JPH07112085A - 針送りミシンの送り機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 針送りのための揺動変動を高精度に行わせ、
縫いピッチ変化を小さく抑えて良好な縫製動作を得るこ
とを可能とする。 【構成】 針棒揺動台３９と揺動支点軸４１との連結部
位に揺動半径差吸収手段４３を介在させ、揺動半径差吸
収手段４３に多少の装着ガタを生じた場合であっても、
その揺動半径差吸収手段４３の装着ガタを、針棒揺動腕
３７の揺動端３７ａを中心にした僅かな量としてのみ針
側に伝達させることによって、針揺動量の変動を最小限
に抑えるように構成したもの。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、被縫物に突き刺さった
針が送り歯とともに移動するように構成された針送りミ
シンの送り機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から布ずれ防止等の目的で、針棒揺
動台に保持した針棒を、送り歯に同期させて揺動運動を
させるようにした針送りミシンが知られている。この針
送りミシンにおける送り機構では、例えば図７及び図８
に示されているように、所定の角度範囲で回動する揺動
軸１の前端部に、針棒揺動前部腕２が取り付けられてい
るとともに、この針棒揺動前部腕２の揺動端側に、針棒
揺動軸３を介して角駒４が回転自在に装着されている。
この角駒４は、針棒揺動台５の図示下端部分に設けられ
た溝部５ａ内に往復スライド移動可能に装着されてい
る。

【０００３】上記針棒揺動台５は、針棒６を保持しつつ
揺動するものであって、この針棒揺動台５の上端部が、
揺動支点軸７に回転自在に連結されており、当該揺動支
点軸７を中心として揺動するように構成されている。そ
して前記針棒揺動腕２の揺動力が角駒４を通して針棒揺
動台５に伝達され、これにより上記針棒揺動台５の揺動
運動が所定の角度範囲内で行われるようになっている。
このとき特に図８及び図９に示されているように、一般
に前記針棒揺動腕２の揺動半径ｒ₁ と、針棒揺動台５の
揺動半径ｒ₂ との間にはかなりの差が設けられており、
例えば、ｒ₁ ＝１３３mmに対しｒ₂ ＝２９mmに設定され
ている。そしてこれら両揺動半径ｒ₁ ，ｒ₂ どうしの差
（偏差量）は、前述した角駒４の往復スライド移動によ
り吸収されるようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところがこのような従
来の針送りミシンの送り機構では、上述した揺動半径差
吸収手段としての角駒４が、針棒揺動台５の図示下端側
に設けられており、揺動支点軸７と針棒６の先端とを結
んだ針揺動半径揺動半径ｒ₃ （図９参照）の途中部分に
角駒４が配置されている。従って上記角駒４による連結
部分、特に針棒揺動台５の溝部５ａに対して角駒４に装
着ガタが生じると、その装着ガタが、針揺動半径揺動半
径ｒ₃ の先端部分に拡大して伝達されてしまうという問
題がある。従って従来の針送りミシンでは、針棒６の先
端における針揺動量の誤差が大きくなりやすく、縫いピ
ッチの変化をしばしば招来している。

【０００５】そこで本発明は、簡易な構成で、針送りの
ための揺動運動を高精度に行わせることができるように
した針送りミシンの送り機構を提供することを目的とし
ている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
請求項１記載の発明は、所定の揺動支点軸に対して揺動
可能に連結された針棒揺動台と、上記揺動支点軸から離
れた所定の揺動軸を中心にして揺動し、上記針棒揺動台
を揺動させる針棒揺動腕と、これら針棒揺動台と針棒揺
動腕との揺動半径の差を吸収するように設けられた揺動
半径差吸収手段と、を備えた針送りミシンの送り機構に
おいて、上記針棒揺動腕は、針棒揺動台に対して回転可
能かつ摺動不可能に連結されているとともに、前記揺動
半径差吸収手段は、上記針棒揺動台と揺動支点軸との連
結部位に介在された構成を有している。

【０００７】

【作用】このような構成を有する送り機構においては、
揺動半径差吸収手段が、針棒揺動台と揺動支点軸との連
結部位に介在しているため、揺動半径差吸収手段の連結
部位に多少の装着ガタが発生しても、その揺動半径差吸
収手段の装着ガタは、針棒揺動台から延出する針棒の先
端に対して、揺動軸の揺動端を中心にした僅かな量とし
てのみ伝達され、従って針揺動量の変動は最小限に抑え
られるようになっている。

