JPH07191020A - 全血分析要素を用いた全血試料の分析方法 - Google Patents

全血分析要素を用いた全血試料の分析方法

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JPH07191020A
JPH07191020A JP32940793A JP32940793A JPH07191020A JP H07191020 A JPH07191020 A JP H07191020A JP 32940793 A JP32940793 A JP 32940793A JP 32940793 A JP32940793 A JP 32940793A JP H07191020 A JPH07191020 A JP H07191020A
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blood
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Masao Kitajima
昌夫 北島
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】極く少量の全血試料を用いて血漿に含まれてい
る被検物質を定量しうる分析方法を提供する。 【構成】全血試料、次いで血漿移行促進液を血球分離要
素と血漿受容要素からなり測定試薬を含んでいない全血
分析要素に供給し、該試料の血漿部分が血漿受容要素に
浸透・拡散後血球分離要素と血漿受容要素とを分離し次
に血漿受容要素を乾燥し、その後測定試薬溶液を該血漿
受容要素に供給して被検物質を測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、測定試薬を含まない全
血分析要素を用いた全血試料の分析方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】血液、尿等を検体として人の病気を診断
する方法は長く行われている。
【0003】この方法の一つとして、ウェットケミスト
リー分析法がある。これは、いわゆる溶液試薬を用いる
方法であって歴史も古く、多数の項目について検出試薬
も開発されており、測定機も簡易小型機から大型全自動
機まで各種ある。ウェットケミストリーに使用される検
体は、血漿、血清、尿等であって、通常全血をそのまま
検体として使用することはない。
【0004】一方、定性・定量分析に必要な全ての試薬
を試薬紙や多層分析フィルムのような分析要素の中に組
み込んだ、いわゆるドライケミストリー分析要素が多数
開発・商品化され、富士ドライケム(富士写真フイルム
(株)製)、エクタケム(米国、イーストマンコダック社
製)、ドライラボ(コニカ(株)製)、スポットケム(京
都第一化学(株)製)、レフロトロン(独国、ベーリンガ
ーマンハイム社製)、セラライザー(米国、マイルズラ
ボラトリー社製)等の名称で市販されている。
【0005】これらドライケミストリー分析要素は、下
記のような特徴を有する。 (1) 分析に必要な試薬が全て分析要素の中に組み込まれ
ている。 (2) 検体(通常は血清、血漿、尿、1部項目については
全血)を点着するだけで分析に必要な反応を起こす。
【0006】従来、湿式法、乾式化学分析いずれにおい
ても、赤血球を除去した血清または血漿を試料として分
析が行なわれることが多かった。しかし、血液の他の成
分から赤血球を分離する操作には多くの労力と装置のコ
ストを伴うので、全血で分析できることが望ましい。
【0007】全血を試料として乾式化学分析を行うに
は、血球(赤血球及び白血球)及び全血の他の有形成分
を分析要素中で何らかの手段で分離しなければならな
い。その手段のひとつに多層分析要素内に血球分離要素
を設ける方法がある。この血球分離要素にはガラス繊
維、メンブランフィルター、綿ウール繊維製品等を使用
しうることが特開昭57−53661号公報、特開昭61−96466
号公報等に開示されている。また、2層以上を組合せる
ことも知られており、特開昭62−138756号公報、特開平
3−16651号公報等には繊維質多孔性層と非繊維質多孔
性層を組み合わせることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】乾式分析要素は検体を
点着するだけで測定できる簡便さからその使用範囲が拡
大してきており、測定機器を持たない開業医や小規模診
療所でも被検者ないし患者から採血及び分析要素に点着
を行なってこれを検査センターで測定を行なえる手段の
開発が要望されるようになってきている。さらに在宅療
養中の患者が自らあるいは看護者の手で採血及び点着を
行なってこれを検査センターで測定を行なえるような手
段が開発されれば在宅患者の検査を適格に行なうことが
でき、その利用価値は飛躍的に拡大する。
【0009】この手段の開発には点着した全血検体の変
質の防止等種々の問題点を開発しなければならないが、
そのひとつに採血量の問題がある。すなわち、患者や採
血に不馴れな看護者が注射器を使って採血を行なうこと
は到底考えられず、現実に行ないうるのは簡単な採血器
具を用いて指先とか耳たぶから採血を行なう方法であ
る。このような場合に1回で採血しうる量は50μlが限
度であり、30μl以下であることが望まれる。採血は患
者、被検者に苦痛を与えるものであるから、1回の採血
で必要な分析を行なえる手段の開発が望まれる。
【0010】本発明の目的は、極く少量の全血試料を用
いて血漿に含まれている被検物質を定量しうる分析方法
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成した全血試料の分析方法を提供するものであり、全血
試料、次いで血漿移行促進液を血球分離要素と血漿受容
要素からなり測定試薬を含んでいない全血分析要素に供
給し、該試料の血漿部分が血漿受容要素に浸透・拡散後
血球分離要素と血漿受容要素とを分離し次に血漿受容要
素を乾燥し、その後測定試薬溶液を該血漿受容要素に供
給して被検物質を測定することを特徴としている。
【0012】血球分離要素としては、特開昭62−138756
〜8号公報、特開平2−105043号公報、特開平3−16651
号公報等に記載された繊維質多孔性層と非繊維質多孔性
層を部分的に配置された接着剤で接着(部分接着)一体
化したもの、表面が親水化された弗素含有ポリマー、ポ
リスルホン等の血球分離能を有する微多孔性層等を使用
できる。特に好ましいものは、血液点着側に繊維質多孔
性層を配置し、血漿受容要素側に非繊維質多孔性層を配
置して両者を後述の部分接着により一体化した血球分離
要素である。
【0013】繊維質多孔性層と非繊維質多孔性層を部分
的に配置された接着剤で接着(部分接着)一体化した血
球分離要素における非繊維多孔性層としては、特公昭53
−21677号、米国特許1,421,341号等に記載されたセルロ
ースエステル類、例えば、ルロースアセテート、セルロ
ースアセテート/ブチレート、硝酸セルロースからなる
ブラッシュポリマーの層が好ましい。6−ナイロン、6,
6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン等の微多孔性膜でもよい。その他、特公昭53−21
677号、特開昭55−90859号等に記載された、ポリマー小
粒子、ガラス粒子、けい藻土等が親水性または非吸水性
ポリマーで結合された連続空隙をもつ多孔性層も利用で
きる。
【0014】非繊維多孔性層の有効孔径は0.8〜30μ
m、特に0.5〜5μmであることが好ましい。本発明で
非繊維多孔性層の有効孔径は、ASTM F316−70に準
拠した限界泡圧法(バブルポイント法)により測定した
孔径で示す。非繊維多孔性層が相分離法により作られた
いわゆるブラッシュ・ポリマーから成るメンブランフィ
ルターである場合、厚さ方向の液体通過経路は、膜の製
造の際の自由表面側(即ち光沢面)で最も狭くなってい
るのが普通で、液体通過経路の断面を円に近似したとき
の孔径は、自由表面の近くで最も小さくなっている。容
積の通過経路における厚さ方向に関する最小孔径は、さ
らにフィルターの面方向について分布を持っており、そ
の最大値が粒子に対するろ(濾)過性能を決定する。通
常、それは限界泡圧法で測定される。
【0015】上に述べたように、相分離法により作られ
たいわゆるブラッシュ・ポリマーから成るメンブランフ
ィルターでは、厚さ方向の液体通過経路は膜の製造の際
の自由表面側(即ち光沢面)で最も狭くなっている。本
