JPH07223507A - シートベルトのバックル引き込み装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 バックル移動完了時の衝撃を緩和する。 【構成】 ベースプレート３４には、減速度検出センサ
４０と、急減速時にバックル２８を引き込む動力を発生
するインフレータ３６及びシリンダー３８が設置されて
おり、さらにベースプレート３４には、開口部３２が形
成されている。バックル２８には、ワイヤー４２を固定
する固定プレート４６と、開口部３２に嵌合し矢印Ｂ方
向に移動可能なフック６２とが設置されている。減速度
検出センサ４０が所定以上の急減速を検出すると、イン
フレータ３６が作動し、ワイヤー４２が引っ張られる。
そして、ワイヤー４２によりバックル２８が移動する
と、フック６２が開口部３２に形成されたテーパー部に
よって制動されるので、バックルの移動速度が減少さ
れ、移動完了時の衝撃が緩和される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、シートベルトのバック
ル引き込み装置に関し、特に車両衝突時等の急減速時に
乗員の前方移動を阻止するため、車両のシートに装備さ
れたシートベルトのバックルを引っ張ってシートベルト
を引き締めるシートベルトのバックル引き込み装置に関
する。

【０００２】

【従来の技術】現在、車両等のシートには、車両衝突時
等の急減速時に乗員の前方移動を阻止するために、シー
トベルトが配備されている。この種のシートベルト装置
においては、一般にシートベルトに取り付けられたタン
グプレートと、このタングプレートが係止されるバック
ルとが備えられており、これらのタングプレートとバッ
クルとを係合離脱することにより、シートベルトの装着
または取り外しが行われる。

【０００３】しかしながら、シートベルトを装着して
も、乗員の運転姿勢によってはシートベルトに撓みが発
生し、十分な拘束力が得られない場合がある。そこでこ
の問題を解決するため、積極的にシートベルトの撓みを
少なくする技術として、例えば実開平３−５１６５７号
公報に開示されているように、車両衝突時等の急減速を
検出してシートベルトのバックルを車両の下方向に引き
込み、シートベルトの撓みを少なくして、乗員の拘束力
を向上させるバックル引き込み装置が知られている。

【０００４】図１０は、前記従来のシートベルトのバッ
クル引き込み装置の概略図である。このバックル引き込
み装置は、バックル１５０の移動をガイドする略長方形
の開口部１５４を設けたベースプレート部１５２と、バ
ックル１５０を移動させる動力を発生するバネ１５８、
バネシリンダー１６０及びバネ座１６２から成る動力部
１５６と、衝突時等の所定以上の急減速を検出する減速
度検出センサ部１６８とから構成されている。バネ座１
６２とバックル１５０間は、駆動レバー１７０とバック
ルの支持部材１７２によって接続されている。また、バ
ックルの支持部材１７２には、開口部１５４の長手方向
の一方の辺に形成されたラチェット歯１７４に噛合し、
かつ開口部１５４に嵌合するフック部１７６がボルト固
定されている。

【０００５】このバックル引き込み装置では、減速度検
出センサ部１６８で車両の所定以上の急減速を検出する
と、レバー１７８が軸１８０を中心に時計方向に回動
し、ガイドロッド１６４の段部１６６とレバー１８２の
係合が外され、バネ座１６２がバネ１５８の付勢力によ
り矢印Ｘ方向に移動し、駆動レバー１７０が軸１８４を
中心として時計方向に回動すると、バックル１５０が開
口部１５４に沿って下方（矢印Ｙ方向）に移動して、シ
ートベルトが引き締められる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このバ
ックル引き込み装置においては、駆動部１５６を作動さ
せ、バックル１５０を開口部１５４に沿って下方に引っ
張ると、バックル１５０の移動が完了する際、フック部
１７６と開口部１５４の終端部１８６が干渉すること
で、バックル１５０の移動が止められる。この時、バッ
クル１５０は急減速するので、バックルの支持部材１７
２を介してバックル１５０に大きな衝撃が加わる虞があ
る。

