JPH07119755B2 - 簡易劣化判定方法及び装置 - Google Patents

簡易劣化判定方法及び装置

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JPH07119755B2
JPH07119755B2 JP1261632A JP26163289A JPH07119755B2 JP H07119755 B2 JPH07119755 B2 JP H07119755B2 JP 1261632 A JP1261632 A JP 1261632A JP 26163289 A JP26163289 A JP 26163289A JP H07119755 B2 JPH07119755 B2 JP H07119755B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、金属材料の劣化検査方法及び装置に係り、特
に化学プラント及び原子力プラントの高温環境下で使用
される含フェライト系ステンレス鋼の実機部材の高温時
効脆化損傷の検知に好適な実機部材簡易劣化判定方法及
び装置に関する。
〔従来の技術〕
従来、高温部材の破壊余寿命予知のための検査方法とし
て、特開昭57−175947号公報に記載のように、高温雰囲
気下で使用される実機部材と同一材質からなる被試験体
を非酸化性雰囲気に維持された容器内に封入し、該容器
内を前記実機部材と実質的に同じ高温条件に保った状態
で前記被試験体の電気抵抗を測定することにより、前記
実機部材の破壊余寿命を予知する方法があった。
また、特開昭59−135362号公報は、フェライトスコープ
を用い被検材の磁化率を測定することによりハステロイ
メのフェライト量を求めて、劣化を検出する方法を示し
ている。特願昭62−234828号には、被検材に強磁場を与
えSQUID等で測定した残留磁気等から材料の劣化を判断
する方法が記載されている。特願昭62−305656号は、磁
気センサで被検材の磁気ヒステリシスループを測定し、
この変化から材料の劣化を検出する方法を示している。
従来、電気化学的手法を用いた材料劣化検出方法として
は、「材料」第36巻第402号(1986)p296〜p302におい
て、火力発電プラントのボイラ過熱器管から採取したオ
ーステナイト系ステンレス鋼を用いて、超小型試験片を
切り出し小型パンチ試験により、荷重−変位線図を求め
破壊までの塑性仕事の温度依存性を調べ、材料のじん性
劣化を評価するとともに、電気化学的再活性化法(EPR
法)により材料の電気化学的分極曲線を測定した結果を
合わせて材質の経年劣化を診断する技術が論ぜられてい
る。また、「非破壊検査」第36巻第8号(1987)p535〜
p539では、高温で長時間使用されることによる焼もどし
脆化による材質劣化評価法として、石油化学プラントの
設備機器の実機として使用された部材より切り出した試
料表面のレプリカを採取し、劣化度により異なる粒界腐
食度をレプリカ面のあらさ測定を行うことで検知して、
両者の関係を検討した結果が論ぜられている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特開昭57−175947号公報記載の従来技術では、高温
雰囲気下で使用される実機材における劣化の程度の局所
的なバラツキや、実機材と被検体との間の環境条件の相
違について十分な配慮がされておらず、破壊余寿命予知
の精度と信頼性に問題があった。
前記特開昭59−135362号公報、特願昭62−234828号、特
願昭62−305656号記載の従来技術では、劣化検出にフェ
ライトスコープやSQUID等の磁気センサのような大がか
りな計測装置が必要となり、計測手段の簡素化について
は配慮されておらず、劣化検出のコスト低減に問題があ
った。また、材料の磁気特性を計測して劣化度を評価す
る手法では、測定環境下での磁気的外乱や実機部材の内
部に存在する残留応力等に影響を受けるため、劣化検出
の精度に問題があった。
上記「材料」第36巻第402号(1986)p296〜p302及び
「非破壊検査」第36巻第8号(1987)p535〜p539記載の
従来技術では、実機部材から試験片を切出さねばなら
ず、供用中の実機部材に損傷を与えることなく劣化診断
を行うことができなかった。
本発明の課題は、簡単な計測装置を用いて、実機部材の
供用条件に影響を及ぼすことなく、供用中の実機部材の
経年劣化の程度を判定するにあり、さらに、計測時の外
乱に影響を受けることなく信頼性の高い劣化判定を行う
にある。
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題は、原子力プラントまたは化学プラントのフ
ェライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からなる金
属材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法に、前記金
属材料に化学的または電気化学的にエッチングを施し、
得られるエッチング表面の形態を別の媒体に転写し、転
写した該媒体の表面形態を測定して、該表面形態が、フ
ェライト相の腐食量がオーステナイト相より少ないこと
を示す形態か、またはこの形態から劣化が進んで逆にフ
ェライト相の腐食量がオーステナイト相より多くなる反
転現象を示す形態かを判別することにより、前記金属材
料の構造強度の低下と劣化の有無を判定する手順を備え
ることにより達成される。
上記の課題はまた、原子力プラントまたは化学プラント
のフェライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からな
る金属材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法におい
て、前記金属材料に化学的または電気化学的にエッチン
グを施し、得られるエッチング表面の形態を別の媒体に
転写し、転写した該媒体の表面形態を測定して、該表面
形態が、フェライト相の腐食量がオーステナイト相より
少ないことを示す形態か、またはこの形態から劣化が進
んで逆にフェライト相の腐食量がオーステナイト相より
多くなる反転現象を示す形態かを判別することにより、
前記金属材料の構造強度の低下と劣化の有無を判定し、
