JPH0691677A - 内装用表皮材の成形方法および成形装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 中空部を有する表皮材の表面外観ならびに表
面感触を良好に保つことができ、かつ成形コストを引き
下げることを可能にした表皮材の成形方法および成形装
置を提供することを目的とする。 【構成】 パウダーボックス５２内にノズル６０を設置
して、このノズル６０の噴出口６３を通じて金型５０に
設けた中空部５１内にパウダーの付着を可能にすること
により、中空部４３を有する表皮材４０の成形にパウダ
ースラッシュ成形を採用することを可能にし、中空部４
３を有する表皮材４０の表面外観，表面感触を優れたも
のにするとともに、材料歩留りを向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自動車用内装部品に
おける表皮材の成形方法ならびに成形装置に関するもの
で、特に、中空部を有するスラッシュ成形体表皮材の成
形方法および成形装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、自動車用ドアトリムに装着され
るアームレストとしては、図１１に示すように、アーム
レスト１にグリップ部２を一体化したものが多く、適度
の強度と緩衝性およびグリップ部２をつかんだ際の感触
の良さ等が要求されるため、図１２，図１３に示すよう
に、合成樹脂の射出成形体や鉄板等からなる芯材３の表
面に緩衝性を有する半硬質ウレタン等のパッド層４を積
層し、更にその表面を感触の良い表皮材５により被覆す
るという３層構造のものが採用されている。

【０００３】なお、グリップ部２においても芯材３の外
周をパッド層４で覆い、さらにその外表面を表皮材５に
より被覆して構成されている。

【０００４】そして、グリップ部２の表皮材３は中空構
造であるため、通常、塩ビゾルのローテーション成形が
使用されている。その後、予め芯材３を組み込んだ表皮
材５を発泡成形用金型内にセットし、パッド層４の構成
材料である半硬質ウレタン樹脂液を発泡成形用金型内に
注入した後、この半硬質ウレタン樹脂液を発泡硬化させ
ることにより、芯材３とパッド層４と表皮材５との３者
を一体化してグリップ部２を備えたアームレスト１を製
作しているのが実状である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、塩ビゾ
ルのローテーション成形は、成形される表皮材５の肉厚
が不均一となり、肉厚の薄い箇所では、半硬質ウレタン
の発泡圧の関係で表皮材５表面に凹凸が生じ易く、美観
を低下させる大きな要因となっている。

【０００６】また、ローテーション成形による表皮材５
は肉厚調整が困難であるとともに、その肉厚も１．５〜
２．０mmあり、ソリッド状態であるため、感触が悪く、
ドアの開閉操作を行なう際、頻繁にグリップ部２をつか
んで操作することを考えれば、感触を良好なものにする
ことが急務とされていた。

【０００７】さらに、ローテーション成形はパウダース
ラッシュ成形に比べ材料歩留りが悪く、製品コストを引
き上げるという問題点も指摘されている。

【０００８】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたもので、本発明の目的とするところは、アームレス
トに一体形成されるグリップ部のように、中空部を有す
る表皮材を効率良く成形でき、しかも良好な表面外観，
表面感触が得られる内装用表皮材の成形方法ならびに成
形装置を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る内装用表皮材の成形方法は、中空部を
備えたスラッシュ成形用金型に樹脂パウダーを収容した
パウダーボックスを接合し、このパウダーボックス内に
設置されたノズルから、樹脂パウダーをスラッシュ成形
用金型の中空部の内周面に噴き付け、樹脂パウダーを付
着させた後、金型とパウダーボックスとをローテーショ
ン操作して、金型面に樹脂パウダーを付着させ、その
後、上記ノズルからエアを噴き付けて金型の中空部内の
余剰の樹脂パウダーを除去し、金型を所定温度に加熱し
て樹脂パウダーを溶融させたのち金型を冷却操作して中
空部を有する内装用表皮材を成形することを特徴とす
る。

