JPH07180970A - 真空高周波溶解炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 気密保持が容易に得られ、メンテナンスが容
易な樋装置を備えた真空高周波溶解炉が提供される。 【構成】 溶解炉２を傾動させて金属溶湯を出湯する傾
動式真空高周波溶解炉において、溶解炉２の出湯口８の
近傍に、出湯された溶湯を受け溶湯排出口12へ導く樋７
を有する樋装置６を配設し、該樋装置６は出湯された溶
湯を受ける第１の樋室９と、樋７により導かれた溶湯を
排出する第２の樋室10からなり、これらの樋室９、10を
外部と気密状態を保持し、第１の樋室９のみが回動でき
るカップリング機構11により連結し、第２の樋室10に溶
湯排出口12を密封するための真空ゲートバルブ13を取付
けると共に、樋７の上部に加熱用ヒータ16を設けたもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、傾動式真空高周波溶解
炉において、出湯された溶湯を受け溶湯排出口へ導く樋
装置を備え、特にＡ１ーＬｉ合金のような活性な金属、
合金の溶解に好適に使用される真空高周波溶解炉に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】合金元素としてリチウムを含有するＡ１
ーＬｉ合金等活性な金属、合金の溶解は、酸化や水素ガ
ス吸収による耐火物との反応を防ぐため、真空雰囲気あ
るいはアルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気で行わ
れ、溶解炉としては、通常炉体を傾動させて金属溶湯を
出湯する傾動式の真空高周波溶解炉が使用される。傾動
式溶解炉から出湯された溶湯は、炉の出湯口近傍に配設
された樋装置で受けて、ここから溶湯排出口へ導かれ、
この排出口から排出されて溶湯処理が行われる。このよ
うに溶解が真空炉中で行われても、出湯以降の雰囲気を
クリーンに保たなければ溶融金属の酸化やガス吸収が生
じるので、樋装置の気密保持機構は重要である。また高
温の溶湯が通過する樋の点検、保全は不可欠であるか
ら、樋装置から樋の取り外しを簡単に行える機構も必要
である。

【０００３】真空高周波溶解炉は、図６に示すように、
真空蓋３を有する真空チャンバー１内に点線で示される
高周波溶解炉２を配置してあり、一般に溶解作業開始に
あたって真空チャンバー１内を真空に引いたのち、チャ
ンバー１内に不活性ガスを封入し、不活性ガス雰囲気中
で溶解作業を行う。出湯に際しては、油圧シリンダ４を
作動させて回転軸５を中心として真空チャンバー１とと
もに溶解炉２を傾動させ、出湯口８から樋装置６の樋７
内に出湯する。

【０００４】非酸化性雰囲気を保つ樋装置６には気密構
造が採用されているが、従来の樋装置は、図７ないし図
９に示すように、出湯された溶湯を受ける第１の樋室2
5、樋７により導かれた溶湯を排出する第２の樋室26お
よび樋７を予熱するための加熱室23から構成されてお
り、出湯開始前、樋７をスライドバー22により加熱室23
内に移動させ、ついでゲートバルブ24を閉じて加熱室23
および第１の樋室25内を排気したのち、加熱室23内で樋
７の予熱を行う。

【０００５】出湯にあたっては、加熱室23および第１の
樋室25内に不活性ガスを導入したのちゲートバルブ24を
開き、樋７をスライドバー22により加熱室23から図７お
よび図８に示す位置に移動させる。この後、炉体を傾動
させると、加熱室23、第１の樋室25、ゲートバルブ24、
およびゲートバルブ24と第２の樋室26との間に位置する
中間樋室30は、炉体の傾動とともにパッキング29により
気密状態を保持しながら回動する。一方、樋７およびフ
ランジ28を有する第２の樋室26は炉体の傾動に対して固
定されており、炉体の傾動により図９に示すように出湯
口８から出湯された溶湯は、樋７に導かれて溶湯排出口
２７から排出され、溶湯排出口２７に接続された溶湯処
理室（図示せず）内で処理される。なお、前記加熱室2
3、第１の樋室等の回動の中心は図９に示すＸである。

