JPH07173080A - メトトレキセート誘導体とピラン共重合体の高分子結合体及びその製造方法 - Google Patents

メトトレキセート誘導体とピラン共重合体の高分子結合体及びその製造方法

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JPH07173080A
JPH07173080A JP5132873A JP13287393A JPH07173080A JP H07173080 A JPH07173080 A JP H07173080A JP 5132873 A JP5132873 A JP 5132873A JP 13287393 A JP13287393 A JP 13287393A JP H07173080 A JPH07173080 A JP H07173080A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 低毒性でかつ抗癌効果に優れた新規メトトレ
キセート誘導体高分子結合体の提供 【構成】 繰り返し単位が一般式(I) 及び一般式(II) (式中のRは一般式(III) あるいは一般式(IV)で表されるメトトレキセート誘
導体 (ただし一般式(III)及び一般式(IV)中のnは
1から12までの整数である))で表される繰り返し単
位10以上500以下からなり、かつ一般式(I)及び
一般式(II)の割合が0:100から90:10であ
るメトトレキセート誘導体とピラン共重合体の高分子結
合体及びその塩。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抗癌効果に優れた新規な
メトトレキセート誘導体とピラン共重合体の高分子結合
体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】メトトレキセートは臨床的に広く用いら
れている抗癌剤であり、急性リンパ性白血病・乳癌・頭
頸部癌などに有効とされている。メトトレキセート葉酸
の拮抗体であり、ジヒドロ葉酸還元酵素と強く結合し
て、DNA合成を阻害して細胞を死に至らしめる。
【0003】しかしメトトレキセートは優れた抗癌作用
を有すると同時に、増殖速度のはやい正常細胞に対して
毒性を示し、消化管障害・白血球や血小板の減少・腎臓
障害などの副作用が認められる。したがってメトトレキ
セートの使用に対しては副作用を十分配慮した投与を行
う必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】メトトレキセートのよ
うな低分子の抗癌剤が患者に投与された時、血中の抗癌
剤の半減期は一般に短い。癌細胞の細胞周期のS期に対
して作用するメトトレキセートは、36時間から48時
間といわれる細胞周期のS期のみに対して働くために、
限られた抗癌作用しか示すことができない。血中濃度を
持続させより多くの癌細胞を攻撃するために抗癌剤の投
与量を上げると、短時間当たりの血中薬剤濃度が高すぎ
て、癌細胞と同様に細胞増殖速度の速い粘膜などの正常
細胞に障害をもたらす。
【0005】そこでメトトレキセートのような抗癌剤を
何らかの方法で血中に徐々に放出させ、副作用を生じな
い薬剤濃度を持続させれば、毒性を軽減し抗癌効果を高
めることが期待される。薬剤濃度持続の方法としては従
来から臨床的に行われてきた持続点滴などの直接的方法
と、患者の負担を軽減するために抗癌剤をリポソームや
高分子ミクロスフィア微粒子へ包埋して投与する間接的
方法がある。後者は血中濃度を一回の投与で制御するこ
とができ、副作用の強い薬剤を投与するための優れた方
法として注目されている。このような必要な薬剤を、必
要な濃度、必要とされる時間、必要とされる場所に供給
する手法あるいは考え方はドラッグ・デリバリー・シス
テム(DDS)と呼ばれ、近年著しく発展しつつある分
野である。薬剤と高分子化合物の結合体も、高分子の体
内滞留性の高いこと、高分子から薬剤が徐々に放出され
ることからDDSの有力な手法として考えられている。
特にメトトレキセートのように血中内薬剤濃度の持続に
より副作用軽減と坑癌効果増強が期待される薬剤は、高
分子に化学的に結合し、薬剤を徐放化するこが有効と考
えられる。
【0006】メトトレキセートに関してはこのような観
点からこれまで数多くの高分子結合体が知られ最近では
血清アルブミンとの結合体が知られている(Neoplasma,
37(3)343-349(1990))。しかしアルブミンは生体由来の
タンパク質で多数のアミノ酸からなり、メトトレキセー
トとの結合様式及び結合部位は不明である。さらに結合
体のB16黒色腫に対する抗癌活性はメトトレキセート
