JPH0675037B2 - 溶鉄成分の検出方法およびそれに基づく精錬方法 - Google Patents

溶鉄成分の検出方法およびそれに基づく精錬方法

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JPH0675037B2
JPH0675037B2 JP27943288A JP27943288A JPH0675037B2 JP H0675037 B2 JPH0675037 B2 JP H0675037B2 JP 27943288 A JP27943288 A JP 27943288A JP 27943288 A JP27943288 A JP 27943288A JP H0675037 B2 JPH0675037 B2 JP H0675037B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、酸素または酸素を含む混合ガスを吹きつける
転炉吹錬において、溶融状態にある鉄(以下単に溶鉄と
言う)中の各種成分の濃度(含有率)を精度よく分析し
検出するとともに、この検出値を用いて、溶鉄の精錬を
制御する方法に関するものである。
従来の技術 従来前記転炉等の精錬プロセスにおいて溶鉄の成分を検
出する方法としては、精錬過程における溶鉄をサンプリ
ングし、固化させたブロック試料によってスパーク発光
分光分析法を用いて検出することが一般的であった。と
ころが近年特に、前記転炉においてはより高精度な品質
管理、あるいはMn鉱石の炉内直接還元など操業中に著し
く変化する各種成分濃度に応じて種々の操業因子を迅速
に制御する操業が指向されており、前記溶鉄を直接分析
対象とするオンラインリアルタイムの分析、検出方法が
強く要請されている。
このような要請に対して本発明者らも種々の研究を行
い、溶融金属に化学炎等を吹きつけることによって形成
される局所的高温部から発生する発光スペクトルを分光
分析する方法、および溶鉄に酸素あるいは酸素を含む混
合ガスを吹きつけることによって形成される火点から発
生する発光スペクトルを分光分析する方法を開発し、先
に特願昭60−293658号および特願昭60−207975号として
出願した。
発明が解決しようとする課題 前述した火点から発生する発光スペクトルを分光分析す
る方法(以下、従来方法と言う)は、溶鉄表面に酸素あ
るいは酸素を含む混合ガスを吹きつける場合にガス中の
酸素の含有率、吹きつけ距離などの吹きつけ条件を同一
とすれば火点の温度はほぼ一定であり、その変化量は±
20℃位と見込まれることを前提としたものであった。
しかしながらその後さらに、実炉での調査、研究を重ね
た結果、前記吹きつけ条件が同一であっても溶鉄中に含
まれる成分、溶鉄表面上に存在する酸化物などの影響に
よって、火点の温度は大きく変化する場合があり、火点
の温度が一定であると考えていた前記従来方法のみで
は、その分析、検出精度に問題のあることが判った。
本発明は、前記従来方法のさらに改良を図り、溶鉄に酸
素含有ガスを吹きつけることによって形成される火点か
ら発生する発光スペクトルの分光分析において、より精
度の高い溶鉄成分の検出を可能ならしめることを第1の
課題とし、この高精度で得られる溶鉄成分の情報に基づ
いて、精錬条件、副原料の投入方法等を変化させ、効率
より溶鉄の目標成分に到達せしめる精錬法の提供を第2
の課題とするものである。
課題を解決するための手段 前記課題を解決する本発明は、溶鉄表面に酸素または酸
素を含む混合ガスを吹きつけた時に形成される火点から
発生する発光スペクトルを分光することにより溶鉄成分
を分析し検出する方法において、あらかじめ前記火点の
各温度範囲における溶鉄中被分析成分濃度と該被分析成
分の発光スペクトル強度との相関を求めておき、前記分
光操作と同時に前記火点の温度を実測し、該温度実測値
に基づき、前記溶鉄中被分析成分濃度を補正することを
特徴とする溶鉄成分の検出方法に関する。
また前記溶鉄成分の検出方法において、あらかじめ各火
点温度における溶鉄中被分析成分濃度と該被分析成分の
発光スペクトル強度との相関係数K(T)と、分析装置
および前記被分析成分の測定波長によって定まる自己吸
収係数nを求めておき、実測された被分析成分の発光ス
ペクトル強度を後述する所定の式に基づいて演算処理
し、被分析成分の濃度を更に精度よく補正することを特
徴とする溶鉄成分の検出方法に関する。
