JP5978967B2 - 溶鋼の成分調整方法 - Google Patents

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本発明は容器内に収容された溶鋼へCaまたはMgを添加して溶鋼の成分を調整する溶鋼の成分調整方法に関する。
例えば、ラインパイプや電縫鋼管(ERW鋼管)に使用する鋼のような、脱硫や鋼中の介在物の組成制御が必要な鋼には、CaやMgのような溶鋼温度では蒸発してしまうような金属又はこれらの合金(以下、「Ca等」という)を溶鋼に精錬剤として使用している。
Ca等の溶鋼へ添加方法として、他の合金で行われるように取鍋精錬炉等を用いて溶鋼湯面上に添加する方法では、Ca等が溶鋼と反応する前に蒸発してしまう。そのため、Ca等の溶鋼への添加方法としては、Ca等をワイヤとして添加する方法が用いられている。
このようなCa等の溶鋼への添加方法としては、例えば、特許文献1ではCaを30kg/分以上で添加する方法が開示されている。
また、他の方法として、特許文献2では取鍋精錬においてCaSiワイヤを80〜100m/minで投入する方法が開示されている。
特開昭61−84316号報 特開2009−57612号報
溶鋼へCaを添加するためのワイヤは、鉄シース内に合金を充填したものが一般的である。そのため、Ca等と溶鋼が反応するためには、まず、鉄シースが溶解しなければならない。
しかし、鉄シースが溶鋼への投入直後に溶解してしまったり、投入速度が大きすぎて、鉄シース溶解前に鉄シースが取鍋底まで到達し、さらに上方へ戻ってくる途中で溶解するような場合、鉄シースが溶解してCa等が気化しても溶鋼とCa等との反応時間が短く、Ca等の歩留まりが悪化してしまうとともに、Ca等が溶鋼の界面で空気と反応して、Ca等の酸化物が生成し、有効に作用しない。
鉄シースの溶解速度は、シースの厚み、溶鋼温度、投入速度で変化すると考えられる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、Ca純分のみでの添加速度の規定であり、ワイヤのシースの溶解速度までは考慮されていない。
また、特許文献2に記載の方法では、ワイヤ投入速度を規定しているが、前述したシースの厚み、溶鋼温度、投入速度といった投入時の条件が考慮されてない。
このため、特許文献1,2の方法では、Ca等を歩留まりよく効果的に溶鋼に添加することが難しい。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、容器内に収容された溶鋼へCa等を歩留まりよく効果的に添加することができる溶鋼の成分調整方法を提供することを目的としている。
本発明者らは鉄シースのワイヤを溶鋼へ添加するにあたり、鉄シースが溶解するまでの時間が鉄シース厚み、溶鋼温度に関係すると考え、熱電対を挿入した鉄シース(シース厚み0.04cm、0.05cm、0.06cm)を、温度を測定済の溶鋼の入った取鍋内に投入して、熱電対の温度変化を測定することによって鉄シースの溶解時間を求める実験を行った。
実験の結果を表1に示す。
表1の結果に基づいて、鉄シース溶解時間t(s)と、鉄シース厚みd(cm)及び溶鋼温度T(K)の関係を式によって整理したのが下記の式(2)である。
t=600・d・exp(-1.6×10-3・T) ・・・(2)
ここで、t:鉄シース溶解時間(s)
d:鉄シース厚み(cm)
T:溶鋼温度(K)
式(2)によって求まる鉄シース溶解時間t(s)が表1に示した実験結果の「シース溶解時間(s)」とよく一致していることは、下記の表2及び表2をグラフ表示した図1からわかる。図1においては、縦軸が(2)式右辺であり、横軸が表1における「シース溶解時間(s)」である。
次に、本発明者らは、鉄シースが溶解した後、CaやMgのような溶鋼温度で気化する金属と溶鋼が接触すると、気化した金属は溶鋼内を溶鋼と反応しながら上昇するため、鉄シースが溶解する溶鋼の深さによって該金属と溶鋼の反応時間が変化し、該金属の歩留まりが変化すると考えた。
