JPH0718373A - 耐食性に優れた高強度鋼材及びその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた高強度鋼材及びその製造方法

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JPH0718373A
JPH0718373A JP16223593A JP16223593A JPH0718373A JP H0718373 A JPH0718373 A JP H0718373A JP 16223593 A JP16223593 A JP 16223593A JP 16223593 A JP16223593 A JP 16223593A JP H0718373 A JPH0718373 A JP H0718373A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 重量%で、C :0.06% 以下、Si:1.5%以下、
Mn:2.0%%以下、P :0.05% 以上、0.10% 以下、S :0.
005%以下、Cu:0.10% 以上 0.60%以下、Ni:0.05% 以
上、0.60% 以下、Mo:0.10%以上、0.30% 以下、Cr:0.06
% 以下を含有し、かつ、以下の(A)式を満足し、残部
が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、フェライ
ト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイトのいずれ
かの組織を主体とする耐食性に優れた鋼材。 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) 【効果】良好な加工性と優れた耐食性とを兼備した自動
車用高強度熱延鋼板として好適な耐食性に優れた高強度
鋼材及びその製造方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車の構造材料、特
にゲージダウンによる軽量化を目的とした足廻り部品な
どに使用される耐食性に優れた高強度鋼材及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車業界においては、省エネルギー化
や地球環境汚染防止のために車体軽量化により燃費を向
上させることが急務となっている。このための対策とし
て素材である薄鋼板を高強度化してゲージダウンする努
力が進められている。
【0003】このような用途に用いられる構造材料はプ
レス加工されるため、適用される材料には、高強度でか
つ従来材と同等以上の加工性を有することが要求され
る。加えて鉄鋼材料が基本的に錆びることを考慮するな
らば、使用材料のゲージダウンを更に進めるためには耐
食性の向上が重要なポイントとなる。
【0004】そして、現在、自動車の耐用年数は自動車
の高級化とともに長期化しており、自動車メーカーは高
強度で加工性が良く、かつ錆にくい特性の材料を指向し
ているのである。
【0005】材料自体の高強度化、及び高加工性付与に
関しては従来から多くの研究が行われ技術革新がめざま
しいが、耐食性の向上に関しては材料にめっきを施すこ
とが一般的に行われており、材料自体の耐食性向上に関
する研究はあまり多くはない。
【0006】めっきを施すことを前提とした技術として
は、耐食性に優れる高張力合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼
板に加工性を付与するものが提案されている(特開昭6
3−149321号や特公昭60−49698号な
ど)。
【0007】しかしながら、これらの技術では熱間圧延
後、連続溶融亜鉛めっきラインでめっきするため、製造
コストが高くなるという欠点を有しており、また、合金
化溶融亜鉛めっきによる加工性の劣化やアーク溶接時の
ブローホールの発生が避けられず、自動車部品に適用す
るためには、検査補修に多大な時間を要し、これが自動
車製造効率を低下させる要因となっており、従来からそ
の改善が求められていた。
【0008】上記欠点を補うものとして、自動車用材料
自体の耐食性を向上させようとする試みもなされてお
り、特公昭57−14748号及び特公昭60−958
4号では高耐食自動車用鋼板が提案されている。また、
神戸製鋼技法Vol.42,No.3(1992),p
99では、P−Cu系の540N/mm2 級耐食性熱延
鋼板が発表されている。
【0009】特公昭60−9584号では、Cu:0.
