JPH0689751B2 - スライディングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は自動車用空調装置等に供されるスライディング
ベーン式圧縮機に使用するベーン背圧付与装置に関する
ものである。

従来の技術 周知のようにスライディングベーン式圧縮機においては
ロータの回転に伴なってベーンがその先端をシリンダ内
壁に接して回転摺動運動をするようベーン後端に高圧の
潤滑油を圧力差により供給する構造が広く用いられてい
る。

以下図面を参照しながら、上述した従来のスライディン
グベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の一例について
説明する。

第８図および第９図は従来の差圧給油式のベーン背圧付
与装置を有するスライディングベーン式圧縮機の具体構
成を示すものである。同図において、１は円筒内壁を有
するシリンダ、２はその外周の一部がシリンダ１内壁と
微小隙間を形成するロータ、３はロータ２に設けられた
複数のベーンスロット４内にそれぞれ摺動自在に挿入さ
れたベーン、５はロータ２と一体的に形成され回転自在
に軸支される駆動軸、６および７はそれぞれシリンダ１
の両端を閉塞して内部に作動室８を形成する前部側板お
よび後部側板である。９は低圧側の作動室８に連通する
吸入口、10は高圧側の作動室８に連通する吐出口、11は
吐出口に配設された吐出弁である。12は高圧通路13に連
通する高圧室14を形成し、作動室８により圧縮され吐出
された高圧流体中の潤滑油を分離捕捉するスクリーン15
を配設した高圧ケースである。16は後部側板７に配設さ
れたベーン背圧付与装置本体で、高圧室14下方の油溜り
部の潤滑油をベーン背圧室17に供給している。18は高圧
室14下方の油溜り部とベーン背圧室17とを連通する給油
通路、19は給油量を制御する制御通路である。

以上のように構成されたスライディングベーン式圧縮機
のベーン背圧付与装置について、以下その動作について
説明する。

エンジンなどの駆動源より動力伝達を受けて駆動軸５お
よびロータ２が第９図において時計方向に回転すると、
これに伴ない低圧流体が吸入口９より作動室８内に流入
する。ロータ２の回転に伴ない圧縮された高圧流体は吐
出口10より吐出弁11を押し上げて高圧通路13より高圧室
14に流入し、スクリーン15によって潤滑油が分離捕捉さ
れる。そして潤滑油が分離されたガス状流体は冷凍サイ
クルのコンデンサ（図示せず）に流入する。一方分離さ
れた潤滑油は給油通路18および制御通路19を介してベー
ン背圧室17に供給され、ベーンスロット４内におけるベ
ーン３の出没運動に有効な押圧作用をなし、さらにロー
タ２側面などの各摺動部分を潤滑して作動室８内へ流入
するのである。したがって、これにより圧縮機の回転速
度が低くてベーン３に作用する遠心力が小さい場合にも
ベーン３先端をシリンダ１内壁に確実に接触摺動運動さ
せることができるので、ベーン３がシリンダ１内壁から
遊離し再び衝突する周知の不調現象を防止することがで
きる。

発明が解決しようとする問題点 しかしながら上記従来のベーン背圧付与装置では、ベー
ン３に作用する遠心力が大でベーン背圧室17の圧力によ
らないでもベーン３の先端がシリンダ１内壁に当接して
摺動できるような高回転速度で圧縮機を運転した場合で
も高圧室14下部壁面近くに開口した給油通路18からベー
ン背圧室17へ潤滑油を供給しようとするが、高速で出没
するベーン３によるベーン背圧室17の容積変化のため給
油通路18および制御通路19を通過する潤滑油量が増大す
ることと作動室８から吐出される高圧流体の流量の増加
により高圧室14内の流速が上昇してこれによる潤滑油の
持ち出しやスクリーン15による潤滑油の分離効率の低下
のため、高圧室14内の潤滑油レベルは低下しついには高
圧室14下方壁面に付着した潤滑油とガス状流体が給油通
路18からベーン背圧室17へ供給されるようになる。その
ためこの状態から圧縮機の回転速度を急減速させた場合
に、ベーン３に作用する遠心力が急激に減少しかつ給油
通路18の高圧室14開口には供給するべき潤滑油が存在せ
ずベーン背圧室17には極めてガスリッチな流体が供給さ
れ続けるので、ベーン背圧室17のシール性が悪化してベ
ーン背圧室17内圧力の低下を招きベーンの不調現象を生
ずるという問題点を有していた。

