは図1のK(s)の入力、uはK
(s)の出力となっている。
【0053】H∞制御パラメータテーブル12には、上
記(23),(24)式内の行列Ak ,Bk ,Ck が格
納され、H∞制御演算部10にて使用される。H∞制御
演算手段10においては、昇降速度検出値18の昇降速
度目標値9からの偏差にゲイン調整係数αが乗じられこ
れがyとなる。このyがH∞制御演算手段10内の補償
器K(s)に入力され、前記(23),(24)式の演
算が行われた後、補償器K(s)の出力uとなる。
【0054】なお、ゲイン調整係数αは通常は1に設定
しておき、応答の微調整を行なう際に使用する。補償器
K(s)の出力uは、制御出力初期設定手段14の出力
0 と足し合わされ、電流指令値11となる。これが制
御対象プロセスG(s)に送られ、昇降速度8が制御さ
れる。
【0055】エレベータかごの動きは、パルスジェネレ
ータ16により検出され昇降速度算出機能17におい
て、パルス数がカウントされ昇降速度検出値18とな
る。また、始動時はフィードバック制御による対応が困
難なため、始動電流モデル設定モデル13および制御出
力初期値設定手段14より制御出力の初期値u0 を予め
定め、フィードバック制御がオンされるまでの制御バル
ブの電流指令値11を定めている。
【0056】本実施例は、走行条件(油温度,負荷圧
力)の変化により制御対象プロセスの特性が変化して
も、制御の応答性、安定性を維持する(ロバスト性を有
する)制御系として構成されており、また、振動抑制効
果の大きい制御系となっている。
【0057】図6は、従来のPI制御を採用した場合の
昇降速度制御系のステップ応答のシミュレーション結果
を示している。これに対し、図7は本実施例を採用した
場合のシミュレーション結果を示している(図7の走行
条件は図6と同様である)。本実施例の採用により制御
応答のオーバーシュートも軽減され、安定且つ応答速度
の速い系となっていることがわかる。
【0058】図8は従来のPI制御を採用し、図6の制
御ゲインのまま走行条件を変更(油温度を高めに、負荷
圧力を低めに変更)した場合のステップ応答のシミュレ
ーション結果を示している。これに対し、図9は本実施
例を採用し、図7の制御ゲインのまま走行条件を同じよ
うに変更(油温度を高めに、負荷圧力を低めに変更)し
た場合のステップ応答のシミュレーション結果を示して
いる。本実施例を採用した場合の方が、走行条件の変化
に対する制御応答の乱れは少なくロバスト性がある(走
行条件の変化に強い)制御系となっていることがわか
る。
【0059】図10は従来のPI制御を採用し、かご振
動を与えた後の振動の収束の様子を示している。これに
対し図11は本実施例を採用し、かご振動を与えた後の
振動の収束の様子を示している(図10および図11の
走行条件は、図8,図9と同様である)。本実施例を採
用した場合の方が、振動抑制効果に優れていることがわ
かる。
【0060】上述の実施例においては、H∞制御系設計
の際に、制御対象プロセスの特性が油温度及び負荷圧力
により変化することを考慮し、(1)式のΔおよび
(2)式のW2 を定め設計を行っていた。このΔおよび
W2 を定める際に、油温度,負荷圧力に加えて走行速度
による制御対象プロセスの特性変化をも考慮し、(1)
式のΔおよび(2)式のW2 を定め設計を行なってもよ
い。
【0061】
【発明の効果】以上述べた油圧エレベータ昇降速度制御
装置によれば、次のような作用効果が得られる。 (1)本発明はフィードバック制御演算部において、H
∞制御理論を用いた演算を行っているため、走行条件が
変化しても制御応答の安定性、応答性を損なわない(ロ
バスト性を有する)昇降速度制御が可能となる。
【0062】(2)本発明は制御対象プロセスの応答特
性を左右する下記モデルパラメータ: ・制御対象プロセスの定常ゲインH[(m/min )/m
A] ・制御対象プロセスの応答時定数T[s] ・制御対象プロセス内に存在する固有振動各周波数ω0
[rad] ・振動減衰時定数T2 [s] をもとにH∞制御系を設計するように構成されているの
で、ロバスト性に加えて、振動抑制作用を有する制御が
可能となる。
【0063】(3)本発明は、油流量制御バルブ電流か
ら昇降速度までの伝達特性を測定するためのバルブ電流
指令値変更機能が付加された構造となっているため、上
記モデルパラメータH,T,ω0 ,T2 を測定でき、高
精度のH∞制御系の設計が可能となる。
【0064】(4)本発明は、H∞制御応用の補償器の
出力と制御出力初期値(フィードバック制御オンのタイ
ミングにおける電流指令値)とを加算する形で油流量制
御バルブ電流指令値を算出しているので、エレベータ始
動からH∞制御応用フィードバック制御への移行をスム
ーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油圧エレベータ昇降速度制御装置の一
