JPH07142249A - 磁性体薄膜 - Google Patents

磁性体薄膜

Info

Publication number
JPH07142249A
JPH07142249A JP28693893A JP28693893A JPH07142249A JP H07142249 A JPH07142249 A JP H07142249A JP 28693893 A JP28693893 A JP 28693893A JP 28693893 A JP28693893 A JP 28693893A JP H07142249 A JPH07142249 A JP H07142249A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
thin film
layer
magnetic thin
layers
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP28693893A
Other languages
English (en)
Inventor
Masayoshi Hiramoto
雅祥 平本
Osamu Inoue
修 井上
Koichi Kugimiya
公一 釘宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP28693893A priority Critical patent/JPH07142249A/ja
Publication of JPH07142249A publication Critical patent/JPH07142249A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/08Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers
    • H01F10/10Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition
    • H01F10/12Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys
    • H01F10/14Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys containing iron or nickel
    • H01F10/142Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys containing iron or nickel containing Si
    • H01F10/145Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by magnetic layers characterised by the composition being metals or alloys containing iron or nickel containing Si containing Al, e.g. SENDUST
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/26Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure characterised by the substrate or intermediate layers
    • H01F10/265Magnetic multilayers non exchange-coupled

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Magnetic Heads (AREA)
  • Thin Magnetic Films (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 成膜直後から軟磁気特性に優れ、耐熱処理性
に優れ、高飽和磁束密度を有する磁性体薄膜を得る。 【構成】 非磁性基板上に、50nm層厚の磁性層をF
e−Al−Si合金をターゲットとしたマグネトロンス
パッタで、基板温度と放電ガス圧を変えアニール後、形
成する。磁性層形成後に、スパッタガス中に間欠的に酸
素を導入することで酸化物からなる5nm厚さの分離層
を形成する。交互に10層づつ積層し、合計約550n
mの膜厚の積層磁性体薄膜を作製する。各磁性層の磁化
容易軸方向がほぼ平行であると、優れた軟磁気特性を示
す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気ヘッドをはじめ、
トランス、各種フィルター、可飽和リアクトル、チョー
クコイル、各種センサ等磁気回路を利用する電子部品、
電子機器などに使用する磁性材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高転送レートを要求されるHDTV用磁
気ヘッドや、小型化が進む磁気回路部品には、数十MH
zで軟磁気特性の優れた磁性体薄膜が望まれている。
【0003】これまで数MHzまでの周波数領域では、
主に渦電流損失による初透磁率の低下があり、スパッタ
リングや蒸着などの薄膜化技術を用いて、磁性体の高抵
抗化または磁性体と絶縁体の積層化が広く提案されてき
た。
【0004】一方、数十MHz以上の領域においては、
渦電流損失とともに、強磁性共鳴による損失が大きな問
題となる。強磁性共鳴周波数は、磁性体の飽和磁束密度
Bsと異方性磁界を大きくすることで高めることができ
る。従って、従来より異方性を付与したCo系非晶質薄
膜や、これと絶縁物質を積層した軟磁性薄膜が提案され
てきた。特に高周波特性に優れ、磁気的に等方性を持つ
もののに中には、無磁場中アニールでミクロな異方性を
増加させたものや、各磁性層ごとに磁化容易軸方向を変
化させた、磁性体と絶縁体の積層磁性体薄膜などが提案
されてきた。これら非晶質薄膜に一軸面内異方性を誘導
する方法としては、薄膜作成またはアニール時に静磁場