該構造強度の低下及びまたは劣化が認められる場合に
は、前記金属材料の一部を該実機部材の供用に支障を来
たさない微小量採取し、アトムプローブで構成元素の濃
度変化を調べ、あらかじめ前記金属材料について求めて
おいた濃度変化と劣化の関係とに比較するこよにより、
前記構造強度の低下と劣化の程度を推定する簡易劣化判
定方法によっても達成される。
上記の課題はまた、原子力プラントまたは化学プラント
のフェライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からな
る金属材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法におい
て、前記金属材料に化学的または電気化学的にエッチン
グを施し、得られるエッチング表面の形態を別の媒体に
転写し、転写した該媒体の表面形態を測定して、該表面
形態が、フェライト相の腐食量がオーステナイト相より
少ないことを示す形態か、またはこの形態から劣化が進
んで逆にフェライト相の腐食量がオーステナイト相より
多くなる反転現象を示す形態かを判別することにより、
前記金属材料の構造強度の低下と劣化の有無を判定し、
該構造強度の低下及びまたは劣化が認められる場合に
は、前記金属材料から該実機部材の共用に支障を来たさ
ない微小量を試料として採取し、該試料の磁気特性の劣
化を超電導量子干渉計で計測し、予め前記金属材料につ
いて求めておいた磁気特性の変化と劣化との関係に比較
するこよにより、前記構造強度の低下と劣化の程度を推
定する簡易劣化判定方法によっても達成される。
上記の課題はまた、レプリカ被採取面に当接する開口部
を有するレプリカ採取容器と、該レプリカ採取容器の前
記開口部に設けられレプリカ被採取面との間をシールす
るシール部材と、前記レプリカ採取容器内の流体を排出
する手段と、前記レプリカ採取容器内に設けられエッチ
ング用の液体をレプリカ被採取面に貯留し保持するエッ
チング装置と、前記レプリカ採取容器内に設けられエッ
チ後のレプリカ被採取面にレプリカ形成用の媒体を押圧
するレプリカ形成手段と、を備えたレプリカ採取装置に
よっても達成される。
レプリカ被採取面の表面層を除去する除去手段をレプリ
カ採取容器内に備えた請求項4に記載のレプリカ採取装
置としてもよい。
上記の課題はまた、レプリカ被採取面を耐水研摩紙で研
摩する手段を備えている請求項4または5に記載のレプ
リカ採取装置によっても、レプリカ被採取面をバフ研摩
する手段を備えている請求項4乃至6に記載のレプリカ
採取装置によっても達成される。
上記の課題はまた、ハブ研摩する手段またはハブ研摩さ
れる面にアルミナ水溶液を供給するアルミナ水溶液供給
手段を、レプリカ採取容器内に備えている請求項7に記
載のレプリカ採取装置によっても達成される。
上記の課題はまた、被検体である金属材料のレプリカ被
採取面近傍にエッチング用の電極の一方を接続する電極
接続手段と、レプリカ被採取面に貯留保持されたエッチ
ング用の液体にエッチング用の電極の他方を浸漬する電
極浸漬手段と、をレプリカ採取容器内に備えている請求
項4乃至8に記載のレプリカ採取装置によっても達成さ
れる。
〔作用〕
金属材料は、供用中に受ける熱履歴、応力履歴により、
経年変化を生じ、強度特性が変化する。この強度特性の
変化は、金属材料に加わった熱履歴、応力履歴に伴う金
属組織の変化に起因するところが大きい。つまり、金属
組織の変化の度合を検出して、強度特性の変化を知るこ
とができる。
本発明は、金属組織の変化を知るバロメータとして、金
属組織各部分の耐食性に着目した。即ち、金属組織を構
成する各相の耐食性は、当該金属材料が新たに製造され
た時点と熱履歴を受けて金属組織が変化したあとで異る
から、供用中の金属組織を構成する耐食性の相対的な変
化を知ることにより、当該金属材料の強度特性を知るこ
とができる。
金属材料の表面を化学的もしくは電気化学的にエッチン
グし、エッチング面のレプリカを採取すると、実機部材
を取り出すことなく、化学的もしくは電気化学的エッチ
ングによる腐食特性を反映した表面形態が非破壊で取り
出される。化学的エッチングや電気化学的エッチング
は、エッチング対象部材がおかれている環境下での磁気
的外乱や内部で応力に影響を受けないため、レプリカ採
取時に係る表面形態のばらつきが小さく、劣化検出の精
度が向上する。
レプリカの表面形態を観察し、金属組織を構成する各種
の相の相対的な腐食量を測定すれば、あらかじめ求めて
おいた、各種の時効を受けた比較材の腐食量と対比して
被検材の時効の程度が判定され、前記比較材で求められ
ている強度特性から被検材の強度特性即ち、劣化の程度
が判定される。例えばフェライト/オーステナイト2相
ステンレス鋼の場合、未使用材では、フェライト相の方
がオーステナイト相よりCr濃度が高いため、オーステナ
イト相の方が腐食量が多いのに対して、劣化材である実
機材は、フェライト相中にCr濃度のゆらぎが起こると、
その低Cr濃度領域のCr濃度がオーステナイト相のCr濃度
より低くくなるため選択的にエッチングされ、それに伴
って該低Cr濃度領域中に微粒状に存在する高Cr濃度領域
も脱離し、その結果としてフェライト相の方がオーステ
ナイト相よりも腐食量が多くなるという反転現象が起き
る。さらにより時効が進んだ実機材では、フェライト相
中にCr濃度の高いα′(アルファプライム)相が析出
し、周囲の低Cr濃度の相の選択的エッチングに伴って該
α′相が脱離する際に、低Cr濃度の相の表面にエッチピ
ットと呼ばれるくぼみができる。このエッチピットの孔
径は、脱離するα′相の寸法に依存し、劣化程度に係っ
てくるため、あらかじめ求めておいた孔径と強度特性と
の関係より、実機材の劣化度が判定される。
エッチングに先きだって、被検面を耐水研摩紙を用いて
研摩したのち、アルミナ水溶液を用いてバフ研摩して鏡
面仕上することにより、エッチングの結果のバラツキを
低下させることができる。
本発明は、また、材料の高温時効脆化に伴う残留磁気特
性の変化に着目した。実機部材の高温時効に伴う脆化を
生じた個所の表面から、当該実機部材の実機での使用条
件に影響を及ぼさない程度の微小量の試料が取り出さ
れ、その磁気特性が検出される。材料の高温時効脆化
と、磁化特性の間には、第23図に示される関係があり、
