JPH0686630B2 - 磁束密度の高い一方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の高い一方向性珪素鋼板の製造方法

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JPH0686630B2
JPH0686630B2 JP63109880A JP10988088A JPH0686630B2 JP H0686630 B2 JPH0686630 B2 JP H0686630B2 JP 63109880 A JP63109880 A JP 63109880A JP 10988088 A JP10988088 A JP 10988088A JP H0686630 B2 JPH0686630 B2 JP H0686630B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、電機器の鉄心に用いられる一方向性珪素鋼板
の製造における基本冶金現象として利用するところの、
二次再結晶の発現に対して有効な析出物(一般にインヒ
ビターと呼ばれている)として、新規な成分組合せを提
示し、これにより磁束密度の高い一方向性珪素鋼板の製
造を可能にするものである。
〔従来の技術〕
一方向性珪素鋼板は鋼板面が{110}面で、圧延方向が
〈100〉軸を有するいわゆるゴス方位(ミラー指数で{1
10}〈001〉方位を表わす)を持つ結晶粒から構成され
ており、軟磁性材料として変圧器および発電機用の鉄心
に使用される。この鋼板は磁気特性として磁化特性と鉄
損特性が良好でなければならない。磁化特性の良否はか
けられた一定の磁場中で鉄心内に誘起される磁束密度の
高低で決まり、磁束密度の高い製品では鉄心を小型化出
来る。磁束密度の高さは鋼板結晶粒の方位を{110}〈0
01〉に高度に揃えることによって達成出来る。
鉄損は鉄心に所定の交流磁場を与えた場合に熱エネルギ
ーとして消費される電力損失であり、その良否に対して
磁束密度、板厚、不純物量、比抵抗、結晶粒大きさ等が
影響する。
磁束密度の高い鋼板は電気機器の鉄心を小さく出来、ま
た鉄損も少なくなるので望ましく、当該技術分野では出
来る限り磁束密度の高い製品を安いコストで製造する方
法の開発が課題である。
特に最近は磁区細分化技術が開発され、高い磁束密度を
有する材料ほど低い鉄損値のものが得られるようになっ
てきている。
ところで、一方向性珪素鋼板は、熱延板を適切な冷延と
焼鈍との組合せにより最終板厚になった鋼板を仕上焼鈍
することにより{110}〈001〉方向を有する一次再結晶
粒を選択成長させる、いわゆる二次再結晶によって得ら
れる。二次再結晶は二次再結晶前の鋼板中に微細な析出
物、例えばMnS,AlN,MnSe,Cu2S,(Al,Si)N等が存在す
ること、あるいはSn,Sb等の粒界存在型の元素が存在す
ることによって達成される。これら析出物、粒界存在型
の元素はJ.E.May and D.Turnbull(Trans.Het.Soc.AIME
212(1958) p769/781)によって説明されているよう
に仕上焼鈍工程で{110}〈001〉方位以外の一次再結晶
粒の成長を抑え、{110}〈001〉方位粒を選択的に成長
させる機能を持つ。このような粒成長の抑制効果は一般
にはインヒビター効果と呼ばれている。したがって当該
分野の研究開発の重点課題はいかなる種類の析出物、あ
るいは粒界存在型の元素を用いて二次再結晶を安定させ
るか、そして正確な{110}〈001〉方位粒の存在割合を
高めるためにそれらの適切な存在状態をいかに達成する
かにある。特に、最近では一種類の析出物による方法で
は{110}〈001〉方位の高度の制御に限界があるため、
各析出物について短所・長所を深く解明することによ
り、いくつかの析出物を有機的に組合せて、より磁束密
度の高い製品を安定に、かつコスト安く製造出来る技術
開発が進められている。
析出物の種類として、M.F.Littmannは特公昭30-3651
に、J.E.May and D.TurnbullはTrans Met.Soc.AIME 212
(1958)p769/781にMnSを、田口、板倉は特公昭33-4710
にAlNとMnSを、FiedlerはTransはTrans,Met.Soc AIME 2
21(1961) p1201〜1205にVNを、今中らは特公昭51-134
69にMnSe,Sbを、J.A.Salsgiverは特開昭57-45818号公報
にAlNと硫化銅を、小松らは特願昭60-179855に(Al,S
