JPH0723531B2 - アルミニウム材の表面処理方法 - Google Patents

アルミニウム材の表面処理方法

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JPH0723531B2
JPH0723531B2 JP19372586A JP19372586A JPH0723531B2 JP H0723531 B2 JPH0723531 B2 JP H0723531B2 JP 19372586 A JP19372586 A JP 19372586A JP 19372586 A JP19372586 A JP 19372586A JP H0723531 B2 JPH0723531 B2 JP H0723531B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はアルミニウム或いはアルミニウム合金のグロー
放電による表面処理法及び装置に係り、特に被処理部材
表面に硬質な表面処理層を形成するに好適な処理方法及
び装置に関する。
〔従来の技術〕
アルミニウム或いはアルミニウム合金は比重が小さく、
電気電導度,熱伝導度,反射率等が大きく良好な耐食性
があることから、これらの性質が要求される色々の用
途、例えば陸海空輸送機器,電気機器,家庭用品,光学
機器等の構成部材として用いられているが、これらの用
途において摺動等の摩擦を受ける部分では基地の硬さが
低いことから耐摩耗性に劣る。それを改善するために種
々の表面処理が開発或いは実用化されている。しかし、
アルミニウム材はチタン等と同様に酸素との親和力が非
常に大きく、しかも強固な酸化被膜を形成する。すなわ
ち空気中に放置されたアルミニウム材は空気中の酸素と
反応し、緻密な100Å程度の薄いAl2O3層を形成する。こ
のAl2O3層の存在により、アルミニウム材の表面処理は
鉄系材料に比べて著しく困難であり、その表面処理方法
は限られたものであった。
一般的にはアルミニウム材の表面処理には、しゅう酸,
硫酸,クロム酸或いはこれらの混酸から成る電解液中で
陽極酸化処理により陽極酸化皮膜を形成させることが古
くから行われている(JISH8601)。また近年では、摩擦
係数および耐摩耗性の改善を図る方法として、酸化皮膜
に対して溶解能力のある電解質によって生成された陽極
酸化皮膜の多孔質層内に弗素樹脂を融着させた処理も用
いられるようになっている。(「金属材料」,井衛,16
(1976)50)。これらの方法はいずれもAl2O3被膜を形
成させることが基になっているものであり、これらの被
膜の硬さは処理条件,種類等によっても変化するがHv80
0以下であり、必ずしも充分な耐摩耗性を有するもので
はない。更にこれらの処理法は湿式プロセスであり、前
処理工程,本処理及び後処理工程に多大の時間を要し、
且つ廃液処理などに細心の注意を払う必要があり、総じ
て原価高になっていた。
一方、アルミニウム材は窒素との親和力も酸素の場合と
同様に強く、窒素と容易に反応してAlNを形成する。AlN
は高い硬さを有して耐摩耗性に優れ、物理的性質では融
点が2000℃以上と高く、熱伝導度が大きく、かつ電気絶
縁性に優れている。したがってアルミニウム材の表面に
AlNを形成する技術の開発が種々行われている。例えば
特開昭56-25966号に記載されているように、アルミニウ
ム材を不活性ガスと窒素或いはアンモニアガスの雰囲気
中でアーク熱源で溶融状態に保持することでAlN層を生
成する方法(溶融窒化法),PVD(Physical Vapor Depo
sition)法の反応性スパッタリング或いはARE法(活性化
反応蒸着法,Activated Reactive Evaporation)等の方
法によりAlN層の形成が行われている。溶融窒化法は簡
便に処理部材の必要部のみを迅速に処理できるが、溶融
による熱変形或いは表面粗さの変化を生じる可能性があ
る。またPVD法は被処理部材の表面に皮膜をコーティン
グするものであるため、被処理部材とAlN皮膜の密着性
は低く、且つその値は前処理或いは処理温度等により大