磁化特性とシャルピー衝撃値の間には、第24図に示され
る関係がある。実機部材から取り出された試料の磁化特
性が検出されると、上述の関係から、時効による材料の
劣化の程度、すなわちシャルピー衝撃値の減少の程度が
判定される。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図面の参照して説明する。第1
図は、炉水6で満たされた原子炉圧力容器1の壁面に接
するようにクレーン8で吊り下げられたレプリカ採取装
置7を示している。該レプリカ採取装置7には、原子炉
室の床面に配置されたモニタ9が接続されている。原子
炉圧力容器1内には、その底部と、炉心サポート5の間
に制御棒案内管3が設けられ、該制御棒案内管3内から
上部グリッドまで伸びる制御棒2が配置されている。前
記クレーン8はレプリカ採取装置7を原子炉壁面の被検
査個所に移動させ、かつ該被検査個所での作業の間、レ
プリカ採取装置7をその場所に保持する。
原子炉内壁面の内張りや、図示されていない一次系配
管、一次系のポンプ等にはフェライト/オーステナイト
2相ステンレス鋼(以下、2相ステンレスと云う)が用
いられている。これらの実機に用いられる部材(以下実
機部材という)は、288℃〜316℃という原子炉が稼動条
件下で長時間使用されると、第2図のようにスピノーダ
ル分解により、2相ステンレス10のフェライト相11中
に、大きさが200Å以下という非常に微細な析出物であ
る、アルファプライム相(以下α′相という)12が発生
する。
前記α′相12は、80%程度の高いCr濃度を持ち、該α′
相の析出の結果Cr濃度が10%近傍に低下したCr欠乏相13
中に第2図に示されるように、10〜200Åの間隔で格子
状に分布する。Cr濃度が20%程度であるオーステナイト
相14にはα′相12は析出せず、前述のような変調構造は
形成されない。
前記スピノーダル分解によるα′相の生成と変調構成の
形成は、当該実機部材の構造強度の低下、つまり、475
℃脆性と呼ばれる経年劣化をもたらす。2相ステンレス
であるCF系材料における時効に伴う硬さの変化を第3図
に、時効に伴う衝撃エネルギ吸収量の変化を第4図に示
す。第3,4図の横軸にとった、時効の程度を表わす時効
パルラメータPは次式で与えられる。
P=logt+0.4343(Q/R) (1/673.2−1/T) ……(1) 但し、t:時効時間(Hr)、T:時効温度(K)、R:ガス定
数。
Qは活性化エネルギ(Kcal/mol)で、 Q=−43.8+4.77(%Si)+2.66(%Cr) +3.45(%Mo) ……(2) で計算される。硬さは、P=1.5近傍からPが大きくな
るにつれ、徐々に増加しはじめるが、衝撃エネルギ吸収
量は、P=2.0近傍からPが大きくなるにつれ、急激に
減少する。例えば、実機部材の一つであるCF−8材の試
験片21,22,23を用意し、試験片21に450℃×100Hr、試験
片22に450℃×1000Hr、試験片23に450℃×5000Hrの時効
処理をそれぞれ施すと、時効パラメータPは、それぞれ
P=2.54、P=3.54、P=4.24となり、熱処理後の硬度
は、第3図から、それぞれ390Hv、445Hv、465Hvとな
り、衝撃エネルギ吸収量は、第4図から、それぞれ200
J,38J,20Jである。
前記3種の時効処理が施された試験片21,22,23における
時効に伴うミクロ組織の変化と、これら試験片と同材料
で時効処理が施されていない試験片のミクロ組織とを調
べるために、各試験片が、第5図に示す手順で表面研摩
された後、観察された。まず、初めに各試験片から、10
mm×10mm×3mmの試料41が切り出され、次いで、該試料4
1が#150から#600までの耐水研摩紙42を用いてペーパ
ー研摩された。該試料41は、さらに、粒径0.05μmのア
ルミナ(Al2O3)10〜15%水溶液43により、バフ研摩さ
れ、鏡面仕上げされた。鏡面仕上げされた試料41が、ビ
ーカ44内に満たされた10%シュウ酸45中に浸漬され、対
向電極46と試料41との間に0.5mV〜1mVの電圧が印加さ
れ、10〜15秒間、電気化学的エッチングが施された。エ
ッチング後、試料41は取り出され、走査型電子顕微鏡SE
M内に導入され、表面形態が観察された。
時効処理が施されていない試料(以下、受け入れ材とい
う)の表面形態を示すSEM写真の概略図である第6図の
ごとく、受け入れ材では、Cr濃度が30%近傍のフェライ
ト相11よりも、Cr濃度が約20%のオーステナイト相14の
方が腐食されやすいため、選択的にエッチされている。
これに対し、試験片21,22から切り出された試料のエッ
チ後のSEM写真の概略図である第7図に示されるよう
に、450℃×100Hr時効材や450℃×1000Hr時効材では、
フェライト相11の方がオーステタイト相14よりも選択的
にエッチされており、相対的エッチ量の反転現象が起き
ている。これは、スピノーダル分解によってフェライト
相11中に生じる高Cr濃度領域と低Cr濃度領域のうち、低
Cr濃度領域が選択的にエッチされ、それに伴って高Cr濃
度領域が非常に微細なため表面から脱離したこと、及び
低Cr濃度領域のCr濃度は10%程度で、オーステナイト相
14よりも腐食量が多くなり、前述のような反転現象が発
生するためである。
一方、試験片23から切り出された試料のエッチ後のSEM
写真の概略図である第8図に示されるように、450℃×5
000Hr時効材の場合には、第7図と同様に反転現象は起
きているが、フェライト相11中に腐食孔(エッチピッ
ト)81が発生している。これはCr欠乏相13の選択的エッ
チに伴って脱離したα′相12の存在を示す。
従来、Cu,Agおよびそれらの希薄合金、さらにNb,W,ケイ
素鉄合金等で転位とエッチピットの1対1が対応がつけ
られている例があるが、特に2相ステンレスの場合には
時効パラメータの大きい試料に対しては、α′相12とエ
ッチピットの対応をつけることが可能である。第8図の
エッチピット81は約1.5μmの大きさを有し、この大き
さは時効パラメータの増大とともに増加する。
以上のごとく、電気化学的にエッチングされた2相ステ
ンレスの表面形態の観察により、フェライト相のスピノ
ーダル分解による変調構造の有無や、α′相の発生の有
無が調べられる。
