JPH067314A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置

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JPH067314A
JPH067314A JP4169097A JP16909792A JPH067314A JP H067314 A JPH067314 A JP H067314A JP 4169097 A JP4169097 A JP 4169097A JP 16909792 A JP16909792 A JP 16909792A JP H067314 A JPH067314 A JP H067314A
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JP
Japan
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slice
magnetic field
gradient magnetic
slicing
pulse
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JP4169097A
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English (en)
Inventor
Yoshiyuki Usui
嘉行 臼井
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】マルチスライス撮影の、ケミカルシフトに因る
脂肪成分からのMR信号を抑制して、脂肪成分に因る高
輝度な描出を少なくする。 【構成】傾斜磁場のパルスシーケンスを制御する傾斜磁
場コントローラは、D/A変換器を介してX軸〜Z軸傾
斜磁場電源に接続され、それらの電源がX〜Zコイルに
各々接続される。例えば6枚のスライス面A〜Fに対す
るマルチスライス撮影の場合、傾斜磁場コントローラで
指令されるスライス用傾斜磁場パルスは、1枚置きの
A,C,E,B,D,Fの順であり、且つ、奇数番目で
あるスライス面A,C,Eのスライス用傾斜磁場パルス
は負極性、偶数番目であるスライス面B,D,Eのそれ
は正極性とされる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、医療診断用の磁気共
鳴イメージング(MRI:Magnetic Reso-nance Imagin
g )装置に係り、とくに、マルチスライス撮影(マルチ
スラブ撮影を含む)におけるスライス用の傾斜磁場パル
スの極性を制御し、脂肪成分から検出されるMR信号を
抑制するようにした磁気共鳴イメージング装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】MRI装置は、被検体中の元素の内、ス
ピンを持つ原子核の磁気共鳴現象を利用して、被検体の
体内を画像化するものである。MRI装置を使って被検
体の画像化を行うためにはまず、静磁場の中に置いた被
検体に傾斜磁場及び高周波(RF)磁場を加え、静磁
場、傾斜磁場及び高周波磁場によって決定される、被検
体の撮影部位の内部で磁気共鳴現象が生じさせる。この
後、高周波磁場を解除すると、被検体の撮影部位からス
ピンの自由誘導減衰などのMR信号が発生するから、こ
のMR信号を受信する。この励起及びMR信号受信は予
め定めたシーケンスで実施される。そして、受信したM
R信号に例えばフーリエ変換などの処理を行うと、撮影
部位の画像データが得られるから、この画像データをモ
ニタに送って断層像などの画像を表示させる。
【0003】このようなMRI装置において、傾斜磁場
は、撮影断面を任意に決めたり、被検体からのMR信号
に位置情報を付加する目的で静磁場に重畳される。この
傾斜磁場を供給するために、MRI装置は、磁石部内に
配置された傾斜磁場コイル(通常、x,y,zコイルか
ら成る)と、この傾斜磁場コイルにパルス電流を供給可
能な傾斜磁場電源と、この傾斜磁場電源の駆動を所定の
パルスシーケンスで制御するシステムコントローラとを
備えている。例えば、スピンエコー(SE)法によって
マルチスライス撮影が行われる場合のパルスシーケンス
は、図20のように示される。つまり、zコイルにはス
ライス位置を決めるスライス用電流パルスが加えられ、
yコイルに位相エンコード用電流パルスが加えられ、x
コイルにリード用電流パルスが加えられる。この内、ス
ライス用パルス及びリード用パルスは何回繰り返して
も、常に特定の極性(図20の場合は正方向)のパルス
である。またエンコード用パルスは繰り返し時間TR
に、その振幅(即ち、Y軸方向の傾斜磁場の強度)を変
化させているが、その重畳時間を変化させてもよい。こ
れによって、スライス用、エンコード用、及びリード用
の3種類の傾斜磁場が各々、所定タイミング毎に被検体
に印加され、リード用傾斜磁場が印加されている最中
に、MR信号としてのエコー信号がRFコイルで受信さ
れる。マルチスライス撮影においては、例えば、あるス
ライス断面を励起してそのエコー信号の受信を待ってい
る間に、次々と次のスライス面が励起され、これにより
高速撮影が可能になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、被検体内に
脂肪成分が在る場合、脂肪成分は水成分に比べて緩和時
間が短いため、励起を受けても直ぐに回復してしまい、
画像化したときに高輝度の部分として描出される。この
ため、高輝度に描出される脂肪成分は、診断上、邪魔に
なるから、改善して欲しいというニーズがある。
【0005】このニーズに対して、前述した従来のマル
チスライス法では、スライス用の傾斜磁場パルスの極性
