JPH0688210A - メタリック調樹脂ボールチェーンの製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 紐部材と樹脂ボール部材よりなる樹脂ボール
チェーンに各種メタリック化処理を施しても、紐部材の
柔軟性と染色による色調を損なうことなく、樹脂ボール
部材のみの表面に金属被覆層を形成して金属光沢を付与
し、ボール部材のメタリック色と紐部材の色とが調和し
た美麗なメタリック調樹脂ボールチェーンを提供する。 【構成】 粘着テープ、両面テープ、面ファスナー等の
相互に接着又は接合し得る２枚の細長いマスキング材５
ａ，５ｂに、樹脂ボールチェーン１のボール部材３間の
間隔と同一間隔で該ボール部材が通る程度の大きさの孔
６を穿設しておき、この間にボール部材が孔の箇所に配
置されるように位置せしめて貼り合わせ、紐部材２を両
側から貼り合わされたマスキング材によってマスキング
する。このように露出した紐部材をマスキングした状態
でアンダーコート、金属被覆及びトップコートの各処理
を施す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、メタリック調樹脂ボー
ルチェーンの製造方法に関し、さらに詳しくは、紐部材
の柔軟性を損なうことなく、樹脂ボール部材のみの表面
に金属被覆層を形成して金属光沢を付与し、ボール部材
のメタリック色と紐部材の色とが調和した美麗なメタリ
ック調樹脂ボールチェーンを製造する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術と発明が解決しようとする課題】樹脂ボー
ルチェーン１は、図１に示すように、化学繊維の撚糸等
から成る紐部材２に等間隔で樹脂ボール部材３を射出成
形等により形成固着したもので、軽量で柔軟性があり、
カーテン、ブラインド等の所謂インテリア用品における
開閉操作用のボールチェーンなどとして広く用いられて
いる。従来の樹脂ボールチェーンは、染色された紐部材
を連結部として、これに顔料を混合した溶融合成樹脂材
料（ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート等）を射
出成形してボール部材を成形固着することによって製品
化されており、樹脂ボール部材は顔料着色のため、光沢
等はなく、見映えがあまり良くないためインテリア用品
として充分に満足し得るものではなかった。

【０００３】本出願人は、合成樹脂成形品に金属被覆を
施してメタリック化する方法を開発し、既に特許出願し
ている（特開平４−９３２３９号）。ボール部材をメタ
リック化するためにこの方法を樹脂ボールチェーンに適
用した場合、例えばウレタン系アンダーコート処理後、
アルミニウムをイオンプレーティングして金属光沢を出
し、その後、アルミニウム膜を保護するためにウレタン
系トップコートを施した場合、ボール部のメタリック化
はできるが、紐部材はアンダーコートとトップコートの
処理の際のコーティング液の浸透、加熱硬化によって硬
化し、柔軟性が損われると共に、予め染色されていた紐
部材の色も変化してしまう。このため、樹脂ボールチェ
ーンの柔軟性と商品価値を低下させるという問題があっ
た。

【０００４】従って、本発明の目的は、前記したような
問題を解消し、紐部材と樹脂ボール部材より成る樹脂ボ
ールチェーンに各種メタリック化処理を施しても、紐部
材の柔軟性と染色による色調を損なうことなく、樹脂ボ
ール部材のみの表面に金属被覆層を形成して金属光沢を
付与し、ボール部材のメタリック色と紐部材の色とが調
和した非常に美麗なメタリック調樹脂ボールチェーンを
提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段及び作用】前記目的を達成
するために、本発明によれば、紐部材と該紐部材に一定
の間隔で固定された樹脂ボール部材とから成る樹脂ボー
ルチェーンに金属被覆層を形成するに際して、紐部材を
マスキングした状態で、樹脂ボール部材に必要に応じて
アンダーコートを施した後、金属被覆及びトップコート
を施すことを特徴とするメタリック調樹脂ボールチェー
ンの製造方法が提供される。このように、樹脂ボールチ
ェーンにアンダーコート、金属被覆及びトップコートを
施す際に紐部材をマスキングすることにより、紐部材へ
のコーティング液の浸透及びその後の熱処理時の加熱硬
化並びに金属被覆を防ぎ、紐部材の硬化と変色を防止す
ることができる。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の実施例を示す添付図面を参照
しながら本発明について具体的に説明する。まず、樹脂
ボールチェーンのボール部材への金属被覆層の形成処理
に先だって、紐部材をマスキングする。マスキング方法
としては、まず第一の方法として、図２に示すように、
樹脂ボールチェーン１の紐部材２の各ボール部材３間に
露出している部分を、粘着性のあるテープ等のマスキン
グ材４で包む方法が挙げられる。しかしながら、この方
法ではマスキング作業が繁煩であるため、作業性の点か
ら見れば以下に述べるようなマスキング方法が好適であ
る。

