JPH0688836B2 - 焦電性磁器材料及びその製造方法 - Google Patents

焦電性磁器材料及びその製造方法

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JPH0688836B2
JPH0688836B2 JP63093338A JP9333888A JPH0688836B2 JP H0688836 B2 JPH0688836 B2 JP H0688836B2 JP 63093338 A JP63093338 A JP 63093338A JP 9333888 A JP9333888 A JP 9333888A JP H0688836 B2 JPH0688836 B2 JP H0688836B2
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宏 中塚
啓至 桑原
昭三 斉藤
治 杉山
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は赤外線検出器等に用いられる焦電性磁器材料に
関するものである。
(従来の技術) 焦電型赤外線検出器の素子材料として、チタン酸鉛系磁
器、チタン酸ジルコン酸鉛系磁器、タンタル酸リチウム
等の単結晶、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料、と
多々知られている。このような材料の中で、チタン酸ジ
ルコン酸鉛系磁器は安価で、加工性に富み、広く汎用赤
外線検出器の素子材料として使用されている。赤外線検
出器の電圧感度(Rv)と素子材料特性との関係は次式で
表されている。
(η:放射率、P:素子の焦電係数、A:素子受光面積、
ω:角周波数、εr:素子の比誘電率、εo:真空の誘電
率、c:素子の比熱、ρ:素子の密度) すなわち、赤外線検出器の素子材料としての焦電性磁器
材料は、温度変化に対する自発分極の変化である焦電係
数P(dPs/dT)が大きいほど、また比誘電率(εr)が
小さいほど優れた材料である。この焦電係数Pは、相転
移によって大きな値になるとが知られている。チタン酸
ジルコン酸鉛系磁器の相転移は、常誘電体−強誘電体間
の相転移と、菱面体結晶内の強誘電体低温相−高温相間
の相転移とがある。前者の相転移によるものは焦電効果
に関して再度の分極処理を行なう必要を生じる場合があ
り、さらに比誘電率が大きく、焦電性磁器材料としては
不適合である。後者の相転移はこのような欠点がほとん
どないため、この相転移を利用した焦電性磁器材料が研
究されてきた。この強誘電体低温相−高温相間の相転移
を利用した焦電性磁器組成物の技術として、チタン酸ジ
ルコン酸鉛を主成分とする材料が特開昭59-182585号公
報に記載されている。しかしながら、この磁器組成物は
PbZrO3が0.93〜0.97モルとPbZrO3の含有率が高く、焼成
温度が高くなり、かつ組成を変えて相転移を室温付近に
て実現させることも難しい。
(発明が解決しようとする問題点) チタン酸ジルコン酸鉛系磁器においては、前記特開昭59
-182585号公報にも記載されているようにジルコン酸鉛
の含有率が大きい組成のところに強誘電体低温相−高温
相間の相転移がみられる。しかしながら、ジルコン酸鉛
の含有率が大きい組成の磁器は、一般的に焼成温度は13
00℃以上と高くする必要があり、必然的にPb0が蒸発し
易くなる。又、ジルコン酸鉛が約0.95モルを超える組成
の場合には焦電性のない反強誘電相がある。この反強誘
電相を避けるため強誘電体低温相−高温間の相転移温度
(To)の組成制御には限界があり、従来約50℃以下の温
度領域では、強誘電体低温相−高温相間の相転移はみら
れていない。そして、従来の強誘電体低温相−高温相間
における相転移を用いた焦電性磁器は相転移を生じる温
度の範囲が狭いため、赤外線検出器等へ応用する場合、
使用温度が狭い範囲に限定される欠点があった。
本発明は比較的低い温度領域において焦電効果に優れる
と共に誘電損失(tanδ)を小さくし、誘電的ノイズが
少なく、使用温度範囲を広くした焦電性複合磁器組成物
及びその製造方法の提供を目的とする。
(問題を解決するための手段) 前記問題を解決するため、まずチタン酸ジルコン酸鉛を
