JPH07201345A - 溶融炭酸塩型燃料電池 - Google Patents

溶融炭酸塩型燃料電池

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JPH07201345A
JPH07201345A JP5353885A JP35388593A JPH07201345A JP H07201345 A JPH07201345 A JP H07201345A JP 5353885 A JP5353885 A JP 5353885A JP 35388593 A JP35388593 A JP 35388593A JP H07201345 A JPH07201345 A JP H07201345A
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electrode
fuel cell
gas
electrolyte
fuel
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JP5353885A
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Tooru Kaiji
治 徹 海
Kenji Murata
田 謙 二 村
Hitoshi Nirasawa
沢 仁 韮
Hakaru Ogawa
川 斗 小
Takanori Kawachi
地 孝 典 川
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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    • H01M4/86Inert electrodes with catalytic activity, e.g. for fuel cells
    • H01M4/8605Porous electrodes
    • H01M4/8621Porous electrodes containing only metallic or ceramic material, e.g. made by sintering or sputtering
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、電極−電解質間のミクロな液絡の
遮断や、酸化剤極−カレントコレクタ−セパレータ間に
生成する高抵抗層を抑制し、また長時間あるいは熱サイ
クルを経ても電流負荷時の三相界面の減少を生じさせ
ず、以て高電流負荷時にも長時間セル電圧を安定に保つ
ことができるような溶融炭酸塩型燃料電池の構成、ある
いはこれを用いた発電システムの構成・運転方法を提供
することを目的としている。 【構成】 本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池の燃料極
は、電解質層に接する側と接しない側の二重構造に形成
し、電解質層に接する側の構成粒子間の平均孔径は電解
質層の電解質保持材間の平均孔径とほぼ同等になるよう
な構造をとっており、そのため運転中は電解質が燃料極
内部に入り込んだ状態となるために燃料極−電解質層に
空空間が形成されにくくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融炭酸塩型燃料電池
に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池の単セルは、溶融
炭酸塩を保持した電解質層と、この電解質層を挾持する
ように配置された一対の多孔質ガス拡散電極、すなわち
燃料極および酸化剤極と、これら電極の外側に配置され
てガス供給路と導電路とを兼ねるガスチャンネルとで構
成されている。そして、通常は上記構成の単セルを各単
セル間に電子伝導性のセパレータを介して複数積層した
積層電池(スタック)構成で使用される。
【0003】燃料極に水素ガスを含む燃料ガスを、また
酸化剤極に酸化剤ガスをそれぞれ反応ガスとして供給す
ると、多孔質のガス拡散電極内における多孔質体(固
相)、電解質である炭酸塩(液相)、および反応ガス
(気相)の反応サイト(三相界面)で起電反応が生じ
る。燃料極では液相中の炭酸イオンと気相中の水素とが
反応することにより水蒸気と二酸化炭素が生成し、気相
に排出されるとともに電子が固相に移動する。一方酸化
剤側では気相中の酸素と二酸化炭素および固相から供給
される電子との反応により炭酸イオンが生成し、液相中
に排出される。この反応によって発生する燃料極側と酸
化剤極側の電子のポテンシャルの差が各セルごとに集積
し、最外部の燃料極と酸化剤極を経て外部負荷に電流が
流れ電気エネルギーが取り出される。
【0004】この燃料極と酸化剤極の電子のポテンシャ
ルの差は、外部負荷を結合すると、炭酸イオンが酸化剤
極の三相界面から電解質層を経て燃料極側の三相界面に
移動する際の抵抗と、電子が酸化剤極の三相界面からカ
レントコレクタ・セパレータを経て次の単セルの燃料極
の三相界面に移動する際の抵抗、および三相界面での反
応抵抗によって小さくなる。
【0005】これらのうちイオン伝導抵抗は酸化剤極と
燃料極間のマクロな距離や電解質と保持材の体積比(電
解質保持材層の空孔率、燃料極の空孔率と電解質の空孔
占有率)にも依存するが、電極、特に燃料極と電解質層
との界面に形成されるミクロな空空間(電解質で満たさ
れていない閉空間)の全断面積に占める比にも依存す
る。そこで充分な量の電解質を予め燃料極中でカレント
コレクタの凹凸の空間に付与し、マトリックス層をグリ
ーンシートの状態でセルに組み込み充分な締めつけ圧を
与えつつバインダー揮散を行なって良好な接触を図った
後、電解質を溶融しこれをこれらの起電部品及びその部
品間に含浸させるようにして、このイオン伝導抵抗の低
減を図ってきた。
【0006】また電子伝導抵抗は、セパレータ内、酸化
剤極内部のバルクの導電性にも依存するが、特に酸化剤
極とカレントコレクタ界面、カレントコレクタとセパレ
ータ界面の接触性(全面積に対する接触面積の比)や、
接触部に形成される酸化物層の抵抗や、半導体物性(p
型かn型か、酸化剤極からセパレータに向かう電子の流
れがp→n接合かn→p接合か)によって変化する。そ
こで酸化剤極にはリチウムがドープすることによって導
電性が高くなるニッケルの多孔質焼結体を用い、またカ
レントコレクタとセパレータは起動および運転中常に締
めつけ圧を付与して金属−金属接触を保ち、界面に酸化
物層が形成しにくいようにして使うことにより電子伝導
抵抗の低減を図ってきた。
【0007】反応抵抗に関与する三相界面の量は、特に
燃料極においては起電部品間の孔径分布で定まる各多孔
質部品のマクロな電解質含有率とともに、電解質の多孔
質体表面への濡れの接触角と多孔質構造によって定まる
ミクロで静的な等保持力面と、電解質層(沖合)から三
相界面に至るまでの炭酸塩移動の抵抗と生成した二酸化
炭素と水蒸気のガスチャンネル側への移動の抵抗との和
が等しくなるようなミクロで動的な平滑面(等抵抗面)
とのバランスで定まる。そこで、燃料極内部にアルミン
酸リチウム微粉末等、電解質との濡れ性の高い物質を予
め内在させて三相界面の量を高め、反応抵抗の低減を図
ってきた。
【0008】また多少セル電圧が低くても溶融炭酸塩型
燃料電池システムの効率を向上できるように、吸熱反応
である天然ガス等の原燃料ガスの改質反応に必要な熱
を、燃料極排ガス中の未反応燃料の燃焼だけでまかなわ
ず、燃料電池積層体内で発生するジュール熱でもまかな
い、従って燃料ガスの利用率を高められるように、燃料
極室内または積層体の複数のセル間で改質反応を行なわ
せる方法(内部改質法)が試みられてきた。
【0009】しかしながら、上記のように構成された溶
融炭酸塩型燃料電池にあっては次のような問題があっ
た。燃料極と電解質層間の界面は本来電解質の保持性が
低いため、セパレータの酸化・腐食等に伴って起電部品
内の電解質が外部に移動すると(起電部品からの電解質
ロス)、まずこの界面で電解質を保持できなくなるため
にミクロな空空間を生じてしまう。特にこの空空間の生
成はセル平面方向の温度分布に伴うカレントコレクタの
熱膨張の差等に起因する起電部品への締めつけ圧力が不
足する場所で著しい。また電解質を保持する粉末が炭酸
塩の表面張力によって経時的に凝集することにより、気
・液(液・粉体複合相)界面面積が減少するが、特に電
解質層が燃料極孔にくい込んだ場所での気液界面面積の
減少はこの部分に空空間を生じさせる。更に凝固時の電
解質体質の減少に伴い、電解質保持性の低い燃料極と電
解質層界面に空空間が生じ、これが次の再起動・電解質
