JPH07179873A - セラミックス系摺動部材 - Google Patents

セラミックス系摺動部材

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JPH07179873A
JPH07179873A JP34633693A JP34633693A JPH07179873A JP H07179873 A JPH07179873 A JP H07179873A JP 34633693 A JP34633693 A JP 34633693A JP 34633693 A JP34633693 A JP 34633693A JP H07179873 A JPH07179873 A JP H07179873A
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sliding
ceramic
sliding member
polymer
composite material
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Application number
JP34633693A
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English (en)
Inventor
Seiji Funatani
清司 鮒谷
Hiroshi Izumida
寛 泉田
Kaoru Murabe
馨 村部
Takao Nishioka
隆夫 西岡
Akira Yamakawa
晃 山川
Kenji Matsunuma
健二 松沼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自らの摺動面及び相手部材の摺動面に研削や
研磨等の機械加工を施さなくても、潤滑剤中で摺動する
相手部材との摩擦係数を低減させて良好な摺動特性を得
ることができ、しかも相手部材の表面粗さを慣らし運転
中又は摺動初期に向上させることができるセラミックス
系摺動部材を提供する。 【構成】 潤滑剤中でローラー2等の相手部材と摺動す
るチップ1等のようなセラミックス系摺動部材であっ
て、相手部材との摺動面が機械加工を施されていない焼
結肌のセラミックス材と、セラミックス材の少なくとも
相手部材との摺動面に設けられ、固体潤滑材としての金
属化合物の粉末粒子がポリマーに分散した複合材被膜と
からなるセラミックス系摺動部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、潤滑油のような潤滑剤
の存在下で使用される自動車エンジン部品あるいはコン
プレッサー部品等の摺動部材、特に金属の摺動面を有す
る相手部材と摺動するセラミックス系の摺動部材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、各種機械部品の摺動部におけ
る摩擦損失を低減させること、特に自動車エンジンのよ
うな内燃機関の動弁系等のように、摺動速度が低く且つ
高負荷の苛酷な摺動部品の摩擦損失を低減させることが
強く望まれている。
【0003】特に潤滑油等の潤滑剤存在下での使用条件
を考慮すると、一般には対向する摺動部品間の最小隙間
又は最小油膜厚さと、摺動部品の摺動面の性状が摺動特
性に大きな影響を与えるとされている。例えば、「油圧
と空気圧」第18巻、第4号、1987年の第247〜
258頁、あるいは自動車技術会編「学術講演会前刷集
924」1992年の第85〜88頁に記載されている
ように、潤滑の尺度を示す値として、下記式1により定
義される油膜パラメータΛがよく使用されている。
【0004】
【式1】 Λ=hmin/σ=hmin/(Rrms1 2+Rrms2 21/2 ただし、hminは対向する摺動部品間の最小隙間又は最
小油膜厚さ、σは対向する摺動部品の合成面粗さ、R
rms1は片方の摺動部品表面の自乗平均粗さ、Rrms2は他
方の摺動部品表面の自乗平均粗さを表す。
【0005】この油膜パラメータΛの値が3以上の場合
は流体潤滑状態、1以下の場合は境界潤滑状態、及び1
〜3の場合は流体潤滑と境界潤滑の混在した混合潤滑状
態であるとされ、Λの値が大きいほど摺動面間の接触が
緩和されて、摺動特性が良好になると言われている。従
って、同一摺動条件下では最小隙間又は最小油膜厚さh
minは一定であるため、2つの摺動面の表面粗さを小さ
くすることが摩擦係数の低減に有効である。
【0006】そこで、摺動部品の摺動面に高精度な超精
