JPH07188775A - 磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方法Info
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- JPH07188775A JPH07188775A JP5335646A JP33564693A JPH07188775A JP H07188775 A JPH07188775 A JP H07188775A JP 5335646 A JP5335646 A JP 5335646A JP 33564693 A JP33564693 A JP 33564693A JP H07188775 A JPH07188775 A JP H07188775A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 熱間圧延から最終冷延に至るまでの間に少な
くとも1回の焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法にお
いて、脱炭焼鈍直前における鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃
度との濃度差ΔSiが、該鋼中Si濃度の20%以下になるよ
うに、脱炭焼鈍に先立って鋼板の地鉄表面に存在するSi
欠乏層を除去する処理を施す。 【効果】 脱炭焼鈍時の酸化被膜性状に起因する外観不
良や磁気特性の不安定現象が十分に解消され、良好な磁
気特性の電磁鋼板を安定して得ることができた。
くとも1回の焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法にお
いて、脱炭焼鈍直前における鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃
度との濃度差ΔSiが、該鋼中Si濃度の20%以下になるよ
うに、脱炭焼鈍に先立って鋼板の地鉄表面に存在するSi
欠乏層を除去する処理を施す。 【効果】 脱炭焼鈍時の酸化被膜性状に起因する外観不
良や磁気特性の不安定現象が十分に解消され、良好な磁
気特性の電磁鋼板を安定して得ることができた。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性電磁鋼板の製
造方法に関し、特に良好な磁気特性を安定して得ること
のできる方法を提案しようとするものである。
造方法に関し、特に良好な磁気特性を安定して得ること
のできる方法を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、主として変圧器、発
電機その他の電気機器の鉄心材料として用いられ、磁気
特性として励磁特性及び鉄損特性が良好な鋼板が要求さ
れている。一般的に方向性電磁鋼板は、Siを3%程度含
有するけい素鋼素材を熱間圧延し、その後1回又は中間
焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終冷延板とし
た後、脱炭焼鈍を行い、次いでMgO を主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから仕上げ焼鈍を施すことにより、圧
延面に平行に{110}面、圧延方向に平行に〈00
1〉軸をもつ、いわゆるゴス方位結晶粒を二次再結晶に
より発達させ、しかる後に表面にフォルステライトから
なるグラス被膜を形成し、その後は必要に応じ平坦化焼
鈍及び絶縁コーティング処理を施して製造される。
電機その他の電気機器の鉄心材料として用いられ、磁気
特性として励磁特性及び鉄損特性が良好な鋼板が要求さ
れている。一般的に方向性電磁鋼板は、Siを3%程度含
有するけい素鋼素材を熱間圧延し、その後1回又は中間
焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終冷延板とし
た後、脱炭焼鈍を行い、次いでMgO を主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから仕上げ焼鈍を施すことにより、圧
延面に平行に{110}面、圧延方向に平行に〈00
1〉軸をもつ、いわゆるゴス方位結晶粒を二次再結晶に
より発達させ、しかる後に表面にフォルステライトから
なるグラス被膜を形成し、その後は必要に応じ平坦化焼
鈍及び絶縁コーティング処理を施して製造される。
【0003】かような製造工程中、仕上げ焼鈍に先立つ
脱炭焼鈍時に生成する酸化被膜の性状が、最終的な製品
の磁気特性及びグラス被膜特性に影響を及ぼすことが近
年の研究により判明した。すなわち、酸化被膜の性状に
よっては、次工程での仕上げ焼鈍時の二次再結晶状況を
左右したり、表面外観の不均一を招いたり、最終的な被
膜密着性や張力量を劣化させたりして、磁気特性及び被
膜特性の劣化が生じていたのである。
脱炭焼鈍時に生成する酸化被膜の性状が、最終的な製品
の磁気特性及びグラス被膜特性に影響を及ぼすことが近
年の研究により判明した。すなわち、酸化被膜の性状に
よっては、次工程での仕上げ焼鈍時の二次再結晶状況を
左右したり、表面外観の不均一を招いたり、最終的な被
膜密着性や張力量を劣化させたりして、磁気特性及び被
膜特性の劣化が生じていたのである。
【0004】かかる酸化被膜の改善方法については既に
提案があり、例えば特開昭50−71526号公報で
は、脱炭焼鈍前の最終冷延板の表面層を3g/m2以上酸洗
して表面付着物を除くことにより、均一な被膜が形成さ
れ、密着性が向上することが記載されている。また、特
開昭57−101673号公報では、脱炭焼鈍前の最終
冷延板の表面を、片面で0.025 〜0.5 g/m2だけ研削ある
いは酸洗にて除去することにより、均一な被膜が形成さ
れ、密着性が向上することが記載されている。
提案があり、例えば特開昭50−71526号公報で
は、脱炭焼鈍前の最終冷延板の表面層を3g/m2以上酸洗
して表面付着物を除くことにより、均一な被膜が形成さ
れ、密着性が向上することが記載されている。また、特
開昭57−101673号公報では、脱炭焼鈍前の最終
冷延板の表面を、片面で0.025 〜0.5 g/m2だけ研削ある
いは酸洗にて除去することにより、均一な被膜が形成さ
れ、密着性が向上することが記載されている。
【0005】しかしながら、これらの手法は、いずれも
ガラス被膜の均一性や密着性の改善を目的として施され
るものであって、かかるガラス被膜の特性向上には寄与
するとしても、磁気特性の改善に寄与しているとは必ず
しもいえなかった。
ガラス被膜の均一性や密着性の改善を目的として施され
るものであって、かかるガラス被膜の特性向上には寄与
するとしても、磁気特性の改善に寄与しているとは必ず
