JPH0684030U - 車両用ディスクブレーキの多ポット対向型キャリパボディ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】摩擦パッドに所定のクランプ力を確保しつつ、
リーディング作用による摩擦パッドの偏摩耗を、安価で
且つ簡単な構造で防止する。 【構成】液圧室１５，１５をつなぐディスク回出側の液
通路１８と、該液通路１８につながるユニオン孔２１と
を、略同径の大径孔とする。液圧室１５，１６をつなぐ
中間の液通路１９を中径孔とし、更に液圧室１６，１７
をつなぐディスク回入側の液通路２０を小径孔とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動二輪車や自動車等の各種走行車両に用いられるディスクブレー キのキャリパボディに係り、詳しくは、摩擦パッドの偏摩耗を極力防止するよう にした多ポット対向型のキャリパボディに関する。

【０００２】

【従来の技術】

回転するディスクロータの両側部を、一対の摩擦パッドで挟圧して制動作用を 行なう車両用ディスクブレーキにあっては、摩擦パッドのディスク回入側が、リ ーディング作用によってディスクロータに引込まれ、他の部分よりも早く摩耗す ることがあるため、例えば実開平２−７６２３５号公報に示される技術が提案さ れている。

【０００３】 このキャリパボディは、ディスクロータの両側部に配設される双方の作用部に 、ディスクロータを挟んで対向する複数組のシリンダ孔をディスク周方向に対向 配置し、それぞれに収容されるピストンとシリンダ孔の底部との間に液圧室を画 成した多ポット対向型で、対向する液圧室同士をそれぞれ液通路にて連通すると 共に、ディスク回入側の液通路に接続される作動液供給路に減圧弁を介装するこ とにより、ディスク回入側の液圧室に供給される作動液の液圧を、その他の液圧 室へ供給される液圧よりも減じることによって、摩擦パッドの偏摩耗を防止する ようにしている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、このような構成では、液圧の低下がそのままディスクロータに 対する摩擦パッドのクランプ力を低下させることとなるため、好ましくない。ま た、液通路が複数に別れるため構造が複雑となり、更に高価な減圧弁を用いるこ とから、コスト高は避けられない。

【０００５】 本考案は、このような実情に鑑みてなされたもので、摩擦パッドに所定のクラ ンプ力を確保しつつ、リーディング作用による摩擦パッドの偏摩耗を、安価で且 つ簡単な構造で防止することのできる車両用ディスクブレーキのキャリパボディ を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上述の目的に従い、本考案は、ディスクロータの両側部に配設される双方の作 用部に、前記ディスクロータを挟んで対向する複数組のシリンダ孔をディスク周 方向に並設し、各シリンダ孔に収容されるピストンと該シリンダ孔の底部との間 にそれぞれ液圧室を画成し、前記キャリパボディのディスク回出側に穿設された ユニオン孔と、ディスク回出側の液圧室とを液通路にて連通すると共に、ディス ク周方向に隣接する液圧室同士を液通路にて連通させた車両用ディスクブレーキ の多ポット対向型キャリパボディにおいて、前記作用部のそれぞれに配設される 前記複数の液通路を、ディスク回出側からディスク回入側へ順次小径となしたこ とを特徴としている。

【０００７】

【作用】

ユニオン孔から導入される昇圧した作動液は、液通路のチョーク作用によって 、ディスク回入側へ液圧室を経るごとに流量が絞られて行き、ディスク回入寄り の液圧室ほど昇圧時間が遅くなる。これにより、シリンダ孔に収容されたピスト ンは、ディスク回出側から順次押し出されて行き、ディスク回入側のピストンが 最も遅く押し出される。

【０００８】 本構成はこのように、ディスク周方向に並ぶピストンが、ディスク回入側へ向 かうに連れて、順次遅れて押し出されるもので、各ピストンには全て同一の液圧 が作用し、摩擦パッドの裏板を均等に押圧する。

【０００９】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を、図面に基づいて説明する。

【００１０】 ディスクブレーキ１に用いられるキャリパボディ２は、矢印Ａ方向へ回転する ディスクロータ３の外側から、該ロータ３の両側部に分割された一対の作用部２ ａ，２ｂに、ディスクロータ３を挟んで対向する３組のシリンダ孔４，４，５， ５，６，６をディスク周方向に並設した６ポット対向型で、両作用部２ａ，２ｂ は、ブリッジ部２ｃのディスク回入側とディスク回出側とにねじ込まれる長短４ 本の連結ボルト７にて一体に連結されている。

【００１１】 ブリッジ部２ｃの中央には、矩形の天井開口部８が形成されている。作用部２ ａ，２ｂのディスクロータ側には、天井開口部８の内側に連続するパッド装着凹 部９，９が設けられており、該パッド装着凹部９，９に、一対の摩擦パッド１０ ，１０が、ディスクロータ３を挟んで対向配置されている。摩擦パッド１０は、 ライニング１１と金属製の裏板１２とからなっており、裏板１２の上部にハンガ ーピン１３を差込んで、ディスク軸方向へ移動可能に吊持される。

【００１２】 ６個のシリンダ孔４，４，５，５，６，６は、全て同径となっており、これら シリンダ孔４〜６には、それぞれコップ状のピストン１４が収容されている。シ リンダ孔４〜６の底部とピストン１４との間には、液圧室１５，１５，１６，１ ６，１７，１７が画成され、ディスク回出側の２つの液圧室１５，１５は、ブリ ッジ部２ｃのディスク回出側を回って穿設された液通路１８にて連通している。 また、作用部２ａ，２ｂのそれぞれで隣接するディスク回出側の液圧室１５と中 央の液圧室１６とは液通路１９にて連通し、更に中央の液圧室１６とディスク回 入側の液圧室１７とは液通路２０にて連通している。

