JPH07204257A - 湿式消臭材及びその製造方法 - Google Patents

湿式消臭材及びその製造方法

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JPH07204257A
JPH07204257A JP6019952A JP1995294A JPH07204257A JP H07204257 A JPH07204257 A JP H07204257A JP 6019952 A JP6019952 A JP 6019952A JP 1995294 A JP1995294 A JP 1995294A JP H07204257 A JPH07204257 A JP H07204257A
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敏行 柳
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健一 鎌田
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清文 田代
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Fujiko KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 メルカプタン類,硫化水素,亜硫酸ガスなど
を選択的に消臭し、空気清浄化フィルタ,建築材,イン
テリア材,衣料繊維,寝具類などに用いる。 【構成】 主として羊毛又は廃羊毛からなり、羊毛繊維
の細胞膜複合体内にチオール銅錯体を有するとともに、
約10〜400重量%の水を含有する際に悪臭気体を吸
着する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、代表的な悪臭気体であ
るメルカプタン類,硫化水素,亜硫酸ガスなどに対して
選択的に消臭できる湿式消臭材及びその製造方法に関
し、空気清浄化フィルタ,建築材,インテリア材,衣料
繊維,寝具類などにおける消臭化に利用できる湿式消臭
材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】メルカプタン類,硫化水素,亜硫酸ガス
のような還元性ガス又はアンモニアやアミン類などを除
去するには、該フィルタとして活性炭,硅藻土,アルミ
ナのような吸着性物質を用いることが必要である。この
ような吸着性物質は、一般に汎用されている割には悪臭
除去の効果が長続きせず、吸着性物質の頻繁な交換のた
めにランニングコストが高くなってしまう。
【0003】 近年では、特開昭62−6954号や特
開昭63−235571号公報などにおいて、悪臭除去
の効果を長続きさせる消臭方法が提案されている。これ
らの方法では、セルロース系繊維に銅又はフタロシアニ
ン金属錯体を始めとする金属錯体を結合させた消臭性繊
維をフィルタとして用いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記の消臭方法では、
大半の場合において乾燥状態の消臭性繊維を使用してい
るが、一般に消臭効果がそれほど高くない点が問題であ
る。この要因として考えられるのは、通常、気体は液体
に容易に溶解するが、気体が固体に吸着される度合いは
非常に少ない事実である。この事実から、代表的な悪臭
気体である硫化水素,メルカプタン類,亜硫酸ガス,ア
ミン類,アンモニアなどは、固体に吸着させるよりも水
に溶解して除去するのが自然であるけれども、現実には
これらを水に溶解して除去する方法は殆ど存在しない。
【0005】 本発明者らは、消臭性繊維に関する前記
の問題点を種々検討した結果、悪臭気体を水に溶解して
除去するために吸湿性繊維を用いることを提案するもの
である。したがって、本発明は、吸湿性繊維として比較
的安価な羊毛又は廃羊毛を選択し、羊毛繊維を含水させ
て悪臭気体を溶解し、これを羊毛繊維中の銅錯体で選択
的に酸化分解する湿式消臭材を提供することを目的とし
ている。本発明の他の目的は、羊毛又は廃羊毛における
羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅錯体を生成させ
る湿式消臭材の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る湿式消臭材は、主成分として羊毛又は
廃羊毛を用いて製造する。廃羊毛とは、各種の羊毛製品
を製造する際に生じる裁断屑や不良品などを意味し、廃
棄処分された使用済みの羊毛製品も包含する。羊毛又は
廃羊毛としては、洗い上げ羊毛でもよいが、未染色の廃
羊毛の方が好ましい。羊毛又は廃羊毛の繊維は、化学的
活性基を多く持ち、組織学的にも微細な細胞の集合体で
あるので、その内部表面積がきわめて大きくて含水量が
高く、一般に約10〜400重量%の水を含むことが可
能である。
【0007】 図1及び図2に基づいて詳言すれば、羊
毛繊維を組織学的見ると表皮細胞1,皮質細胞2,細胞
膜複合体(細胞間充填物)3からなり、蛋白化学的には
ケラチン質と非ケラチン質からなる。ケラチン質はシス
チン含有量が非常に多く、逆に非ケラチン質はシスチン
含有量が非常に少ない成分を指す。細胞膜複合体3は非
ケラチン質からなり、親水性であって水膨潤性が高く、
しかも流動性であり、染料や試薬を供給する水路として
の役割を演じている。また、この領域には天然的に銅,
鉄などの微量金属が含まれている。
【0008】 羊毛繊維を含水させると、構成アミノ酸
残基の内でカルボキシル基,アミノ基,水酸基が解離
し、これらの基が一般の悪臭気体と反応する。したがっ
て、含水した羊毛繊維は、染色と同様に酢酸,ギ酸,塩
酸などの酸類、アミン,アンモニアなどの塩基類、その
他の界面活性剤、酸化還元試薬などを容易に吸着する。
しかしながら、単に含水した羊毛繊維は、強いイオン性
を有しないメチルメルカプタン,エチルメルカプタンな
どのメルカプタン類を殆ど吸着しないため、本発明では
羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅錯体を生成させ
る。
【0009】 本発明の消臭材に水分を含ませるには、
該消臭材に直接水を約10〜400重量%スプレーすれ
ばよい。また、本発明の消臭材は、チオール銅錯体化し
た羊毛又は廃羊毛をカードにかけてカードウェブにした
後に、2層のウェブ間に綿又は吸水性ポリマを挟んで積
層したり、銅錯体化した羊毛又は廃羊毛の繊維を吸水性
繊維と混綿し、このカードウェブをニードリングによっ
てフェルト材に成形すればよく、これに水をスプレーす
れば含水性を長期間保持させることが可能である。
【0010】 本発明の湿式消臭材の製造するには、羊
毛又は廃羊毛をチオール化合物の水溶液中へ入れ、該水
溶液を非アルカリ性側に設定して所定時間に浸漬した後
に水洗・乾燥することにより、羊毛繊維の細胞膜複合体
内及び皮質細胞内のシスチン残基を還元してシステイン
残基を増加させる。この明細書において、「非アルカリ
性側」とは、弱酸性及び中性を包含し、さらにそれより
も広い概念であって、通常pH2.0〜7.0の範囲を意
味している。
【0011】 本発明方法で用いるチオール化合物に
は、チオグリコール酸,チオグリコール酸アンモニウ
ム,ジチオグリコール酸,チオリンゴ酸,システアミ
ン,L−システイン,アセチルシステインなどが例示で
きる。本発明方法では、例えばチオグリコール酸又はチ
オグリコール酸アンモニウムを用いる。
【0012】 このチオール化合物の水溶液は、無機酸
又は有機酸でpH2.0〜7.0好ましくはpH4.0前
後に調整するけれども、それ自体弱酸性であるチオグリ
コール酸アンモニウムなどを使用すれば特にpH調整し
なくてもよい。pH調整に用いる無機酸又は有機酸は、
酢酸,オキシカルボン酸,ギ酸,希塩酸,希硫酸などで
あり、pH2〜3のチオグリコール酸をpH4.0前後
に調整するならばアンモニア水などを用いる。羊毛又は
廃羊毛は、チオール化合物の水溶液に、一般に常温〜5
0℃の温度で約20〜40分間浸漬すればよい。
【0013】 次に、羊毛又は廃羊毛を適宜の銅塩化合