溶融時に確率的に進む溶融電解質の濡れで埋められず空
空間として残ってしまう。このように時間とともに進行
する起電部品からの電解質ロスや、電解質保持材の凝集
や起動・停止・再起動の熱サイクルに伴い、まず界面の
空空間の増大が起こり、これが電解質層と燃料極間のイ
オン伝導路(液絡)を遮断するため、電解質層を貫通す
る空孔によるクロスリークの発生前にイオン伝導抵抗の
増大が起こる。これによるセル電圧の低下速度は負荷電
流が大きいほど顕著である。
【0010】また、酸化剤極とカレントコレクタの接触
部には時間の経過とともに、カレントコレクタ側に耐食
性は高いものの導電性の低いクロム、鉄等の酸化物層が
生成し、カレントコレクタとセパレータの界面にも、特
に運転停止・再起動時に電解質である炭酸塩の凝固・溶
融領域が徐々に広がってゆくのに伴い、締めつけ圧不足
の領域が現れて金属−金属接触が一時的に離れることに
より導電性の低い酸化物耐食層が形成されてゆく。すな
わち酸素の内向拡散を抑制し腐食層の厚みの成長を抑え
る効果を有する酸化クロム・酸化鉄層は導電性が低く、
耐食性と導電性を両立させることができない。このよう
にして時間の経過とともに電極−カレントコレクタ−セ
パレータ間に導電性の不良な酸化物層が生じ、電子伝導
抵抗が大きくなっていた。また、薄板のセパレータが使
えるよう耐食性の優れたすなわち腐食層が薄い素材ほど
抵抗が高いという問題を抱えていた。この抵抗増大に伴
うセル電圧の一定値低下までの時間は、電流密度が大き
いほど短くなり、電流密度(出力密度)の向上と寿命と
が両立しない原因となっていた。
【0011】三相界面の量は、開路状態から電流を付与
した後、電解質が静的な等保持力面の分布から動的な等
抵抗面の分布に移行することによっても少なくなり、特
に負荷電流が大きい場合にこの傾向は顕著になる。すな
わち高負荷で運転するほど三相界面の減少に起因する分
極が短時間で増大する。
【0012】このように、部品間界面の液絡部分遮断に
よるイオン伝導抵抗の増大、抵抗層生成による電子伝導
抵抗の増大、および三相界面面積の減少が、特に高負荷
運転を行なった時、あるいは熱サイクルをさせた場合、
時間の経過とともに顕著に進行し、これに伴うセル電圧
の経時的な低下を遅らせることができなかった。
【0013】また改質反応を燃料極室内で行なおうとす
ると(直接改質型)改質触媒が電解質である溶融炭酸塩
に覆われて徐々に活性が失われ、一方複数セル間で改質
する場合(間接内部改質)には、積層体積層方向の熱伝
導で熱を供給するため熱流束が充分でなく、少数のセル
ごとに改質部を挿入せねばならず、また排出ガスの内、
最も高温で熱容量の大きな酸化剤極排ガスの排熱を有効
に利用することもできなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、電極
−電解質間のミクロな液絡の遮断や、酸化剤極−カレン
トコレクタ−セパレータ間に生成する高抵抗層を抑制
し、また長時間あるいは熱サイクルを経ても電流負荷時
の三相界面の減少を生じさせず、以て高電流負荷時にも
長時間セル電圧を安定に保つことができるような溶融炭
酸塩型燃料電池の構成、あるいはこれを用いた発電シス
テムの構成・運転方法を提供することを目的としてい
る。また、積層電池の排熱を有効に改質反応に利用し、
多少セル電圧が低くても電池排熱を原燃料ガスの改質反
応に利用してシステムの発電効率を高めるための発電シ
ステムの構成方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係る溶融炭酸塩
型燃料電池の燃料極は、電解質層に接する側と接しない
側の二重構造に形成し、電解質層に接する側の構成粒子
間の平均孔径は電解質層の電解質保持材間の平均孔径と
ほぼ同等になるような構造をとっており、そのため運転
中は電解質が燃料極内部に入り込んだ状態となるために
燃料極−電解質層に空空間が形成されにくくなる。また
更にこの燃料極の電解質側には、たとえば金属酸化物の
微粒子を添加するなどして電解質との濡れ性を高くして
おり、電解質層と燃料極間の液絡が長時間にわたって安
定に維持される。
【0016】本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池の酸化
剤極側のガスチャンネルは、導電性酸化物から成り、未
焼結の酸化剤極が起動中に酸化されるとともにガスチャ
ンネルに圧着され、一体化した導電性酸化物となること
により、両者間の電子伝導の安定化が図られる。また同
様に、酸化剤側のガスチャンネルとセパレータの間に電
池内で溶融塩共存下で高抵抗の酸化物層を生成させずに
あらかじめ導電性酸化物から成る層を設けることによ
り、長時間の運転後においても両者間に電子伝導性の低
い酸化物層が形成されにくくなり、電子伝導の安定化が
図られる。
【0017】本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池の電解
質層は、酸化剤極側たとえばリチウムフェライトのよう
なカソードから溶出してきたニッケルのカチオンまたは
酸化ニッケル微粒子を捕捉する捕捉層を具備することに
より酸化剤極の溶出を抑制し、同時に電解質層の燃料側
を平均孔径の小さい反応ガスクロスリークに対するバリ
ア層とすることにより、電解質の安定保持とガスのクロ
スリークの発生を抑えることが可能となる。
【0018】本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池のシス
テム構成及び運転方法は、燃料極側の反応ガス中の二酸
化炭素の分圧を高くすることにより、燃料極中の電解質
の分布が静的な等保持力面の分布から大幅にずれること
を押え、三相界面の面積の減少を低減させることを可能
としている。また燃料極側の反応ガス中の水素のモル分
率を下げるとともに、水素の利用率を下げてセル内での
電流分布を均一にし、温度むらに起因する局所的な発熱
によるセル性能の劣化を抑えるとともに、セル面内での
電解質の分布を均一化させ、三相界面の減少を防ぐこと
が可能となる。
【0019】本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池のシス
テム構成および運転方法は、複数のスタックを相補的に
運転・休止させることにより、電解質が運転中に動的な
等抵抗面に移行したことにより減少した三相界面の面積
を、休止中に電解質を静的な等保持力面の分布に戻すこ
とにより復帰させることが可能となり、システム全体か
ら見た経時的な反応分極の増大を低減させることができ
る。また更に、休止中のスタックに不活性ガスを流通
し、運転中のスタックから逆転電圧を付加することによ
り、燃料極の酸化反応と酸化剤極の還元反応が生じ、特
に燃料極において電解質との濡れ性が回復することか
ら、やはりシステム全体から見た経時的な反応分極の増
大を低減させることができる。
【0020】本発明に係る溶融炭酸塩型燃料電池のシス
テム構成は、酸化剤極排ガスの顕熱により燃料ガスの改
質反応を行なうと共に燃料極側の排ガスを燃焼させる独
立の系統を設けることにより高温のブロワーなしに電池
排熱を有効に利用できる。
【0021】
【作用】本発明によれば、高電流負荷運転下にあっても
イオン伝導抵抗、電子伝導抵抗、及び三相界面での反応
抵抗に起因する溶融炭酸塩型燃料電池の出力電圧の低下
を低減できる(高出力密度化)ために、一定の出力を得
るのに必要なセル面積を削減することができる。これに
より溶融炭酸塩型燃料電池の製造コストにおける材料費
を低減させることが可能になる。また本発明によれば、
溶融炭酸塩型燃料電池の経時的な出力電圧の低下も抑制
することができる(長寿命化)ために、長時間にわたっ
て安定な出力を得ることが可能になる。更に高出力密度
化と長寿命化の両者があいまって、電力価格に占める固
定費(減価償却)分を低減することができる。また多少
セル電圧が低くても積層電池の排熱を有効に利用して燃
料ガスの改質を行なうことによりシステムの発電効率を
高くでき、これにより電力価格に占める変動費分を低減
することができる。これにより、進歩した火力発電(コ
ンバインドサイクル)と電力価格面で競合でき、かつ高
効率な発電システムを構築することが可能となる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)図1には本実施例に係る溶融炭酸塩型燃料
電池における単セルが示されている。
【0023】まず、概略構成を説明する。同図におい
て、1−1は溶融したアルカリ炭酸塩等の電解質をリチ
ウムアルミネート等のマトリックス材即ち電解質保持材
で保持した電解質層である。この電解質層の一方の面側