またこれを防止するため冷凍サイクル内に封入する潤滑
油量を増大させると熱交換器の熱交換が阻害され冷房能
力が低下しかつ高速回転時においてベーン３先端がシリ
ンダ１内壁に過度に押接せしめられ圧縮機の効率低下や
ベーン３の摩耗を生ずるという欠点を有する。

さらに潤滑油を分離捕捉するためのオイルセパレータに
より潤滑油を確保しようとするとオイルセパレータのス
ペースを大きくする必要があり、圧縮機の寸法、重量、
コストの増大を招くなどの欠点を有する。

本発明は上記問題点に鑑み、圧縮機が高回転速度から低
回転速度まで急減速された場合でもベーンの不調現象を
防止できかつ耐久性や効率を損なわないスライディング
ベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置を提供することを
目的とするものである。

問題点を解決するための手段 上記問題点を解決するために本発明のスライディングベ
ーン式圧縮機のベーン背圧付与装置は、ベーン背圧室と
高圧室下方の油溜り部とを連通する給油通路と、この給
油通路の高圧室開口を圧縮機回転速度が大きい時は上
方、圧縮機回転速度が小さい時は下方の２段階に切換え
る切換え手段とを備えたものである。

作用 本発明は上記した構成により、圧縮機が高回転速度で運
転される場合には切換手段によって給油通路の高圧室開
口は上方に切換えられるのでベーン背圧室へは給油通路
の上方開口より潤滑油が給油されるが、前述の従来のベ
ーン背圧付与装置と同様に潤滑油レベルは低下しついに
はガスリッチな流体が給油通路の上方開口よりベーン背
圧室へ供給され始めると供給される潤滑油量が急減する
ため潤滑油レベルをそれ以上低下させない。したがって
この状態から圧縮機の回転速度を急減速させた場合で
も、切換手段によって給油通路の高圧室開口が下方に切
換えられるので給油通路の高圧室開口からは再び潤滑油
がベーン背圧室へ供給されベーンに所定の押圧作用をな
すためベーンの不調現象を防止できるのである。

実施例 以下本発明の一実施例のスライディングベーン式圧縮機
のベーン背圧付与装置について、図面を参照しながら説
明する。第１図および第２図は本発明の第１の実施例に
おけるスライディングベーン式圧縮機のベーン背圧付与
装置の要部拡大断面図、第３図は当該ベーン背圧付与装
置を備えたスライディングベーン式圧縮機の断面図を示
すものである。同図において前記従来のスライディング
ベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置と同一の作用効果
を有するものは同一の符号を付して説明を省略する。20
は一端が給油通路18に連通し他端が高圧室14に開口する
摺動室、21は摺動室20内に摺動自在に配設される弁体で
ある。弁体21は給油通路18と高圧室14とを常時連通する
通路22および第１制御通路191を有しかつ弁体21が摺動
室20の高圧室14側開口へ移動した場合に通路22の高圧室
14側開口が摺動室20の高圧室14側開口より高圧室14下方
に突出するように構成してある。192は摺動室20と通路2
2とを常時連通するよう弁体21に設けられた第２制御通
路である。23は摺動室周壁201に対向して弁体21の外周
に設けられた環状溝、24は環状溝23と通路22とを連通す
る連通路である。25は摺動室周壁201に設けられた連通
路で弁体21が給油通路18側へ移動し当接した場合に環状
溝23に連通して高圧室14と通路22とをバイパスし、弁体
21が摺動室20の高圧室14側開口へ移動した場合には弁体
21の外周により連通路25の摺動室20側開口を遮断する位
置に設けられている。26は弁体21を摺動室20の高圧室14
側開口へ移動させる方向に付勢力を作用するばね、27は
弁体21の移動範囲を規制する止め輪である。