そこで、CaSi合金を充填したワイヤを用いて、投入速度を変えて溶鋼へ添加し、鉄シースが溶解する溶鋼の深さとCaの歩留まりとの関係を求めた。
その結果を、図2のグラフに示す。図2において、縦軸がCa歩留(%)、横軸がワイヤ鉄シース溶解深さ/取鍋内溶鋼深さ(%)を示している。なお、ワイヤ鉄シース溶解深さは、(2)式で求まる鉄シース溶解時間t(s)を用いて、「ワイヤ投入速度(m/s)×鉄シース溶解時間t(s)」によって求めた。また、取鍋内溶鋼深さは溶鋼湯面から取鍋底部までの距離である。
なお、Ca歩留(%)の定義は以下の通りである。
T.[Ca]/(投入Ca純分量/溶鋼量x1000)x100(%)
上式の単位は、次の通りである。T.[Ca](ppm)、投入Ca純分量(kg)、溶鋼量(ton)
図2に示されるように、鉄シースが溶鋼湯面から深さ80%以上の深さで到達したと計算される領域にある時にCaの歩留まりが最も高くなることが分かる。
したがって、Caの歩留まりを高くするためには、鉄シースが溶鋼湯面から深さ80%以上の深さで溶解するようにワイヤ投入速度(m/s)を設定すればよい。具体的には、ワイヤ投入速度(m/s)Vを下記の(1)式を満たすように設定すればよい。
0.8・H/t≦V≦1.2・H/t・・・(1)
ここで、V:ワイヤ投入速度(m/s)
H:取鍋内溶鋼深さ(m)
t:鉄シース溶解時間(s)(上記の(2)式参照)
また、発明者らは、ラインパイプ材での硫化物制御のためのCa添加量についても検討した。
ラインパイプ材での硫化物制御のためのCa添加に本方法を適用した際に、溶鋼中の介在物組成を分析したところ、溶鋼中の全Ca濃度(T.[Ca])のうち、酸化物であるCaの濃度Ca,oが以下の式(4)で表されることを見出した。
Ca,o=1.23×T.[O]-3.65・・・(4)
ここで、Ca,o:酸化物分Ca濃度(ppm)
T.[O]:鋼中全酸素濃度(ppm)
(4)式の導出方法は以下の通りである。
鋼サンプルを採取し、サンプル中酸化物の組成分析により、酸化物中CaO,Al2O3濃度測定を行う。酸化物中Ca濃度(%Ca)は、(%Ca)=(%CaO)×40/56として求まる。また、酸化物中のO濃度(%O)はCaO中O濃度(%O・CaO)とAl2O3中O濃度(%O・Al2O3)の合計であるから、(%O)=(%O・CaO)×16/56+(%O・Al2O3)×48/102として求まる。鋼中T.[O]は酸化物中のOによるものとすると、酸化物中のCaによる鋼中Ca濃度Ca,oは、Ca,o=T.[O]/(%O)×(%Ca)により算出できる。
具体的な分析結果と、計算結果を表3に示す
表3に示した、Ca,oと、T.[O]の関係を一次式で近似すると(4)式が得られる。
表3には、分析によるCa,oの算出値と、(4)式から求めたCa,oを記載している。また、(4)式の右辺の値を縦軸とし、算出値を横軸としたグラフが図3である。表3及び図3のグラフを見ると、(4)式の値が算出値を近似していることがわかる。
発明者は、溶鋼中T.[Ca]のうち、上記(4)式から得られる酸化物分のCa(Ca,o)以外の余剰Ca(T.[Ca]-Ca,o)が溶鋼中Sと反応してCaSになると考え、Caによる硫化物制御のためには、余剰CaとSが原子量比で1.0:1.0以上が必要であることを見出した。
また、Caが過剰となると、Caを歩留まり高く添加しても、気化したCaにより取鍋内溶鋼湯面が乱れて空気とCaが反応してしまって発生するCaO量が増大し、それが鋼中に残留して鋳造されることで、HIC感受性の高い鋼板となってしまう。
そこで、Ca量の上限を調査するため、余剰CaとSの比を変えた試験片を用いて、NACE規格TM0284の規格に準拠してHIC(Hydrogen
Induced Cracking、水素誘起割れ)試験を行って耐HIC性を評価した。
なお、試験液は、規定のA溶液とし、試験片を該試験液に浸漬したのち、割れ発生有無を超音波探傷で調査した。
その結果、余剰CaとSの原子量比で4.0:1.0以下であれば、NACE溶液によるHIC試験により割れが発生しないことがわかった。
