JPH0711444Y2 - 電磁石の吸着検出装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本案はリフティングマグネットなど物品保持用に使用す
る直流電磁石の吸着検出装置に関するものである。

「従来の技術」 電磁石の主コイルを直流電源により励磁した場合にその
起磁力で発生する磁束は吸着物の有無により大きく変化
する。被吸着物が存在しない時、又は磁石と被吸着物の
隙間が大きい時には磁気抵抗が大きく磁束が少い（磁束
密度が低い）。被吸着物が吸着された時には磁性体によ
り磁路が短絡されるため磁気抵抗が小さくなり磁束が多
く（磁束密度が高く）なる。

この磁束を測定する従来の方法として、ホール素子、磁
気抵抗素子などの磁気センサーを埋設して磁束密度を計
測する方法、さぐりコイル（サーチコイル）により磁束
数を計測する方法が考えられる。しかし磁気センサーは
一般的に半導体を使用するため耐熱度が低く高温材料の
吸着検出や高温の雰囲気での使用に耐えられない。又さ
ぐりコイルの場合は温度制約はなくリフティングマグネ
ットとして使用可能な数百度まで使用可能であるが、主
コイルを励磁した時に主コイルの内極に巻き回したさぐ
りコイルに誘起する起電力から磁束数の計測を行うため
連続した吸着確認が難しい。

又直流電磁石の主コイルの直流励磁回路に交流分又は脈
流を重畳し該励磁回路に変圧器の１次コイルを接続し、
或は該重畳励磁回路に励磁コイルと直列にリアクトル又
は抵抗を挿入し、その両側にコンデンサを介して変圧器
の１次コイルを接続し、該変圧器の２次コイルの端子電
圧から吸着物を検出する装置が開発されている（特公昭
51−2621号）。しかし励磁回路から直接検出する上記検
出装置では吸着物の有無及び吸着物と主コイルとのギャ
ップの大小によって磁路が開から閉回路となることによ
り磁気抵抗が変化し、励磁コイルのインダクタンスＬが
変化し交流分電流が変化するための吸着の状態により２
次コイルの端子電圧の変動が大きく検出動作が不安定に
なるし、高価な電力変換器を要し、変換効率の低下、吸
着力の脈動などが問題になり、かつ既存の電磁石の電源
装置が使えないという問題がある。

「考案が解決しようとする課題」 本案は電磁石使用に際し、高温材料の吸着物が確実に吸
着保持されていることを精度良く連続的に確認し得て吸
着失敗によって起きる事故を未然に防止し、かつ既存の
電磁石に検出装置を簡便に提供することを目的とする。

「課題を解決するための手段」 上記の目的を達成するため本案は 直流電磁石の磁路中に吸着物検出コイルを組込み、該検
出コイルに交流電圧を印加し、その電流の変化により吸
着物の有無を検出することを特徴とする電磁石の吸着検
出装置 上記検出コイルの交流電圧に直流分を重畳する上記考案
記載の電磁石の吸着検出装置 によって構成する。