しもいえなかった。
【0006】この点、被膜特性のみならず磁気特性の改
善をも図った技術として、特開昭62−133021号
公報には、脱炭焼鈍前又は後に、鋼板表面に鋭利かつ微
細な凹凸を形成し鋼板表面を活性化して、脱炭焼鈍又は
仕上焼鈍で部分的に鋼板地鉄側に突き込んだ酸化物層を
形成する方法が記載されている。この方法は、鋼板表面
上に2.5 μm 以上の表面凹凸を付加することにより、そ
のアンカー効果により張力を増加させて鉄損を下げるこ
とを狙ったもので、その効果は認められるであろうもの
の、凹凸を過剰に形成することから、二次再結晶時には
結晶粒のピンニング効果によって二次再結晶組織へ悪影
響を及ぼし、ひいては二次再結晶の不安定化を招くおそ
れがある。また、製品板においては表層アンカーにより
磁壁の移動が抑制されてヒステリシス損が増加し、かえ
って鉄損の増加を招く場合があり、良好な被膜特性と磁
気特性との両立を安定して図ることは容易ではなかっ
た。
善をも図った技術として、特開昭62−133021号
公報には、脱炭焼鈍前又は後に、鋼板表面に鋭利かつ微
細な凹凸を形成し鋼板表面を活性化して、脱炭焼鈍又は
仕上焼鈍で部分的に鋼板地鉄側に突き込んだ酸化物層を
形成する方法が記載されている。この方法は、鋼板表面
上に2.5 μm 以上の表面凹凸を付加することにより、そ
のアンカー効果により張力を増加させて鉄損を下げるこ
とを狙ったもので、その効果は認められるであろうもの
の、凹凸を過剰に形成することから、二次再結晶時には
結晶粒のピンニング効果によって二次再結晶組織へ悪影
響を及ぼし、ひいては二次再結晶の不安定化を招くおそ
れがある。また、製品板においては表層アンカーにより
磁壁の移動が抑制されてヒステリシス損が増加し、かえ
って鉄損の増加を招く場合があり、良好な被膜特性と磁
気特性との両立を安定して図ることは容易ではなかっ
た。
【0007】ところで、従来より、磁気特性の優れた方
向性電磁鋼板を得るために、種々の改善方法が開発さ
れ、例えば、励磁特性の改善方法としては、インヒビタ
ー元素を適正化すること及び微量添加元素によりゴス方
位集積度を高めることが知られていて、また、鉄損特性
の改善方法としては、Si含有量を高める、製品厚を薄く
する、鋼中不純物を少なくする、二次再結晶粒を小さく
する、表面に張力を付与する、ゴス方位集積度を高める
等の方法が知られている。
向性電磁鋼板を得るために、種々の改善方法が開発さ
れ、例えば、励磁特性の改善方法としては、インヒビタ
ー元素を適正化すること及び微量添加元素によりゴス方
位集積度を高めることが知られていて、また、鉄損特性
の改善方法としては、Si含有量を高める、製品厚を薄く
する、鋼中不純物を少なくする、二次再結晶粒を小さく
する、表面に張力を付与する、ゴス方位集積度を高める
等の方法が知られている。
【0008】上述した鉄損低減技術のうち、Si含有量を
高める、鋼中不純物を少なくする、二次再結晶粒を小さ
くする、表面に張力を付与する、ゴス方位集積度を高め
る等の方法は、いずれも工業的に限界に近い技術レベル
まで達してきたため、さらなる鉄損改善効果が容易には
得られなくなった。そこで、確実に鉄損を低減できる方
法として、板厚の低減により渦電流損を低減する技術が
再評価され、現在、従来の0.3 mm板厚より薄い、0.23m
m、0.20mm、0.17mm等といった鋼板の開発が行われてい
る。
高める、鋼中不純物を少なくする、二次再結晶粒を小さ
くする、表面に張力を付与する、ゴス方位集積度を高め
る等の方法は、いずれも工業的に限界に近い技術レベル
まで達してきたため、さらなる鉄損改善効果が容易には
得られなくなった。そこで、確実に鉄損を低減できる方
法として、板厚の低減により渦電流損を低減する技術が
再評価され、現在、従来の0.3 mm板厚より薄い、0.23m
m、0.20mm、0.17mm等といった鋼板の開発が行われてい
る。
【0009】この板厚を薄くすることに伴う問題は、二
次再結晶の不安定性の増大である。以下説明すると、方
向性電磁鋼板の二次再結晶挙動は、適正な粒成長抑制剤
(インヒビター) の存在下において仕上焼鈍中の高温処
理により、{110}〈001〉方位をもつゴス方位結
晶核をカタストロフィックに異常粒成長させるものであ
る。この際に用いられるインヒビターとしては、MnSe,
MnS ,AlN 等が代表的であり、これらは、鋼中にあって
安定でなく、仕上げ焼鈍中に雰囲気と反応して分解し表
面から除去される。この分解等の現象と二次再結晶挙動
とは密接な関係があり、この分解が過多でも過少でも二
次再結晶は不安定となってしまう。このようにインヒビ
ターに影響される二次再結晶において、板厚が減少した
場合は、インヒビター全体に対する分解等を生起するイ
ンヒビターの相対的な量が増大し、仕上げ焼鈍中の雰囲
気の微妙な影響を非常に受けやすくなって、二次再結晶
が不安定となり易い。したがって、板厚の薄い物を安定
に製造するためには、この二次再結晶の安定化が一番の
課題となっている。
次再結晶の不安定性の増大である。以下説明すると、方
向性電磁鋼板の二次再結晶挙動は、適正な粒成長抑制剤
(インヒビター) の存在下において仕上焼鈍中の高温処
理により、{110}〈001〉方位をもつゴス方位結
晶核をカタストロフィックに異常粒成長させるものであ
る。この際に用いられるインヒビターとしては、MnSe,
MnS ,AlN 等が代表的であり、これらは、鋼中にあって
安定でなく、仕上げ焼鈍中に雰囲気と反応して分解し表
面から除去される。この分解等の現象と二次再結晶挙動
とは密接な関係があり、この分解が過多でも過少でも二
次再結晶は不安定となってしまう。このようにインヒビ
ターに影響される二次再結晶において、板厚が減少した
場合は、インヒビター全体に対する分解等を生起するイ
ンヒビターの相対的な量が増大し、仕上げ焼鈍中の雰囲
気の微妙な影響を非常に受けやすくなって、二次再結晶
が不安定となり易い。したがって、板厚の薄い物を安定
に製造するためには、この二次再結晶の安定化が一番の
課題となっている。
【0010】薄物の方向性電磁鋼板の製造方法に関し、
特開昭62−151522号公報には、板厚0.23mm以下
になる脱炭焼鈍前の最終冷延板に、3〜5 μm の凹凸を
付与することにより、該表面を活性化し、脱炭焼鈍でシ
リカに富んだ酸化層を形成することにより、仕上げ焼鈍
での二次再結晶を安定化する技術が開示されている。こ
の方法は、仕上げ焼鈍時の雰囲気とインヒビターとの反
応によって脱炭焼鈍時に形成される被膜を改良すること
により、二次再結晶を安定化させる技術であり、それな
りの効果は期待できるものの、鋼板表面に3〜5μm の
凹凸を付与することから、最終製品板においては表層ア
ンカーにより磁壁移動が抑制され、それゆえヒステリシ
