JP2004002449A - ヒト血清アルブミンおよびその製造方法 - Google Patents

ヒト血清アルブミンおよびその製造方法 Download PDF

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Akinori Washimi
鷲見 昭典
Munehiro Noda
野田 宗宏
Shoichi Ishikawa
石川 昭一
Masahide Kondo
近藤 雅英
Takao Omura
大村 孝男
Kazumasa Yokoyama
横山 和正
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Abstract

【課題】遺伝子操作にて得られるHSAにおいて、培地中の夾雑物質、産生宿主の含有物、分泌・産生物などのHSA含有画分中に存在する夾雑物質を除去する。
【解決手段】遺伝子操作により得られるヒト血清アルブミン(HSA)をpH2〜5、塩濃度0.4〜1Mの条件下でアルキル基型の疎水性クロマト用担体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.01〜0.3Mの条件下で溶出する工程を含むヒト血清アルブミンの製造方法。得られたHSAは極めて高純度であり、特にフェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質に由来する各種副作用を回避することができる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子操作により得られる、新規な性状を有するヒト血清アルブミンおよびそのヒト血清アルブミンを得るための一手法であるヒト血清アルブミンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルブミン、特にヒト血清アルブミン(以下、「HSA」ともいう。)は血漿の主要な蛋白構成成分である。この蛋白は肝臓中で作られ、主に血流中で正常な浸透圧を維持する責を負う。また、種々の血清分子のキャリアーとしての機能を持っている。
【0003】
HSAは種々の臨床上の状況において投与される。例えば、ショックや熱傷患者では血液量を元に戻し、それにより外傷に関連するいくつかの症状を改善させる。低蛋白血症や胎児性赤芽球症に罹っている患者にもHSAによる治療を必要とすることがある。
【0004】
したがって、HSAを投与する基本的な治療上の意義は、外科手術、ショック、火傷、浮腫を起こす低蛋白血症におけるがごとく、血管からの液体の損失がある様な状態を治療する点に存する。
【0005】
現在、HSAは、主として採取した血液の分画からの産物として製造されている。この製造法の欠点は不経済であることと、血液の供給が困難であるということである。また、血液は肝炎ウイルスのように好ましくない物質を含んでいることがある。したがって、HSAの代替の原料を開発することが有益となろう。
【0006】
ところで、組換DNA技術の出現によって、多種のポリペプチドの微生物による生産が可能となった。HSAにおいても、遺伝子操作の技術により大量生産し、それを高度精製する技術が確立されつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、遺伝子操作においては、産生宿主の培養時、HSAの精製時などに、培地中の或種の成分、微生物の分泌・産生物などが遊離状態または他の成分との結合状態で、HSA含有画分中に夾雑物質として存在することになる。これらの夾雑物質は、従来の血漿由来HSAには夾雑してこなかった成分であり、かかる成分の除去は遺伝子操作により得られるHSAに独特の問題点であり、これに対応するための新たな精製手段が要求される。
【0008】
したがって、本発明が解決すべき課題は、遺伝子操作により得られ、かつ産生宿主関連あるいはその他の夾雑物質を除去したHSAを提供することにある。本発明が解決すべき他の課題は、上記HSAの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる実情下に鋭意研究を進めた結果、遺伝子操作により得られるHSAを回収するに際して、当該HSAの精製工程において、特定の条件下で疎水性クロマト処理を行うことにより、フェノール硫酸法で検出可能な遊離の夾雑物質が充分に除去された高純度のHSAを提供できることを見出し、本発明を完成した。なお、遺伝子操作により得られる高純度HSAは新規物質である。また、フェノール硫酸法で検出可能な遊離の夾雑物質が充分に除去されることは、これら夾雑物質に起因する各種副作用を回避し、安全なHSA製剤を提供することに意義を有するものである。
【0010】
本発明は、下記の要旨を有するものである。
▲1▼ 遺伝子操作により得られるHSAであって、フェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質の含有量が、HSA250mg当たり1μg以下であることを特徴とするHSA。