とほとんど差異が見られず、アルブミン結合体の優位性
は示されていない。
【0007】メトトレキセートの薬理機構から高分子に
結合して徐放化することにより抗癌活性増強の可能性が
高いにもかかわらず、これまでの高分子結合体がメトト
レキセート単独の活性を上回ることができなかった原因
は、メトトレキセートと高分子の結合様式を明確に設計
していなかったことにある。メトトレキセートの体内で
の変換を考慮して末端のグルタミン酸残基で高分子と結
合し、メトトレキセートの高分子からの徐放性を確立
し、メトトレキセートより優れた抗癌活性を有する高分
子結合体を合成することが課題である。
【0008】
【 課題を解決するための手段]本発明者らは以上のよう
な事情に鑑み、メトトレキセートのグルタミン酸残基を
修飾した誘導体を合成し、この誘導体を結合する高分子
として鋭意研究を重ねた結果、ピラン共重合体が有効で
あることを見いだした。 【0009】すなわちピラン共重合体はまずそれ自身で
生物の防御機能である免疫系を活性化して抗癌作用を有
することが知られている(Pure&Appl.Chem.,46,103-113
(1976))。高分子量のピラン共重合体と低分子量の抗癌
剤を結合した場合、低分子抗癌剤は徐々に高分子から放
出され、高分子の体内での高い滞留性と相まって、血中
濃度が長時間持続することが期待される。またピラン共
重合体の免疫活性化と抗癌剤の殺細胞作用が抗癌剤とし
ての機構が異なるために、相乗的効果の可能性が高い。
ピラン共重合体は化学的反応性が高い酸無水物結合を多
数有しているので、薬剤のアミノ基や水酸基などの官能
性基と容易に反応して、高い薬剤含有率の高分子結合体
を得ることができる。さらにこの結果生成した高分子結
合体は、酸無水物結合開裂の結果多数のカルボン酸が生
じこと、高分子骨格中に親水性の高いピラン環を有する
ことから、極めて水溶性が高い。ピラン共重合体と薬剤
の結合体の場合、高分子と薬剤のアミドあるいはエステ
ル結合に隣接してカルボキシル基が存在するため、カル
ボキシル基の背後攻撃による加水分解が起こり、通常容
易に加水分解できないアミド結合も加水分解酵素の関与
なく開裂して薬剤が放出される。このように相乗的抗癌
効果の増強、高含有率結合体の合成、高い水溶性、分子
内官能基による加水分解などピラン共重合体はメトトレ
キセートの高分子担体として極めて優れていることを見
いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0010】すなわち本発明は繰り返し単位が一般式
(I)
【化12】 及び一般式(II)
【化13】 (式中のRは一般式(III)
【化14】 又は一般式(IV)
【化15】 で表されるメトトレキセート誘導体残基(ただし一般式
(III)及び一般式(IV)中のnは1から12まで
の整数である))で表される繰り返し単位10以上50
0以下からなり、かつ一般式(I)及び一般式(II)
のモル比が0:100から90:10であるメトトレキ
セート誘導体とピラン共重合体の高分子結合体及びその
塩、及び当該メトトレキセート誘導体とピラン共重合体
の高分子結合体及びその塩を、水溶性有機溶媒の存在下
一般式(V)
【化16】 (式中のmは10以上500以下からなる整数である)
で表されるピラン共重合体に一般式(VI)
【化17】 又は一般式(VII)
【化18】 (ただし一般式(VI)及び一般式(VII)中のnは
1から12までの整数である)であるメトトレキセート
誘導体を反応させ、ついで所望に応じ塩に変えることに
より製造する方法を提供するものである。
【0011】本発明に用いる一般式(IV)のピラン共
重合体はジビニルエーテルと無水マレイン酸から公知の
方法により合成した(Macromol.Synthesis,8,89-94(198
2))。このピラン共重合体はそれ自身で抗癌活性を有し
ており、結合した抗癌剤との相乗的抗癌活性増強が期待
される。本発明に用いるピラン共重合体の分子量は生体
内からの排泄性を考慮して分子量約10万以下、かつ滞
留性から分子量約3000以上とした。これは一般式
(V)の繰り返し単位mが10から500の範囲に相当
する。
【0012】本発明に用いた抗癌剤のメトトレキセート
は急性リンパ性白血病・乳癌・肺癌・頭頸部癌等に対し
て優れた抗癌作用を有し、高分子と結合して徐放化する
ことにより抗癌作用の増強が期待される。
【0013】ピラン共重合体とメトトレキセートの結合
体に関しては、メトトレキセートの芳香環であるプテリ
ジン環のアミノ基とピラン共重合体の酸無水物結合との
直接的反応が知られている(Makrolmol.Chem.,179,1719
-1843(1978))。しかしプテリジン環のアミノ基とピラ
