JPH0667961U - メタルガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】積層した複数枚の金属板同士の結合強度を確保
したまま、結合作業の容易化を図る。これにより、十分
な信頼性、耐久性を有するメタルガスケットを安価に提
供する。 【構成】メタルガスケットの１種であるメタルシリンダ
ヘッドガスケットは、複数枚の金属板を積層して成る。
各金属板の外周縁複数箇所で互いに整合する位置に複数
の突出部７、７を形成し、各突出部７、７に上記複数枚
の金属板同士を結合する結合部１０、１０を設ける。各
突出部７、７は、シリンダブロック上面並びにシリンダ
ヘッド下面の間から突出させる。各結合部１０、１０
は、互いに平行な２本１組の切目１１、１１と、１組の
切目１１、１１の間部分を重なり合った複数枚の金属板
ごと表裏方向に膨出させる事で形成された係止突部１
２、１２とから成る。複数の結合部１０、１０を構成す
る複数組の切目１１、１１の方向を互いに異ならせる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案に係るメタルガスケットは、例えば内燃機関のシリンダヘッド下面と シリンダブロック上面との間に挟持し、両面間の気密及び液密を保持するシリン ダヘッドガスケットとして利用する。

【０００２】

【従来の技術】

内燃機関のシリンダヘッド下面とシリンダブロック上面との間にはシリンダヘ ッドガスケットを挟持し、シリンダ内で発生する高圧の燃焼ガス、或はシリンダ ブロックとシリンダヘッドとの間を流通する冷却水や潤滑油が外部に漏洩するの を防止する。この様なシリンダヘッドガスケットとして、複数枚の金属板を重ね 合わせたメタルシリンダヘッドガスケットも、従来から知られている。

【０００３】 図８は、この様なメタルシリンダヘッドガスケット１の１例を示している。こ のメタルシリンダヘッドガスケット１には、シリンダ頂部の開口形状に合わせた 円形のボア孔２、２、シリンダヘッドをシリンダブロックに固定する為のボルト を挿通する小孔３、３、冷却水又は潤滑油を通す為の透孔４、４が設けられてい る。

【０００４】 この様なメタルシリンダヘッドガスケット１は、従来から、図８〜１０に示す 様に、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板等の金属板５〜６を複数枚（図示の例で は３枚）重ね合わせる事で構成されている。これら複数枚の金属板５〜６の外周 縁複数箇所には舌片状の突出部７、７を形成し、各突出部７、７部分に於いて、 上記複数枚の金属板５〜６同士を結合している。

【０００５】 従来はこれら突出部７、７同士の結合を、図８〜１０に示す様に、鳩目８によ り行なっていた。即ち、上記突出部７部分に於いて各金属板５〜６に、互いに整 合する通孔９、９を穿設し、各通孔９、９に挿通し更にかしめ付けた鳩目８によ り、上記各金属板５〜６同士の分離防止を図っている。メタルシリンダヘッドガ スケット１の使用時に各突出部７、７は、シリンダブロック上面並びにシリンダ ヘッド下面の間から突出して、これら両面同士の間で挟持される事はない。従っ て、上記鳩目８の存在が上記両面同士のシール性を阻害する事はない。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、複数枚の金属板同士の結合強度を確保したまま、結合作業の容易化 を図る事で、十分な信頼性、耐久性を有するメタルガスケットを安価に提供する 事を目的としている。

【０００７】 図８〜１０に示す様に、鳩目８により突出部７、７同士を結合する従来構造の 場合、結合強度は十分で、十分な耐久性、信頼性を得られる反面、鳩目８を装着 する作業が面倒で、メタルシリンダヘッドガスケット１の製作費を高くする原因 となる。この事は、メタルシリンダヘッドガスケットに限らず、複数枚の金属板 を積層して成るメタルガスケット全般に当てはまる。