26〜0.35%、P:0.005〜0.02%等を含
有する成分系で、高耐食性自動車用鋼板が得られるとし
ている。しかしながらPの含有量が0.02%と低いた
め、鋼板の腐食量及び腐食深さを低減する効果は不十分
である。また、ここでは腐食の評価方法として塩水噴霧
試験を行っているが、この方法は自動車用鋼板の耐蝕性
を評価するには促進性が強すぎ、実環境における耐食性
をシミュレートし得るとは考えにくい。
【0010】また、特公昭57−14748号及び特公
昭60−9584号のいずれも、自動車製造上不可欠な
加工性に関して十分な配慮がなされていない。さらに、
神戸製鋼技法Vol.42,No.3(1992),p
99では、P,Cuの複合添加により、従来の熱延鋼板
よりも耐食性の優れた鋼板を製造できるとしている。し
かし、これによればP−Cu系の腐食の度合いは従来鋼
の8割程度であり、耐食性改善効果が要求に対して不十
分である。さらにまた、特公昭57−14748号及び
特公昭60−9584では、自動車製造上不可欠な加工
性に関して充分な配慮がなされていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来の方
法では自動車用鋼板としての耐食性、加工性などの機能
を損なうことなく高強度化によるゲージダウンが可能と
なる鋼板を経済的に得る技術は確立されていない。
【0012】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、良好な加工性と優れた耐食性とを兼備し、自
動車用熱延鋼板として好適な耐食性に優れた高強度鋼材
及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1に、重量
%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 Cr:0.06%以下 を含有し、かつ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及
び不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト+ベ
イナイト、フェライト+マルテンサイトのいずれかの組
織を主体とすることを特徴とする耐食性に優れた高強度
鋼材を提供する。
【0014】 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) 第2に、重量%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Cr:0.06%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 を含有し、さらに、Ca、Ti、Rem、Zrの少なく
とも1種をSに対し等量以上になるように含有し、か
つ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及び不可避的不
純物からなる組成を有し、フェライト+ベイナイト、フ
ェライト+マルテンサイトのいずれかの組織を主体とす
ることを特徴とする耐食性に優れた高強度鋼材を提供す
る。
【0015】 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) 第3に、重量%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 Cr:0.06%以下 Nb:0.005%以上、0.020%以下 を含有し、かつ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及
び不可避的不純物からなる組成を有し、フェライト+ベ
イナイト、フェライト+マルテンサイトのいずれかの組
織を主体とすることを特徴とする耐食性に優れた高強度
鋼材を提供する。
【0016】 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) 第4に、上記いずれかの組成の鋼を熱間圧延し、Ar3
変態点以上で仕上げ圧延を行い、圧延終了温度からフェ
ライト生成温度範囲まで50℃/sec以上の冷却速度
で冷却し、その後5秒以上空冷又は保持し、その後50
0℃以下まで50℃/sec以上の冷却速度で冷却し、
500℃以下の温度であってベイナイト変態温度領域又
はMS 点以下の温度で巻取り、組織をフェライト+ベイ
ナイト、又はフェライト+マルテンサイトを主体とする
ものにすることを特徴とする耐食性に優れた高強度鋼材
の製造方法を提供する。
【0017】なお、上記(A)式において、C,Mn,
Cr,P,Cu,Moは、これら各元素の重量%を示す
ものである。本願発明者らは、前記課題を解決するため
に、鋼材の耐食性について種々の成分系に対する詳細な
検討の結果、P−Cu系では最大腐食深さで従来鋼の8
割程度までしか改善されないことを把握した。その結果
を踏まえてさらに検討を重ねた結果、さらに耐食性を向
上させるためには、P,Cuの共存下でMoを0.10