また前記溶鉄成分検出方法における溶鉄中被分析成分
が、Zn、Cu、Sn、Al、Si、Pb、Ni、Cr等の高蒸気圧元素
であることを特徴とし、また前述した検出方法に基づい
て溶鉄中被分析成分の内のMn濃度を検出し、あらかじめ
求められたMn濃度とP濃度との相関よりP濃度を検出す
る方法に関する。
更に前述した検出方法に基づいて吹錬中に溶鉄中被分析
成分濃度を検出し、当該操業条件下における目標値に対
する前記検出値との差を求め、該差を解消するようにラ
ンス高さ、送酸速度、底吹きガス量、副原料の種別、投
入量、および投入タイミング等の内の1もしくは2以上
を制御することを特徴とする精錬方法に関する。
作用 転炉においては、吹錬のために吹き込まれる酸素あるい
は酸素を含む混合ガスと溶鉄中成分であるC、Feが燃焼
反応を起こし火点と呼ばれる高温部が形成されることは
従来より知られている。この火点温度は、溶鉄中のCと
酸素の燃焼熱および排ガス顕熱から得られる理論燃焼温
度に基づいて計算され、例えば溶鉄中のCが約3%、純
酸素を2.5Nm3/min・t吹きつける吹錬においては約2400
℃程度になるものと考えられていた。しかしながら、本
発明者らは、実炉における非点現象の調査、研究を継続
したところ、同一吹きつけ条件によっても、溶鉄浴面の
揺動による酸素ジェットの衝突面積の変化に伴う溶鉄浴
面の酸素密度の変化やこの溶鉄浴面上に存在する溶融酸
化物(スラグ)による抜熱量の違いにより火点温度が変
化している状況のあることを知見した。したがって、火
点から発生する発光スペクトルの分光分析においても火
点温度の影響を大きく受けるものと推定した。
このような火点温度の影響をなくすためには、例えば火
点温度の変化に追従して混合ガス中の酸素含有率を変化
させることにより火点温度を一定に保つ方法が考えられ
るが、特別の制御装置を必要としたり、転炉における吹
錬の制御性を乱す外乱要因となるため有効な手段ではな
い。
そこで、本発明者らは火点温度と発光スペクトルの強度
との間に何らかの相関があるものと考え、以下に示すよ
うな実験、研究を行った。
さて、火点から発生する発光スペクトル強度は、溶鉄か
らの赤外輻射による連続スペクトル強度と各測定元素に
基づく輝線スペクトル強度の和の形で、下記(1)式で
表すことができる。
Iabs=IIR+IM =α(2πhc2)exp(−hc/kλT) +β{JM(T)}exp(−hc/kλT) ={α・2πhc2+β・JM(T)} exp(−hc/kλT) ・・・(1) 但し Iabs:測定される発光スペクトル強度 IIR:赤外輻射による連続スペクトル強度 IM:測定される元素の発光スペクトル強度 λ:測定波長、h:プランク定数、c:光の強度、T:火点の
温度、k:ボルツマン定数、JM(T):測定される元素の
蒸発速度に依存した火点表面近傍の濃度、α、β:定数 このように、測定される発光スペクトル強度は火点温度
に依存し、火点温度の影響を受ける。赤外輻射および原
子の発光に寄与するexp(−hc/kλT)の項の補正につ
いては、溶鉄中の目的とする元素を測定する際に、溶鉄
からの赤外輻射による発光強度を同時に測定して、バッ
クグランド発光の強度を規格化することにより、火点の
温度変化の影響を補正することができる。測光系には波
長変調システムを用いれば、シグナルとバックグランド
とを分離することができる。
次に、測定される元素の蒸発速度に依存した火点表面近
傍の濃度JM(T)の項について説明する。一般に、溶鉄
中に含まれる溶質の蒸発機構は大きく分けると、その溶
質の溶鉄内の拡散による移動、表面からの蒸発、気相中
の拡散による移動の3つの過程からなると考えられてい
る。しかし、各過程における特性値、たとえば溶鉄内の
拡散係数、蒸発圧、気相中の拡散係数は火点のような高
温域では得られておらず、また、律速過程に関する知見
もほとんどないため火点表面近傍の濃度の温度依存性を
推定することは困難である。
そこで、本発明者らは火点表面近傍の溶鉄濃度の温度依
存性を実際操業によって評価する方法の開発を試みた。
而して予め予備テスト、あるいはオフラインの試験炉な
どで、溶鉄中の分析対象元素の含有率、即ち被分析成分
に対する発光スペクトル強度が火点温度でどのような影
響を受けるか調査した。その結果、後述する第5図に示
すように溶鉄中被分析成分濃度とこの被分析成分の発光
スペクトル強度との間には強い相関が認められ、この相