【０００８】

【実施例】以下、本発明にかかる実施例を図面に基づい
て詳細に説明する。図１及び図２に示されているよう
に、主軸に連動して回転する下軸１１には、偏心カム１
２及び下軸１１に対する偏心量を変更可能とした偏心カ
ム１３が固定されている。このうち偏心カム１２の外周
面には、送り台１４の二股部１４ａが挟み込むようにし
て圧接されている。この送り台１４の途中部分には、送
り歯１８が設けられており、前記偏心カム１２の偏心回
転によって送り歯１８が、図示を省略した針板の上面か
ら出没する上下運動を下軸１１の１回転につき１回だけ
行うようにように構成されている。なお後述するよう
に、上記送り台１４の反対側延出部分の先端部は、水平
送り軸１５に固定された腕１６の揺動端側に軸１７を介
して回転自在にピン結合されている。

【０００９】一方前記他方側の偏心カム１３の外周に
は、ロッド１３ａの円筒部１３ｂが遊嵌されており、前
記下軸１１の回転によってロッド１３ａが左右の方向に
往復移動するように構成されている。さらに上記ロッド
１３ａの揺動先端部は、直立リンク１９の下端及び第１
リンク２０の上端に、軸２１を介してそれぞれ回動自在
にピン結合されている。上記第１リンク２０の下端は、
第２リンク２２の揺動端側に軸２３を介して回転自在に
連結されており、上記ロッド１３ａが左右に往復動する
ことによって、第１リンク２０が軸２１を中心にして揺
動するとともに、直立リンク１９が上下動するように構
成されている。

【００１０】また上記第２リンク２０の基部側は、前記
下軸１１と同方向に延在する変換軸２４の一端側に固定
されている。上記変換軸２４は、図示を省略したベッド
に固定された支持体２５により回転自在に保持されてい
る。このとき前記軸２１の軸心が変換軸２４の軸心に合
致しないように、第１リンク２０のリンク長が、第２リ
ンク２２のリンク長よりもやや長く設定されている。

【００１１】さらに上記変換軸２４の反対側の端部に
は、腕２４ａの基部側が固定されており、この腕２４ａ
は、連動リンク２６，２７及び連動軸２８を通して方向
変換レバー２９に接続されている。そしてこの方向変換
レバー２９の揺動操作によって前記変換軸２４が所定角
度範囲内で回動され、前記直立リンク１９に連結された
水平送り軸１５の回動タイミング位相すなわち送り歯１
８の揺動位相が１８０°反対側にずらされるように構成
されている。

【００１２】また前記直立リンク１９の上端側には、軸
３１を介して水平リンク３２の揺動端側が回転自在に連
結されているとともに、上記水平リンク３２の基部側
は、水平送り軸１５に固定されている。これによって前
記直立リンク１９の上下移動に基づき水平送り軸１５が
所定角度の範囲内で回動するようになっている。上記水
平送り軸１５の軸方向の一端部側には、前述した腕１６
の基部側が固定されており、当該腕１６が水平送り軸１
５の回動によって揺動されると、この腕１６の揺動に伴
い、前述した送り台１４の送り歯１８が左右の方向に往
復移動するように構成されている。そしてこのような偏
心カム１３に基づく送り歯１８の左右往復移動と、前述
した偏心カム１２に基づく送り歯１８の上下移動との合
成運動によって、送り歯１８が所定の送り動作を実行す
るようになっている。

【００１３】一方、前記水平送り軸１５の他端側には、
腕３３が固定されており、この腕３３の揺動端に、連動
リンク３４の一端側が回転自在に連結されている。この
連動リンク３４は斜め上方に向かって延び、その延出端
に腕３５の揺動端側が回転自在に接続されている。上記
腕３５の基部側は、前記水平送り軸１５の上方部におい
て略平行に延在する揺動軸３６の一端側に固定されてお
り、これによって前記水平送り軸１５の回動運動が、反
対向きの回動運動として揺動軸３６に伝達されるように
なっている。

