JPH07233581A - プレキャスト鉄筋コンクリート板及びコンクリート合成スラブ工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、場所打ちコンクリート打設
時に床の天端レベルが調整し易く、また設備配管等の貫
通孔を設けることができ、更にＰＣａ板と場所打ちコン
クリートとの接合面に剪断応力が作用した場合にも、そ
の一体性を確保することが可能なＰＣａ板及びコンクリ
ート合成スラブ工法を提供することにある。 【構成】 本発明のＰＣａ板は、現場打ちコンクリート
により形成される床の天端高さを示す目印を有する凸部
を予め一体に形成してなる。また前記凸部には貫通孔を
形成することもできる。更に本発明のコンクリート合成
スラブ工法は、現場打ちコンクリートにより形成される
床の天端高さを示す目印を、ＰＣａ板上に形成し、前記
天端高さを示す目印まで現場打ちコンクリートを打設す
ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、プレキャスト鉄筋コン
クリート板及びコンクリート合成スラブ工法に関し、詳
細には、コンクリート合成スラブ工法に用いるプレキャ
スト鉄筋コンクリート板の構造、及びプレキャスト鉄筋
コンクリート板の上に現場打ちコンクリートを打設して
床スラブを形成するコンクリート合成スラブ工法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】近年、建築業界において型枠大工や鉄筋
工等の技能労働者が不足しており、建設会社は、これら
熟練工を集めるため大変苦労している。したがって、熟
練工を必要としないばかりか、作業員数をも減少するこ
とができ、更に施工中の支保工・型枠工事を著しく省力
化できるコンクリート合成スラブ工法が注目されてい
る。

【０００３】すなわちコンクリート合成スラブ工法と
は、プレキャスト鉄筋コンクリート板（以下、本明細書
中にて「ＰＣａ板」という。）をプレキャスト板製作工
場等で製作し、施工現場でこのＰＣａ板を梁間に架設
し、その上に所要の鉄筋を配筋した後に５０〜１００mm
程度の場所打ちコンクリートを打設して一体に床スラブ
を形成する工法をいう。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記コ
ンクリート合成スラブ工法は、施工現場にて場所打ちコ
ンクリートを打設するが故に、技術的に解決すべき課題
が何点か生じる。

【０００５】第一に、場所打ちコンクリート打設時に床
の天端レベルを調整しなければならないことがある。従
来、型枠上に場所打ちコンクリートを打設して、全てを
施工現場にて製作する床スラブの場合、まず足場等に高
さの基準となる印を設けて、更にこれを基準として、床
面から突出している鉄筋等に印を付けて、この印を目安
にするか、またはレベルを見ながら場所打ちコンクリー
トを打設して床の天端レベルを調整している。また、コ
ンクリート合成スラブ工法においても、同様に床天端レ
ベルを調整しており、したがって、手間がかかるという
問題点がある。

【０００６】第二に、ＰＣａ板上にスペーサー等で浮き
上がらせて上端筋として配設した鉄筋は、場所打ちコン
クリート打設時に作業員等により踏まれて押し倒され易
く、上端筋として適切な位置に埋設することができない
という問題点がある。そのために、ＰＣａ板上に脚立等
を配置し、この脚立上に渡り板を架設してその上を作業
員が歩行するといった方法が提案されている。しかし、
この方法は手間がかかるのに加えて、脚立が不安定で、
実際にはあまり用いられていない。

【０００７】第三に、ＰＣａ板は、その上に打設される
場所打ちコンクリートの型枠をも兼ねているため、設備
配管等の貫通孔をその表面に形成することは大変難しい
という問題点がある。

【０００８】本発明は前記問題点を解決せんとしたもの
であり、その目的は、ＰＣａ板と場所打ちコンクリート
との接合面に剪断応力が作用した場合にも、その一体性
を確保することが可能で、かつ場所打ちコンクリート打
設時に床の天端レベルが調整し易いＰＣａ板を提供する
ことにある。