前記エッチ表面の反転現象やエッチピットの発生をもと
に、CF系2相ステンレスにおけるスピノーダル分解と
α′相の発生開始点を示すTTT線図を描くと、第9図の
ようになる。例えば450℃時効では、70hr91と100hr92と
の間で前記反転現象が生じ、3000hr93と5000hr94との間
にα′相が発生する遷移時間が存在する。スピノーダル
分解の発生開始点を示す曲線95とα′相の析出開始点を
示す曲線96は、時効温度と時効時間を細かく選ぶことに
より精度よく描くことができる。前記のごとく、α′相
やCr欠乏相は200Å以下という非常に微小な析出相であ
るため、従来その存在を調べるには高分解能の透過型電
子顕微鏡や中性子小角散乱等の大がかりな装置が必要と
されていた。本発明の方法は、非常に簡単な手順と装置
により、容易に2相ステンレスの組織変化を調べること
ができるという効果がある。また、エッチング条件の強
弱を変えることにより、調べたい脆化度の領域における
エッチ表面と強度特性の関係を詳細に測定することがで
きるという効果もある。
時効パラメータの大きい試料に形成されるエッチピット
の孔径を走査型電子顕微鏡で測定し、該試料の衝撃エネ
ルギ吸収量を計測することにより、第10図に示されるよ
うに、エッチピットの孔径と衝撃エネルギ吸収量の関係
を得ることができる。本発明の方法を用いて、予め実機
部材と同一の材料についてエッチ表面の形態と強度特性
との関係を求めておくと、使用中の実機部材のエッチ表
面を観察することにより、プラント構造強度を評価し、
寿命予測を行うことも可能である。
第11図は本発明の実施例であるレプリカ採取装置7が原
子炉炉壁102の検査のために設置された状態を示す。図
に示すレプリカ採取装置7は、被検面に接する部分にシ
ール部材であるスカート109を備えた開口部をもつレプ
リカ採取容器101と、該レプリカ採取容器101の前記スカ
ート109の開口面とほぼ直角方向の開口部に水密に固着
された駆動装置125と、前記レプリカ採取容器101内で該
駆動装置125にそれぞれ傘歯車を介して結合され回転駆
動される耐水研摩紙で研摩する手段であるディスク112
及びバフ研摩する手段であるディスク115と、前記レプ
リカ採取容器101の壁面を貫通して該容器101内の前記デ
ィスク112付近に開孔する除去手段であるウォータージ
ェット用ノズル105と、前記駆動装置125に結合され前記
ディスク115付近に開孔するアルミナ水溶液供給手段で
あるアルミナ注入用チューブ113と、前記レプリカ採取
容器109壁面に設けられ該容器へのガス注入を行う流体
排出手段であるガス注入口107と、一端を前記駆動装置1
25に接続され、他端の開口部を前記ディスク115付近に
位置させた電極接続手段であるスポット溶接用チューブ
118及び該チューブ118に内装された電極117と、一端を
前記駆動装置125に接続され他端開口部に備えた吊鐘状
のスカート119を前記スポット溶接用チューブ118の開孔
部付近に位置させるとともに、電極浸漬手段であるエッ
チング用電極122を内装したエッチング装置120と、前記
駆動装置125によって回転駆動されるピニオンに係合す
るラックに連結棒を介して連結され前記スカート119付
近に配置されたレプリカ形成手段であるレプリカ採取用
ロール123と、前記レプリカ採取容器101の壁面に装置の
設置状態で下方に突出する形に設けられた水溶液溜め11
6と、レプリカ採取容器101の前記水溶液溜め116が設け
られた側の面の外側にゲートバルブ111を介して接続さ
れた粗引きポンプ110と、を備えている。
前記ディスク112,115はスカート109の開口面に対して垂
直な軸を中心として回転するとともに、該軸に平行の方
向に進退可能であり、装置の設置状態で上下となる方向
(スカート109の開口面に平行な方向)に移動可能に構
成されている。
前記スポット溶接用チューブ118も内装する電極117と共
に、スカート109の開口面に対して垂直の方向に進退可
能に、かつ装置の設置状態で上下となる方向(以下、単
に上下方向という)に移動可能に構成されている。エッ
チング装置120は前記スポット溶接用チューブ118と同様
の方向に移動可能であると共に、その内部にシュウ酸水
溶液が注入されるように構成されている。
レプリカ採取用ロール123は、前述のようにラックに連
結棒を介して連結されていて、ピニオンの回転により、
前記スカートの開口面に垂直の方向に進退するととも
に、上下方向にも移動可能としてある。また、該ロール
123は円筒形をしていて、前記連結棒に設けられた該連
結棒の進退方向および上下方向に垂直な軸のまわりに回
転可能となっており、その外周面にはレプリカ採取のた
めの媒体が装着されるようになっている。
前記ディスク112,115、アルミナ注入用チューブ113、ス
ポット溶接用チューブ、エッチング装置、及びレプリカ
採取用ロールの回転、上下方向の移動、スカート開口面
に垂直な方向の進退は、いずれも前記駆動装置125によ
り行われる。
次に本レプリカ採取装置のレプリカ採取の動作手順を説
明する。レプリカ採取装置7は、炉壁面に4個の吸盤で
吸着する図示されていないXYステージに設置され、該XY
ステージ上で炉壁面に対して平行に移動すると共に、該
XYステージにより炉壁面に保持される。XYステージ自体
は、前記4個の吸盤内の炉水が排水されて真空状態とな
り、この吸盤により炉壁面に吸着・固定する。レプリカ
被採取位置にレプリカ採取装置7が設置されると、レプ
リカ採取容器101のスカート109の開口面が炉壁102のレ
プリカ被採取面上へ固定される。このとき、ゲートバル
ブ111は閉じられている。次にガス注入口107より高圧窒
素ガス108がレプリカ採取容器101に導入され、該容器10
1から炉水6が排出される。この際、レプリカ採取容器1
01の開口部には、ゴム等のやわらかい材質でできたスカ
ート109が装着され、レプリカ採取容器101は、該スカー
ト109を介して炉壁102に接しているため、このスカート
109がレプリカ採取容器101と炉壁102の表面の間をシー
ルし、容器101外の炉水6が、該容器101内に逆流するこ
とはない。
容器101内の排水後、容器101内の窒素ガスとほぼ同じ圧
力の窒素ガスが粗引きポンプ110内に満たされ、ゲート
バルブ111が開かれる。次いで、粗引きポンプ110により