▲2▼ 遺伝子操作により得られるHSAをpH2〜5、塩濃度0.4〜1Mの条件下でアルキル基型の疎水性クロマト用担体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.01〜0.3Mの条件下で溶出する工程を含むことを特徴とするHSAの製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
(1)遺伝子操作による得られるHSA
本発明において用いられる遺伝子操作により得られるHSAは、遺伝子操作によって得られるのであれば、その由来に特に制限はない。したがって、当該HSAを産生させるためのHSA産生宿主は、遺伝子操作を経て調製されたものであれば特に限定されず、公知文献記載のものの他、今後開発されるものであっても適宜利用することができる。当該宿主としては、具体的には遺伝子操作を経てHSA産生性とされた菌(例えば、大腸菌、酵母、枯草菌など)、動物細胞などが挙げられる。特に、本発明においては、宿主として、酵母、就中サッカロマイセス属〔例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)〕、もしくはピキア属〔例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)〕を使用して得られたHSAが好ましい。また、栄養要求性株や抗生物質感受性株を使用して得られたHSAであってもよい。さらにまた、サッカロマイセス・セレビシエAH22株(a, his 4, leu 2, can 1)、ピキア・パストリスGTS115株 (his 4)などを使用して得られたHSAが好適に用いられる。
【0012】
本発明において、HSA産生宿主の調製方法およびその培養によるHSAの生産方法、培養物からのHSAの分離採取方法はすべて公知ならびにそれに準じた手法を採用することによって実施される。例えば、HSA産生性宿主(またはHSA産生株)の調製方法としては、例えば通常のヒト血清アルブミン遺伝子を用いる方法(特開昭58−56684号、同58−90515号、同58−150517号の各公報)、新規なヒト血清アルブミン遺伝子を用いる方法(特開昭62−29985号、特開平1−98486号の各公報)、合成シグナル配列を用いる方法(特開平1−240191号公報)、血清アルブミンシグナル配列を用いる方法(特開平2−167095号公報)、組換えプラスミドを染色体上に組込む方法(特開平3−72889号公報)、宿主同士を融合させる方法(特開平3−53877号公報)、メタノール含有培地中で変異を起こさせる方法、変異型AOXプロモーターを用いる方法(特願平3−63598号、同3−63599号の各公報)、枯草菌によるHSAの発現(特開昭62−25133号公報)、酵母によるHSAの発現(特開昭60−41487号、同63−39576号、同63−74493号の各公報)、ピキア酵母によるHSAの発現(特開平2−104290号公報)などが例示される。
【0013】
このうち、メタノール含有培地中で変異を起こさせる方法は、具体的には以下のように行われる。すなわち、まず適当な宿主、好ましくはピキア酵母、具体的にはGTS115株(NRRL寄託番号Y−15851)のAOX遺伝子領域に常法によりAOXプロモーター支配下にHSAが発現する転写ユニットを有するプラスミドを導入して形質転換体を得る(特開平2−104290号公報を参照)。この形質転換体はメタノール培地中での増殖能は弱い。そこで、この形質転換体をメタノール含有培地中で培養して変異を起こさせ、生育可能な菌株のみを回収する。この際、メタノール濃度としては、0.0001〜5%程度が例示される。培地は人工培地、天然培地のいずれでもよい。培養条件としては15〜40℃、1〜1000時間程度が例示される。
【0014】
また、HSA産生宿主の培養方法(すなわち、HSAの産生方法)としては、上記の各公報に記載された方法の他に、フェッドバッチ培養により、高濃度のグルコースを適度に少量づつ供給し、産生菌体に対する高濃度基質阻害を避けて高濃度の菌体と産生物を得る方法(特願平1−219561号公報)、培地中に脂肪酸を添加してHSAの産生を増強する方法(特願平3−81719号公報)などが例示される。
【0015】
さらにHSAの分離採取方法としては、上記の各公報に記載された方法の他に加熱処理によるプロテアーゼの不活化(特開平3−103188号公報)、陰イオン交換体、疎水性担体および活性炭からなる群より選ばれた少なくとも一つを用いてHSAと着色成分とを分離することによる着色抑制方法(特開平4−54198号公報)などが例示される。
【0016】