きく影響される。また蒸着あるいはスパッタ粒子の直進
性のために、つき回りも殆どなく、複雑な形状への均一
な処理は困難であるという問題がある。
一方、鉄鋼材料等の窒化処理法の一つにイオン窒化法が
ある。イオン窒化処理法は少なくとも10-1Torr以下に減
圧されている減圧容器(以下炉体と記すことがある)に
処理に必要なガス体を導入し、被処理品が陰極となるよ
うに電極を設け(炉体を陰極とすることもある)これに
外部の直流電源から電圧を印加してグロー放電を発生さ
せて表面硬化処理を行なうものである。第2図はイオン
窒化処理装置の概要を示したものである。一般には被処
理品2が陰極となり、炉体1が陽極となっている。炉体
1は処理中の加熱により各種の機器や部品(気密用パッ
キング等)が過熱されるのを防ぐために水冷構造になっ
ている。イオン窒化処理では真空装置16で炉体内を少な
くとも10-1Torr以下に減圧しながら、水素ガスと窒素ガ
ス或いはアンモニアガスなどの処理ガス11を導入して1
〜10Torrの範囲の所定の圧力に保持し、直流電源3から
300〜1500Vの電圧を印加してグロー放電を発生させて窒
化処理を行なっている。なお第2図において、21は陽極
端子、5は陰極端子、20はガス導入口、19は真空装置16
が接続されたガス排気口、18は真空計端子、17は光高温
計、9は制御盤である。
この技術は大量処理が可能であり、被処理部材を任意の
処理温度にグロー放電エネルギによって制御して窒化す
ることが可能で、被処理材を溶融する必要はない。更に
被処理部材の表面はグロー放電によるイオン衝撃及び処
理ガスの水素ガスで活性化されることにより、前処理の
簡便さ、更に処理の迅速性の特長がある。そのためこの
処理法によれば表面の不動態皮膜(酸化膜)存在により
その除去工程の特別な処理を必要としたステンレス鋼系
も前述の効果により一般の鉄鋼材料と同一に表面窒化処
理を行うことが可能である。そこで、アルミニウム材の
表面に形成されているAl2O3皮膜も上述のイオン窒化法
の効果により活性化してAl2O3皮膜を除去し、Alを窒化
処理してAlNを形成することが検討された。しかし、ア
ルミニウムの表面被膜であるAl2O3は酸化物生成の標準
自由エネルギがステンレス鋼系の鉄の酸化物及びクロム
の酸化物生成の標準自由エネルギよりも小さく、一般の
イオン窒化装置では残留ガス中の酸素により再び反応す
るので、活性な表面は得られず、したがって窒化処理は
困難であった。
そこで、イオン窒化法においてアルミニウム材の表面に
形成されているAl2O3被膜を除去して窒化処理を行う方
法として特開昭60-211061がある。この処理法では、密
閉容器内に残存する酸素ガスを除去する工程と、活性化
ガスを放電させて被処理材の表面を活性化する活性化工
程を行なって窒化処理を行なっている。この処理法によ
れば、ガス導入と減圧を繰返して酸素ガスを除去でき、
その後に希ガスのイオン衝撃によりAl2O3被膜を除去で
き、その後、窒化処理により表面に硬質なAlNの形成が
なされている。しかし、この処理法では、酸素ガスを除
去するために複数(2〜3)回のガス(水素)導入と減
圧(10-3Torr)を繰返して行うので、処理工程が長くな
る。更に活性化工程でAl2O3被膜の除去を希ガスのイオ
ン衝撃によるスパッタクリーニングのみで行っているた
めに、活性化するには0.5〜2hのスパッタクリーニング
を施しており、これも処理工程を長くしている。また、
スパッタクリーニングは昇温工程を経て500℃に過熱さ
れた状態であるため、活性化用ガスの純度あるいは密閉
容器内の僅かな残留酸素によって、Al2O3の酸化物生成
の標準自由エネルギが非常に小さいことから、Al2O3
が形成されてしまう可能性があり、もしAl2O3被膜が形
成されると前述のように窒化処理を行ってもAlNが形成
されない可能性を生じる。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記のように、従来技術によるアルミニウム材の表面処
理には、基材に酸化被膜を積極的に形成したもの、その