発明の分析要素の非繊維多孔性層としてこの種の膜を用
いる場合には、支持体に近い側、即ち血漿受容要素に面
する側に、メンブランフィルターの光沢面を向けること
が好ましい。
【0016】繊維質多孔性層を構成する材料としては、
濾紙、不織布、織物生地(例えば平織生地)、編物生地
(例えば、トリコット編)、ガラス繊維濾紙等を用いる
ことができる。これらのうち織物、編物等が好ましい。
織物等は特開昭57−66359号に記載されたようなグロー
放電処理をしてもよい。
【0017】繊維質多孔性層は、液体試料の展開層とし
て利用されるので、液体計量作用を有する層であること
が好ましい。液体計量作用とは、その表面に点着供給さ
れた液体試料を、その中に含有している成分を実質的に
偏在させることなく、面の方向に単位面積当たりほぼ一
定量の割合で広げる作用である。展開層には、展開面
積、展開速度等を調節するため、特開昭60−222770号、
特開昭63−219397号、63−112999号、62−182652号に記
載したような親水性高分子あるいは界面活性剤を含有し
てもよい。
【0018】繊維質多孔性層の空隙体積(単位面積当た
り。以下同じ)は非繊維質多孔性層と同じでもよいし、
異なってもよい。両者の空隙体積の関係を調整するに
は、両者の空隙率または厚さを変えてもよいし、厚さと
空隙率の両方を変えてもよい。
【0019】表面を親水化されており血球分離能を有す
る微多孔性層は、実質的に分析値に影響を与える程には
溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離
する。
【0020】その血球・血漿分離機構は明らかでない
が、この微多孔性層はその表面のみで血球をトラップす
る訳ではなく、弗素含有ポリマーからなる微多孔性層と
多孔性展開層をあわせた厚さ方向に浸透するに従って、
初めは大きな血球成分、後には小さな血球成分と徐々に
空隙構造にからめ、厚さ方向の全長にわたって血球を留
め除去していく、いわゆる体積濾過作用によるものと思
われる。
【0021】これらの弗素含有ポリマーの微多孔性層と
しては、特表昭63−501594(WO 87/02267)に記載の
ポリテトラフルオロエチレンのフィブリル(微細繊維)
からなる微多孔性のマトリックス層(微多孔性層)、G
ore−Tex(W.L.Gore and Associates社製)、Zite
x(Norton社製)、ポアフロン(住友電工社製)などが
ある。その他に、US 3368872(実施例3及び4)、U
S 3260413(実施例3及び4)、特開昭53−92195(US
4201548)等に記載のポリテトラフルオロエチレンの微
多孔性膜、US 3649505に記載のポリビニリデンフルオ
リドの微多孔性膜などがある。
【0022】これらの弗素含有ポリマーの微多孔性膜の
うち、血球濾過層を構成する微多孔性層に特に適してい
るのは、孔径が実質的に赤血球を通さない程度に小さ
く、膜厚が薄く、空隙率が高いものである。具体的に
は、約0.2μmから約60μm、好ましくは約1μmから
約20μmの範囲、更に好ましくは1〜10μmの範囲、空
隙率は約40%から約95%、好ましくは約50%から約95
%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲、層の厚
さは約10μmから約200μm、好ましくは約30μmから
約150μm、製造工程中でのしわ発生等の取り扱い性を
考慮すると、最も好ましくは約50μmから約120μmの
範囲である。
【0023】これらの弗素含有ポリマーの微多孔性膜の
作成に当たっては、1種もしくは2種以上の弗素含有ポ
リマーを混合しても良いし、弗素を含まない1種もしく
は2種以上のポリマーや繊維と混合し、製膜したもので
あつても良い。
【0024】構造としては、延伸しないもの、1軸延伸
したもの、2軸延伸したもの、1層構成の非ラミネート
タイプ、2層構成のラミネートタイプ、例えば繊維等の
他の膜構造物にラミネートした膜等がある。
【0025】フイブリル構造又は一軸延伸もしくは二軸
延伸した非ラミネートタイプの微多孔性膜は、延伸によ
り、空隙率が大きくかつ濾過長の短い微多孔膜が作られ
る。濾過長が短い微多孔膜では、血液中の有形成分(主
として赤血球)による目詰りが生じがたく、かつ血球と
血漿の分離に要する時間が短いので、定量分析精度が高
くなるという特徴がある。
【0026】弗素含有ポリマーの微多孔性層は特開昭57
−66359(US 4783315)に記載の物理的活性化処理(好
ましくはグロー放電処理又はコロナ放電処理)を微多孔
性層の少なくとも片面に施すことにより微多孔性層の表
面を親水化して、隣接する微多孔性層との部分接着に用
いられる接着剤の接着力を強化することができる。
【0027】弗素含有ポリマーの微多孔性膜は、そのま
までは、表面張力が低く乾式分析要素の血球濾過層とし
て用いようとしても、水性液体試料ははじかれてしまっ
て、膜の表面や内部に拡散、浸透しないことは、周知の
事実である。本発明の分析要素では、第1の手段として
弗素含有ポリマーの微多孔性膜に親水性を付与し親水性
を高める手段として、弗素含有ポリマーの微多孔性膜の
外部表面及び内部の空隙の表面を実質的に親水化するに
充分な量の界面活性剤を弗素含有ポリマーの微多孔性膜
に含浸させることにより、前記の水性液体試料がはじか
れる問題点を解決した。
【0028】水性液体試料がはじかれることなく膜の表
面や内部に拡散、浸透、移送されるに充分な親水性を弗
素含有ポリマーの微多孔性膜に付与するには、一般に、
弗素含有ポリマーの微多孔性膜の空隙体積の約0.01%か
ら約10%、好ましくは約0.1%から約5.0%、更に好まし
くは0.1%から1%の界面活性剤で微多孔性膜の空隙の
表面が被覆されることが必要である。例えば、厚さが50
μmの弗素含有ポリマーの微多孔性膜の場合に、含浸さ
れる界面活性剤の量は、一般に0.05g/m2から2.5g/
2の範囲であることが好ましい。弗素含有ポリマーの
微多孔性膜に界面活性剤を含浸させる方法としては、界
面活性剤の低沸点(沸点約50℃から約120℃の範囲が好ま
しい)の有機溶媒(例、アルコール、エステル、ケト
ン)溶液に弗素含有ポリマーの微多孔性膜を浸漬し、溶
液を微多孔性膜の内部空隙に実質的に充分に行きわたら
せた後、微多孔性膜を溶液から静かに引き上げ、風(温
風が好ましい)を送り乾燥させる方法が一般的である。
血球濾過層を構成する微多孔性層に含有させる前処理試
薬等の成分とともに界面活性剤を弗素含有ポリマーの微
多孔性膜に含有させることもできる。
【0029】弗素含有ポリマーの微多孔性膜を親水性化
処理に用いられる界面活性剤としては、非イオン性(ノ
ニオン性)、陰イオン性(アニオン性)、陽イオン性
(カチオン性)、両性いずれの界面活性剤をも用いるこ
とができる。
【0030】これらの界面活性剤のうちでは、ノニオン
性界面活性剤が、赤血球を溶血させる作用が比較的低い
ので、全血を検体とするための多層分析要素においては
有利である。ノニオン性界面活性剤としては、アルキル
フェノキシポリエトキシエタノール、アルキルポリエー
テルアルコール、ポリエチレングリコールモノエステ
ル、ポリエチレングリコールジエステル、高級アルコー
ルエチレンオキシド付加物(縮合物)、多価アルコール
エステルエチレンオキシド付加物(縮合物)、高級脂肪
酸アルカノールアミドなどがある。
【0031】ノニオン性界面活性剤の具体例として、次
のものがある。 アルキルフェノキシポリエトキシエタノールとしては、 イソオクチルフェノキシポリエトキシエタノール: (Triton X−100:オキシエチレン単位平均9〜10含
有) (Triton X−45:オキシエチレン単位平均5含有) ノニルフェノキシポリエトキシエタノール: (IGEPAL CO−630:オキシエチレン単位平均9
含有) (IGEPAL CO−710:オキシエチレン単位平均10
〜11含有) (LENEX 698:オキシエチレン単位平均9含有) アルキルポリエーテルアルコールとしては、 高級アルコール ポリオキシエチレンエーテル: (Triton X−67:CA Registry No.59030−15−
8)
【0032】弗素含有ポリマーの微多孔性膜は、その多
孔性空間に水不溶化した1種又は2種以上の水溶性高分
子を設けることによって親水化したものであってもよ
い。水溶性高分子の例として、酸素を含む炭化水素には
ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリ
エチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロ
ース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピ
ルセルロース、窒素を含むものにはポリアクリルアミ
ド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリエ
チレンイミン、負電荷を有するものとしてポリアクリル
酸、ポリメタアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸など
をあげることが出来る。不溶化は熱処理、アセタール化
処理、エステル化処理、重クロム酸カリによる化学反
応、電離性放射線による架橋反応等によって行えばよ
い。詳細は、特公昭56−2094号公報及び特公昭56−1618
7号公報に開示されている。
【0033】ポリスルホンの微多孔性膜は、ポリスルホ
ンをジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルム
アミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロ
リドンあるいはこれらの混合溶媒等に溶解して製膜原液
を作製し、これを支持体上に、又は直接凝固液中に流延
し洗浄、乾燥して行うことにより製造することができ
る。詳細は特開昭62−27006号公報に開示されている。
ポリスルホンの微多孔性膜は、そのほか特開昭56−1264
0号公報、特開昭56−86941号公報、特開昭56−154051号
公報等にも開示されており、それらも使用することがで
きる。ポリスルホンの微多孔性膜も弗素含有ポリマーと
同様界面活性剤を含有させ、あるいは水不溶化した水溶
性高分子を設けることによって親水化することができ
る。
【0034】多孔性層は、血球分離要素から滲出してき
た血漿部分を受容する層であり、例えば公知の展開層を
これに利用することができる。
【0035】展開層は、水性の検体に含有されている成
分を実質的に偏在させることなしに平面的に拡げ、単位
面積当りほぼ一定量の割合で親水性ポリマー層に供給す
る機能を有する層であり、これまでドライケミストリー
分析要素に使われている展開層として、公知の非繊維質
及び繊維質の全ての多孔性材料を用いることができる。
具体的には特開昭49−53888に開示されているメンブラ
ンフィルター(ブラッシュドポリマー)に代表される非繊
維性等方的微多孔質媒体層、特開昭55−90859等に開示
されたポリマーミクロビーズが水不膨潤性の接着剤で点
接触状に接着されて成る連続空隙含有三次元格子粒状構
造物層に代表される非繊維性多孔性層、特開昭55−1643
56、同57−66359等に開示された織物布地からなる多孔
性層、同60−222769等に開示された編物布地、各種の濾
紙、親水性の紙などからなる層等を挙げることができる
が、これらに限定されるものではない。
【0036】展開層は、1層だけに限定する必要はな
く、特開昭61−4959、同62−138756、同62−135757、同
62−138758等に開示されいてる様に、2層以上の層を重
ねて用いることができる。
【0037】展開層を2層以上重ねた多層分析要素につ
いては、検体の点着時には全層が積層一体化されている
構成をとることが必須であるが、その後のプロセスでは
一体化されている必要はない。必要に応じて、第一の展
開層と第二の展開層の間を剥離した状態で使用すること
ができる。
【0038】展開層中には、検体の展開を促進するため
に、ノニオン、アニオン、カチオンもしくは両性の界面
活性剤を含ませることができる。また、展開性をコント
ロールする目的で、親水性のポリマー等の展開制御剤を
含ませることができる。更に、目的とする検出反応を促
進する為の、あるいは干渉、妨害反応を低減、阻止する
為の各種試薬、もしくは試薬の1部を含ませることがで
きる。
【0039】展開層の厚さは、10〜500μm、好ましく
は20〜300μm、更に好ましくは30〜200μmである。
【0040】展開層と血球分離要素の間は、血漿部分が
拡散・浸透しうればよく、接着されていてもいなくても
よい。接着する場合には、血漿の拡散・浸透を阻害しな
いよう、いわゆる部分接着法により接着する。部分接着
とは、特開昭61−4959(EP0166365A)、特開昭62−1
38756〜138758(EP 0226465A)等に記載の2つの隣
接する多孔性層同士又は隣接する多孔性層と非孔性層と
の接着の態様であって、『隣接する2層の界面の間に部
分的(又は断続的)に配置された接着剤によって実質的
に密着され一体化されており、かつ前記隣接する2面及
びその間において液体の一様通過が実質的に妨げられな
いように構成されている接着』である。
【0041】接着剤を血球分離要素あるいは多孔性層に
部分的に配置する方法は特開昭61−4959、特開昭62−13
8756、特開昭64−23160(DE 3721236A)等に記載の諸
種の方法によることができる。それらの諸方法のうちで
は印刷法による方法が好ましい。印刷法のうちで、接着
剤を印刷版(グラビア印刷版又は凹版が好ましい)ロー
ラーを用いて多孔性層又は検出機能層に転写し付着させ
る方法及び隣接する2層を貼りあわせる方法は、例え
ば、日本印刷学会編『印刷工学便覧』(技報堂出版
(株)、1983年)839〜853頁等に記載の公知の装置及び方
法により実施することができる。
【0042】用いられる接着剤としては特開昭62−1387
56に記載の諸種の接着剤、そのほか前記の『印刷工学便
覧』839〜853頁等に記載の公知の接着剤を用いることが
できる。接着剤としては水溶媒型の接着剤、有機溶剤型
の接着剤、熱接着性(又は感熱性)接着剤を用いること
ができる。水溶媒型の接着剤の例として、澱粉糊等の水
性の糊;デキストリン、カルボキシメチルセルロース、
ポリビニルアルコール等の水溶液;酢酸ビニル−ブチル
アクリレート共重合体エマルジョンがある。有機溶剤型
の接着剤としては、溶剤の蒸発の遅いものが適する。熱
接着性(又は感熱性)接着剤は特に有用である。
【0043】熱接着性(又は感熱性)のホットメルト型
接着剤としては、「工業材料」26巻(11号)、4〜5頁
等に記載のホットメルト型接着剤を用いることができ
る。その例として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エ
チレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリ
ル酸共重合体等のエチレン共重合体;低分子量ポリエチ
レンやアタクチックポリプロピレンのようなポリオレフ
ィン類;ナイロン等のポリアミド;ポリエステル系共重
合体;SBSなどのスチレンブロック共重合体のような
熱可塑性ゴム;スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、
ウレタンゴム;ロジン、石油樹脂、テルペン樹脂;合成
ワックスがある。
【0044】これらの中で、シリコーン系、アクリル
系、フェノール樹脂系の感圧型接着剤が、本発明におい
て特に有用である。
【0045】全血分析要素にはその他の層として通例、
水不透過性支持体の上に少なくとも1層の親水性ポリマ
ー層積層される。
【0046】親水性ポリマー層には、これまでドライケ
ミストリー分析要素に使われている公知の水に可溶性、
膨潤性、親水性の各種ポリマーを用いることができる。
水吸収時の膨潤率が30℃で約150%から約2000%、好ま
しくは約250%から約1500%の範囲の天然又は合成親水
性ポリマーを使用することができ、具体的には、特開昭
59−171864、同60−108753等に開示されたゼラチン(例
えば、酸処理ゼラチン、脱イオンゼラチン等)、ゼラチ
ン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン、ヒドロキシアク
リレートグラフトゼラチン等)、アガロース、プルラ
ン、プルラン誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニル
アルコール、ポリビニルピロリドン等を挙げることがで
きるが、これらに限定されるものではない。
【0047】親水性ポリマー層に代えて、親水性表面を
有する紙やポリマー多孔質膜を用いることもできる。