物の水溶液中へ入れ、該水溶液を非アルカリ性側に設定
して所定時間に浸漬した後に水洗・乾燥することによ
り、主として羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅錯
体を生成させる。本発明方法で用いる銅塩化合物には、
硫酸銅,酢酸銅,塩化銅などが例示でき、一般に硫酸第
二銅又は塩化第二銅が好適である。
【0014】 この銅塩化合物の水溶液は、無機酸又は
有機酸でpH2.0〜7.0好ましくはpH4.0前後に
調整する。pH調整に用いる無機酸又は有機酸は、酢
酸,オキシカルボン酸,ギ酸,希塩酸,希硫酸などであ
る。羊毛又は廃羊毛は、銅塩化合物の水溶液に、一般に
常温〜50℃の温度で約20〜40分間浸漬すればよ
い。羊毛繊維へのCu(II)の付加量は、1×10-4
〜1×10-3モル/gウール程度で十分である。
【0015】 前記のチオール化合物及び銅塩化合物の
水溶液は、両者をあらかじめ混合することも可能であ
り、次にこの混合水溶液を非アルカリ性側に設定するけ
れども、この混合水溶液が既にpH2.0〜7.0である
ならば特にpH調整しなくてもよい。この場合には、羊
毛又は廃羊毛は、チオール化合物と銅塩化合物の混合水
溶液中へ入れるだけであり、常温〜50℃の温度で約2
0〜40分間時間に浸漬した後に水洗・乾燥すればよ
い。
【0016】
【作用】本発明の消臭材における羊毛繊維には、化学組
織的にシスチン残基(−SS−)が約2×10-4モル/
gウール、及びシステイン残基(−SH)が約1×10
-5モル/gウール含まれている。羊毛繊維において、−
SS−を還元すると−SHとなり、該−SHを酸化する
と再び−SS−に戻ることにより、一般に羊毛はSS/
SHの交換反応を行う性質がある。
【0017】 本発明方法では、羊毛をチオール化合物
の水溶液で処理して、羊毛繊維の細胞膜複合体3(図
2)内のシスチン残基(−SS−)を還元し、システイ
ン残基(−SH)を発生させる。また、皮質細胞2内の
W−SS−W(Wはウールを示す)は、チオール化合物
との処理によってW−SHに還元され、皮質細胞2内に
W−SHが増加する。
【0018】 次に羊毛繊維を銅塩化合物で処理する
と、細胞膜複合体3が親水性であって水路としての作用
を有することにより、主として細胞膜複合体3内にチオ
ール銅錯体及びCu−S−W錯体を形成する。また、皮
質細胞2内では、チオール化合物との反応で増加したW
−SHは、チオール銅錯体との接触を経た空気酸化によ
って自然にW−SS−Wに戻っていく。
【0019】 本発明の消臭材が、代表的な悪臭気体で
あるメルカプタン類(R−SH)と接触すると、消臭化
過程において、下記の化1に示すように、R−SHは水
素イオンと電子とを放出してR−SS−Rとなる。同時
に、羊毛繊維の細胞膜複合体3内のCu(II)は、電
子を受け取ってCu(I)に還元され、ここでのCu
(II)と−SH基との反応は定量的である。
【0020】
【化1】 2RSH+Cu(II) = RS−Cu(I)+1/2RSSR+H+
【0021】 逆に、皮質細胞2内のW−SS−Wは、
化1で発生したCu(I)とH+によってW−SHに還
元され、下記の化2のように皮質細胞2内でW−SHが
増加する。このように、系内の酸化・還元電位を平衡状
態に保ち、この反応系を維持するには、チオール銅錯体
の銅をイオン化させるための水分が羊毛に必要である。
【0022】
【化2】 W−SS−W + 2H+ = 2W−SH
【0023】 細胞膜複合体3内での消臭化過程で発生
したCu(I)は、過酸化水素による後処理及び空気中
の酸素によって酸化され、Cu(II)に戻る。同時
に、皮質細胞2内で増加したW−SHも、酸化によって
自然にW−SS−Wに戻る。細胞膜複合体3におけるチ
オール銅錯体の銅は、前記のように触媒的に作用するた
めに使用量はきわめて微量である。したがって、この平
衡系は半永久的に継続し、本発明の消臭材を繰り返し使
用することが可能となる。
【0024】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する。 実施例1 0.1モル/lのチオグリコール酸アンモニウム水溶液
