JPH0693840B2 - 糖液の精製方法 - Google Patents

糖液の精製方法

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JPH0693840B2
JPH0693840B2 JP60220228A JP22022885A JPH0693840B2 JP H0693840 B2 JPH0693840 B2 JP H0693840B2 JP 60220228 A JP60220228 A JP 60220228A JP 22022885 A JP22022885 A JP 22022885A JP H0693840 B2 JPH0693840 B2 JP H0693840B2
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栄八郎 安田
肇 高久
章三 田中
達夫 川端
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、糖液をイオン交換樹脂に通液して微生物汚染
のない糖液を得る、糖液の精製方法に関する。
(従来の技術) ぶどう糖、水飴、麦芽糖水飴は、一般に澱粉を液化後、
グルコアミラーゼ、β−アミラーゼ、イシアミラーゼ、
プルラナーゼなどの酵素を一種あるいは二種以上併用し
て糖化を行った後、脱色濾過し、更にイオン交換樹脂に
より、塩類、蛋白質、着色物質などを除去後、濃縮して
製造する。
水飴の場合には、酵素の代りに酸を用いて行われること
もある。
また、異性化糖は、ぶどう糖液にグルコースイソメラー
ゼをバッチ式で反応させるか、または、固定化グルコイ
ソメラーゼをカラムに充填してこれにぶどう糖液を通液
して連続反応を行った後、脱色濾過し、さらにイオン交
換樹脂により、塩類、蛋白質、着色物質などを除去後、
濃縮して製造される。転化糖は、ショ糖を稀酸あるいは
インベルターゼにより加水分解して製造される。
糖類のイオン交換樹脂精製工程は、通常、強酸性カチオ
ン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂からなる2床工
程と、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換
樹脂の混合系からなる混床工程とから成っている。
イオン交換樹脂精製工程は、通常40℃前後で通液を行っ
ている。高温では、澱粉糖がアニオン交換樹脂と接触す
ると異性化反応を起こし果糖を生成したり、分解して副
反応が発生するという欠点がある。このため従来カチオ
ン樹脂塔、アニオン樹脂塔の二床ならびに混床塔を一連
の一体化したものとの考えにもとづき、40℃で通液が行
われてきた。この結果、樹脂塔内に微生物が発生するこ
ととなり、しかもカラムを再生しても微生物が死滅しな
いで、サイクルを経るこどに微生物が蓄積してしまう。
ところで、日本薬局方にぶどう糖注射液の規定が定めら
れている。この規格を達成するために特に重要な点は、
第一に発熱性物質等の不純物を有しないことである。発
熱性物質(パイロジェン)とは、注射した際人体等に発
熱または悪寒を起こす原因となる危険のある物質であっ
て、その代表例としては微生物が産生するエンドトキシ
ンがある。この発熱性物質は、原料でん粉に由来するも
のなど種々あるが、特にイオン交換樹脂工程での微生物
汚染に起因するものが多い。この発熱性物質を除去する
ためには、従来ぶどう糖液の精製工程において大量の活
性炭を使用したり、あるいは限外濾過膜や精密濾過膜を
用いることが必要であった。
また、糖液をイオン交換樹脂に通液する工程は糖液を分
画する目的で従来から使用されており、例えば特開昭58
-23799号は、澱粉糖液を強酸性カチオン交換樹脂塔に通
液し、ついで水で溶出することにより、デキストリン高
含有画分、マルトース高含有画分およびグルコース高含
有画分等を分画することによる高純度マルトースの製造
方法の発明であった。
上記特開昭58-23799号には、分画温度を45〜85℃の範囲
内にすれば、褐変着色を懸念することなく、マルトース
が高収率で採取できる旨が開示されていたが、発熱物質
の除去は全く目的とされておらず、したがってこのよう
に広い温度範囲を採用した場合には糖の褐変着色は防止