以上のように構成されたスライディングベーン式圧縮機
のベーン背圧付与装置について、以下第１図乃至第３図
を用いてその動作を説明する。まず第１図は圧縮機が停
止もしくは低回転速度で運転されている場合のベーン背
圧付与装置の断面図を示すものであって、分離されて高
圧室14下方に溜った潤滑油が通路22、第１制御通路191
と第２制御通路192、摺動室22および給油通路18を介し
てベーン背圧室17に供給されベーンの出没運動に有効な
作用をなすのは前記従来のベーン背圧付与装置と同様で
ある。つぎに圧縮機が高回転速度で運転されるとベーン
の出没によるベーン背圧室17の急激な容積変化によって
給油通路18内の圧力が低下して弁体21がばね26の付勢力
に打ち勝って給油通路18側へ移動し第２図に示す状態と
なる。この時潤滑油は弁体21の移動によって通路22と高
圧室14とをバイパスする連通路25、環状溝23および連通
路24から選択的に供給されるが、高圧室14内の潤滑油レ
ベルが連通路25より低下すると連通路25からガスリッチ
な流体がベーン背圧室17へ供給されるため潤滑油レベル
はそれ以上低下しなくなる。

したがってこの状態から圧縮機の回転速度を急減速させ
た場合でも、弁体21が再び第１図に示す状態となり高圧
室14下方に溜った潤滑油は通路22、第１制御通路191と
第２制御通路192、通路22および給油通路18を介してベ
ーン背圧室17に供給され、ベーンに所定の押圧作用をな
すためベーンの不調現象を防止できるのである。

以上のように本実施例によれば、ベーン背圧室と高圧室
下方の油溜り部とを連通する給油通路の高圧室開口部に
設けた摺動室内に、摺動自在な弁体とこの弁体を高圧室
側へ付勢するばねとを設け、この弁体に給油通路と高圧
室とを常時連通する通路と、弁体が給油通路側に摺動し
た場合にのみ摺動室周壁の連通路と連通して高圧室と前
記通路とをバイパスさせる連通路とを設けることによ
り、圧縮機が高回転速度で運転される場合には弁体が給
油通路側に移動して前記通路の二つの高圧室開口のうち
選択的に上方にある連通路より潤滑油がベーン背圧室へ
供給されるので、潤滑油レベルが連通路より低下すると
それ以上潤滑油レベルは低下しなくなり、したがってこ
の状態から圧縮機の回転速度を急減速させた場合でも、
弁体が高圧室側へ移動して連通路を遮断し高圧室下方に
溜った潤滑油は前記通路によってベーン背圧室に供給さ
れるため、ベーンの不調現象を防止できるのである。

つぎに本発明の第２の実施例について図面を参照しなが
ら説明する。

第４図および第５図は本発明の第２の実施例を示すスラ
イディングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の要部
拡大断面図である。同図において前記第１の実施例と同
一のものは同一の符号を付して説明を省略する。同図に
おいて第１図および第２図の構成と異なるのが、弁体21
が給油通路18側に移動した時に通路22と高圧室14とをバ
イパスする連通路が設けられていないことである。この
場合圧縮機の回転速度にかかわらず潤滑油は常に通路22
から供給されるのであるが、通路22の高圧室14開口位置
が２段階に変わり圧縮機の回転速度が高い場合にはその
開口位置が高くなるため高圧室14内の潤滑油レベルは通
路22の開口位置より少し低いところで安定しそれ以上低
下しなくなるので、圧縮機の回転速度を急減速した場合
でも前記第１の実施例と同様にベーンの不調現象を防止
できることは明らかである。

つぎに本発明の第３の実施例について図面を参照しなが
ら説明する。

第６図および第７図は本発明の第３の実施例を示すスラ
イディングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の要部
拡大断面図である。同図において前記第１および第２の
実施例と同一の作用効果を有するものは同一の符号を付
して説明を省略する。同図において弁体21はプランジャ
部211と吸油口部212から構成されプランジャ部211は第
１摺動室202内を、吸油口部212は第２摺動室203内を夫
々摺動するよう配設されている。28はプランジャ部211
に設けられた通孔、29は吸油口部212に設けられた通孔
である。30は弁体21の上下方向への移動を規制しかつ制
御通路19を形成する弁座、31は弁体21が弁座へ当接した
時第２摺動室203の中心部と外周部とを連通する通路で
ある。

この場合弁体21の移動は常にプランジャ部211の前後の
圧力差によって決まるので、他の二つの実施例よりも弁
体21移動時のヒステリシスを小さくすることができると
いう特徴があるほかは、前記第２の実施例と同一の効果
を有することは明らかである。

