JPH0798052A - セラミックス系摺動部材 - Google Patents

セラミックス系摺動部材

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JPH0798052A
JPH0798052A JP26557793A JP26557793A JPH0798052A JP H0798052 A JPH0798052 A JP H0798052A JP 26557793 A JP26557793 A JP 26557793A JP 26557793 A JP26557793 A JP 26557793A JP H0798052 A JPH0798052 A JP H0798052A
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ceramic
sliding
sliding member
composite material
polymer
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JP26557793A
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English (en)
Inventor
Seiji Funatani
清司 鮒谷
Hiroshi Izumida
寛 泉田
Kaoru Murabe
馨 村部
Takao Nishioka
隆夫 西岡
Akira Yamakawa
晃 山川
Kenji Matsunuma
健二 松沼
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑剤中で摺動する相手部材との摩擦係数を
低減させて良好な摺動特性を得ることができ、特に金属
からなる相手部材に困難で高コストの特別な超精密仕上
げ加工を行わなくても、摩擦係数の低減による良好な摺
動特性を得ることができるセラミックス系摺動部材を提
供する。 【構成】 潤滑剤中で相手部材と摺動するセラミックス
系摺動部材(アジャスティングシムを除く)であって、
相手部材との摺動面の表面粗さが十点平均粗さで3μm
以下のセラミックス材と、セラミックス材の少なくとも
相手部材との摺動面に設けられ、固体潤滑材としての金
属化合物の粉末粒子がポリマーに分散した複合材被膜と
からなるセラミックス系摺動部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、潤滑油のような潤滑剤
の存在下で使用されるピストンピン、ピストンリング、
ロッカーアームチップのような自動車エンジン部品ある
いはコンプレッサー部品等の摺動部材、特に金属の摺動
面を有する相手部材と摺動するセラミックス系の摺動部
材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、各種機械部品の摺動部におけ
る摩擦を低減させること、特に摺動速度が低く且つ高負
荷であるため最も苛酷な摺動部品のひとつである自動車
エンジンのような内燃機関の動弁系における各部品の摩
耗を低減させることが強く望まれている。
【0003】特に潤滑油等の潤滑剤存在下での使用条件
を考慮すると、一般には対向する摺動部品間の最小隙間
又は最小油膜厚さと、摺動部品の摺動面の性状が摺動特
性に大きな影響を与えるとされている。例えば、「油圧
と空気圧」第18巻、第4号、1987年の第247〜
258頁、あるいは自動車技術会編「学術講演会前刷集
924」1992年の第85〜88頁に記載されている
ように、潤滑の尺度を示す値として、下記式1により定
義される油膜パラメータΛがよく使用されている。
【0004】
【式1】 Λ=hmin/σ=hmin/(Rrms1 2+Rrms2 21/2 ただし、hminは対向する摺動部品間の最小隙間又は最
小油膜厚さ、σは対向する摺動部品の合成面粗さ、R
rms1は片方の摺動部品表面の自乗平均粗さ、Rrms2は他
方の摺動部品表面の自乗平均粗さを表す。
【0005】この油膜パラメータΛの値が3以上の場合
は流体潤滑状態、1以下の場合は境界潤滑状態、及び1
〜3の場合は流体潤滑と境界潤滑の混在した混合潤滑状
態であるとされ、Λの値が大きいほど摺動面間の接触が
緩和されて、摺動特性が良好になると言われている。従