容器101内の窒素ガスが排出され、容器101内の圧力が容
器外部の水圧よりも低圧に保持される。この圧力差によ
り容器101が炉壁102に安定に保持される。
尚、ここでは、高圧窒素ガスをレプリカ採取容器101に
充満させて該レプリカ採取容器内の炉水を排出し、次い
で粗引きポンプ110により該レプリカ採取容器内の高圧
窒素ガスを排出するようにした例を述べたが、レプリカ
採取容器101の下部に止弁を備えた排水管を設け、この
排水管に高圧窒素ガスで駆動されるエゼクターを接続し
てもよい。こうすれば排水と同時にレプリカ採取容器10
1内の圧力を低圧(真空)とすることができる。
炉壁102の表面上には、クラッド103や酸化膜104等の薄
い表面層が存在しており、レプリカの採取の障害となる
ので、レプリカ採取容器101内の圧力が低下したら、ウ
ォータージェット用ノズル105から高圧水106が噴射さ
れ、該表面層が除去される。
クラッド等の表面層が除去されたら、耐水研摩紙42が貼
付されたディスク112が、被採取面に接触するまで炉壁
方向に前進し、次いでその状態で回転して被採取面が#
600まで研摩される。#600まで研摩された面は、さらに
アルミナ注入用チューブ113からアルミナ水溶液114を注
入しながら、ディスク115によりバフ研摩される。注入
されたアルミナ水溶液114は、水溶液溜116に回収され
る。
以上の手順が終了すると、被採取面近傍の炉壁にスポッ
ト溶接用チューブ118が接地され、電極117が炉壁面上に
スポット溶接される。次いでエッチング装置120が、レ
プリカ被採取面である炉壁102上にスカート119を介して
固定され、該エッチング装置120内に10%シュウ酸水溶
液121が注入される。エッチング装置120は、スカート11
9が被採取面を囲む位置になるように位置が設定され
る。次いでスポット溶接された前記電極117とエッチン
グ装置120に内容されたエッチング用電極122の間に電圧
が印加され、被採取面のエッチングが行われる。次にエ
ッチング装置120が炉壁面から離れて後退、移動し、レ
プリカ採取用の媒体を外周に装着したレプリカ採取用ロ
ール123が被採取面に回転しながら圧着され、媒体上
に、エッチされた被採取面の凹凸が転写されてレプリカ
124が形成される。レプリカ形成のためにレプリカ採取
用ロール123の外周に装着される媒体としては、溶媒に
濡らしたアセチルセルロースや、薄いコロジオン、又は
ファルンバール等が使用できる。尚、上述の手順におけ
るディスク112,115の被採取面への接触、後退、移動も
エッチング装置の場合と同様、駆動装置125により行わ
れる。レプリカ採取容器101には、被採取面に対する各
種作業観察のための光源を兼ねた観察用ファイバスコー
プ126が設けられており、前述の各機器の操作は、該フ
ァイバスコープ126で得られる情報をもとに行われる。
レプリカ採取が終了すると、レプリカ採取容器101の内
部圧力は外部の静水圧とすくなくともほぼ同じになるま
で高められ、レプリカ採取装置7はXYテーブルから離脱
してクレーン8により、炉水6上に巻き上げられる。巻
き上げられたレプリカ採取容器101からレプリカ124が回
収され、Pt/Pd(8:2)あるいはCr等の重金属がレプリカ
表面に蒸着されてシャドーイングが施される。シャドー
イングの上から、さらに補強のため、カーボンが蒸着さ
れる。蒸着面側が、溶かしたパラフィンでガラス板に固
着される。最後にレプリカは走査型電子顕微鏡に導入さ
れて観察される。
本実施例によれば、炉壁の一部を切り出すことなく、非
破壊で、炉壁のエッチ表面が観察され、炉壁面の劣化の
程度の判定が可能になるという効果がある。
第13図のごとく、被測定面(被採取面)から採取したレ
プリカから得られた蒸着膜を走査型電子顕微鏡で観察
し、オーステナイト相とフェライト相の反転現象が起き
ていなければ、スピノーダル分解は生じておらず脆化し
ていないと判定される。反転現象が起きていれば、スピ
ノーダル分解又は核生成は発生しており、さらに、エッ
チピットが確認できなければ脆化は小さいと判断でき
る。また、エッチピットが観察される場合には、エッチ
ピットの孔径を測定して、予め定めておいたエッチピッ
トの孔径と強度特性との関係を比較することにより、被
測定面の脆化の程度を評価することが可能である。この
際、高分解能を有する走査型電子顕微鏡又は透過型電子
顕微鏡を用いてエッチ表面から得られた蒸着膜を観察す
ることにより、劣化診断の精度と信頼性が一段と高ま
る。
本実施例によれば、2相ステンレスのフェライト相のス
ピノーダル分解又は核生成成長機能によって生じる475
℃脆性を直接被測定体の金属組織変化から非破壊で評価
できるという効果がある。
第13図に示す手順のごとく、被測定面の脆化の程度をエ
ッチピットの孔径測定によって求める代りに、一原子層
毎の組成分析を行うことのできるアトムプローブや、10
-3T程度の非常に微少な磁気密度を検知できるSQUID(超
電導量子干渉素子)を用いることにより、脆化度評価の
精度をさらに高めることができる。
第14図に、本発明の電気化学的手法による簡易劣化判定
法に、アトムプローブ及びSQUIDを用いる方法を組み込
んだ、原子力プラントに用いられる2相ステンレス鋼の
脆化度を評価する手順を示す。まず、原子力プラントの
2相ステンレス鋼からなる原子炉炉壁や一次系配管、ポ
ンプ等のうち、脆化度の測定対象と位置が選定される。
選定された被測定個所のエッチングが行われ、エッチン
グ表面のレプリカが採取される。採取されたレプリカ表
面に蒸着膜が形成され、電子顕微鏡で観察される。オー
ステナイト相とフェライト相の相対的な腐食量の反転の
有無がチェックされ、これにより、スピノーダル分解に
よる時効析出の有無が判定される。ここまでの手順は、
前述の第12,13図により説明した方法と同一である。
次いで、被測定部の微小試料が採取され、アトムプロー
ブ試料が作成される。第15図は、微小試料を採取するの
に用いられる。本発明に係る試料採取装置の実施例を示
し、第16図はこの試料採取装置を用いて試料が採取され
るときの手順の例を示している。採取された微小試料を
用いて第17図に示されるようなアトムプローブ試料が作
成され、第18図に示される原理でアトムプローブ分析が
行われて、第19図のごとき原子層毎の濃度変化が明らか