【０００７】そこで本発明が解決しようとする課題は、
バックルの移動が完了する直前のバックルの移動速度を
減少させることによって、バックルの移動が完了する際
の衝撃を緩和することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明におけるシートベルトのバックル引き込み装
置は、シートベルトのタングプレートを着脱可能に連結
するバックルと、車両の所定以上の急減速を検出する急
減速検出手段と、該急減速検出手段の信号を受けて前記
バックルを引き込むための動力を発生する駆動装置とを
備えるシートベルトのバックル引き込み装置において、
前記バックルの移動が完了する直前にバックルの移動速
度を減少させる減速手段を備えることを特徴とする。

【０００９】

【作用】本発明におけるシートベルトのバックル引き込
み装置は、急減速検出手段で車両の所定以上の急減速が
検出されると、駆動装置がバックルを引き込むための動
力を発生する。バックルは、この動力により引き込まれ
て移動する。そして、バックルの移動が完了する直前
に、減速手段によってバックルの運動エネルギーが減少
させられるので、バックルの移動速度が減少する。その
結果、バックルへの衝撃が緩和される。

【００１０】

【実施例】以下、本発明のバックル引き込み装置が適用
された実施例について図１から図９に基づいて説明す
る。

【００１１】図１に示すように、シートベルト１０は、
その一端が車室１２のセンターピラー１４に設置された
リトラクタ装置１６に接続されている。他端はリトラク
タ装置１６の上方のセンタピラー１４に設置されたショ
ルダーアンカー１８を介してアンカープレート２０に接
続されている。そしてショルダーアンカー１８とアンカ
ープレート２０との間には、シートベルト１０に沿って
移動自在なタングプレート２２が設置されている。ま
た、前席シートの運転席２４と助手席２６の間には、タ
ングプレート２２を係合離脱するバックル２８が設置さ
れている。バックル２８の下方にはバックル引き込み装
置３０が設置されている。

【００１２】図２は本発明の第１実施例のバックル引き
込み装置３０を表側から見た主要部の斜視図である。引
き込み装置３０は、図示しないシートのフレームに固定
されバックル２８の移動方向をガイドする開口部３２を
形成したベースプレート３４と、ベースプレート３４上
に設置されバックル２８を引き込むための駆動装置とし
てのインフレータ３６及びシリンダー３８と、インフレ
ータ３６近傍に設置され自車両の衝突時等に発生する所
定以上の急減速を検出する急減速検出手段としての減速
度検出センサ４０とから構成されている。

【００１３】インフレータ３６にはガス発生剤（例え
ば、窒素ガス発生剤）が内蔵されており、減速度検出セ
ンサ４０からの信号を受けてガスを発生し、ガス圧によ
ってシリンダー３８内の図示しないピストンを矢印Ａ方
向に移動させることで、バックル２８を移動させる動力
を発生させる。また、ワイヤー４２の一端はシリンダー
３８内のピストンに接続され、ワイヤー４２の他端はガ
イドプーリー４４を介してバックル２８の固定プレート
４６に接続されている。従って、シリンダー３８で発生
した動力は、ワイヤー４２を介してバックル２８に伝え
られる。

【００１４】ワイヤー４２の固定プレート４６とシリン
ダー３８との間には、ワイヤー４２を巻回し、ワイヤー
４２の移動方向をガイドするガイドプーリー４４が配置
されている。ガイドプーリー４４は、略円柱状で、円柱
の４分の１が切り取られた形状であり、その側面にはワ
イヤー４２を巻回する溝部が形成されている。なお、ガ
イドプーリー４４は、切り取られた部分に形成された平
面部４８の位置が、開口部３２の終端部５０近傍に一致
するようにベースプレート３４にボルト固定されてい
る。