って、同一摺動条件下では最小隙間又は最小油膜厚さh
minは一定であるため、2つの摺動面の表面粗さを小さ
くすることが摩擦係数の低減に有効である。
【0006】そこで、摺動部品の摺動面に高精度な超精
密仕上げ加工を施して表面粗さを出来るだけ低減させる
ことが行われているが、例えば内燃機関の動弁系部品の
ひとつであるカム等のように曲面等の複雑形状の表面に
対しては、高精度な超精密仕上げ加工は困難であり、又
多大な時間と労力を要するため加工コストも極めて高く
なることから、通常の研削加工による表面仕上げ加工が
主流となっており、摩擦係数の低減がままならない現状
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
の事情に鑑み、潤滑剤中で摺動する相手部材との摩擦係
数を低減させて良好な摺動特性を得ることができ、特に
金属からなる相手部材の表面粗さを摺動中に向上させ、
困難で高コストの特別な超精密仕上げ加工を行わなくて
も摩擦係数の低減による良好な摺動特性を得ることがで
きるセラミックス系摺動部材を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供するセラミックス系摺動部材(但し、
自動車用内燃機関の動弁系機構にカムと組み合わせて用
いるアジャスティングシムを除く)は、潤滑剤中で相手
部材と摺動するセラミックス系摺動部材であって、相手
部材との摺動面の表面粗さが十点平均粗さで3μm以下
のセラミックス材と、セラミックス材の少なくとも相手
部材との摺動面に設けられ、固体潤滑材としての金属化
合物の粉末粒子がポリマーに分散した複合材被膜とから
なることを特徴とする。。
【0009】本発明のセラミックス系摺動部材は、表面
粗さの小さいセラミックス材と、そのセラミックス材の
少なくとも摺動面に形成された複合材被膜とからなる。
セラミックス材としてはモノリシックセラミックス焼結
体が一般的であるが、繊維、ウイスカー、又は分散粒子
のいずれかで強化されたセラミックス複合材料であって
も良い。
【0010】上記セラミックス材として使用できるモノ
リシックセラミックス焼結体としては、アルミナ、ジル
コニア、ムライト、スピネル等の酸化物、窒化ケイ素、
サイアロン、窒化アルミニウム、窒化チタン等の窒化
物、炭化ケイ素や炭化チタン等の炭化物、窒化ホウ素や
炭化ホウ素等のホウ化物、ケイ化チタン等のケイ化物等
が挙げられる。
【0011】又、セラミックス複合材料としては、炭素
繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維等で強化した窒化
ケイ素や結晶化ガラス等の長繊維強化複合材料、炭化ケ
イ素ウイスカー等で強化したアルミナや窒化ケイ素等の
ウイスカー強化複合材料、窒化チタン粒子や炭化ケイ素
ナノ粒子等で強化した窒化ケイ素やアルミナ等の粒子分
散強化複合材料を挙げることが出来る。
【0012】これらのセラミックス材の中では、強度や
靭性、硬度、耐摩耗性等の点でZrO2、SiC、Si3
4、サイアロン、Al23、及びAlNが好ましく、
モノリシックセラミックス焼結体の場合はもちろん複合
材料の場合を含めて、これらの少なくとも1種を60体
積%以上含むことが好ましい。
【0013】セラミックス材の摺動面を被覆する複合材
被膜は、金属化合物の粉末粒子を分散したポリマーから
なる。かかる金属化合物/ポリマーの複合材被膜のポリ
マー中に分散相として含まれる金属化合物の粉末粒子
は、固体潤滑材としての性質を有することが必要であ
り、具体的にはMoS2、BN、CaF2、Cr23、M
oO3、及びB23の少なくとも1種が好ましい。
【0014】又、複合材被膜のポリマーは、金属化合物
の粉末粒子を保持するバインダーとしての役割を果すこ
とが必要であり、具体的にはポリアミドイミド、ポリイ
ミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファ
イド、及びジアリルフタレート樹脂の少なくとも1種が
好ましい。ただし、上記以外のポリマーの種類によって
は金属化合物粉末粒子を含む複合材被膜が軟質となり、
耐摩耗性を低下させる場合があるので、ポリマーの選択
には注意を要する。
【0015】本発明のセラミックス系摺動部材の製造
は、例えば以下の方法により行うことができる。まずセ
ラミックス材の表面を所定の表面粗さに研磨し、脱脂及