ン共重合体の結合は不安定であり、結合したメトトレキ
セートは数分以内にほとんど放出されてしまう。このた
めこの高分子結合体はL1210白血病マウスに対してメト
トレキセートと同等の活性しか示さなかった(Cancer T
reat.Rep.,62,1837-1843(1978))。ピラン共重合体とメ
トトレキセートの安定な高分子結合体を合成するために
は、メトトレキセートのグルタミン酸残基のカルボキシ
ル基に予めアミノ基を末端に有するスペーサーを導入し
た誘導体を合成し、このアミノ基とピラン共重合体の酸
無水物結合を反応させて、安定なアミド結合による高分
子結合体を合成することが最も有効と考えられた。
【0014】すなわち本発明のメトトレキセートとピラ
ン共重合体の高分子結合体の特徴は、予めメトトレキセ
ートにアルキルジアミンを反応させて誘導体を合成・単
離し、このメトトレキセート誘導体とピラン共重合体を
反応させることにある。メトトレキセートのアルカリ性
緩衝液とピラン共重合体を水と相溶性の有機溶媒中で反
応させ、限外ロ過により精製し、アセトン又はメタノー
ル中に沈澱あるいは凍結乾燥により高分子結合体を得
る。また所望に応じ結合体をナトリウム・カリウム・カ
ルシウム・マグネシウムなどの薬理的に共用しうる塩に
変えた後、限外ロ過及び再沈澱あるいは凍結乾燥により
高分子結合体の塩として取り出す。このようにして得ら
れるメトトレキセートとピラン共重合体の高分子結合体
中のメトトレキセートの含有率は望ましくは5から67
重量%である。5重量%は一般式(I)と一般式(I
I)の割合が90:10に相当し、67重量%は一般式
(I)と一般式(II)の割合が0:100に相当する
高分子結合体である。
【0015】抗癌剤の高分子結合体からの徐放性に関し
ては、一般式(I)と一般式(II)の割合が71:2
9であり、かつ一般式(IV)のn=6さらに一般式
(V)でm=110のメトトレキセートと分子量3万の
ピラン共重合体の結合体は、ヒト血清中37℃で3日目
までに30%のメトトレキセート誘導体を放出し、この
結合体が血清中で抗癌剤を徐々に放出する事が示され
た。
【0016】また高分子結合体の抗癌活性に関しては前
述の一般式(I)と一般式(II)の割合が71:29
であり、かつ一般式(IV)のn=6さらに一般式
(V)でm=110のメトトレキセートと分子量3万の
ピラン共重合体の結合体についてP388白血病マウスに対
して抗癌活性を評価した。1×106個のP388白血病細
胞を腹腔内に移植した6週令メスCDF1マウスに対し
て、腫瘍移植24時間後に一回腹腔内に薬剤を投与して
治療し、一群6匹の治療群と無治療群の生存を比較検討
した。各群の生存日数の中央値から無治療群に対する延
命率を算出し、評価の基準とした。メトトレキセート単
独投与群の延命率が54%であったのに対して、メトト
レキセートとピラン共重合体の高分子結合体は延命率1
63%であり、生物学的統計方法のMann-Whitnneyの有
為差検定でも明らかに高分子結合体が優れた抗癌効果を
示した。
【0017】以上このように本発明のメトトレキセート
誘導体とピラン共重合体の高分子結合体は、抗癌活性物
質のメトトレキセート誘導体を血清中で徐々に放出し、
それ自身で抗癌効果を有するピラン共重合体とメトトレ
キセートの抗癌効果の相乗作用により、該メトトレキセ
ート単独を用いる場合に比較して著しく優れた抗癌効果
を有した。
【0018】
【 実施例】次に実施例により本発明をより詳細に説明
する。なお一般式(V)のジビニルエーテルと無水マレ
イン酸共重合体はピラン共重合体と記述する。
【0019】実施例1 40mlのジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキ
シドあるいはN−メチルピロリドン中に溶解したメトト
レキセート1.6gと1,6−ジアミノヘキサン4.0g
を水溶性カルボジイミド0.8gを用いて室温で2時間
攪拌して反応させ、1lのアセトン中に滴下してメトト
レキセートとジアミノヘキサン反応物2.2gを沈澱さ
せた。この反応物をpH4.6の0.2モル酢酸アンモニウム緩
衝液に10%アセトニトリル及び10%メタノールを添加した
溶出液で分取用高速液体クロマトグラフィーカラム(20m
m直径x25cm長さ)により分取し、メトトレキセートの1,
6−ジアミノヘキサン誘導体として一般式(III)の
化合物(ただしn=6)0.4g及び一般式(IV)の
化合物(ただしn=6)0.5gを得た。酢酸塩として
単離した一般式(3)の分子式C2842107に対す
る元素分析値はそれぞれ実測値(理論計算値)として、
C:53.24%(53.31%)、H:6.36%(6.