はスライス位置が変わっても常に同一であることから、
励起される時間間隔は、各スライス断面内の水成分及び
脂肪成分共に同一値、即ち繰り返し時間TR となる。こ
のため、MRI装置の共鳴周波数が水成分の共鳴周波数
に一致するように設定されているとすると、その繰り返
し時間TR 毎に、各スライス断面の脂肪成分によるケミ
カルシフトが全て同一のスライス位置の方向(以下、ス
ライス方向という)に生じる。これは、スライス断面の
励起順が変わっても同じである。したがって、従来のマ
ルチスライス撮影にあっては、水成分については狙った
スライス位置の断面(一定の厚さを有する)が励起され
るものの、脂肪成分についてはスライス方向(スライス
位置の方向)にシフトした位置が励起され、その位置が
単に高輝度に描出されるのみである。この結果、緩和が
速い脂肪成分からのMR信号を抑制することには至ら
ず、脂肪成分に因る高輝度な部分が診断上の邪魔者にな
っていた。
【0006】なお、マルチスライス撮影においては、各
スライス位置毎に矩形状に励起されるのが理想である。
しかし、実際には、隣のスライス位置まで僅かながら励
起してしまって、いわゆるスライス間の干渉という現象
が起き、これにより、画像のS/Nやコントラストが低
下している。
【0007】この発明は、この従来のマルチスライス撮
影の問題に鑑みてなされたもので、被検体の脂肪成分か
ら発生されるMR信号を抑制して、脂肪成分に因る高輝
度な画像部分を減らすことを、目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成させるた
め、この発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁
場の中に置かれた被検体に対し、スライス位置を変えな
がら磁気的にスライスすることによりマルチスライス撮
影を行うようにした磁気共鳴イメージング装置におい
て、上記静磁場中に配設され且つ供給されたパルス電流
に応じて上記スライス位置の方向に傾斜した傾斜磁場を
発生するスライス用傾斜磁場コイルと、指令されたパル
スシーケンスに対応したパルス電流を上記スライス用傾
斜磁場コイルに供給すると共に、その供給するパルス電
流の極性を正又は負に変更自在な電流供給手段と、上記
マルチスライス撮影に対応したスライス用のパルス電流
のパルスシーケンスであって、そのパルス電流の極性を
スライス位置に応じて変更したパルスシーケンスを上記
電流供給手段に指令するスライス用傾斜磁場制御手段と
を備えた。
【0009】とくに、好適な態様の磁気共鳴イメージン
グ装置におけるスライス用傾斜磁場制御手段は、複数の
スライス面の励起順が一枚置きであり、且つ、奇数番目
のスライス位置をスライスするとき、前記パルス電流の
極性が正及び負の内のいずれか一方であると共に、偶数
番目のスライス位置をスライスするとき、上記パルス電
流の極性が正及び負の内の他方であるパルスシーケンス
を前記電流供給手段に指令する手段を備えた。
【0010】また、別の好適な態様の磁気共鳴イメージ
ング装置におけるスライス用傾斜磁場制御手段は、複数
のスライス面の励起順が昇順又は降順であり、且つ、奇
数番目のスライス位置をスライスするとき、前記パルス
電流の極性が正及び負の内のいずれか一方であると共
に、偶数番目のスライス位置をスライスするとき、上記
パルス電流の極性が正及び負の内の他方であるパルスシ
ーケンスを前記電流供給手段に指令する手段を備えた。
【0011】
【作用】マルチスライス撮影において、スライス用傾斜
磁場制御手段は、例えば、複数のスライス面の励起順が
一枚置きであり、且つ、奇数番目のスライス位置をスラ
イスするとき正、偶数番目のスライス位置をスライスす
るとき負の極性のパルス電流から成るパルスシーケンス
を電流供給手段に指令する。また、このスライス用傾斜
磁場制御手段は、例えば、複数のスライス面の励起順が
昇順(又は降順)であり、且つ、奇数番目のスライス位
置をスライスするとき正、偶数番目のスライス位置をス
ライスするとき負の極性のパルス電流から成るパルスシ
ーケンスを電流供給手段に指令する。これにより、電流
供給手段は、指令されたパルスシーケンスに対応したパ
ルス電流をスライス用傾斜磁場コイルに供給し、そのコ
イルは傾斜磁場を発生させる。この傾斜磁場は静磁場に
重畳され、重畳されたトータルの磁場強度はスライス方
向(例えば体軸方向であるZ軸方向)に線形に傾斜する
ので、スライス位置を任意に決めることができる。しか
も、スライス位置が変わると、スライス位置決め用傾斜
磁場の極性が例えば交互に変わる。この結果、スライス
位置に在る水成分は1回の繰り返し時間の間に従来通り
1回励起される一方で、脂肪成分についてはケミカルシ
フトによってスライス方向にシフトした位置が励起され
るから、パルス電流極性の変更によって、ケミカルシフ
ト方向が対向するスライス断面間の脂肪成分の一部又は
全部は1回の繰り返し時間の間に2回励起される。この
ため、その2回の励起によって、従来1回の励起の場合
よりも、脂肪成分から発生するMR信号の強度が抑制さ
れ、脂肪成分に起因した画像上の高輝度な部分が少なく
なる。
【0012】
【実施例】以下、この発明の実施例を説明する。
【0013】(第1実施例)第1実施例を図1〜図9を
用いて説明する。この第1実施例は、グラジェント・フ
ィールドエコー法を用いて2枚のマルチスライス撮影を
行う場合に適用したものである。
【0014】図1に示す磁気共鳴イメージング装置は、
患者Pを挿入する中空部を有した略円筒状の磁石1と、
この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備えてい
る。これにより、磁石1内部の診断用中空部には、患者