【００１０】さらに、本発明に係る内装用表皮材の成形
装置は、中空部を有するスラッシュ成形用金型と、この
スラッシュ成形用金型内面に接合され、樹脂パウダーを
収容するパウダーボックスと、このパウダーボックス内
に設置され、エア導入口とパウダー供給口とエアおよび
樹脂パウダーを選択的に金型の中空部内に噴き付ける噴
出口とを備えたノズルとから構成されることを特徴とす
る。

【００１１】

【作用】以上の構成から明らかなように、樹脂パウダー
及びエアを金型の中空部に噴出させるノズルをパウダー
ボックス内に設置することにより、従来不可能であった
中空部を備えた成形体のパウダースラッシュ成形を初め
て可能にした。

【００１２】

【実施例】以下、本発明に係るスラッシュ成形体の成形
方法ならびに成形装置について、図１ないし図１０に基
づき、詳細に説明する。

【００１３】まず、図１，図２は本発明方法を適用して
製作したグリップ一体型のアームレストを示す斜視図な
らびに断面図であり、図３は本発明方法を実施する装置
の一実施例の構成を示す断面図、図４ないし図７は本発
明方法の一実施例を示す各工程の断面図、図８は本発明
方法を適用して製作したこれもグリップ一体型のアーム
レストの正面図、図９，図１０は同アームレストの表皮
材を成形する成形装置の構成を示す断面図ならびに平面
図である。

【００１４】まず、図１，図２は本発明方法を適用して
製作したグリップ一体型のアームレストであり、このア
ームレスト１０は、図示しないドアトリムの表面ほぼ中
央部に装着され、グリップ部１１を一体化した構成であ
り、図２に示すように、ＡＢＳ樹脂等の射出成形体ある
いは鉄板等からなる芯材２０の表面に半硬質ウレタン樹
脂からなるパッド層３０が積層され、更に、それらの表
面にはパウダースラッシュ成形による表皮材４０により
被覆された３層構造体からなり、グリップ部１１におい
ても芯材２０の表面をパッド層３０を介してその表面は
表皮材４０により被覆されている。

【００１５】なお、表皮材４０は、表面側にスラッシュ
スキン層４１，その内面にスラッシュ発泡層４２が一体
化した２層構造体のものが使用されており、またグリッ
プ部１１は中空部４３として形成されている。

【００１６】このように、アームレスト１０の表皮材４
０として表面感触，表面外観の良好なパウダースラッシ
ュ成形表皮を使用することにより、室内美観を向上させ
るとともに、ドア開閉の際、グリップ部１１をつかんだ
際の感触を良好なものにし、かつパウダースラッシュ成
形は余剰材料を回収できるため、材料歩留りが非常に向
上するという利点がある。

【００１７】ところで、従来ではグリップ部１１のよう
な中空部を備えた表皮材４０はパウダースラッシュ成形
では不可能とされていたが、以下に示す本発明方法なら
びに本発明に係る成形装置を使用すれば、図１，図２に
示す構造の表皮材４０が簡単に成形できる。

【００１８】すなわち、本発明方法に使用する成形装置
について図３を基に説明すると、まず、パウダースラッ
シュ成形用金型５０は、電鋳型等で作製され、アームレ
スト１０の製品形状に即した型面を備えており、特に、
ドアグリップ部１１と対応する位置にはパイプ状の中空
部５１が形成されている。

【００１９】そして、この金型５０に対して樹脂パウダ
ーを付着させるために、樹脂パウダーを収容したパウダ
ーボックス５２が耐熱シール材５３を介して金型５０に
接合され、図示しないクランプ装置により樹脂パウダー
が漏れることがないように適宜圧力で両者が締付けられ
る。

【００２０】さらに、スラッシュ成形用金型５０とパウ
ダーボックス５２の両者を回転操作しただけでは、金型
５０の中空部５１内に樹脂パウダーが行き渡らないた
め、本発明では、パウダーボックス５２内にノズル６０
が設置されている。

