JPH07165780A - 新規抗生物質hut57b及びその製造法並びに用途 - Google Patents

新規抗生物質hut57b及びその製造法並びに用途

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JPH07165780A
JPH07165780A JP4103954A JP10395492A JPH07165780A JP H07165780 A JPH07165780 A JP H07165780A JP 4103954 A JP4103954 A JP 4103954A JP 10395492 A JP10395492 A JP 10395492A JP H07165780 A JPH07165780 A JP H07165780A
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JP
Japan
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hut57b
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antibiotic
culture
methanol
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JP4103954A
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Taiji Tanaka
中 泰 至 田
Yasushi Uchida
田 泰 内
Kaname Hasegawa
谷 川 要 長
Kiyoshi Kadowaki
脇 清 門
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Higeta Shoyu Co Ltd
Original Assignee
Higeta Shoyu Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 バチルス・リケニホルミス(Bacillu
s licheniformis)UTKの培養物から
抗真菌抗生物質HUT57Bを製造する。 【効果】 ヒト、動物用の抗真菌剤としての有効である
のみならず、農園芸用抗カビ剤としても有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、真菌感染症の治療剤と
して有効な新規抗生物質HUT57B及びその製造法並
びに用途に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、かび、酵母等の真菌による感染症
は皮膚、呼吸器管、ちつ等の局所感染のほか、全身感染
も増加の傾向にある。
【0003】特に、最近では、免疫抑制剤、制癌剤等の
使用により免疫能が低下した場合に深部感染症などの全
身性感染症が増加している。また、致命的な重症感染例
が臨床においても多数報告されている(日病会誌,
,61(1985))。
【0004】しかしながら、細菌感染症の化学療法の著
しい進歩に比較して、真菌感染症の化学療法は立ち遅れ
ていると言わざるをえないのが現状である。この理由の
1つとして、細菌類は原核細胞(prokaryocy
te)であり、真核細胞(eukaryocyte)で
ある動物細胞と細胞性基盤が異なっているので選択毒性
を有する薬剤が得易いのに対して、真菌類は動物細胞と
同様に真核細胞で構成され細胞性基盤が互いに共通して
いるので真菌類と動物細胞に選択毒性を高めることは容
易なことではないことが挙げられる。
【0005】現在、深在性真菌性(カンジダ症、アスペ
ルギルス症、クリプトコックス症、ムコール症)に経口
投与できる薬剤はamphotericinBが知られ
ているにすぎず(Annu.Rev.Pharmaco
l.Toxicol.,23,303(1983))、
選択毒性の高い新規抗真菌剤の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した業
界のニーズに応えるためになされたものであって、真菌
感染症の予防、治療剤として有用な、高活性を有し、選
択毒性が高く且つ安全性の高いすぐれた新規物質を開発
することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために既知の化学物質についてのスクリーニングを
行ったけれども目的達成には至らなかった。
【0008】そこで本発明者らは、安全性の面から天然
物、特に微生物の発酵生産物に着目し、各種微生物を検
索した結果、本発明者らが分離するのに成功したバチル
スsp.UTK(FERM P−11442、FERM
BP−3794;現在はバチルス・リケニホルミスU
TK(Bacillus licheniformis
UTK)と同定されている)が培養物中に目的物質を
蓄積することを発見した。そして更にこの物質について
その理化学的性質を詳細に研究したところ、従来未知の
新規物質であることを確認し、この物質を新たにHUT
57Bと命名し、そして更に研究の結果、その工業的製
法を確立し、また抗真菌作用も併せて確認し、本発明を
完成するに至った。
【0009】本発明に係るHUT57Bは、下記の表
2、表3に示す理化学的性質を有している。
【0010】
【表2】
【0011】
【表3】
【0012】HUT57Bの生産は、単に説明を目的と
して挙げただけの本明細書記載の特定の微生物の使用に
限定されるものではないことを理解すべきである。この
発明は、記載の微生物からX線照射、紫外線照射、N−
メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、2−
アミノプリン等の変異処理により取得できる人工変異株
並びに自然変異株を含めてHUT57Bを生産しうる全
ての変異株の使用をも包含するものである。
【0013】次に、下記の表4、表5に、バチルス・リ
ケニホルミスUTKの菌学的性質を示す。
【0014】
【表4】
【0015】
【表5】
【0016】本発明に係る新規抗生物質HUT57B
は、バチルス属に属する該物質生産菌(例えばBaci
llus licheniformis UTK)を資
化しうる炭素及び窒素源を含む栄養培地中に接種し、好
気条件下で培養することにより(例えば、振とう培養、
通気撹拌培養等)、生産せしめることができる。
【0017】炭素源としては、グルコース、シュークロ
ース、澱粉、フラクトース、グリセリンその他の炭水化
物を使用するのが好ましい。
【0018】窒素源としては、オートミール、イースト