密仕上げ加工を施して表面粗さを出来るだけ低減させる
ことが行われている。しかし、例えば内燃機関の動弁系
部品のひとつであるカム等のように、曲面等の複雑形状
の表面に対しては高精度な超精密仕上げ加工は困難であ
り、又多大な時間と労力を要するため加工コストも極め
て高くなることから、このような摺動部品には通常の研
削加工による表面仕上げ加工のみを行うことが主流とな
っており、従って摩擦係数の低減がままならない現状で
ある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のような現状に対
して、本発明者らは、摺動部材の材質として摩擦係数が
小さく且つ耐摩耗性に優れたセラミックスを採用するこ
とで、摺動部品の摩擦損失の低減を図ってきた。しか
し、セラミックス系の摺動部材の場合においても、前記
のごとく摺動面の表面粗さを小さくすることが摩擦係数
の低減に有効であると考えられていたので、摺動面に鏡
面加工ないしは高精度な超精密仕上げ加工を施してい
た。
【0008】本発明は、かかる従来の事情に鑑み、自ら
の摺動面及び相手部材の摺動面にコスト高を招く研削や
研磨等の機械加工を施さなくても、潤滑剤中で摺動する
相手部材との摩擦係数を低減させて良好な摺動特性を得
ることができ、しかも相手部材の表面粗さを慣らし運転
中又は摺動初期に向上させることができるセラミックス
系摺動部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供するセラミックス系摺動部材は、潤滑
剤中で相手部材と摺動するセラミックス系摺動部材であ
って、相手部材との摺動面が機械加工が施されていない
焼結肌のセラミックス材と、セラミックス材の少なくと
も相手部材との摺動面に設けられ、固体潤滑材としての
金属化合物の粉末粒子がポリマーに分散した複合材被膜
とからなることを特徴とする。
【0010】本発明のセラミックス系摺動部材は、相手
部材との摺動面に研削や研磨等の機械加工を施していな
い、焼結肌のままのセラミックス材と、そのセラミック
ス材の少なくとも摺動面に形成された複合材被膜とから
なる。セラミックス材としてはモノリシックセラミック
ス焼結体が一般的であるが、繊維、ウイスカー、又は分
散粒子のいずれかで強化されたセラミックス複合材料で
あっても良い。
【0011】上記セラミックス材として使用できるモノ
リシックセラミックス焼結体としては、アルミナ、ジル
コニア、ムライト、スピネル等の酸化物、窒化ケイ素、
サイアロン、窒化アルミニウム、窒化チタン等の窒化
物、炭化ケイ素や炭化チタン等の炭化物、窒化ホウ素や
炭化ホウ素等のホウ化物、ケイ化チタン等のケイ化物等
を挙げることができる。
【0012】又、セラミックス複合材料としては、炭素
繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維等で強化した窒化
ケイ素や結晶化ガラス等の長繊維強化複合材料、炭化ケ
イ素ウイスカー等で強化したアルミナや窒化ケイ素等の
ウイスカー強化複合材料、窒化チタン粒子や炭化ケイ素
ナノ粒子等で強化した窒化ケイ素やアルミナ等の粒子分
散強化複合材料を挙げることができる。
【0013】これらのセラミックス材の中では、強度や
靭性、硬度、耐摩耗性等の点でZrO2、SiC、Si3
4、サイアロン、Al23、及びAlNが好ましく、
モノリシックセラミックス焼結体の場合はもちろん複合
材料の場合を含めて、これらの少なくとも1種を60体
積%以上含むことが好ましい。
【0014】セラミックス材の摺動面を被覆する複合材
被膜は、金属化合物の粉末粒子を分散したポリマーから
なる。かかる金属化合物/ポリマーの複合材被膜のポリ
マー中に分散相として含まれる金属化合物の粉末粒子
は、固体潤滑材としての性質を有することが必要であ
り、具体的にはMoS2、BN、CaF2、Cr23、M
oO3、及びB23の少なくとも1種が好ましい。
【0015】又、複合材被膜のポリマーは、金属化合物
の粉末粒子を保持するバインダーとしての役割を果すこ
とが必要であり、具体的にはポリアミドイミド、ポリイ
ミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファ
イド、及びジアリルフタレート樹脂の少なくとも1種が
好ましい。ただし、上記以外のポリマーの種類によって
は金属化合物粉末粒子を含む複合材被膜が軟質となり、
耐摩耗性を低下させる場合があるので、ポリマーの選択
には注意を要する。
【0016】本発明のセラミックス系摺動部材の製造