「作用」 従って、検出コイル２の巻線に交流電圧を加えると、励
磁電流isが流れ、その起磁力によって鉄心中に交番磁束
Φｓが生じる。この交番磁束の時間的変化によって検出
コイル２の巻線に逆起電力が誘導され、加えた電圧と平
衡する。したがって、検出コイル２の巻線に正弦波交流
電圧を加えれば逆起電力も正弦波交流電圧となり、その
ためには磁束もまた正弦波交番磁束でなければならな
い。正弦波交番磁界を生じるための励磁電流isは鉄心の
磁気飽和とヒステリシス現象のために正弦波にはならな
いで高調波電流の含まれるひずみ波電流になる。検出コ
イルに加えた正弦波交流電圧により検出コイル２の中央
の鉄心のＢ−Ｈ曲線（第４図）は常規磁化曲線３に沿っ
たヒステリシスループ４をえがき励磁電流isが流れる。
主コイル５を直流電圧で励磁したとき、その直流磁界Φ
ｍによりヒステリシスループ４は常規磁化曲線３に沿っ
て推移し励磁電流isが流れる。その時の励磁電流isは主
コイル５の直流磁界Φｍにより検出コイル２の中央の鉄
心が磁気飽和の領域まで推移した場合、その直流磁界に
応じて増加する。主コイル５の励磁により発生する磁束
Φは被吸着物６が存在しないときには少く、吸着したと
きには多くなる。これは主コイル５を励磁するまえ、ま
たは励磁しても被吸着物６が存在していないときに比べ
吸着したときの励磁電流が増大することになる。この励
磁電流の変化により被吸着物６の有無を検出することが
出来る。検出コイル２の磁路は閉回路になっており、主
コイル５を消磁しているときの被吸着物６の有無は検出
コイル２の磁気抵抗に影響を与えないが、主コイル５の
励磁による被吸着物６が存在するときの直流磁界に反応
し励磁電流が増加する。実施例では、主コイル５の励磁
電流に対応し被吸着物６の有無による励磁電流が第４図
のようにisからisの変化した。吸着時の主コイル５励磁
の直流磁界により検出コイル２の励磁電流が増加するた
め、検出コイル２の励磁電圧に直流電圧を重畳すること
により同様にヒステリシスループ４の推移を行え、その
直流電圧を可変することにより検出感度の調整が出来
る。検出コイル２に重畳した直流による磁界が主コイル
５の直流磁界と同相のときは主コイル５による磁界が増
加したものと等価になり感度が上がり逆相のときは下が
る。吸着検出の方法は検出コイル２に流れる励磁電流値
を監視する方法、あるいは位相のずれを監視する方法な
どが考えられる。

「実施例」 コークス炉の炉蓋や挿入口蓋の開閉用のリフティングマ
グネットに用いられる直流電磁石１には主コイル５が設
けられ主コイル５内の磁路中に吸着物６の検出コイル２
を組込み交流回路７を直列に接続する（第１図）。該検
出コイル２の磁路は閉回路になっていて、主コイル５に
より発生する磁束Φは吸着物６の有無及びギャップｔの
大小によって変化し、その一部を検出コイル２の鉄心に
導くことにより検出コイル２の鉄心を磁気飽和させるも
のである。この鉄心の磁気飽和により変分透磁率μが減
少し、検出コイル２のインダクタンスＬが減少すること
によって検出コイル２には Iac＝Eac/ωＬ なる交流電流が流れる。

又第２図に示すように交流回路７に直流電源８を介設し
て直流分を重畳させても差支えない。主コイル５は直流
励磁回路９に直列に接続される。そして主コイル５の励
磁電流Im及び検出コイル２の励磁電流isとは第５図に示
す関係を有し、isを検出回路10（電流値、位相監視）に
よってこれを検出して被吸着物６の有無を確認すること
ができる。尚図中11で示すものは直流励磁回路９の直流
電源、12は電源スイッチ、13は検出コイル２の交流電源
である。

「考案の効果」 本案は上述のように構成したのでコークス炉の炉蓋や挿
入蓋など高温吸着物６が電磁石１に確実に吸着保持され
ていることを精度良くかつ連続的に確認し得て電磁石１
の使用の安全性を確保し得るばかりでなく、簡便安価に
得られ、しかも既存の電磁石１に容易に装着し得る便益
がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本案の電磁石の吸着検出装置を示す正面図、第
２図は交流電圧に直流分を重畳した検出回路を備えた上
記検出装置の正面図、第３図は主コイルと検出コイルと
の正面図、第４図は磁束密度、磁界強さ曲線図、第５図
は検出コイル及び主コイルの励磁電流曲線図である。 １…直流電磁石、２……吸着物検出コイル。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】直流電磁石の磁路中に吸着物検出コイルを
   組込み、該検出コイルに交流電圧を印加し、その電流の
   変化により吸着物の有無を検出することを特徴とする電
   磁石の吸着検出装置。
2. 【請求項２】上記検出コイルの交流電圧に直流分を重畳
   する請求項（１）記載の電磁石の吸着検出装置。