を印加することが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ヘッドまたはインダク
タ等に使用する場合には、Co系非晶質膜よりも飽和磁
束密度の大きなFe系軟磁性膜が望ましい。しかしなが
らFe系軟磁性膜は一般に結晶質で、静磁場中での成膜
や熱処理では異方性がつきにくいという課題があった。
【0006】また、従来の各磁性層ごとに磁化容易軸方
向を変化させた積層磁性体薄膜の場合、各磁性層は各層
間における相互作用による軟磁気特性の劣化を防ぐた
め、絶縁層を厚くすることで各磁性層が磁気的に独立し
ている構成を取っており、必然的に主磁性体に対する非
磁性体の体積割合が大きくなるため、見かけの飽和磁束
密度や初透磁率を著しく減少させるという課題があっ
た。
【0007】また、従来の異方性を付与した非晶質磁性
体薄膜の場合、微結晶を析出させるために200 ℃以上で
熱処理する必要があり、他のIC部品を実装した基板上
に成膜できないという課題があった。
【0008】本発明は、薄膜形成直後及び熱処理後の何
れにおいても優れた軟磁気特性を示し、また高周波領域
に於いても高初透磁率を維持し、1.3〜1.9Tの高
飽和磁束密度を有する磁性体薄膜を提供することを目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第一の磁性体薄膜は、磁性体薄膜を構成す
る柱状もしくは実質的に回転楕円体である複数の磁性結
晶粒子の短辺方向の長さの平均値が2以上40nm以下
の範囲であり、前記磁性体薄膜の膜面がX軸、Y軸、Z
軸を主軸とする直交座標系のX−Y平面上にあり、Y−
Z平面と各磁性結晶粒子の長辺方向が略平行であり、か
つ磁性体薄膜の磁化容易軸方向が、X−Y平面上で、X
軸方向を中心にした±π/4の範囲内にあるという構成
を備えたものである。
【0010】本発明の第二の磁性体薄膜は、上記の構成
を持つ磁性体薄膜からなる複数の磁性層と、酸化物また
は窒化物からなる分離層とが交互に積層し、前記各磁性
層の磁化容易軸方向が略平行であるという構成を備えた
ものである。
【0011】また、本発明の第三の磁性体薄膜は、第一
の磁性体薄膜からなる複数の磁性層と、酸化物または窒
化物からなる分離層とが交互に積層し、各磁性層の磁化
容易軸方向が互いに異なっており、膜全体の磁化容易軸
方向が等方的に分散されているという構成を備えたもの
である。この構成においては、N枚の磁性層のうち隣合
う磁性層の磁化容易軸方向のなす角θラジアンが他の磁
性層となす角より小さく、かつ実質的にθ=π/Nであ
ることが好ましい。
【0012】また、前記第二及び第三の磁性体薄膜の構
成においては、一部の磁性層を構成する各磁性結晶粒子
の長辺方向、及び磁性体薄膜の膜面とのなす角の平均値
がπ/3ラジアンより小さく、残りの磁性層を構成する
各磁性結晶粒子の長辺方向と、前記磁性体薄膜の膜面と
のなす角の平均値がπ/3ラジアンより大きいことが好
ましい。
【0013】また、前記第二及び第三の磁性体薄膜の構
成においては、磁性層が、Feの酸化物生成自由エネル
ギーより低い酸化物生成自由エネルギーをもつ物質、お
よびFeの窒化物生成自由エネルギーより低い窒化物生
成自由エネルギーをもつ物質から選ばれる少なくとも一
種類の物質を含む磁性層であることが好ましい。
【0014】また、前記第二及び第三の磁性体薄膜の構
成においては、分離層が、磁性層に含まれる元素及び酸
素または窒素を含む物質から選ばれる少なくとも1種を
含む分離層であることが好ましい。また、磁性層の平均
膜厚D1が300〜5nm、分離層の平均膜厚D2が1
0〜0.05nmで、D1/D2≧3の関係をみたすこ
とが好ましい。
【0015】
【作用】前記本発明の第一の磁性体薄膜によれば、磁性
体薄膜を構成する柱状もしくは実質的に回転楕円体であ
る複数の磁性結晶粒子の短辺方向の長さの平均値が2〜
40nm以下の範囲であり、前記磁性体薄膜の膜面がX
軸、Y軸、Z軸を主軸とする直交座標系のX−Y平面上
にあり、Y−Z平面と各磁性結晶粒子の長辺方向が略平
行であり、かつ磁性体薄膜の磁化容易軸方向が、X−Y
平面上で、X軸方向を中心にした±π/4の範囲内にあ
ることにより、高周波において軟磁気特性に優れた磁性
体薄膜を達成できる。
【0016】また、本発明の第二の磁性体薄膜によれ
ば、上記の構成を持つ磁性体薄膜からなる複数の磁性層
と、酸化物または窒化物からなる分離層とが交互に積層
し、前記各磁性層の磁化容易軸方向が略平行であること
により、静磁エネルギーを低め軟磁気特性に優れた積層
磁性体薄膜を達成できる。
【0017】また、本発明の第三の磁性体薄膜によれ
ば、各磁性層の磁化容易軸方向が互いに異なり、磁性体
薄膜全体の磁化容易軸方向が等方的に分散されているこ
とにより、等方的な磁気特性に優れた積層磁性体薄膜を
達成できる。
【0018】また、N枚の磁性層のうち隣合う磁性層の
磁化容易軸方向のなす角θラジアンが他の磁性層となす
角より小さく、かつ実質的にθ=π/Nであるという本
発明の好ましい構成によれば、磁性層間の静磁エネルギ
ーを低め、軟磁気特性に優れた積層磁性体薄膜を達成で
きる。また、一部の磁性層を構成する各磁性結晶粒子の
長辺方向、及び磁性体薄膜の膜面とのなす角の平均値が
π/3ラジアンより小さく、残りの磁性層を構成する各
磁性結晶粒子の長辺方向と、前記磁性体薄膜の膜面との
なす角の平均値がπ/3ラジアンより大きいという本発
明の好ましい構成によれば、膜面に垂直な交換結合を低
めることができる。
【0019】また、磁性層が、Feの酸化物生成自由エ
ネルギーより低い酸化物生成自由エネルギーをもつ物
質、およびFeの窒化物生成自由エネルギーより低い窒
化物生成自由エネルギーをもつ物質から選ばれる少なく
とも一種類の物質を含む磁性層であるという本発明の好
ましい構成によれば、良好な軟磁気特性を示す磁性体薄
膜を達成できる。
【0020】また、分離層が、磁性層に含まれる元素及
び酸素または窒素を含む物質から選ばれる少なくとも1
種を含む分離層であるという本発明の好ましい構成によ
れば、層間相互拡散、及び格子定数のミスフィットや熱
膨張係数の相違などに起因する界面の局所応力緩和の点
で好ましい。また、磁性層の平均膜厚D1が300〜5