以上の検討をまとめると、Caによる硫化物制御を行いかつHIC感受性を抑制するには下記の式(3)を満たせばよいことになる。
1.0≦{T.[Ca]-(1.23×T.[O]-3.65)}/1.25×S≦4.0・・・(3)
ここで、T.[Ca]:鋼中全Ca濃度(ppm)
T.[O]:鋼中全酸素濃度(ppm)
S:鋼中S濃度(ppm)
本発明は上記の知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
1)本発明に係る溶鋼の成分調整方法は、容器内に保持された溶鋼へCaまたはMgを添加するに際し、該金属あるいはその合金を鉄シース内に充填してワイヤ状とし、(1)、(2)式を満たす速度で溶鋼中へ投入することを特徴とするものである。
0.8・H/t≦V≦1.2・H/t ・・・(1)
t=600・d・exp(-1.6×10-3・T) ・・・(2)
ここで、V:ワイヤ投入速度(m/s)
H:取鍋内溶鋼深さ(m)
t:鉄シース溶解時間(s)
d:鉄シース厚み(cm)
T:溶鋼温度(K)
2)また本発明の、溶鋼の成分調整方法は、上記1)に記載の溶鋼成分調整方法によって(3)式を満たす範囲となるようにCaまたはCa含有合金を添加することを特徴とする。
1.0≦{T.[Ca]-(1.23×T.[O]-3.65)}/(1.25×S)≦4.0・・・(3)
ここで、T.[Ca]:鋼中全Ca濃度(ppm)
T.[O]:鋼中全酸素濃度(ppm)
S:鋼中S濃度(ppm)
3)また、上記2)に記載のものにおいて、前記(3)式におけるT.[O]濃度の分析方法が、スパーク放電発光分光法を用いる方法であって、以下のステップを有することを特徴とするものである。
ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ
イ)下記式にて求められるアルミナ分率を算出するステップ。
アルミナ分率=前記発光強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
ここで、閾値αは、放電パルス毎の前記発光強度比を横軸、頻度を縦軸とした度数分布図から求められた発光強度比の最頻値のf1(1.5≦f1≦2.5)倍
ウ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の前記発光強度比を小さい方から配列し、小さい方から全パルス数の30%以内の一定位置の前記発光強度比を代表アルミ強度比とし、次いで、前記アルミナ分率算出ステップで得られたアルミナ分率と代表アルミ強度比の積からアルミナ強度比(=アルミナ分率×代表アルミ強度比)を算出するステップ
エ)前記アルミナ強度比とT.[O]との関係式を用いてT.[O]を算出する定量ステップ
本発明によれば、Ca、Mgまたはその合金を歩留まりよく効果的に溶鋼に添加することができる。
本発明の成分調整方法の(2)式の妥当性を説明する説明図である。 本発明を成すために行った実験結果を示すグラフであり、鉄シースが溶解する溶鋼の深さとCaの歩留まりとの関係を示すグラフである。 本発明の成分調整方法の(4)式の妥当性を説明する説明図である。 Al/Fe強度比を配列化した場合のAl/Fe強度比の構成概念図である。 放電パルス毎のAl/Fe強度比を横軸、頻度を縦軸とした度数分布図である。 各f1値におけるアルミナ強度比と化学分析値との相関を示すグラフである。 各f1値におけるアルミナ強度比と繰り返し分析時の変動との関係を示すグラフである。 1値が2.0の場合の、本発明に係るアルミナ定量法により求めたアルミナ濃度と化学分析値との相関を示すグラフである。 スパーク放電発光分光分析法によるinsol.Al分析値と燃焼分析法から求められる鋼中全酸素濃度(T.[O])との相関線を示すグラフである。
本実施の形態に係る溶鋼の成分調整方法は、容器内に収容された溶鋼へCaまたはMgを添加するに際し、該金属あるいはその合金を鉄シース内に充填してワイヤ状とし、(1)、(2)式を満たす速度で溶鋼中へ投入することを特徴とするものである。