形質転換宿主の培養に用いられる培地は、通常この分野で既知の培地に炭素数10〜26の脂肪酸またはその塩を添加したものが好適に使用され、培養条件は一般的な常法に準じて実施される。培地は合成培地、天然培地のいずれでもよく、液体培地が好ましい。例えば、合成培地としては、一般に炭素源として各種糖類、窒素源として尿素、アンモニウム塩、硝酸塩など、微量栄養素として各種ビタミン、ヌクレオチドなどの他、無機塩としてMg、Ca、Fe、Na、K、Mn、Co、Cuなどが使用される。YNB液体培地〔0.7%イーストナイトロジエンのベース(Difco社製)、2%グルコース〕などが挙げられる。また、天然培地としては、YPD液体培地〔1%イーストエキストラクト(Difco社製)、2%バクトペプトン(Difco社製)、2%グルコース〕が例示される。培地のpHは中性または弱塩基性、弱酸性でよい。また、メタノール資化性宿主の場合は、メタノール含有培地を用いることができる。この場合メタノール濃度は0.01〜5%程度である。
【0017】
培養温度は、15〜43℃(酵母は20〜30℃、細菌は20〜37℃)が好ましい。培養時間は1〜1000時間程度であり、培養は静置または振盪、攪拌、通気下に回分培養法や半回分培養法あるいは連続培養法により実施される。なお、当該培養に先立って前培養を行うことが好ましい。この際の培地としては、例えばYNB液体培地やYPD液体培地が使用される。前培養の培養条件は次の通りである。すなわち、培養時間は10〜100時間、温度は酵母では30℃、細菌では37℃程度が好ましい。
【0018】
培養終了後、HSAは培養濾液、菌体、細胞などからそれぞれ公知の分離手段により採取される。
【0019】
(2)HSAの精製
本発明のHSAの精製工程としては、各種分画法、吸着クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過、密度勾配遠心分離法、透析などの公知の方法が採用される。
当該精製工程としては、例えば以下の▲1▼〜▲7▼を含む工程が好適に挙げられる。
▲1▼ ヒト血清アルブミンの産生宿主の培養上清を分画分子量10万〜50万、および1000〜5万の限外濾過膜を用いて処理する。
▲2▼ 50〜70℃で30分〜5時間加熱処理する。
▲3▼ pH3〜5で酸処理する。
▲4▼ 分画分子量10万〜50万の限外濾過膜を用いて処理する。
▲5▼ pH3〜5、塩濃度0.01〜0.2Mの条件下で陽イオン交換体に接触させた後に、pH8〜10、塩濃度0.2〜0.5Mの条件下で溶出する。
▲6▼ pH6〜8、塩濃度0.01〜0.5Mの条件下で疎水性クロマト用担体に接触させて、非吸着画分を回収する。そして
▲7▼ pH6〜8、塩濃度0.01〜0.1Mの条件下で陰イオン交換体に接触させて、非吸着画分を回収する。
【0020】
また、前記工程▲6▼の代わりに、pH6〜8、塩濃度1〜3Mの条件下で疎水性クロマト用担体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.01〜0.5Mの条件下で溶出する工程、または前記工程▲7▼の代わりに、pH6〜8、塩濃度0.001〜0.05Mの条件下で陰イオン交換体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.05〜1Mの条件下で溶出する工程、さらには前記工程▲5▼と▲6▼の間、▲6▼と▲7▼の間、または▲7▼の後に、pH3〜5、塩濃度0.5〜3Mの条件下で塩析処理し、沈澱画分を回収する工程をさらに含むものであってもよい。
【0021】
(3)HSAの脱色
HSAの脱色工程は、上記精製工程において、特に好ましくはその最後に組み込まれ、特定のリガンド部を有するキレート樹脂とHSAを接触させることにより行われる。
【0022】
キレート樹脂の担体部分は疎水性を有する担体であることが好ましく、例えばスチレンとジビニルベンゼンの共重合体、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。
【0023】
一方、リガンド部は、N−メチルグルカミン基などのポリオール基、イミノ基、アミノ基、エチレンイミノ基などを分子内に複数個有するポリアミン基(この中にはポリエチレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン基も含まれる)、およびチオ尿素基が挙げられる。上記担体部分とリガンド部を有するキレート樹脂の市販品としては、担体部分がいずれもスチレンとジビニルベンゼンの共重合体であるDIAION CRB02(リガンド部;N−メチルグルカミン基、三菱化成製)、DIAION CR20(リガンド部;−NH(CHCHNH)H、三菱化成製)、LEWATIT TP214(リガンド部;−NHCSNH、バイエル製)、アンバライトCG4000が好適に使用される。
【0024】
当該キレート樹脂による処理条件は、好適には次の通りである。
pH条件:酸性または中性(pH3〜9、好ましくはpH4〜7)
時間:1時間以上、好ましくは6時間以上
イオン強度:50mmho以下、好ましくは1〜10mmho
