JPH0690590B2 - 多重記録体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、多重記録体に関し、さらに詳しくは、種々の
情報、例えば文字、記号および図形などが、ホログラフ
ィーとそれと異質の原理により記録されたものであり、
これからそれらの情報を随意に再生することのできる多
重記録体に関する。

〔従来の技術およびその問題点〕

ホログラフィーは、光その他の波動の干渉性を利用し、
物体から出る信号波の干渉縞を感光材料に記録し、得ら
れたホログラムに別の光波をあてることによって信号波
を再生する光学技術である。このホログラフィーでは、
物体からの光波そのものを再生するので立体像を再生す
ることができるとともに、ホログラムが干渉縞の記録で
あるのでホログラフィーにより１枚のホログラムに多重
記録も可能である。したがって、ホログラムの用途に
は、立体像のディスプレイ、干渉測定などの計測、ホロ
グラフィー顕微鏡などの光学系応用、高密度のメモリー
の応用、生体表面の計測などの医学的応用など多技にわ
たっている。

例えば、ホログラフィーによる記録の一方法には、物体
からの光の波面に相当する干渉縞を感光材料表面に凹凸
模様として記録する方法がある。これより得られたレリ
ーフ型ホログラムは、干渉縞の凹凸模様が形成されたホ
ログラム原版を用いて大量に複製することができる。こ
のように大量に複製されたホログラムを、例えばキャッ
シュカード、IDカード、免許証、定期乗車券などのカー
ド類、本の表紙、レコードジャケット、あるいは衣類な
どに設ければ、装飾された製品を安価かつ容易につくる
ことができる。しかも１枚のホログラムに多重記録でき
るので図柄などの他の文字、記号、数字などの別の情報
もホログラムに記録できる。

しかしながら、上述の多重記録性は、ホログラフィーに
よって実現されるために、例えば図柄や図形などの共通
の情報の他に個別な情報、例えば、ロット番号、製品番
号、個人識別記号などもホログラムに含めようとする
と、大量複製されたホログラム毎にホログラフィーによ
って個別情報を記録しなくてはならない。したがって、
共通情報と個別情報とを併せて有するホログラムは従来
からつくられていなかった。

本発明は上述の事情に鑑みなされたものであり、その目
的とするところは共通情報の他に個別情報をも持つこと
のできるホログラムを提供することである。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明者らは、ホログラフィーによらず他の原理により
個別的な情報をホログラムに記録すれば本発明の目的達
成に有効であることを見い出した。

ホログラフィーにより記録された情報に加えて、ホログ
ラフィーによらない他の原理により光波に関する別の情
報が積極的に重畳的に記録されたホログラムは従来なか
った。これは、怒らく、ホログラムが光波に関する情報
を記録したものであるからホログラフィー以外の原理で
別の光波に関する情報を重畳的に記録することは、ホロ
グラフィーによる情報を乱しもしくは壊してしまうとし
て、またホログラムが情報を非常に微細な干渉縞として
記録されたものであるから更に別の情報がホログラムに
熱的、化学的、または機械的な方法で記録するとその干
渉縞の凹凸模様が壊れると考えられていたからであろ
う。

一般に、光がある物体に照射されるとその振幅および位
相が空間的に変調される。その変調された物体からの光
の振幅および波長は物体の明るさおよび色の情報を与
え、物体からの光の位相は物体の位置の情報を与える。
写真などの光学的情報記録では、物体からの光波の振幅
および／または波長のみの情報がレンズを介して感光材
料に記録されるのに対して、ホログラフィーにおいて
は、物体の各点からの光波の振幅および位相が同時に干
渉縞としてホログラム面の広範囲に記載される。したが
って、ホログラムの１点は物体上の各点の情報を含み、
これから物体像を再生することができ、ホログラムの一
部が欠損しても再生像に大きな影響を及ぼさないという
特性をホログラムは持っている。

本発明者らはこの特性を巧みに利用して本発明を完成す
るに至った。すなわち、本発明による多重記録体は、共
通情報のみが光波の振幅および位相に関してホログラフ
ィーにより記録再生される第一情報と、個別情報が光波
の振幅および／または波長のみに関して記録再生される
第二情報とを重畳的に有することを特徴とするものであ
る。