エキストラクト、ペプトン、グルテンミール、綿実粉、
大豆ミール、コーンスティープリカー、乾燥イースト、
小麦胚芽、落花生粉、チキン骨肉ミール等を使用するの
が好ましいが、アンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニ
ウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等)、尿
素、アミノ酸等の無機及び有機の窒素化合物も有利に使
用することができる。
【0019】これらの炭素源及び窒素源は、併用するの
が有利であるが、純粋なものを必らずしも使用する必要
はない。純粋でないものには、生長因子や微量要素が含
まれているからである。
【0020】必要ある場合には、例えば次のような無機
塩類を培地に添加してもよい:炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナト
リウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリ
ウム、マグネシウム塩、銅塩、コバルト塩等。
【0021】特に、培地が強く発泡するのであれば、必
要あるときに、液体パラフィン、動物油、植物油、鉱物
油、シリコン等を添加してもよい。
【0022】目的物質を大量に工業生産するには、他の
発酵生産物の場合と同様に、通気撹拌培養するのが好ま
しい。少量生産の場合は、フラスコを用いる振とう培養
が好適である。
【0023】また、培養を大きなタンクで行う場合、H
UT57Bの生産工程において菌の生育遅延を防止する
ため、はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養し
た後、次に培養物を大きな生産タンクに移してそこで生
産培養するのが好ましい。この場合、前培養に使用する
培地及び生産培養に使用する培地の組成は、両者ともに
同一であってもよいし必要あれば両者を変えてもよい。
【0024】培養は通気撹拌条件で行うのが好ましく、
例えばプロペラやその他機械による撹拌、ファーメンタ
ーの回転または振とう、ポンプ処理、空気の吹込み等既
知の方法が適宜使用される。通気用の空気は滅菌してお
くのが良い。
【0025】培養温度は、本HUT57B生産菌が本物
質を生産する範囲内で適宜変更しうるが、通常は10〜
40℃、好ましくは25〜35℃で培養するのがよい。
培養時間は、培養条件や培養量によっても異なるが、通
常は約1日〜1週間である。
【0026】発酵終了後、培養物から目的とするHUT
57Bを回収する。すなわち、菌体は、直接水及び/又
は有機溶媒による抽出、あるいは、これを機械的に又は
超音波等既知の手段を用いて破壊した後、水及び/又は
有機溶媒で抽出した後、常法にしたがって回収、精製す
る。培養液の場合は、直接、溶媒で抽出してもよいし、
また、培養液を活性炭、粉末セルロース、吸着性樹脂等
の担体に接触させてHUT57Bを吸着させた後、これ
を担体から溶出すればよい。
【0027】回収、精製方法としては、抗生物質採取の
際の常法が適宜利用され、例えば、水、有機溶媒、これ
らの混合溶媒による溶媒抽出;クロマトグラフィー;単
一溶媒又は混合溶媒からの再結晶等常法が適宜単独であ
るいは組合わせて使用できる。
【0028】HUT57Bの回収、精製は上記のように
既知の方法を適宜利用して行うが、例えば次のようにし
てもよい。まず、培養物を酸性にした後、メタノールで
抽出し、抽出液にエチルアセテートを添加し、生成した
沈澱をメタノールに溶解した後、クロマトグラフィを行
い、又は再結晶処理し、更に必要あれば、凍結乾燥して
もよい。
【0029】本発明化合物を医薬として投与する場合、
本発明化合物はそのまま又は医薬的に許容される無毒性
かつ不活性の担体中に、たとえば、0.1%〜99.5
%、好ましくは0.5%〜90%含有する医薬組成物と
して、人を含む動物に投与される。
【0030】担体としては、固形、半固形、又は液状の
希釈剤、充填剤、及びその他の処方用の助剤一種以上が
用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与するこ
とが望ましい。本発明医薬組成物は、経口投与、組織内
投与、局所投与(経皮投与など)、又は経直腸的に投与
する事ができるが、外用剤としても使用できる。これら
の投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんであ
る。
【0031】抗真菌剤としての用量は、年齢、体重等の
患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した
上で調整する事が望ましいが、通常は、成人に対して本
発明の有効成分量として、一日当たり、10〜2000
mg範囲が一般的である。場合によっては、これ以下で
足りるしまた逆にこれ以上の用量を必要とする事もあ
る。多量に投与するときは、一日数回に分割して投与す
ることが望ましい。
【0032】経口投与は固形又は液状の用量単位、たと
えば末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、ドロップ
剤、舌下錠その他の剤型によって行う事ができる。
【0033】末剤は、活性物質を適当な細かさにする事
により製造される。散剤は活性物質を適当な細かさと成
し、次いで同様に細かくした医薬用担体、たとえば澱
粉、マンニトールの如き可食性炭水化物その他と混合す
ることにより製造される。必要に応じ風味剤、保存剤、
分散剤、着色剤、香料その他のものを混じても良い。
【0034】カプセル剤は、まず粉末状となった末剤や
散剤あるいは顆粒化したものを、たとえばゼラチンカプ
セルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製
造される。滑沢剤や流動化剤、たとえばコロイド状のシ
リカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールの如きも
のを粉末状態のものに混合し、然るのちに充填操作を行
う事もできる。崩壊剤や可溶化剤、たとえばカルボキシ
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシ
ウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸カ
ルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が
摂取された時の医薬の有効性を改善する事ができる。
【0035】また、本品の微粉末を植物油、ポリエチレ
ングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散
し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とする
こともできる。
【0036】錠剤は粉末混合物を作り、顆粒化若しくは
スラグ化し、次いで崩壊剤又は滑沢剤を加えたのち打錠
することにより製造される。
【0037】粉末混合物は、適当に粉末化された物質を
上述の希釈剤やベースと混合し、必要に応じ結合剤(た
とえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギ
ン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニル
アルコールなど)、溶解遅延化剤(たとえばパラフィン
など)、再吸収剤(たとえば四級塩)及び/又は吸着剤
(たとえばベントナイト、カオリン、リン酸ジカルシウ
ムなど)を併用してもよい。粉末混合物は、まずシロッ
プ、でんぷん糊、アラビアゴム、セルロース溶液又は高
分子物質溶液などの結合剤で湿らせ、次いで篩を強制通
過させて顆粒とする事ができる。このように粉末を顆粒
化するかわりに、まず打錠機にかけたのち、得られる不
完全な形態のスラグを破砕して顆粒にすることも可能で
ある。
【0038】このようにして作られる顆粒は、滑沢剤と
してステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラル
オイルその他を添加することにより、互いに付着する事
を防ぐ事ができる。このように滑沢化された混合物を、
次いで打錠する。また薬物は、上述のように顆粒化やス
ラグ化の工程を経ることなく、流動性の不活性担体と結
合したのちに直接打錠しても良い。シェラックの密閉被
膜から成る透明又は半透明の保護被膜、糖や高分子材料
の被覆、及びワックスより成る磨上被覆の如きも用いう
る。
【0039】他の経口投与剤型、たとえば溶液、シロッ
プ、エリキシルなどもまたその一定量が含有するように
用量単位形態にする事ができる。シロップは、化合物を
適当な香味化水溶液に溶解して製造され、またエリキシ
ルは非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造
される。懸濁剤は化合物を非毒性担体中に分散させるこ
とにより処方される。可溶化剤や乳化剤(たとえばエト
キシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシ
エチレンソルビトールエステル類、保存剤、風味賦与剤
(たとえばペパミント油、サッカリン)その他もまた必
要に応じ添加できる。
【0040】必要とあれば、経口投与のための用量単位
処方はマイクロカプセル化してもよい。該処方はまた被
覆をしたり、高分子・ワックス等中にうめ込んだりする
ことにより作用時間の延長や持続放出をもたらす事もで
きる。
【0041】非経口的投与は、皮下・筋肉内又は静脈内
注射用としたところの液状用量単位形態、たとえば溶液
や懸濁剤の形態を用いる事によって行いうる。これらの
ものは、化合物の一定量を、注射の目的に適合する非毒
性の液状担体、たとえば水性や油性の媒体に懸濁し又は
溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌する事により製
造される。あるいは化合物の一定量をバイアルにとり、
然るのち該バイアルとその内容物を滅菌し密閉しても良
い。投与直前に溶解又は混合するために、粉末又は凍結
乾燥した有効成分に添えて、予備的なバイアルや担体を
準備しても良い。注射液を等張にするために非毒性の塩
や塩溶液を添加しても良い。さらに安定剤、保存剤、乳
化剤の如きものを併用する事もできる。
【0042】直腸投与は、化合物を低融点の固体、たと
えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級エステル
類(たとえばパルミチン酸ミリスチルエステル)及びそ
れらの混合物を混じた座剤を用いることによって行いう
る。
【0043】以下、本発明を実施例について更に詳しく
説明する。
【0044】
【実施例1】
【0045】(1)発酵生産 Bacillus licheniformis UT
K(FERM BP−3794)を、グルコース1%、
ペプトンA(極東製薬)1%、イーストエキストラクト
(オリエンタル酵母工業)0.1%、CaCO3 0.
01%、NaCl 0.01%、pH7.2からなる基
本培地に接種し、200リットルのタンクファーメンタ
ーを用いて30℃で72時間培養した(通気量100リ
ットル/分、撹拌数200rpm)。
【0046】(2)回収精製 得られた培養ブロスに塩酸を加えてそのpHを2.0〜
3.0に調整した。生じた沈澱をメタノールで抽出し、
メタノール抽出液を真空濃縮し、上清をアセトンで抽出
し、アセトン抽出液を真空濃縮し、上清にエチルアセテ
ートを加え生じた沈澱をメタノールに溶かした。
【0047】メタノール溶液をToyopearl H
W40fによるカラムクロマトグラフィーに付し(メタ
ノールで溶出)、活性フラクションを真空濃縮した後、
Sephadex LH−20によるカラムクロマトグ
ラフィーに付し(メタノールで溶出)、活性フラクショ
ンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)処理した
(カラム:Capcell pak C18、径15m
m×長さ250mm;移動相:100mMトリエチルア
ミン酢酸バッファー(pH7.2):メタノール(5
0:50〜100:0);検出:UV276nm)。活
性フラクションを再クロマトグラフィー処理して2成分
に分離し、その1成分として抗生物質HUT57Bを得
た。本物質の培養濾液からの各工程毎の収率は、Can
didaalbicans DUC 1001のMIC
を基に算出した結果、下記の表6に示すとおりであっ
て、最終収率は5%であった。
【0048】
【表6】
【0049】このようにして得られたHUT57Bは、
白色粉末であってその理化学的性質は既述したとおりで
あり、ペプチド系抗生物質である。現在までに発表され
たバチルス属菌が生産するペプチド系抗真菌抗生物質と
しては、わずかに、Iturin及びBacillom
ycin Lの2種類しかないが、本発明に係るHUT
57Bは、これら既知の物質とはアミノ酸組成等理化学
的性質及びその作用が相違しており、したがって従来未
知の新規物質と同定された。
【0050】
【実施例2】実施例1で製造したHUT57Bについ