には、ニッケルまたはニッケルを主成分とする金属の多
孔質焼結体等で構成された燃料極1−2が接触配置され
ている。また、他方の面側にはリチウムドープ・酸化ニ
ッケルの多孔質焼結体等からなる酸化剤極1−3が配置
されている。そして、燃料極の背面側には水素ガスを含
む燃料ガスを供給するためのガスチャンネル1−4が配
置されており、酸化剤極の背面側には酸素を含む酸化剤
ガスを供給するためのガスチャンネル1−5が配置され
ている。
【0024】本発明にかかる燃料極は、電解質層に接す
る側と電解質層に接しない側の二重構造で形成されてい
るが、このような二重構造の燃料極1−2を製造するに
当たり、予めニッケルの焼結体等で多孔質の母体を形成
し、別途作製した金属酸化物微粒子を懸濁させたスラリ
ーをこの多孔質体の一方の面から吸引注入し、スラリー
の分散媒を揮散させることにより、燃料極1−2の一方
の面に金属酸化物微粒子を多く含む層を形成させる。ス
ラリーを注入した側のニッケル粒子の表面近傍には金属
酸化物微粒子が多く存在するが、金属酸化物はニッケル
に較べて電解質に対する濡れ性が高いため、この面をマ
トリックスに密着させることにより、電解質保持性の高
い単セルを構成することが可能となる。
【0025】燃料極1−2と電解質層1−1との間にお
ける電解質保持のバランスは両者の構成粒子間の平均細
孔径に依存し、平均細孔径が近ければより安定に電解質
が保持される。燃料極1−2の多孔質母体粒子間の平均
細孔径は電解質層粒子間の平均細孔径よりも大きいが、
この母体に金属酸化物スラリーを注入する際に、その金
属酸化物微粒子の粒径と分散媒の種類、およびスラリー
の濃度を調整することにより、分散媒揮散後の金属酸化
物微粉末含有層の平均細孔径を制御することができる。
金属酸化物微粒子の粒径はマトリックス材粒子と同程度
の0.1〜0.5μmが適当であり、分散媒には2−プ
ロパノールやブタノール等のアルコール類、あるいはポ
リビニルアルコール等をこれらに添加して粘度調整した
液体が好ましい。またスラリーの濃度は、分散媒に対し
金属酸化物を1〜5体積%含んでいるものが吸引注入を
しやすい。
【0026】上記方法以外に、まずニッケル粉末等の燃
料極1−2母材に予め金属酸化物微粒子を振動流動槽等
で混合させ、この混合粉を仮焼結することにより金属酸
化物リッチ層を形成した後に、この層の上に金属酸化物
を含まないニッケル粉末等の燃料極1−2母材を散布
し、本焼結をすることによっても金属酸化物微粒子を燃
料極1−2の一方の側に存在させることが可能となる。
金属酸化物リッチ層の形成、およびその後の燃料極1−
2母材の散布に関しては、ドライキャスティング法、テ
ープキャスティング法のいずれの手法をとることもでき
る。金属酸化物リッチ層の形成に関し、混合する金属酸
化物の量と粒径を変えることによって、この層の電解質
保持性および細孔径を制御することが可能であるが、金
属酸化物の量が多すぎるとニッケル粉末等の燃料極1−
2母材の焼結性を損なうので20体積%以下が適当であ
る。また前記と同様に金属酸化物の粒径はマトリックス
材粒子と同程度の0.1〜0.5μmが望ましい。
【0027】なお金属酸化物リッチ層を形成させる際に
用いるニッケル粉末等の粒径に関しては、本焼結時にお
いて焼結性が揃って反り等を生じないように、後で散布
する金属酸化物を含まない燃料極1−2母材粒子の粒径
よりも小さくすることが望ましい。
【0028】金属酸化物リッチ層を形成させるための酸
化物の素材としては、Al、LiAlO、Zr
、LiZrO、La、LiLaO、C
eO、Y、TiO、LiTiO、Mn
、LiFeO、LiCoO、MgO、CaO、
BaO、Nb、Ta、LiTaO、Mo
O、WO等の1種または2種以上の混合物が例示され
る。
【0029】上記金属酸化物の中で、とくに有用である
のがAlおよびLiAlOである。Al
は安価であり、炭酸リチウムを含むアルカリ溶融塩に晒
される環境ではより安定なLiAlOに容易に変化す
る。
【0030】金属アルミニウムは自身が両性金属である
ために、アルカリ溶融塩に晒される環境では容易にAl
あるいはLiAlOに変化する。従って燃料極
1−2母材であるニッケル多孔質体等の表面にAlが添
加されている構造を燃料極1−2のマトリックス側に設
ければ、燃料電池動作の初期(炭酸塩溶融時)にAlが
酸化されてLiAlOになることにより、そこに金属
酸化物リッチ層が形成されることになる。
【0031】なお以下Alに関する記載はAlと同じく
両性金属であるZn、Snに関しても適用が可能であ
る。
【0032】燃料極1−2母材であるニッケル多孔質体
等の構成粒子の表面にAl化合物が添加されている構造
を形成する1手法として電解析出法がある。塩化アルミ
ニウム水溶液等の電解液中にニッケル多孔質体と対極を
入れ、対極を正極として両者間に電流を流すことにより
ニッケル多孔質体の表面に水酸化アルミニウムを析出さ
せることができる。この水酸化アルミニウムがアルカリ
溶融塩と反応することにより、燃料極1−2母材構成粒
子の表面にアルミニウム酸化物層が形成される。
【0033】ニッケル中にアルミニウムを拡散させる手
法としてカロライズ処理が知られているが、これを適用
することにより燃料極1−2母材にアルミニウムを添加
することが可能となる。予め製造したニッケル多孔質体
2枚を重ね合わせ、Al拡散材(Al:NHCl:A
=1:0.1:3wt比)中に入れ、不活性ガ
ス雰囲気下で加熱処理することにより2枚の多孔質体そ
れぞれの片面にアルミニウムを添加することができる。
ただし、高温あるいは長時間の処理を行なうとアルミニ
ウムの拡散が過度に進行し、ニッケル粒子が膨れるこに
より多孔質構造が変化してしまうので、450〜500
℃、5〜30分程度の処理が望ましい。
【0034】溶融炭酸塩型燃料電池を起動させる際、燃
料極1−2には電解質を予備含浸するが、この予備含浸
時にAl成分を燃料極1−2中に取り込ませることがで
きる。燃料極1−2の電解質層1−1に接する側にAl
とNiの混合微粉のスラリーを塗布し、還元雰囲気中で
800℃に昇温することにより、スラリー中のNi粉が
焼結するとともにAlが溶融炭酸塩と反応してLiAl
リッチ層が形成される。
【0035】Al以外にMgOやCaOも溶融炭酸塩型
燃料電池の電解質予備含浸時に燃料極1−2の電解質層
1−1側に取り込ませることが可能である。LiCO
/KCO/MgCO(またはMg(OH)
をメタノールに懸濁させたスラリーを燃料極1−2の電
解質層1−1側に塗布し、CO:2〜5mol%、H
:4〜6mol%、Nバランスの雰囲気で昇温する
と、溶融したアルカリ炭酸塩が燃料極1−2に含浸され
ると共に反応により生じたMgOが燃料極1−2の電解
質層1−1側に残存する。CaOに関しても同様の手法
が可能であるが、CaCOの分解反応を適当なレベル
とするために雰囲気中のCOは1mol%以下にする
ことが望ましい。
【0036】なお燃料極1−2への電解質予備含浸時に
AlやMgO、CaO等の金属酸化物を燃料極1−2に
取り込ませる場合には、後に電解質層1−1との良好な
接触をもたらせる観点から、平滑なグラファイト板等で
燃料極を挾持させ、Alや金属酸化物を含有する層に凹
凸が生じないようにすることが望ましい。
【0037】金属酸化物リッチ層を形成させるためにL
i合金の箔を用いることもできる。Li:Mg:Al=
37.6:57.4:5またはLi:Mg:Zn=3
8.5:56.5:5(mol比)から成る合金箔を、
平滑グラファイト板で挾みながらCOを含まない還元
雰囲気中で燃料極1−2の一方の側に溶融注入させ、注
入後にCOガスを添加して酸化物にすることにより、
燃料極1−2基体の片側に金属酸化物が強固に固着した
構造を形成させることができる。
【0038】図2は本発明に係る燃料極、および従来の
燃料極を用いて構成した溶融炭酸塩型燃料電池単セルの
電流電圧特性を示すグラフである。従来の燃料極を用い
たセルは150mA/cm2 の運転で850mVの電圧
であるが、本発明に係る燃料極では金属酸化物の存在に
よる起電反応に有効な三相界面が増大しているために9
00mVの電圧を得ることができる。
【0039】図3は本発明に係る燃料極、および従来の
燃料極を用いて構成した溶融炭酸塩型燃料電池単セルを
300mA/cm2 で運転させた場合の電圧の経時変化
で示すグラフである。従来の燃料極を用いたセルは10
00時間あたりから電解質ロスに伴う電圧低下が起こっ
ているが、本発明に係る燃料極では金属酸化物の存在に
より燃料極中に電解質が安定に保持されるため、400
0時間の運転後であっても電解質ロスに伴う電圧低下が