Pの体軸方向(Z軸とする)に向いた一様な強度の静磁
場H0 が形成される。
【0015】磁石1の中空部にはまた、X軸方向の傾斜
磁場を発生させる2組のXコイル3x…3x、Y軸方向
の傾斜磁場を発生させる2組のYコイル3y…3y、及
びZ軸方向の傾斜磁場を発生させる1組のZコイル3
z,3zから成る傾斜磁場コイル部3が設置されてい
る。各方向のコイル3x…3x,3y…3y,3z,3
zは、磁石1よりも小径で且つ中空部を有する略円筒状
のドーム(図示せず)に相互に絶縁された状態で所定順
に積層されている。この傾斜磁場コイル部3のドーム、
即ち各方向のコイルは、患者Pを包囲するように配設さ
れる。このドームの内側には、更に、患者Pとの間で高
周波磁気パルスを送受信するRFコイル4が配設されて
いる。
【0016】また、磁気共鳴イメージング装置は、装置
全体を管理する主コントローラ10、傾斜磁場のパルス
シーケンスを制御する傾斜磁場コントローラ11と、高
周波(RF)パルスのパルスシーケンスを制御するRF
コントローラ12とを有する。主コントローラ10はコ
ンピュータを搭載し、各コントローラ11、12にシー
ケンス開始、終了の指令を与える。
【0017】傾斜磁場コントローラ11は、コンピュー
タを搭載しており、グラジェント・フィールドエコー法
に拠るマルチスライス撮影のパルスシーケンスのプログ
ラムを内蔵している。そして、傾斜磁場コントローラ1
1は、メインコントローラ10からのシーケンス開始指
令に応答して、ソフトウエア処理によって予め定めたシ
ーケンスのパルス電流に対応した、X軸、Y軸、Z軸の
各傾斜磁場用の3つのデジタル制御信号(パルス電流の
極性、タイミング、振幅の制御信号)を3つのD/A変
換器13X,13Y,13Zに各々出力する。この3つ
のD/A変換器13X,13Y,13Zは、X軸、Y
軸、Z軸の各方向に割り当てられたX軸、Y軸、Z軸傾
斜磁場電源14X,14Y,14Zに各々接続されてい
る。X軸傾斜磁場電源14Xは前述したXコイル3x…
3xに、Y軸傾斜磁場電源14YはYコイル3y…3y
に、Z軸傾斜磁場電源14ZはZコイル3z,3zに各
々接続されており、この電源14X、14Y,14Zか
らパルス電流が各々供給される。
【0018】X軸、Y軸、Z軸傾斜磁場電源14X,1
4Y,14Zの夫々は、図2に示すように、+V電圧に
接続された正側電力増幅回路16Pと、−V電圧に接続
された負側電力増幅回路16Nとを有し、その両回路1
6P,16Nの出力端が共にコイル3x…3x(又は3
y…3y,又は3z,3z)に接続されている。正側、
負側電力増幅回路16P,16Nには、共に、D/A変
換器13X(又は13Y、又は13Z)で変換されたア
ナログ制御信号が供給される。このため、正側、負側電
力増幅回路16P,16Nは、供給された制御信号に応
じていずれか一方が作動し、パルス電流をコイルに供給
できる。つまり、制御信号によって例えば正側電力増幅
回路16Pが作動したときには、図2中の実線図示の方
向に電流が流れ、コイルには実線図示のパルス波形、即
ち正極性のパルス電流が供給される。反対に、負側電力
増幅回路16Nが作動したときには、図2中の点線図示
の方向に電流が流れ、コイルには点線図示のパルス波
形、即ち負極性のパルス電流が供給される。
【0019】一方、RFコントローラ12は送信機20
及び受信機21に接続され、この送信機20及び受信機
21は送受信コイル4に接続されている。送信機20
は、RFコントローラ12から指令されたタイミングで
高周波パルス電流を送受信コイル4に供給するから、送
受信コイル4から患者Pの撮影部位に高周波磁気パルス
がかけられる。患者Pの撮影部位からのMR信号は送受
信コイル4によって検出され、RFコントローラ12の
指令の元に受信機21で受信される。なお、RFコント
ローラ12及び傾斜磁場コントローラ11は互いに動作
タイミングの同期をとるようになっている。
【0020】主コントローラ10には、オペレータが必
要な情報を指令する入力器25が接続される一方で、M
R信号から画像データへの変換処理を行うデータ演算器
26及び画像表示を行う表示器27が接続されている。
そして、前述した受信機21で信号処理されたMR信号
は、データ演算器26に送られ、例えばフーリエ変換な
どの処理が施されて、再構成された画像データが生成さ
れる。この画像データはデータ記憶ユニット28に記憶
可能になっている。
【0021】この実施例においては、Z軸傾斜磁場電源
14Zが本発明の電流供給手段を形成し、傾斜磁場コン
トローラ11及びD/A変換器13Zが本発明のスライ
ス用傾斜磁場制御手段を形成している。
【0022】続いて、この第1実施例の動作及び効果を
説明する。
【0023】磁石1の診断空間内に、磁石1により静磁
場H0 が形成される。この状態において、傾斜磁場コン
トローラ11及びRFコントローラ12は、メインコン
トローラ10からシーケンス開始指令を受けると、グラ
ジェント・フィールドエコー(FE)法に係る2枚マル
チスライス撮影を、図3のパルスシーケンスに基づいて
制御する。
【0024】まず、t=n・TR(nは正の整数、TR
は繰り返し時間)のタイミングにおいて傾斜磁場コント
ローラ11の指令によりZ軸傾斜磁場電源14ZからZ
コイル3z,3zに所定強度のパルス電流が一定時間供
給される。これにより、Z軸方向の磁場強度が線形に傾
斜する傾斜磁場Gzが発生して、静磁場に重畳されるか
ら、トータルの静磁場もその強度がZ軸に沿って線形に
変わる。このときのスライス用傾斜磁場Gzは、この実
施例では、正極性のパルス電流に拠るものである。
【0025】このスライス用傾斜磁場Gzの形成とタイ
ミングを同じくして、RFコントローラ12の指令によ