できたとしても、カラム内の微生物汚染を避けることは
できず、パイロジエンフリーの糖液を製造することはで
きない。
このように上記発明は、もっぱら糖液の分画と褐変防止
のみを目的とするものであるから、本発明のように被処
理糖液をまず55℃以上80℃以下に加温してカチオン樹脂
塔に通液したのち、被処理糖液の液温を低下させてアニ
オン樹脂塔に通液する方法を採用することによって微生
物汚染を防ぎ、発熱性物質を除去した糖液を精製できる
ことは全く開示されておらず、これを示唆する記載すら
示されるところがなかった。
つぎに特開昭58-23798号は、イオン交換樹塔に澱粉糖含
有液を上向流で通液し再生剤を下向流で通液することを
特徴とする澱粉糖含有液の精製法の発明であって、かか
る通液方法を採用することによって着色に対する安定性
が向上することが開示され、その理由として蛋白質やア
ミノ酸の除去率が向上したためではないかとの「推定」
(公開公報第4頁左下欄第16行)が述べられているにす
ぎず、本発明の技術構成と共通するものはない。
(発明が解決しようとする問題点) 従来の製造方法において上記の如く、イオン精製工程で
カチオン塔を40℃で通液していたために塔内で微生物が
増殖し、被処理糖液が発酵するばかりでなく、塔内圧力
が上昇し、通液が不可能となり、また洗浄廃水量の増
加、被処理液の液質の低下、発熱性物質の生成等の弊害
が生じていた。
本発明は、従来法によるこれら諸問題を解決し、被処理
糖液の液質の向上をはかり、従来の方法に比べて、低コ
スト、省エネルギーの簡易なプロセスにより、確実に発
熱性物質等の不純物を除去しうる液状澱粉糖の工業的製
造方法を提供するものである。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、糖液を精製するに際し、糖液を脱色後イオン
交換樹脂精製する工程において、カチオン樹脂塔を55℃
以上80℃以下で通液する。
被処理液の通液温度が55℃未満である場合には発熱性物
質の発生を完全には防止できず、他方80℃を越えた場合
には被処理物の分解や副産物生成のおそれがあって、い
ずれも適切でなく、本発明の目的を達成するためには上
記通液温度の範囲を厳守することが不可欠である。
温度調節には、例えばカチオン樹脂塔前に熱交換機を設
置する等して被処理液を前記の温度に調節してカチオン
樹脂塔を通液し、さらにその後、熱交換機を設置する等
により液温を異性化反応および副反応を生じさせない温
度域に低下させ、例えば40℃前後の液温にしてアニオン
樹脂塔および混床塔に通液すればよい。
本発明においてはカチオン樹脂塔を55℃以上80℃以下の
温度で通液するので、アニオン樹脂塔および混床塔では
通液温度を異性化反応および副反応を生じさせない温度
域に低下させ、例えば40℃前後としても微生物に汚染す
る虞れはない。したがって、本発明の精製方法は、発熱
性物質を発生させないだけでなく、被処理液の異性化反
応の防止や副反応・分解の防止や経済性の観点からも好
適である。
本発明は、糖液の精製方法に関するものであるが、糖液
の代表例としては、ぶどう糖液、水飴(DE20〜50)、で
ん粉液化液(DE5〜20)高麦芽糖液、異性化糖液、高果
糖液、転化糖液を挙げることができる。
(発明の効果) 本発明において、カチオン交換樹脂塔を55℃以上80℃以
下で通液処理を行うので微生物による汚染が除去され
る。
本発明により、微生物による汚染が防止され、このため
被処理糖液の液質が向上し、さらには発酵圧力上昇によ
る通液困難が解消され、イオン工程処理量が増加し、ま
た再生水の減少や廃水量の減少等のランニングコストの
節減という経済的効果が達成される。更に発熱性物質
(人体に悪寒や発熱に惹起する)の含有を顕著に減少で
きるので、注射液等の精製等にとっても重要な作用効果
を有し、このように処理された糖類は、医薬用結晶ぶど
う糖製造原料として、また医薬用結晶麦芽糖製造原料や
医薬用結晶果糖製造原料として広く利用でき、安全で衛
生的な製品を製造するために大きな寄与が期待できる。
(実施例1) 澱粉液化液に糖化酵素を加えて糖化したぶどう糖原液を
脱色濾過し、本発明によるイオン精製を行った。
ぶどう糖原液は、次のようにして得た。60℃の澱粉液化
液1,000l(濃度30重量%、DE10.5)をシュウ酸にてpH4.