72%)、N:22.48%(22.20%)であり、実
測値と理論計算値は一致した。
【0020】メトトレキセートの1,6−ジアミノヘキ
サン誘導体一般式(III)(ただしn=6)(あるい
は一般式(IV)(ただしn=6))25mgを15m
lのpH8.6の0.2モルホウ酸緩衝液に溶解し、平均分子量
3万の一般式(V)でm=110のピラン共重合体20
mgの2mlアセトン又はジメチルスルホキシドあるい
はN−メチルピロリドン溶液を加え、pH8.6に0.2モル水
酸化ナトリウム溶液で調整しつつ室温で2時間反応させ
た。未反応のメトトレキセート誘導体及びホウ酸塩をア
ミコン社限外ロ過膜PM30(分画分子量3万)を用い
て蒸留水により洗浄し、ロ液の313nmの紫外部吸収で反
応溶液中に未反応メトトレキセート誘導体が存在しない
ことを確認して、0.1μm孔径のミリポア社滅菌ロ過膜で
滅菌ロ過した後、凍結乾燥して黄色綿状固体54mgを
得た。メトトレキセート自身は蒸留水に難溶性である
が、ここで得られたメトトレキセート高分子結合体は蒸
留水及び生理食塩水に対して極めて易溶性であった。生
成物のメトトレキセート高分子結合体の水溶液中の紫外
部吸収スペクトルは図1に示すようにメトトレキセート
とほぼ同一のスペクトルを有していた。高分子結合体中
のメトトレキセート含有率は水溶液中の309nmの紫外部
吸収強度から41重量%と定量された。これは一般式
(I)が67%、一般式(II)が33%からなり、か
つ一般式(II)中のRが一般式(III)(あるいは
一般式(IV))でm=6のメトトレキセート誘導体の
ピラン共重合体の高分子結合体である。
【0021】実施例2 実施例1で得られたメトトレキセート誘導体のピラン共
重合体の高分子結合体20mgを蒸留水に溶解し、0.1
モルの炭酸水素ナトリウム溶液でpH7.8に調整した。ナ
トリウム塩となった高分子結合体を再びアミコン社限外
ロ過膜PM30を用いて蒸留水に対して洗浄し、0.1μm
孔径のミリポアフィルターで滅菌ロ過後、凍結乾燥して
21mgの黄色綿状固体を得た。この高分子結合体塩は
実施例1で得られた高分子結合体よりさらに水又は生理
食塩水に対する溶解性が高い。水溶液中の紫外部吸収ス
ペクトルは実施例1と同様であり、メトトレキセート含
有率は35重量%であった。
【0022】実施例3 実施例1で得られたメトトレキセートの1,6−ジアミ
ノヘキサン誘導体一般式(III)(ただしn=6)
(あるいは一般式(IV)(ただしn=6))68mg
を15mlのpH8.6の0.2モルホウ酸緩衝液に溶解し、平
均分子量5千の一般式(V)でm=18のピラン共重合
体68mgの2mlアセトン又はジメチルスルホキシド
あるいはN−メチルピロリドン溶液を加え、pH8.6に0.2
モル水酸化ナトリウム溶液で調整しつつ室温で2時間反
応させた。未反応のメトトレキセート誘導体及びホウ酸
塩をアミコン社限外ロ過膜PM10(分画分子量1万)
を用いて蒸留水により洗浄し、ロ液の313nmの紫外部吸
収で反応溶液中に未反応メトトレキセート誘導体が存在
しないことを確認して、0.1μm孔径のミリポア社滅菌ロ
過膜で滅菌ロ過した後、凍結乾燥して黄色綿状固体15