i)Nを開示しており、その他TiS,CrS,CrC,NbC,SiO2
が知られている。又粒界存在型の元素として「日本金属
学会誌」27(1963)p186斎藤達雄にAs,Sn,Sb等が述べら
れているが工業生産においてはこれら元素単独で使用さ
れる例は無く、いずれも析出物と共存させてその補助的
効果を狙って使用されている。さらに特徴のあるインヒ
ビターとして、H.grenobleによる米国特許第3,905,842
号(1975),H.Fiedlerによる米国特許第3,905,843号(1
975)がある。すなわち固溶のS,B,Nを適当量だけ存在さ
せることによって、磁束密度の高い一方向性珪素鋼板の
製造を可能にしている。二次再結晶に効果のある析出物
の選択基準は必ずしも明らかにされていないが、その代
表的見解が松岡により「鉄と鋼」53(1967) p1007〜10
23に述べられている。要約すると (1)大きさは0.1μm程度 (2)必要容積は0.1vol%以上 (3)二次再結晶温度範囲で完全に溶けてしまっても全
く溶けなくても不可であり適当な程度固溶する である。上記各種析出物はこれら条件に当てはまる部分
もあるが、全ての現象がこの条件に当てはまるわけでは
無い。最近の冷間圧延以降において鋼板を窒化する方法
においては、上記(1)は重要な意味をもたないことが
分った。この様に現状では析出物の選択をする際の指導
原理は確立しておらず、試行錯誤の繰り返しで、新しい
インヒビター制御技術が探索されている。いずれにして
も高い磁束密度({110}〈001〉方位の高集積度)を得
るためには析出物を微細で均一かつ多量に仕上高温焼鈍
前の鋼板中に存在させる事が必要であり、析出物の制御
と同時にその析出物の特性に合致すべく圧延、熱処理の
適切な組合せにより二次再結晶前の性状を調整する事が
重要である。
〔発明が解決しようとする課題〕
現在、工業生産されている代表的な一方向性珪素鋼板製
造方法として3種類あるが、各々については長所・短所
がある。第一の技術はM.F Littmannによる特公昭30-365
1号公報に示されたMnSを用いた二回冷延工程であり、得
られる二次再結晶粒は安定して発達するが、高い磁束密
度が得られない。第二の技術は田口等による特公昭40-1
5644号公報に示されたAlN+MnSを用いた最終冷延を80%
以上の強圧下率とするプロセスであり、高い磁束密度は
得られるが、工業生産に際してその製造条件の適切範囲
が狭く最高磁性の製品の安定生産に欠ける。第三の技術
は今中等による特公昭51-13469号公報に示されたMnS
(および/またはMnSe)+Sbを含有する珪素鋼を二回冷
延工程によって製造するプロセスであり、比較的に高い
磁束密度は得られるが、Sb,Seのような有害でかつ高価
な元素を使用し、しかも二回冷延法であることから製造
コストが高くなる。上記3種類の技術においては共通し
て次のような問題がある。すなわち、上記技術はいずれ
もが析出物を微細、均一に制御する技術として熱延に先
立つスラブ加熱温度を第一の技術では1260℃以上、第二
の技術では特開昭48-51852号公報に示すように素材Si量
によるが3%Siの場合で1350℃、第三の技術では特開昭
51-20716号公報に示されるように1230℃以上、高い磁束
密度の得られた実施例では1320℃といった極めて高い温
度にすることによって粗大に存在する析出物を一旦固溶
させ、その後の熱延中、あるいは熱処理中に析出させて
いる。スラブ加熱温度を上げることはスラブ加熱時の使
用エネルギーの増大、ノロの発生による歩留り低下およ
び加熱炉補修費の増大ならびに加熱炉補修頻度の増大に
起因する設備稼働率の低下、さらには特公昭57-41526号
公報に示されるように線状二次再結晶不良が発生するた
めに連続鋳造スラブが使用出来ないという問題がある。
しかしこのようなコスト上の問題以上に重要なことは、
鉄損向上のためにSiを多く、成品板厚を薄く、といった
手段を採るとこの線状二次再結晶不良の発生が増大し、
高温スラブ加熱法を前提にした技術では将来の鉄損向上
に希望を持てない。これに対し特公昭61-60896号公報に
開示されている技術では鋼中のSを少なくすることによ
って二次再結晶が極めて安定し、高Si薄手成品を可能に
した。しかしこの技術は量産規模で工場生産する上で磁
束密度の安定性に問題があり、例えば特開昭62-40315号
公報に開示されているような改良技術が提案されている
が今まで完全に解決するに至っていない。
以上の技術とは別にH.grenobleによる米国特許第3,905,