は、例えば以下の方法により行うことができる。焼結に
より所定形状のセラミックス材を作製し、その摺動面に
研磨や研削等の機械加工を施すことなく、摺動面が摺動
肌のままのセラミックス材を脱脂及び乾燥する。次に、
このセラミックス材の摺動面に、使用条件により選択し
た金属化合物の粉末粒子を液状ポリマー(未硬化樹脂又
は樹脂前駆物質若しくはそれらの溶液)に分散させた塗
料状懸濁液をスプレー、浸漬、刷毛塗り等により塗布し
た後、焼き付け又は自然乾燥させることにより複合材被
膜を形成する。
【0017】一方、本発明のセラミックス系摺動部材と
対向して摺動する相手部材は、一般的な機械部品におけ
る摺動部の構成材料である普通鋳鉄、合金鋳鉄、鋳鋼、
又はチル化等の表面処理を施した普通鋳鉄や鋳物材料、
あるいは軸受鋼や高速度鋼のような合金鋼等のほか、ア
ルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の現
在実用化されているあらゆる摺動用金属材料が使用可能
である。これら相手部材と本発明のセラミックス系摺動
部材との組み合わせを、使用条件、要求される摺動特
性、耐久性等に合わせて適切に選択する。
【0018】
【作用】前記の油膜パラメータΛの値が3未満になる
と、摺動面上の突起の先端で摺動部材と相手部材の接触
が始まり、接触部分は流体潤滑が破れて境界潤滑とな
り、全体の潤滑状態は流体潤滑と境界潤滑の混在した混
合潤滑状態となる。この境界潤滑部分の増加と共に部材
間の摩擦係数は急激に増大するが、本発明のセラミック
ス系摺動部材では、その表面にポリマー中に固体潤滑材
としての金属化合物の粉末粒子が分散した複合材被膜が
存在するので、境界潤滑部分における部材間の摩擦係数
を低減させることができ、良好な摺動特性を得ることが
できる。
【0019】又、油膜パラメータΛの値が小さい潤滑領
域においては、摺動部材の材質から決定される無潤滑摺
動での摩擦係数値が全体の摩擦損失において支配的であ
るが、本発明のセラミックス系摺動部材ではセラミック
ス材を用いることにより摩擦損失の低減を図っている。
しかも、セラミックス材の使用によって、セラミックス
の持つ高い硬度による耐摩耗性、低い表面活性度による
焼き付き現象の防止等の効果が得られるほか、鋼等と比
べて比較的軽量であるため摺動部品全体の軽量化も期待
できる。
【0020】更に、本発明のセラミックス系摺動部材に
おいては以下の作用も期待される。即ち、セラミックス
材の摺動面に形成した複合材被膜は、相手部材との摺動
中に容易に剥離し脱落する。脱落した複合材被膜中の金
属化合物粒子は摺動部材と相手部材の摺動面間に介在
し、摺動時の凝着、焼き付きを防止する作用を有するた
め、慣らし運転中及び摺動初期に起こる「馴染み」によ
る摺動部材と相手部材の摺動面の平滑化が促進される。
【0021】この時、セラミックス系摺動部材の摺動面
も若干平滑化されるが、セラミックス材は高い硬度と低
い表面活性度を有するため、相手部材の摺動面が優先的
に平滑化されることとなる。従って、相手部材の摺動面
は精密な仕上げ加工を行わなくても、本発明のセラミッ
クス系摺動部材との摺動により自然に表面が研磨されて
表面粗さが向上するので、摩擦係数の低減をもたらすと
同時に、曲面その他の複雑形状の相手部材の場合に特に
有効で、経済的に極めて有利である。
【0022】このようにして、慣らし運転中及び/又は
摺動初期に、特に相手部材の摺動面が研磨されて平滑に
なって来ると、混合潤滑状態における流体潤滑の部分が
増加するので、それ以上の摩耗又は偏摩耗の進行が停止
し、摺動面の面精度を保持すると同時に良好な潤滑状態
を保ち続けることができる。しかも、摺動部材はセラミ
ックスからなるので、金属同士の組み合わせと比較して
表面活性度が低いために、この状態での相手部材との焼
き付きや異常摩耗を防止できる。
【0023】又、本発明のセラミックス系摺動部材は研
削や研磨等の機械加工を施していないので、「馴染み」
による若干の平滑化が行われたとしても、その摺動面に
はある程度の凹凸が残存する。この凹凸の凹部が、潤滑
剤存在下での摺動中に潤滑油や固体潤滑材等のような潤
滑剤の供給源として働くため、凹凸の存在にも拘らず極
めて良好な潤滑状態を得ることができる。尚、本来なら
境界潤滑となる凸部においても、固体潤滑剤を含んだ複
合被膜がその上に形成されているため、極めて良好な潤
滑状態を保つことができる。
【0024】上記のごとく、摩擦係数の低減した状態を
長時間維持し、面荒れの原因となる相手部材による攻撃
を防止するために、セラミックス系摺動部材は高い硬度