主成分として強誘電体低温相−高温相間の相転移温度
(To)を低下させ、且つ、焼成条件を緩和し、従来より
比較的低い温度に於いて相転移がみられる焦電性磁器組
成物を得るため、基本組成式 Pb(ZryTiz)O3 ・・・(1) 但し式中のy,zは0<y≦1、かつz=1−yで定めら
れるPb(ZryTiz)O3磁器に、成分として Pb(Nb2/3Mn1/3)O3 を加え、前記Pb(ZryTiz)O3磁器のPbZrO3又はPbTiO3
は両者の一部をPb(Nb2/3Mn1/3)O3で置きかえた、 Pb{(Nb2/3Mn1/3)xZryTi(1−x−y)}O3 ・・・
(2) で表わされる組成を有し相転移温度が異なるチタン酸ジ
ルコン酸鉛組成物からなるを調製し、これらチタン酸ジ
ルコン酸鉛群から二つ以上を混合し、焼結することによ
り、各相転移による焦電効果を利用して広い温度域に於
いて平坦な焦電係数温度特性性曲線を示す実用性のある
焦電効果を有する焦電性複合磁器組成物を得ることが判
明した。
たとえばPbZrO3 0.8モル、PbTiO3 0.2モルから成るチタ
ン酸ジルコン酸鉛磁器のPbZrO3 0.1モルをPb(Nb2/3Mn1
/3)O3 0.1モルで置きかえて、PbZrO3 0.7モル、PbTiO3
0.2モル、Pb(Nb2/3Mn1/3)O3 0.1モルから成る磁器組
成物とすることができる。
前記(2)式中のx,yはx+y≦1で、 0.05≦x≦0.20 0.80≦y≦0.95 で表わされる強誘電体低温相−高温相間の相転移を持っ
た焦電性磁器材料である。
なお、前記組成式(1)のPb(ZryTiz)O3で表わされる
磁器に、Pb(Nb2/3Mn1/3)O3のような成分を加え、焼成
して得た前記(2)式で表わされるような成分系の磁
器、又はさらに成分を加えた磁器を変成Pb(ZryTiz)O3
磁器と称する。また、焦電性磁器材料としては比誘電率
が低いことが望まれるが、前記(2)式で表わされる磁
器とすることにより比誘電率は低下する。前記の組成式
のx及びyの値の範囲内では強誘電体低温相−高温間の
相転移温度を低下させることができ、従来より比較的低
い温度領域に於いて相転移を生じる。又、この種の磁器
組成物は、焦電性効果に優れていると共に、さらに、ta
nδ(誘電損失)が小さく、誘電的ノイズが小さいこと
が要求されるが、前記組成の磁器に副原料としてMnO2
又はCr2O3、又はMnO2とCr2O3を0.5〜1.0重量パーセント
加えると、焦電性効果を維持したtanδ(誘電損失)の
少ない磁器組成物となる。
平坦な焦電係数温度特性を得るために、強誘電体低温相
−高温相間に相転移点(To)を持つ焦電性磁器組成物で
あって相転移温度が異なるもの二つ以上を混合し、焼結
することにより、各相転移による焦電効果を利用して広
い温度域に於いて平坦な焦電係数温度特性曲線を示す実
用性のある焦電効果を有する焦電性複合磁器組成物を得
ることができる。この焼結は、二つ以上の、相転移温度
の異なる組成磁器の焼結であって、焼成後の磁器を再度
粉砕し、整粒、混合、成型後焼結するため、粒子が成長
し、この二つ以上の組成磁器が固溶体となることが予測
される。このような粒子の成長や固溶体の形成は、組合
わせた磁器の持つそれぞれの相転移による焦電効果を利
用して平坦な焦電係数温度特性とするためには望ましく
ないので、約800℃以上1300℃未満程度の温度にて粒子
成長を抑制し、完全固溶体を形成することなく焼結させ
るのが好ましく、加熱加圧装置での焼結が適している。
しかし、常圧でも焼結条件を選定することによって加圧
焼結と同等の焦電特性が得られる。
強誘電体低温相−高温相間の相転移を有する磁器組成物
としては、例えば次の組成物がある。
Pb{(Nb2/3Mn1/3)0.10Zr0.875Ti0.025}O3+0.5wt% MnO2+0.5wt%Cr2O3(x=0.1mol,y=0.875mol) その製造の概要としては例えばPb0、Nb2O5、MnO2、Cr2O
3、ZrO2、TiO2の化学的に高純度の粉末を用い、所定の
値となるように秤取し、ボールミル、撹拌混合機等にて
均一な混合物としたのち、例えば800℃〜950℃の温度で
仮焼成する。仮焼成した混合物は再度粉砕混合し、均一