発明の効果 以上のように本発明は、ベーンに背圧を付与するベーン
背圧室と高圧室下方の油溜り部とを連通する給油通路
と、この給油通路の高圧室開口を圧縮機回転速度が大き
い時は上方、圧縮機回転速度が小さい時は下方の２段階
に切換える切換え手段とを設けることにより、圧縮機が
高回転速度で運転させた場合には給油通路の高圧室開口
は下方より上方へ切換えられてベーン背圧室への潤滑油
供給は給油通路の上方開口より行なわれるので潤滑油レ
ベルを確保でき、したがってこの状態から圧縮機の回転
速度を急減速させた場合でも、切換手段によって給油通
路の高圧室開口が下方に切換えられて給油通路の高圧室
開口からは潤滑油がベーン背圧室へ供給されベーンに所
定の押圧作用をなすのでベーンの不調現象を防止できる
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１の実施例におけるスライディング
ベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の要部拡大断面
図、第２図は第１図の作動状態を示す要部拡大断面図、
第３図は本発明の第１の実施例におけるベーン背圧付与
装置を具備したスライディングベーン式圧縮機の断面
図、第４図は本発明の第２の実施例におけるスライディ
ングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の要部拡大断
面図、第５図は第４図の作動状態を示す要部拡大断面
図、第６図は本発明の第３の実施例におけるスライディ
ングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置の要部拡大断
面図、第７図は第６図の作動状態を示す要部拡大断面
図、第８図は従来のベーン背圧付与装置を具備したスラ
イディングベーン式圧縮機の断面図、第９図は第８図の
Ｘ−Ｘ線による断面図である。 ３……ベーン、14……高圧室、16……ベーン背圧付与装
置本体、17……ベーン背圧室、18……給油通路。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】筒状内壁を有するシリンダ（１）と、この
   シリンダ（１）の内部に配設されその外周の一部がシリ
   ンダ内壁と微小隙間を形成するロータ（２）と、このロ
   ータ（２）に設けられたベーンスロット内に摺動自在に
   挿入された複数のベーン（４）と、前記ロータと一体的
   に形成され回転自在に軸支される駆動軸（５）と、前記
   シリンダの両端を閉塞して内部に作動室を形成する前部
   側板（６）および後部側板（７）と、前記ロータ外周と
   シリンダ内壁が近接している部分をはさんで作動室
   （８）に連通する吸入口（９）および吐出口（10）と、
   この吐出口に設けられた吐出弁（11）と、吐出口に連通
   し圧縮された高圧流体中の潤滑油を分離しかつその下方
   部分に油溜り部を含む高圧室（14）を有する高圧ケース
   （12）と、前記ベーンスロットとベーン端部とで形成さ
   れるベーン背圧室（17）と高圧室（14）下方の油溜り部
   とを連通する給油通路（18）と、この給油通路の高圧室
   （14）開口を圧縮機回転速度が大きい時は上方、圧縮機
   の回転速度が小さい時は下方の２段階に切換える切換え
   手段とを備えたスライディングベーン式圧縮機のベーン
   背圧付与装置。
2. 【請求項２】切換手段は、給油通路（18）の高圧室（1
   4）開口部に設けられ、一端が給油通路（18）に連通
   し、他端が高圧室（14）に開口する摺動室（20）と、こ
   の摺動室内を摺動自在に配設され前記給油通路と高圧室
   とを常時連通する通路（22）を有しかつ摺動室の高圧室
   開口側へ移動した時前記通路開口が摺動室開口より高圧
   室内に突出するようにした弁体（21）と、この弁体を高
   圧室開口側へ付勢するばねとから成る特許請求の範囲第
   １項に記載のスライディングベーン式圧縮機のベーン背
   圧付与装置。
3. 【請求項３】切換手段は、弁体（21）が給油通路側に摺
   動し当接した場合に、摺動室周壁（201）および弁体を
   貫通して高圧室と弁体の通路（22）とを連通する連絡路
   （24），（25）及び環状溝（23）を有し、弁体が高圧室
   側に移動した場合は摺動室周壁の連絡路（25）を弁体が
   遮断するようにした特許請求の範囲第２項に記載のスラ
   イディングベーン式圧縮機のベーン背圧付与装置。