nm、分離層の平均膜厚D2が10〜0.05nmで、
D1/D2≧3の関係をみたすという本発明の好ましい
構成によれば、軟磁気特性に優れた磁性体薄膜を達成で
きる。
【0021】
【実施例】本実施例の磁性体薄膜は磁性体粒子の入射角
度を制御した蒸着法、または磁性体粒子の入射角度を制
御した蒸着中に酸素または窒素を間欠的に供給した反応
性蒸着法により製造できる。
【0022】本実施例の磁性体薄膜は柱状、または実質
的に回転楕円体である結晶粒子が、長辺方向に対して互
いに、ほぼねじれの位置または平行関係を保ち集合した
粒子群より構成され、短辺方向でかつ膜面内方向に容易
磁化軸が生じる特徴を持つ。これは粒子が短辺方向で微
細化したために、膜面内でかつ短辺方向で交換相互作用
が働く距離内に含まれる粒子数が、長辺方向よりも飛躍
的に多くなり短辺方向の実効的な磁気異方性が、長辺方
向の形状異方性による磁気異方性よりも小さくなること
による。各結晶粒子の短辺の長さの平均値は2〜40n
mであることが好ましい。
【0023】また磁化容易軸の方向を限定した磁性層
と、膜厚を限定した窒化物または酸化物の分離層を積層
することや、このような積層磁性体薄膜の磁性層の一部
を膜に垂直方向の粒径がより大きい磁性結晶粒子からな
る層と置き換えることで、膜に垂直に働く交換結合を弱
め、磁性層間の静磁エネルギーを下げ、さらに磁性層間
に流れる渦電流損失を抑えられ、軟磁気特性が向上す
る。また分離層には磁性層に含まれる元素が含有される
ために、成膜直後より界面応力が小さく、軟磁気特性に
優れる。また熱処理後も、相互拡散による磁性体の非磁
性化、組成ずれ、界面における局所応力が小さく、耐熱
処理性が高い。
【0024】本実施例の磁性体薄膜の磁性層に適用され
る物質としては、特に限定はないが、例えばFe、C
o、Ni、Fe−Co、Co−Ni、Fe−Ni、Fe
−Co−Ni等の磁性体金属、または以上の磁性体金属
中に、酸化物生成自由エネルギー又は窒化物生成自由エ
ネルギーがFeより低い値を持つ元素、例えばAl、S
i、Ta、Ti、Mg、Zr、Mn、Ca、Cr、B、
V等から選ばれた少なくとも一種の元素を含む磁性体合
金であることが望ましい。また耐食性を高めるために以
上の元素中に1at.%以下のCuを添加することも望
ましい。
【0025】本実施例の磁性体薄膜の分離層に適応され
る物質としては、層間相互拡散、及び格子定数のミスフ
ィットや熱膨張係数の相違などに起因する界面の局所応
力緩和のために、磁性層に含まれる、少なくとも一種類
の元素を含んでいる窒化物または酸化物であることが望
ましく、特に磁性層に含まれる磁性金属元素を含むこと
が望ましい。分離層の厚みD2は、上下の磁性層間の交
換結合が磁性層面内より小さく、磁性層間で静磁結合が
できる、10〜0.05nm程度であることが望まし
い。また、分離層の厚みD1は、成膜された柱状もしく
は実質的に回転楕円体である結晶粒子のサイズの均質性
が高くなる300〜5nm程度であることが望ましい。
さらに薄膜全体ではD1/D2≧3の関係で表される程
度に磁性層が多いことが望ましい。
【0026】本実施例の磁性体薄膜の製造方法は、例え
ばMBE、レーザーアブレイション、スパッタ等の蒸着
法や、メッキ等、何れの薄膜化技術を用いても実現でき
るが、工業的効率、作成の容易さの点で、例えばイオン
ビームスパッタや対向ターゲット式スパッタ、マグネト
ロンスパッタに代表されるスパッタリング法が望まし
い。
【0027】本実施例の磁性体積層薄膜は1.3〜1.
9Tの高飽和磁束密度を有し、且つ低保持力で初透磁率
の高周波特性がよいので、基盤上に形成し磁気ヘッドと
して用いることで、高保持力媒体に、高密度信号を記録
することができる。さらに耐熱性、耐摩耗性に優れた特
性を持つために、磁気ヘッドの経時劣化が小さい。
【0028】本実施例の磁性体薄膜は高飽和磁束密度を
有し、100℃以下の成膜温度で作成可能で、しかも成
膜直後の状態より優れた軟磁気特性を有するので、IC
基板上に、他のIC電子回路部品とともに実装できるマ
イクロインダクタ素子として用いると特に効果がある。
【0029】次に、具体的実施例を説明する。実施例中
に示す組成は、ICP、RBS及びEPMA、EDSの
分析に加え、酸化、窒化による重量増の計測を組み合わ
せることで評価した。また結晶粒子の形状、サイズ等、
磁性体薄膜の微細構造はTEM、またはSEM観察より
判定した。以下に示す磁性層及び分離層の膜厚は、それ
ぞれ単層の成膜速度から計算した値、またはTEM、S
EM観察から求めた値を用いている。アニールの条件は
特に断らない限り無磁場の真空中で500℃、1時間行
った。初透磁率μは1mOeの励磁による8の字コイル
法で測定した。
【0030】(実施例1)Fe−Al−Si合金をター
ゲットとしたマグネトロンスパッタで、基板温度と放電
ガス圧、基板に入射するスパッタ粒子の方向を変えて、
アニール後に(表1)に示すような特徴を持つ磁性体薄
膜を非磁性基板上に形成した。なおそれぞれの薄膜を構
成する、各磁性体結晶粒子は柱状、または実質的に回転
楕円体であった。(表1)中、粒子の長辺方向の長さの
平均値をt1、短辺方向の長さの平均値をt2、長辺方
向が膜面に対してなす平均的な角度をαとした。また、
すべての磁性体薄膜の各結晶粒子の長辺方向は膜面に対
して垂直なある平面にほぼ平行になっていた。以下この
平面を配向平面と呼ぶ。また配向平面はスパッタ粒子の
入射方向に平行な平面でもある。この配向平面をY−Z
平面、膜面をX−Y平面とした直交座標系に置いて、X
軸方向及びY軸方向それぞれに励磁した初透磁率μをμ
(X) 、μ(Y) とした。なお磁性体薄膜の膜厚はそれぞれ
500nmである。
【0031】
【表1】
【0032】(表1)に示すように実施例a、b、cの
磁性体薄膜ではμ(Y) の値が、μ(X)より大きくX軸方
向を容易磁化軸とする異方性が形成されている。一方比
較例aではμ(X) 、μ(Y) の値がともに低くむしろY軸
方向に容易磁化軸が形成されていると考えられる。また
比較例b、cではμ(X) 、μ(Y) の値に顕著な差はな
く、ほぼ等方的であるが100MHzでの値はともに低
い。
【0033】以上のことから薄膜を構成する柱状もしく