り送信機20から送受信コイル4に1番目のスライス面
Aの位置に対応した高周波のパルス電流が供給され、送
受信コイル4は患者Pに向けて高周波磁気パルス(90
°パルス)を発生する。
【0026】次いで、スライス用傾斜磁場Gzが立ち下
がった時点で、傾斜磁場コントローラ11の指令によ
り、X軸傾斜磁場電源14X及びY軸傾斜磁場電源14
Yが駆動する。このため、Xコイル3x…3x及びYコ
イル3y…3yに所定強度及び極性のパルス電流が供給
され、X軸方向及びY軸方向に傾斜した線形磁場が各々
形成される。Y軸方向の傾斜磁場Gyは患者Pのスライ
ス面Aの原子核スピンに位相エンコードを与え、X軸方
向の傾斜磁場Gxはそのスライス面における原子核スピ
ンのMR信号(エコー信号)の読出し(リード用)に寄
与する。そして、リード用の傾斜磁場Gxの極性が反転
している間に、送受信コイル4によってエコー信号が検
出される。このエコー信号は受信機21で検波、増幅さ
れた後、データ演算器26に送られる。
【0027】そして、t=n・TRから(1/2)・T
Rの時間が経過したt=(n+(1/2))・TRのタ
イミングになると、今度は2番目のスライス面Bが上述
したと同様にスライスされる。この2番目のスライスを
実施するとき、傾斜磁場コントローラ11はD/A変換
器13Zを介して所定の制御信号をZ軸傾斜磁場電源1
4Zに与え、Z軸方向の傾斜磁場Gzの極性を反転させ
る。つまり、1番目のスライス面Aのときは、傾斜磁場
電源14Z内の正側電力増幅回路16Pを作動させ、図
4中の直線aで示す傾斜磁場を形成していたのに対し、
2番目のスライス面Bのときはスライス用のパルス電流
の極性を図3のように逆転させ、負側電力増幅回路16
Nを作動させる。この結果、2番目のスライス面Bのと
き、スライス用傾斜磁場Gzの極性も図4中の直線bの
ように反転する。
【0028】このようにスライス用の傾斜磁場Gzの極
性を正から負に反転させても、その絶対値は変わらな
い。このため、前述した1番目のスライス面Aのときと
同様に2番目のスライス面Bからエコー信号が検出さ
れ、1回の位相エンコードに関する画像データが得られ
る。
【0029】以下、位相エンコード、即ちY軸方向の傾
斜磁場の強度(即ち、傾斜勾配の傾き)を変えながら上
述した1番目、2番目のスライス面A,Bの励起及びエ
コー信号の収集が各々行われる。そして、その収集され
たエコー信号に基づいて画像が表示される。
【0030】このように励起及びエコー信号収集が行わ
れる中での、2つのスライス面A,Bのケミカルシフト
について説明する。
【0031】励起のための共鳴周波数は、通常、診断部
位の水成分に合わせるので、ここでもそのようになって
いるとする。そうすると、2枚のスライス面A,Bの水
成分Aw,Bwにはケミカルシフトは生じないから、図
5に示すように(同図には、水成分に位置に対して脂肪
成分がケミカルシフトしたものとして表されている)、
時刻t=n・TRで1番目のスライス面Aの水成分Aw
が励起され、時刻t=(n+(1/2))・TRで2番
目のスライス面Bの水成分Bwが励起される。したがっ
て、2枚のスライス面A,Bの水成分Aw,Bwは、1
回の繰り返し時間TRの間で、従来と同様に各々1回の
励起を受け、そのエコー信号が収集される。
【0032】しかし、脂肪成分に対してはケミカルシフ
トによってスライス位置がずれる。例えば、時刻t=n
・TRにおける1番目のスライス面Aの励起のとき、ケ
ミカルシフトによってもともとのスライス面A(即ち水
成分Aw)よりもスライス方向に(ここでは、2番目の
スライス面B側:例えば+Z軸方向)にずれたスライス
面の脂肪成分Afが励起される。次いで、時刻t=(n
+(1/2))・TRにおける2番目のスライス面Bの
励起のときは、スライス用傾斜磁場Gzの極性が反転し
ていることから、ケミカルシフト方向も反対になる。つ
まり、もともとのスライス面B(即ち水成分Bw)より
もスライス方向とは反対方向に(ここでは、1番目のス
ライス面A側:例えば−Z軸方向)にずれたスライス面
の脂肪成分Bfが励起される。
【0033】この結果、スライス面A,Bの診断部位の
内、互いに反対方向にずれた脂肪成分Af,Bfのスラ
イス面に重なる領域Iが図5のようにできる。この重な
る領域Iの脂肪成分は、1回の繰り返し時間TRの間
に、2回の励起を受けることになるから、この領域Iに
在る脂肪成分の励起に伴う信号の大きさが、従来の1回
励起に比べて小さくなる。これにより、少なくとも領域
Iに在る脂肪成分からのエコー信号の強度は大幅に抑制
されるから、画像が表示器27で描出されたとき、脂肪
成分に伴う高輝度な部分が少なくなり、見易く、診断能
の高い表示画面になる。
【0034】この利点をより明確にするため、ここで、
この第1実施例に相当する従来のパルスシーケンスを図
6に示し、そのシーケンスに伴うケミカルシフトの様子
を図7に示す。図6に示すスライス用のパルス電流は、
常に正極性であり、このパルス電流によって形成される
スライス用の傾斜磁場Gzは、その強度が常に一定方向
に傾斜した磁場となる(例えば図5中のa線の傾斜磁
場)。この図6に示したパルスシーケンスにより励起さ
れた2つのスライス面A,Bのケミカルシフトは常に同
じ方向を向く(図7参照)。つまり、スライス面Aの水
成分Awに対しては所定距離だけスライス方向にずれた
位置の脂肪成分Afが励起され、スライス面Bの水成分
Bwに対しても所定距離だけスライス方向にずれた位置
の脂肪成分Bfが励起される。このように、脂肪成分A
f,Bfは共にスライス方向にずれるだけであるから、
前述したように重なることは無く、スライス方向に単純
に並ぶだけである。したがって、脂肪成分Af,Bfに
ついても繰り返し時間TRについて各1回の励起になる