ス損が増加することから、かえって鉄損の増加を招く場
合もあり、安定して鉄損の低減効果を得ることは容易で
なかった。
特開昭62−151522号公報には、板厚0.23mm以下
になる脱炭焼鈍前の最終冷延板に、3〜5 μm の凹凸を
付与することにより、該表面を活性化し、脱炭焼鈍でシ
リカに富んだ酸化層を形成することにより、仕上げ焼鈍
での二次再結晶を安定化する技術が開示されている。こ
の方法は、仕上げ焼鈍時の雰囲気とインヒビターとの反
応によって脱炭焼鈍時に形成される被膜を改良すること
により、二次再結晶を安定化させる技術であり、それな
りの効果は期待できるものの、鋼板表面に3〜5μm の
凹凸を付与することから、最終製品板においては表層ア
ンカーにより磁壁移動が抑制され、それゆえヒステリシ
ス損が増加することから、かえって鉄損の増加を招く場
合もあり、安定して鉄損の低減効果を得ることは容易で
なかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたことから明
らかなように、現在においても、方向性電磁鋼板の製造
工程では、脱炭焼鈍時の酸化被膜性状に起因する外観不
良や磁気特性の不安定現象は十分には解消されていると
はいえず、さらなる安定化技術が希求されているのであ
り、また、特に薄物の方向性電磁鋼板の製造工程の下で
は、本来薄物材の目的とする低鉄損材を得るためのさら
なる薄物製造技術の安定化が希求されているのである。
らかなように、現在においても、方向性電磁鋼板の製造
工程では、脱炭焼鈍時の酸化被膜性状に起因する外観不
良や磁気特性の不安定現象は十分には解消されていると
はいえず、さらなる安定化技術が希求されているのであ
り、また、特に薄物の方向性電磁鋼板の製造工程の下で
は、本来薄物材の目的とする低鉄損材を得るためのさら
なる薄物製造技術の安定化が希求されているのである。
【0012】この発明は、上記した要請に対して有利に
応えるもので、第1に表面外観不良や磁気特性の不安定
現象を解消する方向性電磁鋼板の製造方法を提案するこ
とを目的とし、第2に特に薄物の方向性電磁鋼板におい
て、二次再結晶不良による磁気特性の不安定現象をなく
した方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的と
する。
応えるもので、第1に表面外観不良や磁気特性の不安定
現象を解消する方向性電磁鋼板の製造方法を提案するこ
とを目的とし、第2に特に薄物の方向性電磁鋼板におい
て、二次再結晶不良による磁気特性の不安定現象をなく
した方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的と
する。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述したように、脱炭焼
鈍時の酸化膜の制御は、恣意的な表面層への凹凸形成や
表面層の除去だけでは不十分で特性が安定化しない。そ
こで発明者らは、脱炭焼鈍時に形成されるSi酸化物の形
成過程を詳細に検討し、磁気特性の安定性との関係につ
いて綿密に調べた結果、脱炭焼鈍時の酸化被膜の不安定
さの原因が、脱炭焼鈍前に実施する焼鈍等の工程によっ
て顕著に変化する表層Si濃度に多大にあることを見出
し、そこから、このSi濃度を適正範囲内に制御すること
により特性が安定化することを見出した。
鈍時の酸化膜の制御は、恣意的な表面層への凹凸形成や
表面層の除去だけでは不十分で特性が安定化しない。そ
こで発明者らは、脱炭焼鈍時に形成されるSi酸化物の形
成過程を詳細に検討し、磁気特性の安定性との関係につ
いて綿密に調べた結果、脱炭焼鈍時の酸化被膜の不安定
さの原因が、脱炭焼鈍前に実施する焼鈍等の工程によっ
て顕著に変化する表層Si濃度に多大にあることを見出
し、そこから、このSi濃度を適正範囲内に制御すること
により特性が安定化することを見出した。
【0014】また、薄物の方向性電磁鋼板の二次再結晶
の安定化に関しても、脱炭焼鈍時の酸化膜の制御が効果
があることを併せて究明し、前掲特開昭62−1515
22号公報のように単に凹凸付与によって表面活性化を
図るだけでは特性の安定化が困難であり、地鉄Si濃度を
所定範囲内に制御することにより薄物であっても特性が
安定化することを見出した。この発明は、上記の知見に
立脚するものである。
の安定化に関しても、脱炭焼鈍時の酸化膜の制御が効果
があることを併せて究明し、前掲特開昭62−1515
22号公報のように単に凹凸付与によって表面活性化を
図るだけでは特性の安定化が困難であり、地鉄Si濃度を
所定範囲内に制御することにより薄物であっても特性が
安定化することを見出した。この発明は、上記の知見に
立脚するものである。
【0015】すなわち、この発明は、けい素鋼スラブに
熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷
延圧延を施して最終板厚としたのち、脱炭焼鈍、次いで
仕上げ焼鈍を施す一連の工程により方向性電磁鋼板を製
造するに際し、熱間圧延から最終冷延に至るまでの間に
少なくとも1回の焼鈍を施す方法において、脱炭焼鈍直
前における鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃度との濃度差ΔSi
を、該鋼中Si濃度の20%以下にする処理を、脱炭焼鈍に
先立って施すことを特徴とする磁気特性の安定した方向
性電磁鋼板の製造方法である。
熱間圧延を施し、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷
延圧延を施して最終板厚としたのち、脱炭焼鈍、次いで
仕上げ焼鈍を施す一連の工程により方向性電磁鋼板を製
造するに際し、熱間圧延から最終冷延に至るまでの間に
少なくとも1回の焼鈍を施す方法において、脱炭焼鈍直
前における鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃度との濃度差ΔSi
を、該鋼中Si濃度の20%以下にする処理を、脱炭焼鈍に
先立って施すことを特徴とする磁気特性の安定した方向
性電磁鋼板の製造方法である。
【0016】この発明において、処理は、焼鈍を施され
た鋼板の地鉄表面に存在するSi欠乏層を除去するもので
あることが好適である。
た鋼板の地鉄表面に存在するSi欠乏層を除去するもので
あることが好適である。
【0017】また、この発明では、最終板厚0.23mm以下
の薄鋼板を得る場合に、上述した濃度差ΔSiを、鋼中Si
濃度の10%以下にすることが望ましい。
の薄鋼板を得る場合に、上述した濃度差ΔSiを、鋼中Si
濃度の10%以下にすることが望ましい。
【0018】さらに、この発明では、上記の最終板厚0.