被膜中に樹脂の浸透処理を施したもの、或いは表面を溶
融して窒化物(AlN)を形成したもの等があるが、硬さが
低かった。また硬さの高い窒化物をPVD法により形成し
たものにおいても密着性の点で改善すべき点があった。
一方、イオン窒化法により窒素を拡散させて窒化層を形
成する方法ではAl2O3皮膜の除去の前工程が効率的でな
い等改善すべき点があった。
本発明の目的はアルミニウム或いはアルミニウム合金の
表面に高い硬さのAlN被膜を均一に、効率的に形成する
表面処理方法を提供するにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明のアルミニウム材の表面処理方法は、アルミニウ
ム又はアルミニウム合金製の被処理材を減圧容器内に設
置し、該容器内にアルミニウムと反応して揮発性物質を
生成するハロゲン又はハロゲン化合物ガスを反応ガスと
して導入してグロー放電により活性化させて被処理材の
表面を活性な清浄表面とした後に、窒素を含む処理ガス
を該容器内に導入してグロー放電により活性化させ、上
記被処理材の活性な清浄表面から内部に拡散させてAlN
からなる硬い表面処理層を形成させることを特徴とす
る。
前記反応ガスとしては、Cl2,CCl4,SiCl4もしくはBCl4
単独、又はこれに水素ガスおよび希ガスの一種もしくは
複数種を添加したものを用いることができる。
また、前記処理ガスとしては、窒素ガスもしくはアンモ
ニアガスの単独もしくは複合ガスに水素ガスおよび希ガ
スの一種もしくは複数種を添加したものを用いることが
できる。
〔作 用〕
イオン窒化法により金属表面から内部へガス物質を拡散
させ、金属とガス物質の化合物層を金属表面に形成する
には、ガス濃度,反応温度及び時間が主な因子となる。
しかし、それ以前に金属表面が活性状態であってガス物
質が容易に浸透拡散できる事が必須である。しかし、ア
ルミニウム材は前述のように室温に放置した状態でAl2O
3被膜が形成され、この酸化被膜のAl2O3は薄い皮膜(<
100Å)であるにもかかわらず安定でかつ緻密であるこ
とから障壁となってガス物質の拡散を妨げるので、例え
ば窒素ガスを導入しても窒化層は形成されない。そこで
アルミニウム材表面に窒化層を形成するにはAl2O3被膜
を除去し、活性状態の表面を得ることが重要となる。
アルミニウム材の酸化被膜の除去方法としては、(1)ア
ルカリ溶液等の化学洗浄による被膜の破壊、(2)ワイヤ
ブラシング等の機械的方法による被膜の破壊、(3)素地
金属との共晶反応等の冶金反応による被膜の破壊、(4)
イオン衝撃等の電気方法による被膜の破壊等がある。こ
れらの方法についてイオン窒化法のための被処理部材の
前処理としての適用性を考えて見ると、(1)および(2)の
処理は減圧容器である炉体内で行うことは不可能であ
り、炉体外で行えば先に述べた酸化被膜が形成されて目
的を達しない。(3)は金属との接合に用いられているも
のであり、表面処理には適さない。一方、(4)はグロー
放電によるスパッタクリーニングに関しては従来用いら
れており、また、より高真空中で行うイオンビームスパ
ッタ法もあるが、ビームの入射しない穴内面等複雑形状
への適用は困難である。
以上のように、これらの方法てはイオン窒化法のアルミ
ニウム材の酸化被膜を除去する前工程として改善すべき
点がある。そこで本発明では(1)の化学反応をドライプ
ロセスで行うとともに(4)の物理反応をも併用すること
により両者の特長を生かすようにした。すなわち、アル
ミニウム材の表面に化学反応を生じる反応ガスを導入
し、その反応ガスを物理反応(グロー放電)によって活
性にして後記の化学反応を進行させるともに、スパッタ
リング現象によっても表面をクリーニングする。これに
よりアルミニウム材の表面は活性化される。
本発明においては、反応ガスはプラズマ中で解離して活
性イオンとなり、アルミニウム材と化学反応を生じて反
応生成物を生成し、この反応生成物がガスとして排気ポ
ンプで排出される。したがって反応ガスとして重要なこ
とはグロー放電により活性種を発生すること、反応生成
物が炉内の条件(温度,圧力等)下で揮発性に富むこ