生じていない。
【0040】(実施例2)図4には本実施例に係る溶融
炭酸塩型燃料電池における電解質層が示されている。同
図において2−1はマトリックス・シートの基板であ
り、燃料極側の2−2はバリア層、酸化剤極側の2−3
は捕捉層である。
【0041】電解質層はリチウムアルミネート粒子にバ
インダー、可塑材および溶媒を添加して壊砕混合後にシ
ート化し、これを電池内に組み込み、電池内においてバ
インダーを揮散させることによって形成される。原料で
あるリチウムアルミネートの一次粒子の直径は1μm以
下であるが、通常はこの一次粒子が凝集して直径数μm
の二次粒子を形成している。この二次粒子を壊砕するた
めにアルミナやジルコニアのボールミルを用いている
が、アトライターを用いると更に微細に壊砕することが
できる。そこでボールミルを用いて製造したマトリック
ス・シートを基板2−1とし、燃料極側にアトライター
を用いて製造したマトリックス・シートを重ねて電池内
でバインダー揮散をし、一体化させた。アトライターを
用いて製造したマトリックスは平均粒径が小さく、従っ
て細孔径も小さいために電解質の保持性が高くなり、絶
縁性が高くかつクロスオーバーを抑制するバリア層2−
2となる。
【0042】酸化剤極にリチウムドープ・酸化ニッケル
の多孔質焼結体を用いた場合、長時間の運転後に酸化ニ
ッケルが電解質層に溶出し、溶出したニッケルイオンま
たは酸化ニッケル微粒子が燃料極側に達して還元され、
金属ニッケルが析出することにより電池内部に短絡経路
が形成される問題がある。そこで電解質層の酸化剤極側
にニッケルイオンまたは酸化ニッケル微粒子を捕捉する
層2−3を設けることによりこの問題を回避することが
可能となる。
【0043】捕捉層2−3の素材としては、Al
、ZrO、FeO、Fe、MnO、C
oO、TiO、CeO、ZnO、Ta、WO
、MoO、SnO、La、BaO、CaO、
LiAlO、LiZrO、LiFeO、LiTi
、LiMn、LiTaO、Ta等の
1種または2種以上の混合物が例示される。特に、混合
物としてはLiAlOとFe、Mn系酸化物、あるい
はLi化複合酸化物(例えばLiFeO等)等の混合
物が適している。
【0044】図5は本発明に係る電解質層、および従来
の電解質層を用いて構成した溶融炭酸塩型燃料電池単セ
ルを300mA/cm2 で運転させた場合の電圧の経時
変化を示すグラフである。従来の電解質層を用いたセル
は1000時間あたりからクロスオーバーと内部短絡経
路形成に伴う電圧低下が起こっているが、本発明に係る
電解質層ではバリア層の存在により電解質が安定に保持
されると同時にクロスオーバーが抑制され、また捕捉層
の存在により内部短絡経路形成が抑制されるために、5
000時間の運転後であっても電圧低下が低減されてい
る。
【0045】(実施例3)図6には本実施例に係る溶融
炭酸塩型燃料電池における酸化剤極3−1とガスチャン
ネル3−2が示される。
【0046】リチウムドープ・酸化ニッケル酸化剤極3
−1はテープキャスティング法により形成したグリーン
シートを焼結せずにそのまま用いる。またガスチャンネ
ル3−2には多孔質体のリブ付き酸化剤極支持体を用い
る。リブ付き酸化剤極支持体の製造方法としては例えば
金属ニッケル粉末をカーボンの型に入れ還元雰囲気で焼
成して得る(モールド法)。この支持体に水酸化リチウ
ムをニッケル分に対し3mol%のリウチム量となるよ
うに添加し、5体積%以下の炭酸ガス雰囲気下で熱処理
してリチウムドープ・酸化ニッケル多孔質体とした。構
成成分を同一とした酸化剤極3−1とガスチャンネル3
−2をセル内で0.1kg・cm-2以上の圧力で圧着・
一体化して電池内に組込んだ。その後、酸化剤極の脱脂
終了後、所定面圧まで締め付けを行ない電池の運転を行
なった。従来例では存在した酸化剤極3−1とガスチャ
ンネル3−2間の接触抵抗が小さくなり、電池性能が向
上し、かつ酸化剤極3−1とガスチャンネル3−2に共
通成分を有する界面での腐食層の成長の原因となる物質
移動が抑制されるので高抵抗の酸化物が生成されず、性
能の低下が少なく長寿命の運転が可能となる。本実施例
を用いた場合の抵抗値の変化と従来例の比較を図7に示
す。鉄系(SUS)の穴開き金属板に凹凸を設けたガス
チャンネルと組み合わせた従来例では発電試験初期から
既に抵抗値が1.2倍も大きく、またその抵抗値の経過
時間変化も2000時間経過後からガスチャンネルと集
電板の腐食層の成長にともない急激に大きくなる事が判
る。本実施例では2000時間経過後でもその抵抗値は
安定していた。
【0047】従来酸化剤極3−1にはリチウムドープ・
酸化ニッケルが電池内あるいは電池外で作成され用いら
れてきたが、本実施例に於いてはこれ以外にもニッケル
酸リチウム粉末を作成し、酸化剤極として使用しても良
い。また、この粉末を酸化剤極支持体として用いても良
い。リブ付き酸化剤極支持体の製造方法としては、金属
ニッケルあるいは酸化ニッケル粉末にバインダー添加を
行いスラリーとした後、テープキャスティングによりグ
リーンシートを作成し、そのリブ付き構造を作成した
後、焼結する方法もある。また、実施例ではニッケル粉
末を用いた例を示したが、Ni、Co、Fe、Mn、A
g、Au、Cu等の金属粉末あるいは酸化物粉末の1種
類あるいは2種類以上の混合粉末が例示される。また、
これらの金属あるいは酸化物粉末に酸化剤極の運転温度
によるクリープ防止用と酸化剤極とリブ付き酸化剤極支
持体の溶出対策用に他の酸化物添加を行っても良い。ま
た、リブ付き酸化剤極支持体の気孔率は5〜90%、平
均孔径が3μm以上であれば良い。
【0048】(実施例4)図8には本実施例に係わる溶
融炭酸塩型燃料電池における酸化剤極4−1とガスチャ
ンネル4−2が示される。
【0049】酸化剤極側には酸化剤極4−1と酸化剤ガ
スを供給するためのガスチャンネルとの間に集電板とガ
スチャンネルの機能を有した多孔質平板状の酸化剤極支
持体4−2を配置する。
【0050】酸化剤電極としては金を分散したLiFe
にバインダー添加を行い、グリーンシート化したも
のを用いる。また、酸化剤極支持体にはニッケルあるい
はリチウム化した酸化ニッケルの多孔質体を用いる。
【0051】本実施例を用いた場合と従来例の抵抗値の
経過時間変化を図9に示す。従来例では鉄系あるいはニ
ッケル系金属メッシュを支持体としていた。グリーンシ
ートの状態で用いる酸化剤極は酸化剤極支持体との一体
性が十分ではなく、従来のガスチャンネルとメッシュの
組合わせた場合には酸化剤ガスの雰囲気により金属メッ
シュが酸化されたり、酸化剤極がガスチャンネルに落込
むといった構造の変化が生じていたので接触抵抗が10
00時間経過後より増大した。本実施例のような構造に
することにより、酸化剤極の安定化がはかれ、接触抵抗
が従来例に比べ減少すると共に、さらに抵抗値の経過時
間に対する変化も小さくなっていた。この場合、酸化剤
極と支持体の構成成分は異なるが、両者の構成界面にニ
ッケルフェライトが生成しても大きな抵抗とはならなか
った。
【0052】本実施例では金分散を行ったLiFeO
酸化剤極に使用した場合を示したが、この他、グリーン
シートより作成され、未焼結のまま電池内に組み込まれ
る酸化剤極であれば本実施例の構成は有効である。本実
施例では酸化剤極であるLiFeOの導電性改良のた
め、4価の陽イオン(ZrO)を酸化物として添加し
た。添加の方法としては、ZrO、CeO等の酸化
物とLiFeOの混合あるいはLiFeO生成過程
でゾルゲル法等により添加を行っても良い。これ以外に
も4価イオンがLiFeO中に均一分散できる方法で
あれば何でも良い。また、2価イオンあるいは遷移金属
を添加したLiFeOにさらに4価イオンの添加を行
っても同様の効果が得られる。
【0053】(実施例5)図10には本実施例に係わる
溶融炭酸塩型燃料電池における酸化剤極のセパレータ5
−1とガスチャンネル5−2が示される。
【0054】酸化剤極はテープキャスティング法あるい
はドライキャスティング法により得られる。ガスチャン
ネル5−2は鉄系(SUS、INCOLOY)あるいは
ニッケル系合金(INCONEL)の薄板から作製され
る。本実施例では鉄系合金であるSUS316に耐食性
でかつ導電性の酸化物を生成させた例を示す。SUS3
16薄板でガスチャンネルを形成後、脱脂・乾燥を行っ
た。このガスチャンネル5−2に0.1mol/L以上
の水酸化カリウムの水溶液と水酸化マグネシウムを塗布
・乾燥し、その後電気炉により空気中で950℃以下の
温度で1〜100時間熱処理を行った。ガスチャンネル
薄板表面に密着性の良い導電性酸化物被膜が形成され
た。このガスチャンネル5−2を電池内に組込み、0.