【０００８】 これに対して金属板５〜６等、複数枚の金属板同士を、やはりシール性に影響 を及ぼさない部分でスポット溶接する事により結合する方法も、一部で採用され ている。スポット溶接により複数枚の金属板同士を結合すれば、鳩目８を使用す る場合に比べ作業が容易ではあるが、結合作業に別行程を必要とする事には変わ りがなく、製作費低廉化の効果が必ずしも十分ではない。又、シール性確保の為 に表面にコーティング層を形成した金属板の場合、スポット溶接による結合作業 自体不可能になる。

【０００９】 本考案のメタルガスケットは、上述の様な事情に鑑みて考案されたものである 。

【００１０】

【課題を解決する為の手段】

本考案のメタルガスケットは何れも、前述した従来のメタルシリンダヘッドガ スケット等のメタルガスケットと同様に、複数枚の金属板を積層して成り、内側 に流体を流通させる流通孔と、互いに接続すべき部材同士を結合する為のボルト を挿通する小孔と、上記各金属板の一部で、上記互いに接続すべき部材と干渉し ない部分に設けられ、上記複数枚の金属板同士を結合する結合部とを有し、上記 互いに接続すべき部材の、シール性保持を図るべき２面間に挟持して使用する。

【００１１】 特に、請求項１に記載したメタルガスケットに於いては、上記結合部は、互い に平行な２本１組の切目と、１組の切目の間部分を重なり合った複数枚の金属板 ごと表裏方向に膨出させる事で形成された係止突部とから成り、複数の結合部を 構成する複数組の切目の内に、方向が互いに異なる切目の組が存在する事を特徴 としている。

【００１２】 更に、請求項２に記載したメタルガスケットに於いては、上記結合部は、互い に非平行且つ不連続の３本以上の切目と、この３本以上の切目の内側部分を重な り合った複数枚の金属板ごと表裏方向に膨出させる事で形成された係止突部とか ら成る事を特徴としている。

【００１３】

【作用】

上述の様に構成される本考案のメタルガスケットが、シール性保持を図るべき ２面間に挟持され、この２面間のシール性保持を図る際の作用自体は、前述した 従来のメタルガスケットと同様である。

【００１４】 特に、本考案のメタルガスケットに於いては、各結合部を構成する切目の端縁 と係止突部の端縁との摩擦係合により、互いに重ね合わされた複数枚の金属板同 士が結合される。結合部を構成する切目並びに係止突部を形成する作業は、プレ ス作業により一挙動で、しかも穿孔作業等、元々メタルガスケットを製造する上 で必要とされているプレス作業と同時に行なえる為、結合作業の容易化を図れる 。

【００１５】 尚、互いに重ね合わされた複数枚の金属板同士の間に剪断方向の力が加わった 場合、切目と係止突部とから成る結合部の強度は、力の方向と切目の方向とが一 致した場合には弱くなり、上記複数枚の金属板同士が面方向にずれ易くなる。

【００１６】 これに対して請求項１に記載したメタルガスケットの場合には、複数の結合部 を構成する複数組の切目の内に、方向が互いに異なる切目の組が存在する為、何 れかの切目の方向と力の方向とがずれて、この力によって上記複数枚の金属板同 士が面方向にずれるのを確実に防止する。

【００１７】 又、請求項２に記載したメタルガスケットの場合には、１個の結合部を構成す る３本以上の切目が互いに非平行である為、何れの方向に力が加わった場合でも 、何れかの切目がこの力に対し有効に作用して、上記複数枚の金属板同士が面方 向にずれるのを確実に防止する。

【００１８】

【実施例】

図１〜３は、請求項１に対応する、本考案の第一実施例を示している。本実施 例に於いては、本考案をシリンダヘッドガスケットとして適用している。このメ タルシリンダヘッドガスケット１ａは、前述した従来のメタルシリンダヘッドガ スケット１（図８〜９）と同様に、複数枚の金属板５〜６を積層して成り、流通 孔である、シリンダ頂部の開口形状に合わせた円形のボア孔２、２と、冷却水又 は潤滑油を通す為の複数個の透孔４、４と、互いに接続すべき部材である、シリ ンダヘッドとシリンダブロックとを結合する為のボルトを挿通する小孔３、３と を有する。