関は火点の温度範囲によって変化することを知見した。
従ってこのような火点の各温度範囲における溶鉄中被分
析成分濃度とこの被分析成分の発光スペクトル強度との
相関をあらかじめ分析対象元素毎に求めておき、実操業
中の火点温度を実測することにより、当該操業中に分析
し検出される値を補正して時々刻々の溶鉄成分を正確に
検出することが可能となる。
第1図は前記あらかじめ求めた相関を模式的に示した図
表である。図において横軸が被分析成分濃度、即ち分析
対象元素の溶鉄中含有率(%)を、縦軸が前記被分析成
分の発光スペクトル強度を表し、その相関が最も強く現
れる火点温度範囲を設定したものである。即ち実線a〜
fが前記各火点温度範囲に対応する相関であり、例えば
操業中の火点温度TがT2〜T3の範囲(T2≦T<T3)にあ
れば実線cで示す相関を用い、その時の発光スペクトル
強度がY1であれば、このY1と実線cとの交点に対応する
X1が分析対象元素の溶鉄中含有率であり、火点温度に応
じて補正された値として検出される。而して前記実線a
〜fはあらかじめ設定された火点温度範囲毎に被分析成
分の濃度を補正する検量線としての機能を発揮する。
発光スペクトル強度と溶鉄中の成分濃度との相関関係を
予め求める方法としては、前述したようにオンラインの
予備テストにより求めてもよいが、従来からなされてい
るように、オフラインにて、溶鉄中に含まれる各元素の
含有率を段階的に変化させて溶鉄鉄を最初に準備し、こ
の溶鉄中の各元素の含有率を基準に、火点における発光
スペクトル強度との相関を調べると共にその際に、火点
温度をも段階的に変化させて火点温度の影響を同時に調
べ、前記第1図に示すような相関a〜fを求めておくと
よい。発光スペクトル強度は溶鉄の場合には、その主成
分であるFeの発光スペクトル強度と分析対象元素の発光
スペクトル強度の比(以下単に発光スペクトル強度比と
言う)を用いる方が検出精度を向上させるうえから効果
的である。
火点の温度測定は、接触式のものでも非接触式のもので
もよいが、火点から発生する赤外輻射による発光強度か
ら温度測定できる輻射温度計あるいは二色温度計を用い
るのが望ましい。
以上詳述した火点温度に応じた補正方法によって、溶鉄
成分を精度よく検出することが可能となった。ところ
が、例えば前述した測定に用いる波長、測定装置の特
性、等に応じてはさらに厳密な補正を加える必要のある
ことを本発明者らは経験した。即ち前記測定に用いる波
長、測定装置特性によって、自己吸収により、溶鉄中成
分濃度とスペクトル強度の相関が、第1図に示すような
直線関係で表せない場合が生じる。そこで、本発明者ら
は、さらに研究をすすめ、自己吸収がある測定波長、分
析装置で、しかもさらに高精度な検出を行う方法につい
て検討した。
第1図に示すような直線関係では、火点の発光スペクト
ル強度と溶鉄成分の相関は、下記(2)式で表される。
I(M/Fe)=K(T)×〔M〕 ・・・(2) 但し、 〔M〕:溶鉄中の被分析成分濃度(%) M:溶鉄中の被分析成分、 Fe:溶鉄中の鉄、 I:発光スペクトル強度 {I(M/Fe):溶鉄中の被分析成分Mと鉄Feの発光スペ
クトル強度比} K(T):各火点温度における溶鉄中被分析成分濃度と
該被分析成分の発光スペクトル強度との相関係数 しかし、自己吸収のある測定波長、分析装置では、この
ような1次の相関は得られず、下記(3)式の形で示さ
れる。
logI(M/Fe)=logK(T)+n・log〔M〕 ・・・
(3) n:自己吸収係数 この(3)式における自己吸収係数nは、前述したと同
様の予備テストにおこない、前記測定波長、分析装置に
対応した火点における発光スペクトル強度と溶鉄中成分
濃度および火点温度を測定し、発光スペクトル強度を溶
鉄中成分濃度に対してプロットすることによって求める
ことができる。
第2図は溶鉄中のMn濃度と前述した発光スペクトル強度
比〔I(M/Fe)〕の関係を求めた一例を示すもので、こ
の第2図の傾きが当該火点温度における自己吸収係数n
に相当する。この自己吸収係数nが1の場合前記第1図
に示す如き直線関係となる。
次に、前記(3)式を変形すると下記(4)式となる。
K(T)=I(M/Fe)/〔M〕n・・・(4) この(4)式から判るようにK(T)は、各火点温度に
おける溶鉄中被分析成分濃度と該被分析成分の発光スペ
クトル強度比との相関を表すものとなり、本発明におい
てはこのK(T)を相関係数として用いた。
