JPH07236499A - 血液成分からのウイルス核酸抽出キットおよび該試薬を用いるウイルス核酸抽出方法 - Google Patents

血液成分からのウイルス核酸抽出キットおよび該試薬を用いるウイルス核酸抽出方法

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JPH07236499A
JPH07236499A JP5504694A JP5504694A JPH07236499A JP H07236499 A JPH07236499 A JP H07236499A JP 5504694 A JP5504694 A JP 5504694A JP 5504694 A JP5504694 A JP 5504694A JP H07236499 A JPH07236499 A JP H07236499A
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reagent kit
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Satsuki Kobayashi
五月 小林
Takuya Koshizaka
卓也 越坂
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 短時間で、経済的に、コンタミネーションの
危険性を低減することのできるウイルス核酸の抽出キッ
トおよび抽出方法を提供する。 【構成】 a)血液成分にタンパク質分解酵素、検体希
釈液、ならびに場合により塩および共沈剤を含む試薬を
加えインキュベートすることにより血液成分中のタンパ
ク質、ウイルス由来タンパク質、その他の構成成分およ
び混在物を分解、変性する; b)さらにタンパク質変性溶解剤を加えて血液成分中の
タンパク質、ウイルス由来タンパク質、その他の構成成
分および混在物を可溶化する; c)有機溶媒による核酸抽出を行わずに、操作a)で塩
および共沈剤を加えていない場合にはこの段階で両者を
加え、そのまま低級アルコールを加えてアルコール沈殿
を行う、からなる血液成分からの核酸の抽出方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウイルスの核酸(DN
A、RNA)を材料として使用する遺伝子工学、生化
学、臨床検査などのバイオテクノロジーの分野に有用な
血液成分からのウイルス核酸の抽出試薬キットおよび該
試薬キットを用いるウイルス核酸抽出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】血液成分(血清、血漿)からウイルス粒
子中の核酸(ウイルスゲノム)を抽出するには、グアニ
ジンチオシアン酸塩を用いたChomczynskiら
の方法(Analytical Biochemistry 162:156-159, 198
7)もしくはその変法などが最も普及しており、従来法
はおおよそ次の3段階から構成されている。 1.血液成分(血清、血漿)などのタンパク質およびウ
イルス構成タンパク質などの分解変性ならびに可溶化処
理 タンパク質分解変性ならびに可溶化の処理は、非特異的
タンパク質分解酵素であるプロテイナーゼK、プロナー
ゼ、ズブチリシンなどによる加水分解による方法、グア
ニジン塩酸、グアニジンチオシアン塩酸などのカオトロ
ープ剤での変性による方法、ラウリル硫酸ナトリウム、
N−ラウロイルサルコシンナトリウムなどのイオン性界
面活性剤、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニ
ルエーテル(Triton X−100)、ポリオキシ
エチレン(9)オクチルフェニルエーテル(NP−4
0)およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレー
ト(Tween 20)などの中性界面活性剤によるタ
ンパク質可溶化方法、アルカリ変性による方法、煮沸に
よる方法などがある。
【0003】これらの方法は単独使用でもよいが、2種
以上併用することによりさらに分解変性、可溶化の効率
を高めることもできる。また上記処理段階において、尿
素もしくはチオール系還元剤である2−メルカプトエタ
ノール、ジチオスレイトールなどを添加することにより
タンパク質の分解変性処理の効率を高めることもでき
る。 2.有機溶媒による抽出処理 タンパク質分解処理後はフェノール、クロロホルム、フ
ェノール−クロロホルムなどにより除タンパクの意味で
の有機溶媒抽出を行う。この処理は、試料由来のタンパ
ク質および精製過程で添加したタンパク質分解酵素など
を変性、分解除去でき、上層の水相を別の容器に分取す
ることにより核酸成分が抽出できる。また、水相と有機
相の界面を明確にする目的で1/10〜1/30程度の
イソアミルアルコールを含む有機溶媒に添加して抽出す