【００１５】また、ベースプレート３４には、図３に示
すようにバックル２８の移動方向をガイドするため、略
長方形の開口部３２が形成されている。開口部３２の長
手方向の一方の辺には、ラチェット歯５２が形成されて
おり、長手方向の他方の辺５４の終端部５０の近傍に
は、下方向（図３矢印Ｂ方向）に向って短手方向（図３
矢印Ｃ方向）の開口幅が角度θ（例えば、θ＝１０度）
で漸減するテーパー部５６が形成されている。

【００１６】図２から図４に示すようにバックル２８
は、タングプレートを係止するバックル基部５８と、バ
ックル基部５８を支持するバックル支持部材６０と、ワ
イヤー４２の一端を固定するための略Ｌ字状の固定プレ
ート４６と、開口部３２のラチェット歯５２に噛合する
ラチェット歯６２ａが形成されたフック６２と、ベース
プレート３４の裏面からフック６２を支持するフック支
持部材６４と、から構成されている。図４の断面図に示
すように、バックル支持部材６０、固定プレート４６、
フック６２、フック支持部材６４の各部材は、ボルト６
６によって一体的に連結固定されている。

【００１７】また、図３に示すようにフック６２は、通
常時（バックル引き込み装置の非使用時）、ラチェット
歯５２、６２ａを噛合させて開口部３２の上端部５１近
傍に嵌合されている。フック６２の側面部６２ｂと開口
部３２の他方の辺５４の間には、微小な開口幅Ｄが形成
されている。この開口幅Ｄには、フック６２と他方の辺
５４を背反する方向（矢印Ｃ方向）に押圧するように付
勢された略Ｕ字状のバネ部材６８が介装され、バネ部材
６８はフック６２の側面部６２ｂに固定されている。通
常時は、バネ部材６８の押圧によってラチェット歯５
２、６２ａの係合力が増加し、バックル２８の下方向
（矢印Ｂ方向）への移動が規制される。

【００１８】次に上記第１実施例の作用について説明す
る。減速度検出センサ４０が自車両の衝突時等に発生す
る所定以上の急減速を検出すると、インフレータ３６に
信号を送る。インフレータ３６は、信号を受けて直ちに
ガス発生剤に着火し、ガスを発生させる。そして、ガス
がシリンダー３８内に充満し、そのガス圧によってシリ
ンダー３８内の図示しないピストンが矢印Ａ方向に移動
すると、ピストンに接続されたワイヤー４２が同方向に
引っ張られる。

【００１９】ワイヤー４２は、ガイドプーリー４４を介
してバックル２８が取り付けられた固定プレート４６を
下方向（矢印Ｂ方向）に引っ張る。そして、この引っ張
りの動力によってバネ部材６８が撓められ、ラチェット
歯５２、６２ａの係合力が弱められるので、フック６２
のラチェット歯６２ａが開口部３２のラチェット歯５２
から外れて摺動する。その結果、バックル２８は下方向
に移動する。

【００２０】そして、開口部３２の終端部５０近傍で
は、バックル２８が終端部５０に近づくに従って、テー
パー部５６によりバネ部材６８がさらに撓められるが、
同時に開口幅Ｄが小さくなり、逆に、ラチェット歯６２
ａのラチェット歯５２に対する係合力が増加するので、
バックル２８の移動速度が減少する。従って、フック６
２が開口部３２の終端部５０に干渉する際には、バック
ル２８の運動エネルギーが減少しているので、移動完了
時の衝撃も減少する。

【００２１】次に、本発明の第２実施例について図５に
基づいて説明する。第１実施例と同一構成については、
同じ番号を付し、その説明を省略する。図５は、ベース
プレート３４裏側の斜視図で、図２の反対側から見た図
に相当する。ベースプレート３４には、開口部３２の周
囲に沿ってＵ字状に減速手段としてのピアノ線７０が接
着力の弱い接着剤等で仮固定されており、その両端は固
定ピン７２で固定されている。また、フック６２をベー
スプレート３４の裏側から支持するフック支持部材６４
には、ピアノ線７０の一部７０ａに係合しやすくするた
めに湾曲した係合部６４ａが形成されている。