【0048】親水性ポリマー層の厚さは、乾燥時に約1
μm〜約100μm、好ましくは約3μm〜約50μm、特
に好ましくは約5μm〜約30μmであり、実質的に透明
であることが好ましい。
【0049】親水性ポリマー層中には、目的とする反応
を促進する、もしくは干渉、妨害反応を防止、低減する
ための各種試薬もしくは試薬の1部を含ませることがで
きる。
【0050】水不透過性支持体としては、これまでドラ
イケミストリー分析要素に使われている公知の水不透過
性の支持体を用いることができる。具体的には、ポリエ
チレンテレフタレート、ビスフェノールAのポリカーボ
ネート、ポリスチレン、セルロースエステル(例えば、
セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、
セルロースアセテートプロピオネート等)等から成る、
厚さ約50μm〜1mm、好ましくは約80μm〜約300μm
の透明フイルムを用いることができる。支持体は、通常
光透過性のものを用いるが、展開層側から測定をする場
合には、着色されていても、もしくは光不透過性であっ
ても良い。支持体の表面には、必要により公知の下塗層
もしくは接着層を設けて、親水性ポリマー層との接着を
強固にすることができる。
【0051】本願発明においては、対象とする被検物質
は特に限定されない。通常臨床検査の分野で測定される
酵素、脂質、無機イオン、代謝産物、蛋白質等の他、各
種グロブリン、免疫抗原、免疫抗体等の生体由来成分、
薬物、ホルモン、腫瘍マーカー等、分析方法さえ確立し
ていれば分析対象とすることができる。
【0052】本発明において使用する全血分析要素は、
測定の対象となる項目もしくは検体によって、以下に記
載する種々の構成を取ることができる。
【0053】1:水不透過性支持体/親水性ポリマー層
/展開層/血球分離要素なる構成で被検物質と直接反応
して化学変化を生じる試薬が含まれていない分析要素。
Ca、GOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミ
ナーゼ)、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスア
ミナーゼ)、γ−GTP(γ−グルタミルトランスペプ
チターゼ)、グルコース、LDH(乳酸脱水素酵素)、
CPK(クレアチンホスホキナーゼ)、TP(総蛋白
質)、Alb(アルブミン)、TCHO(総コレステロー
ル)、UA(尿酸)、中性脂肪等の分析に有効である。
【0054】2:水不透過性支持体/親水性ポリマー層
/展開層/血球分離要素なる構成で、親水性ポリマー層
及び/又は展開層中に色原体を含むが、被検物質と直接
反応して化学変化を生じる試薬が含まれていない分析要
素。色原体としては、Ann. Clin. Biochem., 6, 24
〜27(1969)に記載の4−アミノアンチピリン(別名4−
アミノフェナゾン、すなわち1−フェニル−2,3−ジ
メチル−4−アミノ−3−ピラゾリン−5−オン)、特
開昭59−54962等に記載の1−(2,4,6−トリクロロフ
ェニル)−2,3−ジメチル−4−アミノ−3−ピラゾ
リン−5−オン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−
2,3−ジメチル−4−アミノ−3−ピラゾリン−5−
オン等のトリ置換−4−アミノ−3−ピラゾリン−5−
オン、特公昭55−25840等に記載の1−フェニル−2,3
−ジメチル−4−ジメチルアミノ−3−ピラゾリン−5
−オン等の4−アミノアンチピリン類似体を用いること
ができる。これらの化合物のうちでは、4−アミノアン
チピリン、1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−2,
3−ジメチル−4−アミノ−3−ピラゾリン−5−オ
ン、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,3−ジメチ
ル−4−アミノ−3−ピラゾリン−5−オン等が好まし
い。
【0055】3:水不透過性支持体/親水性ポリマー層
/展開層/血球分離要素なる構成で、親水性ポリマー層
及び/又は展開層中に、色原体及びその他の試薬(後述
する、測定試薬を除く)を含む分析要素。その他の試薬
としては、POD(ペルオキシダーゼ)、NAD(ニコ
チンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADP(ニコ
チンアミドアデニンジヌクレオチドフオスフエート)、
DIP(ジアフオラーゼ)等が挙げられる。
【0056】上記2及び3の構成において、色原体もし
くはその他の試薬は、液体試料を供給・安定化後に供給
することが可能だが、色原体の多くは水不溶性のため測
定試薬とは別に供給する必要があること、これら色原体
やその他試薬を層の中に初めから含ませて製造する方が
再現性が良いこと等の利点がある。
【0057】4:媒染層を含む分析要素。呈色試薬がイ
オン性染料を形成する場合には、水不浸透性支持体と試
薬層との間に媒染層を設けることができる。検体中の被
検物質の量に比例して生成する色素を媒染層に移行・ト
ラップすることにより、光学的な検出の効率を高めるこ
とができる。
【0058】例えば、呈色色素がカチオン性の染料を形
成する場合には、媒染層として、高分子鎖に結合したア
ニオン原子もしくは原子団を含むポリマーを含有する親
水性ポリマー層を、また呈色試薬がアニオン性の染料を
形成する場合には、媒染層として高分子鎖に結合したカ
チオン原子もしくは原子団を含むポリマーを含有する親
水性ポリマー層を用いることができる。
【0059】これらの媒染性ポリマーの詳細について
は、特公平2−30466、特開昭51−40191、同54−2970
0、同53−131089等に記載されている。
【0060】例えば、アニオン媒染性高分子としては、
特公平2−30466号公報第13〜第14欄に記載されている
メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のアル
カリ加水分解物、ポリスチレン−p−スルホン酸のアル
カリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、スチレン−p
−スルホン酸と親水性ビニルモノマーとの共重合体のア
ルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩等が挙げられ
る。
【0061】更に、これらの高分子を含有させることの
できる層等についても、同公報の第15〜16欄に詳細な記
載がある。
【0062】5:上記1〜4の構成において、親水性ポ
リマー層と展開層の間に、光遮蔽層を設けた分析要素。
光遮蔽層は光遮蔽性又は光遮蔽性と光反射性を兼ね備え
た微粒子又は微粉末(以下、単に微粒子という)が少量
の被膜形成能を有する親水性ポリマーバインダーに分散
保持されている水透過性又は水浸透性の層である。光遮
蔽層は検出可能な変化(色変化、発色等)を光透過性支
持体側から反射測光する際に、供給された水性液体試料
の色、特に全血試料に含まれるヘモグロビンの赤色等を
遮蔽するとともに光反射層又は背景層としても機能す
る。
【0063】光遮蔽性と光反射性とを兼ね備えた微粒子
の例として二酸化チタン微粒子(ルチル型、アナターゼ
型又はブルカイト型の粒子径約0.1μmから約1.2μmの
微結晶粒子等)、硫酸バリウム微粒子、アルミニウム微
粒子又は微小フレーク等があり、光遮蔽性微粒子の例と
してカーボンブラック、ガスブラック、カーボンミクロ
ビーズ等があり、これらのうちで二酸化チタン微粒子、
硫酸バリウム微粒子が好ましい。
【0064】被膜形成能を有する親水性ポリマーバイン
ダーとしては、前記親水性ポリマーのほかに弱親水性の
再生セルロース、セルロースアセテート等があり、これ
らのうちではゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルア
ルコール、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合体等
が好ましい。ゼラチン、ゼラチン誘導体は公知の硬化剤
(架橋剤)を混合して用いることができる。
【0065】6:上記1〜4の構成において、親水性ポ
リマー層と展開層の間に、水不浸透性で且つ気体透過性
の層(以下、バリア層と称する)を設けた分析要素。反
応によりアンモニアガスを発生するBUN(尿素窒