842号、H.Fiedlerによる米国特許第3,905,843号がある
が、この技術は本質的に矛盾があり工業生産されていな
い。すなわち、この技術ではインヒビターとして固溶S
が中心であるため、固溶S確保のためにMnを下げて、Mn
Sを形成させない事が必須である。具体的にはMn/S2.1
が必要である。ところで固溶SおよびSeは材料の靱性に
極めて悪影響を持つことは広く知られている。したがっ
てSi量が多く割れ易い一方向性珪素鋼板ではこのような
固溶S或いはSeのある状態で冷間圧延することは、工業
生産では極めて困難である。以上に詳述したように、コ
ストを低く、特性的には高い磁束密度でしかも将来の低
鉄損の可能性の大きい高Si、薄手成品も満足させるため
にはインヒビター設計を再構築する必要がある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は溶鋼中のS又はSe又はその複合量を一定量
以下に少なくし、しかも固溶S又はSeを少なくする条件
下で適当量のAlとN、及びBとTiを複合して含有させた
素材を通常の1回又は2回の冷延工程で最終板厚とし、
脱炭焼鈍、焼鈍分離剤塗布、仕上焼鈍を行なうプロセス
を採るとともに最終冷延から仕上焼鈍での二次再結晶開
始までの昇温段階の間に窒化処理を行うことにより、極
めて磁束密度の高い一方向性珪素鋼板を製造することに
成功した。
この結果、磁区制御技術との組合せにより、従来にもま
して鉄損値の低い材料を得ることが可能となった。
本発明を特徴づける構成条件について説明する。S又は
Se量が多くなると成品長手方向に線状二次再結晶不良が
増加し安定生産が出来ない。この傾向は特にSiが3.2%
(以下%は全て重量%である)を超えた高Si範囲で、又
0.23mm(9mil成品)以下の薄手成品で顕著になる。この
様な線状二次再結晶不良が全く発生しないS+Seの含有
量の上限値として0.012%を限定した。この限定範囲の
中でも本発明では従来有効であるとされていたS又はSe
量が多くなるとむしろ磁束密度は劣化し、少ないもの程
良好な磁束密度となるが、現状の溶製技術ではコストを
高くせずに下げ得る範囲として0.0005%以上が一般的で
ある。次に本発明ではコストを下げるため熱延および冷
延時の圧延割れを皆無にすることを狙っており、固溶S
又はSeによる割れを防ぐためMn/S+Se≧4とすることに
より鋼中に存在する微量S,Seを出来るだけMnS,MnSeとし
て固着することにしてある。
第1図はC:0.053%、Si:3.35%、P:0.030%、Al:0.030
%、N:0.0075%、B:0.0039%、Ti:0.0038%を含有し、
更にMn0.04%と0.12%を含んだ溶鋼にS量を変えた50kg
インゴットを1360℃と1150℃に加熱した後、熱間圧延し
た後の熱延板端部の割れを示したものである。Mn/S≧4
で急激に割れが減少し、特にMnSを固溶させない1150℃
の低温スラブ加熱材ではほとんど割れは発生しない。
なお、第2図(a)(b)は第1図の端部における熱延
板形状を表わす写真であり、同図(a)は第1図におい
て、Mn/S=2におけるスラブ加熱温度1350℃の場合の状
態を示し、同図(b)はMn/S=14の場合の状態(スラブ
加熱温度1350℃の場合(1150℃の場合も殆んど同様))
を示す。
次にBの効果について説明する。
C:0.053%、Si:3.25%、Mn:0.14%、S:0.007%、Ti:0.0
030%、P:0.023%、Al:0.028%、N:0.0085%にBを0.00
02〜0.0095%を含有する50kgインゴットを1150℃に加熱
後2.0mmの熱延板とした。1120℃×3minの熱延板焼鈍後
0.20mmに冷延し、810℃,830℃,850℃,870℃,890℃,910
℃で脱炭焼鈍し、窒化フェロマンガンを含有するMgOを
塗布後に1200℃の二次再結晶焼鈍を行なった。この結果
を第3図に示す。図から脱炭焼鈍温度を上げると磁束密
度B8は上るが、Bの少ないものは細粒が発生し易く、か
つB8の最高値が小さいことが分る。一方多すぎても高B8
が得られず、適性範囲は0.0005〜0.0080%である。
第4図はBとTiを複合添加した場合の結果を示したもの
である。
C:0.048%、Si:3.30%、Mn:0.100%、S:0.008%、P:0.0
25%、Al:0.032%、N:0.0075〜0.0092%を基本成分とし
これにTiを0.0010〜0.0180%、Bを0.0002〜0.0090%の
範囲で複合添加した50kgインゴットを1150℃に加熱後2.