ることもできる。 3.アルコール沈殿 アルコール沈殿は溶液中の核酸の濃縮、塩の除去および
フェノールなどの有機溶媒の混在物の除去のために行わ
れる。通常、200〜500mM程度の塩化ナトリウム
もしくは酢酸ナトリウムを添加後、エタノールを2〜3
倍量またはイソプロパノールを等量加えて高速遠心する
ことにより核酸を沈殿として回収することができる。
【0004】このアルコール沈殿の際、検体試料中の核
酸量は極めて微量であることが多く、通常のアルコール
沈殿では回収できない場合が生じてくるため共沈剤を添
加することが好ましい。グリコーゲン、トランスファー
RNAなどを適当量添加して共沈させることにより微量
の核酸の回収効率を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の方法では、有機溶媒による抽出もしくはそれ
らに代わる何らかの方法による核酸成分の分離(容器の
移し変え)が必要となる。このため最低チューブが2本
以上必要となり、チューブの蓋の開け閉めの回数も多く
なり、抽出操作が煩雑となり、抽出される核酸の定量性
が失われてしまう可能性が高まる。そのうえ、この分離
操作の際に、汚染(コンタミネーション)の危険性も生
じてくる。またこれらの有機溶媒の使用は危険で人体に
有害であるばかりでなく、その廃棄にも考慮が必要であ
るという欠点を有している。
【0006】そこで、本発明は90分程度の短時間の
簡単な操作で従来の方法と同等以上の高収率、高純度の
ウイルス由来の核酸を抽出できる、操作過程でチュー
ブ間の移し変え作業がなく、1本のチューブで実施でき
るので、臨床分野で利用する際の汚染(コンタミネーシ
ョン)を防ぐことができる、抽出過程で用いたチュー
ブのまま逆転写反応など実験の次に段階へ進むことがで
きる、使用チューブ数が少なく、使用試薬も比較的安
価なので経済的である、フェノール、クロロホルムま
たはその混合物など危険で人体に有害な有機溶媒を使用
しない、などの利点を有する新規な血液成分からのウイ
ルス核酸抽出試薬キットおよび該試薬キットを用いるウ
イルス核酸抽出方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、血清、血
漿などの血液成分に含まれるウイルス中から核酸を、本
発明の試薬キットの各試薬の用量および濃度を工夫する
ことにより、簡易にしかも1本のチューブで、再現性よ
く定量的に抽出しうることを見いだし、本発明を完成す
るに至った。
【0008】本発明は、以下の試薬: (1)タンパク質分解酵素(2)還元剤、界面活性剤、
キレート剤、タンパク質変性剤からなる群から選択され
る少なくとも1種を含む水溶液であって、pHが弱酸性
から弱アルカリ性である検体希釈液、(3)塩および共
沈剤(4)タンパク質変性溶解剤、を組み合わせてなる
血液成分からのウイルス核酸抽出試薬キットを提供す
る。本発明の試薬キットは上記(1)〜(4)の試薬を
含むが、このうち(2)の検体希釈液と(3)の塩およ
び共沈剤とを一緒にして供することも可能である。
【0009】本発明はまた、以下の操作: a)血液成分にタンパク質分解酵素、検体希釈液、なら
びに場合により塩および共沈剤を含む試薬を加えてイン
キュベートすることにより血液成分中のタンパク質、ウ
イルス由来タンパク質、その他の構成成分および混在物
を分解、変性する; b)さらにタンパク質変性溶解剤を加えて血液成分中の
タンパク質、ウイルス由来タンパク質、その他の構成成
分および混在物を可溶化する;そして c)有機溶媒による核酸抽出を行わずに、操作a)で塩
および共沈剤を加えていない場合にはこの段階で両者を
加え、そのまま低級アルコールを加えてアルコール沈殿
を行う、からなる血液成分からの核酸の抽出方法を提供
する。
【0010】本発明の試薬キットを用いるウイルス核酸
抽出は以下の手順で行う。 (a)タンパク質分解酵素によるタンパク質成分の分
解、変性 (a−1)血液成分にタンパク質分解酵素および検体希
釈液を加える。
【0011】本発明における血液成分としては、血清、
血漿を用いることができる。
【0012】タンパク質分解酵素としては、非特異的タ
ンパク質分解酵素が好ましく、プロテイナーゼK、プロ
ナーゼ、ズブチリシンなどが特に好ましい。酵素濃度と
しては、200ng/μl(血液成分)以上が好まし
い。
【0013】本発明の検体希釈液は、還元剤、界面活性
剤、キレート剤、タンパク質変性剤からなる群から選択
される少なくとも1種を含む水溶液であって、pHが弱
酸性から弱アルカリ性の溶液である。還元剤としては、
チオール系還元剤が好ましく、2−メルカプトエタノー
ル、ジチオスレイトールなどが特に好ましい。界面活性
剤としては、上記検体希釈液中で沈殿を起こすおそれの
ないもの、またはは何らかの手段により再溶解可能なも
のである。ラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサ
ルコシンナトリウム、ポリオキシエチレン(10)オク
チルフェニルエーテル(Triton X−100)、
ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル
(NP−40)およびポリオキシエチレンソルビタンモ
ノラウレート(Tween 20)などが特に好まし
い。キレート剤としては、二価の金属イオンをキレート
しうる能力を有するものが好ましく、エチレンジアミン
四酢酸二ナトリウム二水塩(EDTA−2Na)などが
特に好ましい。また、タンパク質変性剤としては尿素が
特に好ましい。これらのうちどれを使用するかは検体の
種類および得られる核酸の性質などに依存する。本発明
の検体希釈液は弱酸性から弱アルカリ性で使用するが、
pHが7〜10が好ましい。 (a−2)塩および共沈剤の添加 この段階で塩および共沈剤を添加しておくことができ
る。塩の種類としては塩化ナトリウム、塩化カリウムま
たは酢酸ナトリウムなどが好ましい。共沈剤としては高
分子多糖類が好ましく、グリコーゲンまたはデキストラ
ンが特に好ましい。デキストランの平均分子量は50
0,000以上のものが特に好ましい。
【0014】ここで本発明の検体希釈液、ならびに塩お
よび共沈剤の試薬成分の一例として好ましい濃度範囲を
以下に示す(なお、以下の濃度は、デキストランを除い
て検体希釈液中の濃度であり、塩および共沈剤も検体希
釈液中に溶解した場合の濃度である)。 2−メルカプトエタノール 0.1−4% N−ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1−2% エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩 1−100mM 尿素 4−10M 塩化ナトリウム 50−500mM デキストラン(平均分子量 2,000,000) 10−200μg/1検体 トリス−塩酸緩衝液(pH7.5) 50−400mM 上記の試薬はpHが弱酸性から弱アルカリ性水溶液で使
用し、上記濃度の試薬混合物水溶液を血液成分(血清、
血漿)100μlに対して100〜1000μl添加す
ることが好ましい。なお、この検体希釈液はタンパク質
分解酵素の加水分解性能を高める、もしくは補助する効
能を有している。また、上記試薬およびタンパク質分解
酵素添加撹拌後、55℃前後で10分間以上インキュベ
ートを行うとよりいっそう上記試薬の効能が上がり、検
体試料中のタンパク質成分の分解、変性効率が高められ
る。
【0015】また、後述するように、塩および共沈剤は
この段階で添加しても、あるいは後のアルコール沈殿の
段階で添加してもよい。 (b)タンパク質変性溶解剤の添加 次いでタンパク質変性溶解剤を添加する。タンパク質変
性溶解剤としては、カオトロープ剤が好ましく、グアニ
ジン塩酸、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン硫酸
塩などが特に好ましい。これらのタンパク質変性溶解剤
は最終濃度が10〜3000mMになるように添加する
のが好ましい。
【0016】また、場合によりタンパク質変性溶解剤を
添加、撹拌後に55℃前後で1分間以上インキュベート
を行うとタンパク質変性溶解剤の効能が一層高められ
る。 (c)アルカリ沈殿 この後、上記反応液にイソプロパノール、エタノールな
どの低級アルコールを添加して核酸を析出沈殿させる。
この操作をアルコール沈殿という。イソプロパノールを
用いる場合は、好ましくはイソプロパノール最終濃度4
0%以上、エタノールを用いる場合は、エタノール最終
濃度が70%以上になるように添加する。この際低級ア
ルコール添加後に−70〜4℃にて冷却し、塩析効果を
高めることもできる。上記したように、この段階で塩お
よび共沈剤を加えることも可能である。
【0017】次いで、好ましくは8,000×g以上、
4℃で冷却遠心を行う。遠心分離時間は5分以上が好ま
しく、核酸は共沈剤と共に白色沈殿としてチューブ底に
得られる。沈殿した核酸は遠心を行った後、上清をデカ
ンテーションまたは吸引により取り除き回収する。
【0018】最後にアルコール沈殿して得られた核酸を
70%エタノールで洗浄し、適当な溶液に再溶解して保
存することにより使用可能な状態となる。
【0019】本発明の方法においては、ここまでのウイ
ルス核酸抽出操作を1本のチューブ内で実施する。
【0020】本発明による上記の方法は、例えばフェノ
ール−クロロホルムで抽出した後、アルコール沈殿を行
うなど従来の技術と組み合わせても使用可能である。
【0021】本発明の方法により抽出されたウイルス核
酸が従来技術により抽出されたウイルス核酸と同等以上
のものであることの確認は以下の項目により行うことが
できる。 (1)逆転写反応 ウイルスがRNAウイルスで、抽出ウイルスゲノムがR
