JPH0229880B2 - Beenkaitenshikiatsushukukinokyuyusochi - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はベーン回転式圧縮機における給油装置
に関するもので、特に自動車用空調装置に供され
るベーン回転式圧縮機に使用する場合に適した給
油装置を提供するものである。

従来例の構成とその問題点 周知のようにベーン回転式圧縮機においてはロ
ータの回転に伴つてベーンがその先端をシリンダ
内壁に接して回転摺動運動をするようベーン底部
に常時高圧の潤滑油を作用させる構造が用いられ
ている。これを実現する手段として一般に、圧縮
機の駆動軸上に装備したポンプ等により強制的に
給油する強制給油式と、圧縮機により圧縮された
高圧流体の圧力を利用して圧縮機の高低圧力差に
より給油する差圧給油式とが広く利用されてい
る。

しかしながら、強制給油式では圧縮機の回転数
上昇に伴つて給油量も増大しベーンに作用する遠
心力とあいまつてベーンを過度にシリンダ内壁に
押接せしめ、ベーン先端部およびシリンダ内壁の
摩耗増と圧縮機の入力増をひき起こす結果となり
圧縮機の耐久性や効率を悪くするという欠点があ
る。

一方、差圧給油式ではベーン底部から作動室内
への洩れに対応する給油を行なうように通路を構
成すれば回転数の直接的影響を受けないので上記
強制給油式の場合に見られる欠点を排除できるの
であるが、この場合運転後の圧縮機停止時におい
ても圧縮機の高低圧力差によつて高圧側の潤滑油
および高圧流体はベーン底部に供給され続け潤滑
油がシリンダ内部にたまつて圧縮機の始動時に油
圧縮をひき起こしたり、圧縮機を逆転させる等の
不具合を生ずるのである。

このため従来の差圧給油式では給油通路内に圧
縮機停止時には給油通路を遮断し圧縮機運転時に
は給油通路を連通させる機構を有していた。

第１図〜第３図は従来の差圧給油式の給油装置
を有するベーン回転式圧縮機の具体構成を示すも
ので、１は円筒内壁を有するシリンダ、２はその
外周の一部がシリンダ１内壁と微小隙間を形成す
るロータ、３はロータ２に設けられたベーンスロ
ツト４内に摺動自在に挿入された複数のベーン、
５はロータ２と一体的に形成され回転自在に軸支
される駆動軸、６および７はそれぞれシリンダ１
の両端を閉塞して内部に作動室８を形成する前部
側板および後部側板、９は低圧側の作動室に連通
する吸入口、１０は高圧側の作動室８に連通する
吐出口、１１は吐出口１０に配設された吐出弁、
１２は高圧通路１３に連通しその内部に高圧室１
４を形成し圧縮された高圧流体中の潤滑油を分離
捕捉するスクリーン１５を配設した高圧ケース、
２５は後部側板７に取付けられた給油装置本体、
１６は高圧室１４下方の油溜り部とベーン底部空
間１７とを連通する給油通路、１８は給油通路１
６途中に設けられた弁体１９を密着保持して周知
の逆止弁を構成する弁座、２０は一端を弁座１８
に開口し他端を通路２２によつて高圧側の作動室
８と連通する摺動室、２１はこの摺動室内に摺動
自在に配設され一端に給油通路１６の流体圧力を
他端に高圧側の作動室８の流体圧力を受ける摺動
体、２３は摺動体２１の外周溝に装着された弾力
性のあるシールリング（例えばゴム製のＯ−リン
グ）である。

以上のように構成されたベーン回転式圧縮機の
給油装置について、以下その動作を説明する。エ
ンジンなどの駆動源より動力伝達を受けて駆動軸
５およびロータ２が第２図において時計方向に回
転すると、これに伴い低圧流体が吸入口９より作
動室８内に流入する。ロータ２の回転に伴い圧縮
された高圧流体は吐出口１０より吐出弁１１を押
し上げて高圧通路１３より高圧室１４に流入し、
スクリーン１５によつて潤滑油を分離捕捉され
る。高圧流体中より分離された潤滑油は高圧室１
４下方に貯えられる。

一方摺動体２１の下端面には通路２２によつて
高圧側の作動室８内の流体圧力が作用するが、吐
出弁１１直前の作動室８内の流体は吐出弁１１に
作用する高圧流体の圧力に打ち勝つて吐出弁１１
を押し上げる分だけ圧力は高いので、摺動体２１
は上端面に作用する高圧室１４から流入する流体
の圧力に打ち勝つて上方に移動し、弁座１８より
弁体１９を遊離させて給油通路１６を連通させ
る。ここで摺動体２１の下端面に作用する流体圧
力はロータ２の１回転に対しベーン枚数分の脈動
を有しているが、摺動体２１の外周溝には弾力性
がありかつ適度に摩擦係数を大きく設定されたシ
ールリング２３が装着されているため前記圧力の
脈動に直接応動して摺動体２１が上下振動を繰返
すことはない。