は実質的に回転楕円体である各磁性結晶粒子の長辺方向
の長さの平均値t1、短辺方向の長さの平均値t2が、
t2<t1を満たし、t2が40nm以下の範囲であ
り、X軸、Y軸、Z軸を主軸とする直交座標系のX−Y
平面内に薄膜の膜面があり、Y−Z平面と各磁性結晶粒
子の長辺方向がほぼ平行であるとき、磁化容易軸方向が
X軸方向である磁性体薄膜は高周波において優れた軟磁
気特性を示すことが分かった。
【0034】(実施例2)実施例aとして50nmの層
厚を持つ磁性層と、5nm厚さの酸化物からなる分離層
を、交互に10層づつ積層し、合計約550nmの膜厚
の積層磁性体薄膜を以下のように作製した。まず磁性層
としてFe−Al−Si合金をターゲットとしたマグネ
トロンスパッタで、基板温度と放電ガス圧を変え、アニ
ール後に(表2)に示すような特徴を持つ磁性体薄膜
を、非磁性基板上に形成した。なお、各磁性体結晶粒子
は柱状、または実質的に回転楕円体であった。(表2)
中、磁性体結晶粒子の長辺方向の長さの平均値をt1、
短辺方向の長さの平均値をt2、長辺方向が膜面となす
平均的な角度をαとしている。またすべての磁性層の各
結晶粒子の長辺方向は膜面に対して垂直な平面にほぼ平
行になっていた。この平面を配向平面Aとする。また分
離層は所定の膜厚の磁性層を形成後に、スパッタガス中
に間欠的に酸素を導入することで連続して形成した。
【0035】比較例aとして上記実施例aの積層磁性体
薄膜の10層の磁性層の内、5層が膜面に垂直な配向平
面Bに平行な結晶粒子で構成され、残りの5層が膜面に
垂直な別の配向平面Cに平行な結晶粒子で構成された、
積層磁性体薄膜を、基板に入射するスパッタ粒子の方向
を変えることで形成した。なお配向平面Bと配向平面C
は互いにπ/4(ラジアン)をなすように構成した。
【0036】また比較例bとして、上記実施例aの磁性
層の構造を持ち、分離層の無い単層の磁性体薄膜、50
0nmを形成した。なお上記実施例aで配向平面Aに垂
直な方向をX軸方向とし、膜面に平行で配向平面Aに平
行な方向をY軸方向とする。また上記比較例aで配向平
面Bと配向平面Cの何れともπ/8(ラジアン)をなす
平面を平均配向平面Dとし、膜面に平行で平均配向平面
Dに平行な方向をY軸方向とする。Y軸方向に励磁した
初透磁率μをμ(Y) とする。
【0037】
【表2】
【0038】(表2)に示すように、本実施例の積層磁
性体薄膜は、磁性層と、酸化物からなる分離層とが交互
に積層することで、さらに軟磁気特性が向上し、特に各
磁性層の磁化容易軸方向がほぼ平行に揃っているときに
優れた軟磁気特性を示した。また分離層としてその他の
物質を検討した結果、酸化物の他、窒化物等、弱磁性ま
たは非磁性を示す物質であれば同様の特性が得られるこ
とが分かった。また初透磁率および抗磁力の面内の方向
依存性を綿密に調べた結果、実施例aおよび比較例aの
磁化容易軸方向は配向平面Aに垂直なX軸方向にあり、
また比較例bの容易磁化軸方向は配向平面Bと配向平面
Cそれぞれに垂直な2方向に分かれていた。
【0039】以上の結果から、実施例1で優位性を確か
めた磁性体薄膜からなる磁性層と、酸化物または窒化物
からなる分離層とが、交互に積層しており、各磁性層の
磁化容易軸方向がほぼ平行に揃っている積層磁性体薄膜
はその困難軸方向の軟磁気特性が高周波においても優れ
ていることが分かった。
【0040】(実施例3)実施例aとして50nmの層
厚を持つ磁性層と、5nmのSiO2 膜できた分離層
を、交互に10層づつ積層し、合計約500nmの膜厚
を持ち、容易磁化軸方向を膜面内で等方的に分散させた
磁性体積層薄膜を以下のように作成した。まず磁性層と
してFe−Al−Si合金をターゲットとしたマグネト
ロンスパッタで、各磁性層ごとに、基板に入射するスパ
ッタ粒子の方向を変え、アニール後に以下(表3)のよ
うな特徴を持つ積層磁性体薄膜を形成した。
【0041】磁性体結晶粒子は柱状、または実質的に回
転楕円体であった。構成する磁性層ごとに長辺方向の配
向を揃えた結晶粒子群となっており、それぞれ膜面に対
して垂直な異なる配向平面にほぼ平行になるように並ん
でいた。これらの10種類の異なる配向平面を配向平面
A〜Jとする。配向平面A〜Jは膜面に対して等方的に
分散された方位を向いており、磁化容易軸方向も等方的
に分散されていた。(表3)中、磁性体結晶粒子の長辺
方向の長さの平均値をt1、短辺方向の長さの平均値を
t2とし、長辺方向が基板となす平均的な角度をαで表
している。
【0042】比較例aとして実施例aの積層磁性体薄膜
の各磁性層の粒子の配向平面が膜面に対して同一方向を
向いた積層磁性体薄膜を形成した。この積層磁性体薄膜
のt1、t2、αは(表3)に示す通りである。
【0043】比較例bとして(表3)に示すt1、t
2、αを持つ単層の磁性体薄膜500nmを作成した。
なお上記実施例a及び比較例bでは膜面に平行な任意方
向にX軸方向をとり、膜面に平行でX軸方向に垂直にY
軸方向をとる。また上記比較例aで膜面に平行で配向平
面に垂直な方向をX軸方向とし、膜面に平行で配向平面
に平行な方向をY軸方向とする。
【0044】X軸方向及びY軸方向の初透磁率μをそれ
ぞれμ(X) 、μ(Y) とした。但し、実施例aについては
それぞれ平均値を記載している。
【0045】
【表3】
【0046】(表3)に示すように実施例aの10MH
zでのμ(Y) は、比較例aの約1/5程度になっている
が、明らかに膜面内の異方性が少ない。同様に異方性が
小さい比較例bに比べても高周波での劣化も少ない。い
ずれの測定周波数も、スキンデプスが500nm以上で
あるために、渦電流による共鳴損失はほとんど無視でき
ることから、比較例bの高周波での初透磁率の劣化は強
磁性共鳴によるものと考えられる。
【0047】以上から、本実施例の磁性体積層薄膜で、
各磁性層の磁化容易軸方向が互いに異なっており、積層
膜全体では等方的に分散されている場合、高周波におい
ても等方性に優れた軟磁気特性を示すことが分かる。ま
た分離層としてその他の物質を検討した結果、Cu膜の
他、窒化物、酸化物等、弱磁性または非磁性を示す物質
であれば同様の特性が得られることが分かった。
【0048】(実施例4)実施例aとして50nmの層