素)、CRE(クレアチニン)、及びCO2等の分析に有
効である。全血・血漿のいずれも、検体として使用でき
る。
【0066】バリア層としては、特開昭52−3488に開示
された一様なポリマーの塗布層、同58−77661に開示さ
れたメンブランフィター等を使用することができる。
【0067】ここで測定試薬とは、分析対象である被検
物質と直接反応して化学変化を生ぜしめる試薬を指す。
即ち、酵素が被検物質である場合にはその基質、被検物
質が抗原(抗体)である場合には抗体(抗原)であり、被検
物質が脂質、糖、代謝産物であって酵素によって検出可
能な変化を生ずる化合物である場合にはその酵素であ
る。また、これらの反応が酵素以外の化学試薬による一
般の化学反応によって起こされる場合には該当する化学
物質を言う。以下に具体例を挙げて説明する。
【0068】被検物質が酵素であるGOTの場合には、
その基質であるアスパラギン酸とα−ケトグルタール
酸、アミラーゼであれば高分子量の澱粉もしくは低分子
量のオリゴサッカライド、GGTであればL−γ−グル
タミルパラニトロアニリド、ALPであればパラニトロ
フェニルフオスフェート等である。
【0069】また、グルコースであればグルコースオキ
シダーゼ、尿酸であればウリカーゼ、コレステロールで
あればコレステロールエステラーゼもしくはコレステロ
ールオキシダーゼ、中性脂肪であればリパーゼもしくは
エステラーゼ、尿素であればウレアーゼ等である。
【0070】分析対象が蛋白質、アルブミン、Ca、無
機リン等、被検物質と指示薬等とが直接反応して検出可
能な変化を生ずる場合には指示薬を指す。
【0071】上記の反応系中に組み込まれる反応試薬が
一部の酵素のように不安定なものである場合には、これ
らも測定試薬の中に含ませることが好ましい。
【0072】即ち、測定試薬溶液中に含めるべき試薬
と、分析要素中に含めるべき試薬との分配に関しては、
分析性能や保存安定性を指標として様々に変えることが
できる。分析対象が一つであっても、検出反応系組立に
よって上記の分配が異なるのは勿論である。
【0073】測定試薬の中には、反応を安定に再現性良
く進行させるために、pHやイオン強度を調節する、分
析要素を構成する材料への拡散・浸透を良くする、含有
する酵素等の不安定性を改善する、等の目的で各種試薬
を含ませることができる。また、検出反応と競合する反
応を阻害するための試薬を含ませることもできる。
【0074】この様な試薬としては、例えば、ビリルビ
ンオキシダーゼやアスコルビン酸オキシダーゼ等があ
る。更に、アイソザイム検出の為に特定の生物に由来す
る酵素を阻害する化合物、例えばP型アミラーゼの阻害
剤等を含ませることができる。
【0075】更に全血測定では、ヘモグロビンのカタラ
ーゼ活性の阻害剤として有効なNaN3等を添加するこ
ともできる。
【0076】本発明で使用する全血分析要素は、一辺約
5mmから約30mmの正方形又はほぼ同サイズの円形等の小
片に裁断し、特開昭57−63452、特開昭54−156079、実
開昭6−142454、実開昭58−32350、特表昭58−501144等
に記載のスライド枠等に収めて分析スライドとして用い
るのが製造、包装、輸送、保存、測定操作等の点で好ま
しい。
【0077】上記のような全血分析要素にまず全血試料
を供給する。特に、採血量そのものが100μl以下と微
量である場合には、血漿移行促進液と全血とを均一に混
合することが難しく、実際には希釈・混合によりかえっ
て誤差を大きくしてしまう場合が多い。スライド上で全
血検体と血漿移行促進液とを順次供給する方法は、非常
に安定した結果を与えることが分かり本発明に至った。
そこで、本発明では、全血を先にスライドに供給し、た
だちに希釈を兼ねる血漿移行促進液を供給する手順によ
る方法が最も安定した分析結果を与える。全血を供給後
この血漿移行促進液を供給するまでの時間が長いと溶血
が起こり易いので測定項目によっては、測定値に誤差を
与え易くなる。全血試料の供給量は通常は5μl以上、
好ましくは10μl以上、特に好ましくは15μl以上であ
り、上限は通常50μl以下、好ましくは40μl以下、特
に好ましくは30μl以下である。血漿移行促進液の供給
量は、全血試料の供給量と関係しており、全血の0.5倍
から10倍、好ましくは1倍から5倍、更に好ましくは1
倍から3倍が適当である。
【0078】血漿移行促進液は血球成分を破壊、溶血さ
せることのない生理的等膨液であることが必須であるが
加えて全血試料中の血漿成分、特に被検物質を溶解希釈
することができかつ分析に支障が現れる程変質しないも
のであればよい。例えば生理的食塩水またはこれにpH
緩衝剤やアルブミンなどの親水性ポリマーを加えたもの
が好ましい。界面活性剤は一般に溶血を促進するので好
ましくないが、溶血作用の低いものなら添加しても構わ
ない。血漿移行促進液にはまた、保存中の検体を安定化
する作用を有する試薬(例えばグルタチオン)やヘパリ
ン、EDTAなどの血液の凝固を阻害する作用を有する
試薬、色素その他の試薬が予め添加されていてもかまわ
ない。
【0079】本発明における血漿移行促進は、以下の方
法で行う。先ず、スライド上に全血試料を点着し、次に
血漿移行促進液を点着する。この方法は、操作が簡単で
あるにもかかわらず、再現性も良く、血漿移行量も多
く、安定した測定結果が得られる。これは、以下の理由
によるものと考えられる。
【0080】全血試料は、血球分離要素を構成している
多孔質膜中で平面方向に均一に拡散するが、液量が十分
ではないので、血漿受容層への拡散は少ない。次に血漿
移行促進液を点着すると、これも先ず平面方向に広が
り、次に下層(血漿受容層)に拡散する。この時、全血
試料と血漿移行促進液は相互に混合されるが、下層への
拡散距離が平面方向での拡散距離より短いので、先に点
着された全血から遊離した血漿成分を含む液が血漿受容
層へ移行する。
【0081】一定量の全血試料と一定量の血漿移行促進
液とを予め別の容器で混合し、その一部または全部をス
ライドに点着する方法では、静脈血のように採血量が多
い場合には、希釈・混合の誤差も少なく確実な方法であ
り、ある程度の改良も得られる。しかし、10〜50μl程
度の微量の全血試料を2〜5倍程度に希釈しようとする
と、微量の全血と微量の血漿移行促進液とを均一に混合
することとなるが、全血は粘度が高く、泡立ち易いの
で、このような条件での希釈は非常に困難であり、誤差
を大きくしてしまう。
【0082】血漿移行促進液に各種の試薬等を含有させ
ることができる。この試薬には被検物質と選択的に反応
する試薬、例えば被検物質が抗原抗体反応を行ないうる
成分の場合の被検物質の抗体とか、被検物質が特定のD
NAである場合のこのDNAに対して選択的な結合性を
有するDNAプローブ、等を含む。上記の抗体やDNA
プローブは担体粒子に結合させて使用することができ
る。例えば、抗体を凝集反応で使用されている動物赤血
球、ポリスチレンラテックス、ゼラチン粒子等に結合さ
せることによりこの抗体と特異反応する抗原を抗体に結
合させて担体粒子とともに血球分離要素に残存除去する
ことができる。すなわち、B/F分離を行なわせること
ができる。その際、さらに新たな血漿移行促進液を供給
することによって結合(Bound)部分を洗浄することも
可能である。また、DNAプローブを水溶性担体例え
ば、ターゲットDNAと相補的関係にあるDNAに結合
させて使用することにより、ターゲットDNAを非拡散
性とすることができるので、選択的に補集することがで
きるので、その後の検出反応をきわめて効率良く行なう
ことが出来る。
【0083】本発明方法は、微量の全血検体を用いて複
数の血漿成分を同時に測定する場合に特に有効である。
このような目的の為には血漿受容要素が予め複数の反応
領域に分割されている全血用分析要素を用いる。
【0084】このような分析要素作製方法の詳細は特願
平5−30254号明細書に記載されている。
【0085】このような複数項目測定用の分析要素にお
いては、全血から血球分離要素を通して放出され血漿受
容要素に到達する血漿が血漿受容要素のできるだけ広い
面積に均一に拡散、展開していることが望ましい。しか
しながら微量な全血を分析要素に供給してもその量が少
ないと、分析要素の中心部にのみ浸透・拡散するだけで
広く拡がることがない。
【0086】本発明方法により血漿移行促進液を追加供
給することにより、例え全血試料の供給量は微量であっ
ても、血漿成分を分析要素内に均一に拡散・展開させる
ことが出来る。