%以上含有させることが極めて有効であることを見出し
た。すなわち、Moを適量添加することにより最大腐食
深さが従来鋼の6割以下となり、耐食性の改善効果が極
めて大きい。これらの検討結果から、成分組成範囲を上
記特定の範囲に規定すると共に、前述の(A)式を満足
する組成を有し、フェライト+ベイナイト、フェライト
+マルテンサイトのいずれかを主体とする組織を有すれ
ば、加工性を損なうことなく耐食性の優れた高強度の鋼
材を得ることができることを見出した。また、このよう
な組織及び機械的特性を有する鋼材は、圧延終了後の冷
却速度、及び巻取温度を特定範囲に規定することにより
製造することができることを見出した。上記構成を有す
る本発明は、本願発明者らのこのような知見に基づいて
なされたものである。
【0018】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず本発明に係る鋼板の化学成分の組成範囲の限定理由を
説明する。 C: Cは、耐食性に関し悪影響を及ぼす元素の1つで
あり、腐食減量、最大浸食深さの増加に結び付く。同時
に、溶接性の観点からも望ましくない元素である。した
がって、Cは強度確保に必要な最低限の添加量とする必
要があり、その観点からCの含有量は0.06%以下に
規定される。下限については特に規定しないが、ベイナ
イト又はマルテンサイトによる変態強化を利用して高い
強度を得るためには、その含有量が0.02%以上であ
ることが望ましい。
【0019】Si: Siは加工性を劣化することなく
フェライトを固溶強化し、強度−加工性のバランスを高
くする作用を有する。固溶強化元素として利用する場合
には、要求される強度レベルに応じて添加すべきであ
り、下限は特に規定しない。一方、Siは耐食性に対し
ては無害であるが、1.5%を超える過剰な添加は表面
のスケール性状および溶接性を劣化させる。このような
観点からSiの含有量は1.5%以下に規定される。
【0020】Mn: Mnは高強度化に作用する。下限
は特に規定しないが、固溶強化元素として利用する場合
には、要求される強度レベルに応じて添加すべきであ
り、その含有量は0.5%以上であることが望ましい。
一方、Mnはその含有量が2.0%を超えると耐食性に
対し悪影響を及ぼす。さらに、2.0%を超える添加は
溶接性の面からも望ましくない。従って、Mnの含有量
を2.0%以下に規定する。
【0021】P: Pは、本発明において最も有効な元
素のひとつであり耐食性の向上と高強度化に作用する。
特に、孔食に対する腐食速度を著しく低下させる。この
ような作用を果たすためには0.05%以上必要であ
る。しかしながらPを0.10%を超えて添加すると粒
界に偏析し、2次加工脆性を発生し易くする。従って、
Pの含有量を0.05%以上、0.10%以下に規定す
る。
【0022】S: Sは、Mnと化合して硫化物を形成
し加工性、特に伸びフランジ性を低下させる不純物元素
であるため極力低減することが望ましい。さらにMnS
は鋼板が腐食する環境において溶出しやすい介在物であ
り耐食性に悪影響を及ぼすため、このような介在物を生
成する元素であるSは極力低減させることが重要であ
る。このように材料の耐食性はS量の低減とともに向上
するが、製鋼での経済性を考慮してSの含有量を0.0
05%以下に規定する。
【0023】Mo: Moは、本発明において最も有効
な元素のひとつであり耐食性の向上に作用する。P及び
Cuの複合添加により従来の鋼材よりも耐食性の優れた
鋼材を製造できることは前述の神戸製鋼技法Vol.4
2,No.3(1992),p99でも述べられている
が、本願発明者らは、種々の成分系を検討した結果、P
−Cu系にMoを複合添加することにより、耐食性、特
に耐孔食性を向上させ得るという知見を得た。実環境を
シミュレートするため、促進試験としては比較的マイル
ドな試験方法(0.5%塩水噴霧を含む乾湿繰り返し試
験)により長期の評価を行った結果、P−Cu系でも耐
食性が確実に向上するが、P,Cu共存下で0.1%以
上のMoを複合添加することにより、最大腐食深さ比が
20%以上改善されることが判明した。Mo含有量の増
加に伴い耐食性は向上するがその含有量が0.10%未
満ではその効果が不十分である。一方、過度の添加は無
意味であると共に不経済である。このため、0.30%
をその含有量の上限とした。
【0024】Cu: Cuは、P、Moと同様に本発明
において最も有効な元素の一つであり、Pとの複合添加
により耐食性の向上に作用する。特に孔食に対する腐食
速度を著しく低下させる。このような作用を発揮するた
めにはその含有量を0.10%以上にする必要がある。
しかしながら過剰に添加すると、熱間圧延において赤熱
脆化により表面疵が発生する。これはNiの添加で防止
できるが、Cu、Niいずれも合金コストを高くする。
これらを考慮してその含有量の上限を0.60%に規定
する。
【0025】Ni: Niは、上述したようにCuの添
加量を高めた場合に発生する赤熱疵化を防止する作用を
有する。赤熱疵化の防止に有効な量はCu含有量の1/