【００１４】上記揺動軸３６は、前述した送り歯１８の
略直上位置まで水平に延出しており、図３及び図４にも
示されているように、当該揺動軸３６の延出端に針棒揺
動前部腕３７の基部側が固定されている。この針棒揺動
前部腕３７は、上記揺動軸３６と一体に揺動し、その揺
動端側に設けられた円筒部３７ａ内に、棒針揺動台段ネ
ジ３８が回転自在に遊嵌されている。さらにこの棒針揺
動台段ネジ３８の先端部に形成されたネジ部３８ａは、
針棒揺動台３９の途中部分に螺合され締付け固定されて
おり、これにより上記針棒揺動台３９が、針棒揺動前部
腕３７の揺動端を中心にして揺動可能に保持されるよう
に構成されている。

【００１５】上記針棒揺動台３９は、針棒４０を保持す
るためのものであって、図示を省略したフレームに固定
された針棒揺動支点軸４１から下方に向かって垂下する
ように配置されている。そして上述した針棒揺動前部腕
３７との連結部位の直下位置から、上記針棒４０が下方
に向かって延出しているとともに、当該針棒４０の下端
部に針４２が固定されている。一方上記針棒揺動台３９
の上端部には円筒部３９ａが設けられており、この円筒
部３９ａ内に、揺動半径差吸収手段としての偏心カム４
３が回転可能に遊嵌されている。そしてこの偏心カム４
３の偏心位置に設けられた偏心軸穴４３ａ内に、前記針
棒揺動支点軸４１が回転自在に嵌め込まれており、これ
によって前記針棒揺動前部腕３７の揺動半径と、針棒揺
動台３９の揺動半径との差（図９中ｒ₁ ，ｒ₂ 参照）
が、前記偏心カム４３の偏心回転により吸収されるよう
に構成されている。

【００１６】なお図４に示されているように、前記針棒
４０の上下動は、針棒クランクロッド４４の揺動により
行われるように構成されている。

【００１７】このような実施例における針送りミシンの
送り機構においては、揺動半径差吸収手段としての偏心
カム４３が、針棒揺動台３９と揺動支点軸３７との連結
部位に介在しているため、仮に、上記偏心カム４３の装
着部位に多少のガタを生じた場合であっても、その偏心
カム４３の装着ガタは、針棒揺動台３９と針棒揺動前部
腕３７との連結部位から、針棒揺動前部腕３７の揺動端
を中心にした僅かな量としてのみ針４２側に伝達され
る。すなわち上記偏心カム４３の装着ガタ量が拡大され
て針４２側に伝達されることはなく、針揺動量の変動は
最小限に抑えられるようになっている。従って針４２に
おける揺動変動すなわち縫いピッチ変化は従来よりも小
さく抑えられ、良好な縫製動作が得られる。

【００１８】さらに本実施例では、揺動半径差吸収手段
としての偏心カム４３が、針棒揺動支点軸４１及び針棒
揺動台３９に対して高精度に連結接合され、極めてガタ
の小さい連結構造になされているとともに、上記偏心カ
ム４３は、従来の角駒（図９中の符号４参照）のような
往復移動を行うスライダーに比して、衝撃力の小さい円
滑な回転運動を行うこととなり、従って針棒揺動前部腕
３７と針棒揺動台３９との揺動半径差の吸収作用は、上
記偏心カム４３により長期にわたって良好かつ安定的に
実行される。

【００１９】また図５に示されている第２実施例では、
上記第１実施例と同一の構成物を同一の符号で表してい
るが、針棒揺動台３９の上端部に設けられた円筒部３９
ａには摺動穴３９ｂが長穴状に貫通形成されている。こ
の摺動穴３９ｂの長径は、針棒揺動台３９の長手方向に
向かって延びている。一方図示を省略したミシンフレー
ムに固定された針棒揺動支点軸４１には、揺動半径差吸
収手段としての角駒５３が回転可能に挿通されており、
さらに前記針棒揺動台３９の円筒部３９ａにおける摺動
穴３９ｂが、上記角駒５３を穴内に収容するようにして
図示上下方向に往復移動自在に遊嵌されている。これに
より前記針棒揺動前部腕３７の揺動半径と、針棒揺動台
３９の揺動半径との差（図９中ｒ₁ ，ｒ₂ 参照）が、前
記針棒揺動台３９の円筒部３９ａの上下往復移動により
吸収されるようになっている。