1kg・cm-2以上の圧力でセパレータを模擬した半セ
ルホルダーと酸化剤電極に密着させ、昇温し、電池とし
た。電池抵抗の変化を図11に示す。予め導電性酸化被
膜が成長したものを用いていない従来例では電池内で高
抵抗の酸化物被膜が生成するので経過時間に従って電池
抵抗が増大する。しかし本実施例では試験初期から電池
抵抗は低くなった。また、生成した腐食層の厚さも従来
より薄くなっており、耐食性が向上していた。
【0055】本実施例では水酸化カリウム水溶液と水酸
化マグネシウムを用いた場合を例示したが、この他水酸
化リチウム、水酸化ナトリウムを用いても良いし、1種
類あるいは2種類以上混合しても同様の効果が得られ
る。また、電解質である溶融炭酸塩が共存しない条件下
での酸化処理した場合を例示したが、電池の昇温時に熱
処理を行っても同様の効果が得られる。このときは昇温
時の酸化剤ガス雰囲気中の炭酸ガス分圧を5%以下にす
る必要がある。炭酸ガス分圧はこれより高いと水酸化物
が炭酸塩に変化して融点が上昇し、密着性の良い導電性
酸化物被膜は得られない。さらに本実施例ではSUS3
16を用いたが他のSUS系あるいはINCOLOY系
の材料でも同様の効果が得られる。
【0056】(実施例6)図12には本実施例に係わる
溶融炭酸塩型燃料電池における酸化剤極のセパレータ6
−1とガスチャンネル6−2が示される。本実施例では
酸化剤極側のセパレータとガスチャンネルの基体にニッ
ケル系合金であるINCONEL600に耐食性と導電
性の酸化物を生成させた例を示す。
【0057】酸化剤極はテープキャスティング法あるい
はドライキャスティング法により得られる。INCON
EL600薄板でガスチャンネルを形成後、脱脂・乾燥
を行った。このガスチャンネルに一次処理として、0.
1mol/L以上の水酸化リチウムの水溶液を塗布・乾
燥し、その後電気炉により空気中で950℃以下の温度
で1〜100時間熱処理を行った。この後、水洗し、表
面に生成した高クロムの腐食層を除去する。これにより
表面層には導電性の高いリチウム化・酸化ニッケルの層
が生成する。その後、二次処理としてこのガスチャンネ
ルを0.1mol/L以上の水酸化リチウムと水酸化マ
グネシウムの水溶液を塗布・乾燥し、電池内に組込み、
0.1kg・cm-2以上の圧力で半セルホルダーと酸化
剤電極に密着させ、昇温し、電池とした。電池抵抗の変
化を図13に示す。予め導電性酸化被膜が成長したもの
を用いていない従来例では電池内で高抵抗の酸化物被膜
が生成するので経過時間に従って電池抵抗が増大する。
しかし本実施例では試験初期から電池抵抗は低くなっ
た。また、生成した腐食層はその表面に緻密なリチウム
ドープ・酸化ニッケル層を有し、内層にはクロムの高濃
度層を有しているために耐食性も保ち、腐食生成層の厚
さも従来よりは薄くなっており、耐食性と導電性が向上
していた。
【0058】本実施例ではINCONEL600の薄板
を用いたが、50%以上のニッケルを含む合金系では本
実施例は有効である。また、本方法ではアルカリ処理・
熱処理と水洗により表面に生成する高クロム層を除去し
ているが、この高クロム層の除去が行える方法であれば
何でも良い。また、一次処理に水酸化リチウム水溶液を
用いた場合を例示したが、この他水酸化リチウム、水酸
化ナトリウムを添加しても同様の効果が得られた。ま
た、水溶性のクロム層を生成する物質であれば塗布する
試薬は何でも良い。また、二次処理として0.1mol
/L以上の水酸化リチウムと水酸化マグネシウムの水溶
液を塗布しているが、この他水酸化カリウム、水酸化ナ
トリウムを添加しても同様の効果が得られた。また、実
施例5、6ではカソード側のガスチャンネルにあらかじ
め導電性酸化被膜を設けたが、これにかえて、あるいは
これとともにセパレータのカソード側の面にあらかじめ
導電性酸化被膜を設けてもよい。
【0059】(実施例7)本実施例は、燃料極側の排ガ
スのリサイクル率を65%以上に高めて燃料極反応ガス
中の二酸化炭素分圧を高める方法についてである。
【0060】図14に、本実施例の発電システムの構成
を示す。システムを構成する機器は、概ね450℃以上
の、図中破線で示した断熱・圧力容器の内部と、350
℃以下の外部とに設置される。積層電池7−1の燃料極
7−2からの、高濃度の二酸化炭素を含有する高温の排
ガスは、高温ブロワー7−4で改質器7−5に導かれ、
下記の反応式で示される部分酸化、 CO + CH → 2CO + H または、下記の水蒸気改質反応 HO + CH → CO + 3H により原燃料の天然ガス中の主成分であるメタンガスの
改質が行われる。この反応は吸熱反応で、燃料排ガスの
顕熱が使われる。改質触媒としては、600℃で充分な
改質性能を有し、また炭素析出の起こりにくい1重量%
のルテニウムをアルミナに分散したものを使用した。脱
硫された天然ガスと水は熱交換器7−7で予熱・蒸発さ
れて、改質器7−5に注入される。
【0061】改質器7−5で改質された混合ガスは、表
面に0.1μm程度の微小孔を有すセラミックの多孔質
チューブを多数本内部に納めた隔膜式のガス分離器7−
6に導かれ、透過側の水素・一酸化炭素・メタン等の可
燃成分の濃度が高められたガス、残留側の二酸化炭素や
水蒸気分の濃度が高められたガスに分離される。透過ガ
スは溶融炭酸塩型燃料電池7−1の燃料極7−2に供給
され、残留ガスはブロワー7−14により大部分が酸化
剤極7−3手前の燃焼器7−15に供給される。残留ガ
スの一部は、熱交換器7−7で天然ガス等に熱を与えた
後、図示されない炭酸塩スクラバで炭酸塩のミストまた
は蒸気を取り去り、冷却器7−8で冷却され、気水分離
器7−9で水を分離した後図示されない二酸化炭素分離
器で回収されたり、二酸化炭素と窒素の少量(0.1%
以下)の酸素からなる断熱・圧力容器内部のパージガス
の生成器(図示されない)に導かれる。
【0062】酸化剤極への反応ガスは、ターボコンプレ
ッサー7−12で排出ガスの動力を回収した後熱交換器
7−13で予熱され、外側に燃焼触媒を付与したセラミ
ック多孔質チューブ多数を内蔵する燃焼機器7−15の
チューブ内側に導かれ、可燃ガスを少量含有するガス分
離器7−6からの残留ガスと触媒燃焼して温度を高め、
酸化剤極7−3に導かれる。
【0063】このように燃料排ガスのリサイクル率を高
め燃料極反応ガス中の二酸化炭素分圧を高めることによ
り、これを行なわない場合に比べ負荷電流を0.15A
/cm2 から0.30A/cm2 に増加させた際のセル
電圧の降下を6mV少なくすることができた。
【0064】ここで、ブロワーを断熱・圧力容器の内部
に収納したのは、こうしたほうがブロワーの内部と外部
の差圧が小さくてガスの漏洩が少なく、また仮に少々漏
れても容器内部が不活性雰囲気で燃焼しないからであ
る。また、酸化剤極室に水蒸気を高濃度含有するガス分
離器排ガスを供給するのは、水蒸気濃度が高いほうが溶
融炭酸塩の塩基度が高まり、酸化剤極の酸化ニッケルの
溶出速度を低減できるだけでなく、むしろ酸素の電気化
学的還元反応速度を高めるのに寄与するからである。
【0065】(実施例8)本実施例は、多数の積層電池
を同一の容器に設置し、各電池の運転圧力を少しずつ違
えて運転する場合に、燃料極室の反応ガス中の二酸化炭
素分圧を高める他の方法である。図15の破線で仕切ら
れた領域に、実施例の発電システム構成の内、n番目の