2mgを得た。メトトレキセート自身は蒸留水に難溶性
であるが、ここで得られたメトトレキセート高分子結合
体は蒸留水及び生理食塩水に対して極めて易溶性であっ
た。生成物のメトトレキセート高分子結合体の水溶液中
の紫外部吸収スペクトルはメトトレキセートとほぼ同一
のスペクトルを有していた。高分子結合体中のメトトレ
キセート含有率は水溶液中の309nmの紫外部吸収強度か
ら29重量%と定量された。これは一般式(I)が80
%、一般式(II)が20%からなり、かつ一般式(I
I)中のRが一般式(III)(あるいは一般式(I
V))でm=6のメトトレキセート誘導体のピラン共重
合体の高分子結合体である。
【0023】実施例4 実施例1で得られたメトトレキセートの1,6−ジアミ
ノヘキサン誘導体一般式(III)(ただしn=6)
(あるいは一般式(IV)(ただしn=6))68mg
を15mlのpH8.6の0.2モルホウ酸緩衝液に溶解し、平
均分子量12万の一般式(V)でm=441のピラン共
重合体68mgの2mlアセトン又はジメチルスルホキ
シドあるいはNーメチルピロリドン溶液を加え、pH8.6
に0.2モル水酸化ナトリウム溶液で調整しつつ室温で2
時間反応させた。未反応のメトトレキセート誘導体及び
ホウ酸塩をアミコン社限外ロ過膜PM30(分画分子量
3万)を用いて蒸留水により洗浄し、ロ液の313nmの紫
外部吸収で反応溶液中に未反応メトトレキセート誘導体
が存在しないことを確認して、0.1μm孔径のミリポア社
滅菌ロ過膜で滅菌ロ過した後、凍結乾燥して黄色綿状固
体150mgを得た。メトトレキセート自身は蒸留水に
難溶性であるが、ここで得られたメトトレキセート高分
子結合体は蒸留水及び生理食塩水に対し易溶性であっ
た。生成物のメトトレキセート高分子結合体の水溶液中
の紫外部吸収スペクトルはメトトレキセートとほぼ同一
のスペクトルを有していた。高分子結合体中のメトトレ
キセート含有率は水溶液中の309nmの紫外部吸収強度か
ら29重量%と定量された。これは一般式(I)が80
%、一般式(II)が20%からなり、かつ一般式(I
I)中のRが一般式(III)(あるいは一般式(I
V))でm=6のメトトレキセート誘導体のピラン共重
合体の高分子結合体である。
【0024】実施例5 実施例1と同様に40mlのジメチルホルムアミド又は
ジメチルスルホキシドあるいはN−メチルピロリドン中
に溶解したメトトレキセート454mgと1,3−ジア
ミノプロパン840μlを水溶性カルボジイミド230
mgを用いて室温で2時間攪拌して反応させ、1lのア
セトン中に滴下してメトトレキセートとジアミノプロパ
ン反応物500mgを沈澱させた。この反応物をpH4.6
の0.2モル酢酸アンモニウム緩衝液に10%アセトニトリル
及び5%メタノールを添加した溶出液で分取用高速液体ク
ロマトグラフィーカラム(20mm直径x25cm長さ)により分
取し、メトトレキセートの1,3−ジアミノプロパン誘
導体として一般式(III)の化合物(ただしn=3)
105mg及び一般式(IV)の化合物(ただしn=
3)120mgを得た。酢酸塩として単離した一般式
(III)の分子式C2536107に対する元素分析
値はそれぞれ実測値(理論計算値)として、C:51.