23mm以下の鋼板を得る場合に、脱炭焼鈍に先立って鋼板
の地鉄表面に存在するSi欠乏層の除去処理により、処理
後の地鉄表面粗さRa を0.05μm 以上3μm 以下の範囲
に満足させることが好ましい。
23mm以下の鋼板を得る場合に、脱炭焼鈍に先立って鋼板
の地鉄表面に存在するSi欠乏層の除去処理により、処理
後の地鉄表面粗さRa を0.05μm 以上3μm 以下の範囲
に満足させることが好ましい。
【0019】
【作用】以下、この発明をより具体的に説明する。この
発明にかかる方向性電磁鋼板の製法に関して、成分組成
範囲、熱延条件及び冷延条件は特に限定されない。電磁
鋼板の成分は、例えばC:0.02〜0.08wt%、Si:2.5 〜
4.0 wt%を含み、インヒビター成分として、MnSe,MnS
,AlN ,BN等を必要に応じて含有し、さらに必要な場
合には、Sn,P,Sb,Cu,Mo,Ni等の元素を含有させれ
ば良い。
発明にかかる方向性電磁鋼板の製法に関して、成分組成
範囲、熱延条件及び冷延条件は特に限定されない。電磁
鋼板の成分は、例えばC:0.02〜0.08wt%、Si:2.5 〜
4.0 wt%を含み、インヒビター成分として、MnSe,MnS
,AlN ,BN等を必要に応じて含有し、さらに必要な場
合には、Sn,P,Sb,Cu,Mo,Ni等の元素を含有させれ
ば良い。
【0020】上記に代表される成分になるけい素鋼スラ
ブを熱間圧延し、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧
延を施し最終冷延板にする。この最終冷延板段階での表
層Si濃度を熱間圧延板から最終冷延板の脱炭焼鈍前まで
の間に制御することが、この発明では重要であり、かか
るSi濃度制御は、脱炭焼鈍直前における鋼中Si濃度と地
鉄表面Si濃度との濃度差ΔSiを、該鋼中Si濃度の20%以
下(薄鋼板の場合は10%以下)にするものである。この
ような表層のSi濃度の限定理由について以下発明する。
ブを熱間圧延し、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧
延を施し最終冷延板にする。この最終冷延板段階での表
層Si濃度を熱間圧延板から最終冷延板の脱炭焼鈍前まで
の間に制御することが、この発明では重要であり、かか
るSi濃度制御は、脱炭焼鈍直前における鋼中Si濃度と地
鉄表面Si濃度との濃度差ΔSiを、該鋼中Si濃度の20%以
下(薄鋼板の場合は10%以下)にするものである。この
ような表層のSi濃度の限定理由について以下発明する。
【0021】脱炭焼鈍時に形成される酸化物は、一部、
鉄との複合酸化物が存在するが、主としてSiO2である。
発明者らが脱炭焼鈍前における最終冷延板の地鉄Si濃度
に着目したのは、酸化物形成が主にSiに依存するため、
その酸化物のSi供給源である地鉄の濃度が表層で変化し
ている場合、またそれが位置によりばらつく場合には、
Si酸化物の形成が著しく影響を受け、結果的に磁気特性
の変動要因になってしまうのはないかという予想からで
あった。そこで、この予想を確認すべく、けい鋼スラブ
を熱間圧延し、熱延板焼鈍した後、中間焼鈍を挟む2回
の冷間圧延を施した板厚0.22mmの最終冷延板の表層Si濃
度と板厚中心部のSi濃度とを調査した。その結果を表1
に示す。表1における表面Si濃度は、格別に処理を施さ
ない地鉄そのまま、また、中心部のSi濃度は、#180 の
エメリー紙で厚み方向に中心まで研磨したものを、いず
れも蛍光X線分析にかけ、得られたSi強度をSi濃度に換
算したものである。表1から、表層では、地鉄Si濃度が
鋼中Siに比べて極端に減少していることが判明した。
鉄との複合酸化物が存在するが、主としてSiO2である。
発明者らが脱炭焼鈍前における最終冷延板の地鉄Si濃度
に着目したのは、酸化物形成が主にSiに依存するため、
その酸化物のSi供給源である地鉄の濃度が表層で変化し
ている場合、またそれが位置によりばらつく場合には、
Si酸化物の形成が著しく影響を受け、結果的に磁気特性
の変動要因になってしまうのはないかという予想からで
あった。そこで、この予想を確認すべく、けい鋼スラブ
を熱間圧延し、熱延板焼鈍した後、中間焼鈍を挟む2回
の冷間圧延を施した板厚0.22mmの最終冷延板の表層Si濃
度と板厚中心部のSi濃度とを調査した。その結果を表1
に示す。表1における表面Si濃度は、格別に処理を施さ
ない地鉄そのまま、また、中心部のSi濃度は、#180 の
エメリー紙で厚み方向に中心まで研磨したものを、いず
れも蛍光X線分析にかけ、得られたSi強度をSi濃度に換
算したものである。表1から、表層では、地鉄Si濃度が
鋼中Siに比べて極端に減少していることが判明した。
【0022】
【表1】
【0023】この表層のSi欠乏層は、最終冷延までの焼
鈍工程(熱延板焼鈍や冷延時の中間焼鈍)において表層
が著しく酸化されるために生ずるもので、焼鈍時の温度
・雰囲気等といった製造条件の変動にも敏感に左右さ
れ、同一コイルでも表層Si濃度の減少割合がばらついて
いることもわかった。
鈍工程(熱延板焼鈍や冷延時の中間焼鈍)において表層
が著しく酸化されるために生ずるもので、焼鈍時の温度
・雰囲気等といった製造条件の変動にも敏感に左右さ
れ、同一コイルでも表層Si濃度の減少割合がばらついて
いることもわかった。
【0024】そこで、表層Si濃度と磁気特性、被膜特性
との関係について種々の実験を行った結果、地鉄表面の
Si濃度と鋼中Si濃度との差ΔSi(=鋼中Si濃度−地鉄表
面Si濃度)が、鋼中Si濃度の20%を超えない範囲の地鉄
表面Si濃度であるような試料については、磁気特性のば
らつきがなく、表面外観不良のばらつきもないことが判
明した。したがって、ΔSiは、鋼中Si濃度を20%以下と
することが必要である。
との関係について種々の実験を行った結果、地鉄表面の
Si濃度と鋼中Si濃度との差ΔSi(=鋼中Si濃度−地鉄表
面Si濃度)が、鋼中Si濃度の20%を超えない範囲の地鉄
表面Si濃度であるような試料については、磁気特性のば
らつきがなく、表面外観不良のばらつきもないことが判
明した。したがって、ΔSiは、鋼中Si濃度を20%以下と
することが必要である。
【0025】ΔSiが20%を超えると、磁気特性のばらつ
きが大きくなる理由は、十分には明確になっていない
が、仮説として表層の酸化膜の量がSi欠乏層のために十
分に確保できず、仕上焼鈍時のインヒビター元素の酸化
現象に影響を及ぼし、最適な二次再結晶現象にばらつき
を生ずるためと考えられる。また、表面外観不良の低減
も明確ではないが、ΔSiが鋼中Si濃度の20%を超える
と、必然的にコイル内の位置による表層Si濃度もばらつ
く結果となり、それにより生ずる酸化物のばらつきが、
外観不良となっているものと予想される。
きが大きくなる理由は、十分には明確になっていない
が、仮説として表層の酸化膜の量がSi欠乏層のために十
分に確保できず、仕上焼鈍時のインヒビター元素の酸化
現象に影響を及ぼし、最適な二次再結晶現象にばらつき
を生ずるためと考えられる。また、表面外観不良の低減
も明確ではないが、ΔSiが鋼中Si濃度の20%を超える
と、必然的にコイル内の位置による表層Si濃度もばらつ
く結果となり、それにより生ずる酸化物のばらつきが、
外観不良となっているものと予想される。
【0026】次に最終冷延板厚0.23mm以下の薄鋼板の場
合にΔSiを10%以下にするのが好ましい理由は、最終冷
延厚み0.22mm以下の鋼板について表層Si濃度と磁気特性
との関係について種々の実験を行った結果、ΔSiが、鋼
中Si濃度の10%を超えない範囲の地鉄表面Si濃度とした
ものは、磁気特性のばらつきがなかったからである。Δ
Siが10%を超えると磁気特性のばらつきが大きくなる理
由は十分には明確になっていないが、Si欠乏層のため表
層の酸化膜の量が薄物材として十分な量だけ確保でき
ず、薄物では、厚物以上に仕上げ焼鈍時のインヒビター
元素の酸化現象に影響を及ぼし、最適な二次再結晶現象
にばらつきを生ずるためと考えられる。
