JPH07217687A - バネ定数可変バネ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 バネ定数を適宜に調整できるバネ定数可変バ
ネを提供する。 【構成】 二つの磁石１Ａ，１Ｂを、同じ極性の磁極同
士が対向する状態で、かつ、相対的に遠近移動自在な状
態に配置し、それら二つの磁石１Ａ，１Ｂの相対移動方
向を対向方向に規制する移動方向規制手段を設け、前記
二つの磁石１Ａ，１Ｂ同士の接近移動を許容する状態で
磁石１Ａ，１Ｂ同士の最大離隔距離ＤMAXを規制する離
隔規制手段を設け、この離隔規制手段による最大離隔距
離ＤMAX を調整する調整手段を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、風や地震などによる建
物の揺れ（振動）を制御したり、通行などに伴う建物の
床・階段・橋梁などの上下振動を制御したりする制振装
置の付加振動体の振動数を規定する制振用のバネや、各
種建物構成材や機器を防振支承する防振用のバネなどの
バネに関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、付加振動体を用いる制振装置に
組み込まれる制振用のバネや防振用のバネとしては従
来、コイルバネや板バネが知られている。これらコイル
バネや板バネは所定のバネ定数となるように製作された
もので、バネ定数を変えられないものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従って、例えば上記従
来のバネを制振装置に制振用のバネとして組み込んだ場
合には、次のような不都合が生じていた。制振装置で
は、付加振動体の振動数を制振対象物の固有振動数に合
致させる必要があり、その振動規定の手法の一つに、制
振対象物の固有振動を実測し、制振用のバネのバネ定数
を、付加振動体の振動数をその実測固有振動数とさせる
バネ定数にする手法がある。

【０００４】他方、建物や床などの制振では、設計変更
や製作誤差などにより建物や床などの制振対象物の固有
振動数が設計当初の振動数と大きく食い違うことがあ
る。

【０００５】従って、上記従来のバネを制振用のバネと
して組み込んだ制振装置では、制振対象物の固有振動数
が設計値のままである場合には不都合が生じない。しか
し、制振対象物の固有振動数が変わった場合には、制振
対象物の固有振動数の設計値に基づいたバネ定数のまま
であると、付加振動体の振動数を実際の制振対象物の固
有振動数に合致させることができない。

【０００６】そこで、制振対象物の施工の完了を待ち、
その施工された制振対象物の固有振動数を実測し、その
実測固有振動数に対応したバネ定数のバネを製作して設
置することになるが、この場合は、制振対象物の施工完
了を待ってバネの製作及び設置を行うことになるから、
工期の長期化を招来する。また、予測される各種の制振
対象物の固有振動数のそれぞれに対応したバネ定数の複
数のバネを製作して用意しておき、それら複数のバネか
ら制振対象物の実測固有振動数に基づいて使用するバネ
を選択して設置する手段も考えられるが、この場合に
は、複数のバネを用意する必要があることと、そのよう
に用意した複数のうちの一つだけを使用し、他は不要と
なることとから、非常なコストアップを招来する。

【０００７】要するに一般的に言えば、従来の技術によ
るときは、バネ定数を変更できなかったから、要求され
るバネ定数が変わった場合に対応するには、その変わっ
たバネ定数のバネを新たに製作しなければならないとい
う不都合があった。

【０００８】本発明の目的は、バネ定数を適宜に調整で
きるバネ定数可変バネを提供する点にある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の第１発明による
バネ定数可変バネの特徴は、二つの磁石を、同じ極性の
磁極同士が対向する状態で、かつ、相対的に遠近移動自
在な状態に配置し、それら二つの磁石の相対移動方向を
対向方向に規制する移動方向規制手段を設け、前記二つ
の磁石同士の接近移動を許容する状態で磁石同士の最大
離隔距離を規制する離隔規制手段を設け、この離隔制限
手段による最大離隔距離を調整する調整手段を設けてあ
る点にある。

【００１０】本発明の第２発明によるバネ定数可変バネ
の特徴は、上記第１発明において、前記離隔規制手段と
して移動方向規制手段を兼ねる手段を設けてある点にあ
る。

【００１１】

【作用】二つの磁石を同じ極性の磁極が対向するように
配置すると、両磁石間に磁気反発力が発生する。上記の
ことを利用して、二つの磁石を同じ極性の磁極同士が対
向する配置状態でその対向方向で相対的に遠近移動自在
に設けてあるから、両磁石間の磁気反発力がそれら磁石
同士を相対的に離隔させようとする力として作用し、両
磁石間の磁気反発力がバネ反発力として作用し、両磁石
が圧縮バネとして機能することになる。