【０００７】図３は第二のマスキング方法を示すもので
あり、粘着テープ、両面テープ、面ファスナー等の相互
に接着又は接合し得る２枚の細長いマスキング材５ａ，
５ｂに、樹脂ボールチェーン１のボール部材３間の間隔
と同一間隔で該ボール部材３が通る程度の大きさの孔６
（円形、多角形等任意の形状でよい）を穿設しておき、
この間にボール部材３が孔６の箇所に配置されるように
位置せしめて貼り合わせ、紐部材２を両側から貼り合わ
されたマスキング材５ａ，５ｂによってマスキングす
る。

【０００８】図４は処理用の治具自体にマスキング材を
取り付ける第三のマスキング方法を示す。図４に示すよ
うに、治具の周囲に、樹脂ボールチェーン１の露出して
いる紐部材２の長さと略同一の巾を有する枠材８をボー
ル部材３の長さと略同一の間隙を置いて平行に多数配設
した円筒枠体状の治具７を用い、該治具７の周囲に樹脂
ボールチェーン１をボール部材３が上記枠材８間の間隙
に配置されるように巻き付ける。次いで、上記枠材８と
同じ巾を有する各種材質のテープや金属箔等の細長いマ
スキング材９を治具７の各枠材８に取り付け、図５に示
すように治具７の枠材８とマスキング材９とで樹脂ボー
ルチェーン１の露出している紐部材２を挟み、マスキン
グする。なお、枠材８の表面に粘着層を形成しておき、
これに柔軟なテープ状のマスキング材９を貼り合わせて
紐部材２をより緻密にマスキングすることもできる。

【０００９】図６及び図７は第四のマスキング方法を示
し、図６に示すように、枠体１１の一側部に、樹脂ボー
ルチェーンの露出している紐部材２の長さと略同一の巾
を有しかつ紐部材２の断面半分と略等しい大きさの切欠
き１３が形成された挟持部１２を、ボール部材３の長さ
と略同一の間隙を置いて等間隔に配置された一対のマス
キング治具１０を用い、図７に示すように、上記挟持部
１２の切欠き１３の部分に樹脂ボールチェーンの紐部材
２が位置するように、紐部材２を両側から挟み込んでマ
スキングする。なお、前記したマスキング方法は、本発
明に用いられるマスキング方法の好適な例を例示したも
のであって、当然のことながらこれらの方法に限定され
るものではなく、他のマスキング方法も採用できる。

【００１０】以上のように、樹脂ボールチェーンの露出
した紐部材をマスキングした状態で、次のアンダーコー
ト、金属被覆及びトップコートの各処理を施す。金属被
覆層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、イオンプ
レーティング法、スパッタリング法、ＣＶＤ法などが挙
げられる。これらの手段によって、例えばアルミニウ
ム、クロム、ニッケル、ステンレス、金、銀、銅、真鍮
等の金属又は合金を薄膜状に蒸着形成させ、金属被覆層
を形成するものである。このような金属被覆層は、一般
にアンダーコート層の上に設け、かつその表面にトップ
コート層が設けられるが、金属被覆層、アンダーコート
層、金属被覆層、トップコート層を順次設けるような構
成としてもよい。