したがつて高圧室１４下方に貯えられた潤滑油
は差圧によつて給油通路１６からベーン底部空間
１７へ供給されてベーン３の押圧に供されるので
ある。

つぎに圧縮機が停止すると作動室８内の圧力は
ベーン３の長手方向の隙間からの洩れにより急激
に低圧側の流体の圧力にまで低下するので、摺動
体２１の下端面に作用する力は上端面に作用する
高圧室１４から流入する流体の圧力による力より
小さくなり、摺動体２１は下方へ移動しそれに伴
い弁体１９も弁座１８に密着保持され給油通路１
６は遮断される。したがつてこれ以上高圧室１４
下方の潤滑油はベーン底部空間１７へ供給されな
いので、潤滑油がシリンダ１内部にたまつて圧縮
機の始動時に油圧縮をひき起こしたりすることが
なく、あるいは作動室８内に流入した高圧の潤滑
油および流体が再膨張して圧縮機を逆転させるこ
とがないのである。

しかしながら圧縮機が停止してからある時間が
経過して低圧側の流体の圧力と高圧側の流体の圧
力とが等しくなつた場合に圧縮機を始動すると、
上記従来の給油装置では給油通路１６が遮断され
ているため圧縮機始動直後から摺動体２１がシー
ルリング２３の摩擦抵抗に抗して弁体１９を弁座
１８から遊離させるまでの間は潤滑油の供給がな
されず、また始動直後の高低圧力差が小さい場合
にはこの時間が長くなるので、上記従来の給油装
置では、特に圧縮機始動時の回転数が低くベーン
に働く遠心力が小さい場合に潤滑油の供給量不足
すなわちベーン３の押圧不足を生じベーン３がシ
リンダ１内壁から遊離し再び衝突する周知の不調
現象や流体を圧縮しない圧縮不良現象が生ずると
いう欠点があつた。

さらに第４図は従来の他のベーン回転式圧縮機
の差圧給油式の給油装置の要部拡大断面図を示す
もので前記従来の給油装置と異なるのは、摺動体
２１の下端面に高圧側の作動室内の流体圧力を作
用させるための通路２２が摺動室２０の端部を閉
塞する栓体２４と給油装置本体２５とに設けられ
たネジ山によつて形成される脈動吸収のための微
小通路２６を介して摺動室２０と連通しているこ
とと、摺動体２１にはシールリング２３が設けら
れていないことである。

このように構成された場合でも、圧縮機の運転
中および停止時には前記従来の給油装置と同様の
作用をなすが、また同様に圧縮機の低圧側の流体
の圧力と高圧側の流体の圧力とが等しくなつた場
合に圧縮機を始動すると、給油通路１６が遮断さ
れているため圧縮機始動直後から摺動体２１下端
面側に通路２２および微小通路２６により作動室
内の流体が供給されて摺動体２１が上方へ移動し
弁体１９を弁座１８から遊離させるまでの間は潤
滑油の供給がなされないので前記従来の給油装置
と同様の欠点を有するのである。

発明の目的 本発明は上記欠点に鑑み特に圧縮機の高低圧力
差が無いか小さい場合に低速回転で圧縮機を運転
した場合でもベーンの不調現象や圧縮不良現象を
防止できかつ耐久性や効率を損なわないベーン回
転式圧縮機の給油装置を提供するものである。

発明の構成 本発明は、ベーン回転式圧縮機におけるベーン
押圧のための潤滑油を高圧室の油溜り部からベー
ン底部空間へ供給する給油装置として、高圧室の
油溜り部とベーン底部空間とを連通する給油通路
と、高圧室からベーンスロツトに至る潤滑油の流
れを遮断する如く逆止弁を構成する弁座および弁
体と、その一端を弁座に開口し他端は圧縮機内部
において圧縮機の停止状態および運転状態にそれ
ぞれ対応してその圧力が低圧側圧力から高圧側圧
力近傍にまで変化する部分に連通する摺動室と、
この摺動室内に摺動自在に配設されその移動によ
つて前記弁体を弁座より離脱させることができる
摺動体と、前記弁体が弁座より離脱する向きに前
記摺動体を付勢するバネとを設けたもので、圧縮
機の高低圧力差が無いか小さい場合に圧縮機を低
速回転で始動した場合でも、始動前に摺動体がバ
ネの付勢力を受けて弁体を弁座より離脱させてい
るため高圧室からベーン底部空間に至る給油通路
は連通されているので、ベーン押圧のために必要
な潤滑油の供給がすみやかにでき、ベーンの不調
現象や圧縮不良現象を防止できるという特有の効
果を有する。

実施例の説明 以下、本発明の一実施例について、図面を参照
しながら説明する。

第５図は本発明の一実施例におけるベーン回転
式圧縮機の給油装置の要部拡大断面図を示すもの
であるが、前記従来のベーン回転式圧縮機の給油
装置と同一の部品でかつ同一の作用効果を有する
ものは同一の符号を記して説明を省略する。２７
は弁体１９が弁座１８より離脱する向きに摺動体
２１を付勢するバネである。