【００２２】バックル２８が下方（矢印Ｂ方向）に移動
する場合、フック６２が開口部３２の終端部５０に干渉
する直前に、バックル２８のフック支持部材６４の係合
部６４ａがピアノ線７０の一部７０ａに係合する。ピア
ノ線７０は、この係合によって所定以上の張力がかかっ
て伸張する。バックル２８は、ピアノ線７０の伸張によ
る変形で、バックル２８の移動が完了する直前にバック
ル２８の移動速度が減少するので、フック６２と開口部
３２の終端部５０との干渉時の衝撃が減少する。なお、
ピアノ線７０に代えて、塑性変形可能な略Ｕ字状の金属
プレートを用いてもよい。また、開口部３２の周縁に、
バックル２８の移動時に固定プレート４６またはフック
支持部材６４に摺接する摩擦部材を設置してもよい。

【００２３】次に、本発明の第３実施例について図６と
図７に基づいて説明する。第１実施例と同一構成につい
ては、同じ番号を付し、その説明を省略する。第３実施
例では、図７に示すように、ワイヤー４２を固定するた
めの固定プレート７４が、第１実施例のＬ字型の固定プ
レートにおいて、その一端部で延長され、下方に所定角
度φ（例えば、φ＝４５度）を有するように折り曲げら
れ、減速手段としてのクッション部７６が形成されてい
る。さらに、クッション部７６の中央にはワイヤー４２
を挿通するための長孔７８が形成されている。ワイヤー
４２は、その一端をシリンダー３８内の図示しないピス
トンに接続されており、他端はガイドプーリー４４を巻
回し、クッション部の長孔７８を挿通して固定プレート
７４でワイヤー抜け止めナット８０により固定されてい
る。

【００２４】上記第３実施例の作用について説明する
と、第１実施例と同様に減速度検出センサ４０で所定以
上の急減速が検出されると、インフレータ３６でガスが
発生し、シリンダー３８内でピストンが移動することに
よって、ワイヤー４２が引っ張られる。そして、バック
ル２８が矢印Ｂ方向に引っ張られて移動し、固定プレー
ト７４が終端部５０近傍まで移動すると、ガイドプーリ
ー４４の平面部４８と固定プレート７４のクッション部
７６が干渉する。クッション部７６は、干渉により矢印
Ｄ方向に弾性変形させられ、撓められる。この時、クッ
ション部７６に復元力が矢印Ｅ方向に働き弾性作用が発
生するので、バックルの移動速度が減少し、固定プレー
ト７４と平面部４８との干渉時の衝撃が減少する。

【００２５】次に、第４実施例について説明する。図８
に示すように、バックル２８の固定プレート８２には、
ワイヤー固定部８４の下面（ガイドプーリー４４側）に
弾性作用を有する弾性部材８６（減速手段）、例えばゴ
ムを配置した構成である。弾性部材８６の他の実施例と
して、皿バネ、板バネ等のバネ部材でもよい。バックル
２８が移動完了する際は、弾性部材８６がガイドプーリ
ー４４の平面部４８と干渉し、弾性変形する。そして、
弾性部材８６の弾性変形によってバックル２８の運動エ
ネルギーが吸収され、移動速度が減少する。

【００２６】また、弾性部材８６の代わりに、塑性変形
可能な樹脂部材やハニカム状の金属材料等の塑性変形部
材８６を設置してもよい。塑性変形部材８６を設置する
構成にすれば、固定プレート８２が下方に移動して塑性
変形部材８６がガイドプーリー４４の平面部４８に干渉
する際、塑性変形部材８６の塑性変形でバックル２８の
運動エネルギーが吸収され、移動速度が減少する。その
結果、バックル移動完了時の衝撃が緩和される。