厚を持つ磁性層と、2nmの窒化物できた分離層を、交
互に10層づつ積層し、合計約500nmの膜厚を持
ち、隣合う磁性層の膜面内の容易磁化軸方向がなす角が
π/10(ラジアン)であるように等方的に分散させた
磁性体積層薄膜を以下のように作製した。まず磁性層と
してFe−Al−Si合金をターゲットとしたマグネト
ロンスパッタで、基板温度と放電ガス圧、及び各磁性層
ごとに、基板に入射するスパッタ粒子の方向を変え、ア
ニール後に以下(表4)のような特徴を持つ磁性体薄膜
を形成した。
【0049】磁性体結晶粒子は柱状、または実質的に回
転楕円体であった。構成する磁性層ごとに長辺方向の向
きを揃えた結晶粒子群となっており、それぞれ膜面に対
して垂直な異なる配向平面にほぼ平行に並んでいた。こ
れらの10種類の異なる配向平面を、基板に近い磁性層
の配向平面から順に、配向平面A1〜J1とする。配向
平面A1を基準に、配向平面A1と配向平面B1は+π
/10(ラジアン)の角をなし、配向平面A1と配向平
面C1は+2π/10(ラジアン)を、配向平面A1と
配向平面D1は+3π/10(ラジアン)をなすような
順で、それぞれの隣合う磁性層の配向平面同士は、π/
10(ラジアン)の角度をなすように等方的に分散さ
れ、結果として、磁化容易軸方向もπ/10(ラジア
ン)ごとに等方的に分散されていた。(表4)中、磁性
体結晶粒子の長辺方向の長さの平均値をt1、短辺方向
の長さの平均値をt2で、長辺方向が基板となす平均的
な角度をαで表している。分離層は所定の膜厚の磁性層
を形成後に、スパッタガス中に間欠的に窒素を導入する
ことで連続して形成した。
【0050】比較例aとして実施例aの積層磁性体薄膜
の磁性層の配向平面が隣合わない2層で同一で、5つの
異なる配向平面A2〜E2が等方的に分散されており、
隣合う磁性層の配向平面同士がなす角は、π/5(ラジ
アン)で、磁化容易軸方向もπ/5(ラジアン)ごとに
等方的に分散された積層磁性体薄膜を形成した。
【0051】比較例bとして実施例aの積層磁性体薄膜
の磁性層の配向平面が隣合う2層で同一で、配向平面を
共有する隣合う2層の、5つの異なる配向平面A3〜E
3が等方的が分散されており、配向平面を共有しない隣
合う2層の配向平面同士がなす角は、π/5(ラジア
ン)で、磁化容易軸方向もπ/5(ラジアン)ごとに等
方的に分散された積層磁性体薄膜を形成した。
【0052】比較例a、bの積層磁性体薄膜のt1、t
2、αは(表4)に示す通りである。なお上記実施例a
及び比較例a、bでは膜面に平行な任意方向にX軸方向
をとり、膜面に平行でX軸方向に垂直な方向をY軸方向
とした。
【0053】X軸方向及びY軸方向の平均的な初透磁率
μをそれぞれμ(X) 、μ(Y) とした。
【0054】
【表4】
【0055】(表4)に示すように実施例a、及び比較
例a,bともに高周波で初透磁率の低下はほとんどない
が、初透磁率の値は実施例a、比較例b、比較例aの順
に大きい。これは隣合う磁性層の磁化容易軸方向がなす
角が小さいほど、静磁エネルギーを小さくするように静
磁結合が働いているためであると思われる。
【0056】以上から、本実施例の磁性体積層薄膜で、
各磁性層の磁化容易軸方向が互いに異なっており、積層
膜全体では等方的に分散されている場合、隣合う磁性層
のそれぞれの磁化容易軸方向がなす角θ(ラジアン)が
他の磁性層となす角より小さくなるように並んでおり、
磁性層の枚数をN枚とした場合、前記θが約θ=π/N
で表せる積層磁性体薄膜は特に優れた軟磁気特性を示す
ことが分かった。
【0057】(実施例5)実施例a,b、及び比較例a
〜dとしてとして60nmの層厚を持つ磁性層と、1n
mの酸化物できた分離層を、交互に積層し、合計約2000
nmの膜厚を持つ積層磁性体薄膜を以下のように作製し
た。まず非磁性基板上にFe−Si合金をターゲットと
するマグネトロンスパッタで、柱状、または実質的に回
転楕円体とみなせる形状をした磁性体結晶粒子群よりな
る磁性層を形成した。なお磁性体結晶粒子の長辺方向の
長さをt1、短辺方向の長さをt2、長辺が膜面となす
角度をα1とする。この磁性層60nmと、Fe−Si
合金をターゲットとして酸素ガスとの反応性スパッタで
形成した1nmの分離層とを交互に積層し、再表面に分
離層を形成した単位積層膜、約1000nm形成した。続い
て基板に入射するスパッタ粒子の方向を変え、磁性体結
晶粒子の長辺が膜面とα2の角度をなすように作成した
磁性層を60nm形成し、再び分離層、磁性層の順で上
記単位積層膜1000nmを形成した。
【0058】実施例、比較例ともに磁性層を構成する磁
性体結晶粒子は長辺方向の向きを揃えた結晶粒子群とな
っており、それぞれ膜面に対して垂直な配向平面にほぼ
平行になっていた。
【0059】比較例及び実施例の積層磁性体薄膜のt
1、t2、α1、α2は(表5)に示す通りである。な
お上記実施例及び比較例では膜面に平行で配向平面に平
行な方向をY軸方向とした。
【0060】Y軸方向の初透磁率μをそれぞれμ(Y) と
した。
【0061】
【表5】
【0062】(表5)に示すように本実施例の積層磁性
体薄膜で、一部の磁性層を構成する各磁性結晶粒子の長
辺方向と、薄膜の膜面内とのなす角の平均値がπ/3
(ラジアン)より小さく、残りの磁性層を構成する各磁
性結晶粒子の長辺方向と、薄膜の膜面内とのなす角の平
均値がπ/3(ラジアン)より大きいとき、軟磁気特性
が特に優れていることが分かる。これは、積層磁性体薄
膜が1000nm程度に厚くなったことで、結晶粒子の短辺
方向に働く交換相互作用が膜面に垂直方向に働き、容易
磁化方向の膜面に垂直な成分が大きくなったためである
と考えられる。
【0063】なお、このような構造の積層磁性体薄膜の
作成方法として、比較例aに示したように柱状または回
転楕円体の磁性体結晶粒子が、膜面をπ/3(ラジア
ン)以上の角度をなす積層磁性体膜中に、適宜3〜10
nm程度の厚みを持つ磁性層元素を含んだ酸化物または
窒化物層を形成し、アニールすると窒化物または酸化物
層の中から、薄膜の膜面内とのなす角の平均値がπ/3
(ラジアン)より小さい磁性体が焼結し、磁性体との積
層界面へ酸素または窒素の拡散による分離層の形成が行