0mmの熱延板を造った。これを1120℃×3minの熱延板焼
鈍をした後0.20mmに冷延し、850℃で脱炭焼鈍をし、窒
化フェロマンガンを含有するMgOを塗布後に1200℃の二
次再結晶焼鈍を行なった。
第4図によれば、B(8):1.93T以上の高磁束密度のものが
Ti0.0020〜0.0120%、B0.0005〜0.0080%の範囲で複合
添加した場合に得られることが明らかになった。
このBとTiの効果は冷間圧延以降に鋼板が窒化される場
合に意味があり恐らく微細なBN或はTiNが効果を持つと
考えられる。N:0.0010%未満では二次再結晶粒の発達が
悪くなる。0.0120%を超えるとブリスターと呼ばれる鋼
板のふくれが発生する。
次にAlはNと結合してAlNとなるが、本発明では後工程
で窒化によりAlを含む化合物を形成させることを必須と
しているためそのフリーのAlが一定量以上必要である。
そのためには、Alの適正範囲は0.012〜0.050%必要であ
る。
なお、以上の成分の他に、Cは0.025〜0.075%の範囲が
好ましい。
C含有量が0.025%未満では、二次再結晶が不安定にな
りかつ、二次再結晶した場合でも製品の磁束密度が低
い。一方、C含有量が0.075%を超えると、脱炭焼鈍時
間が長くなり、生産性を阻害する。
また、Mnの含有量は、Sの含有量との関係において、上
述した如く、Mn/S≧4.0で熱延板の耳割れを防止すると
いう観点からは十分であるが、Mn含有量の上限は0.45%
が好ましい。0.45%を超えると、皮膜欠陥が出る。
スラブ加熱温度については、従来のようにインヒビター
を固溶する高温スラブ加熱でも、また殆んど従来では無
理と考えられていた普通鋼並の低温スラブ加熱でも二次
再結晶は行なわれる。しかし第1図に示した様に熱延の
割れが少なく出来る事、又当然の事として熱エネルギー
が少ない低温スラブ加熱が有利である事からノロの発生
しない1200℃以下が望ましい。
熱延以降の工程においては、最も高いB8を得るために短
時間の焼鈍後80%以上の高圧延率の冷延によって最終板
厚にする方法が望ましい。しかし特性はやや劣るが低コ
ストとするために熱延板焼鈍を省略してもよい。又最終
成品の結晶粒を小さくするため中間焼鈍を含む工程でも
可能である。
次に湿水素或いは湿水素、窒素混合雰囲気ガス中で脱炭
焼鈍をする。このときの温度は特にこだわらないが800
℃〜900℃が好ましい範囲である。
なお、このときの雰囲気の露点は+30℃以上が好まし
い。
次いで焼鈍分離剤を塗布し高温(通常1100℃〜1200℃)
長時間の仕上げ焼鈍を行なう。本願の窒化における最も
好ましい実施態様は、上記仕上げ焼鈍の昇温過程におい
て窒化する事であり、これにより二次再結晶に必要なイ
ンヒビターを作り込む事ができる。これを達成するため
に焼鈍分離剤中に窒化能のある化合物、例えばMnN,CrN
等を適当量添加するか或いはNH3等の窒化能のある気体
を雰囲気ガス中に添加する。第5図は、脱炭焼鈍後の銅
板(a)と、MnNを添加した焼鈍分離剤を脱炭焼鈍後の