本発明において第一情報を記録するホログラフィーに
は、リップマンホログラフィー、フレネルホログラフィ
ー、フーリェ変換ホログラフィー、フラウンホーファー
ホログラフィー、イメージプレンホログラフィーなどが
ある。これらのホログラフィーにより得られたホログラ
ムの形態には、イメージホログラム、レインボーホログ
ラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィ
ック回折格子など任意のものがある。本発明の多重記録
体には、上述のホログラフィーによって第一情報が記録
されている。この第一情報は、物体からの光波の振幅お
よび位相に関するものであり、干渉縞として記録されて
いる。この第一情報は再生照明光をホログラムに照射し
て随意再生される。本発明においてホログラフィー技術
により製作されるホログラムは透過型と反射型とがあ
り、反射型ではホログラム層の表面に金属薄膜などの反
射層が積層される。また、レリーフ型ホログラムの複製
で利用されているように、賦型により樹脂表面に凹凸が
形成された複製物であってもよい。

本明細書において、光波とは可視光のみならず、赤外
線、紫外線も含むものとする。

本発明の多重記録体には、第二情報が記録されている。
この第二情報は光波の振幅および／または波長のみに関
するものであり、振幅によって光の強度がまた波長によ
り光の色が再生されるが、ホログラフィーによる記録の
ように位相に関する情報は含まない。

本発明において文字、記号、図形などの第二情報を記録
する方法には、種々の方法がある。ホログラムが反射型
のものである場合、ホログラム層変化の他の次の反射層
変化による記録が可能である。例えば、反射層を熱的、
化学的、機械的な方法で除去する方法、反射層を変形す
る方法、反射層を色変化させる方法、反射層構造を熱的
に相変化させる方法、偏光特性を変える光磁気的方法、
また部分的なマスクを介して金属蒸着などを行なって反
射層を部分的に形成する方法がある。第一情報の記録後
に第二情報を記録する場合、化学的な除去に比較して−
工程で記録可能な熱的な方法が望ましい。ホログラムが
透過型のものである場合、ホログラムをマット化やマス
ク層の付加などによって実現することができる。この第
二情報は本発明の多重記録体に再生照明光を照射して随
意再生される。この第二情報の記録は、第一情報の記録
の前後または同時に行なわれる。

本発明において、第一情報を担うものの材質は、ホログ
ラムを形成することのできるものであればよく、物体か
らの光波の波面を記録した感光材料のほか、その原版か
ら複製できる材料であってもよい。本発明の多重記録体
は、第一情報が記録されたホログラム層を少なくとも有
し、このホログラム層のほかに、反射性薄膜、記録体内
部を保護する保護層、記録体を支持する基材などとの積
層体とすることができる。第二情報が記録される層もし
くは位置は、本発明の目的に反しない限り制限されな
い。

〔発明の効果〕

本発明の多重記録体によって次の効果が得られる。

（ａ）本発明の多重記録体は、ホログラムの一部が欠損
してもその再生像に大きな影響を及ぼさないというホロ
グラムの特徴を巧みに活用するものであるから、ホログ
ラムの第一情報を失なうことなく別の第二情報を多重的
に記録することができ、その一方を共通情報、他方を個
別情報とすることができる。

（ｂ）ホログラフィーには特殊な設備や高価な感光材料
が必要であるので、ホログラフィーにより個別情報を記
録すれば高価な多重記録体となる。しかし、本発明では
ホログラフィーによらないで個別情報を記録するので、
作製容易かつ安価な多重記録体を提供することができ
る。

〔実施例〕

以下、複製レリーフ型反射ホログラムから本発明の多重
記録体を製造する例を示して、本発明を具体的に説明す
る。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。

この実施例に用いた複製レリーフ型ホログラム１は、第
１図に示すように、基材２とホログラム層３と、反射性
金属薄膜４と、保護層５とから成る。

この実施例における基材２の材質としては、ガラス、プ
ラスチック、金属、紙など光学的透明、半透明、または
不透明でありかつ機械的強度のあるものなどが好まし
い。基材の選択は任意であり、耐熱性、抗張力、耐薬品
性、および価格などの観点からプラスチックフィルムが
望ましい。