て、その抗菌活性を測定し、抗真菌性を確認した。
【0051】(1)日本化学療法学会指定の方法に基づ
いてHUT57Bの真菌類に対する最少発育阻止濃度
(MIC)を測定し、下記の表7の結果を得た。この結
果から明らかなように、本物質は動物感染性真菌から植
物病原性真菌に至るまでの広範にして強力な抗真菌スペ
クトルを示した。
【0052】
【表7】
【0053】(2)ペーパーディスク法を用いて、HU
T57Bの細菌類に対する活性を測定し、下記の表8の
結果を得た。この結果から明らかなように、HUT57
Bは、グラム陽性、グラム陰性細菌14株に対しては1
00μg/ml以上の濃度でも抗菌活性を示さず、選択
毒性が極めて強いことが確認された。
【0054】
【表8】
【0055】また、HUT57Bについて、Candi
da albicans DUC1001に対する抗菌
活性をその生菌数を計測することにより(in vit
ro)測定した。その結果、HUT57Bは、いずれの
濃度(25、40、80μg/ml)においても添加と
同時に生菌数の著しい減少が認められたところから、本
物質は殺菌的作用を示す抗真菌物質であると考えられ
る。しかるに、現在までのところ、天然物で殺菌的作用
を示す抗真菌物質は皆無であるところから、既述した理
化学的性質のみならず、この作用面からみても、本物質
が新規物質であることが確認された。
【0056】
【実施例3】実施例1で製造したHUT57Bについ
て、その毒性試験を行い、安全性を確認した。
【0057】(1)細胞毒性試験 CHL/IUcellの細胞浮遊液を1.3×105
ells/mlに調製し、96穴マイクロプレートに1
00μl分注し、37度にて48時間培養後、新鮮培地
180μlに取り替え、抗生物質10mg/100μl
濃度のものを培地にて10倍希釈したものを最高濃度と
し、2倍希釈を4段階作成したものを20μlずつ各w
ellに分注し48時間、37度にて培養した。48時
間後に5mg/mlの濃度に調製したMTTのPBS溶
液を2倍希釈したものを各wellに20μl添加し、
4時間反応後、プレートを1000rpm、5分間遠心
し上澄み200μlを除去した後、10%Triton
X−100含有0.04N−HCl−イソプロパノール
液を100ml添加した。溶出したMTT forma
zan量をマイクロプレートリーダー(コロナ社 MT
P−120)を用いて、測定した。(主波長570n
m、副波長630nm)
【0058】毒性評価は次のようにして行った。すなわ
ち、コントロールwellの吸光度の平均(Ac)、そ
れぞれの薬物(抗生物質)を投与したwellの吸光度
の平均(At)を得、At/Ac×100を薬物感受性
として評価した。この値はcell viabilit
yの目安となるものである。結果を下記の表9に示す。
この結果から明らかなように、本物質は、培養動物細胞
系では、1〜0.5mg/ml以上の濃度では細胞毒性
が認められず、極めて安全性が高いことが確認された。
【0059】
【表9】
【0060】(2)急性毒性試験 本物質(実施例1(1)で得たHUT57B)につい
て、この被験物質を注射用蒸留水に溶解して被験物質1
0%(w/v)水溶液を調製しこれを検液として、dd
Y−N系マウス雄及び雌(各5頭)に対して、13時間
の絶食の後、胃ゾンデを用い検液を1回強制経口投与し
た。なお、ddY−N系マウスは、約4週令で日本医科
学動物資材研究所(株)より導入し、1週間の予備飼育
を行って健康を確認した後、約5週令で試験に供した。
試験開始時の体重は、雄28g、雌18〜22gであっ
た。
【0061】雄、雌ともに検液をそれぞれマウスの体重
1kg当り20ml投与することにより、被験物質を
2,000mg/kg投与した。投与直後はわずかにマ
ウスの活力低下がみられたが、2時間後には回復し、そ
の1時間後より給餌を行い、2週間の経時的死亡率を観
察して、下記の表10の結果を得た。
【0062】
【表10】
【0063】上記結果から明らかなように、本物質は、
マウスの死亡例を全く示さず、剖検所見も良好であり、
プロビット法で計算したLD50値は2,000mg/k
g以上であって、OECDのガイドライン(1986年
4月11日)等による急性毒性試験法ではマウスに対す
る被験物質の最高投与量を2,000mg/kgと規定
しているところからも、本物質の低毒性が確認され、安
全性がこの点からも確認された。
【0064】
【実施例4】 (1)実施例1で製造した物質50g、(2)ラクトー
ス90g、(3)コーンスターチ29g、(4)ステア
リン酸マグネシウム1gを原料として用い、錠剤を製造
した。
【0065】すなわち、(1)、(2)及び(3)(但
し17g)を混合し、(3)(但し7g)から調製した
ペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒に(3)
(但し5g)と(4)を加えてよく混合し、この混合物
を圧縮錠剤機により圧縮して、1錠あたり有効成分
(1)を50mg含有する錠剤1000個を製造した。
【0066】
【発明の効果】本発明は、HUT57B物質を提供する
ものであるが、この物質は従来未知の新規ペプチド系抗
生物質である。本物質は、広範にして強力な抗真菌スペ
クトルを有し、ヒト及び動物の真菌由来の疾病を予防な
いし治療するのにきわめて有用であって、内服、外用投
与、経皮ないし静脈投与その他の投与法によって使用す
ることができる。
【0067】そのうえ本発明によれば、適宜な農薬用担
体を用いて常法にしたがって本物質を農薬に製剤化する
ことにより、農園芸用殺カビ剤としてきわめて有効に使
用することができる。しかも本物質は、天然由来物質で
あるので作物に対する薬害がないばかりでなく、人畜や
魚類に対する害作用も格別認められず、低毒性農薬とし
ても卓越している。
【図面の簡単な説明】
【図1】HUT57Bの紫外線吸収スペクトルを示す。
【図2】HUT57Bの赤外線吸収スペクトルを示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年6月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 新規抗生物質HUT57B及びその製
造法並びに用途
【特許請求の範囲】
【表1】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、真菌感染症の治療剤と
して有効な新規抗生物質HUT57B及びその製造法並
びに用途に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、かび、酵母等の真菌による感染症