積層電池とそれへの反応ガスの供給・排出の系統を示
す。システムを構成する機器は概ね450℃以上の、図
中破線で示した断熱壁8−17を有する気密容器の内部
と、350℃以下の外部とに設置される。
【0066】n番目の積層電池とそれへの反応ガスの供
給・排出系統の基準運転圧力はPnで、次のn+1番目
の積層電池の基準運転圧力Pn+1 はPn −ΔとΔだけ低
い圧力となる。こうするために、容器の外側に設置され
た圧力調節弁または流量調節弁8−20〜8−23で燃
料ガス系統と酸化剤ガス系統それぞれの入口・出口圧力
又は流量を調整している。この結果、各積層電池を同一
として気密容器内に設置した場合に比べて、不活性な雰
囲気ガスの積層電池への漏れ込みと電池からの漏れだし
は増加するが、容器内部に体積が大きく能動部品のブロ
ワーを持ち込まなくて良いので、単位出力当たりの容器
体積を小さく出来る。定格出力200kWの積層電池5
台を同一容器に収納した場合の容器体積はブロワーを内
蔵させた場合の70%にすることができた。なお容器内
部圧は、図示しない圧力調整弁で真ん中の番号の積層電
池の運転圧力に制御される。また図15波線を差圧Δに
耐える圧力障壁(断熱性は必要ない)として雰囲気圧を
各積層電池ごとに違えてもよい。
【0067】n−1番目の積層電池の燃料極室から排出
された圧力Pn で高温で二酸化炭素分圧・水蒸気分圧の
高いガスと調節弁8−21で所定の圧力に調整された天
然ガスとは、改質器兼ガス分離器8−24に導入され、
実施例8の改質器内と同様の改質反応で改質されると共
に、可燃成分を主とす透過ガスと二酸化炭素・水蒸気を
主とする残留ガスとに分離される。透過ガスはn番目の
積層電池の燃料極室に導かれ、残留ガスの大部分は、エ
ジェクター兼燃焼器8−18に吸引され、空気と混合さ
れ燃焼の後、n番目の積層電池の酸化剤極室に導かれ
る。残留ガスの一部は、熱交換器8−7を経由して、中
空糸膜を分離膜とする第二のガス分離器8−19に供給
される。ここを透過した水素等の可燃ガスはn+1番目
の積層電池の燃料極室に供給する天然ガスに混合され
る。残留ガスは、図示されない冷却器で冷却され、気水
分離器で水を分離した後、二酸化炭素を分離・回収する
か、あるいは断熱容器内部のパージガスの生成器に導か
れる。
【0068】(実施例9)本実施例は、燃料ガス中の二
酸化炭素分圧を高めると共に、水素分圧を低下させる方
法である。利用率80%相当のメタン改質ガスに燃料極
出口からリサイクル率94%で回収した燃料極出口ガス
を混合した後、燃料極に供給して、燃料利用率20%で
運転する。この場合、電池内の最大電流密度・最小電流
密度比は1.12である。これに対してメタン改質ガス
を利用率80%で燃料極に供給した場合、電池内の最大
電流密度・最小電流密度比は1.84となり、電流密度
分布が大きく、高電流密度部分が高温になり、電池寿命
が短くなる。これに対し、本実施例では電流密度分布が
小さく、高温部ができないので、電池寿命が長くなる。
【0069】(実施例10)以下、本発明の実施例を図
面(図16、17)を参照しつつ説明する。
【0070】図16、17は、溶融炭酸塩型燃料電池の
電気的な接続の一実施例を示すものである。一つまた
は、複数個からなる燃料電池10−1のプラス(+)側
出力端子とマイナス(−)側出力端子の両端に外部信号
により自動的にON/OFFするスイッチ10−2、1
0−3を接続し、さらにスイッチ10−2、10−3の
外側に外部信号により自動的に溶融炭酸塩型燃料電池を
電気的に短絡するスイッチ10−4が接続されている。
これを1つのユニットとし、これらのユニットを複数個
電気的に直列または、並列に接続し電気的に接続された
末端を電池の出力を取り出す負荷装置10−5に接続す
る。
【0071】通常の負荷運転時には、溶融炭酸塩型燃料
電池10−1を短絡する短絡スイッチ10−4は、すべ
て開路状態でOFFとなっている。負荷運転中に燃料電
池10−1の内部では電解質は、動的状態であり、静的
な等保持力面からはずれた不均質な分布となっている。
この不均質な電解質分布状態では、内部抵抗が増大する
ため、電池出力電圧の低下を生じる。
【0072】これをある一つまたは、複数のユニットの
燃料電池10−1Aを短絡するスイッチ10−4Aを閉
路状態でONとし、さらに、燃料電池10−1Aの出力
端子の両端に接続したON/OFFスイッチ10−2
A、10−3Aを開路状態のOFFとする。これによ
り、溶融炭酸塩型燃料電池は外部から電気的には完全に
遮断され、開路電圧状態となる。開路電圧状態とは無負
荷状態または、休止状態であり、ある時間と共に燃料電
池10−1Aの内部の電解質は動的状態から、静的な等
保持力面を回復する。
【0073】この時、遮断せずに通常の負荷状態にある
他の燃料電池10−1に対しては、出力に見合った量の
燃料ガスおよび酸化剤ガスを制御して供給する。また、
遮断された燃料電池10−1Aには燃料ガスおよび酸化
剤ガスを必要量供給するかまた、パージガスを供給す
る。
【0074】ある時間遮断した燃料電池10−1Aは、
再び短絡スイッチ10−4Aを開路状態とするため、O
FFにする。また、燃料電池10−1Aの両端のスイッ
チ10−2A、10−3Aは、閉路状態とするため、O
Nとする。これにより、燃料電池10−1Aの出力電圧
は、当初の電圧まで復帰できる。
【0075】続いて、他の燃料電池ユニットの場合につ
いても同様の運転操作をすることにより、電池出力電圧
の回復をすることができる。この運転は、2つ以上のユ
ニットに対して同時に行っても良い。
【0076】図18は、溶融炭酸塩型燃料電池の電気的
接続方法を示した図である。図19は溶融炭酸塩型燃料
電池全体の負荷制御方法を示した図である。燃料電池1
0−1の出力端子の両端にはスイッチ10−2、10−
3を接続し、負荷装置10−5を電気的に直列に配置す
る。負荷運転時には、燃料電池10−1の出力端子両端
のスイッチ10−2、10−3は、閉路状態(OFF)
とし、燃料電池10−1には、所定の燃料ガスと酸化剤
ガスを供給し、負荷装置10−5にて電気出力を所定の
出力になるように調整する。負荷装置10−5では、一
定時間内のONパルス10−7の数(non)とOFFパ
ルス10−8の数(n off)の比で負荷を調整する。こ
の負荷のパルス制御と関連付けて、燃料電池10−1へ
の燃料ガスと酸化剤ガスの供給量のパルス制御を行って
も良い。
【0077】更に燃料電池10−1と電気的に並列とな
るようにコンデンサー10−6を配置し、電池出力分の
一部をコンデンサーにため、燃料電池負荷が無負荷状態
時の外部負荷に対応して使用する。
【0078】(実施例11)以下、本発明の実施例を図
20、21を参照しつつ説明する。
【0079】図20、21は、溶融炭酸塩型燃料電池の
電気的な接続の一実施例を示すものである。一つまた
は、複数個からなる燃料電池11−1のプラス(+)側
出力端子とマイナス(−)側出力端子の両端に外部信号
により自動的にON/OFFするスイッチ11−2、1
1−3を接続し、さらにスイッチ11−2、11−3の
外側に外部信号により自動的に燃料電池11−1を電気
的に短絡するスイッチ11−4が接続されている。これ
を1つのユニット11−7とし、これらのユニット11
−7を複数個電気的に直列または、並列に接続し電気的