合にΔSiを10%以下にするのが好ましい理由は、最終冷
延厚み0.22mm以下の鋼板について表層Si濃度と磁気特性
との関係について種々の実験を行った結果、ΔSiが、鋼
中Si濃度の10%を超えない範囲の地鉄表面Si濃度とした
ものは、磁気特性のばらつきがなかったからである。Δ
Siが10%を超えると磁気特性のばらつきが大きくなる理
由は十分には明確になっていないが、Si欠乏層のため表
層の酸化膜の量が薄物材として十分な量だけ確保でき
ず、薄物では、厚物以上に仕上げ焼鈍時のインヒビター
元素の酸化現象に影響を及ぼし、最適な二次再結晶現象
にばらつきを生ずるためと考えられる。
【0027】次に、表層Si濃度の制御を行う具体的な処
理方法について述べる。最終冷延板のSi濃度が前記条件
を満足するように制御できる方法であれば、処理方法は
特に限定されない。処理の代表的な方法として、焼鈍時
の雰囲気制御による方法及び脱炭焼鈍時までのいずれか
の工程の後にSi欠乏層を除去する方法が挙げられる。
理方法について述べる。最終冷延板のSi濃度が前記条件
を満足するように制御できる方法であれば、処理方法は
特に限定されない。処理の代表的な方法として、焼鈍時
の雰囲気制御による方法及び脱炭焼鈍時までのいずれか
の工程の後にSi欠乏層を除去する方法が挙げられる。
【0028】この雰囲気制御による方法では、最終冷延
までの焼鈍時に生ずる表層酸化物の形成を抑制する雰囲
気であれば種類は特に限定されず、例えば不活性雰囲
気、無酸化雰囲気、湿式水素又は水素・窒素混合雰囲気
等を利用できる。これらの雰囲気の制御は、組織制御等
といった本来の焼鈍目的を大幅に逸脱しない範囲で実施
する必要がある。
までの焼鈍時に生ずる表層酸化物の形成を抑制する雰囲
気であれば種類は特に限定されず、例えば不活性雰囲
気、無酸化雰囲気、湿式水素又は水素・窒素混合雰囲気
等を利用できる。これらの雰囲気の制御は、組織制御等
といった本来の焼鈍目的を大幅に逸脱しない範囲で実施
する必要がある。
【0029】そのため、より好適なのは、脱炭焼鈍時ま
でのいずれかの工程後に、Si欠乏層を除去する方法であ
る。除去する方法としては、ショットブラスト、ブラシ
ロール、グラインダー等の機械的方法、酸洗、化学研磨
等の化学的方法、またはそれらの組み合わせ等、どのよ
うな方法でも良い。肝要なのは、地鉄表面のSi濃度を鋼
中Si濃度とそれほど差が生じないようにすることであ
る。除去面は、両面が好適だけれども、磁気特性の安定
化のみを考えた場合は、片面又は一部の除去でも問題が
なく実施できる。また、Siが部分的に欠乏している領域
を除去する方法も可能である。磁気特性安定化の場合に
片面・一部除去が適用できる理由は明確でないが、二次
再結晶挙動に片面のSi濃度が深く影響しているためと考
えられる。
でのいずれかの工程後に、Si欠乏層を除去する方法であ
る。除去する方法としては、ショットブラスト、ブラシ
ロール、グラインダー等の機械的方法、酸洗、化学研磨
等の化学的方法、またはそれらの組み合わせ等、どのよ
うな方法でも良い。肝要なのは、地鉄表面のSi濃度を鋼
中Si濃度とそれほど差が生じないようにすることであ
る。除去面は、両面が好適だけれども、磁気特性の安定
化のみを考えた場合は、片面又は一部の除去でも問題が
なく実施できる。また、Siが部分的に欠乏している領域
を除去する方法も可能である。磁気特性安定化の場合に
片面・一部除去が適用できる理由は明確でないが、二次
再結晶挙動に片面のSi濃度が深く影響しているためと考
えられる。
【0030】また、Si欠乏層の除去の代わりに、最終冷
延板の表層にSi化合物を適量付着させることも可能であ
り、除去法に比べて、低コスト化が可能である。Si化合
物、付着量は、適宜選択できる。なお、処理する工程は
特に限定されるものではなく、熱延後から脱炭焼鈍の前
の間であれば良い。処理回数も少なくとも1回を行えば
良いが、焼鈍毎に複数回を行うことも可能である。
延板の表層にSi化合物を適量付着させることも可能であ
り、除去法に比べて、低コスト化が可能である。Si化合
物、付着量は、適宜選択できる。なお、処理する工程は
特に限定されるものではなく、熱延後から脱炭焼鈍の前
の間であれば良い。処理回数も少なくとも1回を行えば
良いが、焼鈍毎に複数回を行うことも可能である。
【0031】一方、板厚0.23mm以下の薄板の場合の処理
方法としては、途中工程の雰囲気をコントロールしてSi
欠乏層を抑制することも可能だけれども、そうすること
により、本来の焼鈍目的を若干逸脱してしまうため、微
妙な制御が必要な0.22mm以下の薄物の鋼板の場合は、Si
欠乏層を除去する方法が適している。このSi欠乏層を除
去する具体的方法は、既に述べた方法を用いればよい。
方法としては、途中工程の雰囲気をコントロールしてSi
欠乏層を抑制することも可能だけれども、そうすること
により、本来の焼鈍目的を若干逸脱してしまうため、微
妙な制御が必要な0.22mm以下の薄物の鋼板の場合は、Si
欠乏層を除去する方法が適している。このSi欠乏層を除
去する具体的方法は、既に述べた方法を用いればよい。
【0032】そして、製品が薄板の場合でかつ機械的に
Si欠乏層を除去する方法を採った場合には、除去後の鋼
板地鉄の表面粗さが重要であり、Ra で0.05μm 以上3
μm以下の範囲を満たす必要がある。Ra が 0.05 μm
未満では通常の除去が不可能で、0.05μm 未満を得よう
とすると鏡面仕上げとなり、工程が複雑化する。また、
3μm 以上になると二次再結晶が不安定となる。より好
ましくは、0.1 μm 以上、1μm 以下である。このよう
に、除去時の粗さが、二次再結晶に影響を与える理由は
明確ではないが、以下のように考えている。
Si欠乏層を除去する方法を採った場合には、除去後の鋼
板地鉄の表面粗さが重要であり、Ra で0.05μm 以上3
μm以下の範囲を満たす必要がある。Ra が 0.05 μm
未満では通常の除去が不可能で、0.05μm 未満を得よう
とすると鏡面仕上げとなり、工程が複雑化する。また、
3μm 以上になると二次再結晶が不安定となる。より好
ましくは、0.1 μm 以上、1μm 以下である。このよう
に、除去時の粗さが、二次再結晶に影響を与える理由は
明確ではないが、以下のように考えている。
【0033】途中工程で表面を除去した際の表面粗さと
最終冷延板の表面粗さとを対比すると、最終冷延板の表
面粗さ(Ra )は、除去による表面粗さの変動によらず
ほぼ一定の値をとり、ほとんど変わるところがなかっ
た。ところが最終冷延板の表面をSEM等でより詳細に
観察すると、除去時の影響と思われる微細な凹凸が存在
していた。このことから、これら微細な凹凸がSi濃度の
変化に加えて被膜生成状況ひいては二次再結晶状況に影
響を与えていると考えられ、少なすぎても多すぎても悪
影響を与える。最終冷延板の表面粗さはそのまま脱炭焼
鈍時に残留するが、その表面粗さが3μm 以上になると
二次再結晶挙動については明確な変化がないが、製品板
での鉄損が低減しなくなる。これは、表層アンカーによ
って磁壁移動が抑制され、ヒステリシス損が増加するた
めにかえって鉄損の増加を招くものと考えられる。
最終冷延板の表面粗さとを対比すると、最終冷延板の表
面粗さ(Ra )は、除去による表面粗さの変動によらず
ほぼ一定の値をとり、ほとんど変わるところがなかっ
た。ところが最終冷延板の表面をSEM等でより詳細に
観察すると、除去時の影響と思われる微細な凹凸が存在
していた。このことから、これら微細な凹凸がSi濃度の
変化に加えて被膜生成状況ひいては二次再結晶状況に影
響を与えていると考えられ、少なすぎても多すぎても悪
影響を与える。最終冷延板の表面粗さはそのまま脱炭焼
鈍時に残留するが、その表面粗さが3μm 以上になると
二次再結晶挙動については明確な変化がないが、製品板
での鉄損が低減しなくなる。これは、表層アンカーによ
って磁壁移動が抑制され、ヒステリシス損が増加するた
めにかえって鉄損の増加を招くものと考えられる。
【0034】以上のような処理を施した最終冷延板を脱