混合比:HSA250mgに対して樹脂0.1〜100g、好ましくは1〜10g(湿重量)
【0025】
(4)本発明における疎水性クロマト処理
上記工程(▲1▼〜▲7▼およびキレート樹脂処理を含む)を経て得られたHSAにおいては、フェノール硫酸法で検出可能な遊離の夾雑物質が充分に除去されていない。
【0026】
そこで、これらの処理終了後に得られるHSAを、pH2〜5(好ましくは、pH3〜4)、塩濃度0.4〜1M(好ましくは、0.4〜0.7M)の条件下で疎水性クロマト用担体に接触させた後に、pH6〜8(好ましくは、pH6.5〜7)、塩濃度0.01〜0.3M(好ましくは、0.05〜0.2M)の条件下で溶出する工程を組み合わせる。または、前記の工程▲6▼の代わりに当該疎水性クロマト処理工程を組み合わせる。こうして、フェノール硫酸法で検出可能な遊離の夾雑物質が充分に除去されたHSAを回収することができる。
【0027】
ここにフェノール硫酸法とは、一般的には糖質の比色定量法の一つであり、検体である糖水溶液にフェノール水溶液を添加し、次いで濃硫酸を添加して振盪することにより生ずる溶解熱を利用して糖から形成されるフルフラール誘導体とフェノールとの反応呈色物を比色測定する方法である。また、フェノール硫酸法で検出可能な夾雑物質としては、例えば中性糖(ペントース、ヘキソースなど)、単糖グリコシド(オリゴ糖、複合糖質、ウロン酸など)、メチル化糖などの、産生宿主由来成分に対する抗体とは抗原抗体反応を起こさない非抗原性の夾雑物質が例示される。
【0028】
疎水性クロマト用担体としては、炭素数4〜18のアルキル基型(例:ブチル基型、オクチル基型、オクチルデシル基型など)、フェニル基型などが例示される。ブチル基型としては、ブチル−アガロース、ブチル−ポリビニル(商品名ブチル−トヨパール、東ソー社製)などが、オクチル基型としては、オクチル−アガロースなどが、オクチルデシル基型としては、オクチルデシル−アガロースなどが、フェニル基型としては、フェニル−セルロース(商品名フェニルセロファイン、生化学工業社製)などが例示される。
【0029】
また、上記の疎水性クロマト処理を行わずとも、固定化ConA処理(例えば、ConA−セファロースなど)によっても、本発明のHSA、すなわちフェノール硫酸法で検出可能な遊離の夾雑物質が充分に除去されたHSAを得ることができる。
【0030】
(5)精製された遺伝子操作由来のHSAの性状
本発明のHSAは、分子量約6万7千、等電点4.6〜5.0の単一物質である。当該HSAは、単量体のみからなり、二量体、重合体または分解物を実質的に含まない。具体的には、二量体、重合体および分解物の全含有量は0.01%以下程度である。また、産生宿主に由来する夾雑成分(例えば、蛋白質、多糖成分など)を実質的に含まない。より詳細には(正確には)産生宿主由来の夾雑成分のうち、抗原性を有するものを実質的に含まない。具体的には、本発明のHSAとしては、HSA25%溶液の場合で、夾雑成分が1ng/ml以下、好ましくは0.1ng/ml以下のものが例示される。また、本発明のHSAとしては、多糖成分が1ng/ml以下、好ましくは0.1ng/ml以下のものが例示される。結果的にHSAの純度としては99.999999%以上、好ましくは99.9999999%以上のものが例示される。当該HSAの着色度としてはHSA25%溶液の場合でA350/A280が0.01〜0.05、A450/A280が0.001〜0.02、A500/A280が0.001〜0.005程度が例示される。また、HSAに結合している脂肪酸量がHSA1分子当たり1分子以下、好ましくは0.1分子以下のものが例示される。
【0031】
特に本発明のHSAは、フェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質をHSA250mg当たり1μg以下しか含有しないことを特徴とする。当該夾雑物質のうち非抗原性のものは、産生宿主由来成分に対する抗体とは抗原抗体反応を起こさない。
【0032】
【発明の効果】
本発明のHSAは、フェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質に由来する各種副作用を回避することができる。したがって、安全なHSA製剤を提供することができる。また、本発明の方法によれば、遺伝子操作により得られるHSAにおいて、培地中の或種の夾雑物質、微生物(産生宿主)が含有または分泌する物質などのHSA含有画分中に存在する夾雑物質、特にフェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質を充分に除去することができる。したがって、本発明方法により得られるHSAは極めて高純度であり、本発明のHSAを得ることができる。
【0033】
【実施例】
本発明をより詳細に説明するために実施例および実験例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0034】