な仮焼成粉末とする。これに有機バインダーを加え、例
えば直径20〜30mm、厚さ1〜2mmに加圧成型し、1150〜1
250℃で2時間ほど焼成を行う。これにより強誘電体低
温相−高温相間に相転移を持つ焦電性磁器組成物が得ら
れる。
複合磁器組成物を得るには上記方法によって相転移温度
の異なる焦電性磁器組成物を二つ以上製造し、これらを
再度個々に粉砕し、粉末化し、再び有機バインダーを加
え、例えば30〜40meshのフルイにて整粒をする。これら
磁器組成整粒物を混合機にて混合し、例えば直径25〜40
mm、厚さ15〜30mmに加圧成型する。脱バインダー処理と
して、600〜900℃にて3〜6時間加熱処理をし、ホット
プレス、HIP等の加熱加圧装置にて800〜1100℃、800〜1
500kg/cm2、1時間程焼結する。常圧による焼結では、
焼結温度1000℃〜1230℃にて2〜3時間ほど焼結する。
これにより、焦電性複合磁器組成物が得られる。
以上のように作成した複合焼結物は切断、研磨によっ
て、例えば直径10〜20mm、厚さ0.1〜0.5mmに加工され、
蒸着により両面に電極を付け、50℃〜150℃に加温した
シリコン油中で1〜4KV/mmの直流電圧を印加して分極処
理が行われる。
〔実施例〕
出発原料として、PbO、Nb2O5、MnO2、ZrO2、TiO2、Cr2O
3の高純度粉末を用い、これら原料を所定の割合で配合
し、ボールミルにて4時間混合し、850℃にて2時間仮
焼成した。この仮焼成物をボールミルにて12時間粉砕混
合し、10%ポリビニルアルコール水溶液を加え混練し、
1.5ton/cm2の圧力にて直径25mm、厚さ1.5mmの円板に加
圧成型した。次にこの円板を1230℃、2時間本焼成した
後、研磨加工にて直径20mm、厚さ0.5mmの円板にし、両
面に蒸着にて銀電極を付け、80℃にシリコン油中にて2K
V/mmの直流電圧を印加して分極処理を行った。
このようにして前記(2)式の組成の焦電性磁器すなわ
ちPb{(Nb2/3Mn1/3)xZryTi(1−x−y)}O3を、第
1表に番号1乃至9で示すように、xとyの比率を変え
た9種類の変成チタン酸ジルコン酸鉛磁器組成物群を調
製した。これらは強誘電体低温相−高温相間の相転移を
有し、かつ相転移温度がそれぞれ異なる。これら磁器組
成物の各特性値も参考に第1表に示されている(表中の
焦電係数(Po)は相転移温度(To)に於ける値であ
る)。
第1表の変成チタン酸ジルコン酸鉛磁器組成物群の番号
3、及び番号4の磁器組成物の焦電係数温度特性曲線は
第1図及び第2図にそれぞれ示されている。番号3、及
び番号4の磁器組成物の両者共、焦電係数Pは相転移温
度(To)にて焦電係数(Po)が鋭いピークを示してい
る。
第1表に示されるように、x=0.05〜0.2、y=0.8〜0.
95の範囲の比較的低温領域において高い焦電係数値が得
られると共に、焼成温度も1200℃前後にて焼成が可能と
なる磁器組成物を得ることができる。又、MnO2,Cr2O3
はMnO2とCr2O3を0.5乃至1.0重量パーセント加えた結
果、tanδは2%以下であった。
第2表は比較例として、x,yの値が前記範囲外にある磁
器組成物の測定値を示す。x,yの値が前記範囲外にある
ものは相転移がみられず、焦電性も観察されなかつた。
第3表は比較例として、副原料の添加率が0.5重量パー
セント未満又は1重量パーセントを超えるもののtanδ
の測定値を示す。x,yの値が前記範囲内にある磁器組成
物であっても、tanδは約3パーセント以上であった。
次に実施例1として前記番号3及び4の焦電性磁器組成
物を使用して本発明の複合磁器組成物を調整する。まず
それぞれを再度粉砕し、10%ポリビニルアルコール水溶
液を加え混練し、40meshフルイにて整粒後、2種の整粒
物を混合し、2.0ton/cm2の圧力にて直径35mm、厚さ20mm
の円柱に加圧成形した。次に脱バインダー処理として、
900℃で3時間加熱処理し、HIP装置にて加熱加圧焼結を
行うため、試料をZrO2粉末とともにHIP焼結用軟網セル
に充填した。セル内を700℃にて脱気し、セルを密封し
てアルゴン雰囲気中にて1000℃、1000kg/cm2、1時間加
熱加圧処理した。得られた複合磁器を直径20mm、厚さ0.
