JPH07102075B2 - 生鮮肉類の品質保持処理法 - Google Patents

生鮮肉類の品質保持処理法

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JPH07102075B2
JPH07102075B2 JP1311100A JP31110089A JPH07102075B2 JP H07102075 B2 JPH07102075 B2 JP H07102075B2 JP 1311100 A JP1311100 A JP 1311100A JP 31110089 A JP31110089 A JP 31110089A JP H07102075 B2 JPH07102075 B2 JP H07102075B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は食肉、家きん肉、魚介肉などの食用生鮮肉の品
質保持処理方法に関し、さらに詳しくは水溶性塩基およ
び酸素ガスによって処理することによって、主として肉
色の変退色を防止し、品質を保持する処理方法に関す
る。
〔従来の技術〕
コールドチェーン等流通機構の整備に伴って生鮮の牛肉
や、マグロ肉等の鮮肉類が広く流通されるようになって
きたが、これらの鮮肉類は品質低下をきたしやすく、た
とえ低温下で流通されても変退色、腐敗等が生じ易く、
長時間の保存が困難である。
従来から生鮮食品の鮮度を保持し、保存性を向上する方
法が各種実施されており、例えば低温や冷凍等のような
物理的に劣化を抑制する方法、防腐剤のような化学的薬
剤を使用する方法、あるいは品質低下の原因となる酸素
を遮断するガス置換や脱酸素処理による方法等がある これらの鮮度保持方法にはそれぞれ問題があり、効果も
充分満足できるものではないので単独で採用されること
は少なく、数種の手段を組合わせて利用される場合が多
いが、なお効果が不充分で有効な方法が待たれている現
状にある。
なかでも牛肉、豚肉、マグロ肉、カツオ肉等の赤身の生
鮮肉は筋肉色素や血液色素が変色して褐変しやすく、き
わめて品質低下が速かである。したがって品質保持の要
求度が高いにもかかわらず、生鮮品であるが故に強度の
処理加工を施すことが出来ず、従来から大きな課題とし
て残されている。このうち牛肉や豚肉等の食肉について
は、これを炭酸ガス、酸素ガス、窒素ガス等の混合ガス
を封入して、ガス置換包装する方法が一部で採用され、
肉色保持や鮮度保持に一定の効果を得ているが、未だ長
期間の保存には耐えず、満足すべき状態には到っていな
い。
これに対し、マグロやカツオ等の赤身の魚介肉は−50℃
くらいの超低温保存が必須とされており、生鮮状態では
数時間放置するだけで鮮紅色が失われて褐変退色してし
まい、腐敗していないにもかかわらず、食品としての価
値が全く損われてしまう。
これらの問題点に対し、いくつかの提案もなされてお
り、例えば特開昭57-50874、同63-116676、同64-71437
があるが、いずれも効果不充分で広く実用化されるまで
に到っていない。
〔目的及び構成〕
本発明の目的は生鮮肉類の肉色を保持して、鮮度、品質
を長時間維持させ、すぐれた生鮮肉が得られるようにし
た品質保持処理方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意、研究、実験を重ねたところ、この目
的は、かかる生鮮肉類の表面を水溶性塩基および酸素ガ
スで処理することあるいは更に食塩を併用して処理する
ことによって達成されることができることが見出された
のである。
〔発明の具体的説明〕
本発明を以下に詳細に説明する。
生鮮肉としては、牛肉、馬肉等の食肉、鶏肉等の家きん
肉、カツオ、マグロ、ブリ、サバ、イワシ、アカガイや
タコ等の魚介類肉、水産動物肉などの肉類のほか肝臓等
臓物肉、魚卵等、肉類およびそれに付随する可食部に利
用することができる。
これらの生鮮肉の表面を水溶性塩基で処理する。
ここで水溶性塩基とは、水可溶の塩基性物質を指し、水
に溶解して液性アルカリ性を呈する化合物すべてを含
む。なかでもアンモニア、炭酸ナトリウム、アルギニン
等の塩基性アミノ酸が好んで用いられる。
水溶性塩基のうちアンモニアはガス状態で接触させるの
が良く、肉表面が水っぽくならず均一に肉とアンモニア
が反応する。一般に生肉類は産生乳酸等の影響で酸性状
態にあるので、よくアンモニアガスを吸収し、また肉中
心部まで拡散してゆく。この時のアンモニアガス最適処