【００２１】そして、このノズル６０は、外部からエア
を導入するエア導入口６１を備えるとともに、樹脂パウ
ダーを供給するパウダー供給口６２，および金型５０の
中空部５１の開口両側に噴出口６３が設定され、このノ
ズル６０の噴出口６３から樹脂パウダーおよびエアを選
択的に金型５０の中空部５１の内周面に噴き付けること
が可能な構成となっている。

【００２２】次いで、図４ないし図７に基づいて、この
スラッシュ成形装置を使用して、図１，図２に示すアー
ムレスト１０の製造方法について説明する。

【００２３】まず、アームレスト１０の表皮材４０の成
形工程は、表皮材４０がスラッシュスキン層４１とスラ
ッシュ発泡層４２との２層構造体であるため、まず、パ
ウダーボックス５２内にはスラッシュスキン層４１の素
材である塩ビ樹脂のスキンパウダー４１ａが収容され、
図４に示すように、ノズル６０のエア導入口６１からエ
アを取り込むとともに、パウダー供給口６２から樹脂パ
ウダー４１ａを取り込み、ノズル６０の噴出口６３から
中空部５１内周面にスキンパウダー４１ａを噴き付け、
中空部５１内周面にスキンパウダー４１ａを付着させ
る。

【００２４】尚、金型５０は、２３０℃に加熱され、ス
キンパウダー４１ａが容易に付着するようになってい
る。

【００２５】その後、図５に示すように、金型５０およ
びパウダーボックス５２を３６０゜回転操作させて、金
型５０一般面にスキンパウダー４１ａを付着させた後、
バイブレーション操作により、余剰のスキンパウダー４
１ａをパウダーボックス５２内に回収するとともに、ノ
ズル６０の噴出口６３を通じてエアのみを噴き付けて中
空部５１内の余剰のスキンパウダー４１ａを除去し、パ
ウダーボックス５２内に回収する。

【００２６】その後、中空部５１を含めた金型５０に付
着しているスキンパウダー４１ａを溶融させるために、
図６に示すように、熱風発生機７０に金型５０をセット
する。そして、熱風発生機７０から送られる熱風により
スラッシュ成形用金型５０の型面および中空部５１内周
面に付着したスキンパウダー４１ａを溶融させる。

【００２７】このとき、中空部５１内周面のスキンパウ
ダー４１ａを溶融させるために、ノズル７１が設置され
ている。

【００２８】その後、図７に示すように、金型５０全体
を水冷等により冷却すれば、中空部５１および金型５０
型面の溶融樹脂を固化させて、スラッシュスキン層４１
が所要形状に成形される。

【００２９】そして、スラッシュスキン層４１内面に積
層されるスラッシュ発泡層４２についても、アゾジカル
ボンアミド等の発泡剤を混入した塩化ビニル樹脂パウダ
ーを、パウダーボックス５２内に収容して図４ないし図
７に示す工程を行なえば、スラッシュスキン層４１内面
にスラッシュ発泡層４２を一体形成できる。

【００３０】このようにして、グリップ部１１の表皮と
なる中空部４３を備えた表皮材４０をスラッシュ成形に
より成形することができ、表面外観，表面感触の良好な
表皮材４０を簡単に成形できる。

【００３１】そして、図示はしないが、従来と同一工程
で、この表皮材４０に芯材２０をセットした状態で発泡
成形用金型内にセットして、半硬質ウレタン樹脂液を両
者間に注入して発泡固化させれば、図１，図２に示すア
ームレスト１０の製作が完了する。

【００３２】次いで、図８はグリップ部１１がドアトリ
ム本体側に連結される形状のアームレスト１０に使用す
る表皮材４０に本発明を適用した実施例を示すもので、
図８に示すアームレスト１０の表皮材４０をスラッシュ
成形するには、図９，図１０に示すように、パウダーボ
ックス５２の外部にノズル６０を収容する補助ボックス
５４を設定し、上述実施例同様、グリップ部１１に当た
る表皮材４０の中空部４３を成形するためには、金型５
０に形成した中空部５１内に、このノズル６０を通し
て、樹脂パウダーあるいはエアを噴き付けて、樹脂パウ
ダーの付着操作及び除去操作をすればよい。