び乾燥し、必要に応じて表面に微細な凹凸を形成させ
る。次に、このセラミックス材表面に、使用条件により
選択した金属化合物の粉末粒子を液状ポリマー(未硬化
樹脂又は樹脂前駆物質若しくはそれらの溶液)に分散さ
せた塗料状懸濁液をスプレー、浸漬、刷毛塗り等により
塗布した後、焼き付け又は自然乾燥させることにより複
合材被膜を形成する。
【0016】一方、本発明のセラミックス系摺動部材と
対向して摺動する相手部材は、一般的な機械部品におけ
る摺動部の構成材料である普通鋳鉄、合金鋳鉄、鋳鋼、
又はチル化等の表面処理を施した普通鋳鉄や鋳物材料、
あるいは軸受鋼や高速度鋼のような合金鋼等のほか、ア
ルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の現
在実用化されているあらゆる摺動用金属材料が使用可能
である。これら相手部材と本発明のセラミックス系摺動
部材との組み合わせを、使用条件、要求される摺動特
性、耐久性等に合わせて適切に選択する。
【0017】
【作用】前記の油膜パラメータΛの値が3未満になる
と、摺動面上の突起の先端で摺動部材と相手部材の接触
が始まり、接触部分は流体潤滑が破れて境界潤滑とな
り、全体の潤滑状態は流体潤滑と境界潤滑の混在した混
合潤滑状態となる。この境界潤滑部分の増加と共に部材
間の摩擦係数は急激に増大するが、本発明のセラミック
ス系摺動部材では、セラミックス材の表面粗さが小さい
ことに加え、その表面にポリマー中に固体潤滑材として
の金属化合物の粉末粒子が分散した複合材被膜が存在す
るので、境界潤滑部分における部材間の摩擦係数を低減
させることができ、良好な摺動特性が得られる。
【0018】又、油膜パラメータΛの値が小さい潤滑領
域においては、摺動部材の材質から決定される無潤滑摺
動での摩擦係数値が全体の摩擦損失において支配的であ
るが、本発明のセラミックス系摺動部材ではセラミック
ス材を用いることにより、且つその表面粗さを小さくす
ることにより摩擦係数の低減を図っている。しかも、セ
ラミックス材の使用によって、セラミックスの持つ高い
硬度による耐摩耗性、低い表面活性度による焼き付き現
象の防止等の効果が得られるほか、鋼等と比べて比較的
軽量であるため摺動部品全体の軽量化も期待できる。
【0019】更に、本発明のセラミックス系摺動部材に
おいては、相手部材との摺動中に、セラミックス材の摺
動面に形成した複合材被膜が、容易に剥離し脱落する。
脱落した複合材被膜中の金属化合物粒子は摺動部材と相
手部材の摺動面間に介在し、金属化合物より硬度の低い
相手部材の金属からなる摺動面を研磨して表面粗さを向
上させる。従って、相手部材は精密な仕上げ加工を行わ
なくても、本発明のセラミックス系摺動部材との摺動に
より自然に表面が研磨されて表面粗さが向上するので、
曲面その他の複雑形状の相手部材の場合に特に有効であ
る。
【0020】このようにして、慣らし運転中及び/又は
摺動初期に、相手部材の金属からなる摺動面が研磨され
て平滑になって来ると、混合潤滑状態における流体潤滑
の部分が増加するので、それ以上の摩耗又は偏摩耗の進
行が停止し、相手部材の面精度を保持すると同時に良好
な潤滑状態を保ち続けることができる。しかも、摺動部
材はセラミックスからなるので、金属同士の組み合わせ
と比較して表面活性度が低いため、この状態での相手部
材との焼き付きや異常摩耗を防止できる。
【0021】このようにして摩擦係数低減の効果を得る
ためには、本発明のセラミックス系摺動部材におけるセ
ラミックス材の表面粗さが十点平均粗さRZで3μm以
下であることが必要であり、好ましくは1μm以下であ
ることが必要である。又、過酷な潤滑条件下でも摩擦係
数の十分な低減を得るためには、セラミックス材の上記
表面粗さRZを0.1μm以下と更に小さくすることが好
ましい。
【0022】又、摩擦係数の低減した状態を長時間維持
し、面荒れの原因となる相手部材による攻撃を防止する
ために、セラミックス系摺動部材は高い硬度を持つこと
が望ましい。セラミックス系摺動部材が高い硬度を持つ
ことにより、相手部材との接触による局部的な変形が生
じ難く、局部変形に起因する偏摩擦を生じることもな
い。これらの効果を得るためには、セラミックス材の硬
さがビッカース硬度HVで1000kgf/mm2以上で
あることが好ましい。