1リットルを酢酸でpH4.0に調整し、この水溶液中
に羊毛40gを室温で30分間浸漬して遠心分離機で脱
水する。次に、0.01モル/lの硫酸第二銅水溶液1
リットルを前記のチオグリコール酸アンモニウム水溶液
1リットルに添加する。この溶液中へ、チオール処理し
た前記の羊毛をさらに室温で30分間浸漬し、遠心分離
機で脱水した後に80℃で乾燥する。
【0025】 銅錯体化した羊毛は、わずかに青色に着
色する。この羊毛1gに水1gを含浸させてフラスコに
入れ、このフラスコに0.1mlのメチルメルカプタン
を加え、常温で20分間放置した後に開栓すると、メチ
ルメルカプタンの臭いは完全に消失する。また、メチル
メルカプタンの代りに亜硫酸ガスを用いても同様の効果
を得る。
【0026】実施例2 0.1モル/lのチオグリコール酸アンモニウム水溶液
1リットルを酢酸でpH4.0に調整し、この水溶液に
0.01モル/lの硫酸第二銅水溶液1リットルを添加
する。この混合水溶液中へ、羊毛40gを室温で30分
間浸漬し、遠心分離機で脱水した後に80℃で乾燥す
る。
【0027】 銅錯体化した羊毛は、わずかに青色に着
色する。この羊毛1gに水1gを含浸させてフラスコに
入れ、このフラスコに0.1mlのメチルメルカプタン
を加え、常温で20分間放置した後に開栓すると、実施
例1と同様にメチルメルカプタンの臭いは完全に消失す
る。
【0028】 また、銅錯体化した羊毛は、メチルメル
カプタンの代りに亜硫酸ガスを用いても、実施例1と同
様の効果を得る。
【0029】製造例1 実施例1又は実施例2で銅錯体化した羊毛を公知のカー
ド機に掛けてカードウェブとする。この2層のウェブ間
に適宜の吸水性繊維や吸水性ポリマを挟んで厚さ10m
m,目付1000g/m2に積層すると湿式消臭材を得
る。この湿式消臭材は、適宜に含水させて空気清浄化用
の吸着フィルタとして使用できる。
【0030】製造例2 実施例1又は実施例2で銅錯体化した羊毛を用い、該羊
毛80重量%と、吸水性アクリル繊維(商品名:ランシ
ール、東洋紡績製)20重量%とを公知のカード機に掛
けてカードウェブとする。このウェブをニードリングに
よって厚さ10mm,目付800g/m2に積層してフ
ェルト材を得る。このフェルト材は、スプレーで水10
0%を含水させると、製造例1と同様にエアーフィルタ
として使用できる。
【0031】試験例1 実施例1で銅錯体化した羊毛の適当量を6等分し、各
0.1gについて、そのまま又はあらかじめ20重量
%,50重量%,100重量%,200重量%,400
重量%の水を添加しておく。これらの羊毛0.1gを、
それぞれ窒素ガスで通気した1リットル瓶Aに入れる。
【0032】 一方、他の1リットル瓶Bを窒素ガスで
置換した後に、エチルメルカプタン500μlを注入す
る。この瓶B中の気体500μlを、羊毛0.1gを入
れた1リットル瓶Aのそれぞれに注入する。各瓶Aから
10分間隔で100μlずつ取り出し、ガスクロマトグ
ラフィでエチルメルカプタンの含有量を測定した結果を
図3に示す。
【0033】 図3のグラフから明らかなように、乾燥
した羊毛試料ではエチルメルカプタン量の減少は全く認
められない。含水させた羊毛試料では、含水量にほぼ比
例してエチルメルカプタン量の減少が著しく、400重
量%の水を含む羊毛試料では約20分でエチルメルカプ
タンが完全に消失している。
【0034】実施例3〜6 実施例1と同様に羊毛を銅錯体化する際に、添加する硫
酸第二銅水溶液の濃度を0.01モル,0.001モル,
0.0001モル,0.00001モル/lに変更してそ
れぞれ消臭材を製造する。
【0035】 硫酸第二銅水溶液の濃度が前記の場合に
ついて、銅錯体化した羊毛を試験例1と同様に処理し
て、残存するエチルメルカプタン量を測定した結果を図
4に示す。図4のグラフから明らかなように、羊毛繊維
に対する銅イオンの付加量が増大するにつれ、エチルメ
ルカプタン量の減少率が高くなる。また、硫酸第二銅水
溶液の添加量は、0.01モル/l程度で消臭機能を十