【００２７】図９は、本実施例の第５実施例である。固
定プレート８８の下面に円錐状に形成された鉛製のスト
ッパ部材９０（減速手段）を配置した構成である。スト
ッパ部材９０は、円錐の頂部が下方向、即ちワイヤーの
移動方向に一致するように設置されている。また、ワイ
ヤー４２を巻回するガイドプーリー４４の溝部９２（減
速手段）は、ストッパ部材９０が嵌入可能に形成されて
いる。バックル引き込み時は、ワイヤー４２が引っ張ら
れてバックルが移動し、ストッパ部材９０がガイドプー
リー４４の溝部９２に嵌入し始めると、溝部９２が押し
広げられながら変形するので、バックル２８の運動エネ
ルギーが吸収され、移動速度が減少する。その結果、バ
ックル移動完了時の衝撃が緩和される。

【００２８】以上、本発明の実施例について説明した
が、この本発明には特許請求の範囲に記載した技術的事
項以外に次の様な各種の技術的事項の実施態様を有する
ものであることを付記しておく。請求項１に記載した減
速手段は、第１実施例に示す如く、バックルの移動完了
直前にフックのラチェット歯と開口部のラチェット歯の
係合力を増加させる係合力増加手段を設置する構成であ
ることを特徴とする。また、第２実施例から第５実施例
に示す如く、移動完了直前に減速手段自身を弾性変形ま
たは塑性変形させることによってバックルの移動速度を
減少させる変形減速手段を設置する構成であることを特
徴とする。

【００２９】なお、上記各実施例はインナー側に設置し
たシートベルトのバックル引き込み装置について説明し
たが、本件発明はアウター側に設置したバックル引き込
み装置などに適用してもよく、所定以上の急減速時にバ
ックルを引き込む構成ならば、バックル引き込み装置の
構成を限定することなく適用できる。また、インフレー
タの作動は、エアバッグ等に使用されている衝突検出セ
ンサの信号により作動させてもよく、インフレータをシ
ートフレームやベースプレートの他に、例えばシート下
部に設置する構成でもよい。

【００３０】

【発明の効果】本発明におけるシートベルトのバックル
引き込み装置は、減速手段によってバックルの移動完了
直前にバックルの移動速度が減少されるので、バックル
移動完了時の衝撃を緩和することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例におけるシートベルトのバック
ル引き込み装置を備えたシートの斜視図。

【図２】本発明の第１実施例におけるバックル引き込み
装置の斜視図。

【図３】図１のバックル主要部の平面図。

【図４】図３のIV−IV断面を示す断面図。

【図５】本発明の第２実施例におけるシートベルトのバ
ックル引き込み装置の主要部の斜視図。

【図６】本発明の第３実施例におけるシートベルトのバ
ックル引き込み装置の主要部の斜視図。

【図７】図５のバックル主要部の斜視図。

【図８】本発明の第４実施例におけるシートベルトのバ
ックル引き込み装置の主要部の斜視図。

【図９】本発明の第５実施例におけるシートベルトのバ
ックル引き込み装置の主要部の斜視図。

【図１０】従来のシートベルトのバックル引き込み装置
の概略図。

【符号の説明】

２２ ・・・ タングプレート ２８ ・・・ バックル ３０ ・・・ バックル引き込み装置 ３２ ・・・ 開口部 ３４ ・・・ ベースプレート ３６ ・・・ インフレータ（駆動装置） ３８ ・・・ シリンダー（駆動装置） ４０ ・・・ 減速検出センサ（急減速検出手段） ４２ ・・・ ワイヤー ４６ ・・・ 固定プレート ４８ ・・・ ストッパ部 ５０ ・・・ 終端部 ５６ ・・・ テーパー部（減速手段）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートベルトのタングプレートを着脱可
   能に連結するバックルと、車両の所定以上の急減速を検
   出する急減速検出手段と、該急減速検出手段の信号を受
   けて前記バックルを引き込むための動力を発生する駆動
   装置とを備えるシートベルトのバックル引き込み装置に
   おいて、前記バックルの移動が完了する直前にバックル
   の移動速度を減少させる減速手段を備えることを特徴と
   するシートベルトのバックル引き込み装置。