と、すなわち蒸気圧の高い物質を生成することである。
反応生成物が炉内の条件下よりも高温において高い蒸気
圧を持つ場合には、反応生成物を形成した段階で気化さ
れず表面層に堆積したまま一種の保護膜となり、その後
の化学反応を阻止してしまうので、目的を達しない。こ
のようなことから、本発明では反応ガスとしてはハロゲ
ン化合物ガスを用いる。このハロゲン化合物ガスをアル
ミニウム材と化学反応させ、塩化アルミニウム(AlCl3)
を生成させる。この塩化アルミニウムの1気圧での昇華
温度は178℃であるから、炉内の条件下でも充分に揮発
させることができる。用いるハロゲン化合物ガスの種類
としては、Cl2,CCl4,BCl3又はSiCl4を用いることによ
って目的を達し得る。例えばCCl4を用いてアルミニウム
材を処理する場合は、プラズマ中でCCl4は次の様な解離
をする。
CCl4+eCCl3 ++Cl*+2e −(1) そして、まず、アルミニウム材表面に形成されている酸
化被膜のAl2O3とCCl3 +との化学反応が生じる。
Al2O32CCl3 +→2AlCl3↑+CO↑+CO2↑ −(2) Al2O3が除去されてしまうと、ClのラジカルもAlとの反
応に関与するようになり、次の化学反応にてAlCl3の反
応生成物を形成してアルミニウム材の純金属表面が得ら
れる。
Al+CCl3 +→AlCl3↑+C −(3) Al+3Cl→AlCl3↑ −(4) 以上のような化学反応及び物理反応により、アルミニウ
ム材には活性な表面が形成される。なお、このような反
応は前述の他のハロゲン化合物ガスによっても同様に行
われる。
その後、前記炉内に窒素を含む処理ガスを導入しグロー
放電により活性化させて、上記被処理材の活性な清浄表
面から内部に拡散させてAlNよりなる硬い表面処理層を
形成させる。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例によって説明する。
アルミニウウム又はアルミニウム合金よりなる被処理部
材は減圧容器内に設けられた基台または吊り治具等の被
処理部材支持治具に配置される。この支持治具は、後述
するが、電極として作用するもので、グロー放電を発生
する電源に接続されているものである。被処理部材のア
ルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とし、他に添
加元素として、Cr,Cu,Mg,Mn,Si,Ni,Fe及びZn等の一種ま
たは二種以上を含むものであってよい。
次に前述の減圧容器を密閉した後、真空排気を行う。こ
の真空排気は低真空域ではロータリーポンプ,高真空域
では油拡散ポンプ,ターボ分子ポンプ等を用いて行うこ
とができる。真空排気を行った後の到達真空度は10-5To
rr以下にするのが望ましい。この到達真空度は次に行う
ハロゲン化合物による表面反応に影響する。10-5Torr以
上では、減圧容器内に存在するH2Oが反応を阻止するの
で、H2Oの分圧を下げるためには10-5Torr以下にする必
要がある。例えば到達真空度が10-2Torr台ではハロゲン
化合物ガスを導入しグロー放電を開始しても前記式(1)
〜(4)に示した反応の開始時間までに非常に時間を要す
るか又は全く反応しない。これに対し、到達真空度が10
-5Torr以下になると反応は速みやかに進行する。この様
に残留ガスの種類によって影響を受けるものであり、H2
Oの場合は減圧容器及び治具類をベーキングすることで
効率的に排気することができる。したがって内部あるい
は減圧容器壁に発熱体を設けて加熱しながら排気するの
がよい。
次にハロゲン化合物ガスを導入してグロー放電を発生さ
せ、化学反応及び物理反応による表面酸化被膜を除去
し、活性なアルミニウム材表面を得る工程について述べ
る。この工程においては反応ガスの活性種を発生させる
ためにグロー放電を発生させる。このグロー放電は直流
の高電圧を印加することによる直流グロー放電でも良い
が、好ましくは高周波を印加することによる高周波グロ
ー放電を用いる。このグロー放電によるハロゲン化合物
ガスのラジカルの反応性と高エネルギのイオンをスパッ