【００１９】 上記各金属板５〜６の外周縁複数箇所で互いに整合する位置には、複数の突出 部７、７を形成し、各突出部７、７に、上記複数枚の金属板５〜６同士を結合す る結合部１０、１０を設けている。メタルシリンダヘッドガスケット１ａの使用 時に上記各突出部７、７は、シール性保持を図るべき２面間である、シリンダブ ロック上面並びにシリンダヘッド下面の間から突出して、これら各突出部７、７ が、シリンダブロック上面とシリンダヘッド下面との間で挟持される事はない。

【００２０】 上記各突出部７、７には、上記複数枚の金属板５〜６同士を結合する為の結合 部１０、１０を１個ずつ設けている。各結合部１０、１０は、互いに平行な２本 １組の切目１１、１１と、１組の切目１１、１１の間部分を重なり合った複数枚 の金属板５〜６ごと表裏方向に膨出させ塑性変形させる事で形成された係止突部 １２、１２とから成る。

【００２１】 実際の場合には、上記各結合部１０、１０の形成作業は一挙動で行ない、係止 突部１２、１２を膨出させるのと同時に、切目１１、１１を形成する。特に、本 考案の実施例であるメタルシリンダヘッドガスケット１ａの場合には、上記複数 の結合部１０、１０を構成する複数組の切目１１、１１の方向を互いに異ならせ ている。複数の結合部１０、１０の形成作業は同時に行なう為、上記切目１１、 １１及び係止突部１２、１２を形成する為の雄雌型の配列方向をランダムにする 。

【００２２】 上述の様に構成される本実施例のメタルシリンダヘッドガスケット１ａが、シ リンダブロック上面とシリンダヘッド下面との間のシール性保持を図る際の作用 自体は、前述した従来のメタルシリンダヘッドガスケット１と同様である。

【００２３】 特に、本実施例のメタルシリンダヘッドガスケット１ａに於いては、各突出部 ７、７に形成した各切目１１、１１の端縁１３、１３と各係止突部１２、１２の 端縁１４、１４との摩擦係合により、互いに重ね合わされた複数枚の金属板５〜 ６同士が結合される。

【００２４】 上記各結合部１０、１０を構成する切目１１、１１並びに係止突部１２、１２ を形成する作業は、プレス作業により一挙動で、しかも各金属板５〜６に必要な 孔をあける穿孔作業等、元々メタルシリンダヘッドガスケット１ａを製造する上 で必要とされているプレス作業と同時に行なえる為、結合作業の容易化を図れる 。

【００２５】 メタルシリンダヘッドガスケット１ａの使用時には、エンジンの運転と停止と の繰り返しに伴なうシリンダヘッドの熱膨張と収縮とにより、互いに重ね合わさ れた複数枚の金属板５〜６同士の間に剪断方向の力が加わる。上記切目１１、１ １と係止突部１２、１２とから成る結合部１０、１０の強度は、力の方向と切目 １１、１１の方向とが一致した場合には弱くなり、上記複数枚の金属板５〜６同 士が面方向にずれ易くなる。

【００２６】 これに対して本実施例のメタルシリンダヘッドガスケット１ａの場合には、複 数の結合部１０、１０を構成する複数組の切目１１、１１の方向が互いに異なる 為、総ての切目１１、１１の方向と力の方向とが一致する事はなくなる。従って 、何れの方向に力が加わった場合でも、この力の方向と何れかの切目１１、１１ の方向とがずれて、上記力によって上記複数枚の金属板５〜６同士が面方向にず れるのを確実に防止する。