【0087】具体的には、上記の例に従って作製された
全血用分析要素に15μlの全血を供給しても血漿受容要
素に移行される血漿の量は中心部に直径数mmの展開円を
形成する程度に過ぎないが、本発明方法に従い血漿移行
促進液を45μl供給すれば、血漿受容要素上に移行、拡
散する希釈された血漿は直径13mm程度の展開円を形成す
る。
【0088】従って、血漿受容要素を例えば4つの反応
ゾーンに分割したとしても直径4mmの測定ビームで照射
しても確実に照射面をカバーするに十分な面積に血漿が
拡げられている。
【0089】希釈することにより単位面積当たりの移行
血漿量は少なくなるので、反応の検出、測定に要する感
度は無希釈の場合に比べて高い必要がある。しかしこの
場合にも、別に詳述したように、移行血漿量はほぼ一定
なので、血漿移行促進液量を大きくしても感度の低下と
直線的に比例する訳ではない。
【0090】全血試料を希釈状態で血球分離要素に供給
後血漿及び血漿移行促進液が血漿受容要素の多孔性展開
層へ拡散して移行するのを待つ。その間は5秒〜1分間
程度である。
【0091】続いて、血漿受容要素を乾燥する。血球分
離要素は通常は血漿受容要素の乾燥に入る前に除去され
るが、場合によっては乾燥後測定試薬溶液供給直前に除
去してもよいこともある。
【0092】乾燥は血漿成分、特に被検物質を変質させ
ないで血漿移行促進液の液分を除去できればよく、加
熱、減圧、送風、乾燥剤の使用など如何なる手段を用い
ることもできる。
【0093】この乾燥は実質的に一定条件下で行なうこ
とが好ましい。具体的には、特願平2−90562号明細書
(特開平3−289543号公報)の第25頁第9行〜第28頁第
6行、特に第27頁第13行〜第28頁第6行の記載に従って
行なうことができる。例えば、多孔性シートの周囲が覆
われた囲いの中に置いた状態でインキュベートする方法
がある。これにより、周囲の温度、湿度に影響されるこ
となく一定の乾燥状態となる。
【0094】温度範囲は、好ましくは30〜45℃である。
インキュベーション中の温度変動は±5℃、好ましくは
±3℃、更に好ましくは±1℃である。
【0095】この様な一定条件のインキュベーションを
行うのに適したインキュベータが実開平3−126499号公
報に記載されている。即ち、血球分離要素を除去した分
析要素を要素の収納部に設置した状態で加温手段にて加
熱恒温に保持するインキュベータである。本公報では該
分析要素の収納部の上部に該要素収納部を密閉すること
が可能で、かつ、着脱可能なカバーを設けられ、該カバ
ーで要素収納部を密閉した際、要素収納部内方に生まれ
る空間の体積が、分析要素の体積とほぼ一致する様に設
計されたインキュベータであることを必須要件としてい
るが、本発明方法の実施に当たってはカバーにより密閉
する必要はなく、上部は常に開放されていてかまわな
い。
【0096】一定温度の乾燥風を一定条件で吹き付けて
も同様に再現性の良い結果が得られるが、上記インキュ
ベータに比べ高価となる欠点を有する。
【0097】本発明者は、この乾燥条件についてさらに
検討を進めた結果、分析要素の乾燥は、乾燥剤の存在す
る密閉容器内で50℃以下で行なうことが好ましいことを
見出した。具体的には、分析要素をファスナー付のビニ
ール袋とか蓋付のプラスチック容器等に乾燥剤とともに
封入して冷蔵庫、冷凍庫等に入れておく。点着後約1時
間は約25℃以下に保つことが好ましい。乾燥剤は公知の
吸湿剤の中から被検物質を実質的に変質させないものを
適宜選択して用いればよいが、安全性、脱水能力等から
ゼオライト、シリカゲルが好ましく、ゼオライトがより
好ましい。ゼオライト叉はシリカゲル1g当たり分析要
素を4〜10枚程度乾燥できる。形態としては、1〜3mm
程度の顆粒状の粒子等を透湿性の良い袋、例えば和紙や
ポリエステル不織布で作製した袋、ナイロンメッシュ製
の袋等に入れる。
【0098】乾燥時間は点着された液体試料の量、種
類、乾燥剤の種類を量等によって異なるが、通例1〜10
時間程度、特に1〜3時間程度で分析要素の水分の90%
以上が乾燥剤により除去・脱水されるような条件が好ま
しい。この乾燥時間は温度によっても影響される。保存
温度が高い程、即ち蒸気圧が高い程乾燥時間は短くて良
い。また、冷蔵庫もしくは冷凍庫に放置して一度低温に
保った後、1℃以上にして乾燥することもできる。この
低温乾燥法は、被検物質が酵素の場合にその変性劣化を
防止できるので特に有用である。
【0099】ここで、「乾燥」とは、該親水性ポリマー
中で実質的に反応が進行しない、もしくは被検物質の劣
化が進行しない、状態であれば良い。従って、分析対象
によって異なり、例えば酵素を対象とする場合には、親
水性ポリマー中の水分は20%以下、好ましくは10%以
下、更に好ましくは5%以下であれば良い。
【0100】ここで、水分の%は、被検物質を含む水溶
液を分析要素に点着した時の水分量を100とした時の比
率である。
【0101】乾燥後、血球分離要素が剥離除去されてい
る血漿受容要素に、分析すべき項目に対応した測定試薬
溶液を供給して反応を起こさせる。この反応を、ドライ
ケミストリーの分野で公知の方法(反射濃度測光、色変
化、蛍光測定、発光測定等)で測定し、検体中に含まれ
る成分を定量する。
【0102】分析すべき項目に対応した測定試薬溶液と
しては、ウェットケミストリーで公知の試薬溶液を用い
ることができる。これらは、分析対象成分と反応して、
主として光学的測定方法により検出できる変化、例えば
色変化、発色(呈色)、蛍光、発光、紫外線領域におけ
る吸収波長の変化、混濁発生等の変化を生じさせる。
【0103】ドライケミストリーの測定法としては、通
常反射光学系が用いられる。本発明の方法においても、
分析要素の水不透過性支持体を通して測光する方法が最
も適用範囲が広いが、検体が全血ではない場合や検体供
給後に血球分離要素を除去して測定する場合等には、透
過測光方式により測定することができる。
【0104】また、水不透過性支持体が不透明な場合に
は、支持体の反対側から測定することもできる。
【0105】
【作用】本発明方法においては、全血の一定量をスライ
ド上に供給後血漿移行促進液を追加供給する手順を標準
としている。このような順序でスライド上で希釈を行な
う場合には、血漿受容層に移行する血漿の全量は始めに
供給される全血の量によって一義的に規定されてしま
う。従って血漿移行促進液量が全血中の血漿成分の全量
を血漿受容層に移行させるのに十分な量以上であれば水
分を除去・乾燥後の血漿受容層中の血漿量は血漿移行促
進液の量に関係なくほぼ一定となる。このような条件を
満たす血漿移行促進液の必要最少量はスライドの構成・
供給全血の量・血漿移行促進液の組成に依存するが最適
化された場合全血量のおよそ倍量であることが実験的に
確かめられた。
【0106】
【実施例】
実施例1 1.多層分析スライドの作製 1−1:血漿受容要素の作製 ゼラチン下塗りされている厚さ180μmのポリエチレン
テレフタレート(PET)無色透明平滑シート223の上に
下記の成分から成る吸水層222を乾燥後の厚さが15μm
になるように塗布し、乾燥した。
【0107】 脱イオンゼラチン 20g p−ノニルフェノキシポリグリシドール 1.5g (平均10グリシドール単位含有) ビス〔(ビニルスルホニルメチルカルボニル)アミノ〕メタン 220mg
【0108】次にこの層の上に下記の成分から成る接着
層を乾燥後の厚さが1μmになるように水溶液から塗布
し、乾燥させて接着層を形成した。 脱イオンゼラチン 4.0g p−ノニルフェノキシポリグリシドール 430mg (平均10グリシドール単位含有)
【0109】次に接着層の上に約30g/m2の割合で水を
供給して全面をほぼ一様に湿潤させ、PET製ブロード
織物布地221(厚さ約150μm、空隙体積9.8μL/m2
を軽く圧力をかけてラミネートして接着させ、乾燥させ
た。
【0110】次にこの布に下記の組成の水溶液を100m
L/m2の割合でほぼ一様に塗布し、乾燥させて血漿受
容要素22シートを完成させた。 ヒドロキシプロピルメチルセルロース 8.7g (メトキシ基28〜30%、ヒドロキシプロピル基7〜12%含有。2%水溶液で の20℃での溶液粘度が50cps) オクチルフェノキシポリエトキシエタノール 27g (平均10オキシエチレン単位含有) 水 964.3g
【0111】1−2:血球分離要素の作製 50デニール相当のPET紡績糸を36ゲージ編みしたトリ
コット編物布地211(厚さ約250μm)に、下記組成の水