5mmに切断、研磨し、蒸着により両面に銀電極をつけ、8
0℃のシリコン油中にて2KV/mmの直流電圧を印加して分
極処理を行った。
さらに、実施例2として実施例1の脱バインダー処理後
の試料を常圧にて1230℃、2時間加熱処理して焼結させ
た。得られた複合磁器を直径20mm、厚さ0.5mmに切断、
研磨し、蒸着により両面に銀電極をつけ、80℃のシリコ
ン油中にて2KV/mmの直流電圧を印加して分極処理を行っ
た。
実施例3として前記番号2、3、及び4の焦電性磁器組
成物を再度個々に粉砕し、10%ポリビニルアルコール水
溶液を加え、混練し、40meshフルイにて整粒後、3種の
整粒物を混合した。その後、実施例1の方法と同様の処
理により作成して複合磁器組成物を得た。
このようにして得られた実施例1、2、及び3の焦電性
複合磁器組成物の特性値を第4表に示す(表中に焦電係
数(P)は相転移範囲内(T)に於ける値であ
る)。
上記実施例では変成チタン酸ジルコン酸鉛磁器組成物
と、同じく変成チタン酸ジルコン酸鉛磁器組成物であっ
て相転移温度が異なるもの二つ以上を焼結して複合磁器
組成物を得、広い温度領域にわたって概ね平坦な焦電係
数温度特性曲線を示す焦電性複合磁器組成物を製造する
ことができる。
実施例1及び2の複合磁器の焦電係数温度特性曲線をそ
れぞれ第3図、第4図に示す。これらの焦電性複合磁器
は、25℃、または49℃に相転移を持つ二つの焦電性磁器
組成物を焼成条件を変えて焼成した複合焼結体であり、
焦電係数Pは第3図、第4図に示すように20℃〜65℃の
温度域に於いて、二つの相転移温度のピーク値が消失し
て比較的平坦な曲線で示される焦電係数温度特性を示し
ている。
(発明の効果) 本発明による焦電性複合磁器組成物は従来の強誘電体低
温相−高温相間の相転移を持つ焦電性磁器に比べ広い温
度領域に於いて高焦電効果を維持することができ、赤外
線検出器等へ応用した場合、使用温度範囲を広くするこ
とができる。
又、本発明による焦電性複合磁器組成物での製造方法に
よれば相転移温度が異なる二つ以上のチタン酸ジルコン
酸鉛磁器を混合し焼結して、それぞれの相転移による焦
電効果を利用して広い温度領域において、比較的平坦な
焦電係数温度特性曲線をとるようにした焦電性複合磁器
組成物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、番号3の、第2図は番号4の焦電性磁器組成
物の焦電係数温度特性曲線で、図中のToは相転移点(ま
たは相転移温度)、Poは相転移点に於ける焦電係数であ
る。 第3図は実施例1の焦電性複合組成磁器の焦電係数温度
特性曲線で、図中のTは相転移の範囲を示し、破線か
ら上の部分に複合組成に基づく略平坦な曲線によって焦
電係数特性が示されている。 第4図は実施例2の焦電性複合組成磁器の焦電係数温度
特性曲線で、図中のTは相転移の範囲を示し、破線か
ら上の部分に複合組成に基づく概ね平坦な曲線によって
焦電係数温度特性が示されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中塚 宏 静岡県静岡市緑町8―6 (72)発明者 桑原 啓至 静岡県富士宮市星山85―231 (72)発明者 斉藤 昭三 静岡県静岡市緑が丘町18―2 (72)発明者 杉山 治 静岡県静岡市高松2449 (72)発明者 萱沼 広行 静岡県静岡市新間393―1 螢ケ丘団地ゆ り棟205号 (56)参考文献 特開 昭62−241825(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Pb{(Nb2/3Mn1/3)xZryTi(1−x−
    y)}O3の組成式で表わされ、式中のx,yはx=0.05〜
    0.20、y=0.80〜0.95、かつx+y≦1となる範囲で定
    められる組成物に、該組成物に対して0.5〜1.0重量パー
    セントのMnO2、又はCr2O3、又はMnO2とCr2O3との混合物
    を混合して焼成した焦電性磁器組成物であって、強誘電
    体低温相−高温相間の相転移を有する前記焦電性磁器組
    成物の、少なくとも二つ以上から成る群より選んだ、相
    転移温度の異なる二つ以上の焦電性磁器組成物を混合し
    て焼結することを特徴とする焦電性複合磁器組成物の製
    造方法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の方法で製造し
    た焦電性複合磁器組成物。
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