00%(49.97%)、H:6.18%(5.96
%)、N:23.80%(23.83%)であり、実測値
と理論計算値は一致した。
【0025】メトトレキセートの1,3−ジアミノヘキ
サン誘導体一般式(II)(ただしn=3)(あるいは
一般式(IV)(ただしn=3))68mgを15ml
のpH8.6の0.2モルホウ酸緩衝液に溶解し、平均分子量3
万の一般式(V)でm=110のピラン共重合体68m
gの2mlアセトン又はジメチルスルホキシドあるいは
N−メチルピロリドン溶液を加え、pH8.6に0.2モル水酸
化ナトリウム溶液で調整しつつ室温で2時間反応させ
た。未反応のメトトレキセート誘導体及びホウ酸塩をア
ミコン社限外ロ過膜PM30(分画分子量3万)を用い
て蒸留水により洗浄し、ロ液の313nmの紫外部吸収で反
応溶液中に未反応メトトレキセート誘導体が存在しない
ことを確認して、0.1μm孔径のミリポア社滅菌ロ過膜で
滅菌ロ過した後、凍結乾燥して黄色綿状固体129mg
を得た。メトトレキセート自身は蒸留水に難溶性である
が、ここで得られたメトトレキセート高分子結合体は蒸
留水及び生理食塩水に対して極めて易溶性であった。生
成物のメトトレキセート高分子結合体の水溶液中の紫外
部吸収スペクトルはメトトレキセートとほぼ同一のスペ
クトルを有していた。高分子結合体中のメトトレキセー
ト含有率は水溶液中の309nmの紫外部吸収強度から33
重量%と定量された。これは一般式(I)が75%、一
般式(II)が25%からなり、かつ一般式(II)中
のRが一般式(III)(あるいは一般式(IV))で
m=3のメトトレキセート誘導体のピラン共重合体の高
分子結合体である。
【0026】実施例6 実施例1と同様に40mlのジメチルホルムアミド又は
ジメチルスルホキシドあるいはN−メチルピロリドン中
に溶解したメトトレキセート454mgと1,12−ジ
アミノドデカン2.0gを水溶性カルボジイミド422
mgを用いて室温で2時間攪拌して反応させ、1lのア
セトン中に滴下してメトトレキセートとジアミノドデカ
ン反応物624mgを沈澱させた。この反応物をpH4.6
の0.2モル酢酸アンモニウム緩衝液に10%アセトニトリル
及び30%メタノールを添加した溶出液で分取用高速液体
クロマトグラフィーカラム(20mm直径x25cm長さ)により
分取し、メトトレキセートの1,12−ジアミノドデカ
ン誘導体として一般式(III)の化合物(ただしn=
12)128mg及び一般式(IV)の化合物(ただし
n=3)225mgを得た。酢酸塩として単離した一般
式(III)の分子式C3352107に対する元素分
析値はそれぞれ実測値(理論計算値)として、C:5
6.87%(55.22%)、H:6.96%(7.14
%)、N:20.10%(19.34%)であり、実測値
と理論計算値は一致した。
【0027】メトトレキセートの1,12−ジアミノド
デカン誘導体一般式(III)(ただしn=12)(あ
るいは一般式(IV)(ただしn=12))54mgを
15mlのpH8.6の0.2モルホウ酸緩衝液に溶解し、平均
分子量3万の一般式(V)でm=110のピラン共重合
体54mgの2mlアセトン又はジメチルスルホキシド
あるいはN−メチルピロリドン溶液を加え、pH8.6に0.2
モル水酸化ナトリウム溶液で調整しつつ室温で2時間反
応させた。未反応のメトトレキセート誘導体及びホウ酸
塩をアミコン社限外ロ過膜PM30(分画分子量3万)
を用いて蒸留水により洗浄し、ロ液の313nmの紫外部吸
収で反応溶液中に未反応メトトレキセート誘導体が存在
しないことを確認して、0.1μm孔径のミリポア社滅菌ロ
過膜で滅菌ロ過した後、凍結乾燥して黄色綿状固体11
2mgを得た。メトトレキセート自身は蒸留水に難溶性
であるが、ここで得られたメトトレキセート高分子結合
体は蒸留水及び生理食塩水に対して極めて易溶性であっ
た。生成物のメトトレキセート高分子結合体の水溶液中
の紫外部吸収スペクトルはメトトレキセートとほぼ同一
のスペクトルを有していた。高分子結合体中のメトトレ
キセート含有率は水溶液中の309nmの紫外部吸収強度か
ら25重量%と定量された。これは一般式(I)が86
%、一般式(II)が14%からなり、かつ一般式(I
I)中のRが一般式(III)(あるいは一般式(I
V))でm=12のメトトレキセート誘導体のピラン共
重合体の高分子結合体である。
【0028】参考例1 メトトレキセート誘導体のピラン共重合体の高分子結合
体からの血清中でのメトトレキセート誘導体の放出速度
【0029】実施例1で得たメトトレキセート高分子結
合体6.7mgをヒト血清1.0mlに溶解して37℃に
保ち、一定時間経過後100μlのサンプルを取り、メタノ
ール500μlを添加して攪拌後遠心分離して血清中タンパ