分発揮することが判明する。
【0036】試験例2 実施例2で銅錯体化した羊毛0.1gを、3×10-3
ル/lのエチルメルカプタン水溶液8mlを収納した試
験瓶に入れる。この試験瓶から10分間隔で水溶液を5
0μlずつ6回取り出し、そのつどエルマン試薬を用い
て比色試験を行う。その試験結果が図5のグラフにおけ
る最下方の曲線である。
【0037】 次に前記の羊毛試料を前記の試験瓶から
取り出し、そのまま再び3×10-3モル/lの新たなエ
チルメルカプタン水溶液8mlを収納した別の試験瓶に
入れる。この試験瓶から10分間隔で水溶液を50μl
ずつ6回取り出し、そのつどエルマン試薬を用いて比色
試験を繰り返す。その試験結果も図5のグラフに示す。
このような繰り返し試験をさらに4回行い、得た結果を
いずれも図5に示す。
【0038】 比色試験を6回繰り返した後の羊毛試料
は、図5に示すようにエチルメルカプタンの吸着能がか
なり低下する。この羊毛試料は、試験瓶から取り出して
軽く水洗してから、5%過酸化水素水溶液に5分間浸漬
した後に蒸留水で洗浄すればよい。この酸化によって、
羊毛試料のエチルメルカプタンの吸着能が回復し、前記
と同様の試験結果を再度得ることが可能である。
【0039】試験例3 実施例2と同様に銅錯体化した綿0.1gを、3×10
-3モル/lのエチルメルカプタン水溶液8mlを収納し
た試験瓶に入れる。この試験瓶から10分間隔で水溶液
を50μlずつ6回取り出し、そのつどエルマン試薬を
用いて比色試験を行う。その試験結果が図6のグラフに
おける下方の曲線である。
【0040】 次に前記の綿試料を前記の試験瓶から取
り出し、そのまま再び3×10-3モル/lの新たなエチ
ルメルカプタン水溶液8mlを収納した別の試験瓶に入
れる。この試験瓶から10分間隔で水溶液を50μlず
つ6回取り出し、そのつどエルマン試薬を用いて比色試
験を繰り返す。その試験結果を図6における上方の曲線
で示す。
【0041】 図6のグラフにおいて、銅錯体化した綿
試料では繰り返し試験においてエチルメルカプタン量の
減少は殆ど認められない。また、この綿試料では、5%
過酸化水素水溶液に5分間浸漬した後に蒸留水で洗浄し
ても、そのエチルメルカプタンの吸着能は回復しない。
【0042】 図6のグラフから明らかなように、銅錯
体化した綿の場合には、羊毛のような酸化・還元を繰り
返すシスチン残基(−SS−)やシステイン残基(−S
H)が存在しないので、綿内部から電子が伝達されてC
u(II)がCu(I)に還元される過程のみであり、
繰り返し使用が全く不可能である。これに対し、銅錯体
化した羊毛は、気体吸着後に酸化させると繰り返し使用
が可能であるので非常に有利である。
【0043】
【発明の効果】本発明の湿式消臭材では、水分を適宜に
補給して羊毛繊維中の銅錯体の銅をイオン化させ、これ
がメルカプタン類,硫化水素,亜硫酸ガスのような還元
性ガス又はアンモニアやアミン類などと選択的に反応し
て消臭化又は無毒化する。この反応は、悪臭気体、羊毛
繊維の細胞膜複合体及び皮質細胞における酸化−還元電
位の順位に応じて進行する。悪臭ガスや有毒ガスなどの
気体は、溶解しやすい水中において酸化されるので、こ
れらを効率的に除去することができる。
【0044】 悪臭ガスや有毒ガスなどの消臭化又は無
毒化過程において、羊毛繊維内における銅イオンは、C
u(II)からCu(I)に還元されるけれども、この
Cu(I)は、過酸化水素による後処理及び空気中の酸
素やオゾンなどによって再び酸化されてCu(II)に
戻る。したがって、本発明の消臭材は、羊毛がSS/S
Hの交換反応を行う性質があることを巧みに利用して、
フィルタなどとして繰り返し使用することを可能とす
る。
【0045】 本発明の湿式消臭材は、空気清浄化フィ
ルタ、壁装材,床材のような建築材、カーペット,玄関
マット,トイレマットのようなインテリア材、肌着,パ
ジャマ,靴下のような衣料繊維,ベッド,マットレス,
ふとんのような寝具類などにおける消臭化に利用でき、
脱臭又は有毒ガスの除去を要しない用途にも適用可能で
ある。本発明の湿式消臭材は、比較的安価な羊毛又は廃