0.8・H/t≦V≦1.2・H/t ・・・(1)
t=600・d・exp(-1.6×10-3・T) ・・・(2)
ここで、V:ワイヤ投入速度(m/s)
H:取鍋内溶鋼深さ(m)
t:鉄シース溶解時間(s)
d:鉄シース厚み(cm)
T:溶鋼温度(K)cm)
転炉あるいは電気炉等の精錬炉から取鍋へ出鋼された溶鋼は、取鍋精錬炉等で処理され、その後、連続鋳造までの間に、溶鋼は容器に収容される。この容器とは、例えば、取鍋、タンディッシュなどであり、このような容器に収容された溶鋼に鉄シース厚みが既知のワイヤを投入する。
ワイヤの投入は、溶鋼の温度を測定した後であり、鋳造を開始する前であれば、いつ行ってもよい。溶鋼の温度の測定は、ワイヤ投入直前に行うのが好ましいが、温度測定をする装置と、ワイヤ投入を行う設備間が離れているような場合には、予め、温度変化の挙動を測定等して把握しておき、ワイヤ投入時の溶鋼温度を推定するようにしてもよい。
容器内の溶鋼深さは、溶鋼湯面から容器底部までに距離をいう。
以上の測定値、計算値から、取鍋において上記(1)、(2)式を満たすような投入速度でCa、Mgあるいはそれらの合金を溶鋼に添加することで該金属の歩留まりを最大限に高めることが可能となる。
また、上記(1)、(2)式を満たす方法でCaを添加する場合には、ラインパイプ材等の耐水素誘起割れ性を向上させるために、歩留まりを考慮して、下記(3)式を満足するように添加量を決めればよい。
1.0≦{T.[Ca]-(1.23×T.[O]-3.65)}/1.25×S≦4.0・・・(3)
ここで、T.[Ca]:鋼中全Ca濃度(ppm)
T.[O]:鋼中全酸素濃度(ppm)
S:鋼中S濃度(ppm)
その際、T.[O],Sの値についてはCa添加前に予め溶鋼サンプルから分析しておいても良いし、同じ鋼種のデータを蓄積しておき、そこから処理条件から予測した値を用い、バラツキを考慮して上記(3)式の中央値を狙う等などしておき、Ca添加後、タンディッシュ、あるいは連鋳機鋳型内からの溶鋼のサンプルを分析して確認し、上記(3)式の範囲を外れていれば、圧延前に材料変更等の対応をとるようにすればよい。
なお、Ca添加前のT.[O]の定量方法としては燃焼分析法や、スパーク放電発光分光法で直接的にT.[O]を求める方法があるが、より好ましいT.[O]の分析方法について以下に説明する。
対象とする材料では、タンディッシュ注入前の溶鋼中の酸素濃度(T.[O])はほぼ全てAl2O3(以下、アルミナと称す)に起因するものであると考えられる。
したがって、アルミナの濃度を分析することでT.[O]を分析することができる。
ところで、製鋼精錬工程で溶鋼に添加されたアルミニウム(以下、Alと称す)は、その一部は鋼中の酸素と反応しアルミナとなって徐々に表面に浮上して溶鋼から取り除かれる。
一方、残りの未反応のAlは鋼中に溶解したまま凝固する。
鋼の凝固後、浮上除去されなかったアルミナはそのままの状態で鋼中に残り、一方、未反応のAlは主として固溶Alとして鋼中に存在する。固溶Alは鋼試料を酸で溶解する際に一緒に溶解するが、アルミナは溶解しないので、酸溶解により互いに分離され、前者は酸可溶性Al(以下、sol.Alと称す)と呼ばれ、後者は酸不溶性Al(以下、insol.Alと称す)と呼ばれる。
鉄鋼製造工程においては、鋼組成を制御するための迅速分析法としてスパーク放電発光分光分析法が広く利用され、成分分析のみならず、鋼中における酸化物量の定量法としても様々な取り組みがなされてきた。
しかしながら従来の解析手法では、鋼中50ppm以下の微量なアルミナ量を精度良く分析することは難しかった。
これに対し、発明者らはスパーク放電発光現象におけるパルスごとの発光強度、および発光強度分布状態の示す物理化学的な意味を見直すことにより、アルミナ量の定量方法を見出した。