理量は当該鮮肉のpHを7付近の中性域に高めれば良く、
処理時ガス濃度としては1〜5%くらいが好ましい。薄
いと無効、濃いと変性・異臭となる。
またアンモニアは水溶液状態で接触させても良いが、肉
表面が水っぽくなったり、表面肉の変性が生じたり、内
部拡散が弱い等ガス状態の処理には劣る。しかし、冷凍
状態の生肉の場合にはこの外表面を凍ったままグレーズ
処理することも可能であり、気体・液体・粉体のいずれ
も本発明で採用できる。
他の水溶性塩基としては炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリ
ウム等のアルカリ金属炭酸塩、又は重炭酸塩とアルギニ
ン、リジン等の塩基性アミノ酸が好適に用いられる。こ
れらは強塩基を用いた時に生じるような鮮肉表面もしく
は内部の蛋白質の変性、溶解現象のおそれが少ないの
で、通常水溶液として該溶液中に生鮮肉を浸漬すること
によって使用できる。その他、鮮肉表面に霧状ないし水
滴状態で噴霧したり、冷凍鮮肉にグレーズ処理したり、
あるいは粉体散布等の方法で接触処理することもでき
る。
これらの水溶性塩基処理は生鮮肉の自己分解によって産
生されている酸性物質をほぼ中和して、肉pHを、7付近
の中性領域に近づけることがその目的とするところであ
るので、生鮮肉の種類、形態、性状等によりその最適処
理条件は異なるものであり、水溶性塩基を、水溶液とし
て利用する場合には通常1〜30重量%濃度の溶液として
用いる。
水溶性塩基は、数種組合わせて利用することも当然実施
でき、例えば、いわゆるpH緩衝液のように塩類等と組合
わせてもよく、また塩基性アミノ酸に富んだ複合型アミ
ノ酸調味料として利用することができる。
更にこの水溶性塩基による処理時に食塩を併用すると肉
内部への浸透効果が高まり、肉表面部の膨潤がおされら
れて色艶がよくなる等好都合である。
次にこの水溶性塩基処理と同時にあるいは処理を終了し
た後に、生鮮肉と酸素ガスとを接触させる。酸素ガスに
よって筋肉色素ミオグロビンが鮮紅色のオキシミオグロ
ビンになり、褐色のメトミオグロビンに変化せず、肉色
を保持することができる。酸素ガスとの接触はやや反応
時間を必要とし、また酸素分圧が低くなるとメト化しや
すいので、酸素ガスと共に鮮肉を包装材料を用いて包装
するのが好い。
すなわち通常のガス置換包装機を用いて、肉を酸素ガス
包装する。この際の酸素ガス濃度としては、空気中の酸
素濃度よりはるかに高い50%以上が必要であり、実用的
には50〜90%が好ましい。この際の酸素以外のガス組成
としては空気でも良いし、窒素ガスその他の不活性ガス
等でも良い。
前記水溶性塩基処理と酸素ガス処理とを同時に行う場合
には酸素と水溶性塩基の混合ガスでガス置換包装を行え
ば良く、また二工程で行う場合には、はじめ水溶性塩基
処理した後酸素ガスでガス封入包装をすればよい。
又酸素ガス処理を先にし、後で水溶性塩基処理すること
もできる。この場合まず上記の組成の酸素ガスで処理
し、次いでガス置換包装機を用いて肉類をアンモニアガ
ス置換包装等する。この場合も同様に肉色保持、鮮度保
持をはかることができる。
〔実施例〕
実験例1 マグロさしみを各種のガス類を用いて、ガス包装し、10
℃で3日間保存後その肉色の色差をミノルタ色彩色差計
で測定した結果は第1表のとおりであった。
色差のうちa/b値が赤色の度合とよく相関しており、こ
の値が2以上を示す時、新鮮な肉色を保持していること
を表しているが表のようにアンモニアと酸素ガスを併用
した時にのみ相乗効果が認められ良好な鮮紅色が保た
れ、食味も良好であった。
実験例2 実験例1と同じマグロさしみを用いて、第2表に示した
各種浸漬液中に5分間浸漬処理した後、各種のガス類で
ガス置換包装し、5℃、2日間保存後、その品質を判定
した結果を第2表に示した。
ここでK値は次式で表わされる数値で、鮮度指標とされ
ている。
測定法は上式分母は魚肉の過塩素酸抽出液の250nmにお
ける吸光値とし、分子は該抽出液をアニオン交換樹脂カ
ラムにかけてヌクレオチドを除いた後の250nmにおける
吸光値として測定した。
一般にK値は即殺魚等の極新鮮時10%以下、高鮮度品で
20%前後、一般生鮮魚で40〜60%とされている。
第2表にみられるように、水溶性塩基の適量を用いて処
理した場合と、これに食塩を併用した場合とのそれぞれ
に酸素ガス処理を加えた時にのみ、品質保持効果が認め
られ、鮮度・光沢・食味とも良好であった。
実施例1 超低温で冷凍されているメバチマグロ肉をバンドソーで
