JPH0711031Y2 - メンブレン方式ｌｎｇ船の船艙内液体貨物の減揺装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、メンブレン方式LNG船の船艙内に積載され
た輸送中の液体のスロッシングを緩和する減揺装置に関
する。

［従来の技術］ 航行中に船舶は、波や風等により縦揺れや横揺れ等の動
揺を起こすが、LNG船では、船艙内に積載されて運搬さ
れる液体貨物の液化天然ガスも前記動揺に伴って揺動す
る。そして、液体貨物の揺動により、スロッシング荷重
と呼ばれる衝撃荷重が発生し、船艙壁等に局所的かつ瞬
間的に加わるスロッシング荷重の値は、静圧水頭換算で
数10m以上と言われ、LNG船の船体構造や船艙内艤装品に
大きな衝撃を与える。

特に、メンブレン方式のLNG船では、船艙壁の表面にス
テンレス鋼薄板製のメンブレンシートを配し、メンブレ
ンシートと船艙内殻との間に防熱材を装填して密封断熱
する構造になっているために、スロッシング荷重の衝撃
により強度部材ではないメンブレンシートや防熱材が損
傷する危険性がある。もしそうなれば、極低温の液化天
然ガスを保持するための密封断熱能力が著しく低下し、
LNG船としての機能が失われるとともに、その運行上や
安全上で大きな支障をきたすことになる。

そこで、スロッシング荷重に対する対策として、船艙壁
コーナー部の隔壁板を傾斜させることにより、スロッシ
ング荷重の作用方向を変化させ、該隔壁板に対する直角
方向の値を減少させたり、船艙内に積載される液体貨物
量を満載（積載率；約95％以上）状態または空荷に近い
状態（積載率；約10％）にして運行することで、スロッ
シングそのものの発生を抑止するといった方法を採って
いるメンブレン方式LNG船もある。

［考案が解決しようとする課題］ しかし、上記のように、船艙壁コーナー部の隔壁板を傾
斜させる方法では、スロッシング荷重の作用方向を変化
させるだけなので、スロッシング荷重の大幅な低減効果
は期待できない。

さらに、船艙内に積載される液体貨物量を満載状態また
は空荷に近い状態にして運行する方法は、船舶の運行上
で考えられる２港積、２港おろしの際、船艙内を半載状
態とすることができず、そのために積荷を移し替えるこ
とが必要となり、運行費の増加を伴う等の問題があっ
た。

また、メンブレンシートや防熱材の強度を増加する方法
では、材料費、建造費が増加したり、断熱性のない材料
で補強すれば、本来の断熱能力が低下するという問題も
あった。

本考案はこのような問題点を解消するためになされたも
ので、船艙内の液体貨物量によるスロッシング荷重を緩
和でき、LNG船の機能を失わず効率的に運行できるため
のメンブレン方式LNG船の船艙内液体貨物の減揺装置を
提供することを目的としたものである。

［課題を解決するための手段］ 前記問題点は、メンブレン方式LNG船の船艙壁内面のコ
ーナープレート上に、液体貨物のスロッシング緩和用緩
衝材を突設させることにより解決される。

［作用］ 本考案のメンブレン方式LNG船の船艙内液体貨物の減揺
装置は、船艙壁内面の角部にあるコーナープレイト上に
突出したスロッシング緩和用緩衝材が一種の堰の役割を
果たし、船体の動揺等にともなう液体貨物の揺動を抑止
して、船体構造や船艙内艤装品、特にメンブレンシート
や防熱材に加わる過大なスロッシング荷重を緩和するこ
とができる。

そして、コーナープレイトは、メンブレンシートを船艙
壁内面の角部で繋ぐために用いられているステンレス鋼
厚板製の強度部材であるので、その上に配設したスロッ
シング緩和用緩衝材の取り付け強度も充分確保できる。

さらに、メンブレンシートや防熱材には手を加えていな
いので、極低温の液化天然ガスを保持するための断熱能
力は従来通り維持され、LNG船としての機能を充分果た
すことができる。

〔実施例］ 以下本考案の一実施例を第１図〜第２図に基づいて説明
する。第１図は本考案の一実施例に係るメンブレン方式
LNG船の横断面を示し、第２図は第１図中の一部拡大断
面図である。船艙壁２は８角形の断面形状であり、内面
にステンレス鋼板製のメンブレンシート20が配設され、
内殻１との間に防熱材21を装填して断熱するようになっ
ている。また、船艙壁２の内面の角部には、メンブレン
シート20を繋ぐためのステンレス鋼厚板製のコーナープ
レート20aが配設されている。そして、スロッシング緩
和用緩衝材３は、船艙壁２のメンブレンシート20或はコ
ーナープレート20aと同一材質の板状体で、８個所のコ
ーナープレート20a上に、それぞれボルト等の固定金具2
0bにより固設され、先端を船艙中心側に向けて船艙壁２
の内面に突設するものである。

このようにスロッシング緩和用緩衝材が配設されている
ので、それらが一種の堰の役割を果たし、液体貨物の移
動を抑止して、船体構造や船艙内艤装品、特にメンブレ
ンシートや防熱材に加わる過大なスロッシング荷重を緩
和することができる。

また、スロッシング緩和用緩衝材はステンレス鋼厚板製
のコーナープレイト上にボルト等の固定金具により固設
されているので、その取り付け強度も充分確保されてい
る。

もし、スロッシング緩和用緩衝材をメンブレンシート部
に取り付けようとすれば、その取り付け強度を得るため
に、メンブレンシート部や防熱材部の改造が必要となる
が、上記の方法では、メンブレンシートや防熱材は従来
と変わらないないので、極低温の液化天然ガスを保持す
るための断熱能力に変化はなく、LNG船の機能を充分果
たすことができる。

［考案の効果］ 以上のように、本考案のメンブレン方式LNG船の船艙内
液体貨物の減揺装置は、配設したスロッシング緩和用緩
衝材が船体の動揺等にともなう液体貨物の移動を抑止し
て、船体構造や船艙内艤装品等に発生する過大なスロッ
シング荷重を緩和させることができるので、メンブレン
シートや防熱材の材料強度を増加する必要がなく、材料
費、建造費が少なくてすむ。

また、スロッシング緩和用緩衝材はコーナープレイト上
に固設されているのでメンブレンシートや防熱材には影
響がなく、極低温の液化天然ガスを保持するための断熱
能力は維持され、その機能を充分果たすことができる。

また、船艙内を半載状態にしてする運行上ことも可能と
なり、積荷を移し替える必要がなくなるので、運行費の
低減にもつながり、効率的な運行が可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例に係るメンブレン方式LNG船
を示す横断面図、第２図は第１図の一部拡大断面図。 １……内殻、２……船艙壁、３……スロッシング緩和用
緩衝材、20……メンブレンシート、20a……コーナープ
レート、20b……ボルト等の固定金具、21……防熱材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】メンブレン方式LNG船の船艙壁内面のコー
   ナープレート上に、液体貨物のスロッシング緩和用緩衝
   材を突設させたことを特徴とするメンブレン方式LNG船
   の船艙内液体貨物の減揺装置。