而して(4)式で得られるK(T)を、予め火点温度毎
に求めておくことにより、各火点温度における溶鉄中被
分析成分濃度と該被分析成分の発光スペクトル強度比と
の相関係数として利用が可能となる。
第3図は、前記第2図と同様にMn濃度における一例を示
すもので、Mn濃度を段階的に変化させた溶鉄を用意し、
この溶鉄のMn濃度を基準に、火点における発光スペクト
ル強度比を実測して各火点温度と前記相関係係数K
(T)との関係を調査した結果を示すものである。第3
図においては横軸は火点温度を、縦軸は相関係数K
(T)を表す。この第3図から判るように火点温度を微
小間隔で変化させて相関係数K(T)を求めることによ
り相関係数K(T)は連続した曲線状となる。
従って前述した第2図に示す如き自己吸収係数nと、第
3図に示す如き相関係数K(T)をあらかじめ求めてお
き、当該吹錬時の発光スペクトル強度比を実測すること
により、溶鉄中成分濃度は、前記(3)式を変形した下
記(5)式で演算処理することにより求めることがで
き、測定波長、分析装置の特性、火点の影響を効率的に
補正した正確な溶鉄成分の検出が可能となる。
〔M〕={I(M/Fe)/K(T)}1/n・・・(5) 次に実際の転炉設備を示す第4図(a)に基づいて本発
明を更に詳述する。この第4図(a)において1は転炉
9内に貯留された溶鉄、10は前記溶鉄1上に浮遊するス
ラグであり、2は前記溶鉄1に酸素または酸素を含む混
合ガスを吹きつけるためのランスである。3は火点4か
らの発光スペクトルを検出する光ファイバーであり、こ
の光ファイバー3は分光器6および温度計7に連結され
ている。
第4図(b)は前記ランス2の先端部の詳細を示す断面
図である。酸素又は酸素を含むガスはランス先端の主孔
2aを通して溶鉄1の表面に吹き付けられる。5はこのラ
ンス2から噴射される酸素のガスジェトを示す。光ファ
イバー3は本実施例ではランス2の内管2b内に設けられ
たガイドパイプ18に収納されており、その先端には溶鉄
表面の火点4までの距離に焦点を合わせたレンズ3aが装
着されており、このレンズ3aを通して火点4を観測でき
る構造となっている。第4図(b)において20がレンズ
3aを通して観測できる視野を示し、20aが光ファイバー
3による火点の測定領域である。
而して光ファイバー3で採光された火点4の発光スペク
トルは分光器6、及び温度計7に入力され、発光スペク
トル強度と火点温度がそれぞれ同時に測定され、その実
測値は演算装置8に入力される。尚、本発明において分
光操作とはこの光ファイバー3で火点4の発光スペクト
ルを採光し、その強度を測定する操作を言うものであ
る。分光器6は分解能、測定可能波長域等の計器特性を
有しているため被分析成分の測定波長は計器特性に適し
た範囲のものを選定しなければならない。
また光ファイバー3は長さ、材質による減衰特性を有し
ており、分光器6と同様減衰の少ない波長域にて測定を
行う必要がある。光ファイバー3の測定領域は光ファイ
バー性能、先端レンズ3aの形状及び主孔2aとの位置関係
によって決まるが、火点4の領域と光ファイバー3によ
る測定領域との関係により前述した自己吸収係数nの影
響度が異なる。
本発明において分析装置とは前述したような自己吸収係
数nへ影響を与える光ファイバー3、その先端のレンズ
3a、及び分光器6等を総称していうものであり、この分
析装置の特性、即ち前述した光ファイバー3、分光器6
の特性や光ファイバー3の設置形態等に応じて前記自己
吸収係数nを求めておく必要がある。また自己吸収係数
nは被分析成分の測定波長によっても影響を受けること
から、使用する測定波長に対応した自己吸収係数nをも
求めておく必要がある。
以上のようにしてあらかじめ各操業条件毎に求めておい
た前記第1図に相当する火点の温度範囲における溶鉄中
被分析成分濃度と該被分析成分の発光スペクトル強度と
の相関、及び前記第2図、第3図に相当する各火点温度
における溶鉄中被分析成分濃度と該被分析成分の発光ス
ペクトル強度との相関係数K(T)、及び自己吸収係数
n、等は演算装置8には、入力され、記憶せしめられて
いる。演算装置8では操業中に時々刻々入力されてくる
前記火点温度と発光スペクトル強度とから溶鉄成分を前
述した演算処理を行うことによって自動的に求め、検出
する。
求められた溶鉄中成分濃度が、CRT画面11に表示され、
時々刻々と吹錬中の濃度が把握出来るとともに、演算装
