JPH0675513B2 - ヒト血清アルブミンの脱色方法 - Google Patents

ヒト血清アルブミンの脱色方法

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JPH0675513B2
JPH0675513B2 JP4137250A JP13725092A JPH0675513B2 JP H0675513 B2 JPH0675513 B2 JP H0675513B2 JP 4137250 A JP4137250 A JP 4137250A JP 13725092 A JP13725092 A JP 13725092A JP H0675513 B2 JPH0675513 B2 JP H0675513B2
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株式会社ミドリ十字
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は遺伝子操作により発現さ
れるヒト血清アルブミンの脱色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルブミン、特にヒト血清アルブミン
(以下、「HSA」ともいう。)は血漿の主要な蛋白構
成成分である。この蛋白は肝臓中で作られ、主に血流中
で正常な浸透圧を維持する責を負う。また種々の血清分
子のキャリアーとしての機能を持っている。HSAは種
々の臨床上の状況において投与される。例えば、ショッ
クや熱傷患者では血液量を元に戻し、それにより外傷に
関連するいくつかの症状を改善させるために、通常はH
SAの頻回投与を必要とする。低蛋白血症や胎児性赤芽
球症に罹っている患者にもHSAによる治療を必要とす
ることがある。従って、HSAを投与する基本的な治療
上の意義は、外科手術、ショック、火傷、浮腫を起こす
低蛋白血症におけるがごとく、血管からの液体の損失が
ある様な状態を治療する点に存する。
【0003】現在、HSAは、主として採取した血液の
分画からの産物として製造されている。この製造法の欠
点は不経済であることと、血液の供給が困難であるとい
うことである。また、血液は肝炎ウイルスのように好ま
しくない物質を含んでいることがある。従って、HSA
の代替の原料を開発することが有益となろう。
【0004】ところで、組換DNA技術の出現によっ
て、多種多様の有用なポリペプチドの微生物による生産
が可能となり、多くの哺乳動物ポリペプチド類が既に種
々の微生物により生産されている。HSAについても、
遺伝子操作の技術により大量生産し、それを高度精製す
る技術が確立されつつある。
【0005】ところが、遺伝子操作においては、宿主で
ある微生物を培養する際、さらにはHSAを精製する際
に、原料中のある種の着色成分あるいは微生物が分泌す
る物質が夾雑してくるため、これがHSAと結合するこ
とによりHSAそのものが着色してしまうものと思われ
る。しかもこれらの夾雑物質は、従来の血漿由来HSA
の精製方法では充分に除去することはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
課題は、遺伝子操作によりHSAを得るに際し、従来の
血漿由来HSAの精製方法では充分に除去することがで
きなかった上記着色成分ならびに夾雑成分を除去し、着
色を充分に抑えられたHSAを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情
に鑑みて鋭意研究を進めた結果、遺伝子操作により得ら
れるHSAを得るに際して、当該HSAの精製工程にお
いて、特に好ましくはその最後に当該HSAをキレート
樹脂で処理することにより着色物質がキレート樹脂に吸
着され、HSAの着色を減少できることを見出し、本発
明を完成した。
【0008】即ち、本発明は、精製工程において、特に
好ましくはその最後に、キレート樹脂、好ましくはポリ
オール基、ポリアミン基またはチオ尿素基から選ばれた
キレート能を有する交換基をリガンドとして有するキレ
ート樹脂で処理することを特徴とする、遺伝子操作によ
り得られるHSAの脱色方法に関する。
【0009】本発明は、遺伝子操作によってHSAを調
製する場合のHSAの脱色方法に係わるものであり、当
該HSAは遺伝子操作を経てHSAを発現する菌体(例
えば、大腸菌、酵母、枯草菌、麹、動物細胞等)を培養
し、菌体外発現(分泌発現)により産生される。
【0010】(1)遺伝子操作による得られるHSA 本発明において用いられる遺伝子操作により調製された
HSA産生性宿主は、遺伝子操作を経て調製されたもの
であれば特に限定されず、既に公知文献記載のものの
他、今後開発されるものであっても適宜利用することが
できる。具体的には、遺伝子操作を経てHSA産生性と
された菌(例えば、大腸菌、酵母、枯草菌等)、動物細