【０００６】しかしながら、上記従来の樋装置では、
第１の樋室25の回動中心Ｘと第２の樋室26の軸芯が完全
に一致しないとパッキング29による気密保持が難しい。
出湯にあたり加熱室23および第１の樋室25内に不活性
ガスを導入したのちゲートバルブ24を開くと、第２の樋
室26が大気状態であるため出湯雰囲気が汚染される。
樋７の点検、保全を行う場合は樋装置を分解する必要が
あり、作業が面倒である。ゲートバルブ24として大口
径のものが必要となる。樋７が移動式となっているた
め装置全体の構造が複雑である等の問題点がある。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解消するためになされたものであり、その目的は樋の
予熱機構が簡素化されると共に、予熱樋装置内の気密性
の保持が容易に行なえ、しかも樋装置からの樋の取り出
し点検、保守作業も簡単に行える樋装置を備えた真空高
周波溶解炉を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１記載の
発明は、炉体を傾動させて金属溶湯を出湯する傾動式真
空高周波溶解炉において、炉の出湯口近傍に、出湯され
た溶湯を受け溶湯排出口へ導く炉体の傾動に対して固定
された樋を有する樋装置を配設し、該樋装置は出湯され
た溶湯を受ける第１の樋室と樋により導かれた溶湯を排
出する第２の樋室からなり、これらの樋室を、外部と気
密状態を保持するよう互いに結合するとともに気密状態
を保持したまま第１の樋室のみが回動できるカップリン
グ機構により連結すると共に、樋の近傍に樋加熱用ヒー
タを設けたことを特徴とするものである。

【０００９】本発明の請求項２記載の発明は、前記カッ
プリング機構が気密保持用パッキングを備え、第１の樋
室と第２の樋室とがベローズを介して連結されているこ
とを特徴とするものである。更に請求項３記載の発明
は、第１の樋室の端部に樋室開閉用のフランジを設け、
第１の樋室の端部から樋引出し用ガイドを延設して、前
記フランジを開けて樋を引き出すようにしたことを特徴
とするものである。

【００１０】

【作用】本発明の請求項１記載の真空高周波溶解炉は、
出湯に先立ち先ず真空ゲートバルブを閉じて樋装置内を
排気して真空とする。この状態で樋の近傍に設けられて
いるヒータに通電して樋の予熱を行う。出湯にあたって
は、樋装置内に不活性ガスを供給した後、真空ゲートバ
ルブを開く。この後、炉体を傾動させると、第２の樋室
は固定され、カップリング機構を介して第１樋室が炉体
と共に傾動する。この結果、第２の樋室に固定され、予
熱された樋に溶湯が出湯され、樋に出湯された溶湯は樋
に導かれて第２の樋室に至り、ここの溶湯排出口から外
部に排出される。

【００１１】また請求項２記載の発明では、炉体を傾動
させた時に、回動する第１の樋室９と固定されている第
２の樋室の間にベローズが取付けられているので、両室
を連結するカップリング機構に多少の芯ずれがあったと
しても、ベローズにより吸収されリークが生じることな
く真空状態が保持される。

【００１２】更に請求項３記載の発明では、樋の点検を
行う場合に、第１の樋室の端部に設けられた樋室開閉用
フランジを開き、第１の樋室の端部に延設された樋引出
し用ガイドに樋を引き出して、樋装置の外部で樋の点検
や保守を行なうことができる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を図１ないし図６を参
照して説明する。樋装置６は図１に示すように溶解炉の
出湯口８の近傍に位置し、樋装置６内には樋７が配設さ
れている。樋装置６は、出湯口８より出湯された溶湯を
受ける第１の樋室９と樋７により導かれた溶湯を排出す
る第２の樋室10とからなり、これらの樋室９、10を、外
部と気密状態を保持するよう互いに結合するとともに気
密状態を保持したまま第１の樋室９のみが回動できるよ
うカップリング機構11により連結されている。カップリ
ング機構11は、図５に詳細を示すように、気密保持用パ
ッキング14を備え、パッキング14によって気密性を維持
しながら第１の樋室９がパッキング14に当接して回動す
るようになっている。また、第１の樋室９と第２の樋室
10とはベローズ15を介して連結されている。

【００１４】また図２および図４に示すように樋７の上
部には樋７に沿って加熱用ヒータ16が設けられ樋７を予
熱するようになっている。また図１および図２に示すよ
うに、第１の樋室９の端部には樋室開閉用フランジ18が
設けられ、この外側に樋引出し用ガイド19が取付けら
れ、樋室開閉用フランジ18を開いて樋装置６内の樋７を
外部に引出せるようになっている。更に樋装置６内の樋
７にはローラ20が取り付けられ、樋装置６内に設けたレ
ール21の上を転動するようになっている。また、図３お
よび図４に示すように、樋７と第１の樋室９との間には
ボールベアリング17が設けられ、出湯時に樋７が固定さ
れた状態で第１の樋室９の回動が円滑に行われるように
なっている。また図１に示すように第２の樋室10の溶湯
排出口12の下方には真空ゲートバルブ13が設けられ樋装
置６内の雰囲気の調整を行うようになっている。