置8からの信号にしたがって、ランス2から供給される
酸素流量の調節弁12、底吹きガス流量の調節弁13、ラン
ス昇降用モーター14、および、副原料の投入用弁16にそ
れぞれ信号が入力され、適正の成分値になるように制御
される。
火点から発生する発光スペクトルを分光器6および温度
計7に分配するための方法としては、1本の光ファイバ
ーから得られた発光スペクトルを分光器で分離すること
もできるが、複数本の光ファイバーをバンドル型にして
おき分光器6および温度計7へ導入できるよう予め分離
しておくほうが簡単である。
以上のように、転炉の吹錬中にランス内に装入された光
ファイバーによって測定された火点温度と発光スペクト
ルをもとに、連続的にオンラインで溶鉄成分の分析、検
出が可能となる。
次に前述した溶鉄成分の検出方法を利用して、溶鉄成分
を目標値に到達させる方法について溶鉄成分中のMnを例
として説明する。
転炉で溶製される鋼中のMn濃度は、製品の引張強度等に
密接に関係しており、製品原価を低くするためには吹き
止め時のMn濃度を目標値に良好に到達させる必要があ
る。そこで、転炉吹錬においては、Mn鉱石の投入量、投
入タイミング、送酸条件、ランス条件等を操作し、吹き
止めMn値をできるだけ安価な条件で目標値に到達させる
方法が用いられる。これらの制御にかかわらず目標値を
達成できなかった場合には、出鋼後に高価なFe−Mn合金
鉄を投入し、目標値に的中させる手段が採られる。
従来の吹錬方法においてMn濃度を目標値に到達させるた
めの手段としては、前回もしくは数ヒート前までのほぼ
同一鋼種の吹錬結果を参考にして適切と予想される吹錬
パターンを設定し、サブランスで吹錬中に1回ないし2
回のサンプリングをおこない、その結果だけをもとに制
御することが普通であった。
而して吹錬中のMn濃度を正確に把握することはできず、
同一鋼種が連続する場合には適切な吹錬パターンを設定
しやすいが、多種の鋼種を次々と溶製する場合等は適切
な吹錬パターンを見つけることができず効率的に吹止め
成分を目標値に到達させることが困難であった。
これに対し本発明の実施により前述したように吹錬中に
おいても時々刻々、しかも正確にMn濃度を検出すること
が可能となる。而してこの検出されたMn濃度と過去の操
業実績等からあらかじめ設定されている当該操業条件下
における吹錬中のMn目標値とを比較演算することによ
り、その時点における目標値に対する検出値との差が求
められる。
従って目標値に対し検出値が高い場合には、溶鉄中から
スラグ中へMnを移行させる方向のアクション、即ち、
.ランスを上昇させるか、底吹きガス量を低下させ、
浴の撹拌を抑えるソフトブロー化をおこなう。.冷却
材として鉄鉱石を主体とする原料を投入し溶鉄中のMnの
酸化を促進してMnOとし、スラグ中へ移行させる。など
の制御要因の1つ、又は2以上を組み合わせて溶鉄中の
Mn濃度を低下させ、前記差を零にする制御をおこなえば
よい。
一方、目標値に対して検出されたMn濃度が低い場合には
スラグ中から溶鉄中へMnを移行させる方向のアクショ
ン、即ち、.ランスを下降させるか、底吹きガス量を
増加させ、浴の撹拌を促進させるハードブロー化をおこ
なう。.送酸速度を低下させ、溶鉄及び溶鉄中成分の
過酸化を防止する。.投入する副原料を低下させ、ス
ラグ量を減少させる。.冷却材としてMn鉱石を投入
し、炉内へのMn供給源を増加させる。などの制御要因の
1つ、又は2以上を組み合わせて溶鉄中のMn濃度を高
め、前記差を零にする制御をおこなえばよい。
さて本発明では、前記(1)式に示したように、溶鉄中
に溶解している場合の蒸気圧が高い成分の検出は行い易
いが、P等の低蒸気圧成分は困難となる場合が多い。本
発明者らも、種々の成分について、研究を進めてきた
が、吹錬の大きな制御要因となるPの分析、検出がきわ
めて困難であった。しかしながら吹錬中のMnとPは非常
に強い相関を示す。而してこのMnとPとの関係を求めて
おけば前述した吹錬中に連続的に得られるMnの値を用い
てPを推定することができる。
Pを推定する方法としては、溶銑条件、副原料の投入量
と吹止め時のP濃度の相関式として、下記(6)式の推
定式が種々提案されていた。
〔P〕EP=a1i・WFi+a2・PPig+a3・TPig +a4・HMR ・・・(6) 但し、 〔P〕EP:吹止め時の溶鉄中P濃度 WFi:銘柄iの副原料の投入量 PPig:溶銑中P濃度 TPig:溶銑温度 HMR:溶銑配合比率 a1〜a4:係数 しかし、このような推定式の場合、短期間内の非常に類