を持つことが望ましい。セラミックス系摺動部材が高い
硬度を持つことにより、相手部材との接触による局部的
な変形が生じ難く、局部変形に起因する偏摩耗を生じる
こともない。これらの効果を得るためには、セラミック
ス材の硬さがビッカース硬度HVで1000kgf/m
2以上であることが好ましい。
【0025】金属化合物/ポリマーの複合材被膜を構成
する金属化合物の粉末粒子は、前記のごとく固体潤滑材
としての性質を有するMoS2、BN、CaF2、Cr2
3、MoO3、B23等の粉末粒子である。使用する金
属化合物は、セラミックス材の種類、潤滑条件、相手部
材の材質、ポリマーの種類等に応じて、適切に選択する
必要がある。金属化合物の粉末粒子がポリマー中に分散
した複合材被膜の膜厚は5〜30μmの範囲であること
が好ましい。その理由は、複合材被膜の膜厚が5μm未
満では十分な潤滑性を得ることができず、逆に30μm
を越えると耐久性及び耐摩耗性において十分な効果が得
られないからである。
【0026】又、複合材被膜を構成するポリマーは、金
属化合物粒子のバインダーとしての効果を果すものであ
り、前記のごとくポリアミドイミド、ポリイミド、ポリ
四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド、ジア
リルフタレート樹脂等が好ましい。これらのポリマーは
バインダーとしてはもちろん、自己潤滑性を期待できる
ものであり、前記金属化合物の潤滑性と併せて効果的な
潤滑被膜を形成するものと考えられる。
【0027】複合材被膜中におけるポリマーの体積含有
率は50〜95体積%の範囲が好ましい。その理由は、
ポリマーの体積含有率が50体積%未満では金属化合物
粒子のバインダーとしての効果が小さくなるため複合材
被膜の耐久性が低下し、95体積%を越えると複合材被
膜の潤滑性が不十分となるからである。
【0028】
【実施例】実施例1 本発明の摺動部材のセラミックス材として、ZrO2
SiC、Si34、サイアロン、Al23、及びAlN
の各モノリシック焼結体と、SiC繊維で強化したSi
34複合材料(SiC繊維30体積%)とからなる各チ
ップを製造し、各チップの表面は研磨や研削等の機械加
工を一切行わない焼結肌のまま、各チップの表面を脱脂
及び乾燥させた。尚、使用した各焼結体及び複合材料
は、いずれも焼結助剤成分に由来するガラス質の粒界相
を有する通常のものであり、その硬さはビッカース硬度
Vでいずれも1000kgf/mm2以上である。
【0029】一方、金属化合物粉末としてMoS2粉末
をポリアミドイミド系液状ポリマーに混合分散させ、ポ
リマーと金属化合物の合計に対するポリマーの体積含有
率が75体積%の塗料状懸濁液とした。この塗料状懸濁
液を前記各セラミックス材の摺動面に膜厚約10μmと
なるようにスプレー塗布し、170〜180℃に加熱し
て焼き付けることにより、表面に金属化合物/ポリマー
の複合材被膜を形成させた本発明の各摺動部材を得た。
【0030】比較例として、軸受鋼及び焼結肌のままの
Si34焼結体のチップからなり、共に摺動面に金属化
合物/ポリマーの複合材被膜を形成していない摺動部材
を準備した。
【0031】得られた各摺動部材を、図1に示すローラ
ー/チップ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付
け、相手部材であるローラー2として黒鉛鋳鉄製のロー
ラーを使用して、自動車エンジン用オイル中において、
油温80℃、周速1m/秒、荷重30kgfの条件で2
0分間の慣らし運転を実施した。慣らし運転前後のロー
ラー2の摺動面の表面粗さ(中心線平均粗さRa)、慣
らし運転後における摺動部材と相手部材との間の摩擦係
数を測定し、その結果を表1に示した。
【0032】
【表1】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 チ ッ プ 材 料 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 1−1 ZrO2焼結体 0.48 0.36 0.076 1−2 SiC焼結体 0.51 0.41 0.078 1−3 Si34焼結体 0.53 0.39 0.075 1−4 サイアロン焼結体 0.47 0.36 0.080 1−5 Al23焼結体 0.53 0.41 0.076 1−6 AlN焼結体 0.49 0.40 0.082 1−7 繊維強化Si3N4複合材料 0.55 0.37 0.076 1−8* 軸受鋼(被膜なし) 0.55 0.60 0.25 1−9* Si3N4焼結体(被膜なし) 0.51 0.43 0.17 (注)表中の*を付した試料は比較例である(以下同