は皮膚、呼吸器管、ちつ等の局所感染のほか、全身感染
も増加の傾向にある。
【0003】特に、最近では、汗疱状白癬(水虫)など
に代表される表在性の真菌性のみならず、免疫抑制剤、
制癌剤等の使用により免疫能が低下した場合に深部感染
症などの全身性感染症が増加している。また、致命的な
重症感染例が臨床においても多数報告されている(日病
会誌,74,61(1985))。
【0004】しかしながら、細菌感染症の化学療法の著
しい進歩に比較して、真菌感染症の化学療法は立ち遅れ
ていると言わざるをえないのが現状である。この理由の
1つとして、細菌類は原核細胞(prokaryocy
te)であり、真核細胞(eukaryocyte)で
ある動物細胞と細胞性基盤が異なっているので選択毒性
を有する薬剤が得易いのに対して、真菌類は動物細胞と
同様に真核細胞で構成され細胞性基盤が互いに共通して
いるので真菌類と動物細胞に選択毒性を高めることは容
易なことではないことが挙げられる。
【0005】現在、深在性真菌症(カンジダ症、アスペ
ルギルス症、クリプトコックス症、ムコール症等)に投
与できる薬剤はamphotericinBが知られて
いるにすぎないのが現状である(Annu.Rev.P
hormacol.Toxicol.,23,303
(1983))。また、表在性真菌症は汗疱状白癬(水
虫)のように菌が皮膚の角層の中に寄生しているため慢
性化し、現在の薬剤では一旦治癒しても再発するものが
多い。これら様々な真菌症に有効で選択毒性の高い新規
抗真菌剤の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した業
界のニーズに応えるためになされたものであって、真菌
感染症の予防、治療剤として有用な、高活性を有し、選
択毒性が高く且つ安全性の高いすぐれた新規物質を開発
することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために既知の化学物質についてスクリーニングを行
ったけれども目的達成には至らなかった。
【0008】そこで本発明者らは、安全性の面から天然
物、特に微生物の発酵生産物に着目し、各種微生物を検
索した結果、本発明者らが分離するのに成功したバチル
スsp.UTK(FERM P−11442、FERM
BP−3794;現在はバチルス・リケニホルミスU
TK(Bacillus licheniformis
UTK)と同定されている)が培養物中に目的物質を
蓄積することを発見した。そして更にこの物質について
その理化学的性質を詳細に研究したところ、従来未知の
新規物質であることを確認し、この物質を新たにHUT
57Bと命名し、そして更に研究の結果、その工業的製
法を確立し、また抗真菌作用も併せて確認し、本発明を
完成するに至った。
【0009】本発明に係るHUT57Bは、下記の表
2、表3に示す理化学的性質を有している。
【0010】
【表2】
【0011】
【表3】
【0012】HUT57Bの生産は、単に説明を目的と
して挙げただけの本明細書記載の特定の微生物の使用に
限定されるものではないことを理解すべきである。この
発明は、記載の微生物からX線照射、紫外線照射、N−
メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、2−
アミノプリン等の変異処理により取得できる人工変異株
並びに自然変異株を含めてHUT57Bを生産しうる全
ての変異株の使用をも包含するものである。
【0013】次に、下記の表4、表5に、バチルス・リ
ケニホルミスUTKの菌学的性質を示す。
【0014】
【表4】
【0015】
【表5】
【0016】本発明に係る新規抗生物質HUT57B
は、バチルス属に属する該物質生産菌(例えばBaci
llus licheniformis UTK)が資
化しうる炭素及び窒素源を含む栄養培地中に接種し、好
気条件下で培養することにより(例えば、振とう培養、
通気撹拌培養等)、生産せしめることができる。
【0017】炭素源としては、グルコース、シュークロ
ース、澱粉、フラクトース、グリセリンその他の炭水化
物を使用するのが好ましい。
【0018】窒素源としては、オートミール、イースト
エキストラクト、ペプトン、グルテンミール、綿実粉、
大豆ミール、コーンスティープリカー、乾燥イースト、
小麦胚芽、落花生粉、チキン骨肉ミール等を使用するの
が好ましいが、アンモニウム塩(例えば、硝酸アンモニ
ウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等)、尿
素、アミノ酸等の無機及び有機の窒素化合物も有利に使
用することができる。
【0019】これらの炭素源及び窒素源は、併用するの
が有利であるが、純粋なものを必らずしも使用する必要
はない。純粋でないものには、生長因子や微量要素が含
まれているからである。
【0020】必要ある場合には、例えば次のような無機
塩類を培地に添加してもよい:炭酸ナトリウム、炭酸カ
リウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナト
リウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリ
ウム、マグネシウム塩、銅塩、コバルト塩等。
【0021】特に、培地が強く発泡するのであれば、必
要あるときに、液体パラフィン、動物油、植物油、鉱物
油、シリコン等を添加してもよい。
【0022】目的物質を大量に工業生産するには、他の
発酵生産物の場合と同様に、通気撹拌培養するのが好ま
しい。少量生産の場合は、フラスコを用いる振とう培養
が好適である。
【0023】また、培養を大きなタンクで行う場合、H
UT57Bの生産工程において菌の生育遅延を防止する
ため、はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養し
た後、次に培養物を大きな生産タンクに移してそこで生
産培養するのが好ましい。この場合、前培養に使用する
培地及び生産培養に使用する培地の組成は、両者ともに
同一であってもよいし必要あれば両者を変えてもよい。
【0024】培養は通気撹拌条件で行うのが好ましく、
例えばプロペラやその他機械による撹拌、ファーメンタ
ーの回転または振とう、ポンプ処理、空気の吹込み等既
知の方法が適宜使用される。通気用の空気は滅菌してお
くのが良い。
【0025】培養温度は、本HUT57B生産菌が本物
質を生産する範囲内で適宜変更しうるが、通常は10〜
40℃、好ましくは25〜35℃で培養するのがよい。
培養時間は、培養条件や培養量によっても異なるが、通