となり、時効析出の程度が定量的に調べられるので、金
属組織変化に伴う被測定部の脆化度の定量的評価が可能
となる。
また、SQUIDが用いられた場合には、SQUIDで被測定体か
ら検出されるB−H曲線が受け入れ材(第21図)、と脆
化材(第22図)で異なり、第23図のごとく、脆化が進行
するにつれて残留磁束密度が上昇するので、予め求めて
おいた第24図に示されるような残留磁束密度とシャルピ
ー衝撃値との関係から被測定体の強度の低下が推定され
る。
次に、微小試料の採取以降の手順について図面を参照し
て説明する。
まず、第15図に示す真空粗引き型の試料採取装置50によ
り、被測定個所の微小試料が採取される。試料採取装置
50は、試料採取用開口を有する略円筒形の試料採取容器
150と、前記試料採取用開口に装着され、前記試料採取
容器150が被測定個所に設置されたとき、被測定個所の
表面と試料採取容器の間を水密に封止するゴム製のスカ
ート152と、前記試料採取容器150の壁面に設けられて該
試料採取容器に高圧窒素ガス108を注入するガス注入口1
51と、前記試料採取容器150の設置状態で下方(以下、
単に下方という)になる試料採取容器150の壁面に開閉
手段であるゲートバルブ155を介して接続された排気手
段である粗引きポンプ154と、該粗引きポンプ154の入口
側に設けられたフィルタ157と、前記試料採取容器150内
の試料採取用開口近傍に配置された切削手段であるドリ
ル159Aと、該ドリル159Aに隣接して、同じく試料採取容
器150内に配置された研削手段である研削砥石159Bと、
試料採取容器150内に配置され、前記ドリル159Aに近接
した位置に開口する高圧気体注入手段である高圧窒素ガ
ス注入用ノズル158と、前記ドリル159A近傍の状況を観
察できるように配置された観察用フアイバースコープ12
6Aと、試料採取容器150に固着され、前記ドリル159A、
研削砥石159B、ゲートバルブ155、粗引ポンプ154の動作
を制御する駆動装置125Aと、を備えている。ドリル159A
は傘歯車を介して駆動装置125Aに連結されたスカート15
2の開口面に垂直な軸のまわりに回転して切削を行うと
ともに、該軸方向の進退及び上下方向の移動が可能なよ
うに構成されている。研削砥石159Bは、傘歯車を介して
駆動装置125Aに結合されたスカート152の開口面に垂直
な軸のまわりに回転して被測定面(切削面)の研削を行
うとともに、該軸方向の進退及び上下方向の移動が可能
なように構成してある。
以下、上記構成の試料採取装置を用いて試料を採取する
手順を、第16図を参照して説明する。まず試料採取容器
150が、被採取面(被測定個所)である炉壁102上に被採
取面に試料採取用開口を対向させ、スカート152を介し
て固定される。試料採取容器150は、真空排気されて吸
着する吸盤を4ヶ所に備えて、炉壁に吸着固定されるXY
ステージに搭載され、該XYステージ上で炉壁に平行に移
動され、固定される。ゲートバルブ155は閉じられてい
る。次いで、ガス注入口151から、試料採取容器150内に
高圧窒素ガス108が注入される。試料採取容器150は、前
述のように、ゴム製のスカート152を介して炉壁に固定
されているので、試料採取容器150内に充満していた炉
水153は高圧窒素ガス108の試料採取容器150内への注入
に伴って、前記スカート152と炉壁102の間から炉内へ排
出され、試料採取容器150内は高圧窒素ガスで満たされ
る。粗引きポンプ154のケーシングにも、ガス注入口33
が設けられており、このガス注入口33からも高圧窒素ガ
ス108が注入される。次にドリル159Aにより、炉壁102の
表面が切削され、同時にゲートバルブ155が開かれ、粗
引きポンプ154が運転される。切削粉156は高圧窒素ガス
108と共に排出され、フィルター157に回収される。ま
た、粗引きポンプの運転と同時に高圧窒素ガス注入用ノ
ズル158から、切削部近傍に高圧窒素ガスを注入して、
切削部から粗引きポンプ154に向う窒素ガスの流れを作
った状態でドリル切削が行われると、切削粉156は効率
よくフィルター157に回収される。
切削が終了したらゲートバルブ155が閉じられ、切削さ
れた面が、研削砥石159Bにより、なめらかに研削仕上さ
れる。これで、試料の採取が終了し、試料採取装置150
は原子炉外へ取出され、フィルター157から切削粉が回
収される。
被測定個所が炉壁面に複数個所にるときは、1個所ごと
に試料採取装置を原子炉外に取出してもよいが、被測定
個所を区別する必要がないときは、同一フィルターに順
次、複数個所の切削粉を混在させて回収してもよい。ま
た、試料採取装置にフィルター交換手段を設け、その都
度、試料採取装置を原子炉外に取り出すことなく、継続
的に試料採取を行うようにしてもよい。継続して試料採
取を行う場合は、前述のXYステージ上で、試料採取装置
を移動し、新たな被測定個所に試料採取装置が固定さ
れ、上述の手順が繰り返えされる。
上述の方法によれば、試料採取容器151内の炉水を排除
して試料が採取されるので、炉水中の浮遊物の試料中へ
の混入が防止される。
フィルター157で回収される切削粉のうち、実際にアト
ムプローブ分析に必要な量は極微量であるが、原子炉炉
壁が被測定体である場合、切削粉が放射能を帯びている
ので、第17図に示されるようなアトムプローブ試料181
の作成及び分析は、全て遠隔操作で行われる。まず直径
0.25mmのMoワイヤが切り出されて中央で曲げられ、Moル
ープ171が形成される。このMoループ171の中央にMoの下
地金属172が点溶接され、この下地金属172の先端に電導
製接着剤173を介して切削粉156が装着される。
切削粉156の表面原子がアトムプローブの一つの機能で
ある電界イオン顕微鏡(FIM)で観察されるときは、切
削粉156が装着された下地金属172の先端が、イオンミリ
ング等の処理により、半球状に形成される。また切削粉
156の表面から深さ方向に組成分析される場合は、超高
真空中において、試料(切削粉)に正の高電圧が印加さ
れるとともに、下地金属172の軸に対して垂直の方向か
らパルスレーザ光174が切削粉156の先端に照射される
と、パルスレーザ光174に励起されて、切削粉156の表面
から原子が蒸発イオン175となって脱離する。