【００３３】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明は、以下に記
載する格別の作用効果を有する。

【００３４】（１）本発明方法は、スラッシュ成形用金
型の中空部内に樹脂パウダーを噴き付けるためのノズル
をパウダーボックス内に設置するという構成のスラッシ
ュ成形装置を用いることにより、中空部を有する表皮材
の成形にパウダースラッシュ成形を使用することがで
き、中空部を有する表皮材の表面外観，表面感触を著し
く向上させることができるという効果を有する。

【００３５】（２）本発明方法によれば、中空部を有す
る表皮材の成形にパウダースラッシュ成形を採用するこ
とが可能になるため、材料の歩留りが向上し、製品の著
しいコストダウンを図ることができるとともに、表皮材
の厚みも任意に調整でき、ユーザの要望にきめ細かく対
応できる等、商品価値を高めることができるという効果
を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法を適用して製作したアームレストを
示す正面図。

【図２】図１中II−II線断面図。

【図３】本発明方法に使用するスラッシュ成形装置の一
実施例の構成を示す断面図。

【図４】本発明方法の一工程を示すもので、金型へのス
キンパウダーの付着工程を示す断面図。

【図５】本発明方法の一工程を示すもので、余剰パウダ
ーの除去工程を示す断面図。

【図６】本発明方法の一工程を示すもので、付着パウダ
ーの溶融工程を示す断面図。

【図７】本発明方法の一工程を示すもので、溶融樹脂の
冷却工程を示す断面図。

【図８】本発明方法により製作したアームレストの別実
施例を示す正面図。

【図９】図８に示すアームレストの表皮材を成形するス
ラッシュ成形装置の構成を示す断面図。

【図１０】図９中Ａ矢視図。

【図１１】従来のアームレストを示す正面図。

【図１２】図１１中XII −XII 線断面図。

【図１３】図１１中XIII−XIII線断面図。

【符号の説明】

１０ アームレスト １１ グリップ部 ２０ 芯材 ３０ パッド層 ４０ 表皮材 ４１ スラッシュスキン層 ４１ａ スキンパウダー ４２ スラッシュ発泡層 ５０ スラッシュ成形用金型 ５１ 中空部 ５２ パウダーボックス ６０ ノズル ６１ エア導入口 ６２ パウダー供給口 ６３ 噴出口 ７０ 熱風発生機 ７１ ノズル

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中空部（５１）を備えたスラッシュ成形
   用金型（５０）に樹脂パウダー（４１ａ）を収容したパ
   ウダーボックス（５２）を接合し、このパウダーボック
   ス（５２）内に設置されたノズル（６０）から、樹脂パ
   ウダー（４１ａ）をスラッシュ成形用金型（５０）の中
   空部（５１）の内周面に噴き付け、樹脂パウダー（４１
   ａ）を付着させた後、金型（５０）とパウダーボックス
   （５２）とをローテーション操作して、金型（５０）面
   に樹脂パウダー（５２）を付着させ、その後、上記ノズ
   ル（６０）からエアを噴き付けて金型（５０）の中空部
   （５１）内の余剰の樹脂パウダー（４１ａ）を除去し、
   金型（５０）を所定温度に加熱して樹脂パウダー（４１
   ａ）を溶融させたのち金型（５０）を冷却操作して中空
   部（４３）を有する内装用表皮材（４０）を成形するこ
   とを特徴とするスラッシュ成形体の成形方法。
2. 【請求項２】 中空部（５１）を有するスラッシュ成形
   用金型（５０）と、このスラッシュ成形用金型（５０）
   内面に接合され、樹脂パウダー（４１ａ）を収容するパ
   ウダーボックス（５２）と、このパウダーボックス（５
   ２）内に設置され、エア導入口（６１）とパウダー供給
   口（６２）とエアおよび樹脂パウダー（４１ａ）を選択
   的に金型（５０）の中空部（５１）内に噴き付ける噴出
   口（６３）とを備えたノズル（６０）とから構成される
   ことを特徴とする内装用表皮材の成形装置。