JPH067793B2 - アルカリ性アミラ−ゼの製造法 - Google Patents

アルカリ性アミラ−ゼの製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、アルカリ性アミラーゼの製造法に関し、更に
詳しくは、ストレプトマイセス属に属する新規なアルカ
リアミラーゼ生産菌を培養し、その培地からアルカリ性
アミラーゼを採取することを特徴とするアルカリ性アミ
ラーゼの製造法に関する。
〔従来の技術〕
アルカリ性アミラーゼは、自動食器用洗浄剤や衣料用洗
浄剤の成分として注目を集めている。然し、自然界にお
いて微生物の産生するアミラーゼは、大部分が中性乃至
酸性において至適な酵素活性を有する、所謂中性若しく
は酸性アミラーゼであって、アルカリ性アミラーゼは極
めて少ない。
而して、従来アルカリ性アミラーゼ生産菌によりアルカ
リ性アミラーゼを生産する方法としては、僅かに2例、
パチルス属に属しアルカリ側に至適pHを有するアミラー
ゼ生産菌バチルスNo.P-203(Bacillus sp.No.P−20
3)を培養して培地より採取する方法(特公昭55−3
3309号公報)及びバチルス・オーベンシス・エスピ
ー・ノブC−1400(Bacillus Obensis sp. nov.C−1
400)を培養して培地より酸性及びアルカリ性に作用
pHを有するα−アミラーゼを採取する方法(特公昭52
−31949号公報)が知られているのみであった。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従って、本発明の目的は、アルカリ性アミラーゼの新規
な製造法を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者は、アルカリ性アミラーゼを生産する微生物を
自然界に求め、鋭意探索を続けてきたが、今般、栃木県
芳賀郡の土壌より採取した放線菌がアルカリ性アミラー
ゼを生産することを見出し、本発明を完成した。
従来、放線菌が産生するアミラーゼとして中性若しくは
酸性アミラーゼは公知であったが(例えば特開昭50−
52277号公報)、本発明の様に放線菌がアルカリ性
アミラーゼを生産することについては今迄知られていな
かった。
本発明で使用される微生物は、ストレプトマイセス属に
属し、かつ、アルカリ性アミラーゼを生産しうるもので
あれば良く、例えばストレプトマイセス・エスピー K
SM−9(Streptomyces sp.KSM−9,微工研菌寄第
2620号)が挙げられる。この菌株は、本発明者が栃
木県芳賀郡の土壌より分離したもので、次の第1表及び
第2表に示す菌学的性質を有する。
KSM−9株は形態学的に放線菌の特徴を有する。また
細胞壁にLL−ジアミノピメリン酸を含むなどのことか
らストレプトマイセス属に分類される。
KSM−9株は、各種寒天培地上での気中菌糸の色から
黄色シリーズの菌株に属すること、胞子の表面は平滑で
あること、胞子鎖はやや屈曲するかおおむね直線である
こと、メラニン様色素は生成しないこと及び炭素源の同
化性試験の結果をもとに既知菌株の中から、本菌株の類
似株をバージエーズマニュアル第8版に従って検索する
と、ストレプトマイセス・プニセウス(St. puniceus)
が類似の菌株として挙げられる。しかし、ストレプトマ
イセス・プニセウスは紫〜赤系統の色素をつくるのが特
徴であるのに対し、KSM−9株にはその性質が認めら
れないことから、KSM−9株は新菌種である。
分離源の土壌からの本菌株の分離は、例えば後記参考例
1に示す如く、寒天培地を用いて従来法により行なっ
た。
本発明方法は、ストレプトマイセス属に属し、かつ、ア
ルカリ性アミラーゼを生産する微生物を適当な培地に接
種し、培養することにより実施される。微生物として
は、上記KSM−9株はもとより、その変異株も同様に
使用できる。
本発明で使用する培地の組成は、使用する菌株が良好に
生育し、アルカリ性アミラーゼの生産を順調に行なわし
めるために適当な炭素源、窒素源あるいは有機栄養源、
無機塩等からなっている。
炭素源としては、例えば馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、
コメ、モチゴメ、コムギ等のデンプン、デキストリン、
デキストラン、可溶性デンプン等の加工デンプン、アミ
ロース等のデンプン類、ブドウ糖、蔗糖、麦芽糖若しく
はソルビトール等の炭水化物、クエン酸、コハク酸、酢
酸等の有機酸等の資化されるものであればいずれも使用
できる。これらの炭素源のうちデンプン類、就中可溶性
デンプンを使用した培地はアルカリ性アミラーゼの生産
量が多く好適に使用される。
窒素源あるいは有機栄養源としては、例えば硝酸ナトリ
ウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩類;
酵母エキス、肉エキス、ペプトンが挙げられる。
無機塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸
塩、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン
酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸カリ
ウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウ
ム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等々のリン酸塩、硫酸
マグネシウム等の無機塩が使用できる。就中炭酸塩を0.