【０００９】また、本発明の別の目的は、ＰＣａ板と場
所打ちコンクリートとの接合面に剪断応力が作用した場
合にも、その一体性を確保することが可能で、かつコン
クリート合成スラブの表裏に貫通する設備配管等の配設
が容易なＰＣａ板を提供することにある。

【００１０】更に本発明の別の目的は、場所打ちコンク
リート打設時に床の天端レベルが調整し易いコンクリー
ト合成スラブ工法を提供することにある。

【００１１】更にまた本発明の別の目的は、場所打ちコ
ンクリート打設時に作業員等により上端筋が踏まれ無い
ように、渡り板の架設が容易なコンクリート合成スラブ
工法を提供することにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的に鑑
みてなされたものであり、その要旨は、コンクリート合
成スラブ工法に用いるシアキーを有するプレキャスト鉄
筋コンクリート板であって、前記シアキーが、現場打ち
コンクリートにより形成される床の天端高さを示す目印
を有する凸部として、予め一体に形成してなるプレキャ
スト鉄筋コンクリート板にある。

【００１３】本発明のＰＣａ板において、前記床の天端
高さを示す目印を有する凸部とは、立方体、円筒、多角
筒、円錐、多角錐及びその他の形状であって、平面に載
置した時に安定するような形状であれば良く、また凸部
表面に複数の溝を設けることもできる。この溝によっ
て、凸部と、ＰＣａ板および現場打ちコンクリートとの
付着強度を向上することができる。更に前記凸部の適当
な箇所、すなわちＰＣａ板または／及び現場打ちコンク
リートと当接する箇所に、表面から突出する補強鉄筋を
設けることができ、これにより、凸部と、ＰＣａ板また
は／及び現場打ちコンクリートとの付着強度を更に向上
することができる。

【００１４】本発明のＰＣａ板において、前記床の天端
高さを示す目印を有する凸部は、ＰＣａ板と一体に形成
されているため、ＰＣａ板と場所打ちコンクリートとの
一体性を高めることができ、接合面に剪断応力が作用し
た場合でも、充分な剪断耐力を得ることができる。

【００１５】本発明のＰＣａ板において、前記床の天端
高さを示す目印とは、前記凸部表面の床天端高さに相当
する部分に切欠きを設けるか、または前記凸部の高さを
床天端高さと同等に形成しても良い。ここで、目印が切
欠きによる場合には、ＰＣａ板上に現場打ちコンクリー
トを打設した後でも、凸部の切欠きより上の部分が現場
打ちコンクリート面より突出しており、この突出部分に
渡り板を架設すれば、この渡り板をコンクリート打設作
業時の作業員の歩行通路として使用することができる。
したがって、歩行用渡り板の設置が確実に実施され、Ｐ
Ｃａ板上にスペーサー等で浮き上がらせて上端筋として
配設した鉄筋が、作業員等により踏まれて押し倒される
ことがなく、上端筋として適切な位置に埋設することが
できる。また、目印が切欠きによる場合には、現場打ち
コンクリートが硬化した後、床天端から突出している凸
部を斫り取る作業が容易に行える。すなわち、この切欠
き部分をハンマー等で打撃するだけで、余分な凸部を斫
り取ることができる。一方、前記凸部の高さを床天端高
さと同等に形成した場合には、前記斫り取り作業が不要
になるので施工効率が向上する。

【００１６】本発明の別の要旨は、コンクリート合成ス
ラブ工法に用いるシアキーを有するプレキャスト鉄筋コ
ンクリート板であって、前記シアキーが貫通孔を有する
凸部として、予め一体に形成してなるプレキャスト鉄筋
コンクリート板を提供することにある。

【００１７】ここで本発明のＰＣａ板において、貫通孔
とはコンクリート合成スラブの表裏に貫通するものであ
り、この貫通孔は設備用配管や電気配線等を配設するこ
とができる寸法および形状に形成すれば良く、それによ
って設備工事の施工効率を高めることができる。また、
この貫通孔は全ての凸部に設ける必要は無く、適宜、設
備上又はその他の必要に応じて設ければ良い。

