JPH07150820A - 膜構造物に於ける膜材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ケーブルの移動を阻止することにより、膜構
造物の外観形状を維持できるようにし、加えて引裂き伝
播の発生を防止することを目的とする。 【構成】 少なくとも一対の筒状体２にケーブル５を挿
通可能とすべく、該筒状体２が相互に前記ケーブル５の
軸方向に位置ずれし且つ該軸方向と交差する方向に所定
間隔を有して膜本体１の裏面に設けられてなることを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は膜構造物に於ける膜材、
さらに詳しくは例えば所望形状の膜構造物を形成すると
共に補強等を図るために使用されるケーブルを良好に配
することのできる膜材に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種膜構造物は、架設したメインケー
ブルに膜材を張設して形成されるが、比較的大型の膜構
造物にあっては、該膜構造物を所望形状に形成すると共
に補強等を図るために、前記メインケーブル間に適宜他
のケーブルが配される場合がある。

【０００３】この場合、従来に於いては例えば図６のよ
うに、膜本体1aの裏面に沿って帯状のカバー９の両側端
部を溶着し、該カバー９内にケーブル5aを挿通したり、
図７の如く両側部に縫込みロープ13を内装した掛り布10
を膜本体1aの裏面に沿って溶着し、該掛り布10の両側片
10ａによりケーブル5aを包むようにして、該両側片10ａ
の鳩目11にラッキングロープ12を挿入着して端部を固定
すると共に、中間部は両側片10ａにラッキングロープ12
を巻装せしめてケーブル5aを固定していたのである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記前
者のものは、例えば膜本体1aに外力等が加わった場合、
ケーブル5aが膜本体1aとカバー９間に形成される空間部
Ａ内を移動するために、膜構造物の外観形状に変形を生
ぜしめる不都合があり、ひいてはカバー９が膜本体1aか
ら離脱してケーブル5aを外部に表出せしめるという大な
る問題点を有していた。

【０００５】また、カバー９と膜本体1aとの接合部1bは
２重構造となるが、膜本体1aの一部が不用意に切断され
た場合、これだけでは所謂引裂き伝播を阻止することは
困難であるために、膜本体1aが大きく引裂かれてしまう
という難点もあった。

【０００６】一方、後者のものにあっては、ケーブル5a
の移動は阻止できるものの、前者のものと同様に引裂き
伝播に対する保証は一切なく、またラッキングロープ12
の挿着作業は面倒なものであるために、現場での一連の
作業が非常に煩雑なものとなって作業性に欠ける不都合
があり、さらには外観体裁も悪いという種々の問題点を
有していたのである。

【０００７】それ故に、本発明は上記従来の問題点を解
決するためになされたものであり、ケーブルの移動を阻
止することにより、膜構造物の外観形状を維持できるよ
うにし、加えて引裂き伝播の発生を防止することを課題
とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】即ち、上記課題を解決す
るために、本発明は少なくとも一対の筒状体２にケーブ
ル５を挿通可能とすべく、該筒状体２が相互に前記ケー
ブル５の軸方向に位置ずれし且つ該軸方向と交差する方
向に所定間隔を有して膜本体１の裏面に設けられてなる
膜構造物に於ける膜材である。

【０００９】

【作用】従って、上記構成を特徴とする膜材に於いて
は、相互にケーブル５の軸方向に位置ずれし且つ該軸方
向と交差する方向に所定間隔を有して筒状体２が膜本体
１に設けられてなるため、筒状体２に挿通されたケーブ
ル５はかかる一対の筒状体２により側方への移動が規制
されることとなる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面に従っ
て説明する。

【００１１】図１及び図２に於いて、１は所望形状に形
成されたフッ素樹脂製の膜本体を示し、張架したメイン
ケーブル８に張設されてなる。

【００１２】２は図３のように膜本体１と同素材のシー
ト材に所定間隔を有して角孔2aを形成し、これを点線で
示す中央部で二つ折りにして筒状部３を形成すると共
に、その両端の帯状部2bを溶着せしめて重合部４を形成
した一対の筒状体で、一方側の筒状体２の筒状部３を他
方側の筒状体２の重合部４間に間隙６を有して配置させ
るべく、各筒状体２は長手方向に位置ずれするように膜
本体１の裏面に所定間隔を有して、前記各重合部４が溶
着されてなる。

【００１３】本実施例に係る膜材は以上のような構成か
らなり、前記各筒状体２の筒状部３内には１本のケーブ
ル５が挿通されるのであるが、この挿通時に於いてケー
ブル５は図４の如く各筒状部３の内端部側に位置するよ
うに構成されており、またケーブル５は接続金具７を介
してメインケーブル８に接続される。

【００１４】而して、ケーブル５は各筒状体２の筒状部
３により左右に引張力を受けて側方への移動が規制され
るため、たとえ不用意に膜本体１等に外力等が加わった
としても、ケーブル５の収納状態は良好に維持されるこ
とになり、膜構造物の外観形状に変形を生ぜしめること
もない。