常は約1日〜1週間である。
【0026】発酵終了後、培養物から目的とするHUT
57Bを回収する。すなわち、菌体は、直接水及び/又
は有機溶媒による抽出、あるいは、これを機械的に又は
超音波等既知の手段を用いて破壊した後、水及び/又は
有機溶媒で抽出した後、常法にしたがって回収、精製す
る。培養液の場合は、直接、溶媒で抽出してもよいし、
また、培養液を活性炭、粉末セルロース、吸着性樹脂等
の担体に接触させてHUT57Bを吸着させた後、これ
を担体から溶出すればよい。
【0027】回収、精製方法としては、抗生物質採取の
際の常法が適宜利用され、例えば、水、有機溶媒、これ
らの混合溶媒による溶媒抽出;クロマトグラフィー;単
一溶媒又は混合溶媒からの再結晶等常法が適宜単独であ
るいは組合わせて使用できる。
【0028】HUT57Bの回収、精製は上記のように
既知の方法を適宜利用して行うが、例えば次のようにし
てもよい。まず、培養物を酸性にした後、メタノールで
抽出し、抽出液にエチルアセテートを添加し、生成した
沈澱をメタノールに溶解した後、クロマトグラフィを行
い、又は再結晶処理し、更に必要あれば、凍結乾燥して
もよい。
【0029】本発明化合物を医薬として投与する場合、
本発明化合物はそのまま又は医薬的に許容される無毒性
かつ不活性の担体中に、たとえば、0.1%〜99.5
%、好ましくは0.5%〜90%含有する医薬組成物と
して、人を含む動物に投与される。
【0030】担体としては、固形、半固形、又は液状の
希釈剤、充填剤、及びその他の処方用の助剤一種以上が
用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与するこ
とが望ましい。本発明医薬組成物は、経口投与、組織内
投与、局所投与(経皮投与など)、又は経直腸的に投与
する事ができるが、外用剤としても使用できる。これら
の投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんであ
る。
【0031】抗真菌剤としての用量は、年齢、体重等の
患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した
上で調整する事が望ましいが、通常は、成人に対して本
発明の有効成分量として、一日当たり、10〜2000
mg範囲が一般的である。場合によっては、これ以下で
足りるしまた逆にこれ以上の用量を必要とする事もあ
る。多量に投与するときは、一日数回に分割して投与す
ることが望ましい。
【0032】経口投与は固形又は液状の用量単位、たと
えば末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、ドロップ
剤、舌下錠その他の剤型によって行う事ができる。
【0033】末剤は、活性物質を適当な細かさにする事
により製造される。散剤は活性物質を適当な細かさと成
し、次いで同様に細かくした医薬用担体、たとえば澱
粉、マンニトールの如き可食性炭水化物その他と混合す
ることにより製造される。必要に応じ風味剤、保存剤、
分散剤、着色剤、香料その他のものを混じても良い。
【0034】カプセル剤は、まず粉末状となった末剤や
散剤あるいは顆粒化したものを、たとえばゼラチンカプ
セルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製
造される。滑沢剤や流動化剤、たとえばコロイド状のシ
リカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールの如きも
のを粉末状態のものに混合し、然るのちに充填操作を行
う事もできる。崩壊剤や可溶化剤、たとえばカルボキシ
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシ
ウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸カ
ルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が
摂取された時の医薬の有効性を改善する事ができる。
【0035】また、本品の微粉末を植物油、ポリエチレ
ングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散
し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とする
こともできる。
【0036】錠剤は粉末混合物を作り、顆粒化若しくは
スラグ化し、次いで崩壊剤又は滑沢剤を加えたのち打錠
することにより製造される。
【0037】粉末混合物は、適当に粉末化された物質を
上述の希釈剤やベースと混合し、必要に応じ結合剤(た
とえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギ
ン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニル
アルコールなど)、溶解遅延化剤(たとえばパラフィン
など)、再吸収剤(たとえば四級塩)及び/又は吸着剤
(たとえばベントナイト、カオリン、リン酸ジカルシウ
ムなど)を併用してもよい。粉末混合物は、まずシロッ
プ、でんぷん糊、アラビアゴム、セルロース溶液又は高
分子物質溶液などの結合剤で湿らせ、次いで篩を強制通
過させて顆粒とする事ができる。このように粉末を顆粒
化するかわりに、まず打錠機にかけたのち、得られる不
完全な形態のスラグを破砕して顆粒にすることも可能で
ある。
【0038】このようにして作られる顆粒は、滑沢剤と
してステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラル
オイルその他を添加することにより、互いに付着する事
を防ぐ事ができる。このように滑沢化された混合物を、
次いで打錠する。また薬物は、上述のように顆粒化やス
ラグ化の工程を経ることなく、流動性の不活性担体と結
合したのちに直接打錠しても良い。シェラックの密閉被
膜から成る透明又は半透明の保護被膜、糖や高分子材料
の被覆、及びワックスより成る磨上被覆の如きも用いう
る。
【0039】他の経口投与剤型、たとえば溶液、シロッ
プ、エリキシルなどもまたその一定量が含有するように
用量単位形態にする事ができる。シロップは、化合物を
適当な香味化水溶液に溶解して製造され、またエリキシ
ルは非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造
される。懸濁剤は化合物を非毒性担体中に分散させるこ
とにより処方される。可溶化剤や乳化剤(たとえばエト
キシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシ
エチレンソルビトールエステル類、保存剤、風味賦与剤
(たとえばペパミント油、サッカリン)その他もまた必
要に応じ添加できる。
【0040】必要とあれば、経口投与のための用量単位
処方はマイクロカプセル化してもよい。該処方はまた被
覆をしたり、高分子・ワックス等中にうめ込んだりする
ことにより作用時間の延長や持続放出をもたらす事もで
きる。
【0041】非経口的投与は、皮下・筋肉内又は静脈内
注射用としたところの液状用量単位形態、たとえば溶液
や懸濁剤の形態を用いる事によって行いうる。これらの
ものは、化合物の一定量を、注射の目的に適合する非毒
性の液状担体、たとえば水性や油性の媒体に懸濁し又は
溶解し、次いで該懸濁液又は溶液を滅菌する事により製
造される。あるいは化合物の一定量をバイアルにとり、
然るのち該バイアルとその内容物を滅菌し密閉しても良
い。投与直前に溶解又は混合するために、粉末又は凍結
乾燥した有効成分に添えて、予備的なバイアルや担体を
準備しても良い。注射液を等張にするために非毒性の塩
や塩溶液を添加しても良い。さらに安定剤、保存剤、乳
化剤の如きものを併用する事もできる。
【0042】直腸投与は、化合物を低融点の固体、たと
えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級エステル
類(たとえばパルミチン酸ミリスチルエステル)及びそ
れらの混合物を混じた座剤を用いることによって行いう
る。
【0043】次に、HUT57Bの医薬としての有効性
について、各種の試験によって確認することができる。
まず、HUT57Bの抗菌スペクトルは、例えば、HU
T57Bの各種臨床分離株、動物感染真菌、植物病原真
菌等、各種真菌類に対しての最小発育阻止濃度(MI
C)を日本化学療法学会指定の方法に基づいて求めるこ
とができる。また、HUT57Bの安全性の確認は、そ
れらの毒性を調べることによって行える。例えば、動物
細胞を用いた細胞毒性試験、マウスを用いた急性毒性試
験)経口単回投与、静脈注射単回投与、静脈注射反復投
与)を行う。さらに、例えば各種臨床分離株(Cand
ida albicans IFM4009、Aspe
rgillus fumigatus Tsukuba
No.12、Cryptococcus neofo
rmans 145A)をマウスの静脈内に接種して得
られる全身性真菌感染系に対してHUT57Bを投与
し、その生体での有効性を測定することができる。その
結果を表6〜8に示した。これらの各種試験の結果、H
UT57Bは真菌に対する選択毒性を持ち、各種病原性
真菌に対して強力に作用し、毒性が極めて低く、マウス
を用いた全身性真菌感染系に対して有効な効果を示すこ
とから、本物質はカンジダ症、アスペルギルス症、クリ
プトコックス症、ムコール症等各種真菌感染症の治療薬
として有効であることが強く示唆された。
【0044】
【表6】
【表7】
【表8】
【0045】以下、本発明を実施例について更に詳しく
説明する。
【0046】
【実施例1】
【0047】(1)発酵生産 Bacillus licheniformis UT
K(FERM BP−3794)を、グルコース1%、
ペプトンA(極東製薬)1%、イーストエキストラクト
(オリエンタル酵母工業)0.1%、CaCO3 0.
01%、NaCl 0.01%、pH7.2からなる基
本培地に接種し、200リットルのタンクファーメンタ
ーを用いて30℃で72時間培養した(通気量100リ
ットル/分、撹拌数200rpm)。
【0048】(2)回収精製 得られた培養ブロスに塩酸を加えてそのpHを2.0〜
3.0に調整した。生じた沈澱をメタノールで抽出し、
メタノール抽出液を真空濃縮し、上清をアセトンで抽出
し、アセトン抽出液を真空濃縮し、上清にエチルアセテ
ートを加え生じた沈澱をメタノールに溶かした。
【0049】メタノール溶液をToyopearl H
W40fによるカラムクロマトグラフィーに付し(メタ
ノールで溶出)、活性フラクションを真空濃縮した後、
Sephadex LH−20によるカラムクロマトグ
ラフィーに付し(メタノールで溶出)、活性フラクショ
ンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)処理した
(カラム:Capcell pak C18、径15m
m×長さ250mm;移動相:100mMトリエチルア
ミン酢酸バッファー(pH7.2):メタノール(5
0:50〜100:0);検出:UV276nm)。活
性フラクションを再クロマトグラフィー処理して2成分
に分離し、その1成分として抗生物質HUT57Bを得
た。本物質の培養濾液からの各工程毎の収率は、Can
didaalbicans DUC 1001のMIC
を基に算出した結果、下記の表9に示すとおりであっ
て、最終収率は5%であった。
【0050】
【表9】
【0051】このようにして得られたHUT57Bは、
白色粉末であってその理化学的性質は既述したとおりで
あり、ペプチド系抗生物質である。現在までに発表され
たバチルス属菌が生産するペプチド系抗真菌抗生物質と
しては、わずかに、Iturin及びBacillom
ycin Lの2種類しかないが、本発明に係るHUT
57Bは、これら既知の物質とは理化学的性質及びその
作用が相違しており、したがって従来未知の新規物質と
同定された。
【0052】
【実施例2】実施例1で製造したHUT57Bについ
て、その抗菌活性を測定し、抗真菌性を確認した。
【0053】(1)日本化学療法学会指定の方法に基づ
いてHUT57Bの真菌類に対する最少発育阻止濃度
(MIC)を測定し、下記の表10の結果を得た。この
結果から明らかなように、本物質は動物感染性真菌から
植物病原性真菌に至るまでの広範にして強力な抗真菌ス
ペクトルを示した。
【0054】
【表10】
【0055】(2)ペーパーディスク法を用いて、HU
T57Bの細菌類に対する活性を測定し、下記の表11
の結果を得た。この結果から明らかなように、HUT5
7Bは、グラム陽性、グラム陰性細菌14株に対しては
100μg/ml以上の濃度でも抗菌活性を示さず、選
択毒性が極めて強いことが確認された。
【0056】
【表11】
【0057】また、HUT57Bについて、Candi
da albicans DUC1001に対する抗菌
活性をその生菌数を計測することにより(in vit
ro)測定した。その結果、HUT57Bは、いずれの
濃度(25、40、80μg/ml)においても添加と
同時に生菌数の著しい減少が認められたところから、本