2以上である。しかし、Cu含有量を超えた添加は無意
味であると同時に不経済である。従って、Niの含有量
は0.05%以上、0.60%以下に規定される。
【0026】Cr: Crは、塩化物イオンが存在する
環境下においては孔食をもたらす元素であり、耐食性の
観点からは好ましくない。製造上不可避的に入ってきた
場合には、耐食性に影響を及ぼさない範囲、即ち0.0
6%以下とする必要がある。
【0027】これらの元素の他、以下の元素を含有させ
ることもできる。 Nb: Nbは組織の微細化に有効な添加元素である。
加工性を損なわずに高い強度を得るためには、組織の微
細化が有効である。このような微細化効果を発揮するた
めには、その含有量を0.005%以上とする必要があ
る。一方、0.020%を超えて多量に添加しても、組
織微細化の効果は飽和し、無意味であると同時に不経済
である。従って、Nbの含有量は0.020%以下に抑
える必要がある。
【0028】Ca、Ti、REM、Zr: これらの元
素を含有させることにより、耐食性に悪影響を及ぼすM
nSを低減させることができる。また、硫化物の形態制
御という観点からもこれらの元素の添加は有効であり、
伸びフランシ性を向上させることができる。このような
効果を発揮するためには、これらの合計がSに対して等
量以上である必要がある。従って、これらを含有させる
場合には、Sに対して等量以上とする。なお、REMは
希土類金属元素を示す。
【0029】なお、上記成分以外の不可避的に含まれる
不純物は鋼の特性に実質的に影響を及ぼさない量である
限り許容される。次に組織の限定理由について説明す
る。
【0030】発明者らは組織と耐食性に関する研究を行
い、パーライト等粗大な炭化物を含む組織は耐食性、特
に腐食深さに対し悪影響を及ぼすという知見を得た。従
って、本発明ではパーライト等の粗大な炭化物を含む組
織を除いた組織を対象としている。具体的には、フェラ
イト+ベイナイト、フェライト+マルテンサイトのいず
れかを主体とした組織を対象とし、微細な炭化物のみを
許容する。
【0031】本発明では、上記成分組成の限定及び組織
の限定に加え、以下の条件式(A)を満足することを要
件としている。すなわち、上述のように成分組成及び組
織を限定しただけでは必ずしも十分な耐食性が得られな
い場合があるが、条件式(A)を満足する組成を有すれ
ば確実に良好な耐食性を得ることができるのである。こ
れらの式は、本願発明者らが確実に良好な耐食性を得る
ことができる組成範囲を見出すべく膨大な量の腐食試験
を実施した結果導かれたものである。
【0032】 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) (ただし、C,Mn,Cr,P,Cu,Moは、これら
各元素の重量%を示す。)次に熱間圧延条件について説
明する。
【0033】圧下量の増大は、オーステナイト粒を微細
化し、かつその組織を加工組織としておくことで、圧延
に引き続く冷却の際に、変態して形成されるフェライト
組織を微細均一化し、耐食性を向上することに作用す
る。粒度番号10以上の微細フェライトを得るために
は、連続仕上げ熱間圧延での圧下量を80%以上とする
必要がある。さらに90%以上が好ましい。上限は特に
規定しないが圧延機の能力により決定されおよそ98%
程度である。
【0034】仕上圧延温度は、フェライト組織を微細均
一化するためには低温であることが望ましい。しかし、
Ar3 以下とすると加工フェライトが発生し加工性を劣
化させる。従って、仕上圧延温度はAr3 点以上に規定
する。仕上げ圧延の開始温度については特に限定される
ものではないが、組織の微細均一化を図るためには低温
であることが望ましい。通常の連続圧延で圧下量を80
%以上とするためにはAr3 +100〜300℃程度と
なる。
【0035】圧延終了からフェライト生成温度範囲まで
50℃/sec以上の冷却速度で冷却することは、粒度
番号10以上の微細フェライトを得るために必要であ
る。さらに、耐食性を確保するために必要な添加元素で
あるPは500〜600℃の範囲で結晶粒界に偏析し加
工性を極端に劣化させる。そのため、この偏析温度範囲
でPの偏析を回避するためには冷却速度を50℃/se
c以上とする必要がある。冷却速度の上限は特に限定さ
れるものではなく、圧延機の能力により決定され、通常
500℃/sec程度である。
【0036】組織をフェライト+ベイナイト、又はフェ
ライト+マルテンサイトにするためには、上記冷却速度
でフェライト生成温度範囲まで冷却し、その温度範囲に
て5秒以上空冷又は保持し、その後500℃以下まで5
0℃/sec以上の冷却速度で冷却する。
【0037】巻取り温度は、Pの偏析を抑制し伸びフラ
ンジ性、張り出し性、耐2次加工脆化などの加工性の向
上のために制御する必要がある。巻取り温度が500℃
を超えるとPの粒界への偏析が生じ、加工性が劣化す
る。そのため巻取り温度の上限を500℃とする。組織
をフェライト+ベイナイトにする場合には、巻取り温度
をベイナイト変態温度領域にする必要があり、フェライ