溶液を含浸し、乾燥させた。 ポリエチレングリコール(平均分子量5万) 2.0g 四硼酸ナトリウム 2.0g 水 96g
【0112】次に上記含浸済みトリコット編物布地211
を80℃に加熱し、その表面に130℃に加熱し溶融したホ
ットメルト型接着剤213を、グラビア印刷法によりグラ
ビアローラーからの転写によりドット状に付着させた。
グラビアローラーのドットパターンは、ドット直径0.3m
mの円、ドットの中心間距離0.6mm、ドット面積率約20%
であった。付着した接着剤の量は約2g/m2であっ
た。次いで、接着剤213が転写された直後の高温の布地2
11の表面に、有効孔径3.0μm、厚さ140μm、空隙率約
80%のセルロースアセテートメンブランフィルター212
の非光沢面を向かい合わせてラミネートローラーの間を
通し、両者をラミネートして接着一体化(部分接着)し
た。セルロースアセテートメンブランフィルターの光沢
面側にホットメルト型接着剤214をグラビアローラーを
用いて同様に付着させ、その上に表面にシリコーンを塗
布してある離型紙216を積層して、血球分離要素21シー
トを作製した。
【0113】1−3:単項目測定用乾式分析スライドの
作製 1−2で作製した血漿受容要素を15mm×15mmの大きさの
フィルムチップに打ち抜いた。
【0114】この血漿受容要素22チップをスライド枠10
の下蓋部分12に収容した。この下蓋部分12はハイインパ
クトポリスチレン製で、縦28mm、横24mm、厚さ1.2mmの
大きさをしており、縦横16mm、深さ0.8mmの血漿受容要
素チップ収容部121とその中央に直径13mmの円孔122が形
成されている。下蓋部分12の4隅にホットメルトディス
ペンサー30でホットメルト型接着剤225を点着し、血漿
受容要素22チップを入れて、4隅に1mm×1mmの大きさ
の突起のある超音波ホーン31(ブランソン社製)で熱溶
融接着した。
【0115】一方、図3の右上部に示されている血球分
離要素21シートも15mm×15mmの正方形チップに切断し
た。スライド枠の下蓋部分12と同形の上蓋部分11の4隅
にホットメルトディスペンサー30でホットメルト型接着
剤215を点着し、血球分離要素21チップを入れて超音波
ホーン31で熱溶融接着した。
【0116】血球分離要素21の離型紙216を剥離してス
ライド枠10の下蓋部分12に収容固定されている血漿受容
要素22に合わせ、超音波ホーン32で加熱して血球分離要
素21の光沢面にドット状に点着しておいたホットメルト
型接着剤214で両要素21,22を接着させた。
【0117】1−4:4項目測定用乾式分析要素の作製 上記の血漿受容要素シート及び血球分離要素シートを用
いて図3に示す手順に従って図1及び図2に示す乾式分
析要素を作製した。
【0118】まず、図3左上部に示すように、血漿受容
要素22シートに刃角が60度で480℃に加熱された熱溶断
刃で支持体223に達する熱溶断溝224を15mm巾で縦横に、
すなわち格子状に形成した。この熱溶断溝224は開口部
の巾が0.8mm、深さが0.19mmであった。次いで、この格
子間の中央部をカッターで縦横に切断し、十字状の熱溶
断溝224で4つの等しい正方形に仕切った15mm×15mmの血
漿受容要素22チップを作製した。
【0119】この血漿受容要素22チップをスライド枠10
の下蓋部分12に収容した。この下蓋部分12はハイインパ
クトポリスチレン製で、縦28mm、横24mm、厚さ1.2mmの
大きさをしており、縦横16mm、深さ0.8mmの血漿受容要
素チップ収容部121とその中央に直径13mmの円孔122が形
成されている。下蓋部分12の4隅にホットメルトディス
ペンサー30でホットメルト型接着剤225を点着し、血漿
受容要素22チップを入れて、4隅に1mm×1mmの大きさ
の突起のある超音波ホーン31(ブランソン社製)で熱溶
融接着した。
【0120】一方、図3の右上部に示されている血球分
離要素21シートも15mm×15mmの正方形チップに切断し
た。スライド枠の下蓋部分12と同形の上蓋部分11の4隅
にホットメルトディスペンサー30でホットメルト型接着
剤215を点着し、血球分離要素21チップを入れて超音波
ホーン31で熱溶融接着した。
【0121】血球分離要素21の離型紙216を剥離してス
ライド枠10の下蓋部分12に収容固定されている血漿受容
要素22に合わせ、超音波ホーン32で加熱して血球分離要
素21の光沢面にドット状に点着しておいたホットメルト
型接着剤214で両要素21,22を接着させた。超音波ホー
ン32の受台33には熱溶断溝224に対応する部分に十字状
の溝331が形成されている。この溝331は巾2mm、深さ2
mmである。
【0122】こうして図1及び図2に示すスライド枠10
に収容された乾式分析要素20を作製した。
【0123】2.測定 2−1:検体の調整 ヘパリン入り健常者全血20mlを遠心分離し血球成分と血
漿成分に分離した。血漿成分の一部を成分濃度既知のコ
ントロール血清(富士ドライケムコントロールLH)と
置換した。血球成分とコントロール血清で置換した血漿
とを混合することにより成分濃度の調整された全血を再
構成した。
【0124】2−2:検体の点着 1−3で作製した多層分析スライドの上に検量線作製用
に2−1で調製した全血をそれぞれ30μlづつ点着し、
室温で30秒放置後ピンセットにて血球分離要素を血漿受
容要素から剥離除去した。
【0125】2−3:脱水乾燥 2−2で得たスライドを、和紙で作られた透湿性の袋に
入れた粒径約1mmの顆粒状ゼオライト2gと共に5cmX
7cmの防湿性ポリエチレンの小袋に入れ、密封して室温
にて3時間保存した。
【0126】2−4:検出試薬の点着と測定 下記処方からなる尿素窒素(BUN)及びグルタミン酸
−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)の各測定
試薬溶液を調製した。
【0127】 BUN用測定試薬 Triton−X 100(ローム アント ハース社製) 2g o−フタルアルデヒド 2g N−1−ナフチル−N’−ジエチルエチレンジアミン蓚酸 820mg 蒸留水 10ml
【0128】 GOT トリスヒドロキシエチルアミノメタン 84mg 燐酸・1カリウム・2水素 104mg L−アスパラギン酸 431mg α−ケトグルタール酸 93mg 20%MgCl2 273μl POD 343IU TPP(コカルボキシラーゼ) 21mg FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド) 5mg オキザロ酢酸デハイドラーゼ 24U POPG(ピルビン酸オキシダーゼ) 3088U 2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−〔4−(ジメチルアミノ )フェニル〕−5−フェネチルイミダゾール 54mg
【0129】 グルコース(GLU)測定試薬 グルコースオキシダーゼ 2000U ペルオキシダーゼ 1200U 0.1M MESバッファー(pH5.7) 10ml Triton X−100 10μl NaN3 20mg
【0130】 総蛋白(TP)測定試薬 20mlの水に下記組成の試薬を溶解し、ビウレット反応を利用した測定試薬 液を調製した。 硫酸銅 3.5g 酒石酸(5水塩) 2.3g 水酸化リチウム 3.8g セチルメチルアンモニウムブロマイド 0.1g 1N NaOH 3.4ml 蒸留水 6.6ml
【0131】2−3に記した乾燥後の4分割スライドの
区画No.1、2、3、4にそれぞれGLU(グルコー
ス)、TP(総蛋白)、BUN及びGOTの検出試薬溶
液の各5μlを点着した。この際、スライドの展開層を
仕切る溝の断面は完全に溶着しており、試薬溶液が滲み
出すことは無かった。また、吸水層からの液の滲み出し
も無かった。
【0132】スライドを37℃で6分間インキュベート
し、測光ビームヘッドを調整してビーム径を3mmに絞っ
た富士ドライケム3000アナライザーを用いて、それぞれ
の発色に相当する波長(GLU:510nm、TP:540nm、
BUN:625nm、GOT:650nm)で反射光学濃度を測定
した。同様の操作を全血検体No.1〜No.4についてそ
れぞれ3回づつ繰り返した。
【0133】2−5:検量線の作成 2−1で得たNo.1〜No.4の全血から分離して得た血
漿についての日立7150によるBUNの濃度値を横軸に、
2−4で得た本法によるNo.1〜No.4の全血について