1〜1.5重量%含有する培地はアルカリ性アミラーゼの
産生量が多く好適である。さらに微量の重金属塩類が使
用されるが天然物を含む培地では必ずしも添加を必要と
しない。
また、上記以外の栄養源を必要とする変異株を用いる場
合には、その栄養要求を満たす物質を培地に添加しなけ
ればならない。
培養は、培地を加熱等により殺菌後、菌を接種し、25
〜35℃で、2〜4日振盪又は通気攪拌すれば良い。pH
は8〜11程度に調製すると良い結果が得られる。水に
難溶性の炭素源等を使用する場合にはポリオキシエチレ
ンソルビタン等の各種界面活性剤を培地に添加すること
も可能である。
斯くして得られた培養物中からの目的物質であるアルカ
リ性アミラーゼの採取及び精製は、例えば後記実施例に
示す如く、一般の酵素の採取及び精製の手段に準じて行
うことができる。
すなわち、培養物を遠心分離、又は過等に付して菌体
を分離し、その菌体及び培養液から通常の分離手段、
例えば塩析法、沈澱法、限外過法等を単独で、あるい
は適宜組合せてアルカリ性アミラーゼを分離する。沈澱
法は例えば培養液に低級アルコール類やアセトン等の有
機溶媒を添加して酵素を沈澱させることにより、また限
外過法は例えばダイアフローメンブレンYC(アミコ
ン社製)を用いて上清液中の酵素を濃縮乾固することに
よりこれを分離する。塩析法では例えば硫安により塩析
した沈殿を、過あるいは遠心分離後、脱塩し、凍結乾
燥して粉末とする。脱塩の方法としては、透析法、又は
例えばセフアデックスG−25を用いるゲルロ過法等た
挙げられる。
更に、酵素を精製するには、例えばDEAE−セルロース又
はDEAE−セフアデックスを用いるイオン交換クロマトグ
ラフィー及びセフアデックスG−100のようなゲルク
ロマトグラフィーを夫夫単独で、あるいは併用して分別
精製すればよい。
なお、培養液はそのまま酵素源とすることもできる。
以上の如くして得られたアルカリ性アミラーゼは次の様
な理化学的性質を有する。
1)作用及び基質特異性 でんぷんに作用し、ヨード反応を消失せしめると同時に
還元糖の生成も認められる。
2)至適pH pH 9.0付近ででんぷんに対する作用が至適である(第
1図)。
3)安定pH範囲 5mM CaClを安定化剤として加え、40℃で10分間処
理した場合、pH7〜9において80%以上、pH10にお
いて60%以上の残存活性を示す(第2図)。
4)至適温度 pH9においてはでんぷんを基質とした場合、40℃付近
が至適であり、20℃〜50℃において40%以上の活
性を示す(第3図)。
5)熱安定性 pH9において40℃で10分間処理した場合、90%以
上安定である(第4図)。
6)分子量 トヨパールHW−55Sカラム(φ1cm×100cm)に
よるゲル過法で測定した結果、約3万であった。
本発明において、アミラーゼ活性は次の方法により測定
した。
〈アミラーゼ活性測定方法〉 酵素液(適当に希釈して580nmの吸光度が10〜30
%減少するようにする)0.1mに基質として0.1%可
溶性でんぷん水溶液0.2m及びpH9.0の0.2Mグリシ
ン−NaOH緩衝液0.2m又は種々のpHの緩衝液0.2m
を加え、40℃で10分間反応させる。次いでこれに0.