炭焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布してから高温の仕上げ焼鈍
を施す。これらの各工程は、今日、方向性電磁鋼板の製
造において公知となっている方法に従って実施すること
ができる。すなわち、脱炭焼鈍は、H2−H2O を含む雰囲
気中で連続焼鈍を行い、シリカとファイヤライトを主成
分として含む酸化膜を形成させるのであり、焼鈍温度は
750 〜850 ℃が好適である。処理時間及び雰囲気組成は
既述の観点から、脱炭と酸化膜形成とが適切に行える範
囲で任意に選ぶことができる。通常は、H2:60〜70%、
露点50〜70℃が適当である。脱炭焼鈍後に塗布する焼鈍
分離剤としては、マグネシアの単独使用はもちろんのこ
と、マグネシアに酸化チタン、酸化マンガン、あるいは
その他の添加剤を1種又は2種以上を加えたものを使用
することも可能であり、この場合は被膜の均一性等が向
上する。仕上げ焼鈍については、H2を含む雰囲気中で11
00〜1300℃の温度で焼鈍を実施する。その後平坦化焼鈍
を行い、絶縁被膜コーティングを実施する。
炭焼鈍し、焼鈍分離剤を塗布してから高温の仕上げ焼鈍
を施す。これらの各工程は、今日、方向性電磁鋼板の製
造において公知となっている方法に従って実施すること
ができる。すなわち、脱炭焼鈍は、H2−H2O を含む雰囲
気中で連続焼鈍を行い、シリカとファイヤライトを主成
分として含む酸化膜を形成させるのであり、焼鈍温度は
750 〜850 ℃が好適である。処理時間及び雰囲気組成は
既述の観点から、脱炭と酸化膜形成とが適切に行える範
囲で任意に選ぶことができる。通常は、H2:60〜70%、
露点50〜70℃が適当である。脱炭焼鈍後に塗布する焼鈍
分離剤としては、マグネシアの単独使用はもちろんのこ
と、マグネシアに酸化チタン、酸化マンガン、あるいは
その他の添加剤を1種又は2種以上を加えたものを使用
することも可能であり、この場合は被膜の均一性等が向
上する。仕上げ焼鈍については、H2を含む雰囲気中で11
00〜1300℃の温度で焼鈍を実施する。その後平坦化焼鈍
を行い、絶縁被膜コーティングを実施する。
【0035】
実施例1 C:0.058 wt%,Si:3.28wt%,Mn:0.073 wt%,S:
0.023 wt%,Al:0.022 wt%,N:0.0098wt%を含有す
る組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間の
焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延により中間板厚1.25
mmにしたあと、1100℃、1min 間の中間焼鈍後、酸洗し
た。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化していたこと
から、その後表面を#180 のエメリー紙で、表層のSi濃
度が蛍光X線分析の強度から換算して2.35wt%,2.50wt
%,2.70wt%,2.90wt%及び3.20wt%になるように研削
した後、再度冷間圧延を施して最終的に0.22mmに仕上げ
た。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度と変化なかっ
た。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃、2min 間の脱炭
焼鈍後、MgO スラリーを塗布してから、N2:50%,H2:
50%の混合雰囲気中で800 ℃〜1050℃間を20℃/hで昇温
後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上げ焼鈍
後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の平坦化
焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につき、磁
気特性及び表面外観を調査した。表2に得られた結果を
示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性及び表
面外観の関係で図1に示す。
0.023 wt%,Al:0.022 wt%,N:0.0098wt%を含有す
る組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間の
焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延により中間板厚1.25
mmにしたあと、1100℃、1min 間の中間焼鈍後、酸洗し
た。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化していたこと
から、その後表面を#180 のエメリー紙で、表層のSi濃
度が蛍光X線分析の強度から換算して2.35wt%,2.50wt
%,2.70wt%,2.90wt%及び3.20wt%になるように研削
した後、再度冷間圧延を施して最終的に0.22mmに仕上げ
た。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度と変化なかっ
た。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃、2min 間の脱炭
焼鈍後、MgO スラリーを塗布してから、N2:50%,H2:
50%の混合雰囲気中で800 ℃〜1050℃間を20℃/hで昇温
後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上げ焼鈍
後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の平坦化
焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につき、磁
気特性及び表面外観を調査した。表2に得られた結果を
示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性及び表
面外観の関係で図1に示す。
【0036】
【表2】
【0037】表2及び図1より、表層Si減少割合が20%
を超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観
も劣化することがわかる。この実施例においては、表面
除去を中間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍す
るまでの間で実施しても得られる効果に差はなかった。
また、中間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度
を変化させても得られる効果に差は見られなかった。さ
らに、用いる素材として、MnS 及びMnSeをインヒビター
として使用した場合も得られる効果に差がなかった。
を超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観
も劣化することがわかる。この実施例においては、表面
除去を中間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍す
るまでの間で実施しても得られる効果に差はなかった。
また、中間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度
を変化させても得られる効果に差は見られなかった。さ
らに、用いる素材として、MnS 及びMnSeをインヒビター
として使用した場合も得られる効果に差がなかった。
【0038】実施例2 C:0.058 wt%,Si:3.28wt%,Mn:0.073 wt%,S:
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#180 のエメリー紙
で、表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.