われ、本実施例の磁性体薄膜を磁性層とした積層磁性体
薄膜で、一部の磁性層を構成する各磁性結晶粒子の長辺
方向と、薄膜の膜面内とのなす角の平均値がπ/3(ラ
ジアン)より小さく、残りの磁性層を構成する各磁性結
晶粒子の長辺方向と、薄膜の膜面内とのなす角の平均値
がπ/3(ラジアン)より大きい積層磁性体薄膜が容易
に形成できることが分かった。また本実施例の積層磁性
体薄膜で、各磁性層の磁化容易軸方向を分散させ、積層
磁性体薄膜全体で等方的になるようにした場合も、一部
の磁性層を構成する各磁性結晶粒子の長辺方向と、薄膜
の膜面内とのなす角の平均値がπ/3(ラジアン)より
小さく、残りの磁性層を構成する各磁性結晶粒子の長辺
方向と、薄膜の膜面内とのなす角の平均値がπ/3(ラ
ジアン)より大きいとき、軟磁気特性が向上する効果が
あることが分かった。
【0064】(実施例6)実施例a〜c、及び比較例a
として50nmの層厚を持つ磁性層と、5nmの磁性層
の酸化物できた分離層を、10層ずつ交互に積層し、合
計約500nmの膜厚を持つ積層磁性体薄膜を以下のよ
うに作製した。
【0065】まず磁性層として、長辺方向の長さをt1
が70nm、短辺方向の長さをt2が30nmとする柱
状、または実質的に回転楕円体である磁性体結晶粒子の
長辺が、膜面となす角度がπ/8になるように50nm
形成した。この磁性層を、酸素ガスとの反応性スパッタ
で形成した1nmの分離層と交互に積層し、積筋生体薄
膜を作成した。実施例、比較例ともに磁性層を構成する
磁性体結晶粒子は長辺方向の向きを揃えた結晶粒子群と
なっており、それぞれ膜面に対して垂直な配向平面にほ
ぼ平行になっていた。なお実施例aはFe−Al合金
を、実施例bはFe−Si合金を、実施例cはFe−T
i合金を、比較例aはFe−Cu合金を、比較例bはF
eをそれぞれターゲットとして用いた。また比較例cと
してFe−Ti合金をターゲットとして用いた、上記と
同じ構造を持つ磁性層と、Alを分離層にした積層磁性
体薄膜を作成した。また比較例dとしてFe−Ti合金
をターゲットとして用いた、上記と同じ構造を持つ磁性
層と、Siを分離層にした積層磁性体薄膜を作成した。
EDSで分析したアニール後の各磁性層の組成を(表
6)に示す。なお上記実施例及び比較例では膜面に平行
で配向平面に平行な方向をY軸方向とした。Y軸方向の
10MHzの初透磁率μをそれぞれμ(Y) とした。
【0066】
【表6】
【0067】(表6)に示すように、アニール後、比較
例a〜dでは磁性層内にターゲットとは異なる元素が存
在しており、TEM観察の結果と併せて考えると、これ
らの元素は分離層から拡散して来たものと考えられる。
一方、実施例a〜cではこれらの拡散元素がほとんどな
い。従って比較例での初透磁率の低下は磁性層と分離層
の相互拡散により、内部応力の増加、粒成長、非磁性元
素によるピンニング等が起こったことによると考えられ
る。
【0068】以上から本実施例の積層磁性体積層膜の磁
性層が酸化物生成自由エネルギーがFeより低い物質、
又は窒化物生成自由エネルギーがFeより低い物質で、
分離層が前記磁性層に含まれる少なくとも一種の元素を
含む酸化物である時、500℃程度でアニールをしても
良好な軟磁気特性が得られることが分かる。また本実施
例の積層磁性体薄膜で、各磁性層の磁化容易軸方向を分
散させ、積層磁性体薄膜全体で等方的になるようにした
場合も、磁性層が酸化物生成自由エネルギーがFeより
低い物質、又は窒化物生成自由エネルギーがFeより低
い物質で、分離層が前記磁性層に含まれる少なくとも一
種の元素を含む酸化物である時、500℃程度でアニー
ルをしても軟磁気特性の劣化が無いことが分かった。
【0069】(実施例7)3〜500mの平均膜厚D1
を持つ磁性層と、0.2nmの平均膜厚D2を持つ酸化
物できた分離層を、交互に積層し、合計約1000nmの膜
厚を持つ積層磁性体薄膜を以下のように作製した。
【0070】まず非磁性基板上に、柱状、または実質的
に回転楕円体である磁性体結晶粒子の集合からなる3〜
500nmの平均膜厚D1を持つ磁性層を、Fe−Al
−Si合金をターゲットとするマグネトロンスパッタで
形成し、この磁性層と同合金をターゲットと酸素ガスと
の反応性スパッタで形成した0.2nmの平均膜厚D2
をもつ分離層を交互に積層し、積層磁性体薄膜を作成し
た。磁性層を構成する磁性体結晶粒子は長辺方向の向き
を揃えた結晶粒子群となっており、それぞれ膜面に対し
て垂直な配向平面にほぼ平行になっていた。なお長辺方
向の長さをt1、短辺方向の長さをt2、結晶粒子の長
辺が膜面となす角をαとし、成膜直後の値を(表7)
に、アニール後を(表8)中に示す。
【0071】つぎに50mの平均膜厚D1を持つ磁性層
と、平均して0.02〜20nmの平均膜厚D2を持つ
酸化物からなる分離層を、交互に積層し、合計約1000n
mの膜厚を持つ積層磁性体薄膜を以下のように作製し
た。
【0072】まず非磁性基板上に、柱状、または実質的
に回転楕円体である磁性体結晶粒子の集合からなる、5
0nmの平均膜厚D1の磁性層を、Fe−Al−Si合
金をターゲットとするマグネトロンスパッタで形成し
た。この磁性層と同合金ターゲットと酸素ガスとの反応
性スパッタで形成した0.02〜20nmの平均膜厚D
2を持つ分離層を交互に積層し、積層磁性体薄膜を作成
した。磁性層を構成する磁性体結晶粒子は長辺方向の向
きを揃えた結晶粒子群となっており、それぞれ膜面に対
して垂直な配向平面にほぼ平行になっていた。なお磁性
体結晶粒子は、長辺方向の長さt1を70nm、短辺方
向の長さt2を30nmとし、長辺が膜面となす角αが
π/4であるような形状をしていた。
【0073】膜面に平行で配向平面に平行な方向をY軸
方向とし、10MHzでのY軸方向の初透磁率μをそれ
ぞれμ(Y) とした。
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】(表7)より本実施例の積層磁性体薄膜は
成膜直後から優れた軟磁気特性を持ちさらに熱処理によ
って、応力緩和などが起こり軟磁気特性が向上すること
が分かる。
【0077】磁気ヘッドを始めとする磁性部品への応用
を考えた場合、初透磁率が1000程度以上必要であるため