【0023】金属化合物/ポリマーの複合材被膜を構成
する金属化合物の粉末粒子は、前記のごとく固体潤滑材
としての性質を有するMoS2、BN、CaF2、Cr2
3、MoO3、B23等の粉末粒子である。使用する金
属化合物は、セラミックス材の種類、潤滑条件、相手部
材の材質、ポリマーの種類等に応じて、適切に選択する
必要がある。金属化合物の粉末粒子がポリマー中に分散
した複合材被膜の膜厚は5〜30μmの範囲であること
が好ましい。その理由は、複合材被膜の膜厚が5μm未
満では十分な潤滑性を得ることができず、逆に30μm
を越えると耐久性及び耐摩耗性において十分な効果が得
られないからである。
【0024】又、複合材被膜を構成するポリマーは、金
属化合物粒子のバインダーとしての効果を果すものであ
り、前記のごとくポリアミドイミド、ポリイミド、ポリ
四フッ化エチレン、ポリフェニレンサルファイド、ジア
リルフタレート樹脂等が好ましい。これらのポリマーは
バインダーとしてはもちろん、自己潤滑性を期待できる
ものであり、前記金属化合物の潤滑性と併せて効果的な
潤滑被膜を形成するものと考えられる。
【0025】複合材被膜中におけるポリマーの体積含有
率は50〜95体積%の範囲が好ましい。その理由は、
ポリマーの体積含有率が50体積%未満では金属化合物
粒子のバインダーとしての効果が小さくなるため複合材
被膜の耐久性が低下し、95体積%を越えると複合材被
膜の潤滑性が不十分となるからである。
【0026】
【実施例】実施例1 本発明の摺動部材のセラミックス材として、ZrO2
SiC、Si34、サイアロン、Al23、及びAlN
の各モノリシック焼結体と、SiC繊維で強化したSi
34複合材料(SiC繊維30体積%)とからなる各チ
ップを用意し、その表面粗さが十点平均粗さRZで3μ
m以下となるように研磨し、更に脱脂及び乾燥させた。
尚、使用した各焼結体及び複合材料は、いずれも焼結助
剤成分に由来するガラス質の粒界相を有する通常のもの
であり、その硬さはビッカース硬度HVでいずれも10
00kgf/mm2以上である。
【0027】一方、金属化合物粉末としてMoS2粉末
をポリアミドイミド系液状ポリマーに混合分散させ、ポ
リマーと金属化合物の合計に対するポリマーの体積含有
率が75体積%の塗料状懸濁液とした。この塗料状懸濁
液を前記各セラミックス材の摺動面に膜厚約10μmと
なるようにスプレー塗布し、170〜180℃に加熱し
て焼き付けることにより、表面に金属化合物/ポリマー
の複合材被膜を形成させた本発明の各摺動部材を得た。
【0028】比較例として、表面粗さが十点平均粗さR
Zで3μmより大きいSi34焼結体のチップに上記と
同様にして金属化合物/ポリマーの複合材被膜を形成し
た摺動部材、並びに軸受鋼及びSi34焼結体のチップ
からなり共に金属化合物/ポリマーの複合材被膜を形成
していない摺動部材を準備した。
【0029】得られた各摺動部材を、図1に示すローラ
ー/チップ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付
け、相手部材であるローラー2として黒鉛鋳鉄製のロー
ラーを使用して、自動車エンジン用オイル中において、
油温80℃、周速1m/秒、荷重30kgfの条件で2
0分間の慣らし運転を実施した。慣らし運転前後のロー
ラー2の摺動面の表面粗さ(中心線平均粗さRa)、慣
らし運転後における摺動部材と相手部材との間の摩擦係
数を測定し、その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 チ ッ プ 材 料 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 1−1 ZrO2焼結体 0.51 0.42 0.080 1−2 SiC焼結体 0.47 0.40 0.077 1−3 Si34焼結体 0.49 0.38 0.065 1−4 サイアロン焼結体 0.52 0.37 0.076 1−5 Al23焼結体 0.49 0.40 0.078 1−6 AlN焼結体 0.51 0.43 0.081 1−7 繊維強化Si3N4複合材料 0.50 0.39 0.077 1−8* Si3N4焼結体(RZ=4.71μm) 0.48 0.51 0.13 1−9* 軸受鋼(被膜なし) 0.52 0.61 0.26 1−10*Si3N4焼結体(被膜なし) 0.47 0.42 0.15 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0031】表1の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材を用いた各試料では、複合材被膜のない