参考例1
(1)使用菌株:Pichia pastoris GCP101株
特開平2−104290号公報に記載の方法により、ピキアパストリス(Pichia pastoris)GTS115(his4)のAOX遺伝子領域に、AOXプロモーター支配下にHSAが発現する転写ユニットを持つプラスミドpPGP1のNot1で切断した断片を置換して、PC4130が得られる。この株はAOX遺伝子が存在しないためにメタノールを炭素源とする培地での増殖能が低くなっている(Mut−株)。
【0035】
PC4130をYPD培地(1%イーストエキストラクト、2%バクトペプトン、2%グルコース)3mlに植菌し、24時間後に初期OD540=0.1となるようにYPD培地50mlに植菌した。3日間30℃で培養後に初期OD540=0.1となるようにYPD培地50mlに植菌した。さらに3日毎に同様の継代を繰り返した。継代毎に菌体を10cells/plateになるように滅菌水で希釈して2%MeOH(メタノール)−YNBw/oa.a.プレート(0.7%イーストナイトロジエンベースウイズアウトアミノアシッド、2%メタノール、1.5%寒天末)に塗布し、30℃5日間培養してコロニーの有無を判断した。その結果、12日間継代後に塗布した2%MeOH−YNBw/oa.a.プレートから20個のコロニーが生じた。このプレートではMut−株はほとんど生育できず、Mut+株は生育できる。すなわち、このプレートではコロニーが生じるということはメタノールの資化性が上昇し、Mut+に変換した株が得られたことを示している。生じたコロニーの内の1つを適当に滅菌水で希釈して2%MeOH−YNBw/oa.a.プレートに拡げ、シングルコロニーに単離した。その1つをGCP101と名付けた。
【0036】
(2)菌株の培養
(前々培養)
グリセロール凍結ストック菌株1mlを200mlのYPD培地(表1)を含むバッフル付1,000ml容三角フラスコに植菌、30℃にて24時間振盪培養した。
【0037】
【表1】
Figure 2004002449
【0038】
(前培養)
YPD培地5Lを含む10L容ジャーファーメンターに前々培養液を植菌し、24時間通気攪拌培養した。培養温度は30℃、通気量は5L/分とした。また、前培養においてはpHの制御は実施しなかった。
【0039】
(本培養)
バッチ培養用培地(表2)250Lに前培養液を植菌し、1,200L容ファーメンターを用いて通気攪拌培養した。槽内圧を0.5kg/cm、最大通気量を800N−L/minとして溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度の50%〜30%程度を保持するように、攪拌速度を制御しながら回分培養を開始した。回分培養において培地中のグリセロールが消費された時点よりフィード培地(表3)の添加を開始した。このフィード培地の添加にはコンピュータを使用し、培地中にメタノールが蓄積しないように制御しながら高密度培養を実施した。pHは28%アンモニア水を添加することにより、pH5.85に定値制御した。消泡は消泡剤(Adecanol、旭電化工業製)を回分培養開始時に0.30ml/L添加しておき、その後は必要に応じて少量添加することで実施した。
【0040】
【表2】
Figure 2004002449
【0041】
【表3】
Figure 2004002449
【0042】
参考例2
参考例1のGCP101株から単離したAOX2プロモーター [変異型。天然型AOX2プロモーター(TEAST, 5, 167−177 (1988)またはMol. Cell, Biol., 9, 1316−1323 (1989))中、開始コドン上流の255番目の塩基がTからCに変異したもの]を用いてHSA発現用プラスミドpMM042を構築し、ピキアパストリス(Pichia pastoris)GTS115株に導入し、形質転換体UHG42−3株を得た(特願平3−63599号公報)。参考例1に準じてこのUHG42−3株を培養し、HSAを産生させた。
【0043】
参考例3
[i]培養上清の分離〜膜分画(II)
参考例1ないしは参考例2で得られた培養液約800Lを圧搾することにより培養上清を分離した。培養上清を分画分子量が30万の限外濾過膜で処理した。次いで、分画分子量が3万の限外濾過膜を用いて液量を約80Lに濃縮した〔膜分画(I)〕。
【0044】
続いて、60℃、3時間の加熱処理を行った。加熱処理は5mMカプリル酸ナトリウム、10mMシステイン、100mMアミノグアニジンの共存下にpH7.5で行った。加熱処理液を急速に約15℃に冷却し、pH4.5に調整した後に、再度分画分子量が30万の限外濾過膜を用いて処理した〔膜分画(II)〕。次いで、分画分子量が3万の限外濾過膜を用いてアルブミン溶液中の緩衝液を50mM塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝液,pH4.5に交換した。