から、脂肪成分Af,Bfに係る高輝度な描出が行われ
ていた。
【0035】さらに、第1実施例におけるスライス用の
各種パラメータを変えたときのケミカルシフトのシフト
量について、定量的に例示する。
【0036】スライス方向のケミカルシフトの大きさ
l、スライス厚STとしたとき、それらの比Δ(=l/
ST)は、SINC関数のRFパルスを例にとると(一
般にRFパルスとしてSINC関数のものが使用され
る)、
【数1】 Δ=(F0 ×3.5ppm)/(π数/RFパルス長) で表される。F0 は共鳴周波数である。
【0037】いま、±2πのSINC関数で、RFパル
ス長が4.5msecのRFパルスを使用して撮影するとす
る。また、1.5テスラのMRI装置を想定すると、
【数2】F0 =63.9MHz である。このときの上述した比Δは、
【数3】 また、±2πのSINC関数で、RFパルス長が9msec
のRFパルスを使用して撮影すると、同様に、
【数4】
【0038】上述したΔ=0.25になるようにパラメ
ータを選択した場合のケミカルシフトの状態を図8に示
し、Δ=0.5になるようにパラメータを選択した場合
のケミカルシフトの状態を図9に示す(共に、2枚のマ
ルチスライス撮影の場合)。つまりΔ=0.25の場合
は、図8に示すように、スライス面A,B間に在る、ス
ライス厚STの1/2の部分の脂肪成分が重なって(脂
肪成分Af1とBf1の重なる部分)、1回の繰り返し時間
TRの間に2回の励起を受ける。これに対して、Δ=
0.5の場合は、図9に示すように、スライス面A,B
間に在る、スライス厚STに相当する部分の脂肪成分が
重なって(脂肪成分Af1とBf1の重なる部分)、1回の
繰り返し時間TRの間に2回の励起を受ける。このよう
に、脂肪成分からのMR信号を抑制する際、Δ=0.5
になるように各種のパラメータを設定することによっ
て、最大の抑制効果が得られることが分かる。
【0039】このように第1実施例によれば、脂肪成分
からのエコー信号が抑制され、脂肪成分の画像上での輝
度を下げることができる。脂肪成分から検出されるMR
信号を抑制したいとする要望は、とくに、2次元のタイ
ム・オブ・フライト法を用いたMRアンギオグラフィで
高い。このため、この発明をそのMRアンギオグラフィ
に適用することにより、ケミカルシフトによる高輝度部
分の少ない高画質の画像が得られる。
【0040】また、この実施例によれば、傾斜磁場電源
の利用効率が上がるから、その電源の小形化及び低コス
ト化を図ることができる。この理由は以下のようであ
る。従来のマルチスライス撮影では、スライス用傾斜磁
場パルスの極性が常に一定であったため、傾斜磁場電源
ではいずれか一方の極性の電力増幅回路のみを使ってい
た。これにより、その一方的に使用される電力増幅回路
に蓄積される熱量が大きくなる。これに対し、この発明
では一定期間にてスライス用傾斜磁場の極性を逆転させ
るため、電源の利用効率も高くなり、蓄積される熱量が
正側、負側の電力増幅回路に分散される。これによっ
て、電源の小形化及び低コスト化が図られる。
【0041】さらに、この実施例によれば、渦電流の蓄
積現象が少なくなる。つまり、従来装置では、いずれか
一方の極性の傾斜磁場パルスが磁石内部の導体に加えら
れていたので、時定数の長い渦電流成分は蓄積されてい
た。しかし、この発明では、一定期間毎に傾斜磁場パル
スの極性が変えられるので、時定数の長い渦電流成分で
あっても、その蓄積は少なくなり、傾斜磁場がより理想
的になるので、画質劣化が低減されるという利点があ
る。
【0042】(第2実施例)第2実施例を図10及び図
11に基づき説明する。この第2実施例は、3枚のスラ
イス面A,B,Cについてのマルチスライス撮影(FE
法)を行うものである。なお、この第2実施例における
ハード構成は前述した第1実施例と同一であるので、そ
の説明を省略する(この説明省略は、以下の実施例にお
いても同様とする)。
【0043】図10は、傾斜磁場コントローラ11、D
/A変換器13Z及びZ軸傾斜磁場電源14Zによって
制御されるスライス用傾斜磁場パルスの時間変化を示
す。図11は、励起される脂肪成分の位置の時間変化を
示す。
【0044】図10のスライス用パルスシーケンスによ
れば、3枚のスライス面A,B,C(それらの水成分は
Aw,Bw,Cw、脂肪成分はAf,Bf,Cf、さら
に、共鳴周波数は水成分に合わせている)に対し、励起
順はA,B,Cである。そして、スライス面Aのパルス
極性は負、スライス面Cのそれは正で常に一定である
が、スライス面Bの傾斜磁場パルスの極性は、繰り返し
時間TRの周期毎に変化している。つまり、スライス面
Bのパルス極性は、第1回目の繰り返し周期においては
負、第2回目のそれにおいて正、第3回目のそれにおい
て負というように交互に変化している。
【0045】このスライス用パルスシーケンスに伴うス
ライス面Bのケミカルシフト方向は、図11に示す如
く、繰り返し時間TR毎に反対方向となる。これによ
り、奇数回目の繰り返し周期においてはスライス面B,
Cのケミカルシフトに因る重なり領域Iが生じ、偶数回
目の繰り返し周期においてはスライス面A,Bのケミカ
ルシフトに因る重なり領域IIが生じる。これらの重なり
領域I,IIの脂肪成分は、各繰り返し時間TR内に2回
の励起を受けるから、その脂肪成分からの信号の大きさ
が小さくなって、エコー信号の強度が抑制される。
【0046】したがって、第2実施例においても脂肪成
分に起因した高輝度な描出が少なくなる。また、装置の
小形化など、第1実施例と同等の利点も享受できる。
【0047】(第3実施例)第3実施例を図12及び図
13に基づき説明する。この第3実施例は、4枚のスラ
イス面A,B,C、D(それらの水成分はAw,Bw,