【００１２】しかも、図３に示すように、上記磁石間の
磁気反発力の大きさは両磁石の離隔距離に反比例し、磁
気反発力の大きさと離隔距離との関係は非線形である。
つまり、磁石の磁気反発力によるバネ定数は、磁石の離
隔距離に反比例して大きくなる。その結果、磁気反発力
を利用したバネでは、二つの磁石の離隔距離を変更する
ことにより、バネ定数を変えることができる。上記のこ
とを利用して、離隔規制手段により規制された二つの磁
石の最大離隔距離を調整手段により調整できるようにし
てあるから、この最大離隔距離の調整により、離隔距離
が最大離隔距離にある状態でのバネ定数を変更すること
ができる。具体的にいうと、最大離隔距離を小さくする
ほど、離隔距離が最大離隔距離にある状態でのバネ定数
を大きくすることができる。

【００１３】特に第２発明のようにすれば、離隔規制手
段と移動方向規制手段との間で構成部材の兼用化を図っ
て、構成部材数を削減できる。

【００１４】

【発明の効果】従って、本発明によれば、二つの磁石の
最大離隔距離を調整するだけの簡単な操作でバネ定数を
変更することができて、つまり、バネ定数を要求される
値に容易迅速に調整できて、特に、制振対象物の施工が
終了してからでないと必要とするバネ定数が正確に判明
しない制振装置の制振用のバネとして有用なバネ定数可
変バネを提供できるようになった。

【００１５】特に請求項２記載のようにすれば、構造簡
単に実施することができる。

【００１６】

【実施例】歩行などに起因した床の上下振動を制御する
制振装置への適用例を示す。制振装置は、図１に示すよ
うに、床Ａの上方に付加振動体Ｂを配置し、その付加振
動体Ｂを床Ａに、床Ａの上下振動に伴って上下に、か
つ、反対方向に振動する状態に制振兼支承用のバネＣを
介して取り付けて構成されている。つまり、バネＣのバ
ネ定数を調整することにより、付加振動体Ｂの振動数を
床Ａの固有振動数に合致させることで床Ａの上下振動を
抑制するように構成されている。

【００１７】前記バネＣは、バネ定数を変更可能なもの
であって、二つの磁石１Ａ，１Ｂと移動方向規制手段と
離隔規制手段と調整手段とを設けて構成されている。

【００１８】前記磁石１Ａ，１Ｂは、永久磁石であっ
て、一方の磁石１Ａは、床Ａの上面に固定されており、
他方の磁石１Ｂは、付加振動体Ｂの下面のうち一方の磁
石１Ａに振動方向（上下方向）で対向する箇所に固定さ
れている。つまり、両磁石１Ａ，１Ｂは、床Ａと付加振
動体Ｂとの相対振動に伴い振動方向で相対遠近移動する
ものである。かつ、二つの磁石１Ａ，１Ｂは、同じ極性
の磁極同士が対向する状態に取り付けられている。つま
り、一方の磁石１Ａの対向する部分の磁極がＳ（又は
Ｎ）極であれば、他方の磁石１Ｂの対向する部分の磁極
も極性が同じＳ（又はＮ）極となるように取り付けられ
ており、両磁石１Ａ，１Ｂ間に、それら両者、つまり、
床Ａと付加振動体Ｂとを互いに遠ざけようとする磁気反
発力を発生して、圧縮バネとして機能するように構成さ
れている。