【0045】
[ii]陽イオン交換体処理
50mM塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝液,pH4.5で平衡化したS−セファロース充填カラムにアルブミンを吸着させ、同緩衝液で十分洗浄したのち、0.3M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液、pH9でアルブミンの溶出を行った。
【0046】
[iii]疎水性クロマト処理
S−セファロース充填カラムから溶出されたアルブミン溶液を0.15M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液,pH6.8で平衡化したフェニルセルロファインを充填したカラムに添加した。この条件ではアルブミンはフェニルセルロファインに吸着することなく、カラムを通過した。カラムを通過したアルブミンは、分画分子量3万の限外濾過膜を用いて液量を約50Lに濃縮するとともに、アルブミン溶液中の緩衝液を50mMリン酸緩衝液、pH6.8に交換した。
【0047】
[iv]陰イオン交換体処理
疎水性クロマト処理後、濃縮及び緩衝液交換を行ったアルブミン溶液を50mMリン酸緩衝液,pH6.8で平衡化したDEAE−セファロースを充填したカラムに添加した。この条件ではアルブミンはDEAE−セファロースに吸着することなく、カラムを通過した。
【0048】
[v]HSAの塩析処理
5%濃度のHSAに塩化ナトリウムを添加して最終濃度1Mとした溶液を、酢酸でpH3.5に調整し、HSAを沈澱させた。この沈澱を遠心により上清と分離し、不純物を除去した。
【0049】
[vi]脱色処理
25%濃度の精製HSA1mlにDIAION CRB02(担体部分はスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、リガンド部分はN−メチルグルカミン基からなるキレート樹脂,三菱化成製)1gを加え、pH6.8、イオン強度5mmhoの条件下、室温で24時間攪拌した。樹脂を蒸留水で洗浄し、非吸着画分をHSAとして回収した。
【0050】
実施例1
参考例1(または参考例2)および参考例3(但し、[v]のHSAの塩析処理を除く)を経て調製された酵母由来HSA含有水溶液に塩化ナトリウムを最終濃度0.5Mとなるように添加し、pHを3.5に調整してフェニルセルロファイン充填カラムにアプライした。0.5M塩化ナトリウム溶液(pH3.5)で洗浄後に0.15M塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH6.8)で溶出した。
【0051】
実験例1
参考例3の各精製工程のうち表4の例1〜6に示される工程を経て得られたHSAについて、下記の項目の測定を行った。なお例6において、固定化ConA処理は、ConA−セファロース(ファルマシア社製)を用いて処理した。
▲1▼ フェノール硫酸法による遊離の夾雑物質量の測定
各HSA中の遊離の夾雑物質量を、公知の手法に従ってフェノール硫酸法で測定した。まず、各HSAを直接フェノール硫酸法で測定して、夾雑物質の総量(すなわち、遊離状態のものおよび非遊離状態のものの合計量)を算出した。一方、同じく各HSAをConA−セファロース(ファルマシア社製)で処理して、パス画分であるHSAをフェノール硫酸法で測定し、夾雑物質量(非遊離状態のもの)を算出した。両者の測定量の差が、遊離状態の夾雑物質量を意味する。標準曲線はマンナンを標準品として用いて作成した。以上の結果を表4に示す。
【0052】
▲2▼ 非抗原性であることの確認
HSA非産生酵母の培養上清を本発明方法と同様の方法で粗精製したものをウサギに免疫し、得られた抗血清を用いて精製HSA溶液中に存在する酵母由来成分の検出を行った。測定は酵素免疫測定法(EIA)で行った。検体はHSA濃度として25%(250mg/ml)に調整したものを用いて測定した。本発明の疎水クロマト処理前後におけるHSAは、ともに0.1ng/mlの検出限界において酵母由来成分が検出されなかった。
【0053】
【表4】
Figure 2004002449

Claims (2)

  1. 遺伝子操作により得られるヒト血清アルブミンであって、フェノール硫酸法により検出可能な遊離の夾雑物質の含有量が、ヒト血清アルブミン250mg当たり1μg以下であることを特徴とするヒト血清アルブミン。
  2. 遺伝子操作により得られるヒト血清アルブミンをpH2〜5、塩濃度0.4〜1Mの条件下でアルキル基型の疎水性クロマト用担体に接触させた後に、pH6〜8、塩濃度0.01〜0.3Mの条件下で溶出する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のヒト血清アルブミンの製造方法。
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