【００１３】 一方の作用部２ａには、車体取付け用のブラケット２ｄと、ユニオンボス部２ ｅとが一体形成されており、ユニオンボス部２ｅに穿たれたユニオン孔２１は、 ディスク回出側の液通路１８と連通している。ユニオン孔２１とディスク回出側 の液通路１８とは、略同径の大径孔となっており、また液圧室１５，１６をつな ぐ中間の液通路１９は、ディスク回出側の液通路１８よりもやや小径の中径孔に 、また液圧室１６，１７をつなぐディスク回入側の液通路２０は、中間の液通路 １９よりも更に小径に絞られた小径孔となっている。

【００１４】 ユニオン孔２１には、別途に配設された公知の液圧マスタシリンダと、ブレー キホース（いずれも図示せず）を介して接続され、液圧マスタシリンダからディ スク回入側の液圧室１７，１７までの液圧経路に作動液が充填される。運転者の ブレーキ操作によって、液圧マスタシリンダで発生した圧液は、ブレーキホース を通してユニオン孔２１へ導入され、更に液通路１８を分岐してディスク回出側 の液圧室１５，１５へ入り、作用部２ａ，２ｂのそれぞれをディスク回入側へ供 給されて行く。

【００１５】 ディスク回出側の液圧室１５に供給される作動液は、同時に液通路１９，２０ を通して、中央の液圧室１６とディスク回入側の液圧室１７へも供給されるが、 ディスク回出側の液圧室１５から中央の液圧室１６への流量は、ディスク回出側 の液通路１８よりも細い中間孔の液通路１９によって、ディスク回出側の液通路 １８から液圧室１５へのそれよりも絞られ、また中央の液圧室１６からディスク 回入側の液圧室１７への流量は、中間の液通路１９よりも細い小径孔の液通路２ ０によって、中間の液通路１９から液圧室１６へのそれよりも更に絞られること となる。

【００１６】 これにより、中央の液圧室１６では、ディスク回出側の液圧室１５よりも昇圧 時間が遅くなり、更にディスク回入側の液圧室１７では、中央の液圧室１６より も昇圧時間が遅くなる。そして、それぞれに収容されるピストン１４は、ディス ク回出側，中央，ディスク回入側の順に押し出されて行き、摩擦パッド１０の裏 板１２を押動して、ライニング１１をディスクロータ３の側面に摺接させる。尚 、各液圧室１５〜１７の圧液から各ピストン１４には全て同一の液圧が作用し、 摩擦パッド１０は、６個のピストン１４によって均等な力で押圧される。

【００１７】 本実施例はこのようにして、摩擦パッド１０に対するピストン１４の押動を、 リーディング作用の影響を受け易いディスク回入側へ行くに従って、順次遅らせ ることにより、リーディング作用によるライニング１１の偏摩耗を極力防止する ことができる。また、全てのピストン１４に、設定された液圧を作用させるので 、摩擦パッド１０に対するクランプ力の低下は殆どない。

【００１８】

【考案の効果】

本考案は以上説明したように、キャリパボディの双方の作用部に配設される複 数の液通路を、ディスク回出側からディスク回入側へ順次小径に形成して、摩擦 パッドに対するピストンの押動を、リーディング作用の影響を受け易いディスク 回入側へ行く従って、順次遅らせることにより、ライニングの偏摩耗を極力防止 することができる。

【００１９】 また、全てのピストンに、設定された液圧を作用させるので、摩擦パッドに対 するクランプ力の低下は殆ど生じない。更に、液通路の径を変更するだけである から、液通路を分岐した従来のものに較べると、構造が簡単なもので済み、また 高価な減圧弁を用いる必要もないから、頗る安価に製作することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示すキャリパボディの断面
平面図

【図２】図１のII−II断面図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ ２…キャリパボディ ３…ディスクロータ ２ａ，２ｂ…作用部 ２ｄ…車体取付け用のブラケット ２ｅ…ユニオンボス部 ４…ディスク回出側のシリンダ孔 ５…中間のシリンダ孔 ６…ディスク回入側のシリンダ孔 １０…摩擦パッド １１…摩擦パッド１０のライニング １２…摩擦パッド１０の裏板 １３…ハンガーピン １４…シリンダ孔４，５，６に収容されるピストン １５…ディスク回出側の液圧室 １６…中間の液圧室 １７…ディスク回入側の液圧室 １８…液圧室１５，１５とユニオン孔２１とを連通する
ディスク回出側の液通路 １９…液圧室１５，１６を連通する中間の液通路 ２０…液圧室１６，１７を連通するディスク回入側の液
通路 ２１…ユニオン孔 Ａ…ディスクロータ３の回転方向

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスクロータの両側部に配設される双
   方の作用部に、前記ディスクロータを挟んで対向する複
   数組のシリンダ孔をディスク周方向に並設し、各シリン
   ダ孔に収容されるピストンと該シリンダ孔の底部との間
   にそれぞれ液圧室を画成し、前記キャリパボディのディ
   スク回出側に穿設されたユニオン孔と、ディスク回出側
   の液圧室とを液通路にて連通すると共に、ディスク周方
   向に隣接する液圧室同士を液通路にて連通させた車両用
   ディスクブレーキの多ポット対向型キャリパボディにお
   いて、前記作用部のそれぞれに配設される前記複数の液
   通路を、ディスク回出側からディスク回入側へ順次小径
   となしたことを特徴とする車両用ディスクブレーキの多
   ポット対向型キャリパボディ。