sol.Al濃度が等しくinsol.Al濃度の異なる鋼試料(sol.Al=66ppm、insol.Al=10ppm未満の試料、sol.Al=66ppm 、insol.Al=32ppmの試料)をそれぞれスパーク放電により発光させ、放電パルス毎にAlの発光強度と鉄の発光強度の比(Alの発光強度を鉄の発光強度で除した値であり、以下、Al/Fe強度比と称す)を経時的に観察した。
その結果、insol.Alの多い試料では、スパイク状の点が不規則に数多く確認され、スパイク状の点は、鋼中に不均一に存在するinsol.Alを含んだ放電によって生成されたものと推察される。スパーク放電では介在物(insol.Al)に放電が集中しやすいとされ、観察されるAl強度は、地鉄中のsol.Alからの光と、介在物(insol.Al)からの光から構成されるが、それぞれの割合は放電パルスごとに異なっている。
放電パルスを、Al/Fe強度比の小さい順(昇順)に配列し、縦軸をAl/Fe強度比とし、横軸をAl/Fe強度比が小さいものから順に並び変えた位置を%表示したグラフを図4に示す。
図4に示されるように、Al/Fe強度比の大きい側はinsol.Alが支配的で、小さい側はsol.Alが支配的となっている。
sol.Alは地鉄中に均一に存在しているので、放電時に蒸発する地鉄の量が変動しても、sol.Al由来のAl強度はFeとの相対値(Al/Fe強度比)とする限り一定値を示すはずである。
つまり、Al/Fe強度比は、一定のsol.Al強度比と不確定なinsol.Al強度比の和であって、その大きさは不確定なinsol.Al強度比の大小で決定されるため、よりAl/Fe強度比の小さいパルスほどsol.Al強度比に近づき、Al/Fe強度比全体の積算値からsol.Alの寄与する強度積算値を差し引くことにより、アルミナ量を定量することができる。
具体的には以下のようにする。
多数回(例えば、2000回)の放電パルスによるアルミニウムと鉄のAl/Fe強度比を放電パルス毎に求める(強度比計算ステップ)。
下記式にて求められるアルミナ分率を算出する(アルミナ分率を算出ステップ)。
アルミナ分率=Al/Fe強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
「閾値α」は、図5に示すように、放電パルス毎のAl/Fe強度比を横軸、頻度を縦軸とした度数分布図を作図した後、該度数分布図から求められたAl/Fe強度比の最頻値のf1倍として特定する。ここで、f1の値は、1.5≦f1≦2.5とするのが好ましい。
同様の手法で処理した試料を同様の測定条件で測定する限り、固溶Alに由来する発光強度比の頻度分布は、同様のバラツキ幅を持つと考えられることから、Al/Fe強度比の最頻値の1より大きい定数倍の値を閾値とすることで、固溶Alの影響度を一定の比率に保って、アルミナ由来の信号成分を分離できると考えられる。
従って、放電パルス毎のAl/Fe強度比が最頻値のf1倍より大きいパルス数を求め、求めたパルス数を全パルス数で除したものをアルミナ分率とする。ここで、f1の値は、1.5〜2.5の範囲、より好ましくは1.7〜2.0の範囲とする。f1の値が1.5より小さい場合、固溶アルミに由来するデータが多くなるため、アルミナ量との相関が悪くなる。一方、f1の値が2.5より大きい場合、抽出されるアルミナ由来の信号を含むパルス数が少なくなりすぎるため、分析ばらつきが大きくなる。
ここで、アルミナ分率を算出する際のf1値の影響を確認するために、f1値を1.4〜2.6の範囲において0.05ステップで変えてアルミナ強度比(insol.Al強度比)を計算した。各f1値におけるアルミナ強度比と化学分析値との相関係数および繰り返し分析時の変動係数を図6および図7にそれぞれ示す。
図6より、f1が1.5以下となるとアルミナ強度比と化学分析値の相関係数が急激に低下することがわかる。これは、固溶アルミ由来の発光の影響によるものと考えられる。また、図7より、f1の値が大きくなるほど、繰り返し分析時のバラツキが大きくなっていることがわかる。これは、抽出されるパルス数が少なくなりすぎるためである。