実施例の機能ブロック図。
【図2】従来の油圧エレベータの速度制御装置の例を示
すブロック図。
【図3】制御対象のモデルとモデル誤差との関係を表す
ブロック図。
【図4】H∞制御の混合感度問題を表すブロック図。
【図5】油圧エレベータの制御対象プロセスの特性変化
分に相当するボード線図。
【図6】従来のPI制御を採用した場合の昇降速度制御
系のステップ応答のシミュレーション結果を示す図。
【図7】制御ゲインのまま走行条件を変更(油温度を高
めに、負荷圧力を低めに変更)した場合のステップ応答
のシミュレーション結果を示す図。
【図8】本発明による速度制御システムのステップ応答
のシミュレーション結果を示す図。
【図9】制御ゲインのまま走行条件を変更(油温度を高
めに、負荷圧力を低めに変更)した場合のステップ応答
のシミュレーション結果を示す図。
【図10】従来の油圧エレベータの速度制御装置におい
て、かご振動が発生した場合の制御応答のシミュレーシ
ョン結果を示す図。
【図11】本発明の油圧エレベータ昇降速度制御装置に
おいて、かご振動が発生した場合の制御応答のシミュレ
ーション結果を示す図。
【図12】従来の油圧エレベータ昇降速度制御装置の課
題を説明するための図。
【図13】従来の油圧エレベータ昇降速度制御装置の一
例を示す図。
【符号の説明】
8…昇降速度、9…昇降速度目標値、10…H∞制御演
算部、11…油流量制御バルブ電流指令値、12…H∞
制御パラメータテーブル、13…始動電流設定モデル、
14…制御出力初期値設定機能、15…フィードバック
制御オンオフ切替スイッチ、16…パルスジェネレー
タ、17…昇降速度算出機能、18…昇降速度検出値、
19…油流量制御バルブ電流指令値パターン、20…油
流量制御バルブ電流指令値ステップ変更手段、21…制
御対象モデルパラメータテーブル、22…H∞制御系設
計手段、G(s)…制御対象プロセス、K(s)…補償
器、α…調整係数、y…補償器への入力、u…補償器か
らの出力、u0 …制御出力初期設定機能の出力

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油流量制御バルブを用いた油流量制御方
    式の油圧エレベータにおいて、昇降速度目標値と昇降速
    度検出値とを入力としH∞制御演算を行い、前記油流量
    制御バルブの電流指令値を出力するH∞制御系設計手段
    を備えたことを特徴とする油圧エレベータ昇降速度制御
    装置。
  2. 【請求項2】 油流量制御バルブを用いた油流量制御方
    式の油圧エレベータにおいて、前記油流量制御バルブの
    電流指令値から昇降速度までの伝達関数を下記モデル: G(s)=[H・(1/T)・〔(1/T22 +ω0
    2 〕]÷{〔s+(1/T)〕・[〔s+(1/T
    2 )〕2 +ω0 2 ]} H…制御対象プロセスの定常ゲイン[(m/min )/m
    A] T…制御対象プロセスの応答時定数[s] ω0 …制御対象プロセス内に存在する固有振動各周波数
    [rad] T2 …振動減衰時定数[s] で近似したときのモデルパラメータH,T,ω0 ,T2
    をエレベータ走行条件毎に登録する制御対象モデルパラ
    メータテーブルと、このパラメータテーブルのモデルパ
    ラメータに基づき昇降速度フィードバック制御補償器の
    設計を行うH∞制御系設計手段を備えたことを特徴とす
    る油圧エレベータ昇降速度制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の油圧エレベータ昇降速度
    制御装置において、前記油流量制御バルブ電流から昇降
    速度までの伝達関数におけるモデルパラメータH,T,
    ω0 ,T2 を測定するバルブ電流指令値変更手段を付加
    したことを特徴とする油圧エレベータ昇降速度制御装
    置。
  4. 【請求項4】 油流量制御バルブを用いた油流量制御方
    式の油圧エレベータにおいて、昇降速度目標値と昇降速
    度検出値とを入力としH∞制御演算を行い、前記油流量
    制御バルブの電流指令値を出力するH∞制御系設計手段
    を備え、エレベータ始動からフィードバック制御オンタ
    イミングまでの油流量制御バルブ始動電流設定モデルを
    備えたことを特徴とする油圧エレベータ昇降速度制御装
    置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005219929A (ja) * 2004-02-02 2005-08-18 Inventio Ag エレベータケージにおける振動減衰用調整器の設計の方法

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