に、本実施例の積層磁性体薄膜では、磁性層の平均膜厚
D1が5〜300nmの範囲内で、分離層の平均膜厚D
2が0.05〜10nmの範囲内であることが望まし
い。また、D1/D2≧3である程度に磁性層が厚いこ
とが望ましい。またその他の検討から、分離層は酸化物
の他、窒化物等の弱磁性体、非磁性体でも同様な傾向を
示すことが分かった。また本実施例の磁性体薄膜を磁性
層とした積層磁性体薄膜で、各磁性層の磁化容易軸方向
を分散させ、積層磁性体薄膜全体で等方的になるように
した場合も、磁性層の平均膜厚が5〜300nmの範囲
内で、分離層の平均膜厚が0.05〜10nmの範囲内
である時に軟磁気特性が優れていることが分かった。
【0078】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明の第一の磁性
体薄膜によれば、磁性体薄膜を構成する柱状もしくは実
質的に回転楕円体である複数の磁性結晶粒子の短辺方向
の長さの平均値が2以上40nm以下の範囲であり、X
軸、Y軸、Z軸を主軸とする直交座標系のX−Y平面上
に前記磁性体薄膜の膜面があり、Y−Z平面と各磁性結
晶粒子の長辺方向が略平行であり、磁性層の磁化容易軸
方向が、X−Y平面内で、X軸方向を中心にした±π/
4の範囲内にあることにより、異方性をつけにくい結晶
質性のFe系磁性体にも成膜直後から容易に一軸異方性
がつけられるために、高周波でも初透磁率の劣化が小さ
く、高飽和磁束密度を有する磁性体を得ることができ
る。
【0079】また、本発明の第二の磁性体薄膜によれ
ば、前記第一の磁性体薄膜からなる複数の磁性層と、酸
化物または窒化物からなる分離層とが交互に積層し、前
記磁性層の磁化容易軸方向が略平行であることにより、
静磁エネルギーを下げ、膜に垂直方向の交換エネルギー
を減少でき、軟磁気特性をさらに向上できる効果があ
る。
【0080】また、本発明の第三の磁性体薄膜によれ
ば、前記第一の磁性体薄膜からなる複数の磁性層と、酸
化物または窒化物からなる分離層とが交互に積層し、各
磁性層の磁化容易軸方向が互いに異なっており、膜全体
の磁化容易軸方向が等方的に分散されていることによ
り、膜全体の静磁エネルギーが最小になるので、高飽和
磁束密度を有し、等方性に優れ、高周波領域でも軟磁気
特性が優れるという顕著な効果もある。また、N枚の磁
性層のうち隣合う磁性層の磁化容易軸方向のなす角θラ
ジアンが他の磁性層となす角より小さく、かつ実質的に
θ=π/Nであると、等方的な磁気特性に優れた磁性体
薄膜を達成できる。
【0081】また、一部の磁性層を構成する各磁性結晶
粒子の長辺方向、及び磁性体薄膜の膜面とのなす角の平
均値がπ/3ラジアンより小さく、残りの磁性層を構成
する各磁性結晶粒子の長辺方向と、前記磁性体薄膜の膜
面とのなす角の平均値がπ/3ラジアンより大きいと、
膜面に垂直な交換結合を低めることができる。
【0082】また、磁性層が、Feの酸化物生成自由エ
ネルギーより低い酸化物生成自由エネルギーをもつ物
質、およびFeの窒化物生成自由エネルギーより低い窒
化物生成自由エネルギーをもつ物質から選ばれる少なく
とも一種類の物質を含む磁性層であると、耐熱処理性に
優れ、また耐腐食性、耐摩耗性が優れるという顕著な効
果もある。
【0083】また、分離層が、磁性層に含まれる元素及
び酸素または窒素を含む物質から選ばれる少なくとも1
種を含む分離層であると、耐熱処理性に優れ、また耐腐
食性、耐摩耗性が優れるという顕著な効果もある。
【0084】また、磁性層の平均膜厚D1が5〜300
nm、分離層の平均膜厚D2が0.05〜10nmで、
D1及びD2がD1/D2≧3の関係をみたすと、軟磁
気特性に優れた磁性体薄膜を達成できる。
【0085】従って、本発明の磁性体薄膜を磁気ヘッド
として使用することにより、高保持力媒体に高密度信号
を記録でき、一方、IC基板上に磁気回路部品として実
装することで電子機器全体の小型化ができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性体薄膜を構成する柱状もしくは実質
    的に回転楕円体である複数の磁性結晶粒子の短辺方向の
    長さの平均値が2以上40nm以下の範囲であり、前記
    磁性体薄膜の膜面がX軸、Y軸、Z軸を主軸とする直交
    座標系のX−Y平面上にあり、Y−Z平面と各磁性結晶
    粒子の長辺方向が略平行であり、かつ磁性体薄膜の磁化
    容易軸方向が、X−Y平面上で、X軸方向を中心にした
    ±π/4の範囲内にある磁性体薄膜。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の磁性体薄膜からなる複
    数の磁性層と、酸化物または窒化物からなる分離層とが
    交互に積層し、前記各磁性層の磁化容易軸方向が略平行
    である磁性体薄膜。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の磁性体薄膜からなる複
    数の磁性層と、酸化物または窒化物からなる分離層とが
    交互に積層し、各磁性層の磁化容易軸方向が互いに異な
    っており、膜全体の磁化容易軸方向が等方的に分散され
    ている磁性体薄膜。
  4. 【請求項4】 N枚の磁性層のうち隣合う磁性層の磁化
    容易軸方向のなす角θラジアンが他の磁性層となす角よ
    り小さく、かつ実質的にθ=π/Nである請求項3に記
    載の磁性体薄膜。
  5. 【請求項5】 一部の磁性層を構成する各磁性結晶粒子
    の長辺方向、及び磁性体薄膜の膜面とのなす角の平均値
    がπ/3ラジアンより小さく、残りの磁性層を構成する
    各磁性結晶粒子の長辺方向と、前記磁性体薄膜の膜面と
    のなす角の平均値がπ/3ラジアンより大きい請求項2
    〜4いずれかに記載の磁性体薄膜。
  6. 【請求項6】 磁性層が、Feの酸化物生成自由エネル
    ギーより低い酸化物生成自由エネルギーをもつ物質、お
    よびFeの窒化物生成自由エネルギーより低い窒化物生
    成自由エネルギーをもつ物質から選ばれる少なくとも一
    種類の物質を含む磁性層である請求項2〜5いずれかに