に接続された末端を電池の出力を取り出す負荷装置11
−10に接続する。
【0080】さらに、他の燃料電池11−1から強制的
に逆転電圧を付与する電線回路11−5、11−6をス
イッチ11−8、11−9を介して接続できるようにし
ておく。これをある一つまたは、複数のユニット11−
7の中の燃料電池11−1Aを短絡するスイッチ11−
4Aを閉路状態でONとし、さらに、燃料電池11−1
Aの端子の両端に接続したON/OFFスイッチ11−
2A、11−3Aを閉路状態のOFFとする。これによ
り、燃料電池11−1Aは外部から電気的には完全に遮
断され、開路電圧状態となり、言い換えれば、休止状態
となる。さらに燃料電池11−1Aには不活性ガスを供
給する。この状態で、他の負荷運転状態の燃料電池11
−1のプラス側を、遮断した燃料電池11−1Aのプラ
スに接続し、また、他の負荷運転状態の燃料電池11−
1のマイナス側を遮断した燃料電池11−1Aのマイナ
スに接続し、強制的に直流電流を通常の電子の流れる方
向と逆にして通電する。これにより、休止状態の燃料電
池11−1Aの燃料極の酸化反応と酸化剤極の還元反応
が生じ、特に燃料極において電解質との濡れ性が回復す
ることから反応分極の低減ができ電池出力電圧が回復す
る。
【0081】また、カソード近傍に溶出・浮游している
NiO2−アニオンあるいは負電荷を帯びたNiO微
粒子をカソード表面に析出させ、よって、比表面積の大
きな反応サイトを形成する。更に、集電体と酸化剤極界
面の酸化物層の一部を還元し、両者の接触抵抗を減少さ
せる。この時、遮断せずに通常の負荷状態にある他の溶
融炭酸塩型燃料電池11−1に対しては、出力に見合っ
た量の燃料ガスおよび酸化剤ガスを制御して供給する。
【0082】ある時間遮断した燃料電池11−1Aは、
再び短絡スイッチ11−4Aを開路状態とするため、O
FFにする。また、燃料電池11−1Aの端子の両端の
スイッチ11−2A、11−3Aは、閉路状態とするた
め、ONとする。また、他の燃料電池11−1からの直
流電流の供給もスイッチ11−8、11−9を開路状態
としてOFFとする。これにより、燃料電池11−1A
の出力電圧は、当初の電圧まで復帰できる。
【0083】続いて、他の燃料電池11−1の場合につ
いても同様の運転操作をすることにより、電池出力電圧
の回復をすることができる。この運転は、2つ以上のユ
ニット11−7を同時遮断して、一つ以上の通常運転状
態の燃料電池11−1から直流電流を付加しても良い。
【0084】また、溶融炭酸塩型燃料電池以外の外部電
池を利用して負荷を遮断した休止中の溶融炭酸塩型燃料
電池に対して直流電流を付与してもよい。
【0085】(実施例12)本発明の実施例を図22に
基づいて説明する。ポンプ12−1で気密容器内に供給
された水は熱交換器12−2で水蒸気に変えられ、コン
プレッサ12−3で気密容器内に供給されたメタンは熱
交換器12−4で加熱された後、合流点で水蒸気と混合
された後に、改質器12−5で水素含有ガスに変換され
る。変換された水素含有ガスは改質器内のガス分離膜1
2−6を通して、さらに高水素含有ガスになった後、溶
融炭酸塩型燃料電池燃料極12−7Aに供給され、アノ
ード反応(H +CO 2−→H O+CO
+2e)により水素を使用した後、溶融炭酸塩型燃料電
池燃料極外に排出される。溶融炭酸塩型燃料電池燃料極
排出ガスは逆止弁12−8通過後、コンプレッサ12−
9から気密容器内に供給された空気とともにエジェクタ
12−10を通って、燃焼器12−11に供給され、理
論空燃比で燃焼される。燃焼ガスの一部は分岐バルブ1
2−12を通して、コンプレッサ12−13から気密容
器内に供給された空気と混合され、空気に二酸化炭素を
加えて昇温後、溶融炭酸塩型燃料電池酸化剤極12−7
Bに供給される。ここでカソード反応(1/2O
CO +2e→CO 2−)により酸素・二酸化炭
素を消費して、温度が上昇したのち、溶融炭酸塩型燃料
電池酸化剤極から排出され、改質器12−5・熱交換器
12−4・熱交換器12−3に顕熱を供給してから、気
密容器外に排出され、タービン12−14を回して、コ
ンプレッサ12−13の動力を供給する。また、分岐バ
ルブ12−12から直接気密容器外に排出された燃焼ガ
スは水分離器12−15で水分を分離後、気密容器内パ
ージガスとして再度、気密容器内に供給される。本実施
例では、水分・酸素をほとんど含まない窒素・二酸化炭
素混合ガスを気密容器内パージガスPとして使用するこ
とにより電解質である炭酸塩の分解防止および、溶融炭
酸塩型燃料電池金属部材の腐食低減が図れる。また、酸
化剤極排ガスの顕熱を有効利用でき、改質器の運転温度
が700℃程度の低温になるので、改質触媒の長寿命化
が図れる。高温部がすべて気密容器内に収納されている
ので熱損失が少なくなる。また、本実施例では高温部に
おける昇圧器などの回転機がなく構造が単純で、故障し
にくくなる。なお、改質器にはガス分離膜がなくてもよ
い。
【0086】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、電極
−電解質間のミクロな液路の遮断や、酸化剤極−カレン
トコレクタ−セハレータ間に生成する高抵抗層を抑制
し、また長時間あるいは熱サイクルを経ても電流負荷時
の三相界面の減少を生じさせず、以て高電流負荷時にも
長時間セル電圧を安定に保つことができ、また、積層電
池の排熱を有効に改質反応に利用し、多少セル電圧が低
くても電池排熱を燃料ガスの改質反応に利用してシステ
ムの発電効率を高めるための発電システムを提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る溶融炭酸塩型燃料
電池の単セルの断面図。
【図2】同燃料電池単セルの電流電圧特性を示すグラ
フ。
【図3】同燃料電池単セルを300mA/cm2 で運転
させた場合の電圧の経時変化を示すグラフ。
【図4】本発明の第2の実施例に係る溶融炭酸塩型燃料
電池の電解質層の断面図。
【図5】同燃料電池単セルを300mA/cm2 で運転
させた場合の電圧の経時変化を示すグラフ。
【図6】本発明の第3の実施例に係る溶融炭酸塩型燃料
電池の酸化剤極とガスチャンネルの断面図。
【図7】同燃料電池の抵抗値の変化と従来例との比較を
示すグラフ。
【図8】本発明の第4の実施例に係る溶融炭酸塩型燃料
電池の酸化剤極とセパレータとガスチャンネルの断面
図。
【図9】同燃料電池の抵抗値の変化と従来例との比較を
示すグラフ。
【図10】本発明の第5の実施例に係る溶融炭酸塩型燃
料電池のセパレータとガスチャンネルの断面図。
【図11】同燃料電池の抵抗値の変化と従来例との比較
を示すグラフ。
【図12】本発明の第6の実施例に係る溶融炭酸塩型燃
料電池のセパレータとガスチャンネルの断面図。
【図13】同燃料電池の抵抗値の変化と従来例との比較
を示すグラフ。
【図14】本発明の第7の実施例に係る溶融炭酸塩型燃
料電池の発電システムの構成を示す説明図。
【図15】本発明の第8の実施例に係る溶融炭酸塩型燃
料電池の発電システムの構成を示す説明図。
【図16】本発明の第10の実施例に係る溶融炭酸塩型
燃料電池の電気的な接続図。
【図17】同燃料電池の1ユニットの電気的な接続図。
【図18】同燃料電池をON・OFFするための回路
図。
【図19】同燃料電池の負荷のON・OFFをする方法
を示す説明図。