タリングに利用する。したがって被処理部材は、直流グ
ロー放電を用いる場合は陰極に接続される。高周波グロ
ー放電の場合は、アース電位あるいは浮動電位にしたの
では主にラジカルのみの反応になってしまうから、した
がって高周波電位に接続される。この高周波グロー放電
を発生する電極構造は第3図に示すようなもので、被処
理部材の形状により(a)平行平板型或いは(b)ヘキソード
型を用いる。この工程において用いる反応ガスは、前記
のハロゲン化合物ガスCl2,CCl4,BCl3又はSiCl4の一種
或いは複数種を混合して用いてよい。また他の添加ガス
としてイオン衝撃を利用するのにHe,Ne,Ar,Kr,Xe及びRn
の希ガスを添加してもよい。また還元性も図れるH2を添
加しても効果がある。これらの反応ガスを用いることに
より、被処理部材の表面は効率的に酸化被膜を除去でき
て活性化ができる。
反応ガスを導入した減圧容器内の圧力は10-3〜10Torrの
範囲とする。この圧力範囲とするのは、被処理部材の表
面における反応が圧力によって影響されるからである。
圧力を高くすると、運動エネルギーを持った活性な粒子
が放電空間中での粒子間の衝突でその運動エネルギーを
失い、酸化被膜を除去するエネルギーか低下するので、
酸化被膜の除去に要する時間が長くなる。更にアーク放
電の発生頻度も多くなり、放電が不安定になる。よって
上限は10Torrとした。また圧力を小さくすると、グロー
放電の発生,持続が困難になるとともに、イオン衝撃に
よるスパッタリング現象の頻度も少なくなり、酸化被膜
の除去が効率的でない。よって下限は10-3Torrとした。
この活性化工程において被処理部材の温度は、グロー放
電を開始する前は室温であるか、或いは先の減圧工程に
おいてベーキングのために発熱体により加熱されて昇温
されている状態である。次にグロー放電の発生によりイ
オン衝撃の効果で加熱される。この際の温度の上限は後
の表面処理温度と同等とする。この際イオン衝撃のみで
温度が不足する場合は前述の発熱体の加熱を併用して加
熱保持を行ってもよい。温度の上限を表処理温度と同等
としたのは、続いて行う表面処理がガスの種類の切換の
みで行えるので効率的であるためである。反応温度の下
限は反応生成物のAlCl3の昇華温度178℃とする。好まし
くはこれ以上の温度であったほうが、高い揮発性を得ら
れるのでよい。
次に、処理ガスを導入してグロー放電を発生させて活性
な表面に拡散により目的の表面処理被膜を形成する表面
処理工程、すなわち、処理ガスを拡散させてアルミニウ
ムとの化合物たる窒化物AlNよりなる表面処理被膜を形
成する工程について述べる。拡散するガスは窒素である
ことから、窒素源となる処理ガスとしては窒素ガス
(N2)或いはアンモニアガス(NH3)を用い、グロー放電
によって解離、イオン化させてアルミニウムと化合物を
形成させる。また窒素分圧の制御を行うために上記処理
ガスに水素(H2)とHe,Ne,Ar,Kr,Xe又はRnの希ガスの一種
あるいは複数種を添加して混合したガスを用いてもよ
い。処理ガスを活性にするグロー放電は、前の活性化工
程で用いた直流或いは高周波グロー放電を用いる。好ま
しくは直流グロー放電を用いるのが効率的であり、すな
わち、現在一般に行われているイオン窒化法と同様にイ
オン衝撃エネルギのみで処理温度の加熱保持の制御が容
易にでき、他に加熱源を必要としないで処理ができる利
点がある。高周波グロー放電では処理ガスを活性化する
出力は低くてもよいという特長があるが、被処理部材の
温度が低い場合もあり、目的によっては処理温度に加熱
するために大きな出力を印加するか、他に加熱源を併用
することも必要な場合がある。処理ガスを導入した減圧
容器の処理圧力は0.1〜10Torrの範囲とするのがよい。
0.1Torrより低い圧力ではアルミニウム材表面に供給さ
れる活性な窒素量が少ないのでAlNの形成速度が遅くな
る。また10Torrより高い場合は、被膜形成速度に大きな
影響は生ぜず、更に高くなるとグロー放電の均一な発生
維持が困難になり放電が不安定になる。
