JPH0670534B2 - ケミカルヒートポンプ装置 - Google Patents

ケミカルヒートポンプ装置

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JPH0670534B2
JPH0670534B2 JP60092187A JP9218785A JPH0670534B2 JP H0670534 B2 JPH0670534 B2 JP H0670534B2 JP 60092187 A JP60092187 A JP 60092187A JP 9218785 A JP9218785 A JP 9218785A JP H0670534 B2 JPH0670534 B2 JP H0670534B2
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Description

【発明の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 本発明は、水素化反応と脱水素反応とを可逆的に行うこ
とのできる化学反応を利用したケミカルヒートポンプ装
置に関する。更に詳しくは、本発明はより高効率とする
ために改良されたケミカルヒートポンプに関する。
《従来技術》 近年、省エネルギー対策の一つとして、わずかのエネル
ギーを用いて、低熱源からより多くのエネルギーを回収
するヒートポンプが注目されている。この場合、使用す
るエネルギーとして機械的エネルギーを用いる場合と化
学的エネルギーを用いる場合がある。
これらのうち機械的エネルギーを使用する所謂圧縮式ヒ
ートポンプの場合には、熱媒体の安全性、熱安定性、及
び機械的強度等の観点から限界があり、所謂成績係数
(C.O.P.)のみならず、くみ上げの対象とする温度及び
くみ上げ温度にも自ら限度があった。
これに対し、可逆的な吸・発熱反応を利用したケミカル
ヒートポンプにおいては、反応系を選択することにより
くみ上げの対象とする温度及びくみ上げ温度の範囲を極
めて広げることができる。例えば、2級アルコールがケ
トンと水素に分解する可逆反応を使用した場合には、く
み上げ対象温度は約55〜80℃であり、くみ上げ温度は約
160℃〜230℃である(例えば、化学工学協会編、化学工
学シンポジウムシリーズ8“蓄熱・増熱技術”、117ペ
ージ(1985)参照)のに対し、ベンゼンとシクロヘキサ
ンの水素化・脱水素反応の場合には、くみ上げ対象温度
を200℃以上とし、くみ上げ温度を300℃〜400℃とする
ことができる(化学工学協会編、化学工学シンポジウム
シリーズ8“蓄熱・増熱技術”、123ページ(1985)参
照)。
一般に、脱水素反応は吸熱反応、水素化反応は発熱反応
であるので、これらの反応をそれぞれ別の反応器内で行
わせることにより発熱反応器及び吸熱反応器となし、こ
れら発熱反応器と吸熱反応器間に反応物質を循環せし
め、発熱反応器と吸熱反応器の間に配設した熱交換器か
らエネルギーを回収することができるが、これのみでは
ヒートポンプとしての効率が十分ではない。
《発明が解決しようとする問題点》 即ち、水素化の反応は発熱反応でありル・シャトリエの
法則により高温になるほど平衡的に不利となるからであ
る。そこで水素化反応を加圧下で行いこの平衡を有利に
移動せしめる必要がある。
このための新しい方法として、本発明者は先に水素化・
脱水素反応系の混合溶液に水素吸蔵合金をスラリー状に
分散せしめたケミカルヒートポンプシステムを開示した
(特願昭60-047350号、本明細書においては以下このシ
ステムを従来型と呼ぶ)。しかしながらこの系は高価な
水素吸蔵合金を多量に使用しなければならない上、スラ
リーが常時還流するために装置の摩耗が生じ、装置の寿
命を短縮する恐れがある点、更には、水素吸蔵合金が触
媒として作用し、発熱反応の反応温度を低くしてくみ上