ト+マルテンサイトにする場合には、マルテンサイト変
態温度領域にする必要がある。更に、材料特性として伸
びフランジ性が必要とされる場合には、スキンパス圧延
を伸張率0.5〜3.0%の範囲で加えることも可能で
ある。
【0038】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について説明
する。表1に示す化学成分の鋼を溶製した。このうち番
号1から番号20までが本発明に規定する成分・組成及
び組織を満足する鋼であり、番号21から32までが本
発明の範囲外の比較鋼である。
【0039】番号1〜20の本発明鋼を、フェライト+
ベイナイト(F+B)、フェライト+マルテンサイト
(F+M)のいずれかの組織になるように、仕上げ圧延
温度を830〜900℃、巻き取り温度を500℃以下
とした制御圧延を行い、板厚2.0〜3.2mmの薄鋼
板を製造した。番号21〜32の比較鋼については、仕
上げ圧延温度をAr3 点以上とし、冷却速度、巻取温度
は特に制御せず、通常の圧延・冷却を行って板厚2.0
〜3.2mmの薄鋼板とした。その際に得られた組織の
同定の結果も表1に併記した。
【0040】
【表1】
【0041】鋼の耐食性を調査するために、これらの鋼
を用いて表2に示す腐食条件の腐食試験を240サイク
ルまで実施し、その後表面に発生した錆を酢酸2アンモ
ニウムで除去後、最大腐食深さをポイントマイクロメー
タで調査した。
【0042】
【表2】
【0043】十分な耐食性を有しているとするために
は、このような最大腐食深さが従来使用されてきた一般
の材料の60%以下であることが必要であるため、比較
鋼として用いた商用鋼である番号21の最大腐食深さの
値を100として、最大腐食深さ比をとり、その値によ
って耐食性を評価した。この値が60を超えた場合には
耐食性が不十分とし、この値が60以下の場合には耐食
性が十分であるとした。その結果を表1に併せて示す。
表1では、各鋼の最大腐食深さ比の値と、耐食性試験の
判定結果(耐食性十分の場合は○、耐食性不十分の場合
は×で示す)を示した。
【0044】表1に示すように、本発明の範囲内の鋼
(番号1〜20)はいずれも最大腐食深さ比が60以下
であり耐食性○の判定であったが、本発明の範囲から外
れる比較鋼はいずれも最大腐食深さ比が60を超え、耐
食性の判定は×であった。
【0045】この結果をまとめると、図1のようにな
る。図1は横軸に条件式(A)の値をとり、縦軸に最大
腐食深さ比の値をとって、各鋼におけるこれらの値をプ
ロットしたものである。図中で白抜きが本発明鋼であ
り、黒く塗り潰されているのが比較鋼である。また、黒
塗りのうち丸印が従来の商用鋼、三角印がP−Cu系の
鋼で、かつ組織が本発明鋼と同様フェライト+ベイナイ
トからなるもの、四角印が本発明に規定する成分範囲を
満たし、かつ計算式(A)を満たしているが、組織がフ
ェライト+パーライトのものである。この図から、本発
明で規定する成分範囲を満たし、かつ計算式(A)を満
たし、さらに組織がフェライト+ベイナイト、フェライ
ト+マルテンサイトである本発明鋼は、いずれも充分な
耐食性を有していることが明確に確認される。これに対
して、比較鋼のうち三角印で示したP−Cu系フェライ
ト+ベイナイト鋼は確かに従来鋼と比較して良好な耐食
性を示すが、Moを添加した本発明鋼は、P−Cu系フ
ェライト+ベイナイト鋼をさらに2割程度上回る高い耐
食性を有しており、P及びCuの複合添加のみでは充分
な耐食性が得られないことは明らかである。また、本発
明鋼の成分範囲と条件式(A)を満たしてもパーライト
を含む組織の場合には、本発明鋼と比較して最大腐食深
さが大きく、組織制御が重要であることが確認された。
【0046】このように、本発明鋼の耐食性は比較材料
に比べ明らかに優れていることが確認された。また、上
述したように条件式(A)を導入することにより、耐食
性の実験結果を正確に評価することができ、本発明にお
いて初めて見出された条件式(A)に基づいて鋼の耐食
性を充分な精度で評価することができることが確認され
た。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば良
好な加工性と優れた耐食性とを兼備した自動車用高強度
熱延鋼板として好適な耐食性に優れた高強度鋼材及びそ
の製造方法が提供される。本発明の鋼材を熱延鋼板に適
用する場合には、従来の熱延鋼板と比較して、耐食性の
優れた自動車用熱延鋼板を低コストでかつ安定して製造
することができ、自動車業界で注目されている自動車の
長寿命化、安全性の向上に対して充分貢献でき、本発明
は工業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた鋼における条件式