2NHClを0.5m加えて反応を停止させ、ヨウ素液2.
0mを加えて良く攪拌した後、580nmの吸光度を
測定する。また対照は、上記と同じ基質及び緩衝液各0.
2mに0.2NHClをあらかじめ0.5m加え、そこに酵
素液0.1mを加えた後、ヨウ素液2.0mを加えて良
く攪拌した後、580nmの吸光度を測定する。なお、
ヨウ素液としては、KI45gとヨウ素酸カリウム3.5
7gを水1に溶解してヨウ素原液とし、使用時にこれ
を水で300倍に希釈したものを使用した。
本発明において、アミラーゼ活性は次式により評価し、
アミラーゼ活性1単位(U)とは、上記の条件下で10%
の吸光度を減少させる酵素量をいう。
:対照の吸光度 D:反応液の吸光度 〔発明の効果〕 本発明により、従来アルカリ性アミラーゼを生産するこ
とが知られていなかった放線菌によってアルカリ性アミ
ラーゼを生産することが可能となった。
〔実施例〕
次に参考例及び実施例を挙げて本発明を説明する。
参考例1 栃木県芳賀郡の土壌をスパーテル1杯分(約0.5g)を
10m無菌水に懸濁し、充分に攪拌した後放置した。
かくして得られる土壌懸濁液上清0.1mを下記組成の
分離様寒天培地に塗布した。
組成: 可溶性でんぷん 10g 肉エキス 15g 酵母エキス 5g KH2PO4 1g Na2CO3 10g 寒 天 15g 水 1000ml pH10.5 次いで、これを30℃で3日間培養し、4N HClで
培地を中和後その表面にヨウ素液を流し、集落の周囲に
ヨウ素デンプン反応の消失にもとづく黄色の変色帯を有
する菌が出現するのを確認し、明瞭な変色帯を有する集
落を釣菌し、上記分離用寒天培地と同組成の斜面寒天培
地に接種し、30℃で3日間培養し、保存用菌株とし
た。
上記菌株の各培地上の性状及び生理学的性質は前記第1
表及び第2表に示した通りであり、本発明者はこれをス
トレプトマイセス・エスピー KSM−9(Streptomyc
es sp. KSM-9)と命名した。
実施例1 500m容量の坂口フラスコに、可溶性でんぷん1.0
%、肉エキス1.5%、酵母エキス0.5%、リン酸二水素
カリウム0.1%、炭酸ナトリウム0.5%(w/v%pH9.5)
の組成からなる液体培地100mを入れ、この液体培
地にストレプトマイセス・エスピー KSM−9株(微
工研菌寄託番号第7620号)をスラントより接種し、
30℃で振盪培養した。
3日間培養後、菌体を遠心分離して除去して得た培養液
を硫安分画し、生成する固型分を凍結乾燥して酵素粉末
を得た。培養液1当り0.4gの酵素粉末が得られた。
得られた酵素のアミラーゼ活性はpH9.0において850
単位であった。
実施例2 実施例1に於て、培地成分を可溶性でんぷん0.5%、肉
エキス0.3%、ポリペプトン0.5%、リン酸二水素カリ
ウム0.1%、炭酸ナトリウム0.5%(pH9.5)とした以
外は、実施例1と同様にストレプトマイセス・エスピー
KSM−9株を培養して得た培養液から酵素粉末を得
た。得られた酵素のアミラーゼ活性はpH9.0%において
720単位であった。
【図面の簡単な説明】
第1図はKSM−9株アミラーゼの至適pHを示す図面、
第2図は同安定pH範囲を示す図面、第3図は同至適温度
を示す図面、第4図は同熱安定性を示す図面である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ストレプトマイセス属に属するアルカリ性
    アミラーゼ生産菌を培養して培地中にアルカリ性アミラ
    ーゼを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とす
    るアルカリ性アミラーゼの製造法。
  2. 【請求項2】ストレプトマイセス属に属するアルカリ性
    アミラーゼ生産菌がストレプトマイセス・エスピー(St
    reptomyces sp.)KSM−9(微工研菌寄第7620
    号)である特許請求の範囲第1項記載のアルカリ性アミ
    ラーゼ製造法。
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