【００１５】また、筒状体２の重合部４の溶着により当
該部位は膜本体１を含めて３重構造となるために、所謂
引裂き伝播がかかる部位に於いて良好に阻止できること
となり、よって膜本体１に変形や破損を最小限に抑える
ことができる。

【００１６】さらに、間隙６が位置する膜本体１の部位
に於いては、該膜本体１のみを介して外部から光が射込
み、かかる光の透過量は前記重合部４及び筒状部３が位
置する部位に比して多いため、天井面に綺麗な市松模様
が表れることとなり、よってけこの種膜構造物が有する
美観を損なうことはなく、ケーブル５の処理が好適に行
えるのである。

【００１７】また、本実施例に係る膜材は全体が非常に
簡易な構成からなるために、容易で且つ安価に製作でき
るという利点もある。

【００１８】尚、上記実施例に於いては、複数の筒状部
３を有する筒状体２を使用したが、その具体的な数は問
うものではなく、ケーブル５の長さ等に応じて変更可能
である。要は、少なくとも一対の筒状体２が相互にケー
ブル５の軸方向に位置ずれし且つ該軸方向と交差する方
向に所定間隔を有して膜本体１の裏面に設けられればよ
い。

【００１９】また、筒状体２は一枚のシート材の端部を
重合状態で接合し、かかる重合部を膜本体１に溶着等し
て設けても構わない。

【００２０】また、上記実施例では間隙６を比較的幅広
に形成したが、その幅Ｓや長さＬ等の具体的な寸法は問
うものではなく、例えば図５のように間隙６を幅狭に形
成することも可能であり、これにより天井面が表れる模
様を適宜変更できるという利点がある。

【００２１】その他、本発明に係る膜構造物の各部の具
体的な構成も本発明の意図する範囲内に於いて任意に変
更自在である。

【００２２】

【発明の効果】叙上の様に、本発明は相互にケーブルの
軸方向に位置ずれし且つ該軸方向と交差する方向に所定
間隔を有して、筒状体が膜本体の裏面に設けられてなる
ため、単に膜本体に取付けた帯状のカバー内にケーブル
を収納していた従来のものの如く、該ケーブルが不用意
に移動して膜本体に変形を生ぜしめたり、前記カバーを
膜本体から離脱せしめてケーブルが外部に表出するとい
うことはなくなり、該ケーブルの移動は一対の筒状体に
より良好に規制されるという格別の効果を得るに至っ
た。

【００２３】また、筒状体に設けた重合部を膜本体に取
付けてかかる部位を多重構造とすれば、当該部位に於い
て所謂引裂き伝播を阻止することができるために、膜材
の損傷を最小限に抑えることができるという特有の効果
が得られる。

【００２４】さらに、本発明に係る膜材は全体の構成が
非常に簡易であるために、その製作も容易で且つ安価に
行えるという実用的な効果もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る一実施例を示す裏面図。

【図２】同一部省略した全体裏面図。

【図３】筒状体を構成するシート材の平面図。

【図４】一部断面を含む要部拡大断面図。

【図５】他の実施例を示す裏面図。

【図６】従来例を示す一部断面を含む要部拡大断面図。

【図７】他の従来例を示す一部断面を含む要部拡大斜視
図。

【符号の説明】

１…膜本体 2a…孔 2b…帯状部 ２…筒状体 ３…筒状部 ４…重合部 ５…ケーブル ６…間隙

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも一対の筒状体(2) にケーブル
   (5) を挿通可能とすべく、該筒状体(2) が相互に前記ケ
   ーブル(5) の軸方向に位置ずれし且つ該軸方向と交差す
   る方向に所定間隔を有して膜本体(1) の裏面に設けられ
   てなることを特徴とする膜構造物に於ける膜材。
2. 【請求項２】 前記筒状体(2) が、膜本体(1) に取着さ
   れる重合部(4) と該重合部(4) の側部に所定間隔を有し
   て複数突設され且つケーブル(5) を挿通可能な筒状部
   (3) とからなる請求項１記載の膜構造物に於ける膜材。
3. 【請求項３】 前記筒状体(2) が、長手方向に所定間隔
   を有して複数の孔(2a)を穿設した長尺状のシート材から
   なり、且つ筒状部(3) を形成すべくシート材はその長手
   方向に沿って略中央で二つ折されると共に、その両側端
   の帯状部(2b)を接着せしめて重合部(4) が形成されてな
   る請求項２記載の膜構造物に於ける膜材。
4. 【請求項４】 前記筒状部(3) にケーブル(5) を挿通し
   た際に、一方の筒状部(3) の先端とこれに対向する他方
   の筒状体(2) の重合部(4) 間に間隙(6) が形成されるべ
   く構成してなる請求項２又は３記載の膜構造物に於ける
   膜材。