セラミックス材や通常の鋼材料からなる比較例のチップ
状摺動部材を用いた場合や、表面粗さが大きいセラミッ
クス材の表面に複合材被膜を形成した比較例のチップ状
摺動部材を用いた場合に比較して、相手部材である黒鉛
鋳鉄ローラーの摺動面の表面粗さを慣らし運転中に小さ
くでき、更には摩擦係数を著しく改善向上させることが
出来た。
【0032】この著しい摩擦係数の改善向上は、本来な
ら境界潤滑となるべき部分に複合材被膜による潤滑作用
が働き、相手部材であるローラーの表面粗さの改善と相
俟って、初めて達成されたものと考えられる。
【0033】実施例2 複合材被膜中に分散させる金属化合物粉末として、Mo
2粉末、BN粉末、CaF2粉末、Cr23粉末、Mo
3粉末、B23粉末を用意し、各粉末をポリアミドイ
ミド系ポリマーに混合分散させ、ポリマーと金属化合物
の合計に対するポリマーの体積含有率が75体積%の塗
料状懸濁液とした。
【0034】得られた各塗料状懸濁液を、実施例1と同
様に準備したSi34焼結体のチップの表面に膜厚約1
0μmとなるようにスプレー塗布し、実施例1と同様に
焼き付けて、表面に複合材被膜を有する摺動部材を製造
した。又、比較例として、実施例1と同様に準備したが
複合材被膜を有しないSi34焼結体チップからなる摺
動部材を用意した。
【0035】各摺動部材を、図1に示すローラー/チッ
プ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付け、相手部
材であるローラー2として鋳鉄製のローラーを使用し
て、実施例1と同一条件で慣らし運転(20分間)を実
施した後、慣らし運転前後のローラーの摺動面の表面粗
さと、慣らし後の摩擦係数を測定し、その結果を表2に
示した。
【0036】
【表2】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 金属化合物 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 1−3 MoS2 0.49 0.38 0.065 2−1 BN 0.51 0.40 0.075 2−2 CaF2 0.48 0.39 0.074 2−3 Cr23 0.50 0.41 0.083 2−4 MoO3 0.52 0.44 0.085 2−5 B23 0.50 0.42 0.082 1−8*複合材被膜なし 0.47 0.42 0.15 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0037】表2の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材では、複合材被膜の金属化合物の種類に
拘らず、複合材被膜を形成していないセラミックス材か
らなる比較例のチップ状摺動部材に比較して、一様に摩
擦係数を改善することができると共に、慣らし運転によ
って相手部材であるローラーの表面粗さを小さくするこ
とができた。
【0038】実施例3 金属化合物粉末のバインダーとなるポリマーとして、ポ
リアミドイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、
ポリフェニレンサルファイド、及びジアリルフタレート
樹脂を用意した。各ポリマー中にMoS2粉末を混合分
散させ、ポリマーと金属化合物の合計に対するポリマー
の体積含有率が75体積%の塗料状懸濁液とした。
【0039】得られた各塗料状懸濁液を、実施例1と同
様に準備したSi34焼結体のチップの表面に膜厚約1
0μmとなるようにスプレー塗布し、実施例1と同様に
焼き付けて、表面に複合材被膜を有する摺動部材を製造
した。又、比較例として、実施例1と同様に準備したが
複合材被膜を有しないSi34焼結体チップからなる摺
動部材を用意した。
【0040】各摺動部材を、図1に示すローラー/チッ
プ型摩擦摩耗試験機にチップ1として取り付け、相手部
材であるローラー2として鋳鉄製のローラーを使用し