NAである場合には、本発明の方法で抽出されたウイル
ス由来のRNAは抽出に用いたチューブのままで、RN
AをcDNAに変換する逆転写酵素により逆転写反応を
行うことができる。つまり本発明の方法により抽出され
たRNAは逆転写反応を阻害するような物質を含んでい
ない高純度なものである。
【0022】上記逆転写反応で得られたcDNAは以下
に述べる遺伝子増幅法により増幅し確認することができ
る。 (2)抽出遺伝子の増幅(PCR) 本発明の方法により抽出されたウイルス核酸は、それが
DNAであればそのまま、あるいはそれがRNAであれ
ばcDNAに変換の後、そのウイルスゲノムに特異的な
プライマーを用いてPCRにより増幅することができ
る。通常PCR法は厳密な条件を必要とするが、本発明
の方法により抽出されたウイルス核酸はこのPCR法を
阻害するような不純物を含まない高純度なものである。
【0023】PCR法により増幅されたDNAは常法に
よりポリアクリルアミドまたはアガロースゲル電気泳動
の後、エチジウムブロマイド染色により電気泳動像とし
て確認することができる。
【0024】このように本発明の試薬キットおよび方法
を用いて抽出されるウイルス核酸は、血液中のウイルス
の存在確認、または定量など、ウイルスゲノムの研究、
臨床分野に適用できる。また本発明の方法はウイルス以
外にも組織、細菌、培養細胞、白血球などからの核酸抽
出にも応用でき、本発明の抽出方法の応用範囲は極めて
大きい。
【0025】以下に記載する実施例によって本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれに何ら限定される
ものではない。
【0026】
【実施例】
実施例1.ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムの抽
出 本実施例では108コピー/mlのHBVが含まれてい
る血清を陰性血清により段階希釈し、108〜103コピ
ー/mlの希釈系列を作り、各希釈系列の血清を用いて
以下のHBV−DNAの抽出を行った。
【0027】上記の各コピー数のHBVを含むヒト血清
100μlを検体試料とし、使用チューブは容積が1.
5mlのものを用いた。
【0028】タンパク質分解酵素、検体希釈液、塩およ
び共沈剤は以下の試薬、濃度で使用した。 ・タンパク質分解酵素:20mg/mlプロテイナーゼ
K溶液(ベーリンガーマンハイム社製)。 ・検体希釈液(本実施例では検体希釈液に塩および共沈
剤を添加して1つの溶液として使用した。以後の実施例
においても検体希釈液は塩および共沈剤を含むものとす
る)を以下のように調製した。
【0029】 トリス塩酸緩衝液(pH7.5) 200mM 2−メルカプトエタノール 2% N−ラウロイルサルコシンナトリウム 1% エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩 10mM 尿素 8M 塩化ナトリウム 200mM デキストラン T−2000 0.0260% (ファルマシア社製)1.5ml容チューブに検体血清
100μlを取り、タンパク質分解酵素溶液15μl、
検体希釈液385μlを添加した。検体数が多い場合は
予め酵素溶液と検体希釈液を1検体当たりが上記の用量
となるよう混合し、400μlずつ血清に添加すること
も可能である。撹拌後、55℃で30分間インキュベー
トした。次いでこのチューブにタンパク質変性溶解剤と
して8Mグアニジン塩酸溶液を250μl添加し、撹拌
後55℃で15分間インキュベートした。さらにこのチ
ューブにイソプロパノール600μlを添加し撹拌後、
4℃で15分間静置した。12,000×g、4℃で遠
心した後、上清を吸引により除去し、500μlの70
%エタノールで2回洗浄し、同様に遠心後、上清を除去
し10分間吸引乾燥した。ここまでの操作は全て1本の
チューブ内で行った。
【0030】抽出後、得られたHBVゲノムDNAを3
0μlの精製水に再溶解し、そのうちの2.5μlを試
料として用い、HBVゲノムのプレコア領域に特異的な
プライマーを用いて遺伝子増幅を行った。これを1.5
%アガロースゲルの電気泳動に付し、エチジウムブロマ
イド染色により検出した。この結果を図1に示す。
【0031】図から明らかなように、本発明の方法は、
かなりコピー数の少ない試料からも効率よくHBVのD
NAを抽出することができる。また、本発明の方法によ
り抽出したHBVのDNAはPCRに十分使用できる高
純度のものである。
【0032】実施例2.ヒトC型肝炎ウイルス(HC
V)ゲノムの抽出 本実施例では108コピー/mlのHCVが含まれてい
る血清を陰性血清により段階希釈し、108〜103コピ
ー/mlの希釈系列を作り、各希釈系列の血清を用いて
以下のHCV−RNAの抽出を行った。
【0033】上記の各コピー数のHCVを含むヒト血清
100μlを検体試料とし、使用チューブは容積が1.