    記載の磁性体薄膜。
  7. 【請求項7】 分離層が、磁性層に含まれる元素及び、
    酸素または窒素を含む物質から選ばれる少なくとも一種
    を含む分離層である請求項2〜6いずれかに記載の磁性
    体薄膜。
  8. 【請求項8】 磁性層の平均膜厚D1が300〜5n
    m、分離層の平均膜厚D2が10〜0.05nmで、D
    1/D2≧3の関係で表される請求項2〜7いずれかに
    記載の磁性体薄膜。
JP28693893A 1993-11-16 1993-11-16 磁性体薄膜 Pending JPH07142249A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28693893A JPH07142249A (ja) 1993-11-16 1993-11-16 磁性体薄膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28693893A JPH07142249A (ja) 1993-11-16 1993-11-16 磁性体薄膜

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH07142249A true JPH07142249A (ja) 1995-06-02

Family

ID=17710903

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP28693893A Pending JPH07142249A (ja) 1993-11-16 1993-11-16 磁性体薄膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH07142249A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009049345A (ja) * 2006-11-22 2009-03-05 Nec Tokin Corp 多層プリント配線基板
US8164001B2 (en) 2006-11-22 2012-04-24 Nec Tokin Corporation Multilayer printed circuit board

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009049345A (ja) * 2006-11-22 2009-03-05 Nec Tokin Corp 多層プリント配線基板
US8164001B2 (en) 2006-11-22 2012-04-24 Nec Tokin Corporation Multilayer printed circuit board

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5998048A (en) Article comprising anisotropic Co-Fe-Cr-N soft magnetic thin films
CA2531373C (en) Magnetic laminated structure and method of making
KR100627115B1 (ko) 고주파용 자성박막, 복합 자성박막 및 그를 이용한 자기소자
JP3688732B2 (ja) 平面型磁気素子および非晶質磁性薄膜
EP0683497B1 (en) Magnetic thin film, and method of manufacturing the same, and magnetic head
JP3318204B2 (ja) 垂直磁化膜およびその製造法ならびに 垂直磁気記録媒体
EP0902445B1 (en) Magnetic thin film and magnetic head using the same
Huang et al. Soft magnetic properties of nanocrystalline amorphous HITPERM films and multilayers
Ohnuma et al. Metal–insulator type nano-granular soft magnetic thin films investigations on mechanism and applications
JP3392444B2 (ja) 磁性人工格子膜
JP2694110B2 (ja) 磁性薄膜及びその製造方法
JP2004207651A (ja) 高周波用磁性薄膜、複合磁性薄膜およびそれを用いた磁気素子
JPH07142249A (ja) 磁性体薄膜
JPH10270246A (ja) 磁性薄膜
JPWO2005027154A1 (ja) 高周波用磁性薄膜、その作製方法および磁気素子
JP2696989B2 (ja) 多層磁性膜
JP3956061B2 (ja) 一軸磁気異方性膜
JPH0727822B2 (ja) Fe−Co磁性多層膜及び磁気ヘッド
JP3810881B2 (ja) 高周波軟磁性膜
JP3172652B2 (ja) 磁性体薄膜とその製造方法及び磁気ヘッド
JP3276109B2 (ja) 磁性体薄膜及び磁気ヘッド
JP3132254B2 (ja) 軟磁性膜および軟磁性多層膜の製造方法
JP3639333B2 (ja) Migヘッド
JPH0547555A (ja) 非晶質軟磁性多層薄膜及びその製造方法
WO2004001779A1 (en) Method of producing nife alloy films having magnetic anisotropy and magnetic storage media including such films

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040423

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040615

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20040811