Cw,Dw、脂肪成分はAf,Bf,Cf,Df、さら
に共鳴周波数は水成分に合わせている)についてのマル
チスライス撮影(FE法)を行うものである。
【0048】図12は、傾斜磁場コントローラ11、D
/A変換器13Z及びZ軸傾斜磁場電源14Zによって
制御されるスライス用傾斜磁場パルスの時間変化を示
す。図13は、励起される脂肪成分の位置の時間変化を
示す。
【0049】図12のスライス用パルスシーケンスによ
れば、4枚のスライス面A,B,C,Dに対し、励起順
はA,C,B,Dである。そして、スライス面A,Cの
パルス極性は負、スライス面B,Dのそれは正である。
つまり、4枚のスライス面A〜Dは1枚置きに励起され
且つその1枚置きにパルス極性が変わるというシーケン
スが、繰り返し時間TR毎に繰り返される。
【0050】このスライス用パルスシーケンスに伴うケ
ミカルシフト方向は、図13に示す如くになる。つま
り、スライス面A及びBでのケミカルシフト方向が互い
に反対になって重なり領域Iを生じ、スライス面C及び
Dでのケミカルシフト方向が互いに反対になって重なり
領域IIを生じる。これらの重なり領域I,IIの脂肪成分
は、前述した各実施例と同様に、各繰り返し時間TR内
に2回の励起を受けるから、その脂肪成分からのエコー
信号の大きさが小さくなって、エコー信号の強度が抑制
される。
【0051】したがって、第3実施例においても水成分
については従来通りの撮影ができる一方で、脂肪成分に
起因した高輝度な画像部分の減少など、前述した各実施
例と同等の効果を発揮できる。
【0052】また、この実施例においては、スライス毎
の励起順を隣接したスライス順とするのではなく、1枚
置きに行っているから、スライス面A〜D間の干渉によ
る影響を最小にすることができる。つまり、画像のS/
N比を向上させ、またコントラストの低下を防止でき
る。またスライス位置毎のスライス面A〜D間の干渉に
よる影響の差を最小にすることもできる。さらに、この
1枚置きの励起順によれば、スライス位置毎の脂肪成分
からのエコー信号抑制効果の差を最小にすることもでき
る。これは、スライス面A〜Dのどのスライス位置も同
一時間(TR/2)毎に脂肪成分が励起されるからであ
る。
【0053】(第4実施例)第4実施例を図14及び図
15に基づき説明する。この第4実施例は、5枚のスラ
イス面A,B,C,D,E(それらの水成分はAw,B
w,Cw,Dw,Ew、脂肪成分はAf,Bf,Cf,
Df,Ef、さらに共鳴周波数は水成分に合わせてい
る)についてのマルチスライス撮影(FE法)を行うも
のである。
【0054】図14は、傾斜磁場コントローラ11、D
/A変換器13Z及びZ軸傾斜磁場電源14Zによって
制御されるスライス用傾斜磁場パルスの時間変化を示
す。図15は、励起される脂肪成分の位置の時間変化を
示す。
【0055】図14のスライス用パルスシーケンスによ
れば、5枚のスライス面A〜Eに対し、励起順は1枚置
きのA,C,E,B,Dである。そして、スライス面
A,C,Eのパルス極性は負、スライス面B,Dのそれ
は正である。
【0056】このスライス用パルスシーケンスに伴うケ
ミカルシフト方向は、図15に示す如くになる。つま
り、スライス面A及びBでのケミカルシフト方向が互い
に反対になって重なり領域Iを生じ、スライス面C及び
Dでのケミカルシフト方向が互いに反対になって重なり
領域IIを生じる。これらの重なり領域I,IIの脂肪成分
は、前述した各実施例と同様に、各繰り返し時間TR内
に2回の励起を受けるから、その脂肪成分からのエコー
信号の大きさが小さくなる。
【0057】この結果、第4実施例によれば、スライス
面Eの位置ではケミカルシフトに因る脂肪成分からの信
号抑制の効果は無いものの、スライス面A〜Dの位置で
は前述した各実施例と同様に、その信号を抑制するの
で、全体として脂肪成分に起因した高輝度な画像部分を
減少させることができる。さらに、スライス順を一枚置
きとすることにより、スライス面A〜E間の干渉を排除
できるなど、第3実施例と同等の効果をも得ることがで
きる。
【0058】(第5実施例)第5実施例を図16及び図
17に基づき説明する。この第5実施例は、6枚のスラ
イス面A,B,C,D,E,F(それらの水成分はA
w,Bw,Cw,Dw,Ew,Fw、脂肪成分はAf,
Bf,Cf,Df,Ef,Ff、さらに共鳴周波数は水
成分に合わせている)についてのマルチスライス撮影
(FE法)を行うものである。
【0059】図16は、傾斜磁場コントローラ11、D
/A変換器13Z及びZ軸傾斜磁場電源14Zによって
制御されるスライス用傾斜磁場パルスの時間変化を示
す。図17は、励起される脂肪成分の位置の時間変化を
示す。
【0060】図16のスライス用パルスシーケンスによ
れば、6枚のスライス面A〜Fに対し、励起順は1枚置
きのA,C,E,B,D,Fである。そして、スライス
面A,C,Eのパルス極性は負、スライス面B,D,F
のそれは正である。
【0061】このスライス用パルスシーケンスに伴うケ
ミカルシフト方向は、図17のスライス方向に沿った矢
印で示す如くになる。つまり、傾斜磁場パルスが正極性
の場合、ケミカルシフト方向も正のスライス方向(スラ
イス位置の方向)となり、そのパルスが負極性の場合、
ケミカルシフト方向も負のスライス方向となる。
【0062】このため、スライス面A及びBでのケミカ
ルシフト方向が互いに反対になって重なり領域Iを生
じ、スライス面C及びDでのそれが互いに反対になって
重なり領域IIを生じ、さらにスライス面E及びFでのそ
れが互いに反対になって重なり領域III を生じる。この
結果、例えば、Afのスライス位置に存在する脂肪成分
に注目すると、t=T0 にて一度励起された後、TR/
2時間経過した時点で、Afのスライス位置の一部がB