の測定値を縦軸にプロットし、図5に示すような検量線
を作成した。同様にして、GLU、TPについてもそれ
ぞれ検量線を作成した。
【0134】また、GOTについても図6に示すような
検量線を作成した。但し、GOTについては、反応速度
を6分目の反射光学濃度から1分目の反射光学濃度を差
し引いて求めてプロットした。
【0135】2−6:同時再現性 別の健常者より得たヘパリン入り静脈全血を2つに分
け、2−1と同様にして成分濃度を変化させNo.5〜N
o.6の検体を得た。それぞれの検体について、6回繰り
返し測定を行った。2−5で得た検量線を用いてGL
U、TP、BUNの濃度及びGOTの活性値を算出し
た。結果は表1〜4の通りであった。臨床診断上十分な
定量性を有していることが確認された。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】2−7:ヘマトクリット依存性 検体の調製 健常者より得たヘパリン入り全血を弱い条件で遠心分離
し、血球成分と血漿成分とに分けた後、それぞれの混合
比を変えて再構成することにより、ヘマトクリット値の
異なる全血検体No.7〜No.10を得た。それぞれについ
て、ヘマトクリット値をキャプラリー遠心法により求め
た。また成分濃度が異なる検体4種類を調製した。
【0141】測定 2−1〜2−4の手順に従って上記検体について、BU
N及びGOTの値を測定した。またこれとは別に、血漿
移行促進液を全く使わずに全血検体No.7〜No.14につ
いて、60μl点着した場合についても測定した。横軸に
ヘマトクリット値を縦軸に測定値をプロットして表5
(BUN)及び表6(GOT)を得た。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】表5、6から明らかなように、無希釈全血
ではヘマトクリットが50%を越えると測定値が急激に低
下するのに対して、本法に従ってスライド上で希釈した
場合には、測定値は全て±20%の範囲に入っており、ヘ
マトクリット依存性が大幅に低減されていることが確か
められた。
【0145】実施例2 実施例1と同様にして作製したGOTとBUNを測定す
る2項目スライドに30μl全血を点着し、続いて30μl
の血漿移行促進液を点着し、35℃で10分間脱水乾燥した
後に、それぞれの項目に対応する測定試薬を点着し、富
士ドライケムアナライザー3000で測光した時の反射光学
濃度を調べた。GOTは酵素活性を測定するために測定
試薬を点着5分後の値から1分後の値を差し引いたレー
ト測光値、BUNは6分後の測光値(エンドポイント)
である。比較例として、通常の方法に従って、全血60μ
lをスライドに点着し、同様の測定を行った場合の結果
を示した。
【0146】用いた検体はヘパリン共存下に採血した静
脈血に、BUNとGOTを添加し、濃度を調節した。添
加前後の検体について1部を遠心分離して血漿を得て、
その血漿について臨床検査自動測定機(日立7150)を用
いて、それぞれの濃度レベルを求めた。結果は表7の通
りである。点着液量は比較例の半分であるにも拘らず、
得られた光学濃度は2倍から2.4倍であった。このことは
本発明方法によれば全血からの血漿の移行効率が2倍以
上になっていることを示すものである。
【0147】
【表7】
【0148】実施例3 実施例1と同様の実験において、分析要素が、分割され
ていない、単項目測定スライドを用いた。血球分離膜を
剥離、除去した後35℃で10分間脱水乾燥した後BUN測
定試薬10μlを点着し、富士ドライケムアナライザー55
00で6分後の反射光学濃度を測定し、検量線を用いてB
UN濃度を算出した。
【0149】図7−Aは検体として無希釈全血を点着し
た場合、図7−Bは2段希釈法により30μlの全血と30
μlの血漿移行促進液とを続けて点着した場合である。
図に見られるように2段希釈法によれば、ヘマトクリッ
ト依存性が大巾に改善される。
【0150】実施例4 実施例1と同様の実験に於いて、始めに点着する全血の
量は30μlに固定しておいて、次に点着する血漿移行促
進液の量を15μlから40μlまで変化させた場合につい
て調べた。図8のAはBUNを測定した時の全液量を横
軸、測定値を縦軸とした時の結果である。
【0151】鎖線は平均値を中心として、±6%の範囲
を示したものである。図に見られるように血漿移行促進
液量が15〜30μlすなわち全液量が45〜60μlの範囲で
はほぼ一定の測定結果が得られている。
【0152】図8のBは全血の量を15μlとし、血漿移
行促進液量を30μlから50μlまで変化させた場合であ
るが、この場合には全濃度域にわたって、ほぼ一定の測
定結果が得られた。
【0153】
【発明の効果】本発明の方法により、全血測定用検体乾
燥型多層分析スライドへの全血検体の供給量を大幅に少
なくすることができるので、微量全血での測定が可能に
なる。特に多項目測定の場合に有利になる。また、希釈
することにより、高いヘマトクリットの血液検体でも粘
性が大幅に低下するので、全血測定で一番大きな問題で
あるヘマトクリット依存性を大幅に改善できる。通常測
定では検体を希釈すれば、測定時の検出感度が低下する
が本法では、血漿移行促進液を一度脱水乾燥するので、
感度低下は起こらない。逆に血漿の移行量が増加するの
で、無希釈全血での測定よりも感度的には有利になる。
通常の方式では希釈率のバラツキが直接測定結果のバラ
ツキに影響するが、本方式では、一度乾燥してしまうの
で検体量が一定であれば希釈倍率がそのものの影響は本
質的に受けにくい。血漿移行促進液に分析を有利にする
ような試薬を添加しておくことにより影響因子を抑制す
ることができるので、より信頼性の高い結果を得ること
ができる。例えば、コレステロールの分画試薬を添加し
ておけば、全血を用いたHDL−コレステロールの測定
が可能になる。さらに、血漿移行促進液中に被検物質に
対する抗体や対応するプローブを担持させて組み込んで
おけば、多孔質中でのBF分離が可能になるので、免疫
測定やDNA測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スライド材に収容された本発明の一実施例で
ある乾式分析要素の断面図である。
【図2】 同乾式分析要素の平面図である。
【図3】 図1の分析要素の作製工程図である。
【図4】 図1の分析要素の使用方法を示す工程図であ
る。
【図5】 本発明の実施例1で得たBUNの検量線であ
る。
【図6】 本発明の実施例1で得たGOTの検量線であ
る。
【図7】 本発明の実施例3で得た、全血試料のヘマト
クリット値とBUNの分析値の関係を無希釈法で行なっ
た場合と2段希釈法で行なった場合を比較するグラフで
ある。
【図8】 本発明の実施例4で得た、血漿移行促進液量
を変えてBUN分析値の変化を調べた結果を示すグラフ
である。
【符号の説明】
10…スライド枠 11…上蓋部分 12…下蓋部分 121…血漿受容要素チップ収容部 122…円孔 20…乾式分析要素 21…血球分離要素 211…繊維質多孔性層 212…非繊維質多孔性層 213…部分接着層 214…部分接着層 215…ホットメルト接着剤 216…離型紙 22…血漿受容要素 221…多孔性展開層 222…親水性ポリマー層 223…水不透過性支持体 224…熱溶断溝 225…ホットメルト接着剤 30…ホットメルトディスペンサー 31…超音波ホーン 32…超音波ホーン 33…受台 331…溝

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全血試料、次いで血漿移行促進液を血球
    分離要素と血漿受容要素からなり測定試薬を含んでいな
    い全血分析要素に供給し、該試料の血漿部分が血漿受容
    要素に浸透・拡散後血球分離要素と血漿受容要素とを分
    離し次に血漿受容要素を乾燥し、その後測定試薬溶液を
    該血漿受容要素に供給して被検物質を測定することを特
    徴とする全血分析要素を用いた全血試料の分析方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、血漿受容要素が複数
    の区画に分離されていることを特徴とする全血試料の分
    析方法。
JP32940793A 1993-12-27 1993-12-27 全血分析要素を用いた全血試料の分析方法 Pending JPH07191020A (ja)

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