被膜形成の処理温度は最大570℃とした。この温度は被
処理部材の材質によっても変わり、合金元素が添加され
て部材の融点が低いものでは570℃よりも低い温度で処
理するのが望ましい。高い温度で処理すると、イオン衝
撃のエネルギーにより極く最表面が溶融する可能性があ
る。また処理温度が高くなるにしたがって、被処理部材
の熱変形を生じる問題がある。従って場合に応じて処理
温度を設定するのがよい。すなわち厚い被膜を効率的に
得る場合には高温域の温度で処理し、変形を防止して被
膜を形成する場合または被膜厚さが薄くてもよい場合は
低温域で処理することが好ましい。
次に、以上述べた本発明のアルミニウム材表面処理方法
を実施する処理装置について説明する。第1図はその処
理装置の一実施例概要を示す。減圧容器を成す炉体1は
処理中の加熱により各種の機器や部品(気密用パッキン
グ等)が過熱されるのを防ぐために水冷構造になってい
る。この炉体1は油拡散ポンプ或いはターボ分子ポンプ
等の高真空排気装置14及びロータリーポンプ等の低真空
排気装置16により、10-5Torr以下に減圧される。なおこ
の排気系にはハロゲン化合物ガスの未反応或いは反応生
成物を除去するトラップ15を設けることが低真空排気装
置16を保護する上で良い。この真空排気に当って炉体壁
或いは炉体内の各種構造物に吸着しているH2Oを効率的
に放出するため発熱体12を設け、発熱体電源13により加
熱できる。またこの発熱体12及び発熱体電源13は被処理
部材2の予熱或いは表面処理温度の加熱保持にも用いる
ことができる。被処理部材2は絶縁体により炉体1より
絶縁された電極導入端子5に接続されている。この電極
導入端子5は切換可能のスイッチに接続されており、高
周波電源6からの高周波出力端子(高周波電位)7、或
いは直流高電圧電源3からの直流高電圧出力端子(陰
極)8に接続される。高周波電位或いは陰極に接続され
た被処理部材2は、接地された対向電極4で包囲される
ようになっている。反応ガスのハロゲン化合物ガス10及
び表面処理用ガス11は質量流量計等よる流量制御器9に
よって制御されて炉体1内に導入される。被処理部材2
の温度は光高温計17によって測定される。炉体1内の圧
力は真空測定子18によって検出して測定される。なお第
1図において高周波グロー放電を発生する電極構造は第
3図(b)のようなヘキソード型について示してあるが、
被処理部材1の形状等によっては第3図(a)のような平
行平板型として構成しても良い。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。本実施
例では、被処理部材として純アルミニウム(99.99%)
の板(50mm×50mm×5mmt)を用い、第1図に示す処理装
置を用い、高周波電極構造を第3図(a)のような平行平
板型によって処理した。被処理部材2は電極導入端子5
に接続された支持台上に平らに設置した。対向電極4と
の距離は100mmであった。この様に配設された炉体1内
を真空排気装置14及び16を用いて5×10-6Torrに排気し
た。これは発熱体12に発熱体電源13から電力を投入し、
被処理部材2,対向電極4及び炉体壁を加熱しながら行な
った。この際、被処理部材2の温度は250℃まで加熱し
た。真空排気後、反応ガス10としてCCl4及び水素ガスを
それぞれ100及び50cc/minになるように流量制御器9に
よって調整して炉体1内に導入した。この際の圧力は2
×10-2Torrとした。この状態で電極導入端子5の切換ス
イッチを高周波出力端子7と接続し、高周波電力を印加
し、グロー放電を発生させた。この高周波の周波数は1
3.56MHzとした。このグロー放電は20分間維持した。こ
の際、被処理部材2は発熱体12に発熱体電源13で電力を
供給して500℃に保持した。次に電極導入端子5の切換
スイッチを直流高電圧出力端子8に切換えるとともに、
処理ガス11として窒素ガスを流量制御器9で流量制御し
て供給した。この際、反応ガス10の供給は停止した。被
処理部材2は直流高電圧電源から電力を供給されてグロ
ー放電を発生し、表面処理を開始した。この際の被処理