35wt%、2.50wt%、2.70wt%、2.90wt%及び3.20wt%に
なるように研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に
0.17mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度
と変化なかった。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2
min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:
50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃
/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上
げ焼鈍後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の
平坦化焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につ
き、磁気特性及び表面外観を調査した。表3に得られた
結果を示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性
及び表面外観の関係で図2に示す。
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#180 のエメリー紙
で、表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.
35wt%、2.50wt%、2.70wt%、2.90wt%及び3.20wt%に
なるように研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に
0.17mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度
と変化なかった。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2
min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:
50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃
/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上
げ焼鈍後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の
平坦化焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につ
き、磁気特性及び表面外観を調査した。表3に得られた
結果を示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性
及び表面外観の関係で図2に示す。
【0039】
【表3】
【0040】表3及び図2より、表層減少割合が20%を
超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観も
劣化することが分かる。この実施例では、表面除去を中
間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの
間で実施しても得られる効果に差はなかった。また、中
間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度を変化さ
せても得られる効果に差は見られなかった。さらに、用
いる素材として、MnS及びMnSeをインヒビターとして使
用した場合も得られる効果に差がなかった。
超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観も
劣化することが分かる。この実施例では、表面除去を中
間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの
間で実施しても得られる効果に差はなかった。また、中
間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度を変化さ
せても得られる効果に差は見られなかった。さらに、用
いる素材として、MnS及びMnSeをインヒビターとして使
用した場合も得られる効果に差がなかった。
【0041】実施例3 C:0.058 wt%,Si:3.28wt%,Mn:0.073 wt%,S:
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#180 のエメリー紙
で、表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.
35wt%、2.50wt%、2.70wt%、2.90wt%及び3.20wt%に
なるように研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に
0.30mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度
と変化なかった。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2
min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:
50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃
/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上
げ焼鈍後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の
平坦化焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につ
き、磁気特性及び表面外観を調査した。表4に得られた
結果を示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性
及び表面外観の関係で図3に示す。
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板に1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#180 のエメリー紙
で、表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.
35wt%、2.50wt%、2.70wt%、2.90wt%及び3.20wt%に
なるように研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に
0.30mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度
と変化なかった。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2
min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:
50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃
/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上
げ焼鈍後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の
平坦化焼鈍を実施した。かくして得られた電磁鋼板につ
き、磁気特性及び表面外観を調査した。表4に得られた
結果を示し、この結果を表層Si減少割合並びに磁気特性
及び表面外観の関係で図3に示す。
【0042】
【表4】
【0043】表4及び図3より、表層減少割合が20%を
超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観も
劣化することが分かる。この実施例では、表面除去を中
間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの
間で実施しても得られる効果に差はなかった。また、中
間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度を変化さ
せても得られる効果に差は見られなかった。さらに、用
いる素材として、MnS及びMnSeをインヒビターとして使
用した場合も得られる効果に差がなかった。
超えると磁気特性のばらつきが大きくなり、表面外観も
劣化することが分かる。この実施例では、表面除去を中
間焼鈍後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの
間で実施しても得られる効果に差はなかった。また、中
間焼鈍の際の雰囲気を変えて地鉄表層のSi濃度を変化さ
せても得られる効果に差は見られなかった。さらに、用
いる素材として、MnS及びMnSeをインヒビターとして使
用した場合も得られる効果に差がなかった。
【0044】実施例4 C:0.058 wt%,Si:3.28wt%,Mn:0.073 wt%,S:
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板を1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃、1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#80のエメリー紙で、
表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.35wt
%,2.50wt%,2.70wt%,2.90wt%,2.98wt%及び3.20
wt%になるように研削した後、再度冷間圧延を施して最
終的に0.22mm, 0.17mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層
濃度は上記濃度と変化なかった。その後、湿水素雰囲気
中で845 ℃、2min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗
布して後、N2:50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 ℃
〜1050℃間を20℃/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて12
00℃で10hの仕上げ焼鈍後、張力コーティングを施し、
800 ℃・1min の平坦化焼鈍を実施して、磁気特性を調
査した。表5に得られた結果を示し、この結果を表層Si
減少割合と磁気特性との関係で図4に示す。
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる1.8 mm厚の熱延板を1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃、1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#80のエメリー紙で、
表層のSi濃度が蛍光X線分析の強度から換算して2.35wt
%,2.50wt%,2.70wt%,2.90wt%,2.98wt%及び3.20
wt%になるように研削した後、再度冷間圧延を施して最