げ温度を低下させる等の点で改良の余地があった。
本発明者は、上記従来型の欠点を解決すべく、水素吸蔵
合金を使用しないシステムについて鋭意研究の結果、発
熱反応を加圧下に行うために、単にシステム全体を加圧
した場合(以下、この場合を蒸気圧縮型と称する)に
は、ヒートポンプ装置全体としての成績係数が良好とな
らないのに対し、液体と気体を分離した上で両者を別々
に加圧した場合には、システム全体としての成績係数を
極めて大きくすることができることを見いだし、本発明
に到達した。
従って本発明の第1の目的は、簡易な技術のみからなる
成績係数の大きなケミカルヒートポンプ装置を提供する
ことである。
本発明の第2の目的は、成績係数が大きく且つ耐久性の
良好なケミカルヒートポンプ装置を提供することであ
る。
更に、本発明の第3の目的は、公知の技術を組み合わせ
ることにより成績係数が大きく且つ耐久性の良好なケミ
カルヒートポンプ装置を形成せしめる方法を提供するこ
とである。
《問題を解決するための手段》 本発明の上記の諸目的は、水素化反応と脱水素反応とを
可逆的に行うことのできる化学反応を用いたケミカルヒ
ートポンプ装置であって、装置中を循環する気体成分と
液化可能成分の混合物を気相と液相に分離し、気相及び
液相をそれぞれ個別に加圧して水素化反応室に導入する
ことを特徴とするケミカルヒートポンプ装置によって達
成された。
水素化反応と脱水素反応とを可逆的に行うことのできる
反応系としては、例えば芳香族有機化合物や、2級アル
コールを利用する系を挙げることができる。
芳香族有機化合物を用いる系の具体例としては、 例えば、 等の可逆的反応系を挙げることができる。
2級アルコールを用いる反応系は、 R-CHOH-R′R-CO-R′+H2 で表される。
これらの反応の吸熱量と発熱発応温度とにより、ヒート
ポンプとして使用する場合のくみ上げ対象温度とくみ上
げ温度が決定される。従って本発明においては、利用す
る廃熱等のくみ上げ対象温度と、目的とするくみあげ温
度に対応して、反応を選択し、更に必要な場合には触媒
を選択することができる。
上記例示反応においては、主として水素が気相を形成
し、水素以外の化合物は液相を形成することになる。こ
の場合、気相にはケミカルヒートポンプ運転中の運転条
件下における化合物の蒸気が含有されていても良いこと
は当然である。
次に、本発明で使用するケミカルヒートポンプの原理
を、ベンゼン−シクロヘキサン系を例としてその概略を
述べる。
第2図はベンゼン−シクロヘキサン系について圧力をパ
ラメータにした平衡組織と反応温度との関係を示したも
のである。第2図において、ベンゼンに対して水素を化
学量論比の10倍量加えた場合、圧力0.08MPa(0.81kg/c
m2)の減圧下250℃で組成(ベンゼン/(ベンゼン+シ
クロヘキサン)=0.05の気体を反応させるとシクロヘキ
サンの脱水素吸熱反応が進行して組成が0.7となること
を示したのがである。は、圧力2.0MPa(20.89kg/c
m2)の加圧下367℃で組成0.7の気体を反応させるとベン
ゼンの水素化発熱反応が進行して組成が0.05となること
を示している。このとを繰り返すことにより250℃
から367℃への昇温が行える。しかしながら、そのため
には0.08MPaから2.0MPaへの圧縮仕事を必要とする。
以下に、反応系として引続きベンゼン−シクロヘキサン
の系を用いた場合について図面に従って本発明を詳述す
る。第1図は、本発明のケミカルヒートポンプ装置の概
念図である。
第1図において(1)は吸熱反応器であり、外部からQl
の熱を吸収して の分解反応が進行する。
又、(20)は発熱反応器であり、 の水素化反応が進行し、この発熱反応で発生した熱Qhが
外部に取り出される。
即ち、吸熱反応器(1)に、公知の如く気相脱水素触媒
を担持した図示しない固定相を設け、圧力0.009MPa(0.