じ)。
【0033】表1の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材を用いた各試料では、複合材被膜のない
セラミックス材や通常の鋼材料からなる比較例のチップ
状摺動部材を用いた場合に比較して、摩擦係数を著しく
改善向上させることができた。又、複合材被膜を有する
本発明の各試料は、相手部材である黒鉛鋳鉄ローラーの
摺動面の表面粗さを慣らし運転中に小さくしていること
も判る。
【0034】この著しい摩擦係数の改善向上は、本来な
ら境界潤滑となるべき部分に複合材被膜による潤滑作用
が働き、同時にセラミックス系摺動部材表面の凹部が摺
動面への潤滑油の供給源として作用することにより達成
されたものと考えられる。更には、相手部材であるロー
ラーの表面粗さの改善も、摩擦係数の低減に寄与してい
る可能性も考えられる。
【0035】実施例2 複合材被膜中に分散させる金属化合物粉末として、Mo
2粉末、BN粉末、CaF2粉末、Cr23粉末、Mo
3粉末、B23粉末を用意し、各粉末をポリアミドイ
ミド系ポリマーに混合分散させ、ポリマーと金属化合物
の合計に対するポリマーの体積含有率が75体積%の塗
料状懸濁液とした。
【0036】得られた各塗料状懸濁液を、実施例1と同
様に準備した焼結肌のままのSi34焼結体のチップの
表面に膜厚約10μmとなるようにスプレー塗布し、実
施例1と同様に焼き付けて、表面に複合材被膜を有する
摺動部材を製造した。又、比較例として、実施例1の試
料1−9と同じ複合材被膜を有しないSi34焼結体チ
ップからなる摺動部材を用意した。
【0037】各摺動部材を、図1に示すローラー/チッ
プ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付け、相手部
材であるローラー2として鋳鉄製のローラーを使用し
て、実施例1と同一条件で慣らし運転(20分間)を実
施した後、慣らし運転前後のローラーの摺動面の表面粗
さと、慣らし後の摩擦係数を測定し、その結果を表2に
示した。
【0038】
【表2】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 金属化合物 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 2−1(1−3) MoS2 0.53 0.39 0.075 2−2 BN 0.52 0.42 0.080 2−3 CaF2 0.51 0.36 0.075 2−4 Cr23 0.50 0.41 0.081 2−5 MoO3 0.55 0.43 0.086 2−6 B23 0.49 0.37 0.081 1−9* 複合材被膜なし 0.51 0.43 0.17 (注)試料2−1は実施例1の試料1−3と同一であ
る。
【0039】表2の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材では、複合材被膜の金属化合物の種類に
拘らず、複合材被膜を形成していないセラミックス材か
らなる比較例のチップ状摺動部材に比較して、一様に摩
擦係数を改善することができると共に、慣らし運転によ
って相手部材であるローラーの表面粗さを小さくするこ
とができた。
【0040】実施例3 金属化合物粉末のバインダーとなるポリマーとして、ポ
リアミドイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、
ポリフェニレンサルファイド、及びジアリルフタレート
樹脂を用意した。各ポリマー中にMoS2粉末を混合分
散させ、ポリマーと金属化合物の合計に対するポリマー
の体積含有率が75体積%の塗料状懸濁液とした。
【0041】得られた各塗料状懸濁液を、実施例1と同
様に準備した焼結肌のままのSi34焼結体のチップの
表面に膜厚約10μmとなるようにスプレー塗布し、実
施例1と同様に焼き付けて、表面に複合材被膜を有する
摺動部材を製造した。又、比較例として、実施例1の試
料1−9と同じ複合材被膜を有しないSi34焼結体チ
ップからなる摺動部材を用意した。
【0042】各摺動部材を、図1に示すローラー/チッ
プ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付け、相手部
材であるローラー2として鋳鉄製のローラーを使用し
て、実施例1と同一条件で慣らし運転(20分間)を実