【００１１】上記アンダーコート層及びトップコート層
に用いる塗料としては、アクリル系、ウレタン系、ポリ
エステル系、尿素−メラニン系、エポキシ系、アミノア
ルキド系、ポリイソシアネート系、アルキルチタネート
系等の熱反応性、電子線硬化性、紫外線硬化性の合成樹
脂又はニトロセルローズ等よりなる塗料などを用いるこ
とができる。アンダーコート施工に際しては、上記のよ
うに樹脂ボールチェーン１の露出している紐部材２がマ
スキングされた状態で、樹脂ボール部材３の基体表面又
はその上に形成された金属被覆層に吹付けて形成し、そ
の後乾燥することにより基体表面又は金属被覆層に対し
て密着力に優れたものとなる。また、トップコートは、
金属被覆層に吹付け乾燥して施工し、これにより優れた
金属光沢を与えると共に密着性、耐洗濯性を高めるもの
である。ここで、トップコート層は下の金属被覆層の色
調を透視できるように透明又は半透明のものであること
が必要であるが、透視に支障のないような任意の色に着
色されていてもよい。例えば、銀色の光沢を呈している
アルミニウムの金属被覆層の上に、黄色に着色したトッ
プコート層を施すことにより、金色の金属特有の光沢を
呈するボール部材を有する樹脂ボールチェーンを得るこ
とができる。また、アルミニウムの金属被覆層に緑色に
着色したトップコート層を施すことにより緑色の金属特
有の光沢を出すことができる。このように、ベースとな
る色の光沢を持った金属被覆層に透視に支障のないよう
に種々の色に着色したトップコート層を施すことによ
り、その色に相応する金属特有の光沢を呈するボール部
材を有する樹脂ボールチェーンを得ることができる。

【００１２】次に、本発明におけるボール部材への金属
被覆層の形成をイオンプレーティング法を例にとって説
明する。まず、前記のように樹脂ボールチェーン１の露
出している紐部材２をマスキングした状態でアンダーコ
ートを施す。このアンダーコート層は、樹脂ボール部材
の表面に微細な凹凸等があって光沢が劣るような場合に
施すものである。一般に樹脂ボール部材は射出成形によ
り成形されており、それに用いる金型キャビティ内面は
鏡面に形成されていないために通常０．５μｍ程度の凹
凸面を有する。従って、成形されたボール部材の表面も
同じような凹凸面となっており、これに直接０．１μｍ
以下の膜厚の金属被覆層を形成した場合、金属特有の表
面光沢が得られなくなる。従って、金属被覆層の形成に
先だってアンダーコートを施すことが好ましい。但し、
前記したように金属被覆層の上にさらにアンダーコート
層を形成する場合、又は金属光沢が必要でない場合には
基材表面へのアンダーコート施工を省くことができる。

【００１３】次に、イオンプレーティングにおいては、
まず真空装置内にガス導入管より例えばアルゴンガスな
どの不活性ガスを導入し、前記ボール部材の基体あるい
はその表面にアンダーコート層を形成したものを基材と
し、これを陰極として装置内に所定金属材料からなる蒸
発源と対向して配置し、両者間に電圧を印加して、蒸発
源より所定金属材料の原子、分子、クラスターを蒸発さ
せ、これらを基材と蒸発源との間に配置された高周波用
コイルに電圧をかけることにより発生する高周波電界に
よってイオンし、高エネルギーイオンを基材表面に照射
することで、基材の表面に金属薄膜を形成するものであ
る。ここで高エネルギーイオンを高周波電界によって加
速して、基材面に衝突させることにより、粒子のもつ大
きなエネルギーによって衝突部が局部的に超高温に加熱
され、粒子が基材面に強力に密着する。更にイオン衝撃
によりイオン注入と、それに伴うミキシングにより、所
定金属材料からなる金属薄膜の原子に大きなエネルギー
を与えることにより、金属層格子原子は激しく運動し、
その結果、高い密度の欠陥を表面や界面につくり、密着
度がよく丈夫な金属被覆層を形成することになる。ま
た、上記アンダーコート層又は金属被覆層の形成前に、
基材表面の油脂層又は不純物を超音波洗浄、エッチング
などを施して除去することにより、活性でクリーンな樹
脂表面を得ることができ、アンダーコート層又は金属被
覆層の密着に悪影響を与える要因を除去することができ
る。

【００１４】なお、上記において蒸発源をアルミニウム
にしてボール部材表面に直接蒸着した場合、前記したよ
うに、例えば０．１μｍ以下のアルミニウムからなる金
属薄膜は、合成樹脂からなるボール部材の表面粗さが
０．１μｍを超えると灰白色となり、金属特有の表面光
沢を有した表面が得られ難いが、これにアルミニウムと
密着力のよい下塗り塗料（例えば主剤としてポリエステ
ルポリオール、硬化剤としてポリイソシアネート）を使
用してアンダーコートし、その後さらにアルミニウムか
らなる金属薄膜を形成することにより、金属特有の光沢
のある銀色を得ることができる。さらに金属薄膜を保護
するため、上塗り塗料を塗布することにより、密着性、
耐摩耗性に優れ、ボール部材が金属特有の表面光沢を有
する樹脂ボールチェーンが得られる。