胞などが挙げられる。特に、本発明においては、宿主と
して、酵母、就中サッカロマイセス属〔例えば、サッカ
ロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
〕、もしくはピキア属〔例えば、ピキア・パストリス
(Pichia pastoris)〕が使用されることが好ましい。ま
た、栄養要求性株や抗生物質感受性株が使用できる。さ
らにまた、サッカロマイセス・セレビシエAH22株
(a, his 4, leu 2, can 1) 、ピキア・パストリスGT
S115株 (his 4)等が好適に用いられる。
【0011】これらのHSA産生性宿主の調製方法およ
びその培養によるHSAの生産方法、培養物からのHS
Aの分離採取方法はすべて公知ならびにそれに準じた手
法を採用することによって実施される。例えば、HSA
産生性宿主(またはHSA産生株)の調製方法として
は、例えば通常のヒト血清アルブミン遺伝子を用いる方
法(特開昭58−56684、同58−90515、同
58−150517号公報)、新規なヒト血清アルブミ
ン遺伝子を用いる方法(特開昭62−29985、特開
平1−98486号公報)、合成シグナル配列を用いる
方法(特開平1−240191号公報)、血清アルブミ
ンシグナル配列を用いる方法(特開平2−167095
号公報)、組換えプラスミドを染色体上に組込む方法
(特開平3−72889号公報)、宿主同士を融合させ
る方法(特開平3−53877号公報)、メタノール含
有培地中で変異を起こさせる方法、変異型AOX2 プロ
モーターを用いる方法(特願平3−63598、同3−
63599号)、枯草菌によるHSAの発現(特開昭6
2−25133号公報)、酵母によるHSAの発現(特
開昭60−41487、同63−39576、同63−
74493号公報)、ピキア酵母によるHSAの発現
(特開平2−104290号公報)等が例示される。
【0012】このうち、メタノール含有培地中で変異を
起こさせる方法は具体的には以下のように行う。すなわ
ち、まず適当な宿主、好ましくはピキア酵母、具体的に
はGTS115株(NRRL寄託番号Y−15851)
のAOX1 遺伝子領域に常法によりAOX1 プロモータ
ー支配下にHSAが発現する転写ユニットを有するプラ
スミドを導入して形質転換体を得る(特開平2−104
290号公報を参照)。この形質転換体はメタノール培
地中での増殖能は弱い。そこで、この形質転換体をメタ
ノール含有培地中で培養して変異を起こさせ、生育可能
な菌株のみを回収する。この際、メタノール濃度として
は、0.0001〜5%程度が例示される。培地は人工
培地、天然培地のいずれでもよい。培養条件としては1
5〜40℃、1〜1000時間程度が例示される。
【0013】また、HSA産生性宿主の培養方法(すな
わちHSAの産生方法)としては、上記の各公報に記載
された方法の他に、フェッドバッチ培養により、高濃度
のグルコースを適度に少量づつ供給し、産生菌体に対す
る高濃度基質阻害を避けて高濃度の菌体と産生物を得る
方法(特願平1−219561号)、培地中に脂肪酸を
添加してHSAの産生を増強する方法(特願平3−81
719号)等が例示される。さらにHSAの分離採取方
法としては、上記の各公報に記載された方法の他に加熱
処理によるプロテアーゼの不活化(特開平3−1031
88号公報)、陰イオン交換体、疎水性担体および活性
炭からなる群より選ばれた少なくとも一を用いてHSA
と着色成分を分離することによる着色抑制方法(特開平
4−54198号公報)等が例示される。
【0014】形質転換宿主の培養に用いられる培地は、
通常この分野で既知の培地に炭素数10〜26の脂肪酸
またはその塩を添加したものが使用され、培養条件は一
般的な常法に準じて実施される。培地は合成培地、天然
培地のいずれでもよく、液体培地が好ましい。例えば、
合成培地としては、一般に炭素源として各種糖類、窒素
源として尿素、アンモニウム塩、硝酸塩など、微量栄養
素として各種ビタミン、ヌクレオチドなどの他、無機塩
としてMg、Ca、Fe、Na、K、Mn、Co、Cu
などが例示される。YNB液体培地〔0.7%イースト
ナイトロジエンのベース(Difco 社製)、2%グルコー
ス〕などが挙げられる。また天然培地としては、YPD
液体培地〔1%イーストエキストラクト(Difco 社
製)、2%バクトペプトン(Difco 社製)、2%グルコ
ース〕が例示される。培地のpHは中性または弱塩基
性、弱酸性でよい。またメタノール資化性宿主の場合
は、メタノール含有培地を用いることができる。この場
合メタノール濃度は0.01〜5%程度である。
【0015】培養温度は、15〜43℃(酵母は20〜
30℃、細菌は20〜37℃)が好ましい。培養時間は
1〜1000時間程度であり、培養は静置または振盪、