【図20】本発明の第11の実施例に係る溶融炭酸塩型
燃料電池の電気的な接続図。
【図21】同燃料電池の1ユニットの電気的な接続図。
【図22】本発明の第12の実施例に係る溶融炭酸塩型
燃料電池の発電システム構成ブロック図。
【符号の説明】
1−1 電解質層 1−2 燃料極 1−3 酸化剤極 1−4 ガスチャンネル 1−5 ガスチャンネル 2−1 マトリックスシート基板 2−2 バリア層 2−3 捕捉層 3−1 酸化剤極 3−2 ガスチャンネル 4−1 酸化剤極 4−2 酸化剤極支持体 5−1 セパレータ 5−2 ガスチャンネル 6−1 セパレータ 6−2 ガスチャンネル 7−1 溶融炭酸塩型燃料電池 7−2 燃料極 7−3 酸化剤極 7−4 高温ブロワー 7−5 改質器 7−6 ガス分離器 7−7 熱交換器 7−8 冷却器 7−9 気水分離器 7−12 ターボコンプレッサー 7−13 熱交換器 7−15 燃焼器 8−7 熱交換器 8−17 断熱壁 8−18 燃焼器 8−19 ガス分離器 8−20〜8−23 圧力調節弁または流量調節弁 8−24 ガス分離器 10−1 燃料電池 10−1A 燃料電池 10−2 スイッチ 10−2A スイッチ 10−3 スイッチ 10−3A スイッチ 10−4 短絡スイッチ 10−4A 短絡スイッチ 10−5 負荷装置 10−6 コンデンサ 10−7 ONパルス 10−8 OFFパルス 11−1 燃料電池 11−1A 燃料電池 11−2 スイッチ 11−3 スイッチ 11−2A スイッチ 11−3A スイッチ 11−4 短絡スイッチ 11−4A 短絡スイッチ 11−5 電線回路 11−6 電線回路 11−7 ユニット 11−8 スイッチ 11−9 スイッチ 11−10 負荷装置 12−1 ポンプ 12−2 熱交換器 12−3 コンプレッサー 12−4 熱交換器 12−5 改質器 12−6 ガス分離器 12−7A 燃料極 12−7B 酸化剤極 12−8 逆止弁 12−9 コンプレッサー 12−10 エジェクタ 12−11 燃焼器 12−12 分岐バルブ 12−13 コンプレッサー 12−14 タービン 12−15 水分離器 P パージガス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01M 8/14 9444−4K (72)発明者 小 川 斗 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1 株式会 社東芝研究開発センター内 (72)発明者 川 地 孝 典 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1 株式会 社東芝研究開発センター内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶融炭酸塩を電解質保持材で保持した電解
    質層と、多孔質材で形成されて前記電解質層を挾持する
    ように配置された酸化剤極および燃料極と、これら電極
    の外側に配置されてガス供給路と導電路を兼ねたガスチ
    ャンネルとから成る単セルと、各単セル間のセパレータ
    とを備えた溶融炭酸塩型燃料電池において、前記燃料極
    を、電解質層に接する側と接しない側の二重構造の多孔
    質焼結体で形成し、電解質層に接する側はその構成粒子
    間の平均孔径を電解質保持材粒子間の平均孔径と同等と
    しかつ電解質との濡れ性を高くした構造に形成して電解
    質層と燃料極間のイオン伝導路の安定維持を図ったこと
    を特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池。
  2. 【請求項2】電解質層を、酸化剤極に近い側を該酸化剤
    極からの溶出物を捕捉する捕捉層、燃料極に近い側を絶
    縁かつ電解質保持性の高い反応ガスクロスリークに対す
    るバリア層としたことを特徴とする請求項1に記載の溶
    融炭酸塩型燃料電池。
  3. 【請求項3】酸化剤極側のガスチャンネルを導電性酸化
    物の多孔質焼結体で形成し、酸化剤極を未焼結体で形成
    し、該導電性酸化物に圧着して酸化剤極とガスチャンネ
    ル間の電子伝導路の安定化を図ったことを特徴とする請
    求項1に記載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  4. 【請求項4】前記酸化剤極側セパレータとガスチャンネ
    ル間に電池内で溶融塩によりセパレータと酸化剤ガスチ
    ャンネル間界面にあらかじめ導電性酸化物となる層を生
    成させ、セパレータと酸化剤ガスチャンネル間の電子伝
    導抵抗の増大を抑制したことを特徴とする請求項3に記
    載の溶融炭酸塩型燃料電池。
  5. 【請求項5】燃料極側の反応ガス中の二酸化炭素分圧を
    高くして、燃料極三相界面での炭酸塩による濡れ部を多
    孔質全体に高密度に存在させることを特徴とする溶融炭
    酸塩型燃料電池の運転方法、ならびに発電システムの構
    成方法。
  6. 【請求項6】燃料極側の反応ガス中の水素のモル分率を
    下げるとともに、水素の利用率を下げて、セル内での電
    流分布を均一にしたことを特徴とする溶融炭酸塩型燃料
    電池の運転方法、ならびに発電システムの構成方法。
  7. 【請求項7】多数の燃料電池積層体を、それぞれに互い
    に時間的に重ならないよう短時間の無負荷状態を挿入し
    て、負荷時のセル内の電解質の偏りによるイオン伝導抵
    抗の増大をなくし、時間平均としてイオン伝導抵抗によ
    る損失を低減したことを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電
    池発電システムの構成方法、ならびに運転方法。
  8. 【請求項8】多数の燃料電池積層体を複数組に分け、一
    組の負荷を遮断し不活性ガスを流通した後、これに他の
    組の直流電流を、燃料極側では燃料極と電解質界面で燃
    料極の酸化反応を起こし、酸化剤側では酸化剤極と電解
    質の界面で酸化剤極の還元反応を起こすように付加し、
    これにより燃料極の電解質との濡れ性を改善し、もって
    イオン伝導抵抗の経時的な増大分の一部を元に復帰させ
    ることを特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池発電システム
    の構成方法、ならびに運転方法。
  9. 【請求項9】酸化剤極側の排ガスの顕熱により燃料ガス
    の改質反応を行なうと共に、酸化剤極への空気供給系と
    は別に燃料極排ガスと空気とを未反応酸素が少量となる
    ように完全に燃焼させる系統を設け、ここで生成する燃
    焼熱で高温となった不活性ガスを空気系統に注入して酸
    化剤極側に供給することにより、高温のブロワなしに排
    熱を有効に利用し、もってシステム効率を高めたことを
    特徴とする溶融炭酸塩型燃料電池発電システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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