【００１５】次に、本発明のメタリック調樹脂ボールチ
ェーンの製造の具体例について説明すると、まず図１に
示すような紐部材２上に等間隔でボール部材３を射出成
形することにより製造された樹脂ボールチェーン１の露
出されている紐部材２を、図２乃至図７に示す種々の方
法でマスキングした。次いで、この状態の樹脂ボールチ
ェーンを、溶剤（フロン、トリクレン等）により超音波
洗浄し、その後、溶液型ポリエステル１００部、ポリイ
ソシアネート３０部を配合した下塗り塗料をスプレーガ
ンにて吹付け、熱風９０℃で６０分間加熱硬化させた。
次いで、高周波イオンプレーティング法により膜厚０．
０５〜０．１μｍのアルミニウムからなる金属薄膜を形
成し、この表面に溶液型ポリエステル１００部、ポリイ
ソシアネート１０部に黄色染料を混合して配合した上塗
り塗料をスプレーガンにて吹付け、熱風７０℃で６０分
間加熱硬化して、耐性のある金色の表面層を合成樹脂材
料からなるボール部材の表面に形成した。いずれの方法
によっても、得られた樹脂ボールチェーンは、紐部材は
柔軟性を保持していると共に上記処理前の染色による色
調を保有したままで何ら変色しておらず、一方、ボール
部材は図８に示すように樹脂基材１４の表面に順次、ア
ンダーコート層１５、金属被覆層１６及びトップコート
層１７が形成されており、その表面は金色の金属光沢を
有し、このボール部材の金色のメタリックカラーと紐部
材の染色による藍色とが調和した美麗な外観を呈し、し
かも柔軟性を保持していた。

【００１６】

【発明の効果】以上のように、本発明のメタリック調樹
脂ボールチェーンの製造方法においては、紐部材をマス
キングした状態でアンダーコート、金属被覆層の形成及
びトップコートの各処理を行うものであるため、従来の
ように紐部材へのコーティング液の浸透及びその後の接
着性向上のための熱処理時の硬化や変色が防止され、紐
部材の柔軟性が保持されると共に、ボール部材の金、銀
その他のメタリックカラーと上記処理によっても色が未
変化の紐部材の予め染色された色調とが調和した非常に
美麗な樹脂ボールチェーンが得られる。従って、樹脂ボ
ールチェーンの持つ柔軟性と美麗な外観とによりその商
品価値を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】樹脂ボールチェーンの部分斜視図である。

【図２】本発明に従って樹脂ボールチェーンの露出した
紐部材にマスキングを施した一実施例を示す部分断面図
である。

【図３】本発明に従って樹脂ボールチェーンの露出した
紐部材をマスキングした他の実施例を示す部分斜視図で
ある。

【図４】治具周囲に巻回した樹脂ボールチェーンの紐部
材をマスキングした別の実施例を示す斜視図である。

【図５】図４の治具周囲枠材に巻き付けた樹脂ボールチ
ェーンの紐部材にマスキング材を重ね合わせた部分の部
分縦断面図である。

【図６】本発明に用いるマスキング治具の他の実施例を
示す部分斜視図である。

【図７】図６に示すマスキング治具を用いて樹脂ボール
チェーンの紐部材をマスキングした状態を示す部分断面
図である。

【図８】実施例により得られた樹脂ボールチェーンのボ
ール部材の部分断面図である。

【符号の説明】

１ 樹脂ボールチェーン、２ 紐部材、３ ボール部
材、４，５ａ，５ｂ，９マスキング材、６ 孔、７ 治
具、８ 枠材、１０ マスキング治具、１１枠体、１２
挟持部、１３ 切欠き、１４ ボール部材の基材、１
５ アンダーコート層、１６ 金属被覆層、１７ トッ
プコート層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 紐部材と該紐部材に一定の間隔で固定さ
   れた樹脂ボール部材とから成る樹脂ボールチェーンに金
   属被覆層を形成するに際して、紐部材をマスキングした
   状態で、樹脂ボール部材に必要に応じてアンダーコート
   を施した後、金属被覆及びトップコートを施すことを特
   徴とするメタリック調樹脂ボールチェーンの製造方法。