しかし、f1値が1.5および2.5の場合でも、分析正確さ(σd)は、それぞれ、2.4ppm、1.9ppmであり、従来法よりも高精度に分析が可能である。
1値が2.0の場合の、本発明に係るアルミナ定量法により求めたアルミナ濃度と化学分析値との相関を図8に示す。このときの分析正確さは1.8ppmであった。
強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎のAl/Fe強度比を小さい方から配列し、一定位置のAl/Fe強度比を代表アルミ強度比とする。
ここで、「代表アルミ強度比」は、放電パルス毎のAl/Fe強度比を小さい方から配列した際に(図4参照)、Al/Fe強度比の小さい方から全パルス数の30%以内のいずれかの位置となるような強度比とするのが好ましい。この理由は以下の通りである。
30%よりも大きい位置を代表アルミ強度比とした場合には、試料中に存在するアルミナ量の影響が大きくなりすぎ、酸可溶性Al(sol.Al)とアルミナを精度よく分配するための代表値とならずに分析精度が劣化するからである。
次に、アルミナ分率算出ステップで得られたアルミナ分率と代表アルミ強度比の積からアルミナ強度比を算出する。
スパーク放電発光分光法における特性値とT.[O]の関係を調査して予め作成した検量線を用いて、目的とするT.[O]を求める。
検量線試料には同じCa添加鋼を用い、各試料について予めスパーク放電発光分光分析法で得られるAl/Fe強度比から必要な各係数を設定した後、算出された特性値と燃焼分析法から求められるT.[O]の相関線を検量線とする。検量線の一例を図9に示す。
なお、溶鋼中の酸素量は継時変化しやすいことから、スパーク放電発光分光分析装置は極力、製造現場に近いことが望ましく、可能であれば機側でのオンサイト分析が最も好適である。
鋼中Ca量についてはもともとスパーク放電発光分光分析法による分析感度・精度が良好であるため、通常の手段で定量した結果を用いることが可能である。
また、鋼中S量については、AP(アークプロセス)処理以降の工程ではほとんど変化しないことが調査の結果分かった。すなわち、AP処理終了後からCa添加までの間に分析を行なえば問題なく、高精度な鋼中Sの分析法である、燃焼法などの適用が十分に可能である。
本発明の効果を確認する実験を行ったので、以下これについて説明する。
転炉で約250トンの溶鋼を酸素吹錬した後、取鍋に出鋼し、取鍋精錬炉、RH真空脱ガス装置で必要に応じた精錬を施した。その後、取鍋をワイヤ投入設備へ搬送した。
ワイヤ投入開始前に溶鋼の温度、深さの測定を行った。ワイヤは厚み0.04,0.05cmの鉄シース内にCaSi合金を充填したものを使用した。
ワイヤを(1)、(2)式を満たす速度で投入した。また、比較例として、(1)、(2)式の範囲外の速度で投入した実験も行った。
実験結果を表4に示す。
表4に示すように、ワイヤ投入速度が(1)、(2)式の範囲にある本発明例1〜6と、ワイヤ投入速度が(1)、(2)式の範囲外の比較例1〜4を比較すると、本発明例1〜6の方が比較例1〜4よりもCaの歩留まりが高くなっていた。
このことから、ワイヤ投入速度が(1)、(2)式の範囲内にすることで、Caの歩留を向上させることができることが確認された。
上記の実験の続きとして、ワイヤ投入後、取鍋を連続鋳造機上に設置されたタンディッシュ上へ搬送し、タンディッシュへ溶鋼を注入した。取鍋内溶鋼の約50%を注入した時点で、タンディッシュ内から溶鋼サンプルを採取し、機側に設置したスパーク放電発光分光分析装置によりT.[Ca],T.[O]濃度を分析した。
Caについては通常の分析手段にて定量し、T.[O]については前述した方法によって定量値を算出した。なお、検量線は、図9に示したものを用いた。
一方、Sについてはスパーク放電発光分光分析装置による分析精度が充分ではないと判断されたことから、AP終了後の燃焼法による分析結果をそのまま用いた。念の為、T.[Ca],T.[O]分析用のサンプルを保管し、後日、採取した切り粉を用いて燃焼法による定量を行なったが、ほとんど1ppm以内の範囲で一致しており、AP処理終了後の分析値を用いて問題の無いことを確認した。