【００２０】さらに第１実施例と同一の構成物を同一の
符号で表した図６の実施例では、針棒揺動台３９の図示
上端部に、当該針棒揺動台３９の長手方向に向かって図
示上方に突出する移動台軸３９ｃが、揺動半径差吸収手
段を構成するように設けられている。一方図示を省略し
たミシンフレーム側には、針棒揺動支点軸６１が回転可
能に取り付けられており、この針棒揺動支点軸６１に軸
直交方向に貫通形成された摺動穴６１ａ内に、上記針棒
揺動台３９の移動台軸３９ｃが往復移動自在に嵌め込ま
れている。そしてこれによって前記針棒揺動前部腕３７
の揺動半径と、針棒揺動台３９の揺動半径との差（図９
中ｒ₁ ，ｒ₂ 参照）が、前記移動台軸３９ｃの上下往復
移動により吸収されるように構成されている。

【００２１】このような第２及び第３の各実施例におけ
る針送りミシンの送り機構においても、第１実施例とほ
ぼ同様な作用・効果を得ることができ、針揺動量の変動
は最小限に抑えられる。

【００２２】以上本発明者によってなされた発明を実施
例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に
限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で
種々変形可能であるというのはいうまでもない。

【００２３】

【発明の効果】以上述べたように本発明における針送り
ミシンの送り機構は、針棒揺動台と揺動支点軸との連結
部位に揺動半径差吸収手段を介在させ、揺動半径差吸収
手段に多少の装着ガタを生じた場合であっても、その揺
動半径差吸収手段の装着ガタを、針棒揺動腕の揺動端を
中心にした僅かな量としてのみ針側に伝達させることに
よって針揺動量の変動を最小限に抑えるように構成した
ものであるから、針送りのための揺動変動を高精度に行
わせることができ、縫いピッチ変化を極めて小さく抑え
て良好な縫製動作を得ることができ、針送りミシンの信
頼性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例における針送りミシンの送り
機構の全体構造を表した外観斜視説明図である。

【図２】図１に表された送り機構の基本構造部分のリン
ク機構を表した正面説明図である。

【図３】図１に表された送り機構を拡大して表した分解
斜視説明図である。

【図４】図３に表された送り機構のリンク機構を表した
正面説明図である。

【図５】本発明の他の実施例における針送りミシンの送
り機構を表したものであって、（ａ）は図３相当の全体
外観斜視説明図、（ｂ）は要部の正面説明図である。

【図６】本発明のさらに他の実施例における針送りミシ
ンの送り機構の要部構造を表したものであって、（ａ）
は外観斜視説明図、（ｂ）は（ａ）中のｂ−ｂ線に沿う
縦断面説明図である。

【図７】従来における送り機構を拡大して表した分解斜
視説明図である。

【図８】図５に表された送り機構のリンク機構を表した
正面説明図である。

【図９】針棒揺動台と針棒揺動腕との揺動半径を表した
線図である。

【図１０】針棒揺動台と針棒揺動腕との揺動半径の差に
基づく偏差量を表した図７中のＡ部拡大線図である。

【符号の説明】

１１ 下軸 １５ 水平送り軸 ３６ 揺動軸 ３７ 針棒揺動腕 ３９ 針棒揺動台 ４１，６１ 針棒揺動支点軸 ４３ 偏心カム（揺動半径差吸収手段） ５３ 角駒

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定の揺動支点軸に対して揺動可能に連
   結された針棒揺動台と、 上記揺動支点軸から略平行に離れた所定の揺動軸を中心
   にして揺動し、上記針棒揺動台を揺動させる針棒揺動腕
   と、 これら針棒揺動台と針棒揺動腕との揺動半径の差を吸収
   するように設けられた揺動半径差吸収手段と、を備えた
   針送りミシンの送り機構において、 上記針棒揺動腕は、針棒揺動台に対して回転可能かつ摺
   動不可能に連結されているとともに、 上記揺動半径差吸収手段は、前記針棒揺動台と揺動支点
   軸とを連結するように介在されていることを特徴とする
   針送りミシンの送り機構。