第18図はアトムプローブの動作原理を示す。切削粉156
が装着されたアトムプローブ試料181にDC電源182より、
数KVの正の高電圧が印加され、さらにその先端に窒素レ
ーザ183からパルサレーザ光184が照射されると、切削粉
先端の最も高い電界領域に存在する表面原子が蒸発イオ
ン175となってスクリーン185の中央部の穴を通過して検
出器186に到達する。この蒸発イオンの飛行時間が、真
空チャンバー187の外部に設けられたタイマー188で測定
され、コンピュータ189で蒸発イオンの同定が行われ
る。
上述の手順によって切削粉の表面原子が1個毎分析され
ると、一原子層あたりの検出イオン数は、材料の種類と
電圧や試料とスクリーンの距離によって推定されるの
で、最表面から深さ方向への濃度プロファイルが得られ
る。第19図は、このようにして得られた2相ステンレス
鋼の未処理材(受け入れ材)におけるフェライト相中の
Cr濃度プロファイルであり、第20図は同様にして得られ
た2相ステンレス鋼の475℃×1000Hr時効材におけるフ
ェライト相中のCr濃度プロファイルである。受け入れ材
のCr濃度は約28%近傍にあり、濃度のゆらぎはほとんど
見られない。これに対して時効材のCr濃度プロファイル
はα′相の発生に行うCr濃度のゆらぎとそのゆらぎ内の
高Cr濃度領域の存在を示している。本方法によれば、実
機部材の材料強度の低下の原因となる極微小析出物の大
きさや濃度を原子層オーダーで評価できる。
また、含フェライト系ステンレス鋼等の金属材料の高温
加熱による脆化について、種々試験した結果、高温時効
に伴い、金属材料の電気抵抗率ρや透磁率μなどの電磁
気的特性及び硬さや金属組織などの機械的性質も変化す
ることがわかった。特に、第21図、第22図に示すよう
に、材料の高温時効脆化と磁化特性の変化とがよく対応
することが見出された。第21図及び第22図は、それぞれ
受け入れ材および高温熱処理材の磁気ヒステリシスの測
定結果を示し、被測定体の磁気ヒステリシスループの面
積(磁気ヒステリシスロス)や残留磁束密度が、脆化の
程度により変化していることを示している。この現象を
利用して、特に含フェライト系ステンレス鋼等の金属材
料の脆化の進行程度が精度良く検知される。
〔発明の効果〕
本発明によれば、電子力プラントの実機部材である2相
ステンレス鋼の475℃脆性に伴う材料強度の低下を簡単
な電気化学的エッチングにより評価することが可能なの
で、大がかりな装置を必要とせず、また2相ステンレス
鋼の劣化が進むと未使用材と逆にフェライト相の腐食量
がオーステナイト相より多くなるという反転現象から容
易に材料の劣化の程度を調べることができるという効果
がある。
また、外界磁気や残留応力等の外乱に影響を受けること
なく、脆化度を計測することができるので、データのバ
ラツキが減少し精度よく劣化診断を行うことが可能にな
るという効果もある。
【図面の簡単な説明】
第1図は原子炉炉壁内面の劣化判定のために配置された
簡易劣化判定装置を示す断面図、第2図は475℃脆性に
おける2相ステンレス鋼の金属組織変化を示す概念図、
第3図は2相ステンレス鋼CF系材料における時効に伴う
硬さの変化を示すグラフ、第4図は2相ステンレス鋼CF
系材料における時効に伴う衝撃エネルギの変化を示すグ
ラフ、第5図は本発明の一実施例である簡易劣化判定方
法に用いる比較データ作成の手順図、第6図は受け入れ
材のエッチング後の表面形態を示すSEM写真の概略図、
第7図は450゜×100Hr時効材及び450゜×1000Hr時効材
のSEM写真の概略図、第8図は450゜×5000Hr時効材のSE
M写真の概略図、第9図はCF系2相ステンレス鋼におけ
るスピノーダル分解とα′相の発生開始点を示すTTT線
図、第10図はエッチピットの孔径と衝撃エネルギの関係
を示すグラフ、第11図は原子炉炉壁に装着されたレプリ
カ採取装置の実施例を示す断面図、第12図は本発明の簡
易劣化判定方法のレプリカ作成と観察までの実施例を示
す手順図、第13図は本発明の簡易劣化判定方法のレプリ
カ観察と劣化判定までの実施例を示す手順図、第14図は
微小試料を採取する場合の実施例を示す手順図、第15図
は本発明の実施例である試料採取装置を示す断面図、第
16図は第15図に示す試料採取装置により試料採取する例
を示す手順図、第17図はアトムプローブ試料の例を示す
正面図、第18図はアトムプローブ分析の原理を示すブロ
ック図、第19図および第20図は試料の原子層ごとのCr
度の変化の例を示すグラフ、第21,22図は試料のB−H
曲線の例を示すグラフ、第23図は試料の残留磁束密度が
時効の程度によって変化することを示すグラフ、第24図
は残留磁束密度の変化につれてシャルピー衝撃値が変化
することを示すグラフである。 1……原子炉圧力容器、2……制御棒、3……制御棒案
内管、4……上部グリッド、5……炉心サポート、6…
…炉水、7……簡易劣化判定装置、8……クレーン、9
……モニター、10……2相ステンレス鋼、11……フェラ
イト相、12……α′相、13……Cr欠乏相、14……オース
テナイト相、21……450℃×100hr、22……450℃×1000h
r、23……450℃×5000hr、41……試料、42……耐水研摩
紙、43……アルミナの10〜15%水溶液、44……ビーカ、
45……10%修酸、46……対向電極、81……エッチピッ
ト、95……スピノーダル分解の発生開始点を示す曲線、
96……α′相の析出開始点を示す曲線、101……レプリ
カ採取用容器、102……炉壁、103……クラッド、104…
…酸化膜、105……ウォータージェット用ノズル、106…
…高圧水、107……ガス注入口、108……高圧窒素ガス、
109……スカート、110……粗引きポンプ、111……ゲー
トバルブ、112……ディスク、113……アルミナ注入用チ
ューブ、114……Al2O3水溶液、115……ディスク、116…
…水溶液溜め、117……電極、118……スポット溶接用チ
ューブ、119……スカート、120……エッチング装置、12
1……修酸水溶液、122……電極、123……レプリカ採取
用ロール、124……レプリカ、125……駆動装置、126…
…ファイバースコープ、150……試料採取容器、151……
ガス注入口、152……スカート、153……炉水、154……