施した後、慣らし運転前後のローラーの摺動面の表面粗
さと、慣らし後の摩擦係数を測定し、その結果を表3に
示した。
【0043】
【表3】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 金属化合物 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 3−1(1−3) ホ゜リアミト゛イミト゛ 0.53 0.39 0.075 3−2 ホ゜リ四フッ化エチレン 0.48 0.41 0.073 3−3 ホ゜リイミト゛ 0.51 0.39 0.081 3−4 ホ゜リフェニレンサルファイト゛ 0.46 0.36 0.080 3−5 シ゛アリルフタレート樹脂 0.52 0.37 0.078 1−9* 複合材被膜なし 0.51 0.43 0.17 (注)試料3−1は実施例1の試料1−3と同一であ
る。
【0044】表3の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材では、複合材被膜のポリマーの種類に拘
らず、複合材被膜を形成していないセラミックス材から
なる比較例のチップ状摺動部材に比較して、一様に摩擦
係数を改善することができると共に、慣らし運転中に相
手部材であるローラーの表面粗さを小さくすることがで
きた。
【0045】実施例4 バインダーとなるポリマーとしてポリアミドイミドを用
意し、このポリマー中に金属化合物粉末としてMoS2
粉末を混合分散させ、ポリマーと金属化合物の合計に対
するポリマーの体積含有率が75体積%の塗料状懸濁液
とした。
【0046】一方、実施例1と同様に準備した焼結肌の
ままのSi34焼結体と、同じSi34焼結体であって
表面を鏡面研磨加工したものとからなるチップを用意し
た。各Si34焼結体のチップ表面に、上記の塗料状懸
濁液を膜厚約10μmとなるようにスプレー塗布し、実
施例1と同様に焼き付けて、表面に複合材被膜を有する
摺動部材を製造した。又、各Si34焼結体のみからな
る(複合材被膜を有しない)チップも、そのまま摺動部
材とした。
【0047】各摺動部材を、図1に示すローラー/チッ
プ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付け、相手部
材であるローラー2として鋳鉄製のローラーを使用し
て、実施例1と同一条件で慣らし運転(20分間)を実
施した後、慣らし運転前後のローラーの摺動面の表面粗
さと、慣らし後の摩擦係数を測定し、その結果を表4に
示した。
【0048】
【表4】 摺 動 部 材 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 表 面 被膜 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 4−1(1−3) 焼結肌 有り 0.53 0.39 0.075 4−2* 鏡面 有り 0.51 0.38 0.073 4−3* 鏡面 無し 0.54 0.48 0.14 4−4(1−9)* 焼結肌 無し 0.51 0.43 0.17 (注)試料4−1は実施例1の試料1−3と又試料4−
4は実施例1の試料1−9とそれぞれ同一である。
【0049】表4の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材では、複合材被膜を形成していないセラ
ミックス材からなるチップ状摺動部材に比較して摩擦係
数を大幅に改善向上させることができると共に、慣らし
運転中に相手部材であるローラーの表面粗さを小さくす
ることができ、これらの効果は鏡面研磨加工したセラミ
ックス材に複合材被膜を形成した場合と殆ど同程度であ
った。
【0050】
【発明の効果】本発明のセラミックス系摺動部材によれ
ば、摺動面に設けた複合材被膜が境界潤滑となる部分の
摩擦係数を低減させると同時に、焼結肌の摺動面に存在
する凹部が摺動面への潤滑剤の供給源となるため、相手
部材との摩擦係数が低減されて良好な摺動特性を得るこ
とができる。
【0051】又、本発明のセラミックス系摺動部材は、
潤滑剤中で相手部材との慣らし運転中及び摺動中に、金
属製の相手部材の表面粗さを向上させることができるの
で、相手部材の表面に特別な超精密仕上げ加工を行なう
必要がない。従って、相手部材の摺動面が曲面その他の
複雑形状で精密な仕上げ加工が難しい場合に特に有効で
あり、経済的にも極めて有利である。
【0052】かかる本発明のセラミックス系摺動部材