ク質を分離し、アメトプテリンを内部標準として分析用
ODS逆相系高速液体クロマトグラフィーカラム(4.6mm内
径x15cm長さ)でメトトレキセート誘導体を分離・定量し
た。溶出液としてpH4.6の0.2モル酢酸アンモニウム緩衝
液、溶出速度1.0ml/min、検出波長313nmを用いた。図2
に示すように実施例1で得られたメトトレキセート誘導
体のピラン共重合体の高分子結合体からヒト血清中で6
日間で30%のメトトレキセート誘導体が放出された。
【0030】
【図2】
【0031】参考例2 メトトレキセート誘導体のピラン共重合体の高分子結合
体の抗癌効果
【0032】実施例1で得たメトトレキセート高分子誘
導体の抗癌効果をP388白血病マウスに対して検討した。
【0033】すなわち6週令のメスCD2F1マウスの腹腔
内に1x106個のP388白血病細胞を移植し、24時間経過後
腹腔内に一回薬剤を投与して治療した。一群6匹の無処
置の対照群と治療群の体重減少と生存日数を観察した。
各群マウス死亡の中央値を生存日数として、無処置の対
照群の生存日数に対して、治療群の延命率を百分率で算
出し、抗癌活性比較の指標とした。表1に示すように無
処置対照群の生存中央値は9.0日であったのに対し、
メトトレキセート単独投与では13.9日、メトトレキ
セート高分子結合体では23.8日であり、メトトレキ
セート高分子結合体の方が著しく優れた抗癌効果を示し
た。
【0034】この各群の結果の差異を明確に評価するた
め、Mann-Whitneyの有為差検定を行った結果、それぞれ
の差異は95%以上の確率で有為であることが確かめら
れた。またメトトレキセートとピラン共重合体の同時治
療もメトトレキセート単独治療に比較して優れた効果を
示しており、メトトレキセートとピラン共重合体が相乗
的に働くことが示された。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】本発明のメトトレキセート誘導体のピラ
ン共重合体の高分子結合体は抗癌活性物質であるメトト
レキセート誘導体の徐放性に優れ、それ自身抗癌活性を
有するピラン共重合体との相乗効果により、該メトトレ
キセート単独で用いる場合に比較して著しく優れた抗癌
効果を有する。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1におけるメトトレキセート誘導体の
ピラン共重合体の高分子結合体の蒸留水中の紫外部吸収
スペクトル。
【図2】 実施例1におけるメトトレキセート誘導体の
ピラン共重合体の高分子結合体のヒト血清中でのメトト
レキセート誘導体の放出速度。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 国分友邦 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 田中秀明 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繰り返し単位が一般式(I) 【化1】 及び一般式(II) 【化2】 (式中のRは式(III) 【化3】 又は式(IV) 【化4】 で表されるメトトレキセート誘導体残基(ただし式(I
    II)あるいは式(IV)中のnは1から12までの整
    数である))で表される繰り返し単位10以上500以
    下からなり、かつ一般式(I)及び一般式(II)のモ
    ル比が0:100から90:10であるメトトレキセー
    ト誘導体とピラン共重合体の高分子結合体及びその塩。
  2. 【請求項2】 水溶性有機溶媒の存在下、一般式(V) 【化5】 (式中のmは10以上500以下の整数である)で表さ
    れるピラン共重合体に、一般式(VI) 【化6】 又は一般式(VII) 【化7】 (ただし一般式(VI)及び一般式(VII)中のnは
    1から12までの整数である)で表されるメトトレキセ
    ート誘導体を反応させ、ついで所望に応じて塩に変える
    ことを特徴とする、繰り返し単位一般式(I) 【化8】 及び一般式(II) 【化9】 (式中のRは一般式(III) 【化10】 又は一般式(IV) 【化11】 で表されるメトトレキセート誘導体残基(ただし一般式
    (III)あるいは一般式(IV)中のnは1から12
    までの整数である))で表される繰り返し単位10以上
    500以下からなり、かつ一般式(I)及び一般式(I
    I)のモル比が0:100から90:10であるメトト
    レキセート誘導体とピラン共重合体の高分子結合体及び
    その塩の製造方法。
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