物質は殺菌的作用を示す抗真菌物質であると考えられ
る。しかるに、現在までのところ、天然物で殺菌的作用
を示す抗真菌物質は皆無であるところから、既述した理
化学的性質のみならず、この作用面からみても、本物質
が新規物質であることが確認された。
【0058】
【実施例3】実施例1で製造したHUT57Bについ
て、その毒性試験を行い、安全性を確認した。
【0059】(1)細胞毒性試験 CHL/IUcellの細胞浮遊液を1.3×105
ells/mlに調製し、96穴マイクロプレートに1
00μl分注し、37度にて48時間培養後、新鮮培地
180μlに取り替え、HUT57B10mg/100
μl濃度のものを培地にて10倍希釈したものを最高濃
度とし、2倍希釈を4段階作成したものを20μlずつ
各wellに分注し48時間、37度にて培養した。4
8時間後に5mg/mlの濃度に調製したMTTのPB
S溶液を2倍希釈したものを各wellに20μl添加
し、4時間反応後、プレートを1000rpm、5分間
遠心し上澄み200μlを除去した後、10%Trit
onX−100含有0.04N−HCl−イソプロパノ
ール液を100ml添加した。溶出したMTT for
mazan量をマイクロプレートリーダー(コロナ社
MTP−120)を用いて、測定した。(主波長570
nm、副波長630nm)
【0060】毒性評価は次のようにして行った。すなわ
ち、コントロールwellの吸光度の平均(Ac)、H
UT57Bを投与したwellの吸光度の平均(At)
を得、At/Ac×100を薬物感受性として評価し
た。この値はcell viabilityの目安とな
るものである。結果を下記の表12に示す。この結果か
ら明らかなように、HUT57Bは、培養動物細胞系で
は、1〜0.5mg/ml以上の濃度では細胞毒性が認
められず、極めて安全性が高いことが確認された。
【0061】
【表12】
【0062】(2)急性毒性試験 本物質(実施例1(1)で得たHUT57B)につい
て、この被験物質を注射用蒸留水に溶解して被験物質1
0%(w/v)水溶液を調製しこれを検液として、dd
Y−N系マウス雄及び雌(各5頭)に対して、13時間
の絶食の後、胃ゾンデを用い検液を1回強制経口投与し
た。なお、ddY−N系マウスは、約4週令で日本医科
学動物資材研究所(株)より導入し、1週間の予備飼育
を行って健康を確認した後、約5週令で試験に供した。
試験開始時の体重は、雄28g、雌18〜22gであっ
た。
【0063】雄、雌ともに検液をそれぞれマウスの体重
1kg当り20ml投与することにより、被験物質を
2,000mg/kg投与した。投与直後はわずかにマ
ウスの活力低下がみられたが、2時間後には回復し、そ
の1時間後より給餌を行い、2週間の経時的死亡率を観
察して、下記の表13の結果を得た。
【0064】
【表13】
【0065】また前記と同種のマウスを使用して、HU
T57BをDMSO(ジメチルスルホキシド)−ヒマシ
油−5%Glc溶液に溶解させ、尾静脈より単回又は、
反復投与をそれぞれ雄5頭について行った。単回投与は
マウス体重1kg当り200mg、反復投与は30mg
/kg/day×14回行った。2週間の経時的死亡率
を観察して、下記の表14の結果を得た。
【0066】
【表14】
【0067】上記結果から明らかなように、本物質は、
経口投与においてはマウスの死亡例を全く示さず、剖検
所見も異常が認められず、プロビット法で計算したLD
50値は2000mg/kg以上である。OECDのガイ
ドライン(1986年4月11日)等による経口投与に
よる急性毒性試験法ではマウスに対する被験物質の最高
投与量を2000mg/kgと規定としているところか
らも、HUT57Bの低毒性が示された。また、一方静
脈内単回投与のLD50値も200mg/kg以上と、経
口投与同様HUT57Bの低毒性が示され安全性が確認
された。
【0068】
【実施例4】 (1)実施例1で製造した物質50g、(2)ラクトー
ス90g、(3)コーンスターチ29g、(4)ステア
リン酸マグネシウム1gを原料として用い、錠剤を製造
した。
【0069】すなわち、(1)、(2)及び(3)(但
し17g)を混合し、(3)(但し7g)から調製した
ペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒に(3)
(但し5g)と(4)を加えてよく混合し、この混合物
を圧縮錠剤機により圧縮して、1錠あたり有効成分
(1)を50mg含有する錠剤1000個を製造した。
【0070】
【発明の効果】本発明は、HUT57B物質を提供する
ものであるが、この物質は従来未知の新規ペプチド系抗
生物質である。本物質は、広範にして強力な抗真菌スペ
クトルを有し、ヒト及び動物の真菌由来の疾病を予防な
いし治療するのにきわめて有用であって、内服、外用投
与、経皮ないし静脈投与その他の投与法によって使用す
ることができる。
【0071】そのうえ本発明によれば、適宜な農薬用担
体を用いて常法にしたがって本物質を農薬に製剤化する
ことにより、農園芸用殺真菌剤としてきわめて有効に使
用することができる。しかも本物質は、天然由来物質で
あるので作物に対する薬害がないばかりでなく、人畜や
魚類に対する害作用も格別認められず、低毒性農薬とし
ても卓越している。
【図面の簡単な説明】
【図1】HUT57Bの紫外線吸収スペクトルを示す。
【図2】HUT57Bの赤外線吸収スペクトルを示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:10)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の表1に示される物理化学的性質を
    有することを特徴とする新規抗生物質HUT57B。 【表1】
  2. 【請求項2】 バチルス属に属する新規抗生物質HUT
    57B生産菌を培養し、培養物より新規抗生物質HUT
    57Bを採取することを特徴とする新規抗生物質HUT
    57Bの製造法。
  3. 【請求項3】 バチルス属に属する新規抗生物質HUT
    57B生産菌がバチルス・リケニホルミスであることを
    特徴とする請求項2に記載の製造法。
  4. 【請求項4】 新規抗生物質HUT57Bを有効成分と
    することを特徴とする抗真菌剤。
JP4103954A 1992-03-31 1992-03-31 新規抗生物質hut57b及びその製造法並びに用途 Pending JPH07165780A (ja)

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