この実施例におけるホログラム層３の材質として、ポリ
塩化ビニル、アクリル樹脂（例えばMMA）、ポリスチレ
ン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、および不飽
和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フ
ェノール樹脂、ポリエステル（メタ）アクリレート、ウ
レタン（メタ）アクリレート、エポキシ（メタ）アクリ
レート、ポリエーテル（メタ）アクリレート、ポリオー
ル（メタ）アクリレート、メラミン（メタ）アクリレー
ト、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化
させたもの、あるいは上記の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹
脂との混合物などがあり、光波を透過するものである。

この実施例において、反射性金属薄膜４の材質には、A
l、Ag、Ni、Au、Cu、Ti、Co、Fe、Pb、Pd、Zn、Te、S
e、In、Snなどの単体金属、もしくはそれらの合金があ
る。ホログラム面へのこの金属薄膜の形成は、真空蒸着
法、スパッタリング法、めっき法などによって実施する
ことができる。

この実施例において、保護層５には、上述したホログラ
ム層３と同様の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を用い
ることができる。

第１図に示すような複製レリーフ型反射ホログラム１に
は、ホログラム層３の表面における干渉縞に相当する凹
凸模様として第一情報が既に記録されている。基材２と
してポリエステルフィルムを、ホログラム層３してポリ
エステルアクリレートを主体としたUV硬化型樹脂を、金
属薄膜４として反射率が高くかつ熱的変形を起しやすい
真空蒸着法によるSn膜を、保護層５としてアクリル系樹
脂を３μ塗工したものを用いた複製レリーフ型反射ホロ
グラムから、以下の例により本発明の多重記録体を作製
した。このホログラムでのSn薄膜４の反射率は65％であ
った。

例 １ 上述の反射ホログラムの反射性薄膜４面上に、20mWのHe
−NeレーザーをNAO.2のレンズによって集光させた。薄
膜に直径約６μの孔が空いて、その部分の反射率が３％
となり、第二情報が記録されて多重記録体を調製した。

この記録体には、ホログラム情報（第一情報）を殆んど
損なうことなく、第二情報が記録されていた。

例 ２ 上述の反射ホログラムの保護層５面上から厚膜型サーマ
ルヘッドによって30mJ/mm²でドットを印字した。その結
果、Sn膜が穿孔され、その部分の反射率が５％以下とな
って第二情報が記録された。

得られた多重記録体はホログラム情報を損うことなく第
二情報を有し、きわめて容易に個別情報を記録すること
ができた。

例 ３ 上述の反射ホログラムの保護層５面上に100μｍの線よ
りなる部分的マスクを形成し、この上からキセノンフラ
ッシュ露光を行ない、1mJ/mm²のエネルギーを連続して
３回与えた。その結果熱変形が、マスクされていない保
護層およびSn膜が起って、その部分の正反射率が５％以
下となった。

例 ４ 金属薄膜としてAl膜を用いたこと以外同様の反射ホログ
ラムから作製した。このホログラムの保護層上に黒色塗
料でサインを書き変えて、熱吸収部を形成した。その上
から1mJ/mm²のフラッシュ露光を行ない、この黒色の熱
吸収部に対応する保護層および金属薄膜を変形して、サ
インをホログラムの反射層に鮮明に記録することができ
た。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の多重記録体の作製に用いられる複製
レリーフ型反射ホログラムの断面図である。 １……ホログラム、２……基材、３……ホログラム層、
４……金属薄膜、５……保護層。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−97333（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−88780（ＪＰ，Ａ)

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】共通情報のみが光波の振幅および位相に関
   してホログラフィーにより記録再生される第一情報と、
   個別情報が光波の振幅および／または波長のみに関して
   記録再生される第二情報とを重畳的に有することを特徴
   とする多重記録体。
2. 【請求項２】記録体が、第一情報を担うホログラム層
   に、第２情報を担う薄膜を積層したものである、特許請
   求の範囲第１項に記載の多重記録体。
3. 【請求項３】第二情報を担う薄膜が反射性金属薄膜であ
   り、ホログラム層がレリーフ型反射ホログラムである、
   特許請求の範囲第２項に記載の多重記録体。
4. 【請求項４】記録体が、第一情報に相当する干渉縞のホ
   ログラム層凹凸面に前記薄膜を積層したものである、特
   許請求の範囲第２項または第３項に記載の多重記録体。
5. 【請求項５】第一情報を担うホログラム層の変化によっ
   て、第二情報が記録されている、特許請求の範囲第１項
   に記載の多重記録体。