09kg/cm2)、温度250℃の条件下にシクロヘキサンを固
定相に通すと、シクロヘキサンの脱水素反応が進行し
て、ベンゼンと水素が生成する。この場合の収率は約70
%とすることができる。この吸熱反応に際し、反応系は
外部からQlの熱量を吸収する。反応後の混合物は熱交換
器(3)を経てセパレーター(5)に至り、ここで気相
と液相に分離されこれらはタンク(7)に蓄積される。
タンク(7)内の気相部分は圧縮器(9)によって熱交
換器(19)を経て発熱反応器(20)に送り込まれる。一
方タンク(7)内の液相部分は圧縮器(11)により熱交
換器(15)を経てタンク(17)に送り込まれ、ここで加
熱されて気化し、熱交換器(19)に至るライン上で前記
気相部分と合流し、熱交換器(19)を経て発熱反応器
(20)に送り込まれる。
発熱反応器に送り込まれた高圧のガスは、例えばニッケ
ル系の図示しない固定相の存在下で発熱反応、即ちベン
ゼンへの水素付反応が進行し、Qhの熱量を放出する。こ
の反応は、例えば反応温度が367℃の時、90%進行す
る。
反応後の混合ガスは、熱交換器(19)、(15)及び
(3)によって熱回収された後、膨脹タービン(13)で
減圧されて吸熱反応器内に還流される。この場合膨脹タ
ービンのかわりに減圧弁を使用することも可能である。
《作用》 このサイクルにおいて装置は外部低熱源から熱量Qlを吸
収し、圧縮機(9)を稼働するための仕事量WC1及び液
体を加熱して加圧された基体と同じ圧力の蒸気圧を発生
するための熱量Qbを得て外部にQhの熱量を放出する。Qb
はQlと同様に外部低熱源から吸収することが可能であ
り、この場合の熱の吸収量は、循環量にもよるが、およ
そQlの約15%から約20%に相当する。圧縮機(11)は液
体のみを圧縮するためにその容積変化は小さく、本発明
においてはその仕事量を無視することができ、又膨張タ
ービン(13)からはWT1の動力を回収することができ
る。回収された動力WT1は圧縮機(9)の仕事WC1の一部
に利用することが可能である。
この場合、第3図に示されるような蒸気圧縮型装置の場
合には、気相と液相を分離せずに圧縮するので、圧縮に
よる蒸気の液化が起こったり、圧縮機稼働のための電力
消費が大となったり、或いは発熱反応が液相とならざる
を得ない場合も生じ好ましくない。
一般にヒートポンプ装置のC.O.P.は C.O.P.=(熱出力)/(入力された仕事量) =Qh/WC1 で表されるから、同一の出力を得る場合でも、入力され
る仕事量が小さい方がC.O.P.が大となりヒートポンプと
して効率が良い。
即ち、本発明の場合のように、圧縮する対象を気相と液
相に分離することにより、圧縮機稼働のための電力を節
減すると同時に反応条件を良好なものとし、蒸気C.O.P.
を大きくすることができることが理解される。従って本
発明の装置は、単にベンゼン−シクロヘキサンの可逆反
応系をヒートポンプシステムに利用した場合のみなら
ず、更に一般的に、反応系内に水素の発生と消滅が伴う
可逆反応系をヒートポンプシステムに利用した系に応用
することができることも又容易に理解される。
本発明において、発熱反応器での操作圧を大きくすれ
ば、圧縮器の所要動力は増大するので、発熱反応の転化
率をも勘案して、C.O.P.が低下しないように最適な圧縮
率を選ぶ必要がある。
本発明において、吸熱反応器から出た反応混合物を気相
と液相に分離する手段としては公知の技術の中から任意
に選択することができるが、特に経済性をも含めた効率
の観点から、セパレーターとして公知のコンデンサーを
使用するのが好ましい。又気相と液相の分子量の差異が
大きい場合にはセパレーターとして安価な多孔質ガラ
ス、その他公知の物質分離膜等を使用することもでき
る。
《発明の効果》 以上の如く、本発明によれば物質を気相と液相に分離
し、それぞれの相を個別に圧縮して発熱反応器に送り込
むという簡単な工程を装置中に組み込むことにより、ケ
ミカルヒートポンプ装置全体のC.O.P.を著しく改良する
ことができる。このようにして本発明により提供された
ケミカルヒートポンプ装置は、単に効率が良いのみなら
ず、使用する化学反応系を選択することにより、くみ上
げ対象温度とくみ上げ温度に対する種々の要求に対して
容易に対応することができる。
更に本発明の装置においては、装置中に粒状物質が循環
するということはないために、摩耗による装置の耐久性
の低下もなく、耐久性の点でも優れたものである。
以下本発明を実施例により更に詳述するが、本発明はこ
れにより限定されるものではない。
《実施例》 実施例1. ベンゼンとシクロヘキサンの間の水素化・脱水素反応の
場合について、第1図で示される本発明のケミカル・ヒ