以上のように構成されたベーン回転式圧縮機の
給油装置について以下その動作を説明する。

圧縮機の定常運転中においては高圧側の作動室
８の流体圧力が摺動体２１の下端面に作用するの
で、摺動体２１は弁座１８より弁体１９を遊離さ
せて給油通路１６を連通させる。ここで高圧側の
作動室８内の流体圧力は脈動を有しているが、摺
動体２１はバネ２７の付勢力によつて弁体１９を
弁座１８から遊離させる方向に作用しているため
摺動体２１が上下振動を繰返すことはない。した
がつて高圧室１４下方に貯えられた潤滑油は差圧
によつて給油通路１６からベーン底部空間へ供給
されてベーン３の押圧に供されることは前記従来
のベーン回転式圧縮機の給油装置と同様である。

また、圧縮機が運転を停止すると摺動体２１の
上端面に作用する高圧室１４の圧力が摺動体２１
の下端面に作用する力とバネ２７の付勢力とに打
ち勝つて摺動体２１は下方へ移動しそれに伴い弁
体１９も弁座１８に密着保持され給油通路１６が
遮断されて、圧縮機の始動時における油圧縮ある
いは圧縮機の逆転を防止できることも前記従来の
ベーン回転式圧縮機の給油装置と同様である。

圧縮機が停止してからある時間が経過して高低
圧力差が徐々に減少していつてある値以下になる
と摺動体２１はバネ２７の付勢力により上方へ移
動して弁体１９を弁座１８から遊離させる。この
場合弁体１９および摺動体２１の外径とバネ２７
の付勢力とを適当に選択することによつて給油通
路１６が連通する時点の高低圧力差を前記油圧縮
および逆転の不具合が発生しないように設定する
ことができる。

したがつて圧縮機の高低圧力差が無い場合には
弁体１９は弁座１８から遊離しているため給油通
路は連通しており、この状態で圧縮機を起動する
と、ベーン底部空間の圧力変動に応じてすみやか
に高圧室１４から潤滑油が供給できるため圧縮機
の始動時においてもベーンの押圧不足を生じるこ
となく、したがつて前述のベーンの不調現象や圧
縮不良現象を防止できるものである。

発明の効果 以上のように本発明によれば、圧縮機の高低圧
力差が無いか小さい場合に圧縮機を低速回転で始
動した場合でも、始動前に摺動体がバネの付勢力
を受けて弁体を弁座より離脱させているため高圧
室からベーン底部空間に至る給油通路は連通され
ているので、ベーン押圧のために必要な潤滑油の
供給がすみやかにできるので、ベーンの不調現象
や圧縮不良現象を防止でき、その実用的効果は大
なるものがある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の給油装置を具備したベーン回転
式圧縮機の縦断面図、第２図は第１図のＸ−Ｘ線
による断面図、第３図は従来のベーン回転式圧縮
機の給油装置の要部拡大断面図、第４図は従来の
他のベーン回転式圧縮機の給油装置の要部拡大断
面図、第５図は本発明の一実施例におけるベーン
回転式圧縮機の給油装置の要部拡大断面図であ
る。 １……シリンダ、２……ロータ、３……ベー
ン、４……ベーンスロツト、５……駆動軸、６…
…前部側板、７……後部側板、８……作動室、１
２……高圧ケース、１４……高圧室、１６……給
油通路、１８……弁座、１９……弁体、２０……
摺動室、２１……摺動体、２７……バネ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 筒状内壁を有するシリンダと、このシリンダ
   の内部に配設されその外周の一部がシリンダ内壁
   と微小隙間を形成するロータと、このロータに設
   けられたベーンスロツト内に摺動自在に挿入され
   た複数のベーンと、前記ロータと一体的に形成さ
   れ回転自在に軸支される駆動軸と、前記シリンダ
   の両端開口を閉塞して内部に作動室を形成する前
   部側板および後部側板と、圧縮された高圧流体中
   の潤滑油を分離しかつその下方部分に油溜り部を
   形成する高圧室を有する高圧ケースと、この高圧
   室の油溜り部と前記ベーンスロツトとを連通して
   差圧により潤滑油をベーンスロツト内に供給する
   給油通路と、この給油通路を連通遮断する通路開
   閉手段とから成るベーン回転式圧縮機の給油装置
   であつて、前記通路開閉手段は、高圧室からベー
   ンスロツトに至る潤滑油の流れを遮断する如く逆
   止弁を構成する弁座および弁体と、その一端を弁
   座に開口し他端は圧縮機内部において圧縮機の停
   止状態および運転状態にそれぞれ対応してその圧
   力が低圧側圧力から高圧側圧力近傍にまで変化す
   る部分に連通する摺動室と、この摺動室内に摺動
   自在に配設されその移動によつて前記弁体を弁座
   より離脱させることができる摺動体と、前記弁体
   が弁座より離脱する向きに前記摺動体を付勢する
   バネとを備えたベーン回転式圧縮機の給油装置。