粗引きポンプ、155……ゲートバルブ、157……フィル
タ、158……高圧窒素ガス注入用ノズル、159A……ドリ
ル、159B……研削用砥石。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 榎本 邦夫 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−235861(JP,A) 特開 平1−185444(JP,A) 特開 昭63−212844(JP,A) 特開 平1−147360(JP,A) 実開 昭61−99050(JP,U) 中村輝太郎外1名責任編集「実験物理学 講座(第13巻)試料の作成と加工」(昭和 56年)共立出版 P.715

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子力プラントまたは化学プラントのフェ
    ライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からなる金属
    材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法において、前
    記金属材料に化学的または電気化学的にエッチングを施
    し、得られるエッチング表面の形態を別の媒体に転写
    し、転写した該媒体の表面形態を測定して、該表面形態
    が、フェライト相の腐食量がオーステナイト相のそれよ
    り少ないことを示す形態か、または該形態から劣化が進
    んで逆にフェライト相の腐食量がオーステナイト相のそ
    れより多くなる反転現象を示す形態かを判別することに
    より、前記金属材料の構造強度の低下と劣化の有無を判
    定することを特徴とする簡易劣化判定方法。
  2. 【請求項2】原子力プラントまたは化学プラントのフェ
    ライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からなる金属
    材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法において、前
    記金属材料に化学的または電気化学的にエッチングを施
    し、得られるエッチング表面の形態を別の媒体に転写
    し、転写した該媒体の表面形態を測定して、該表面形態
    が、フェライト相の腐食量がオーステナイト相のそれよ
    り少ないことを示す形態か、または該形態から劣化が進
    んで逆にフェライト相の腐食量がオーステナイト相のそ
    れより多くなる反転現象を示す形態かを判別することに
    より、前記金属材料の構造強度の低下と劣化の有無を判
    定し、該構造強度の低下及びまはは劣化が認められる場
    合には、前記金属材料の一部を該実機部材の供用に支障
    を来たさない微小量採取し、アトムプローブで構成元素
    の濃度変化を調べ、あらかじめ前記金属材料について求
    めておいた濃度変化と劣化の関係とに比較することによ
    り、前記構造強度の低下と劣化の程度を推定することを
    特徴とする簡易劣化判定方法。
  3. 【請求項3】原子力プラントまたは化学プラントのフェ
    ライト/オーステナイト2相ステンレス鋼からなる金属
    材料の劣化の程度を判定する劣化判定方法において、前
    記金属材料に化学的または電気化学的にエッチングを施
    し、得られるエッチング表面の形態を別の媒体に転写
    し、転写した該媒体の表面形態を測定して、該表面形態
    が、フェライト相の腐食量がオーステナイト相のそれよ
    り少ないことを示す形態か、または該形態から劣化が進
    んで逆にフェライト相の腐食量がオーステナイト相のそ
    れより多くなる反転現象を示す形態かを判別することに
    より、前記金属材料の構造強度の低下と劣化の有無を判
    定し、該構造強度の低下及びまたは劣化が認められる場
    合には、前記金属材料から該実機部材の供用に支障を来
    たさない微小量を試料として採取し、該試料の磁気特性
    の変化を超電導量子干渉計で計測し、予め前記金属材料
    について求めておいた磁気特性の変化と劣化との関係に
    比較するこよにより、前記構造強度の低下と劣化の程度
    を推定することを特徴とする簡易劣化判定方法。
  4. 【請求項4】レプリカ被採取面に当接する開口部を有す
    るレプリカ採取容器と、前記開口部に設けられレプリカ
    被採取面との間をシールするシール部材と、前記レプリ
    カ被取容器内の流体を排出する手段と、前記レプリカ採
    取容器内に設けられエッチング用の液体をレプリカ被採
    取面に貯留し保持するエッチング装置と、前記レプリカ
    採取容器内に設けられエッチング後のレプリカ被採取面
    にレプリカ形成用の媒体を押圧するレプリカ形成手段
    と、を備えたレプリカ採取装置。
  5. 【請求項5】レプリカ被採取面の表面層を除去する除去
    手段をレプリカ採取容器内に備えた請求項4に記載のレ
    プリカ採取装置。
  6. 【請求項6】レプリカ被採取面を耐水研摩紙で研摩する
    手段を備えていることを特徴とする請求項4または5に
    記載のレプリカ採取装置。
  7. 【請求項7】レプリカ被採取面をバフ研摩する手段を備
    えていることを特徴とする請求項4乃至6に記載のレプ
    リカ採取装置。
  8. 【請求項8】ハブ研摩する手段またはハブ研摩される面
    にアルミナ水溶液を供給するアルミナ水溶液供給手段
    を、レプリカ採取容器内に備えていることを特徴とする
    請求項7に記載のレプリカ採取装置。
  9. 【請求項9】被検体である金属材料のレプリカ被採取面
    近傍にエッチング用の電極の一方を接続する電極接続手
    段と、レプリカ被採取面に貯留保持されたエッチング用
    の液体にエッチング用の電極の他方を浸漬する電極浸漬
    手段とをレプリカ採取容器内に備えていることを特徴と
    する請求項4乃至8に記載のレプリカ採取装置。
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