ートポンプ装置の場合と、第1図の装置からセパレータ
ー(5)、タンク(7)及び(17)、圧縮器(11)、熱
交換器(15)及び(19)を除いた蒸気圧縮型システムの
場合(第3図)とを比較した。発熱反応器圧Pnを2.0MP
a、低熱源温度Tlを503k、水素とベンゼンの混合比を化
学量論比を1と設定した場合に、圧縮器の所要動力WC1
と発熱反応器での取り出し熱量QhとからC.O.P.を計算し
た結果を第4図に示した。図中、CHPS−5は蒸気圧縮型
装置の場合であり、CHPS−5Mは本発明の装置の場合であ
り、ηcは仮定した圧縮器の効率である。
第4図から明らかなように、蒸気圧縮型の場合には全温
度範囲でC.O.P.が3以下と低いのに対し、本発明の場合
には、圧縮器効率ηcが0.75の場合は発熱反応温度330
℃付近まで、ηcが0.95の場合は発熱反応温度370℃付
近までC.O.P.が3以上となる。これらの結果から本発明
の装置が極めて優れていることが実証された。
実施例2. イソプロピルアルコールと、アセトンの水素化・脱水素
反応の系の場合には、蒸気圧縮型システムを用いて吸熱
反応後の蒸気を圧縮するとアセトンが液化するために使
用に耐えない系となった。この場合の液化を防止するた
めに、圧縮前に加熱しようとししても構造上困難であ
り、このように圧縮により液化し易い場合には本発明の
方法が特に有効であることが確認された。
実施例3. 水素吸蔵合金を用いる従来型装置において、金属水素化
物としてLaNi5H6.0を使用した場合と、本発明の場合に
ついて、実施例1の場合と同じ反応系で同じ条件を設定
して両者の熱効率を比較した。
熱効率をηH=熱出力/(吸収した熱量+加えた仕事
量)と定義した結果、第5図が得られた。第5図は、従
来型装置に比して本発明の場合が熱効率において極めて
優れていることを実証するものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のケミカルヒートポンプ装置の概念図で
ある。図中符号(1)は吸熱反応器、(5)は気相、液
相のセパレーター、(7)は分離された気相と液相の両
方を蓄積するタンク、(17)は蒸気と共存する液相のタ
ンク、(3)、(15)及び(19)はそれぞれ熱交換器で
あり、(9)、(11)は圧縮器、(13)は膨張タービ
ン、(20)は発熱反応器である。 第2図はケミカルヒートポンプの原理を説明するための
原理図である。 第3図は蒸気圧縮型ケミカルヒートポンプの概念図であ
る。 第4図は、発熱反応温度とC.O.P.の相関を表すグラフで
ある。図中CHPS−5は蒸気圧縮型装置の場合であり、CH
PS−5Mは本発明の場合を表す。 第5図は発熱反応温度と熱効率の相関を表すグラフであ
る。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水素化反応と脱水素反応とを可逆的に行う
    ことのできる化学反応を用いたケミカルヒートポンプ装
    置であって、装置中を循環する気体成分と液化可能成分
    の混合物を気相と液相に分離し、気相及び液相をそれぞ
    れ個別に加圧して水素化反応室に導入することを特徴と
    するケミカルヒートポンプ装置。
  2. 【請求項2】気相と液相の分離がコンデンサーによりな
    されることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の
    ケミカルヒートポンプ装置。
  3. 【請求項3】気相と液相の分離が物質分離膜材料によっ
    てなされることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記
    載のケミカルヒートポンプ装置。
  4. 【請求項4】化学反応が、芳香族炭化水素の可逆的水素
    化・脱水素反応であることを特徴とする特許請求の範囲
    第1項乃至第3項に記載のケミカルヒートポンプ装置。
  5. 【請求項5】化学反応が、ベンゼンの可逆的水素化・脱
    水素反応であることを特徴とする特許請求に範囲第4項
    に記載のケミカルヒートポンプ装置。
  6. 【請求項6】化学反応が、キノリンの可逆的水素化・脱
    水素反応であることを特徴とする特許請求の範囲第4項
    に記載のケミカルヒートポンプ装置。
  7. 【請求項7】化学反応が、第2級アルコールとケトンの
    間の可逆的水素化・脱水素反応であることを特徴とする
    特許請求の範囲第1項乃至第3項に記載のケミカルヒー
    トポンプ装置。
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