て、実施例1と同一条件で慣らし運転(20分間)を実
施した後、慣らし運転前後のローラーの摺動面の表面粗
さと、慣らし後の摩擦係数を測定し、その結果を表3に
示した。
【0041】
【表3】 ローラー面粗さRa(μm) 慣らし運転後試料 金属化合物 慣らし運転前 慣らし運転後 摩擦係数 1−3 ホ゜リアミト゛イミト゛ 0.49 0.38 0.065 3−1 ホ゜リ四フッ化エチレン 0.49 0.42 0.073 3−2 ホ゜リイミト゛ 0.54 0.45 0.081 3−3 ホ゜リフェニレンサルファイト゛ 0.51 0.41 0.080 3−4 シ゛アリルフタレート樹脂 0.50 0.38 0.078 1−8*複合材被膜なし 0.47 0.42 0.15 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0042】表3の結果から明らかなように、表面に複
合材被膜を形成したセラミックス材からなる本発明のチ
ップ状摺動部材では、複合材被膜のポリマーの種類に拘
らず、複合材被膜を形成していないセラミックス材から
なる比較例のチップ状摺動部材に比較して、一様に摩擦
係数を改善することができると共に、慣らし運転中に相
手部材であるローラーの表面粗さを小さくすることがで
きた。
【0043】
【発明の効果】本発明のセラミックス系摺動部材によれ
ば、潤滑剤中で相手部材との慣らし運転中及び摺動中
に、境界潤滑となる部分の摩擦抵抗を下げることがで
き、同時に金属製の相手部材の表面粗さを向上させるこ
とができるので、相手部材の表面に特別な超精密仕上げ
加工を行わなくても、摩擦係数を低減させて良好な摺動
特性を得ることができる。特に、相手部材の摺動面が曲
面その他の複雑形状で精密な仕上げ加工が難しい場合で
も、本発明によれば事前の精密な仕上げ加工が不要であ
るから、経済的にも極めて有利である。
【0044】かかる本発明のセラミックス系摺動部材
は、潤滑剤の存在下で使用される全ての摺動部品に適用
が可能であり、ロータリーコンプレッサー用ベーン材
や、自動車用ガソリンエンジンのような内燃機関の部
品、例えば金属製のカムと組み合わせたセラミックス製
ロッカーアーム・シュー、金属製カム及びローラー軸と
組み合わせたセラミックス製滑りローラーロッカー等
(但し、アジャスティングシムを除く)への適用が期待
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用したローラー/チップ型摩擦摩耗
試験機を説明するためのローラーとチップを一部切り欠
いて示した概略側面図である。
【符号の説明】
1 チップ 2 ローラー
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正内容】
【0002】
【従来の技術】従来から、各種機械部品の摺動部におけ
る摩擦損失を低減させること、特に摺動速度が低く且つ
高負荷であるため最も苛酷な摺動部品のひとつである自
動車エンジンのような内燃機関の動弁系においては、各
部品の摩擦損失を低減させることが強く望まれている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】更に、本発明のセラミックス系摺動部材に
おいては、以下の作用も期待される。セラミックス材の
摺動面に形成した複合材被膜は、相手部材との摺動中に
容易に剥離し脱落する。脱落した複合材被膜中の金属化
合物粒子は摺動部材と相手部材の摺動面間に介在し、摺
動時の凝着、焼き付きを防止する作用を有するため、慣
らし運転中及び摺動初期に起こる「馴染み」による摺動
部材と相手部材の摺動面の平滑化を促進する。セラミッ
クス系摺動部材は高い硬度と低い表面活性度を有するた
め、このとき相手部材の摺動面が優先的に平滑化される
こととなる。従って、相手部材は精密な仕上げ加工を行
わなくても、本発明のセラミックス系摺動部材との摺動
により表面が平滑化されて表面粗さが向上するので、曲
面その他の複雑形状の相手部材の場合に特に有効であ
り、経済的に極めて有利である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】又、摩擦係数の低減した状態を長時間維持
し、面荒れの原因となる相手部材による攻撃を防止する
ために、セラミックス系摺動部材は高い硬度を持つこと