5mlのものを用いた。
【0034】抽出方法および各試薬の種類、濃度は実施
例1と同様に行った。
【0035】得られたHCVゲノムRNAに逆転写反応
に必要な試薬20μlを添加し、同一チューブ内で逆転
写反応を行った。
【0036】逆転写反応後、反応液5μlに対して、H
CVゲノムのcDNAの5’−ノンコーディング領域に
特異的なプライマーを用い増幅反応を行い、1.5%ア
ガロースゲルにて電気泳動を行いエチジウムブロマイド
染色により検出した。
【0037】なお、同じ検体をAGPC法(acid guani
dinium thicyanate-phenol-choroform 法、実験医学、V
ol.9 No.15:99-102, 1991)の変法(共沈剤使用)にて
抽出し、同様に検出を行い比較した。この結果を図2に
示す。
【0038】図から明らかなように、本発明によりHC
VのRNAの抽出から逆転写反応までを1本のチューブ
で行い、これをPCRに付した場合でも、かなりコピー
数の少ない試料からも効率よくHCVのDNAを抽出す
ることができる。
【0039】実施例3.検出血清の使用量幅の検定 HCVを含むヒト血清(108コピー/mlのHCV含
有)1、10、50、100μlを検体試料とし、使用
チューブは容積が1.5mlのものを用いた。
【0040】抽出方法および各試薬の種類、濃度、用量
および逆転写反応、cDNA増幅は実施例2と同様に行
った。この結果を図3に示す。
【0041】図から明らかなように、いずれの検体試料
を用いてもHCV−RNAの検出を容易に行うことがで
きた。
【0042】なお、本発明の方法は血清、血漿などの血
液成分からのウイルス核酸の抽出に使用できるのみなら
ず、全血からのゲノムDNAの抽出にも使用できる。こ
れを以下の参考例に示す。 参考例1.ウシ血液からのゲノムDNAの抽出 ウシ全血2ml(EDTA採血)をチューブに取り、R
CLB(Red Cell Lysis Buffe
r)(0.32Mシュークロース、1%(v/v)ポリ
オキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、5
mM塩化マグネシウム、12mMトリス塩酸緩衝液)を
4ml加え、氷上でよく混和し、2,000×g、4℃
で5分間遠心分離して上清を除去した。次にRCLBを
2ml加えて混和し、同様に遠心分離、上清除去を行っ
た。この操作をもう一度行った。得られた沈渣に検体希
釈液590μl(実施例1と同じく検体希釈液に塩を溶
解した。但し本参考例では共沈剤は添加していない)、
タンパク質分解酵素(20mg/mlプロテイナーゼ
K)10μlを加え、時折混和しながら55℃で30分
間インキュベートし、沈渣を完全に溶解させた。さら
に、タンパク質変性溶解剤として8Mグアニジン溶液を
50μl添加し混和した後、55℃で15分間インキュ
ベートした。最後にイソプロパノールを600μl加
え、DNAを析出分離した後、70%エタノールで洗浄
し、減圧乾燥して精製水300μlに再溶解した。抽出
したウシゲノムDNA溶液を吸光度測定し、純度および
収量を検討した。
【0043】結果を以下の表1に示す。
【0044】 表1 ウシゲノムDNAの抽出結果(25倍希釈で測定)サンプルNo. A260280260/A280 収量(μg/2ml血液) 1 0.1749 0.0960 1.822 65.6 2 0.1120 0.0587 1.908 42.0
【発明の効果】本発明によって、フェノール、クロロホ
ルムなど有機溶媒を用いる方法などの従来の方法よりも
短時間で、しかも安全に高純度のウイルス核酸を得るこ
とができる。しかも、使用チューブが1本で済み、経済
的である上に、ウイルス核酸を研究する上で最も注意を
要するコンタミネーションの危険性を低減できる。この
ような本発明の効果は多数の血液検体中のウイルスを検
出する場合には特に有用である。
【0045】また、本発明の方法によって抽出、精製さ
れたウイルス核酸は、逆転写反応、遺伝子増幅技術に対
応できるなど、各種遺伝子工学、ウイルス学などの材料
として十分に使用可能なものであり、その応用分野は極
めて広い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により抽出したHBV−DNAを
用いてPCR法により増幅した結果を示すアガロースゲ
ル電気泳動の図である。図中、Mはマーカー(pBR3
22 HaeIII Digestであり、Cは陰性血清
100μlから抽出したコントロールである。
【図2】本発明の方法により抽出したHCV−RNAか
ら逆転写反応によりcDNAを調製し、PCR法により
増幅した結果を、AGPC法と比較して示すアガロース
ゲル電気泳動の図である。図中、Mはマーカー(pBR