は、潤滑剤の存在下で使用される全ての摺動部品に適用
が可能であり、ロータリーコンプレッサー用ベーン材
や、自動車用ガソリンエンジンのような内燃機関の部
品、例えば金属製のカムと組み合わせたセラミックス製
ロッカーアーム・シュー、金属製カム及びローラー軸と
組み合わせたセラミックス製滑りローラーロッカー等へ
の適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用したローラー/チップ型摩擦摩耗
試験機を説明するためのローラーとチップを一部切り欠
いて示した概略側面図である。
【符号の説明】
1 チップ 2 ローラー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 103:00 107:00) C10N 10:00 20:06 Z 40:02 50:08 (72)発明者 西岡 隆夫 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 山川 晃 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 松沼 健二 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑剤中で相手部材と摺動するセラミッ
    クス系摺動部材であって、相手部材との摺動面が機械加
    工が施されていない焼結肌のセラミックス材と、セラミ
    ックス材の少なくとも相手部材との摺動面に設けられ、
    固体潤滑材としての金属化合物の粉末粒子がポリマーに
    分散した複合材被膜とからなることを特徴とするセラミ
    ックス系摺動部材。
  2. 【請求項2】 セラミックス材が、モノリシックセラミ
    ックス焼結体であるか、又は繊維、ウイスカー、分散粒
    子のいずれかで強化されたセラミックス複合材料からな
    ることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス系
    摺動部材。
  3. 【請求項3】 セラミックス材が、ZrO2、SiC、
    Si34、サイアロン、Al23、及びAlNの少なく
    とも1種を60体積%以上含むことを特徴とする、請求
    項1又は2に記載のセラミックス系摺動部材。
  4. 【請求項4】 セラミックス材の硬さがビッカース硬度
    で1000kgf/mm2以上であることを特徴とす
    る、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス系摺
    動部材。
  5. 【請求項5】 複合材被膜中の金属化合物の粉末粒子
    が、MoS2、BN、CaF2、Cr23、MoO3、及
    びB23の少なくとも1種からなる粉末粒子であること
    を特徴とする、請求項1に記載のセラミックス系摺動部
    材。
  6. 【請求項6】 複合材被膜の膜厚が5〜30μmである
    ことを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス系摺
    動部材。
  7. 【請求項7】 複合材被膜のポリマーが、ポリアミドイ
    ミド、ポリイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニ
    レンサルファイド、及びジアリルフタレート樹脂の少な
    くとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の
    セラミックス系摺動部材。
  8. 【請求項8】 複合材被膜中におけるポリマーの含有率
    が50〜95体積%であることを特徴とする、請求項1
    又は7に記載のセラミックス系摺動部材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003166545A (ja) * 2001-11-30 2003-06-13 Koyo Seiko Co Ltd ポリマ潤滑剤を内蔵した機械要素およびその製造方法
JP2006188945A (ja) * 2001-05-10 2006-07-20 Hiroshi Asaka 耐震ドア式出入口扉構造
JP5613889B2 (ja) * 2008-04-14 2014-10-29 有限会社アプライドダイヤモンド 水中油型乳化組成物

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