【００１８】また本発明の別の要旨は、ＰＣａ板の上に
現場打ちコンクリートを打設して床スラブを形成するコ
ンクリート合成スラブ工法であって、現場打ちコンクリ
ートにより形成される床の天端高さを示す目印を、ＰＣ
ａ板上に形成し、前記天端高さを示す目印まで現場打ち
コンクリートを打設して床スラブを形成するコンクリー
ト合成スラブ工法にある。

【００１９】本発明のコンクリート合成スラブ工法にお
いて、床の天端高さを示す目印をＰＣａ板上に形成する
とは、例えば、床天端高さに相当する部分に目印として
の切欠きを設けた前記凸部、または床天端高さと同等高
さに形成した前記凸部を、ＰＣａ板と一体に形成しても
良い。かような目印をＰＣａ板上に形成することによっ
て、この目印をコンクリート打設レベルの目安として使
用することができ、したがって場所打ちコンクリートに
より形成される床の天端レベルの調整が容易に行える。

【００２０】

【作用】本発明のＰＣａ板は、現場打ちコンクリートに
より形成される床の天端高さを示す目印を有する凸部を
予め一体に形成し、このＰＣａ板を施工現場の梁間に架
設し、凸部の目印にしたがってＰＣａ板の上に現場打ち
コンクリートを打設する。この時、凸部に貫通孔を予め
設ければ、この貫通孔を設備配管の配設のために使用す
ることができる。

【００２１】本発明のコンクリート合成スラブ工法は、
現場打ちコンクリートにより形成される床の天端高さを
示す目印をプレキャスト鉄筋コンクリート板上に形成す
ることによって、床の天端高さの調整が容易に行える。
また本発明のコンクリート合成スラブ工法は、作業員等
が歩行する渡り板をＰＣａ板上に支持することにより、
場所打ちコンクリート打設時に作業員等により上端筋が
踏まれて乱されることが無い。

【００２２】

【実施例】以下に、本発明の実施例を添付図面に基づい
て詳細に説明する。

【００２３】図１（ａ），（ｂ）は本発明のＰＣａ板の
斜視図であり、図２は図１（ａ）を使用してなるコンク
リート合成スラブの一部断面図であり、図３（ａ）はＰ
Ｃａ板と一体に形成される凸部の斜視図であり、図３
（ｂ）は図３（ａ）の断面図である。

【００２４】図１（ａ）に示すように、本発明のＰＣａ
板１は現場打ちコンクリート打設時に、床の天端高さを
示す目印としての切欠き３を有する八個の凸部２と、平
板部３とからなる。

【００２５】ここで凸部２は、図３に示すような、予め
形成された八個の略立方体形状の凸部ブロック２’を、
ＰＣａ板１製作時に平板部３に埋設して形成する。な
お、凸部２は、図１（ａ）に示すように縦横に配置して
も、また図１（ｂ）に示すように千鳥状に配置しても、
更にこれら以外の配置とすることも可能である。また凸
部ブロック２’は、切欠き３と、表面に縦に形成された
複数の溝９と、平板部３に当接する四面からそれぞれ二
本ずつ突出する補強鉄筋６と、設備用配管等を貫通する
ための貫通孔５とを備える。なお、前記溝９は、縦溝に
限定されず、斜め、横あるいはメッシュ状に形成しても
良く、また補強鉄筋６は、本数および配設位置を適宜定
めることができる。更に、設備用配管等をコンクリート
合成スラブの表裏に貫通しない箇所に配設する凸部ブロ
ック２’は、貫通孔５を形成せず、図３（ｂ）の貫通孔
５内の斜線７で示した部分にコンクリートを充填して形
成する。但し、この時、切欠き４より上の部分、すなわ
ち斫り取る部分にはコンクリートを充填しない。更にま
た、凸部ブロック２’は、図３（ｂ）の斜線８で示した
部分が無い形状としても良い。

【００２６】次に、本発明のコンクリート合成スラブ工
法について、図４のフローチャートを参照して説明す
る。以下、実施例において、請求項３記載の現場打ちコ
ンクリートにより形成される床の天端高さを示す目印と
しては、前記凸部２の切欠き４を使用し、また請求項４
記載の作業員等が歩行する渡り板をＰＣａ板上に支持す
る手段としては、前記凸部２を使用して説明する。