【００１９】前記移動方向規制手段は、前記二つの磁石
１Ａ，１Ｂの相対移動方向を対向方向、つまり、付加振
動体Ｂの振動方向に規制する手段である。

【００２０】前記離隔規制手段は、前記二つの磁石１
Ａ，１Ｂ同士の接近移動を許容する状態で磁石１Ａ，１
Ｂ同士の最大離隔距離ＤMAX を制限する手段であって、
ロッドなどの上下向き姿勢の引っ張り材２を床Ａ及び付
加振動体Ｂに対して上下に移動自在に設け、この引っ張
り材２の下端部に、床Ａに下方から当接して床Ａの引っ
張り材２に対する下方への移動を阻止する下部ストッパ
ー３を固着し、引っ張り材２の上端部に、付加振動体Ｂ
に上方から当接して付加振動体Ｂの引っ張り材２に対す
る上方への移動を阻止する上部ストッパー４を付設して
構成されている。すなわち、引っ張り材２による引っ張
りにより、磁石１Ａ，１Ｂの反発力による床Ａに対する
付加振動体Ｂの離隔移動を阻止して、磁石１Ａ，１Ｂ同
士の最大離隔距離ＤMAX を制限するように構成されてい
る。

【００２１】前記調整手段は、前記離隔規制手段による
最大離隔距離ＤMAX を調整する手段であって、前記上部
ストッパー４を引っ張り材２に上下方向に位置変更固定
自在に装着することで構成されている。すなわち、上部
ストッパー４の引っ張り材２に対する位置を上下に変更
して上部ストッパー４の下部ストッパー３に対する上下
位置を変更することにより、床Ａに対する付加振動体Ｂ
の最大離隔距離を変更して磁石１Ａ，１Ｂ同士の最大離
隔距離ＤMAX を調整するように構成されている。上部ス
トッパー４を位置変更固定する手段は、引っ張り材２に
雄ねじを形成し、それに螺合して引っ張り材２の長手方
向（上下方向）に移動するナット５を、上部ストッパー
４に当接して付加振動体Ｂに押しつける状態に設け、ナ
ット５を移動させて上部ストッパー４の位置を調整する
手段である。

【００２２】そして、図２に示すように、離隔規制手段
を付加振動体Ｂの四隅に設け、各離隔規制手段の引っ張
り材２を付加振動体Ｂに形成の上下方向の貫通孔６に挿
通させることにより、引っ張り材２をガイドとし、か
つ、貫通孔６をガイド孔として付加振動体Ｂの引っ張り
材２（床Ａ）に対する水平移動を規制して付加振動体Ｂ
を上下方向のみに移動させるように構成されている。つ
まり、離隔規制手段により前記の移動方向規制手段が兼
用構成されている。

【００２３】上記磁石１Ａ，１Ｂの磁気反発力Ｐは、図
３に示すように、磁石１Ａ，１Ｂの離隔距離Ｄに反比例
して大きくなって、磁気反発力Ｐと離隔距離Ｄとの関係
は非線形である。従って、磁石１Ａ，１Ｂの最大離隔距
離ＤMAX を規制し、その最大離隔距離ＤMAX を調整する
ことにより、離隔距離Ｄが最大離隔距離ＤMAX にある状
態でのバネ定数ｋ１を調整することができるのである。

【００２４】そして、磁石１Ａ，１Ｂ間の力の釣り合い
式は、磁石１Ａ，１Ｂの反発力をＰ、引っ張り材２の張
力をＴとそれぞれすると、 Ｐ＝２Ｔ となる。そして、引っ張り材２の張力導入時におけるバ
ネ定数ｋ２は一定であり、上記釣り合い式を充足する一
つのバネとしての等価バネ定数ｋは、 ｋ＝ｋ１＋ｋ２ で示されることになるから、等価バネ定数ｋは、距離Ｄ
の値によって変化することになる。その結果、磁石１
Ａ，１Ｂ間の最大離隔距離ＤMAX を調整することによ
り、等価バネ定数ｋを変更することができるのである。

【００２５】上記の実施例では、離隔規制手段をもって
移動方向規制手段を兼用構成してあるから、磁石１Ａ，
１Ｂ周りの構造を簡素化して、全体を構造簡単なものに
できる。しかも、離隔規制手段として、磁石１Ａ，１Ｂ
が装着されている床Ａ及び付加振動体Ｂ、つまり、一般
的に言えば、バネを装着する部材の離隔を規制すること
により磁石１Ａ，１Ｂの最大離隔距離ＤMAX を規制する
ものを設けてあるから、磁石１Ａ，１Ｂに直接的に作用
して最大離隔距離ＤMAX を規制する場合に比較して、引
っ張り材２などの離隔規制手段の構成部材を組み込むた
めの構造を構成し易い。