似した操業条件、同一鋼種では精度よく推定できるが、
長期間にわたって高精度を維持することは困難であり、
頻繁にa1〜a4の係数を見直す必要があり、実用的ではな
かった。本発明においてはこのような問題を効果的に解
決するために吹錬中のPとMnの挙動の相関を利用し、P
濃度を正確に推定することに成功したものである。
即ち、前記(6)式に、前述の方法で検出された溶鉄中
Mn濃度〔Mn〕と、時々刻々のMn濃度の変化率(d〔Mn〕
/dt)を回帰項として付加した下記(7)式の提供によ
って、P濃度の精度を飛躍的に向上させることができ
た。
〔P〕=a1i・WFi+a2・PPig+a3・TPig+a4・HMR +a5・〔Mn〕+a6・d〔Mn〕/dt ・・・(7) ここで回帰項の係数a5〜a6の値は、前記a1〜a4の係数に
比べ著しく大きくなり、その結果、Mn濃度項(a5・〔M
n〕)、Mn濃度変化率(a6・d〔Mn〕/dt)の項の寄与率
が大きくなることから長期にわたり、ほとんど総ての鋼
種、操業条件の変化にも影響されず、係数の見直しも必
要なく高精度の推定が可能となった。
以上の説明は溶鉄成分としてMnに絞っておこなってきた
が、Si、Al、Cr、Zn、Cu、Sn、Pb、Ni等の高蒸気圧成分
であれば、同様の考えで分析、検出が可能であることは
勿論である。また、Pの如き低蒸気圧成分であれば、各
操業条件、精錬条件との回帰式の中に、高蒸気圧成分の
連続的に得られる分析値、および/もしくは分析値の変
化率を取り込むことで吹錬中、もしくは吹き止め時の濃
度の推定が高精度で可能となる。
実施例 実施例1 前述した第4図に示す装置を用いて本発明を実施した。
転炉9の容量は170Tであり、この転炉における吹錬中に
溶鉄中のMnの検出に本発明を適用した。本実施例ではラ
ンス2内に設けられたステンレス製のガイドパイプ18に
光ファイバー3を収納し、吹錬中の火点4を観測できる
ように先端にレンズ3aを取りつけた。光ファイバー3は
分光器6および二色温度計7に連接され、分析装置を構
成し、前記分光器6および二色温度計7による測定値は
演算装置8に入力される構成となっている。
この転炉で実操業を開始する前にあらかじめオフライン
状態で溶鉄中に含まれるMnの含有率を段階的に変化させ
た溶鉄を準備し、火点温度を種々変化させて発光スペク
トル強度とMn含有率との相関を調査した。
第5図はその結果の一例を示すもので、横軸がMn含有率
を、縦軸が発光スペクトル強度を表すものである。Mn含
有率は化学分析により正確に測定した結果であり、発光
スペクトル強度は前述したその主成分であるFeの発光ス
ペクトル強度とMnの発光スペクトル強度の比で表したも
のである。
両者には、火点温度が2300℃以下では一点鎖線lで、火
点温度が2300〜2400℃の範囲では破線mで、火点温度が
2400℃以上では実線nで示す明瞭な相関のあることが確
認された。而してこの相関l〜nは前記演算装置8にあ
らかじめ記憶せしめた。
さて実操業を開始し、操業中における時々刻々のMnを検
出した。本実施例では、純酸素2.52Nm3/min・tをラン
ス2より溶鉄表面に吹きつけた。溶鉄1の吹錬前の飽和
炭素濃度は約4%溶銑であり、吹錬終了時の溶鋼中炭素
濃度は約0.1%であった。
第6図は上記温度計7により測定された吹錬中における
火点温度実測値の推移状況の一例を示すもので吹錬中の
火点温度が一定ではないことが判る。本実施例では吹錬
の初期および末期に温度が低く、中期に高温となってお
り、その変化量は約200℃にも達した。
第7図は本発明の実施結果の一例を示すもので、実線p
が本発明に基づいて検出されたMn含有率を示し、破線q
は火点温度を2300℃の一定と仮定した従来方法に基づく
検出結果を示すものである。又図中の▲印は周知のサブ
ランスでサンプリングして化学分析でMn含有率を確認し
た結果を示す。この第7図から明らかなように実線pと
▲印は良好に一致しており、本発明によって検出精度が
飛躍的に向上することが実証された。
実施例2 前記実施例1によって、オンラインで溶鉄中Mnを検出し
た場合の分析精度は、サブランスサンプルの化学分析結
果との差の標準偏差であらわすと、σ=0.05%であっ
た。この検出結果を例えば、吹錬中のオペレーションガ
イドとして使用する場合には、この程度の精度があれば