攪拌、通気下に回分培養法や半回分培養法あるいは連続
培養法により実施される。なお、当該培養に先立って前
培養を行うことが好ましい。この際の培地としては、例
えばYNB液体培地やYPD液体培地が使用される。前
培養の培養条件は次の通りである。すなわち、培養時間
は10〜100時間、温度は酵母では30℃、細菌では
37℃程度が好ましい。
【0016】かくして培養終了後、HSAは培養濾液ま
たは菌体、細胞からそれぞれ公知の分離手段により採取
される。
【0017】(2)HSAの精製 本発明のHSAの脱色方法による処理は、従来より行わ
れている遺伝子操作由来HSAの精製工程において、特
に好ましくはその最後に行う。精製工程としては、各種
分画法、吸着クロマトグラフィー、アフィニティクロマ
トグラフィー、ゲル濾過、密度勾配遠心分離法、透析等
の公知の方法が採用される。当該精製工程としては、例
えば以下の〜を含む工程が好適に挙げられる。 ヒト血清アルブミンの産生宿主の培養上清を分画分
子量10万〜50万、及び1000〜5万の限外濾過膜
を用いて処理する。 50〜70℃で30分〜5時間加熱処理する。 pH3〜5で酸処理する。 分画分子量10万〜50万の限外濾過膜を用いて処
理する。 pH3〜5、塩濃度0.01〜0.2Mの条件下で
陽イオン交換体に接触させた後にpH8〜10、塩濃度
0.2〜0.5Mの条件下で溶出する。 pH6〜8、塩濃度0.01〜0.5Mの条件下で
疎水性クロマト用担体に接触させて、非吸着画分を回収
する、そして pH6〜8、塩濃度0.01〜0.1Mの条件下で
陰イオン交換体に接触させて、非吸着画分を回収する。 また、前記工程の代わりに、pH6〜8、塩濃度1〜
3Mの条件下で疎水性クロマト用担体に接触させた後
に、pH6〜8、塩濃度0.01〜0.5Mの条件下で
溶出する工程、または前記工程の代わりに、pH6〜
8、塩濃度0.001〜0.05Mの条件下で陰イオン
交換体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.05
〜1Mの条件下で溶出する工程、さらには前記工程と
の間、との間、またはの後で、pH3〜5、塩
濃度0.5〜3Mの条件下で塩析処理し、沈澱画分を回
収する工程をさらに含むものであってもよい。
【0018】(3)HSAの脱色 本発明のHSAの脱色工程は、上記精製工程において、
特に好ましくはその最後に組み込まれ、特定のリガンド
部を有するキレート樹脂とHSAを接触することにより
行われる。キレート樹脂の担体部分は疎水性を有する担
体であることが好ましく、例えばスチレンとジビニルベ
ンゼンの共重合体、アクリル酸とメタクリル酸の共重合
体等が挙げられる。一方、リガンド部は、N−メチルグ
ルカミン基等のポリオール基、イミノ基、アミノ基、エ
チレンイミノ基等を分子内に複数個有するポリアミン基
(この中にはポリエチレンポリアミン等のポリアルキレ
ンポリアミン基も含まれる)、およびチオ尿素基が挙げ
られる。上記担体部分とリガンド部を有するキレート樹
脂の市販品としては、担体部分がいずれもスチレンとジ
ビニルベンゼンの共重合体であるDIAION CRB02(リガン
ド部;N−メチルグルカミン基、三菱化成製)、DIAION
CR20 (リガンド部;−NH(CH2CH2NH)n H、三菱化成
製)、LEWATIT TP214(リガンド部;−NHCSNH
2 、バイエル製)、アンバライトCG4000が好適に
使用される。
【0019】当該キレート樹脂による処理条件は、好適
には次の通りである。 pH条件:酸性または中性(3〜9、好ましくは4〜
7) 時間:少なくとも1時間以上、好ましくは6時間以上 イオン強度:50mho以下、好ましくは1〜10mh
o 混合比:HSA250mgに対して樹脂0.1〜100
g、好ましくは1〜10g(湿重量)
【0020】上記の工程(〜および塩析処理、さら
にキレート樹脂処理を含む)を経て得られたHSAの着
色度は、HSA25%溶液の場合でA500nm /A280nm
が0.001〜0.005程度である。本発明のキレー
ト樹脂処理によりHSAの着色度は1/2〜1/10に
低減される。特に吸収波長500nm付近、すなわち赤
色系の着色度が1/3〜1/10に低減される。
【0021】(4)製剤化 得られたHSAは公知の手法(限外濾過、安定化剤の添
加、除菌濾過、分注、凍結乾燥等)により製剤化するこ
とができる。こうして調製されたHSA製剤は注射剤と
して血漿由来HSA製剤と同様に臨床上用いることがで
きる。また、医薬品の安定化剤あるいは担体、運搬体と
しても利用可能である。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、遺伝子操作により得ら
れるHSAについて、原料中のある種の着色成分、ある
いは微生物が分泌する物質が夾雑し、これらがHSAと