【００２７】 次に、図４〜５は、請求項２に対応する、本考案の第二実施例を示している。 本実施例に於いても、本考案をメタルシリンダヘッドガスケットに適用した例に 就いて説明する。本実施例の場合、各突出部７に設けて、複数枚の金属板５〜６ （図３参照）同士を結合する結合部１０ａを、互いに非平行且つ不連続で、それ ぞれが円弧形の３本の切目１１ａ、１１ａと、この３本の切目１１ａ、１１ａの 内側部分を、重なり合った複数枚の金属板５〜６ごと表裏方向に膨出させる事で 形成した係止突部１２ａとから構成している。

【００２８】 本実施例に於けるメタルシリンダヘッドガスケット１ｂの場合には、１個の結 合部１０ａを構成する３本の切目１１ａ、１１ａが互いに非平行である為、何れ の方向から力が加わった場合でも、少なくとも２本の切目１１ａ、１１ａの方向 と力の方向とが不一致となり、これら少なくとも２本の切目１１ａ、１１ａがこ の力に対し有効に作用して、上記複数枚の金属板５〜６同士が面方向にずれるの を確実に防止する。

【００２９】 更に、図６は、請求項２に対応する、本考案の第三実施例を示している。前述 した第一、第二実施例と同様、本考案をメタルシリンダヘッドガスケットに適用 した本実施例の場合、各突出部７に設けて、複数枚の金属板５〜６（図３参照） 同士を結合する結合部１０ｂを、互いに非平行且つ不連続で、それぞれが略Ｌ字 形の４本の切目１１ｂ、１１ｂと、この４本の切目１１ｂ、１１ｂの内側に存在 する十字形部分を、重なり合った複数枚の金属板５〜６ごと表裏方向に膨出させ る事で形成した係止突部１２ｂとから構成している。

【００３０】 本実施例に於けるメタルシリンダヘッドガスケット１ｃの場合には、１個の結 合部１０ｂを構成する４本の切目１１ｂ、１１ｂが互いに非平行で、しかも略Ｌ 字形とされている為、何れの方向から力が加わった場合でも、各切目１１ｂ、１ １ｂの内の一部の切目１１ｂ、１１ｂの方向と力の方向とが不一致となり、各切 目１１ｂ、１１ｂがこの力に対し有効に作用して、上記複数枚の金属板５〜６同 士が面方向にずれるのを確実に防止する。

【００３１】 尚、上記各実施例に於いて、係止突部１２、１２ａ、１２ｂを形成する方向は 、メタルシリンダヘッドガスケット１ａ、１ｂ、１ｃの表裏何れかの方向に統一 しても良いが、隣り合う結合部１０、１０ａ、１０ｂ同士で、表裏方向を互いに 逆にしても良い。この様に、隣り合う結合部１０、１０ａ、１０ｂの形成方向を 互いに逆にする事で、メタルシリンダヘッドガスケット１ａ、１ｂ、１ｃの反り を少なく抑えられる。

【００３２】 更に、図示の実施例では、各金属板５、６の外周縁に突出部７を形成し、この 突出部７部分に結合部１０、１０ａ、１０ｂを形成していたが、シリンダブロッ ク上面又はシリンダヘッド下面等、本考案のメタルガスケットが挟持される、シ ール性保持を図るべき２面の形状によっては、上記突出部７を設ける事なく、上 記各金属板５、６の内側部分に、上記各結合部１０、１０ａ、１０ｂを設ける事 も出来る。この事は、上記各実施例に於けるシリンダヘッドガスケット１ａ、１ ｂ、１ｃのみならず、エキゾーストマニホールド用ガスケット等、他の接続すべ き部材同士の間に挟持されるメタルガスケットに就いても同様である。