充分である。ところが吹止め時のMn値を製品規格内に確
実に的中させるための高度なMn制御をおこなう場合、前
記検出値でもまだ十分な精度とは言えない状態が生じ
る。
そこで前記実施例1と同じ設備、及び分析装置を用いて
さらに精度の高い検出精度を得るために本発明請求項第
2項の発明を実施した。本実施例において分析装置の仕
様に対応した測定波長はFeが386nm、Mnが403nmであり、
この測定波長を取り込んだ分析装置特性による自己吸収
係数nを予め求めた。
その結果は前述した第2図に示す通りであり、0.26であ
った。(第2図には火点温度2350℃、2450℃の2点分の
結果しか図示していないが、2250〜2480℃の範囲にわた
って各温度毎に求めた結果、各温度ともほぼ平行した直
線が得られ、その傾きから自己吸収係数n=0.26を設定
した。) また火点温度による相関係数K(T)も前記第3図に示
した曲線より設定し、これらの自己吸収係数n、及び相
関係数K(T)は、前記演算装置8に(5)式と共に記
憶させた。
而して吹錬中に実測される発光スペクトル強度を逐次演
算装置8に入力し、この演算装置8で前記(5)式に基
づいて演算処理し、Mn濃度を補正した。この補正された
Mn濃度と、サブランスサンプルの化学分析結果との相関
は第8図に示す通りであり、標準偏差σ=0.02%となっ
て、その精度はさらに改善されることが確認された。
実施例3 実施例2で検出されるMn精度を用い、Mn精度をできるだ
け高濃度に吹止めする操業を実施した。また本実施例で
はMn濃度の検出値をもとに前述した(7)式に基づいて
オンライン状態でP濃度の推定も同時におこない、吹錬
の操業指針とした。即ち吹止め時のP濃度が規制値(本
実施例では0.025%)を越えている場合にはさらに送酸
をおこない、できうだけ規制値に近い高濃度で吹止める
ことを狙った吹錬を実施した。
このような吹錬によって得られたMn濃度とP濃度を、従
来法(前回もしくは数ヒート前までのほぼ同一鋼種の吹
錬結果を参考にして適切と予想される吹錬パターンを設
定し、サブランスで吹錬中に1回ないし2回のサンプリ
ングをおこない、その結果だけをもとに制御する方法)
と比較して第9図、及び第10図に示した。
第9図の吹止めMn濃度については、従来法ではその平均
値が0.36%であるのに対し、本発明法では0.49%と大幅
に向上させることができた。また第10図のP濃度は、従
来法ではその平均値が0.0178%であり、全般的にオーバ
ーアクションとなっていることが判る。
しかしながらこの従来法でのP濃度のばらつきは大き
く、規制値を越えて再吹錬となたものも7%に達した。
一方、本発明に基づき、P濃度を確認しながら実施した
吹錬ではその平均値が0.0209%となり、規制値ぎりぎり
の値での吹止めも可能となった。しかも規制値を越えて
再吹錬となるものは2%程度であり、本発明の優れた効
果が確認された。
第11図は、中炭Al−Siキルド鋼の溶製に本発明を実施し
た結果の一例を示すもので、製品規格に基づくMn濃度、
つまり吹止め時のMn濃度範囲は0.45〜0.52%である。ま
た当該操業条件での吹錬期間中のMn濃度推移パターンは
過去の操業経験より求まっており、第11図における破線
がその最適なパターンを示すものである。而して前述し
た実施例2で示した方法で吹錬中におけるMn濃度を時々
刻々検出し、演算装置8でその検出値と前記目標値との
差を求めた。
検出値はCRT画面11にも表示させ、作業者も前記差を確
認できるようにした。而して検出値と目標値とに差が生
じ、最適パターンから逸脱したことが確認されたら直ち
にその差を解消し、最適パターンの範囲内になるような
制御を実施した。この結果吹止めMn濃度を目標範囲内に
することができた。
発明の効果 本発明は、溶鉄表面の火点に注目した、オンラインリア
ルタイムの成分検出法において、その検出精度を飛躍的
に向上させることができ、金属の精錬や製鋼プロセスの
操業管理や自動化吹錬を行う上での吹錬制御のために極
めて有効な方法である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、火点温度範囲に対する溶鉄中被分析成分濃度
とこの被分析成分の発光スペクトル強度との相関を模式
的に示した図、第2図は、溶銑中Mn濃度と発光スペクト
ルの関係に及ぼす火点温度の影響を示した図、第3図