(A)と最大腐食深さ比との関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉原 玲子 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 大和田 浩 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 堀 雅司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 Cr:0.06%以下 を含有し、 かつ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及び不可避的
    不純物からなる組成を有し、フェライト+ベイナイト、
    フェライト+マルテンサイトのいずれかの組織を主体と
    することを特徴とする耐食性に優れた高強度鋼材。 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) (ただし、C,Mn,Cr,P,Cu,Moは、これら
    各元素の重量%を示す。)
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Cr:0.06%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 を含有し、 さらに、Ca、Ti、Rem、Zrの少なくとも1種を
    Sに対し等量以上になるように含有し、 かつ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及び不可避的
    不純物からなる組成を有し、フェライト+ベイナイト、
    フェライト+マルテンサイトのいずれかの組織を主体と
    することを特徴とする耐食性に優れた高強度鋼材。 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) (ただし、C,Mn,Cr,P,Cu,Moは、これら
    各元素の重量%を示す。)
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.06%以下 Si:1.5%以下 Mn:2.0%以下 P :0.05%以上、0.10%以下 S :0.005%以下 Cu:0.10%以上、0.60%以下 Ni:0.05%以上、0.60%以下 Mo:0.10%以上、0.30%以下 Cr:0.06%以下 Nb:0.005%以上、0.020%以下 を含有し、 かつ、以下の(A)式を満足し、残部が鉄及び不可避的
    不純物からなる組成を有し、フェライト+ベイナイト、
    フェライト+マルテンサイトのいずれかの組織を主体と
    することを特徴とする耐食性に優れた高強度鋼材。 −175 C−30.2Mn−72.7Cr+125 P+31.3Cu+90.0Mo≧−35 ……(A) (ただし、C,Mn,Cr,P,Cu,Moは、これら
    各元素の重量%を示す。)
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に示す組
    成の鋼を熱間圧延し、Ar3 変態点以上で仕上げ圧延を
    行い、圧延終了温度からフェライト生成温度範囲まで5
    0℃/sec以上の冷却速度で冷却し、その後5秒以上
    空冷又は保持し、その後500℃以下まで50℃/se
    c以上の冷却速度で冷却し、500℃以下の温度であっ
    てベイナイト変態温度領域又はMS 点以下の温度で巻取
    り、組織をフェライト+ベイナイト、又はフェライト+
    マルテンサイトを主体とするものにすることを特徴とす
    る耐食性に優れた高強度鋼材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EA013946B1 (ru) * 2005-05-25 2010-08-30 Родольфо Дафико Бернардес Де Оливейра Композиционные материалы на основе природных алюмосиликатов и наполнителей, смешиваемых в щелочной среде, и технологический процесс их производства
CN110100033A (zh) * 2016-12-23 2019-08-06 Posco公司 材质偏差小且表面质量优异的高强度热轧钢板及其制造方法
CN111321354A (zh) * 2020-02-19 2020-06-23 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种x70m热轧钢带及其制造方法

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CN111321354A (zh) * 2020-02-19 2020-06-23 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种x70m热轧钢带及其制造方法
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