【００３３】 即ち、第四実施例を記載した図７に示す様に、シリンダヘッド１５の下面（又 はシリンダブロック１６の上面）には、このシリンダヘッド１５（又はシリンダ ブロック１６）を鋳造する際に、砂抜き等の為に必要な開口１７を設ける。エン ジンとして組み立てられた後に於いて、この開口１７には、冷却水や潤滑油が流 通する事はない。従って、この開口１７はメタルシリンダヘッドガスケット１ａ （１ｂ、１ｃ）によって塞がれる。

【００３４】 そこで、図７に示す様に、この開口１７に整合する部分に上記結合部１０（１ ０ａ、１０ｂ）を形成し、この結合部１０（１０ａ、１０ｂ）の係止突部１２（ １２ａ、１２ｂ）を上記開口１７内に進入させれば、上記結合部１０（１０ａ、 １０ｂ）を各金属板５、６の内側部分（外周縁よりも中央に寄った部分）に設け ても、上記係止突部１２（１２ａ、１２ｂ）とシリンダヘッド１５の下面及びシ リンダブロック１６の上面とが干渉する事がなくなる。

【００３５】

【考案の効果】

本考案のメタルガスケットは以上に述べた通り構成され作用する為、複数枚の 金属板同士の結合強度を確保したまま、結合作業の容易化を図る事で、十分な信 頼性、耐久性を有するメタルガスケットを安価に提供出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第一実施例を示す部分平面図。

【図２】図１のＡ部拡大図。

【図３】図２の拡大Ｂ−Ｂ断面図。

【図４】本考案の第二実施例を示す、図２と同様の図。

【図５】同じく斜視図

【図６】本考案の第三実施例を示す、図２と同様の図。

【図７】本考案の第四実施例を示す部分断面図。

【図８】従来のメタルシリンダヘッドガスケットを示す
部分平面図。

【図９】図８のＣ部拡大図。

【図１０】図９の拡大Ｄ−Ｄ断面図。

【符号の説明】

１、１ａ、１ｂ、１ｃ メタルシリンダヘッドガスケッ
ト ２ ボア孔 ３ 小孔 ４ 透孔 ５、６ 金属板 ７ 突出部 ８ 鳩目 ９ 通孔 １０、１０ａ、１０ｂ 結合部 １１、１１ａ、１１ｂ 切目 １２、１２ａ、１２ｂ 係止突部 １３、１４ 端縁 １５ シリンダヘッド １６ シリンダブロック １７ 開口

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数枚の金属板を積層して成り、内側に
   流体を流通させる流通孔と、互いに接続すべき部材同士
   を結合する為のボルトを挿通する小孔と、上記各金属板
   の一部で、上記互いに接続すべき部材同士と干渉しない
   部分に設けられ、上記複数枚の金属板同士を結合する結
   合部とを有し、上記互いに接続すべき部材の、シール性
   保持を図るべき２面間に挟持して使用するメタルガスケ
   ットに於いて、上記結合部は、互いに平行な２本１組の
   切目と、１組の切目の間部分を重なり合った複数枚の金
   属板ごと表裏方向に膨出させる事で形成された係止突部
   とから成り、複数の結合部を構成する複数組の切目の内
   に、方向が互いに異なる切目の組が存在する事を特徴と
   するメタルガスケット。
2. 【請求項２】 複数枚の金属板を積層して成り、内側に
   流体を流通させる流通孔と、互いに接続すべき部材同士
   を結合する為のボルトを挿通する小孔と、上記各金属板
   の一部で、上記互いに接続すべき部材と干渉しない部分
   に設けられ、上記複数枚の金属板同士を結合する結合部
   とを有し、上記互いに接続すべき部材の、シール性保持
   を図るべき２面間に挟持して使用するメタルガスケット
   に於いて、上記結合部は、互いに非平行且つ不連続の３
   本以上の切目と、この３本以上の切目の内側部分を重な
   り合った複数枚の金属板ごと表裏方向に膨出させる事で
   形成された係止突部とから成る事を特徴とするメタルガ
   スケット。