鋼板に塗布して仕上焼鈍を行なう(仕上焼鈍初期段階に
MnNにより鋼板を窒化する)ときの昇温過程1000℃にお
ける鋼板(b)のインヒビターを観察したものである。
鋼板(b)において、インヒビターが著しく増えている
ことが判る。なお、本発明における窒化の他の実施態様
として、脱炭焼鈍時均熱以降で窒化能のある気体の雰囲
気で窒化するか、又は、脱炭焼鈍後別途設けたNH3等の
雰囲気を有する熱処理炉に通過せしめて窒化してもよ
く、以上の手段の組合せでもよい。
二次再結晶完了後は水素雰囲気中において純化焼鈍を行
なう。
〔実施例〕
(1)C:0.055%、Si:3.3%、Mn:0.14%、P:0.030%、
S:0.007%、Ti:0.0040%、Cr:0.12%、Al:0.030%、N:
0.0080%、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素鋼に
Bを下表に記した添加量のスラブを1150℃で加熱し2.0m
mの熱延板を造った。これを1100℃×2分の焼鈍をし、
1回の冷延で0.20mmとし850℃×90秒の脱炭焼鈍を60℃
の湿水素窒素混合ガス中で行なった。次にMgO中にTiO2
3%とフェロ窒化マンガン5重量%を添加した焼鈍分離
剤(a)とMgOとTiO23%のみの焼鈍分離剤(b)の二
種類に塗り分け、10℃/hrの昇温速度で1200℃に加熱
し、20時間の焼鈍をした。
この時の雰囲気ガスは1200℃までの昇温過程ではN225%
とH275%の混合ガスを使用し、1200℃の均熱時はH2100
%とした。焼鈍分離剤中に窒化源となるフェロ窒化マン
ガンを添加したものはいずれも二次再結晶をし、Bを添
加した材料では、いずれも極めて高い磁束密度が得られ
た。一方フェロ窒化マンガンを添加しないものはいずれ
も二次再結晶不良となった。結果を下表に示す。
(2)C:0.048%、Si:3.25%、Mn:0.12%、P:0.025%、
Cr:0.14%、Ti:0.0030%、Al:0.028%、N:0.0070%、B:
0.0030%、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素鋼の
Sの含有量を(a)0.003%、(b)0.009%、(c)0.
018%に変えたスラブを1200℃で加熱し1.8mmの熱延板を
造った。これを1100℃×2分の焼鈍を行い、1回の冷延
で0.18mmとし、830℃×90秒の脱炭焼鈍を55℃の湿水素
窒素混合ガス中で行い、MgO中に7重量%のフェロ窒化
マンガンを添加した焼鈍分離剤を塗布し、15℃/hrの昇
温速度で1200℃に加熱し、20時間の焼鈍を行なった。こ
の時の雰囲気ガスは実施例1と同じである。
結果を次に示す。
Sの含有量が多いと高磁束密度が得られない。
(3)C:0.045%、Si:3.50%、Mn:0.16%、P:0.035%、
Al 0.028%、N:0.0080%、Ti:0.0040%、B:0.0035%、
残部Fe及び不可避的不純物からなる溶鋼にSeを(a)0.