結合することによって起こる着色が充分に抑えられたH
SAを提供することができる。本発明は、吸収波長50
0nm付近の着色成分、すなわち赤色系の着色成分の除
去に極めて有用である。
【0023】
【実施例】本発明をより詳細に説明するために、実施例
を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるも
のではない。
【0024】参考例1 HSA産生宿主の培養 (1) 使用菌株:Pichia pastoris GCP101株 特開平2−104290号公報に述べられている方法に
より、ピキアパストリス(Pichia pastoris)GTS11
5(his4)のAOX1 遺伝子領域に、AOX1 プロ
モーター支配下にHSAが発現する転写ユニットを持つ
プラスミドpPGP1のNot1で切断した断片を置換
して、PC4130が得られている。この株はAOX1
遺伝子が存在しないためにメタノールを炭素源とする培
地での増殖能が低くなっている(Mut−株)。
【0025】PC4130をYPD培地(1%イースト
エキストラクト、2%バクトペプトン、2%グルコー
ス)3mlに植菌し、24時間後に初期OD540 =0.1
となるようにYPD培地50mlに植菌した。3日間30
℃で培養後に初期OD540 =0.1となるようにYPD
培地50mlに植菌した。さらに3日毎に同様の継代を繰
り返した。継代毎に菌体を107 cells/plate になるよ
うに滅菌水で希釈して2%MeOH−YNBw/oa.
a.プレート(0.7%イーストナイトロジエンベース
ウイズアウトアミノアシッド、2%メタノール、1.5
%寒天末に塗布し、30℃5日間培養してコロニーの有
無を判断した。その結果、12日間継代後に塗布した2
%MeOH−YNBw/oa.a.プレートから20個
のコロニーが生じた。このプレートではMut−株はほ
とんど生育できず、Mut+株は生育できる。すなわ
ち、このプレートではコロニーが生じるということはメ
タノールの資化性が上昇し、Mut+に変換した株が得
られたことを示している。生じたコロニーの内の1つを
適当に滅菌水で希釈して2%MeOH−YNBw/o
a.a.プレートに拡げシングルコロニーに単離した。
その1つをGCP101と名付けた。
【0026】(2) 菌株の培養 (前々培養)グリセロール凍結ストック菌株1mlを20
0mlのYPD培地(表1)を含むバッフル付1,000
ml容三角フラスコに植菌、30℃にて24時間振盪培養
した。
【0027】
【表1】
【0028】(前培養)YPD培地5Lを含む10L容
ジャーファーメンターに前々培養液を植菌し、24時間
通気攪拌培養した。培養温度は30℃、通気量は5L/
分とした。また、前培養においてはpHの制御は実施し
なかった。
【0029】(本培養)バッチ培養用培地(表2)25
0Lに前培養液を植菌し、1,200L容ファーメンタ
ーを用いて通気攪拌培養した。槽内圧は0.5kg/c
m2 、最大通気量を800N−L/min として溶存酸素濃
度が飽和溶存酸素濃度の50%〜30%程度を保持する
ように、攪拌速度を制御しながら回分培養を開始した。
回分培養において培地中のグリセロールが消費された時
点よりフィード培地(表3)の添加を開始した。このフ
ィード培地の添加にはコンピュータを使用し、培地中に
メタノールが蓄積しないように制御しながら高密度培養
を実施した。pHは28%アンモニア水を添加すること
により、pH5.85に定値制御した。消泡は消泡剤
(Adecanol、旭電化工業製) を回分培養開始時に0.3
0ml/L添加しておき、その後は必要に応じて少量添加
することで実施した。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】参考例2 参考例1のGCP101株から単離したAOX2プロモ
ーター [変異型。天然型AOX2プロモーター(TEAST,
5, 167-177 (1988)またはMol. Cell, Biol.,9, 1316-1
323 (1989))中、開始コドン上流の255番目の塩基が
TからCに変異したもの] を用いてHSA発現用プラス
ミドpMM042を構築し、ピキアパストリス(Pichia
pastoris) GTS115株に導入し、形質転換体UHG
42−3株を得た(特願平3−63599号)。参考例
1に準じてこのUHG42−3株を培養し、HSAを産
生させた。
【0033】参考例3 HSAの精製 [i] 培養上清の分離〜膜分画(II) 参考例1、または参考例2で得られた培養液約800L
を圧搾することにより培養上清を分離した。培養上清を
分画分子量が30万の限外濾過膜で処理した。次いで、
分画分子量が3万の限外濾過膜を用いて液量を約80L
に濃縮した〔膜分画(I)〕。この濃縮液を60℃、3
時間の加熱処理後、急速に約15℃に冷却し、pH4.