fによって再度励起される。
【0063】このようにスライス用傾斜磁場パルスの極
性が反転されることにより、重なり領域I,II,III に
存在する脂肪成分は、前述した各実施例と同様に、各繰
り返し時間TR内に2回の励起を受けるから、その脂肪
成分からのエコー信号の強度が小さくなる。一方、スラ
イス順も1枚置きになっている。
【0064】したがって、第5実施例においても第3実
施例の4枚のマルチスライス撮影時と同様に、脂肪成分
に伴う高輝度部分の除去、その除去効果の均一性の確
保、並びに、1枚置きのスライスに伴うスライス断面間
の干渉排除及びその排除効果の均一性の確保など、優れ
た効果が得られる。なお、脂肪成分からのMR信号の強
度を抑制して、ケミカルシフトに伴う高輝度部分を画像
上で均一に少なくするには、偶数枚のマルチスライス撮
影が最も好ましい。さらに、これにスライス間の干渉排
除を考慮すると、偶数枚のマルチスライス撮影であっ
て、その励起順は1枚置きであるのが最も好ましい。
【0065】(第6実施例)第6実施例を図18及び図
19に基づき説明する。この第6実施例は、6枚のスラ
イス面A,B,C,D,E,F(それらの水成分はA
w,Bw,Cw,Dw,Ew,Fw、脂肪成分はAf,
Bf,Cf,Df,Ef,Ff、さらに共鳴周波数は水
成分に合わせている)についてのマルチスライス撮影
(FE法)を昇順で行うものである。
【0066】図18は、傾斜磁場コントローラ11、D
/A変換器13Z及びZ軸傾斜磁場電源14Zによって
制御されるスライス用傾斜磁場パルスの時間変化を示
す。図19は、励起される脂肪成分の位置の時間変化を
示す。
【0067】図18のスライス用パルスシーケンスによ
れば、6枚のスライス面A〜Fに対し、励起順は昇順の
A,B,C,D,E,Fである。そして、スライス面
A,C,Eのパルス極性は負、スライス面B,D,Fの
それは正である。
【0068】このスライス用パルスシーケンスに伴うケ
ミカルシフト方向は、図19のスライス方向に沿った矢
印で示す如くになる。つまり、スライス面A及びBでの
ケミカルシフト方向が互いに反対になって重なり領域I
を生じ、スライス面C及びDでのそれが互いに反対にな
って重なり領域IIを生じ、さらにスライス面E及びFで
のそれが互いに反対になって重なり領域III を生じる。
この結果、例えば、Afのスライス位置に存在する脂肪
成分に注目すると、t=T0 にて一度励起された後、
「TR/6」時間経過した時点で、Afのスライス位置
の一部がBfによって再度励起される。さらに、「5T
R/6」時間経過した時点で、Afによって励起され、
以下同様に繰り返される。
【0069】このようにスライス用傾斜磁場パルスの極
性が反転されることにより、重なり領域I,II,III に
存在する脂肪成分は、各繰り返し時間TR内に2回の励
起を受けるから、エコー信号の強度が抑制され、高輝度
な部分が少なくなる。ただ、この際、Bf,Df,Ff
のスライス位置では励起直線(「TR/6」前)に夫
々、Af,Cf,Efによって励起を受けているので、
信号抑制の効果は大きいが、Af,Cf,Efのスライ
ス位置では「5TR/6」だけ経過した後に励起される
ので、脂肪成分の緩和時間が比較的短く、Bf,Df,
Ffのスライス位置に比べると、信号抑制効果が小さ
い。このため、スライス位置が変わると、信号抑制効果
の度合いも変わるが、画像トータルとしては、従来に比
べて格段の向上がみられる。
【0070】さらに、この第6実施例における傾斜磁場
パルスの極性は、正、負の間で交互に切り換えられてい
る。このため、Z軸傾斜磁場電源14Zの正負の電力増
幅回路16P,16Nが第5実施例におけるよりも短い
周期で切り換えられる。このため、回路の発熱を抑制す
る点からは第6実施例の方が有利であり、電源14Zの
小形化、低コスト化をより押し進めることができる。
【0071】なお、この第6実施例は、マルチスライス
撮影(FE法)を降順で行う場合(例えば6枚スライス
のときはスライス面F〜Aの順)にも全く同様に適用可
能である。
【0072】なお、この発明は、前述した各実施例のよ
うなグラジェント・フィールドエコー法のみならず、ス
ピンエコー(SE)法、反転回復(IR)法にも同様に
適用可能なものである。また、この発明は、2次元フー
リエ変換法によるマルチスライス法に限らず、3次元フ
ーリエ変換法によるマルチスライス法(即ち、マルチス
ラブ法)にも同様に適用できる。さらに、マルチスライ
ス法(マルチスラブ法を含む)は、ギャップレスであっ
ても、ギャップ有りであってもよい。さらにまた、MR
信号の収集については、フーリエ変換法を前提としたパ
ルスシーケンスのみならず、投影復元法によるパルスシ
ーケンスを使用してもよい。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に係る磁
気共鳴イメージング装置は、静磁場中に配設され且つ供
給されたパルス電流に応じてスライス位置の方向に傾斜
した傾斜磁場を発生するスライス用傾斜磁場コイルと、
指令されたパルスシーケンスに対応したパルス電流をス
ライス用傾斜磁場コイルに供給すると共に、その供給す
るパルス電流の極性を正又は負に変更自在な電流供給手
段と、マルチスライス撮影に対応したスライス用のパル
ス電流のパルスシーケンスであって、そのパルス電流の
極性をスライス位置に応じて変更したパルスシーケンス
を電流供給手段に指令するスライス用傾斜磁場制御手段
とを備えた。これにより、各スライス位置の水成分に対
しては、共鳴周波数を水成分に合わせておくことによ
り、従来通り繰り返し時間毎に1回励起してMR信号を
収集できる。その一方で、脂肪成分に対しては、スライ
ス用傾斜磁場の極性が正負の間で変化させられるので、