0050%、(b)0.0100%、(c)0.0200%添加したスラ
ブを1150℃で加熱熱延し2.0mmの熱延板を造った。
これを1150℃×2分+900℃×2分の熱延板焼鈍した後
急冷却し、酸洗し0.20mmまで冷延した。
この後、830℃×90秒の脱炭焼鈍をし、MgOに5重量%の
フェロ窒化マンガンを添加した焼鈍分離剤を塗布し、10
℃/hrの昇温速度で1200℃に加熱し、20時間の焼鈍を行
なった。
この時の雰囲気ガスは1200℃までの昇温過程ではN250%
とH250%の混合ガスを使用し、1200℃の均熱時はH2100
%とした。
磁気特性は次の如くであった。
Se含有量が多すぎると高磁束密度が得られない。
(4)C:0.045%、Si:3.30%、Mn:0.150%、S:0.009
%、P:0.030%、Al:0.031%、N:0.0070%、Ti:0.0060
%、残部Fe及び不可避的不純物からなるスラブ(a)と
これに更にBを0.0035%添加したスラブ(b)を1100℃
で加熱熱延し2.3mmの熱延板を造った。
これを(1)熱延板焼鈍なし、(2)熱延板焼鈍を900
℃×5分した後急冷却したもの、(3)1150℃×2分+
900℃×2分熱延板焼鈍後急冷却したものの3水準を準
備した。
これを1回冷延で0.30mmとし、830℃×150秒の脱炭焼鈍
を650℃の湿水素窒素混合ガス中で行い、MgOにTiO2を添
加した焼鈍分離剤を塗布し、15℃/hrの昇温速度で1200
℃に加熱し、20時間の仕上焼鈍をした。
この昇温過程の雰囲気ガスには窒素25%、水素75%の混
合ガス中にNH3ガスを10ppm添加したものを用い、1200℃
の均熱時は水素ガスのみに切替え純化した。
磁気特性(B8)は次の如くであった。
Bを添加したものが添加しないものに比べ熱延板焼鈍の
有り無しに関係なく高Bが得られた。
(5)C:0.056%、Si:3.40%、Mn:0.130%、S:0.005
%、P:0.030%、Al:0.027%、N:0.0075%、Ti:0.0030
%、B:0.0042%、残部Fe及び不可避的不純物からなるス
ラブを1150℃で加熱熱延し2.5mmと1.6mmの熱延板を造っ
た。2.5mm厚の熱延板は酸洗後1.6mmまで冷延し、1.6mm
厚の熱延板と同時に1120℃×2.5分の焼鈍後急冷処理を
した。これを0.150mmまで冷延し、830℃×70秒の脱炭焼
鈍をし、MgOにTiO2とMnNを添加した焼鈍分離剤を塗布
し、1200℃20時間の仕上焼鈍を行なった。
この昇温過程の雰囲気ガスには窒素25%、水素75%の混
合ガスを用い、1200℃の均熱時は水素ガスのみに切換え
純化した。磁気特性は次の如くであった。
〔発明の効果〕 本発明は上述した如く、普通鋼並の低温スラブ加熱で圧
延割れの少ない、しかも極めて高い磁束温度を得ること
ができるので、その工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
第1図はMn/Sと熱延板端部割れ深さとの関係を示す図、
第2図(a)(b)は第1図の熱延板端部の熱延板形状
を示す写真、第3図はBと脱炭焼鈍温度との関係を示す
図、第4図はTi,Bの複合添加した場合の磁束密度の状態
を示す図であり、第5図は、脱炭焼鈍後の鋼板(a)
と、MnNを添加した焼鈍分離材を脱炭焼鈍後の鋼板に塗
布して、仕上焼鈍を行なうときの昇温過程1000℃におけ
る鋼板(b)の金属組織中の析出物の分布を示す写真で
ある。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Si:1.5〜4.8% Al:0.012〜0.050% Ti:0.0020〜0.0120% N:0.0010〜0.0120% B:0.0005〜0.0080% S又はSeの1種又は2種を合計で0.012%
    以下、 Mn/(S+Se):(重量比) ≧4.0、 残部Fe及び不可避的不純物 から成る珪素鋼熱延板を1回、又は2回以上の冷延工程
    により最終板厚とし、次いで湿水素中で脱炭焼鈍し、焼
    鈍分離剤を塗布し、二次再結晶と純化とを目的とした仕
    上焼鈍を行うとともに最終冷延後から仕上焼鈍の二次再
    結晶開始までの昇温段階の間に窒化処理を行うことを特
    徴とする磁束密度の高い一方向性珪素鋼板の製造方法。
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