5に調整し、再度分画分子量が30万の限外濾過膜を用
いて除去した〔膜分画(II)〕。次いで、分画分子量
が3万の限外濾過膜を用いてアルブンミン溶液中の緩衝
液を50mM塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝
液,pH4.5に交換した。
【0034】[ii]陽イオン交換体処理 50mM塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝液,p
H4.5で平衡化したS−セファロース充填カラムにア
ルブミンを吸着させ、同緩衝液で十分洗浄したのち、
0.3M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液、
pH9でアルブミンの溶出を行った。
【0035】[iii] 疎水性クロマト処理 S−セファロース充填カラムから溶出されたアルブミン
溶液を0.15M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸
緩衝液,pH6.8で平衡化したフェニルセルロファイ
ンを充填したカラムに添加した。この条件ではアルブミ
ンはフェニルセルロファインを吸着することなく、カラ
ムを通過した。カラムを通過したアルブミンは、分画分
子量3万の限外濾過膜を用いて液量を約50Lに濃縮す
るとともに、アルブミン溶液中の緩衝液を50mMリン
酸緩衝液、pH6.8に交換した。
【0036】[iv]陰イオン交換体処理 疎水クロマト処理後、濃縮及び緩衝液交換を行ったアル
ブミン溶液を50mMリン酸緩衝液,pH6.8で平衡
化したDEAE−セファロースを充填したカラムに添加
した。この条件ではアルブミンはDEAE−セファロー
スに吸着することなく、カラムを通過した。
【0037】[v] HSAの塩析処理 5%濃度のHSAに塩化ナトリウムを添加して最終濃度
1Mとした溶液を、酢酸でpH3.5に調整し、HSA
を沈澱させた。この沈澱を遠心により上清と分離し、不
純物を除去した。
【0038】実施例1 参考例1、3を経て得られた精製25%組換えHSA1
mlにDIAIONCRB02(三菱化成製)1gを加
え、pH6.8、イオン強度5mmhoの条件下、室温
で24時間攪拌した。樹脂を蒸留水で洗浄後、回収され
たHSAの吸光度を測定した。尚、着色度はA500 /A
280の値で求めた。また、DIAION CRB02の
代わりにDIAION CR20(三菱化成製)、LE
WATIT TP214(バイエル製)を用いる以外は
上記と同様にしてそれぞれHSAの吸光度を測定し、着
色度を求めた。結果を表4に示す。また、対照として本
発明のキレート樹脂以外の他の担体、および陽イオン交
換体、陰イオン交換体、疎水性クロマト用担体の各処理
による結果も併せて表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】実施例2 (測定波長の検討)参考例1、3を経て得られた精製2
5%組換えHSA1mlにDIAIONCRB02(三
菱化成製)1gを加え、pH6.8、イオン強度5mm
hoの条件下、室温で24時間攪拌した。樹脂を蒸留水
で洗浄後、回収されたHSAについて350〜650n
mにおける吸光度を測定した。その結果、波長500n
mでの吸光度の減少度が最も高かった。結果を表5に示
す。
【0041】
【表5】
【0042】実施例3 参考例2、3を経て得られた精製25%組換えHSA1
mlにDIAIONCRB02(三菱化成製)1gを加
え、pH6.8、イオン強度5mmhoの条件下、室温
で24時間攪拌した。樹脂を蒸留水で洗浄後、回収され
たHSA〔濃度25%(w/v)〕について波長280
および500nmにおける吸光度を測定し、A500 /A
280 を算出したところ、0.002であった。また、着
色度(A500 /A280 )はキレート樹脂処理前後で1/
5に低減した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/00 B 8214−4B // A61K 37/04 ABY 8314−4C (72)発明者 上出 佳永子 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 野田 宗宏 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 大村 孝男 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内 (72)発明者 横山 和正 大阪府枚方市招提大谷2丁目25番1号 株 式会社ミドリ十字中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遺伝子操作により発現されるヒト血清ア
    ルブミンをキレート樹脂で処理することを特徴とするヒ
    ト血清アルブミンの脱色方法。
  2. 【請求項2】 キレート樹脂がポリオール基、ポリアミ
    ン基またはチオ尿素基から選ばれたキレート生成能を有
    する交換基をリガンドとして有する請求項1記載のヒト
    血清アルブミンの脱色方法。
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