が望ましい。セラミックス系摺動部材が高い硬度を持つ
ことにより、相手部材との接触による局部的な変形が生
じ難く、局部変形に起因する偏摩耗を生じることもな
い。これらの効果を得るためには、セラミックス材の硬
さがビッカース硬度HVで1000kgf/mm2以上で
あることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正内容】
【0043】
【発明の効果】本発明のセラミックス系摺動部材によれ
ば、潤滑剤中で相手部材との慣らし運転中及び摺動中
に、境界潤滑となる部分の摩擦係数を低減させることが
でき、同時に金属製の相手部材の表面粗さを向上させる
ことができるので、相手部材の表面に特別な超精密仕上
げ加工を行わなくても、摩擦係数を低減させて良好な摺
動特性を得ることができる。特に、相手部材の摺動面が
曲面その他の複雑形状で精密な仕上げ加工が難しい場合
でも、本発明によれば事前の精密な仕上げ加工が不要で
あるから、経済的にも極めて有利である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西岡 隆夫 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 山川 晃 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 松沼 健二 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑剤中で相手部材と摺動するセラミッ
    クス系摺動部材(自動車用内燃機関の動弁系機構にカム
    と組み合わせて用いるアジャスティングシムを除く)で
    あって、相手部材との摺動面の表面粗さが十点平均粗さ
    で3μm以下のセラミックス材と、セラミックス材の少
    なくとも相手部材との摺動面に設けられ、固体潤滑材と
    しての金属化合物の粉末粒子がポリマーに分散した複合
    材被膜とからなることを特徴とするセラミックス系摺動
    部材。
  2. 【請求項2】 セラミックス材が、モノリシックセラミ
    ックス焼結体であるか、又は繊維、ウイスカー、分散粒
    子のいずれかで強化されたセラミックス複合材料からな
    ることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス系
    摺動部材。
  3. 【請求項3】 セラミックス材が、ZrO2、SiC、
    Si34、サイアロン、Al23、及びAlNの少なく
    とも1種を60体積%以上含むことを特徴とする、請求
    項1又は2に記載のセラミックス系摺動部材。
  4. 【請求項4】 セラミックス材の硬さがビッカース硬度
    で1000kgf/mm2以上であることを特徴とす
    る、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス系摺
    動部材。
  5. 【請求項5】 複合材被膜中の金属化合物の粉末粒子
    が、MoS2、BN、CaF2、Cr23、MoO3、及
    びB23の少なくとも1種の粉末粒子であることを特徴
    とする、請求項1に記載のセラミックス系摺動部材。
  6. 【請求項6】 複合材被膜の膜厚が5〜30μmである
    ことを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス系摺
    動部材。
  7. 【請求項7】 複合材被膜のポリマーが、ポリアミドイ
    ミド、ポリイミド、ポリ四フッ化エチレン、ポリフェニ
    レンサルファイド、及びジアリルフタレート樹脂の少な
    くとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の
    セラミックス系摺動部材。
  8. 【請求項8】 複合材被膜中におけるポリマーの含有率
    が50〜95体積%であることを特徴とする、請求項1
    又は7に記載のセラミックス系摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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