スライス位置のケミカルシフト方向が互いに反対に向け
られる。この結果、ケミカルシフトに係る脂肪成分の殆
どを1回の繰り返し時間の間に2回励起することがで
き、脂肪成分からのMR信号の強度を従来の1回励起よ
りも抑制して、脂肪成分に起因した高輝度な描出を著し
く少なくすることができる。したがって、診断能の向上
した画像を提供できる。
【0074】例えば、複数のスライス面の励起順が一枚
置きであり、且つ、奇数番目のスライス位置をスライス
するとき、パルス電流の極性が正及び負の内のいずれか
一方で、偶数番目のスライス位置をスライスするとき、
その極性が他方であるパルスシーケンスを指令するよう
にした場合、隣接したスライス間の干渉を排除でき、画
像のS/N比及びコントラストを合わせて向上させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る磁気共鳴イメージング
装置を示すブロック図。
【図2】傾斜磁場電源の電力増幅回路を示すブロック
図。
【図3】第1実施例の2枚マルチスライス撮影に関する
全体パルスシーケンス。
【図4】スライス用傾斜磁場の極性の違いを説明する説
明図。
【図5】第1実施例のケミカルシフトを説明するタイミ
ングチャート。
【図6】第1実施例に対応して説明する、従来手法の全
体パルスシーケンス。
【図7】図6の従来手法に拠るケミカルシフトを説明す
るタイミングチャート。
【図8】ケミカルシフトのパラメータ設定の一例を説明
する説明図。
【図9】ケミカルシフトのパラメータ設定の別の一例を
説明する説明図。
【図10】第2実施例の3枚マルチスライス撮影のスラ
イス用パルスシーケンス。
【図11】第2実施例のケミカルシフトを説明するタイ
ミングチャート。
【図12】第3実施例の4枚マルチスライス撮影のスラ
イス用パルスシーケンス。
【図13】第3実施例のケミカルシフトを説明するタイ
ミングチャート。
【図14】第4実施例の5枚マルチスライス撮影のスラ
イス用パルスシーケンス。
【図15】第4実施例のケミカルシフトを説明するタイ
ミングチャート。
【図16】第5実施例の6枚マルチスライス撮影のスラ
イス用パルスシーケンス。
【図17】第5実施例のケミカルシフトを説明するタイ
ミングチャート。
【図18】第6実施例の6枚マルチスライス撮影の、昇
順に係るスライス用パルスシーケンス。
【図19】第6実施例のケミカルシフトを説明するタイ
ミングチャート。
【図20】従来手法の一例を示すスピンエコー法の全体
パルスシーケンス。
【符号の説明】
1 磁石 2 静磁場電源 3z 傾斜磁場コイル(Zコイル) 10 メインコントローラ 11 傾斜磁場コントローラ 13Z D/A変換器 14Z Z軸傾斜磁場電源

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 静磁場の中に置かれた被検体に対し、ス
    ライス位置を変えながら磁気的にスライスすることによ
    りマルチスライス撮影を行うようにした磁気共鳴イメー
    ジング装置において、 上記静磁場中に配設され且つ供給されたパルス電流に応
    じて上記スライス位置の方向に傾斜した傾斜磁場を発生
    するスライス用傾斜磁場コイルと、指令されたパルスシ
    ーケンスに対応したパルス電流を上記スライス用傾斜磁
    場コイルに供給すると共に、その供給するパルス電流の
    極性を正又は負に変更自在な電流供給手段と、上記マル
    チスライス撮影に対応したスライス用のパルス電流のパ
    ルスシーケンスであって、そのパルス電流の極性をスラ
    イス位置に応じて変更したパルスシーケンスを上記電流
    供給手段に指令するスライス用傾斜磁場制御手段とを備
    えことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 【請求項2】 前記スライス用傾斜磁場制御手段は、複
    数のスライス面の励起順が一枚置きであり、且つ、奇数
    番目のスライス位置をスライスするとき、前記パルス電
    流の極性が正及び負の内のいずれか一方であると共に、
    偶数番目のスライス位置をスライスするとき、上記パル
    ス電流の極性が正及び負の内の他方であるパルスシーケ
    ンスを前記電流供給手段に指令する手段を備えた請求項
    1記載の磁気共鳴イメージング装置。
  3. 【請求項3】 前記スライス用傾斜磁場制御手段は、複
    数のスライス面の励起順が昇順及び降順の内のいずれか
    であり、且つ、奇数番目のスライス位置をスライスする
    とき、前記パルス電流の極性が正及び負の内のいずれか
    一方であると共に、偶数番目のスライス位置をスライス
    するとき、上記パルス電流の極性が正及び負の内の他方
    であるパルスシーケンスを前記電流供給手段に指令する
    手段を備えた請求項1記載の磁気共鳴イメージング装
    置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014057861A (ja) * 2012-09-14 2014-04-03 Siemens Aktiengesellschaft 磁気共鳴システムの制御方法および制御装置
US11360171B2 (en) * 2019-04-24 2022-06-14 GE Precision Healthcare LLC Method for obtaining magnetic resonance imaging data and magnetic resonance imaging system

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