5に調整し、固形分グラム当り糖化酵素(AMG300L NOVO
社)0.25AGU/g−DSと枝切り酵素(プロモザイム200L NO
VO社)0.10PUN/g−DSとを添加し、バッチ式にて糖化を
行った。60時間糖化を行ったところ、反応液の固形分当
りぶどう糖含有率(DX)96.5%のぶどう糖原液が得られ
た。
イオン精製工程は、カチオン樹脂塔には、樹脂量2.5lの
ダイヤイオンSK1B三菱化成工業製品を使用し、この樹脂
塔前に熱交換機を設け、ぶどう糖被処理液を温度60℃と
した。この温度でカチオン樹脂塔に通液し、通液後、熱
交換機で40℃に被処理液温度を低下させたのち、アニオ
ン樹脂塔(樹脂量3.5lダイヤイオンWA30三菱化成工業製
品)に通液した。その後更に混床塔(カチオン樹脂量1
ダイヤイオンPK218、アニオン樹脂量2lダイヤイオンP
A408の混合、共に三菱化成工業製品)に通液した。
発熱性物質の判定は、Limulus HS Single Test Wako
(和光純薬工業製品)を用いた。これは、0.01ng/mlの
エンドトキシン(FDAレファレンス エンドトキシンEC
−2相当)の超微量のエンドトキシンを検出することが
できるものである。ゲル化により判定を行った。被検体
は、濃度10%(重量%)にエンドトキシンフリーの蒸留
水で希釈した。
一般生菌数は、mTGE BROTH培地(DIFCO LABORATORIES社
製)を用いて、37℃で2日間培養して測定した。
イオン通液は15l/時間で行った。処理はアニオン樹脂
塔、混床塔出口のエンドポイントpH4.5までか、あるい
は比抵抗が、2床アニオン樹脂塔出口10万Ω/cm,混床塔
出口50万Ω/cmに低下するまで処理を行った。
15時間処理した時点で各塔出口での発熱性物質判定及び
一般生菌数の測定を行った。
第1表に6サイクル目の2床通液結果を示す。
また、対照例としてカチオン樹脂塔を従来の40℃で通液
した場合の6サイクル目の通液結果も示した。
第1表に示すとおり、通液倍量については、本発明の処
理方法は、従来の処理方法と比較して約18%も増加させ
ることができる。さらに微生物汚染を無くすことができ
た。発熱性物質の発生も無かった。
次に第2表に、6サイクル目の混床通液結果を示す。
以上の結果より、本発明の処理方法は、従来の処理方法
と比較して通液倍量について約37%も増加させることが
できた。
さらに、前2床の微生物汚染を無くすることにより、後
の混床処理にも良好な結果をもたらすことが明らかとな
った。
【図面の簡単な説明】
第1図は、アニオン塔の通液倍量に対するpH、比抵抗及
び色価を示す。 実線が本発明の処理方法を示し、点線は従来の処理方法
による数値である。 第2図は、混床アニオン樹脂量の通液倍量に対するpH、
比抵抗及び色価の関係図であり、縦軸にpH、比抵抗値及
び色価を示す。実線が本発明の処理方法を示し、点線
は、従来の処理方法により数値である。 各図において、pH、比抵抗、色価の測定は濃度30重量%
の被処理液について行った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川端 達夫 茨城県鹿島郡神栖町息栖2821 昭産神栖社 宅2―104 (56)参考文献 特開 昭51−41450(JP,A) 特開 昭53−136536(JP,A) 特開 昭58−23798(JP,A) 特開 昭58−23799(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糖液をイオン交換樹脂精製する工程におい
    て、被処理糖液を55℃以上80℃以下に加温してカチオン
    樹脂塔に通液したのち、液温を異性化反応および副反応
    を生じさせない温度域に低下させてアニオン樹脂塔およ
    び混床塔に通液して微生物汚染のない糖液を得ることを
    特徴とする糖液の精製方法。
  2. 【請求項2】糖液が、ぶどう糖液、水飴(DE20〜50)、
    でん粉液化液(DE5〜20)、高麦芽糖液、異性化糖液、
    高果糖液、転化糖液である特許請求の範囲第1項記載の
    糖液の精製方法。
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