【００２６】〔別実施例〕上記実施例では、離隔規制手
段として移動方向規制手段を兼用するものを示したが、
図４に示すように、離隔規制手段を構成する引っ張り材
２とは別に、磁石１Ａ，１Ｂの相対移動を案内するガイ
ドＧを設けて移動規制手段を離隔規制手段とは別個に構
成して実施しても良い。

【００２７】上記実施例では、引っ張り材２の付加振動
体Ｂに対する相対移動により、付加振動体Ｂの床Ａへの
接近移動を許容するように構成したが、引っ張り材２を
ワイヤなどの可撓性のものから構成して、この引っ張り
材２の撓みにより付加振動体Ｂの床Ａへの接近移動を許
容するように構成しても良い。要するに、離隔規制手段
による磁石１Ａ，１Ｂの接近を許容する手段は適宜変更
可能である。

【００２８】上記実施例では、離隔規制手段として、床
Ａに対する付加振動体Ｂの離隔を規制する、つまり、磁
石１Ａ，１Ｂが取り付けられる部材の離隔を規制するこ
とにより磁石１Ａ，１Ｂの最大離隔距離ＤMAX を規制す
るものを示したが、離隔規制手段は、磁石１Ａ，１Ｂ自
体に直接に作用して磁石１Ａ，１Ｂの最大離隔距離ＤMA
X を規制するものであっても良い。

【００２９】上記実施例では、磁石１Ａ，１Ｂとして永
久磁石を示したが、磁石１Ａ，１Ｂは電磁石であっても
良い。

【００３０】上記実施例では、床Ａに対する制振装置の
制振用のバネへの適用例を示したが、本発明のバネは、
建物や階段、橋梁など床以外の制振対象物に対する制振
装置の制振用のバネとしても適用することができ、ま
た、各種部材や機器を防振支承する防振用のバネとして
も適用することができ、要するに、各種用途のバネに適
用することができる。

【００３１】上記実施例では、振動を減衰するダンパを
組み込んでいない制振装置を示してあるが、もちろん、
床や建物、階段、橋梁などの制振装置を構成する場合に
は、床Ａなどの制振対象物と付加振動体Ｂとの間に粘性
ダンパや摩擦ダンパなどの各種のダンパを介装して振動
を減衰するようにして実施しても良い。

【００３２】上記実施例では、磁石１Ａ，１Ｂとして一
対のものを設けたバネを示したが、複数対の磁石１Ａ，
１Ｂを設けて一つのバネを構成しても良い。この場合、
相対応する磁石１Ａ，１Ｂについては、同じ極性の磁極
同士が対向する状態に配置する必要があるが、全ての磁
石１Ａ，１Ｂの対について対向する磁極の極性を同じに
する構成、例えば、或る対の磁石１Ａ，１ＢではＮ極の
磁極が対向し、他の対の磁石１Ａ，１ＢではＳ極の磁極
が対向するといったように全ての磁石１Ａ，１Ｂの対に
おいて対向する磁極の極性を同じにしない構成のいずれ
を採用しても良い。

【００３３】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は
添付図面の構成に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例を示す切り欠き正面図

【図２】実施例を示す平面図

【図３】磁石の離隔距離と磁気反発力との関係を示すグ
ラフ

【図４】別の実施例を示す切り欠き正面図

【符号の説明】

１Ａ 磁石 １Ｂ 磁石 ＤMAX 最大離隔距離

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 嚴 慈▲かい▼ 大阪府大阪市中央区本町四丁目１番13号 株式会社竹中工務店大阪本店内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 二つの磁石（１Ａ），（１Ｂ）を、同じ
   極性の磁極同士が対向する状態で、かつ、相対的に遠近
   移動自在な状態に配置し、それら二つの磁石（１Ａ），
   （１Ｂ）の相対移動方向を対向方向に規制する移動方向
   規制手段を設け、前記二つの磁石（１Ａ），（１Ｂ）同
   士の接近移動を許容する状態で磁石（１Ａ），（１Ｂ）
   同士の最大離隔距離（ＤMAX ）を規制する離隔規制手段
   を設け、この離隔規制手段による最大離隔距離（ＤMAX
   ）を調整する調整手段を設けてあるバネ定数可変バ
   ネ。
2. 【請求項２】 前記離隔規制手段として移動方向規制手
   段を兼ねる手段を設けてある請求項１記載のバネ定数可
   変バネ。