322 HaeIII Digest)である。
【図3】検体血清の使用量幅の検定の結果を示す図であ
る。図中、Mはマーカー(pBR322 HaeIII
Digest)であ。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年7月1日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により抽出したHBV−DNAを
用いてPCR法により増幅した結果を示すアガロースゲ
ル電気泳動の写真である。図中、Mはマーカー(pBR
322 HaeIII Digest)であり、Cは陰性
血清100μlから抽出したコントロールである。
【図2】本発明の方法により抽出したHCV−RNAか
ら逆転写反応によりcDNAを調製し、PCR法により
増幅した結果を、AGPC法と比較して示すアガロース
ゲル電気泳動の写真である。図中、Mはマーカー(pB
R322 HaeIIIDigest)である。
【図3】検体血清の使用量幅の検定の結果を示す電気泳
動の写真である。図中、Mはマーカー(pBR322
HaeIII Digest)である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の試薬: (1)タンパク質分解酵素(2)還元剤、界面活性剤、
    キレート剤、タンパク質変性剤からなる群から選択され
    る少なくとも1種を含む水溶液であって、pHが弱酸性
    から弱アルカリ性である検体希釈液、(3)塩および共
    沈剤(4)タンパク質変性溶解剤、を組み合わせてなる
    血液成分からのウイルス核酸抽出試薬キット。
  2. 【請求項2】 タンパク質分解酵素がプロテイナーゼ
    K、プロナーゼおよびズブチリシンから選択される請求
    項1に記載の試薬キット。
  3. 【請求項3】 還元剤が2−メルカプトエタノールまた
    はジチオスレイトールである請求項1に記載の試薬キッ
    ト。
  4. 【請求項4】 界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウム、
    N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチ
    レン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton
    X−100)、ポリオキシエチレン(9)オクチルフ
    ェニルエーテル(NP−40)およびポリオキシエチレ
    ンソルビタンモノラウレート(Tween 20)から
    選択される請求項1に記載の試薬キット。
  5. 【請求項5】 キレート剤が二価の金属イオンをキレー
    トしうる能力を有するものである請求項1に記載の試薬
    キット。
  6. 【請求項6】 塩が塩化ナトリウム、塩化カリウムおよ
    び酢酸ナトリウムから選択される請求項1に記載の試薬
    キット。
  7. 【請求項7】 共沈剤がデキストランまたはグリコーゲ
    ンである請求項1に記載の試薬キット。
  8. 【請求項8】 タンパク質変性溶解剤がグアニジン塩
    酸、グアニジンチオシアン酸およびグアニジン硫酸から
    選択される請求項1に記載の試薬キット。
  9. 【請求項9】 以下の操作: a)血液成分にタンパク質分解酵素、検体希釈液、なら
    びに場合により塩および共沈剤を含む試薬を加えてイン
    キュベートすることにより血液成分中のタンパク質、ウ
    イルス由来タンパク質、その他の構成成分および混在物
    を分解、変性する; b)さらにタンパク質変性溶解剤を加えて血液成分中の
    タンパク質、ウイルス由来タンパク質、その他の構成成
    分および混在物を可溶化する;そして c)有機溶媒による核酸抽出を行わずに、操作a)で塩
    および共沈剤を加えていない場合にはこの段階で両者を
    加え、そのまま低級アルコールを加えてアルコール沈殿
    を行う、からなる血液成分からの核酸の抽出方法。
  10. 【請求項10】 上記操作a)からc)までを1本のチ
    ューブ内で実施する請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 上記操作a)の試薬を添加して撹拌し
    た後55℃前後で15分間以上インキュベートを行い、
    かつ場合により操作b)のタンパク質変性溶解剤を添加
    して撹拌した後55℃前後で1分間以上インキュベート
    を行う、請求項9に記載の方法。
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