は、溶銑中Mn濃度における相関係数K(T)と火点温度
の関係を示した図、第4図(a)、(b)は、実際の転
炉設備において本発明を実施した状況を示すもので
(a)転炉設備及び(b)本発明の断面構造図、第5、
6、7、8図は、本発明に基づく具体的な実施結果を示
すもので、第5図は、火点温度に対する溶銑中Mn濃度と
このMnとFeとの発光強度比との相関を求めた結果の一例
を示す図、第6図は、吹錬中に実測された火点温度の経
時変化を示す図、第7図は、オンラインで測定された吹
錬中の溶鉄中Mnの検出結果を従来法と比較して表した
図、第8図は、本発明法による分析精度をサブランスサ
ンプルの化学分析結果と比較して表した図である。 第9図(a)、(b)、第10図(a)、(b)は本発明
の効果を表す図であり、第9図は本発明を実施した場合
の吹止めMnの分布状況を従来法と比較して表した図、第
10図は本発明を実施した場合の吹止Pの分布状況を従来
法と比較して表した図である。第11図は、中炭Al−Siキ
ルド鋼の溶製に本発明を実施した結果の一例を示す図で
ある。 1……溶鉄、2……ランス、3……光ファイバー、4…
…火点、5……酸素ジェット、6……分光器、7……温
度計、8……演算装置、9……転炉、10……スラグ、11
……CRT画面、12……酸素流量調節弁、13……底吹ガス
流量調節弁、14……ランス昇降用モーター、15……副材
用バンカー、16……副原料投入用弁、17……底吹羽口。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大野 剛正 大阪府堺市築港八幡町1番地 新日本製鐵 株式會社堺製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭62−67430(JP,A)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶鉄表面に酸素または酸素を含む混合ガス
    を吹きつけた時に形成される火点から発生する発光スペ
    クトルを分光することにより溶鉄成分を分析し検出する
    方法において、あらかじめ前記火点の各温度範囲におけ
    る溶鉄中被分析成分濃度と該被分析成分の発光スペクト
    ル強度との相関を求めておき、前記分光操作と同時に前
    記火点の温度を実測し、該温度実測値に基づき、前記溶
    鉄中被分析成分濃度を補正することを特徴とする溶鉄成
    分の検出方法。
  2. 【請求項2】あらかじめ各火点温度における溶鉄中被分
    析成分濃度と該被分析成分の発光スペクトル強度との相
    関係数K(T)と、分析装置および前記被分析成分の測
    定波長によって定まる自己吸収係数nを求めておき、実
    測された被分析成分の発光スペクトル強度を下記式に基
    づいて演算処理し、被分析成分の濃度を補正することを
    特徴とする請求項第1項記載の溶鉄成分の検出方法。 〔M〕={I(M/Fe)/K(T)}1/n 但し、 〔M〕:溶鉄中の被分析成分濃度(%) M:溶鉄中の被分析成分、 Fe:溶鉄中の鉄、 I:発光スペクトル強度 {I(M/Fe):溶鉄中の被分析成分Mと鉄Feの発光スペ
    クトル強度比} K(T):各火点温度における溶鉄中被分析成分濃度と
    該被分析成分の発光スペクトル強度との相関係数 n:自己吸収係数
  3. 【請求項3】溶鉄中被分析成分が、Mn、Zn、Cu、Sn、A
    l、Si、Pb、Ni、Cr等の高蒸気圧元素であることを特徴
    とする請求項第1項又は第2項記載の溶鉄成分の検出方
    法。
  4. 【請求項4】請求項第1項又は第2項の検出方法に基づ
    き溶鉄中被分析成分の内のMn濃度を検出し、あらかじめ
    求められたMn濃度とP濃度との相関よりP濃度を推定す
    ることを特徴とする溶鉄成分の検出方法。
  5. 【請求項5】請求項第1項又は第2項の検出方法に基づ
    き吹錬中に溶鉄中被分析成分濃度を検出し、当該操作条
    件下における目標値に対する前記検出値との差を求め、
    該差を解消するようにランス高さ、送酸速度、底吹きガ
    ス量、副原料の種別、投入量、および投入タイミング等
    の内の1もしくは2以上を制御することを特徴とする精
    錬方法。
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