部材2の処理温度の制御は直流高電圧の電力を制御して
行った。炉体1内の圧力は4Torrに制御した。この際、
真空排気は低真空域排気装置16のみで行なった。この状
態を5時間維持した後、処理ガス及び高電圧の印加を停
止して真空に排気しながら炉体1内で冷却した。以上の
処理を行なって得た被処理部材2の表面は処理前に比較
して黒色を呈していた。この被処理部材2を切断し、バ
フ研磨を行って光学顕微鏡(倍率400倍)により組織を
観察したところ、処理部材の表面には4μm程度の黒色
の被膜が形成されていた。また被処理部材の表面をX線
回折で観察し、黒色の最表面被膜の同定を行った。第4
図にCu-KrによるX線回折図を示す。この結果、被膜はA
lNであることが確認された。次にこの表面をバフ研磨
し、荷重25gによってマイクロビッカース硬さを測定し
た。その結果、Hv1500程度の値が得られた。
以上により、純アルミニウム材の表面には硬質で黒色を
呈したAlNが形成されていることが確認され、本発明の
有効性が明らかになった。
また、本発明によれば、アルミニウム材表面に窒素を拡
散させ、窒化層を形成することにより、無処理の又は従
来の表面処理をしたアルミニウム材に比較して耐食性が
向上する。下表は各処理法と塩水噴霧試験後の外観を比
較したもので、本発明法を行ったアルミニウム部材は耐
食性に優れていることを示している。
〔発明の効果〕 本発明によればアルミニウム材の酸化膜を充分に効果的
に除去し、表面に硬質のアルミニウム窒化物被膜を効果
的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施に用いた処理装置の概略図、第2
図は従来のイオン窒化処理装置の概略図、第3図(a),
(b)は本発明の実施に用いられる高周波電極構成の概略
図、第4図は本発明の実施例で得られた被処理部材の表
面のX線回折図を示す。 1……炉体、2……被処理部材、 3……直流高電圧電源、4……対向電極、 5……電極導入端子、6……高周波電源、 7……高周波出力端子、8……直流高電圧出力端子、 9……ガス流量制御器、10……反応ガス、 11……処理ガス、12……発熱体、 13……発熱体電源、14……高真空域排気装置、 15……トラップ、16……低真空域排気装置、 17……光高温計、18……真空測定子、 19……ガス排気口、20……ガス導入口、 21……陽極端子。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺門 一佳 茨城県勝田市大字高場2520番地 株式会社 日立製作所佐和工場内 (56)参考文献 特公 昭63−25070(JP,B2) 特公 平3−38339(JP,B2)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム又はアルミニウム合金製の被
    処理材を減圧容器内に設置し、該容器内にアルミニウム
    と反応して揮発性物質を生成するハロゲン又はハロゲン
    化合物ガスを反応ガスとして導入してグロー放電により
    活性化させて被処理材の表面を活性な清浄表面とした後
    に、窒素を含む処理ガスを該容器内に導入してグロー放
    電により活性化させ、上記被処理材の活性な清浄表面か
    ら内部に拡散させてAlNからなる硬い表面処理層を形成
    させることを特徴とするアルミニウム材の表面処理方
    法。
  2. 【請求項2】前記反応ガスは、Cl2,CCl4,SiCl4もしく
    はBCl4単独、又はこれに水素ガスおよび希ガスの一種も
    しくは複数種を添加したものからなる特許請求の範囲第
    1項のアルミニウム材の表面処理方法。
  3. 【請求項3】前記処理ガスは、窒素ガスもしくはアンモ
    ニアガスの単独もしくは複合ガスに水素ガスおよび希ガ
    スの一種もしくは複数種を添加したものからなる特許請
    求の範囲第1項記載のアルミニウム材の表面処理方法。
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