【００２７】最初に、プレキャスト工場で、図３（ａ）
に示す凸部ブロック２’が一体に埋設されたＰＣａ板１
を製作する。そして、このＰＣａ板１を施工現場へ搬入
し、揚重機等によって構造物の梁１１間に架設し、梁１
１へのかかり代を確認した後に定着金具やボルト等（図
示せず）で定着する。

【００２８】ＰＣａ板１を定着した後、メッシュ筋等の
スラブ上端筋１２を、スペーサー等（図示せず）を用い
てＰＣａ板１上に浮き上がらせて配設する。次いで、Ｐ
Ｃａ板１と場所打ちコンクリート１０とが良好に付着す
るようにＰＣａ板１の上に散水して充分に養生し、ＰＣ
ａ板１の凸部２の上に作業員等の歩行用渡し板（図示せ
ず）を架け渡した後に、場所打ちコンクリート１０を打
設する。この時、凸部２の上端部に形成された切欠き４
を目印にしながら、場所打ちコンクリート１０が切欠き
４に達するまで表面を均しながら打設する。

【００２９】打設が終了したら、場所打ちコンクリート
１０が硬化して充分な強度がでるまで養生する。場所打
ちコンクリート１０が硬化して充分な強度がでたら、ハ
ンマー等で切欠き４より上の余分な部分を打撃して斫り
取る。この後、同様の手順にて更に上階へ施工を進め
る。

【００３０】

【発明の効果】本発明のプレキャスト鉄筋コンクリート
板は、床の天端高さを示す目印を有する凸部が予め一体
に形成されているため、場所打ちコンクリートにより形
成される床の天端レベルの調整が容易に行えると共に、
この凸部によってプレキャスト鉄筋コンクリート板と場
所打ちコンクリートとの一体性を高めることができ、接
合面に剪断応力が作用した場合でも、充分な剪断耐力を
得ることができる。また、凸部に予め貫通孔を設けれ
ば、設備配管等の配設を容易に行うことができる。

【００３１】更に、本発明のコンクリート合成スラブ工
法は、作業員歩行用渡り板の架設を容易に行うことがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）は本発明のＰＣａ板の斜視図であり、
（ｂ）は（ａ）と異なる実施態様を示す、本発明のＰＣ
ａ板の斜視図である。

【図２】本発明のＰＣａ板を使用してなるコンクリート
合成スラブの一部断面図である。

【図３】（ａ）はＰＣａ板と一体に形成される凸部ブロ
ックの斜視図であり、（ｂ）は（ａ）の断面図である。

【図４】本発明のコンクリート合成スラブ工法のフロー
チャートである。

【符号の説明】

１ プレキャスト鉄筋コンクリート ２ 凸部 ３ 平板部 ４ 切欠き（床天端高さを示す目印） ５ 貫通孔 ６ 補助鉄筋 ９ 溝 １０ 現場打ちコンクリート １２ スラブ上端筋

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コンクリート合成スラブ工法に用いるシ
   アキーを有するプレキャスト鉄筋コンクリート板であっ
   て、 前記シアキーが、現場打ちコンクリートにより形成され
   る床の天端高さを示す目印を有する凸部として、予め一
   体に形成してなるプレキャスト鉄筋コンクリート板。
2. 【請求項２】 コンクリート合成スラブ工法に用いるシ
   アキーを有するプレキャスト鉄筋コンクリート板であっ
   て、 前記シアキーが貫通孔を有する凸部として、予め一体に
   形成してなるプレキャスト鉄筋コンクリート板。
3. 【請求項３】 プレキャスト鉄筋コンクリート板の上に
   現場打ちコンクリートを打設して床スラブを形成するコ
   ンクリート合成スラブ工法であって、 現場打ちコンクリートにより形成される床の天端高さを
   示す目印を、プレキャスト鉄筋コンクリート板上に形成
   し、 前記天端高さを示す目印まで現場打ちコンクリートを打
   設して床スラブを形成するコンクリート合成スラブ工
   法。