ここで(3)式を満たすものを本発明例1〜6とし、満たさなかった場合を比較例1〜8とした。
これら溶鋼を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚25.4mm及び33mmの厚鋼板を製造した。
加熱したスラブを熱間圧延により圧延し、その後、加速冷却を施して所定の強度とした。この時のスラブ加熱温度は1050℃、圧延終了温度は800〜840℃、加速冷却開始温度は760〜800℃、加速冷却停止温度は450〜550℃とした。
得られた鋼板の強度はいずれもAPIX65を満足するものであり、引張強度は570〜630MPaであった。鋼板の引張特性については、圧延垂直方向の全厚試験片を引張試験片として引張試験を行い、引張強度を測定した。
これらの鋼板について、複数の位置から各10〜15個のHIC試験片を採取し、耐HIC特性を調べた。耐HIC特性は、pHが約3の硫化水素を飽和させた5%NaCl+0.5%CH3COOH水溶液(通常のNACE溶液)中に試験片を96時間浸漬した後、超音波探傷により試験片全面の割れの有無を調査し、割れ面積率(CAR)で評価した。ここで、それぞれの試験片の割れ面積率3%以下を合格とした。
表5に処理条件及び結果を示す。
表5に示すように、成分が(3)式を満たす範囲にある本発明例1〜6ではHIC試験不合格率が7.1%以下であり、耐HIC性能がきわめて良好であった。これに対して、成分が(3)式の範囲外の比較例1〜8では、ワイヤ投入速度が(1)、(2)式の範囲内にあるかどうかに関わりなく耐HIC性能がきわめて悪かった。
このことから、成分が(3)式を満たす範囲にあることで耐HIC性能を良好にすることができることが確認された。

Claims (1)

  1. 容器内に収容された溶鋼へCaを添加するに際し、該CaあるいはCa含有合金を鉄シース内に充填してワイヤ状とし、下記の(1)、(2)式を満たす速度で、かつ下記の(3)式を満たす範囲となるように溶鋼中へ投入するものであり、前記(3)式におけるT.[O]の分析方法が、スパーク放電発光分光法を用いる方法であって、以下のステップを有することを特徴とする溶鋼の成分調整方法。
    ア)多数回の放電パルスによるアルミニウムと鉄の発光強度比を放電パルス毎に求める強度比計算ステップ
    イ)下記式にて求められるアルミナ分率を算出するステップ。
    アルミナ分率=前記発光強度比が閾値αより大きいパルス数/全パルス数
    ここで、閾値αは、放電パルス毎の前記発光強度比を横軸、頻度を縦軸とした度数分布図から求められた発光強度比の最頻値のf 1 (1.5≦f 1 ≦2.5)倍
    ウ)前記強度比計算ステップにより得られた放電パルス毎の前記発光強度比を小さい方から配列し、小さい方から全パルス数の30%以内の一定位置の前記発光強度比を代表アルミ強度比とし、次いで、前記アルミナ分率算出ステップで得られたアルミナ分率と代表アルミ強度比の積からアルミナ強度比(=アルミナ分率×代表アルミ強度比)を算出するステップ
    エ)前記アルミナ強度比とT.[O]との関係式を用いてT.[O]を算出する定量ステップ
    0.8・H/t≦V≦1.2・H/t ・・・・・・・・・・・(1)
    t=600・d・exp(-1.6×10-3・T) ・・・・・・・・(2)
    ここで、V:ワイヤ投入速度(m/s)
    H:取鍋内溶鋼深さ(m)
    t:鉄シース溶解時間(s)
    d:鉄シース厚み(cm)
    T:溶鋼温度(K)
    1.0≦{T.[Ca]-(1.23×T.[O]-3.65)}/(1.25×S)≦4.0 ・・(3)
    ここで、T.[Ca]:鋼中全Ca濃度(ppm)
    T.[O]:鋼中全酸素濃度(ppm)
    S:鋼中S濃度(ppm)
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