1個200g重量宛の柵取り品に切断した。これを解凍した
後、密閉チャンバー内に入れ、このチャンバーにガス濃
度1.2%となるようにアンモニアガスを吹き込んで3分
間保持してから、取り出して、処理マグロ肉を得た。次
にこのマグロ肉をスチロール製トレイに乗せて、12×20
cmサイズのナイロンポリエチレン製の袋に入れ、酸素ガ
スを用いてガス置換包装して、さしみ用マグロ柵を得
た。5℃冷蔵庫で2日間保存した後、開封してさしみに
して官能検査、食味検査を実施したところ、肉色鮮紅色
で食味良好で、すぐれた品質であった。一方本処理を行
わずに、そのまま5℃で2日間保存した対照マグロ肉は
肉色が褐変し、食用に耐えないものであった。
このようにしてえられた本発明品と、かかる処理を行な
わなかった対照品の色差結果は次の第3表のとおりであ
った。
実施例2 牛ロース肉を3mm厚にスライスし、この薄切り肉100gを
発泡スチロール製トレイに並べ、ガス置換包装機により
酸素80%、空気15%、アンモニア5%の組成の混合ガス
でポリビニルアルコール製の袋にガス包装した。
これを10℃で4日間保存後、実施例1と同様に官能検査
を行なった。肉色は鮮赤色で品質良好であった。一方本
処理を行なわず、そのまゝ10℃で4日間保存した対照ロ
ース肉は褐変、変敗した。
その色差結果を次の第4表に示す。
実施例3 冷凍カツオ四ッ割肉を凍ったまま、10℃液温の炭酸ナト
リウム7重量%および食塩3重量%の混合水溶液中に15
分間浸漬して半解凍状態とし、該水溶液から取り出して
直ちに、ポリスチレン製トレイに乗せたうえ、ポリエチ
レン製袋に入れ、酸素ガスを用いてガス置換包装した。
5℃冷蔵庫中で1晩静置熟成した後、開封して、ポリ塩
化ビニリデン製ラップを用いてストレッチ簡易包装に再
包装した。10℃冷蔵庫中で1日間保存後、鮮度品質測定
を行った結果、鮮度良好、色沢赤色で食味良好であっ
た。これに対し全く本発明の処理を行わずそのまま保存
したカツオ肉対照品は褐変していて、外観上の価値のな
いものであった。この結果を第5表に示した。
実施例4 養殖ハマチを活けしめ後、三枚卸にして得たハマチフィ
レーを用い、全アミノ酸の60重量%がL−アルギニンで
占められているアルギニン高含有アミノ酸複合調味料の
20重量%濃度水溶液中に該フィレーを、10分間浸漬後、
酸素70、炭酸ガス30容量%の混合ガスにより、ガス置換
包装し、直ちに氷詰とし、氷蔵のまま2日間保存後、鮮
度品質測定を行った結果、第6表のとおり鮮度良好、肉
色に透明感と艶があり、食感もかたくしっかりとした歯
ごたえがあって美味であった。
これに対し本発明の処理を一切行わずそのまま氷蔵した
ハマチ対照品は、肉色不透明であり、血合肉部分は、黒
色となり食感も軟弱で、不味であった。
〔発明の効果〕 本発明によれば、食肉や魚肉等の生鮮肉類の表面を、ア
ンモニア、炭酸ナトリウム、塩基性アミノ酸等の水溶性
塩基と酸素ガスで処理すること、または更に食塩を併用
して処理することによって、これら食肉や魚肉等の生鮮
肉類の鮮度を保持し、品質を維持向上することができ、
従来の保存性を倍以上に向上させることができる。そし
て特に赤色身肉の筋肉色素ミオグロビンを好適にオキシ
ミオグロビンに変換できるので、これら鮮肉の品質第一
要素である肉色が鮮かで、艶の良いすぐれたものを得る
ことができ、また肉汁の流出、いわゆるドリップを防止
できるので味が良好となり、きわめて有用な効果を提供
するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A23B 4/14 Z

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】食肉類および魚介類の生鮮肉類の表面を水
    溶性塩基と酸素ガスで処理することを特徴とする、生鮮
    肉類の品質保持処理法。
  2. 【請求項2】水溶性塩基がアンモニアである請求項1記
    載の方法。
  3. 【請求項3】水溶性塩基が炭酸ナトリウム、重炭酸ナト
    リウム等のアルカリ金属炭酸塩又は重炭酸塩である請求
    項1記載の方法。
  4. 【請求項4】水溶性塩基がアルギニン、リジン等の塩基
    性アミノ酸である請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】食塩を併用して処理する請求項1〜4いず
    れか記載の方法。
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