【００１５】上記装置の動作について説明すると、出湯
に先立ち、まず第１の樋室９と第２の樋室10をカップリ
ング機構11により連結した状態で真空ゲートバルブ13を
閉じ、第１の樋室９および第２の樋室10内を図示しない
真空ポンプで排気し真空とする。この状態で図２および
図４に示すように、樋７の上部に設けられているヒータ
16に通電して樋７の予熱を行う。出湯にあたっては、第
１の樋室９内および第２の樋室10内に不活性ガスを供給
して非酸化性雰囲気に保持した後、溶湯排出口12を密封
している真空ゲートバルブ13を開く。

【００１６】この後、炉体を傾動させると、同時に第１
の樋室９が図３に示す回転軸芯Ｘを中心として回動す
る。この時、樋７と第１の樋室９との間にはボールベア
リング17が介在されているので、第１の樋室９の回動が
円滑に行われる。炉体が傾動すると、第２の樋室10に固
定されて、予熱されている樋７に溶湯が出湯口８から出
湯される。樋７に出湯された溶湯は樋７に導かれて第２
の樋室10に至り、溶湯排出口12から外部に排出される。

【００１７】樋７の点検を行う場合には、第１の樋室９
の端部に設けられた樋室開閉用フランジ18を開き、第１
の樋室９の端部に延設された樋引出し用ガイド19に樋７
を引き出す。この場合、図２に示すように、樋７はここ
に取付けたローラ20が樋装置６内に設けたレール21上を
転動しながら引出されるので、樋７の引出しが円滑に行
われる。

【００１８】上記装置では第２の樋室10の溶湯排出口12
に真空ゲートバルブ13を配置したから、樋装置全体の気
密性が確保され、真空排気後不活性ガス置換時の雰囲気
汚染がなく、真空ゲートバルブのサイズも小さくてす
む。回動する第１の樋室９と固定されている第２の樋室
10の間にはベローズ15が介設されているから、両室を連
結するカップリング機構11を形成するフランジに多少の
芯ずれがあったとしても、ベローズ15により吸収されリ
ークが生じることなく真空状態が保持される。また樋室
開閉用のフランジ１８を開くことにより、樋７を簡単に
引出して点検を行うことができるので樋の保守も容易で
ある。

【００１９】

【発明の効果】以上説明した如く本発明によれば、予熱
機構が簡素化されると共に、予熱樋装置内の気密性の保
持が容易に行なえ、しかも樋装置からの樋の取り出し点
検、保守作業も簡単に行え、特にＡ１ーＬｉ合金のよう
な活性な金属、合金の溶解に好適な真空高周波溶解炉を
得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例による樋装置を示す平面図であ
る。

【図２】図１の樋装置を示す正面図である。

【図３】図１の樋装置を示す右側面図である。

【図４】図１の樋装置を示す左側面図である。

【図５】本発明の実施例による樋装置内の連結機構を示
す要部断面図である。

【図６】本発明の真空高周波溶解炉を示す右側面図であ
る。

【図７】従来の真空高周波溶解炉の樋装置を示す平面図
である。

【図８】図７の樋装置を示す正面図である。

【図９】図７の樋装置を示す右側面図である。

【符合の説明】 １ 真空チャンバー ２ 高周波溶解炉 ３ 真空蓋 ４ 油圧シリンダ ５ 回転軸 ６ 樋装置 ７ 樋 ８ 出湯口 ９ 第１の樋室 10 第２の樋室 11 カップリング機構 12 溶湯排出口 13 真空ゲートバルブ 14 パッキング 15 ベローズ 16 加熱用ヒータ 17 ボールベアリング 18 樋室開閉用フランジ 19 樋引出し用ガイド 20 ローラ 21 レール

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 炉体を傾動させて金属溶湯を出湯する傾
   動式真空高周波溶解炉において、炉の出湯口近傍に、出
   湯された溶湯を受け溶湯排出口へ導く炉体の傾動に対し
   て固定された樋を有する樋装置を配設し、該樋装置は出
   湯された溶湯を受ける第１の樋室と樋により導かれた溶
   湯を排出する第２の樋室からなり、これらの樋室を、外
   部と気密状態を保持するよう互いに結合するとともに気
   密状態を保持したまま第１の樋室のみが回動できるカッ
   プリング機構により連結すると共に、樋の近傍に樋加熱
   用ヒータを設けたことを特徴とする真空高周波溶解炉。
2. 【請求項２】 カップリング機構が気密保持用パッキン
   グを備え、第１の樋室と第２の樋室とがベローズを介し
   て連結されている請求項１記載の真空高周波溶解炉。
3. 【請求項３】第１の樋室の端部に樋室開閉用のフランジ
   を設け、第１の樋室の端部から樋引出し用ガイドを延設
   して、前記フランジを開けて樋を引き出すようにした請
   求項１記載の真空高周波溶解炉。