羊毛を原料とし、しかも繰り返し使用が可能であるから
経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 羊毛繊維の表皮部を拡大して示す概略断面図
である。
【図2】 羊毛繊維の表面を拡大して示す概略モデルで
ある。
【図3】 エチルメルカプタンに対するCu(II)イ
オンの酸化作用を羊毛含水量について示すグラフであ
る。
【図4】 エチルメルカプタンに対するCu(II)イ
オンの酸化作用を羊毛繊維中の濃度について示すグラフ
である。
【図5】 エチルメルカプタンの酸化について、チオー
ル銅錯体化した羊毛繊維の繰り返し試験の結果を示すグ
ラフである。
【図6】 エチルメルカプタンに対して、チオール銅錯
体化した綿繊維の繰り返し試験の結果を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 表皮細胞 2 皮質細胞 3 細胞膜複合体(細胞間充填物)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年2月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鎌田 健一 京都府乙訓郡大山崎町円明寺北浦2番地の 7−2−303 (72)発明者 田代 清文 兵庫県尼崎市武庫町4丁目6番22号

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主として羊毛又は廃羊毛からなる消臭材
    であって、羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅錯体
    を有するとともに、約10〜400重量%の水を含有す
    る際に悪臭気体を吸着し、羊毛繊維におけるシスチン残
    基とシステイン残基が還元・酸化を繰り返す湿式消臭
    材。
  2. 【請求項2】 銅錯体化した羊毛又は廃羊毛のカードウ
    ェブを用い、2層のウェブ間に綿,吸水性繊維又は吸水
    性ポリマを挟んで積層している請求項1記載の消臭材。
  3. 【請求項3】 銅錯体化した羊毛又は廃羊毛の繊維と吸
    水性繊維とを混綿したカードウェブを用い、該ウェブを
    ニードリングによってフェルト材に成形する請求項1記
    載の消臭材。
  4. 【請求項4】 羊毛又は廃羊毛をチオール化合物の水溶
    液中へ入れ、該水溶液を非アルカリ性側に設定して所定
    時間に浸漬した後に脱水することにより、羊毛繊維の細
    胞膜複合体内及び皮質細胞内のシスチン残基を還元して
    システイン残基を増加させ、次に適宜の銅塩化合物の水
    溶液中へ入れ、該水溶液を非アルカリ性側に設定して所
    定時間に浸漬した後に水洗・乾燥することにより、主と
    して羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅錯体を生成
    させる湿式消臭材の製造方法。
  5. 【請求項5】 羊毛又は廃羊毛をチオール化合物と適宜
    の銅塩化合物との混合水溶液中へ入れ、該水溶液を非ア
    ルカリ性側に設定して所定時間に浸漬した後に水洗・乾
    燥することにより、羊毛繊維の細胞膜複合体内及び皮質
    細胞内のシスチン残基を還元してシステイン残基を増加
    させ、主として羊毛繊維の細胞膜複合体内にチオール銅
    錯体を生成させる湿式消臭材の製造方法。
  6. 【請求項6】 チオール化合物としてチオグリコール酸
    又はチオグリコール酸アンモニウムを使用し、この水溶
    液をそのまま又はpH2.0〜7.0に調整する請求項4
    又は5記載の方法。
  7. 【請求項7】 銅塩化合物として硫酸第二銅又は塩化第
    二銅を使用し、この銅塩水溶液を無機酸又は有機酸でp
    H2.0〜7.0に調整する請求項4又は5記載の方法。
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