終的に0.22mm, 0.17mmに仕上げた。最終冷延板のSi表層
濃度は上記濃度と変化なかった。その後、湿水素雰囲気
中で845 ℃、2min 間の脱炭焼鈍後、MgO スラリーを塗
布して後、N2:50%,H2:50%の混合雰囲気中で800 ℃
〜1050℃間を20℃/hで昇温後、H2雰囲気に切り替えて12
00℃で10hの仕上げ焼鈍後、張力コーティングを施し、
800 ℃・1min の平坦化焼鈍を実施して、磁気特性を調
査した。表5に得られた結果を示し、この結果を表層Si
減少割合と磁気特性との関係で図4に示す。
【0045】
【表5】
【0046】表5及び図4より、0.22mm, 0.17mm仕上げ
材とも表層減少割合が10%を超えると磁気特性が劣化す
ることが分かる。この実施例では、表面除去を中間焼鈍
後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの間で実
施しても得られる効果に差はなかった。
材とも表層減少割合が10%を超えると磁気特性が劣化す
ることが分かる。この実施例では、表面除去を中間焼鈍
後に実施したが、この除去を脱炭焼鈍するまでの間で実
施しても得られる効果に差はなかった。
【0047】実施例5 C:0.058 wt%,Si:3.28wt%,Mn:0.073 wt%,S:
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる 1.8mm厚の熱延板を1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#1000, 320, 180, 60
及び16の種々のエメリー紙で、表層のSi濃度が蛍光X線
分析の強度から換算していずれも3.20wt%になるように
研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に0.17mmに仕
上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度と変化なか
った。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2min 間の脱
炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:50%,H2:
50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃/hで昇温
後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上げ焼鈍
後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の平坦化
焼鈍を実施をして、磁気特性を調査した。表6に得られ
た結果を示し、この結果を表面粗さと磁気特性との関係
で図5に示す。
0.023 wt%,Al:0.022 wt%及びN:0.0098wt%を含有
する組成よりなる 1.8mm厚の熱延板を1000℃、1min 間
の焼鈍を施した後、酸洗し、次いで冷間圧延により中間
板厚1.25mmにしたあと、1100℃, 1min 間の中間焼鈍を
施し、酸洗した。該板の表層のSi濃度が深さ方向に変化
していたことから、その後表面を#1000, 320, 180, 60
及び16の種々のエメリー紙で、表層のSi濃度が蛍光X線
分析の強度から換算していずれも3.20wt%になるように
研削した後、再度冷間圧延を施して最終的に0.17mmに仕
上げた。最終冷延板のSi表層濃度は上記濃度と変化なか
った。その後、湿水素雰囲気中で845 ℃,2min 間の脱
炭焼鈍後、MgO スラリーを塗布してからN2:50%,H2:
50%の混合雰囲気中で800 〜1050℃間を20℃/hで昇温
後、H2雰囲気に切り替えて1200℃で10hの仕上げ焼鈍
後、張力コーティングを施し、800 ℃・1min の平坦化
焼鈍を実施をして、磁気特性を調査した。表6に得られ
た結果を示し、この結果を表面粗さと磁気特性との関係
で図5に示す。
【0048】
【表6】
【0049】表6及び図5より、表層減少割合が10%以
内であっても研削時の表面粗さが3μm を超えるか又は
0.05 μm 以下になると磁気特性が劣化することが分か
る。この実施例では、表面除去を中間焼鈍後に実施した
が、この除去を脱炭焼鈍するまでの間で実施しても得ら
れる効果に差はなかった。
内であっても研削時の表面粗さが3μm を超えるか又は
0.05 μm 以下になると磁気特性が劣化することが分か
る。この実施例では、表面除去を中間焼鈍後に実施した
が、この除去を脱炭焼鈍するまでの間で実施しても得ら
れる効果に差はなかった。
【0050】
【発明の効果】この発明によれば、脱炭焼鈍直前におけ
る鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃度との濃度差ΔSiを、該鋼
中Si濃度の20%以下にする処理を、脱炭焼鈍に先立って
施すことから、表面外観不良や磁気特性の不安定現象を
なくすことができ、安定して優れた特性をそなえる方向
性電磁鋼板の製造が可能となった。
る鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃度との濃度差ΔSiを、該鋼
中Si濃度の20%以下にする処理を、脱炭焼鈍に先立って
施すことから、表面外観不良や磁気特性の不安定現象を
なくすことができ、安定して優れた特性をそなえる方向
性電磁鋼板の製造が可能となった。
【0051】また、板厚が0.23mm以下の製品を製造する
場合には、上記ΔSiを10%以下とすることにより、薄物
方向性電磁鋼板の製造において二次再結晶を安定させ、
磁気特性の高い安定した電磁鋼板の製造が可能となっ
た。
場合には、上記ΔSiを10%以下とすることにより、薄物
方向性電磁鋼板の製造において二次再結晶を安定させ、
磁気特性の高い安定した電磁鋼板の製造が可能となっ
た。
【図1】この発明の実施例において表層Si減少割合が磁
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】この発明の実施例において表層Si減少割合が磁
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
【図3】この発明の実施例において表層Si減少割合が磁
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
気特性及び表面外観に及ぼす影響を示すグラフである。
【図4】この発明の実施例において表層Si減少割合が磁
気特性に及ぼす影響を示すグラフである。
気特性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】この発明の実施例において研削後の表面粗さが
磁気特性に及ぼす影響を示すグラフである。
磁気特性に及ぼす影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小原 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 鈴木 隆史 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内
Claims (4)
- 【請求項1】 けい素鋼スラブに熱間圧延を施し、1回
又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷延圧延を施して最終板
厚としたのち、脱炭焼鈍、次いで仕上げ焼鈍を施す一連
の工程により方向性電磁鋼板を製造するに際し、熱間圧
延から最終冷延に至るまでの間に少なくとも1回の焼鈍
を施す方法において、 脱炭焼鈍直前における鋼中Si濃度と地鉄表面Si濃度との
濃度差ΔSiを、該鋼中Si濃度の20%以下にする処理を、
脱炭焼鈍に先立って施すことを特徴とする磁気特性の安
定した方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1記載の方法において、処理が、
焼鈍を施された鋼板の地鉄表面に存在するSi欠乏層を除
去するものである磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の
製造方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2記載の方法において、最
終板厚0.23mm以下の鋼板を得る場合に、濃度差ΔSiを、
鋼中Si濃度の10%以下にする磁気特性の安定した方向性
電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 請求項3記載の方法において、除去後の
地鉄表面粗さRa を0.05μm 以上3μm 以下の範囲に満
足させる磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5335646A JPH07188775A (ja) | 1993-12-28 | 1993-12-28 | 磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5335646A JPH07188775A (ja) | 1993-12-28 | 1993-12-28 | 磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07188775A true JPH07188775A (ja) | 1995-07-25 |
Family
ID=18290933
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5335646A Withdrawn JPH07188775A (ja) | 1993-12-28 | 1993-12-28 | 磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07188775A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0775752A1 (en) * | 1995-11-27 | 1997-05-28 | Kawasaki Steel Corporation | Grain-oriented electrical steel sheet and method of manufacturing the same |
-
1993
- 1993-12-28 JP JP5335646A patent/JPH07188775A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0775752A1 (en) * | 1995-11-27 | 1997-05-28 | Kawasaki Steel Corporation | Grain-oriented electrical steel sheet and method of manufacturing the same |
US5853499A (en) * | 1995-11-27 | 1998-12-29 | Kawasaki Steel Corporation | Grain-oriented electrical steel sheet and method of manufacturing the same |
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---|---|---|---|
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